ストッカ及びスタッカ装置の制御方法
【課題】収納能力を高める。
【解決手段】一方向に伸延する保管棚2において、その伸延方向に直交する方向に沿って、保管物9が載置される載置領域を2つ設ける。保管物9は、その下面における保管棚2の伸延方向両側を支持された状態で保管棚2に載置される。保管棚2とポート3との間で保管物9の移載を行うスタッカ装置4は、保管棚2の伸延方向と直交する方向に沿って進退可能なハンド47を有している。載置された保管物9の下面と当接するハンド47の当接面の進退方向に沿う長さは、保管棚2においてハンド47の進退方向に沿って設けられる2つの載置領域に跨る長さ以上である。ハンド47は、当接面が当該2つの載置領域のうち、スタッカ装置4側に位置する載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態と、当該2つの載置領域の両方と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態とを取り得る。
【解決手段】一方向に伸延する保管棚2において、その伸延方向に直交する方向に沿って、保管物9が載置される載置領域を2つ設ける。保管物9は、その下面における保管棚2の伸延方向両側を支持された状態で保管棚2に載置される。保管棚2とポート3との間で保管物9の移載を行うスタッカ装置4は、保管棚2の伸延方向と直交する方向に沿って進退可能なハンド47を有している。載置された保管物9の下面と当接するハンド47の当接面の進退方向に沿う長さは、保管棚2においてハンド47の進退方向に沿って設けられる2つの載置領域に跨る長さ以上である。ハンド47は、当接面が当該2つの載置領域のうち、スタッカ装置4側に位置する載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態と、当該2つの載置領域の両方と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態とを取り得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管物を保管するストッカ、及びストッカにおけるスタッカ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体の製造が行われるクリーンルーム内に設置されており、製造過程にある半導体材料を一時的に保管するストッカである保管棚装置が開示されている。かかる装置は、保管物が載置される棚と、外部との間で保管物の受け渡しを行うための受け渡し部と、棚と受け渡し部との間で保管物の移載を行うスタッカとを備えている。
【0003】
上記スタッカは、上方を向いた面を有するハンドと、ハンドを水平方向に進退させる進退機構と、ハンドを昇降させる昇降機構とを有している。棚には、ハンドの進退方向に関して1つの保管物が載置されている。そして、スタッカは、棚に載置されている保管物と鉛直方向に重なる位置までハンドを前進させた後、ハンドを上昇させることによって、保管物を掬い上げるようにして持ち上げる。
【特許文献1】特開平10−98094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリーンルームは、スペース単価が高額である。したがって、上述のようにクリーンルーム内に設置される保管棚装置は、小さな占有面積でより多くの保管物を収納可能とすることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、高い収納能力を有するストッカ、及び該ストッカにおけるスタッカ装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明のストッカは、一方向に沿って伸延しており保管中の保管物が載置される保管棚と、入出庫させる前記保管物が載置されるポートと、前記保管棚と前記ポートとの間で前記保管物の移載を行うスタッカ装置とを備えたストッカである。また、前記スタッカ装置は、前記保管物の下方を向いた被当接面を支持する上方を向いた当接面を有するハンド、前記ハンドを水平方向に進退させる進退機構、前記進退機構を制御する進退制御手段、前記ハンドを昇降させる昇降機構、前記昇降機構を制御する昇降制御手段、前記ハンドを前記一方向に沿って移動させる移動機構、及び前記移動機構を制御する移動制御手段を備えており、前記進退制御手段の制御により載置されている前記保管物の前記被当接面と前記当接面とが鉛直方向に重なる位置まで前記ハンドを前進させた後に、前記昇降制御手段の制御により前記保管物が持ち上がる位置まで前記ハンドを上昇させることによって前記保管物を持ち上げ、前記昇降制御手段及び前記移動制御手段の少なくともいずれか一方の制御により当該保管物を移載すべき箇所の近傍まで運搬するものである。そして、前記保管棚には、前記保管物がそれぞれ載置される第1載置領域及び第2載置領域が、前記ハンドの進退方向に沿って前記スタッカ装置側から順に形成されており、前記ハンドは、前記当接面の前記進退方向の長さが、前記第1及び第2載置領域に跨る長さ以上であり、前記第1載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態と、前記第1及び第2載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態とを取り得る。
【0007】
この構成によると、ハンドにより、第1及び第2載置領域への保管物の受け渡しを行うことができる。したがって、保管棚においてハンドの進退方向に沿って2つ設けられた第1及び第2載置領域に保管物をそれぞれ載置することができるので、ハンドの進退方向に沿って載置される保管物が1つである場合と比べて、ストッカの収納能力を高めることができる。
【0008】
本発明のストッカでは、前記保管棚及び前記ポートにおいて、前記保管物がその下面における前記進退方向と直交する方向に関する両端部を支持された状態で載置されており、前記保管物の下面が前記被当接面となっていてもよい。この構成によると、ハンドは、その当接面により、載置された状態の保管物の下面における支持されていない箇所を支持しつつ、保管物を下方から掬い上げるように持ち上げることができる。
【0009】
本発明のストッカは、前記スタッカ装置を挟んで両側に配置された2つの前記保管棚を備えていることが好ましい。この構成によると、スタッカ装置の一方側のみに保管棚が設けられている場合に比べて、ストッカの収納能力をさらに高めることができる。
【0010】
本発明のスタッカ装置の制御方法は、上述のいずれかのストッカにおけるスタッカ装置の制御方法であって、前記保管棚において、前記保管棚から前記ポートに移載すべき保管物よりも前記進退方向に関して前記スタッカ装置側に他の保管物が存在しない場合には、前記移載すべき保管物のみを前記ハンドに受け取らせる対象受取工程と、前記対象受取工程において受け取られた前記移載すべき保管物を前記ポート近傍まで運搬する対象運搬工程と、前記対象運搬工程において運搬された前記移載すべき保管物を前記ポートに載置する対象引渡工程とを備えている。また、前記他の保管物が存在する場合には、前記移載すべき保管物及び前記他の保管物の2つの保管物を前記ハンドに同時に受け取らせる双方受取工程と、前記双方受取工程において受け取られた前記2つの保管物を前記ポート近傍まで運搬する双方運搬工程と、前記双方運搬工程において運搬された前記2つの保管物のうち、前記移載すべき保管物を前記ポートに載置する一方引渡工程と、前記一方引渡工程において前記ポートに載置されなかった前記他の保管物を前記保管棚近傍まで運搬する他方運搬工程と、前記他方運搬工程において運搬された前記他の保管物を前記保管棚に戻す他方返還工程とを備えている。
【0011】
この構成によると、保管棚にハンドの進退方向に沿って2つの保管物を載置することができる収納能力の高いストッカにおいて、保管棚における移載すべき保管物よりもハンドの進退方向に関してスタッカ装置側に他の保管物が存在する場合であっても、移載すべき保管物のみをポートに移載することができる。
【0012】
本発明のスタッカ装置の制御方法では、前記ポートの前記進退方向に沿う長さが、複数の前記保管物が載置される長さであり、前記一方引渡工程が、前記ハンドに支持されている前記2つの保管物が前記ポートと鉛直方向に重なり合う位置まで前記ハンドを前進させた後に、当該2つの保管物が前記ポートに載置されるように前記ハンドを降下させることで、当該2つの保管物を前記ポートに載置する双方載置工程と、前記ハンドが、前記双方載置工程において前記ポートに載置された前記2つの保管物のうち、前記移載すべき保管物と対向せず、且つ前記他の保管物と対向する位置まで前記ハンドを後退させた後、当該他の保管物が持ち上がる位置まで前記ハンドを上昇させることで、当該他の保管物を持ち上げる持替工程とを含んでいてもよい。これにより、一方引渡工程において、移載すべき保管物のみをポートに載置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるストッカの水平断面図である。図2は図1のII-II線に沿う断面図であり、図3は図1のIII-III線に沿う断面図である。
【0014】
本実施の形態のストッカ1は、半導体の製造が行われるクリーンルーム内に設置されており、例えば、半導体を製造する際に使用するマスクが収納されたレチクルケースや、半導体ウェーハが収納されたFOUP(Front Opening Unified Pod)等の保管物9を一時的に保管するものである。図1〜図3に示すように、ストッカ1は、略直方体形状の筐体7の内部に設けられた、保管中の保管物9が載置される保管棚2と、ストッカ1に対して入出庫させる保管物9が載置されるポート3と、保管棚2とポート3との間で保管物9の移載を行うスタッカ装置4とを有している。
【0015】
保管棚2は、筐体7の短手方向(図1においては上下方向、図3においては左右方向)両側に設けられており、筐体7の長手方向(図1、2においては左右方向)に伸延している。すなわち、保管棚2は、筐体7の短手方向に関して所定の間隔を隔てつつ設けられている。また、本実施の形態では、保管棚2は、図2、3に示すように、上下方向に7段設けられている。つまり、保管棚2は、合計で14段設けられている。ここで、本実施の形態においては、上下方向に設けられた7段の保管棚2に対して、上方から順にT〜Zのアドレスが割り振られている。図3に示すように、筐体7の短手方向両側にそれぞれ設けられたアドレスT〜Zのいずれかに対応する2つの保管棚2は、互いに同一の高さレベルに位置している。なお、図1は、アドレスVの保管棚2を上方から見た図になっている。
【0016】
各保管棚2には、その伸延方向に沿って並べられた保管物9の列が、当該列に直交する方向に2列形成されるように、複数の保管物9が載置される。すなわち、各保管棚2には、その伸延方向と直交する方向に沿って2つの保管物9が載置されるようになっている。本実施の形態においては、保管棚2の伸延方向に沿って13個の保管物9が載置されるようになっており、図1、2における左側から順に、10〜22のアドレスが割り振られている。また、筐体7の短手方向一方側(図1においては上方、図3においては左方)に設けられた保管棚2には、当該一方側から順にA、Bのアドレスが割り振られており、筐体7の短手方向他方側(図1においては下方、図3においては右方)に設けられた保管棚2には、当該他方側とは反対側から順にC、Dのアドレスが割り振られている。
【0017】
上述のように、保管棚2には上下方向に沿ってT〜Z、また筐体7の長手方向に沿って10〜22、さらに筐体7の短手方向に沿ってA〜Dのアドレスが割り振られているので、これらを組み合わせることで、保管棚2における保管物9の載置位置を特定することができる。例えば、図1において網掛けされた保管物9の載置位置のアドレスは、V−19−Aであり、黒塗りされた保管物9の載置位置のアドレスは、V−14−Cである。
【0018】
なお、図1における破線で囲まれた部分の拡大図である図4に示すように、保管棚2におけるその伸延方向に沿って割り振られた10〜22のアドレスに対応する箇所には、保管棚2の伸延方向と直交する方向に延びる切欠2aがそれぞれ形成されている。そして、保管棚2に載置される保管物9は、切欠2aを跨ぐように載置される。すなわち、保管物9は、その下面9a(図2、3参照)における保管棚2の長手方向(図中左右方向)に関する両端部近傍を支持された状態で保管棚2に載置されている。
【0019】
筐体7の長手方向一端側(図1、2において左側)の側壁には、外部と連通する開口7aが形成されている。そして、筐体7の開口7aが形成された側壁と、筐体7の短手方向に関して互いに対向する保管棚2の間に形成された筐体7の長手方向に延在する空間の一端側(図1、2における左側)との間に、ポート3が設けられている。図1に示すように、ポート3には、筐体7の長手方向及び短手方向にそれぞれ2つずつ、合計4つの保管物9を載置することができるようになっている。ポート3における保管物9の載置位置にも、保管棚2と同様にアドレスが割り振られている。すなわち、筐体7の長手方向に沿って図1中左側から順に30、31、短手方向に沿って図1中上方から順にa、bのアドレスが割り振られている。
【0020】
なお、本実施の形態においては、ストッカ1から出庫される保管物9は、ポート3のアドレス30−a、31−aに載置され、ストッカ1に入庫される保管物9は、ポート3のアドレス30−b、31−bに載置されるようになっている。また、ポート3に載置された保管物9は、保管棚2に載置された保管物9と同様に、その下面9aにおける筐体7の短手方向両端部近傍を支持された状態で載置されている。
【0021】
筐体7の短手方向両側に配置された保管棚2の間には、筐体7の長手方向に延びる走行レール上6が敷設されており、スタッカ装置4は、走行レール上6上を走行する走行台車42を有している。これにより、スタッカ装置4は、筐体7の長手方向に沿って保管棚2と対向しつつ走行することができるようになっている。すなわち、筐体7の短手方向両側に配置された保管棚2の間は、スタッカ装置4の走行路となっている。また、走行台車42上には、昇降機構43の駆動によって昇降する昇降台44を支持する昇降コラム45が立設されている。さらに、昇降台44上には、リンク機構46を介して、保管物9を持ち上げて運搬するハンド47が設けられている。
【0022】
リンク機構46は、図4に示すように、昇降台44の上面に固定された固定アーム46aと、固定アーム46aの上面において、その一端を中心に水平面内で回転可能となるように取り付けられた第1回転アーム46bと、第1回転アーム46bの他端において、その一端を中心に水平面内において回転可能となるように取り付けられた第2回転アーム46cとを含んでいる。そして、第2回転アーム46cの他端には、ハンド47が一端を中心に水平面内において回転可能となるように取り付けられている。かかるリンク機構46により、ハンド47は、水平方向に沿って移動可能となっている。本実施の形態においては、リンク機構46は、後述するリンク制御部54(図1参照)の制御により、ハンド47を筐体7の長手方向又は短手方向に沿って進退させ、また、固定アーム46aの上面に取り付けられた第1回転アーム46bの一端を中心に回転させる。
【0023】
ハンド47は、上述のようにその両端が支持されるように保管棚2又はポート3に載置された保管物9の下面における支持されない箇所を支持する、上方に向いた矩形形状の当接面47aを有する板状の部材である。当接面47aの長手方向に沿う長さは、保管棚2のアドレスA及びB、又はアドレスC及びD、或いはポート3のアドレス30、31にそれぞれ対応する2つの載置領域に跨る長さ以上である。そして、ハンド47は、リンク機構46により、保管棚2への保管物9の受け渡しを行う場合には、当接面47aの長手方向が筐体7の短手方向と一致する状態で、筐体7の短手方向に沿って進退する。また、ポート3への保管物の受け渡しを行う場合には、当接面47aの長手方向が筐体7の長手方向と一致する状態で、筐体7の長手方向に沿って進退するようになっている。
【0024】
また、スタッカ装置4は、図1に示すコントローラ5によって制御される。コントローラ5は、保管棚2における載置位置を特定するためのアドレス(T〜Z、10〜22、及びA〜Dの組合せ)、及びポート3における載置位置を特定するためのアドレス(30、31、及びa、bの組合せ)と、各アドレスの位置(上下方向の位置、筐体7の長手方向に沿う位置、及び筐体7の短手方向に沿う位置)とが記憶されたアドレス記憶部51を有している。さらに、コントローラ5は、走行台車42の駆動を制御する走行制御部52と、昇降機構43の駆動を制御する昇降制御部53と、リンク機構46の駆動を制御するリンク制御部54とを有している。走行制御部52、昇降制御部53、及びリンク制御部54は、アドレス記憶部51に記憶されている各アドレスの位置情報に基づいて制御を行う。
【0025】
なお、図1に示すように、保管棚2の筐体7の短手方向に沿う長さは740mmである。そして、保管棚2は、筐体7の短手方向に関して870mmの間隔を隔てて、スタッカ装置4の走行路の両側に配置されている。すなわち、ストッカ1の幅(筐体7の短手方向に沿う長さ)は、2350mmである。ここで、本実施の形態のストッカ1は、幅が2350mmであり、同一の高さレベルにおいてその幅方向に沿って4つの保管物9を保管することができる。つまり、保管物9の1個当たりに要する幅は、587.5mmである。
【0026】
次に、保管棚2に載置された保管物9をポート3に移載する際の手順について説明する。なお、本実施の形態においては、スタッカ装置4が移載動作を行っていない時は、走行台車42は、走行レール6のポート3側とは反対側(図1、2において図中右側)の端部である初期位置に位置していることとする。また、このとき、ハンド47は、スタッカ装置4の走行路内に位置するように、引っ込められている。
【0027】
まず、図5に示すフローチャートを参照しつつ、移載対象の保管物9よりも保管棚2の伸延方向と直交する方向に関してスタッカ装置4側(手前側)に他の保管物9が存在しない場合の移載手順の一例として、図1に示す黒塗りされた保管物9(アドレス:V−14−C)を移載する場合について説明する。なお、移載対象の保管物9よりも手前側に他の保管物9が存在しない場合とは、黒塗りされた保管物9のように、アドレスB又はアドレスCに位置する保管物9が移載対象である場合の他に、アドレスA又はアドレスDに位置する保管物9が移載対象であって、アドレスB又はアドレスCに他の保管物9が存在しない場合、及びアドレスA、B、又はアドレスC、Dに位置する2つの保管物9が移載対象である場合がある。
【0028】
最初に、走行制御部52の制御により、走行台車42を初期位置からアドレス14の近傍である所定位置まで走行させる(S1)。続いて、昇降制御部53の制御により、昇降台44を所定位置まで昇降させる。より詳細には、図6(a)に示すように、ハンド47の当接面47aが、アドレスVの高さ位置よりも若干下方となる位置に合わせる。そして、リンク制御部54の制御により、図6(b)に示すように、ハンド47の当接面47aが、移載対象の保管物9の下面9aと対向する位置まで、ハンド47を前進させる。なお、このとき、ハンドの当接面47aは、ハンド47の進退方向に対して、移載対象の保管物9の奥側にある保管物9(アドレスV−14−Dに位置する保管物9)の下面9aとは対向しない。さらに、昇降制御部53の制御により、移載対象の保管物9が持ち上がる位置まで、昇降台44を上昇させる。より詳細には、図6(c)に示すように、ハンド47の当接面47aが、アドレスVの高さ位置よりも若干上方となる位置に合わせる。その後、リンク制御部54の制御により、ハンド47を後退させて走行路内に引っ込める。このようにして、移載対象の保管物9をハンド47に受け取らせる(S2:対象受取工程)。
【0029】
次に、ハンド47の先端がポート3側を向くように、ハンド47を90°回転させ、昇降制御部53の制御により昇降台44を昇降させる。より詳細には、ハンド47の当接面47aが、ポート3の高さよりも若干上方となる位置に合わせる。その後、走行制御部52の制御により、走行台車42をポート3近傍まで走行させる。このようにして、保管棚2からポート3まで移載対象の保管物9が運搬される(S3:対象運搬工程)。続いて、リンク制御部54の制御により、図7(a)に示すように、支持している移載対象の保管物9が、ポート3のアドレス30−aと鉛直方向に重なる位置までハンド47前進させてから、昇降制御部53の制御により、図7(b)に示すように、移載対象の保管物9がポート3に載置されるまで、昇降台44を降下させる。すなわち、ハンド47の当接面47aが、ポート3の高さよりも若干下方となる位置まで降下させる。そして、リンク制御部54の制御により、ハンド47を後退させて走行路内に引っ込める。このようにして、移載対象の保管物9をポート3に受け渡す(S4:対象引渡工程)。なお、ポート3のアドレス30−aに他の保管物9が載置されている場合等には、移載対象の保管物9はアドレス31−aに載置される。
【0030】
続いて、図8に示すフローチャートを参照しつつ、移載対象の保管物9よりも保管棚2の伸延方向と直交する方向に関してスタッカ装置4側(手前側)に他の保管物9が存在する場合、すなわちアドレスA又はアドレスDに位置する保管物9が移載対象であって、アドレスB又はアドレスCに他の保管物9が存在する場合の移載手順の一例として、図1に示す網掛けされた保管物9(アドレス:V−19−A)を移載する場合について説明する。
【0031】
まず、上述の手順と同様に、走行台車42を初期位置からアドレス19の近傍である所定位置まで走行させる(S11)。そして、図9(a)に示すように、ハンド47を所定の高さ位置に合わせた後、図9(b)に示すように、ハンド47の当接面47aが、移載対象の保管物9の下面9aと対向する位置まで、ハンド47を前進させる。さらに、図9(c)に示すように、移載対象の保管物9が持ち上がる位置まで、ハンド47を上昇させる。このとき、アドレスV−19−Bに位置する縦縞模様の他の保管物9も移載対象の保管物9と一緒に持ち上げられることとなる。その後、ハンド47を後退させて走行路内に引っ込める。このようにして、2つの保管物9をハンド47に受け取らせる(S12:双方受取工程)。
【0032】
その後、ハンド47の先端がポート3側を向くように、ハンド47を90°回転させ、ハンド47の当接面47aが、ポート3の高さよりも若干上方となる位置に合わせてから、走行台車42をポート3近傍まで走行させる。このようにして、保管棚2からポート3まで2つの保管物9が運搬される(S13:双方運搬工程)。
【0033】
続いて、図10(a)に示すように、支持している移載対象の保管物9が、ポート3のアドレス30−aと鉛直方向に重なる位置までハンド47を前進させる。このとき、ハンド47に支持されている他の保管物9は、アドレス31−aと鉛直方向に重なることとなる。その後、図10(b)に示すように、ハンド47に支持されている2つの保管物9がポート3に載置されるまで、ハンド47を降下させる。このとき、移載対象の保管物9はアドレス30−aに載置され、他の保管物9はアドレス31−aに載置される(S14:双方載置工程)。次に、ハンド47を、図10(c)に示すように、移載対象の保管物9と対向せず、且つ他の保管物9と対向する位置まで後退させる。さらに、図10(d)に示すように、他の保管物9が持ち上がる位置まで、ハンド47を上昇させる。これにより、図10(a)に示すように、当接面47aにおけるハンド47の進退方向に関して手前側で支持されていた他の保管物9が、当接面47aにおけるハンド47の前進方向に関して奥側に持ち替えられることとなる(S15:持替工程)。その後、ハンド47を後退させて走行路内に引っ込める。このようにして、双方受取工程においてハンド47が受け取った2つの保管物9のうち、移載対象の保管物9のみがポート3に載置されることとなる(一方引渡工程)。
【0034】
さらに、ハンド47が他の保管物9を支持した状態で、走行台車42をアドレス19の近傍である所定位置まで走行させた後、ハンド47の先端が図1中上方の保管棚2側を向くように、ハンド47を90°回転させ、図11(a)に示すように、ハンド47の当接面47aが、アドレスVの高さよりも若干上方となる位置に合わせする(S16:他方運搬工程)。そして、図11(b)に示すように、支持している他の保管物9が、保管棚2のアドレスV−19−Bと鉛直方向に重なる位置までハンド47を前進させる。続いて、図11(c)に示すように、ハンド47に支持されている保管物9が保管棚2に載置されるまで、ハンド47を降下させる。そして、ハンド47を後退させて走行路内に引っ込める。このようにして、他の保管物9を保管棚2の元の位置(アドレスV−19−B)に返還する(S17:他方返還工程)。
【0035】
なお、ポート3に載置された保管物9を保管棚2に移載する際には、上記の保管棚2からポート3に移載する際の動作において保管棚2とポート3とを入れ換えた動作を行えばよい。
【0036】
以上のように、本実施の形態では、保管棚2にハンド47の進退方向に沿って保管物9が載置される載置領域が2つ設けられている。したがって、載置領域がハンド47の進退方向に沿って1つしか設けられていない場合に比べて、ストッカ1の収納能力を高めることができる。また、保管物9の下面9aと当接する当接面47aにおけるハンド47の進退方向に沿う長さは、保管棚2においてハンド47の進退方向に沿って設けられる2つの載置領域に跨る長さ以上である。そして、ハンド47が、当接面47aが当該2つの載置領域のうち、スタッカ装置4側に位置する載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態と、当該2つの載置領域の両方と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態とを取り得る。これにより、ハンド47によって、当該2つの載置領域への保管物9受け渡しが可能となる。
【0037】
また、本実施の形態では、保管棚2及びポート3において、保管物9がその下面9aにおいてハンド47の進退方向と直交する方向に関する両端部を支持された状態で載置されている。したがって、ハンド47は、載置されている保管物9の下面9aにおける支持されていない箇所を当接面47aで支持しつつ、保管物9を掬い上げるように持ち上げることができる。
【0038】
加えて、本実施の形態では、スタッカ装置4の走行路を挟んで両側に保管棚2が設けられている。したがって、スタッカ装置4の走行路の一方側のみに保管棚2が設けられている場合に比べて、ストッカ1の収納能力をさらに高めることができる。
【0039】
さらに、本実施の形態では、保管棚2の奥側に載置された保管物9を移載する際には、まず移載対象の保管物9及び当該保管物9よりも手前側に位置する他の保管物9の2つの保管物9をハンド47に受け取らせ(双方受取工程)、次に2つの保管物9をポート3近傍まで運搬し(双方運搬工程)、続いて2つの保管物9のうち、移載対象の保管物9のみをポート3に移載し(一方引渡工程)、さらに他の保管物9を保管棚2における当該保管物9が載置されていた元の位置近傍まで運搬し(他方運搬工程)、最後に他の保管物9を保管棚2の元の位置に返還する(他方返還工程)。したがって、保管棚2にハンド47の進退方向に沿って2つの保管物9を載置することができる収納能力の高いストッカ1において、保管棚2における移載すべき保管物9よりもハンド47の進退方向に関して手前4側に他の保管物9が存在する場合であっても、移載すべき保管物9のみをポート3に移載することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、一方引渡工程において、ハンド47に支持されている2つの保管物9がポート3と鉛直方向に重なる位置までハンド47を前進させた後、ハンド47を降下させて2つの保管物9をポート3に載置する双方載置工程と、ハンド47を、移載対象の保管物9と対向せず、且つ他の保管物9と対向する位置まで後退させた後、ハンド47を上昇させて他の保管物9を持ち上げる持替工程とを行う。これにより、一方引渡工程において、移載すべき保管物9のみをポート3に載置することができる。
【0041】
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。
【0042】
上述の実施の形態では、保管棚2の伸延方向に沿って延びるスタッカ装置4の走行路の一端にポート3が設けられている場合について説明したが、ポート3の設置位置についてはこれに限定されない。例えば、ポート3は、保管棚2と鉛直方向に重なる位置に設けられていてもよい。なお、この場合、保管棚2におけるポート3と鉛直方向に重なる位置に載置された保管物9をポート3に移載する際の対象運搬工程又は双方運搬工程は、昇降制御部53の制御のみで行われる。
【0043】
また、上述の実施の形態では、ハンド47の当接面47aが保管物9の下面9aと当接する場合について説明したが、これには限定されない。保管物9のハンド47の当接面47aと当接する面は、下を向いた面であればよく、例えば、保管物9の両側面に突起が設けられており、その突起の下面がハンド47の当接面47aと当接するようになっていてもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態では、スタッカ装置4を挟んで両側に保管棚2が設けられている場合について説明したが、保管棚2は、スタッカ装置4の一方側にのみ設けられていてもよい。
【0045】
さらに、上述の実施の形態では、返還工程において、他の保管物9を保管棚2の元の位置(アドレスV−19−B)に返還する場合について説明したが、これには限られない。例えば、他の保管物9を保管棚2の奥側(アドレスV−19−A)に返還するようにしてもよい。
【0046】
加えて、上述の実施の形態では、一方引渡工程において、2つの保管物2をポート3に載置する双方載置工程と、一旦ポート3に載置した他の保管物9を再度持ち上げる持替工程とが行われる場合について説明したが、これには限定されない。例えば、一方引渡工程において、双方運搬工程において運搬された2つの保管物9のうち、移載すべき保管物9のみがポート3を鉛直方向に重なる位置までハンド47を前進させた後、当該保管物9がポート3に載置されるまでハンド47を降下させることによって、他の保管物9を一度もポート3に載置することなく、移載すべき保管物9のみをポート3に載置するようにしてもよい。
【0047】
(比較例)
ここで、図12を参照しつつ、本実施の形態の比較例について説明する。比較例にかかるストッカ101の構成が、本発明の実施の形態にかかるストッカ1の構成と主に異なる点は、本実施の形態のストッカ1では、保管棚2にハンド47の進退方向に沿って保管物9が載置される載置領域が2つ設けられているが、比較例のストッカ101では、保管棚102にハンド147の進退方向に沿って保管物9が載置される載置領域が1つしか設けられていない点である。その他の構成については、本実施の形態とほぼ同様である。
【0048】
図12に示すように、本比較例においては、保管棚102の筐体107の短手方向に沿う長さは440mmである。そして、保管棚102は、筐体107の短手方向に関して570mmの間隔を隔てて、スタッカ装置104の走行路の両側に配置されている。すなわち、ストッカ101の幅(筐体107の短手方向に沿う長さ)は、1450mmである。ここで、本比較例のストッカ101は、幅が1450mmであり、同一の高さレベルにおいてその幅方向に沿って2つの保管物9を保管することができる。つまり、保管物9の1個当たりに要する幅は、725mmである。
【0049】
ここで、上述のように、本実施の形態のストッカ1においては、保管物9の1個当たりに要する幅は、587.5mmである。すなわち、本実施の形態のストッカ1では、比較例のストッカ101に比べて、保管物9の1個当たりに要する幅が約2割削減されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態にかかるストッカの水平断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図1の部分拡大図である。
【図5】図1に示すスタッカ装置が保管棚の手前側に載置された保管物を移載する際の手順を示すフローチャートである。
【図6】図1に示すスタッカ装置が対象受取工程を行う際の様子を示す図である。
【図7】図1に示すスタッカ装置が対象引渡工程を行う際の様子を示す図である。
【図8】図1に示すスタッカ装置が保管棚の奥側に載置された保管物を移載する際の手順を示すフローチャートである。
【図9】図1に示すスタッカ装置が双方受取工程を行う際の様子を示す図である。
【図10】図1に示すスタッカ装置が一方引渡工程を行う際の様子を示す図である。
【図11】図1に示すスタッカ装置が他方返還工程を行う際の様子を示す図である。
【図12】比較例にかかるストッカの水平断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ストッカ
2 保管棚
3 ポート
4 スタッカ装置
9 保管物
9a 下面(被当接面)
42 走行台車(移動機構)
43 昇降機構
46 リンク機構(進退機構)
47 ハンド
47a 当接面
52 走行制御部(移動制御手段)
53 昇降制御部(昇降制御手段)
54 リンク制御部(進退制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、保管物を保管するストッカ、及びストッカにおけるスタッカ装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体の製造が行われるクリーンルーム内に設置されており、製造過程にある半導体材料を一時的に保管するストッカである保管棚装置が開示されている。かかる装置は、保管物が載置される棚と、外部との間で保管物の受け渡しを行うための受け渡し部と、棚と受け渡し部との間で保管物の移載を行うスタッカとを備えている。
【0003】
上記スタッカは、上方を向いた面を有するハンドと、ハンドを水平方向に進退させる進退機構と、ハンドを昇降させる昇降機構とを有している。棚には、ハンドの進退方向に関して1つの保管物が載置されている。そして、スタッカは、棚に載置されている保管物と鉛直方向に重なる位置までハンドを前進させた後、ハンドを上昇させることによって、保管物を掬い上げるようにして持ち上げる。
【特許文献1】特開平10−98094号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
クリーンルームは、スペース単価が高額である。したがって、上述のようにクリーンルーム内に設置される保管棚装置は、小さな占有面積でより多くの保管物を収納可能とすることが望まれている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、高い収納能力を有するストッカ、及び該ストッカにおけるスタッカ装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明のストッカは、一方向に沿って伸延しており保管中の保管物が載置される保管棚と、入出庫させる前記保管物が載置されるポートと、前記保管棚と前記ポートとの間で前記保管物の移載を行うスタッカ装置とを備えたストッカである。また、前記スタッカ装置は、前記保管物の下方を向いた被当接面を支持する上方を向いた当接面を有するハンド、前記ハンドを水平方向に進退させる進退機構、前記進退機構を制御する進退制御手段、前記ハンドを昇降させる昇降機構、前記昇降機構を制御する昇降制御手段、前記ハンドを前記一方向に沿って移動させる移動機構、及び前記移動機構を制御する移動制御手段を備えており、前記進退制御手段の制御により載置されている前記保管物の前記被当接面と前記当接面とが鉛直方向に重なる位置まで前記ハンドを前進させた後に、前記昇降制御手段の制御により前記保管物が持ち上がる位置まで前記ハンドを上昇させることによって前記保管物を持ち上げ、前記昇降制御手段及び前記移動制御手段の少なくともいずれか一方の制御により当該保管物を移載すべき箇所の近傍まで運搬するものである。そして、前記保管棚には、前記保管物がそれぞれ載置される第1載置領域及び第2載置領域が、前記ハンドの進退方向に沿って前記スタッカ装置側から順に形成されており、前記ハンドは、前記当接面の前記進退方向の長さが、前記第1及び第2載置領域に跨る長さ以上であり、前記第1載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態と、前記第1及び第2載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態とを取り得る。
【0007】
この構成によると、ハンドにより、第1及び第2載置領域への保管物の受け渡しを行うことができる。したがって、保管棚においてハンドの進退方向に沿って2つ設けられた第1及び第2載置領域に保管物をそれぞれ載置することができるので、ハンドの進退方向に沿って載置される保管物が1つである場合と比べて、ストッカの収納能力を高めることができる。
【0008】
本発明のストッカでは、前記保管棚及び前記ポートにおいて、前記保管物がその下面における前記進退方向と直交する方向に関する両端部を支持された状態で載置されており、前記保管物の下面が前記被当接面となっていてもよい。この構成によると、ハンドは、その当接面により、載置された状態の保管物の下面における支持されていない箇所を支持しつつ、保管物を下方から掬い上げるように持ち上げることができる。
【0009】
本発明のストッカは、前記スタッカ装置を挟んで両側に配置された2つの前記保管棚を備えていることが好ましい。この構成によると、スタッカ装置の一方側のみに保管棚が設けられている場合に比べて、ストッカの収納能力をさらに高めることができる。
【0010】
本発明のスタッカ装置の制御方法は、上述のいずれかのストッカにおけるスタッカ装置の制御方法であって、前記保管棚において、前記保管棚から前記ポートに移載すべき保管物よりも前記進退方向に関して前記スタッカ装置側に他の保管物が存在しない場合には、前記移載すべき保管物のみを前記ハンドに受け取らせる対象受取工程と、前記対象受取工程において受け取られた前記移載すべき保管物を前記ポート近傍まで運搬する対象運搬工程と、前記対象運搬工程において運搬された前記移載すべき保管物を前記ポートに載置する対象引渡工程とを備えている。また、前記他の保管物が存在する場合には、前記移載すべき保管物及び前記他の保管物の2つの保管物を前記ハンドに同時に受け取らせる双方受取工程と、前記双方受取工程において受け取られた前記2つの保管物を前記ポート近傍まで運搬する双方運搬工程と、前記双方運搬工程において運搬された前記2つの保管物のうち、前記移載すべき保管物を前記ポートに載置する一方引渡工程と、前記一方引渡工程において前記ポートに載置されなかった前記他の保管物を前記保管棚近傍まで運搬する他方運搬工程と、前記他方運搬工程において運搬された前記他の保管物を前記保管棚に戻す他方返還工程とを備えている。
【0011】
この構成によると、保管棚にハンドの進退方向に沿って2つの保管物を載置することができる収納能力の高いストッカにおいて、保管棚における移載すべき保管物よりもハンドの進退方向に関してスタッカ装置側に他の保管物が存在する場合であっても、移載すべき保管物のみをポートに移載することができる。
【0012】
本発明のスタッカ装置の制御方法では、前記ポートの前記進退方向に沿う長さが、複数の前記保管物が載置される長さであり、前記一方引渡工程が、前記ハンドに支持されている前記2つの保管物が前記ポートと鉛直方向に重なり合う位置まで前記ハンドを前進させた後に、当該2つの保管物が前記ポートに載置されるように前記ハンドを降下させることで、当該2つの保管物を前記ポートに載置する双方載置工程と、前記ハンドが、前記双方載置工程において前記ポートに載置された前記2つの保管物のうち、前記移載すべき保管物と対向せず、且つ前記他の保管物と対向する位置まで前記ハンドを後退させた後、当該他の保管物が持ち上がる位置まで前記ハンドを上昇させることで、当該他の保管物を持ち上げる持替工程とを含んでいてもよい。これにより、一方引渡工程において、移載すべき保管物のみをポートに載置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかるストッカの水平断面図である。図2は図1のII-II線に沿う断面図であり、図3は図1のIII-III線に沿う断面図である。
【0014】
本実施の形態のストッカ1は、半導体の製造が行われるクリーンルーム内に設置されており、例えば、半導体を製造する際に使用するマスクが収納されたレチクルケースや、半導体ウェーハが収納されたFOUP(Front Opening Unified Pod)等の保管物9を一時的に保管するものである。図1〜図3に示すように、ストッカ1は、略直方体形状の筐体7の内部に設けられた、保管中の保管物9が載置される保管棚2と、ストッカ1に対して入出庫させる保管物9が載置されるポート3と、保管棚2とポート3との間で保管物9の移載を行うスタッカ装置4とを有している。
【0015】
保管棚2は、筐体7の短手方向(図1においては上下方向、図3においては左右方向)両側に設けられており、筐体7の長手方向(図1、2においては左右方向)に伸延している。すなわち、保管棚2は、筐体7の短手方向に関して所定の間隔を隔てつつ設けられている。また、本実施の形態では、保管棚2は、図2、3に示すように、上下方向に7段設けられている。つまり、保管棚2は、合計で14段設けられている。ここで、本実施の形態においては、上下方向に設けられた7段の保管棚2に対して、上方から順にT〜Zのアドレスが割り振られている。図3に示すように、筐体7の短手方向両側にそれぞれ設けられたアドレスT〜Zのいずれかに対応する2つの保管棚2は、互いに同一の高さレベルに位置している。なお、図1は、アドレスVの保管棚2を上方から見た図になっている。
【0016】
各保管棚2には、その伸延方向に沿って並べられた保管物9の列が、当該列に直交する方向に2列形成されるように、複数の保管物9が載置される。すなわち、各保管棚2には、その伸延方向と直交する方向に沿って2つの保管物9が載置されるようになっている。本実施の形態においては、保管棚2の伸延方向に沿って13個の保管物9が載置されるようになっており、図1、2における左側から順に、10〜22のアドレスが割り振られている。また、筐体7の短手方向一方側(図1においては上方、図3においては左方)に設けられた保管棚2には、当該一方側から順にA、Bのアドレスが割り振られており、筐体7の短手方向他方側(図1においては下方、図3においては右方)に設けられた保管棚2には、当該他方側とは反対側から順にC、Dのアドレスが割り振られている。
【0017】
上述のように、保管棚2には上下方向に沿ってT〜Z、また筐体7の長手方向に沿って10〜22、さらに筐体7の短手方向に沿ってA〜Dのアドレスが割り振られているので、これらを組み合わせることで、保管棚2における保管物9の載置位置を特定することができる。例えば、図1において網掛けされた保管物9の載置位置のアドレスは、V−19−Aであり、黒塗りされた保管物9の載置位置のアドレスは、V−14−Cである。
【0018】
なお、図1における破線で囲まれた部分の拡大図である図4に示すように、保管棚2におけるその伸延方向に沿って割り振られた10〜22のアドレスに対応する箇所には、保管棚2の伸延方向と直交する方向に延びる切欠2aがそれぞれ形成されている。そして、保管棚2に載置される保管物9は、切欠2aを跨ぐように載置される。すなわち、保管物9は、その下面9a(図2、3参照)における保管棚2の長手方向(図中左右方向)に関する両端部近傍を支持された状態で保管棚2に載置されている。
【0019】
筐体7の長手方向一端側(図1、2において左側)の側壁には、外部と連通する開口7aが形成されている。そして、筐体7の開口7aが形成された側壁と、筐体7の短手方向に関して互いに対向する保管棚2の間に形成された筐体7の長手方向に延在する空間の一端側(図1、2における左側)との間に、ポート3が設けられている。図1に示すように、ポート3には、筐体7の長手方向及び短手方向にそれぞれ2つずつ、合計4つの保管物9を載置することができるようになっている。ポート3における保管物9の載置位置にも、保管棚2と同様にアドレスが割り振られている。すなわち、筐体7の長手方向に沿って図1中左側から順に30、31、短手方向に沿って図1中上方から順にa、bのアドレスが割り振られている。
【0020】
なお、本実施の形態においては、ストッカ1から出庫される保管物9は、ポート3のアドレス30−a、31−aに載置され、ストッカ1に入庫される保管物9は、ポート3のアドレス30−b、31−bに載置されるようになっている。また、ポート3に載置された保管物9は、保管棚2に載置された保管物9と同様に、その下面9aにおける筐体7の短手方向両端部近傍を支持された状態で載置されている。
【0021】
筐体7の短手方向両側に配置された保管棚2の間には、筐体7の長手方向に延びる走行レール上6が敷設されており、スタッカ装置4は、走行レール上6上を走行する走行台車42を有している。これにより、スタッカ装置4は、筐体7の長手方向に沿って保管棚2と対向しつつ走行することができるようになっている。すなわち、筐体7の短手方向両側に配置された保管棚2の間は、スタッカ装置4の走行路となっている。また、走行台車42上には、昇降機構43の駆動によって昇降する昇降台44を支持する昇降コラム45が立設されている。さらに、昇降台44上には、リンク機構46を介して、保管物9を持ち上げて運搬するハンド47が設けられている。
【0022】
リンク機構46は、図4に示すように、昇降台44の上面に固定された固定アーム46aと、固定アーム46aの上面において、その一端を中心に水平面内で回転可能となるように取り付けられた第1回転アーム46bと、第1回転アーム46bの他端において、その一端を中心に水平面内において回転可能となるように取り付けられた第2回転アーム46cとを含んでいる。そして、第2回転アーム46cの他端には、ハンド47が一端を中心に水平面内において回転可能となるように取り付けられている。かかるリンク機構46により、ハンド47は、水平方向に沿って移動可能となっている。本実施の形態においては、リンク機構46は、後述するリンク制御部54(図1参照)の制御により、ハンド47を筐体7の長手方向又は短手方向に沿って進退させ、また、固定アーム46aの上面に取り付けられた第1回転アーム46bの一端を中心に回転させる。
【0023】
ハンド47は、上述のようにその両端が支持されるように保管棚2又はポート3に載置された保管物9の下面における支持されない箇所を支持する、上方に向いた矩形形状の当接面47aを有する板状の部材である。当接面47aの長手方向に沿う長さは、保管棚2のアドレスA及びB、又はアドレスC及びD、或いはポート3のアドレス30、31にそれぞれ対応する2つの載置領域に跨る長さ以上である。そして、ハンド47は、リンク機構46により、保管棚2への保管物9の受け渡しを行う場合には、当接面47aの長手方向が筐体7の短手方向と一致する状態で、筐体7の短手方向に沿って進退する。また、ポート3への保管物の受け渡しを行う場合には、当接面47aの長手方向が筐体7の長手方向と一致する状態で、筐体7の長手方向に沿って進退するようになっている。
【0024】
また、スタッカ装置4は、図1に示すコントローラ5によって制御される。コントローラ5は、保管棚2における載置位置を特定するためのアドレス(T〜Z、10〜22、及びA〜Dの組合せ)、及びポート3における載置位置を特定するためのアドレス(30、31、及びa、bの組合せ)と、各アドレスの位置(上下方向の位置、筐体7の長手方向に沿う位置、及び筐体7の短手方向に沿う位置)とが記憶されたアドレス記憶部51を有している。さらに、コントローラ5は、走行台車42の駆動を制御する走行制御部52と、昇降機構43の駆動を制御する昇降制御部53と、リンク機構46の駆動を制御するリンク制御部54とを有している。走行制御部52、昇降制御部53、及びリンク制御部54は、アドレス記憶部51に記憶されている各アドレスの位置情報に基づいて制御を行う。
【0025】
なお、図1に示すように、保管棚2の筐体7の短手方向に沿う長さは740mmである。そして、保管棚2は、筐体7の短手方向に関して870mmの間隔を隔てて、スタッカ装置4の走行路の両側に配置されている。すなわち、ストッカ1の幅(筐体7の短手方向に沿う長さ)は、2350mmである。ここで、本実施の形態のストッカ1は、幅が2350mmであり、同一の高さレベルにおいてその幅方向に沿って4つの保管物9を保管することができる。つまり、保管物9の1個当たりに要する幅は、587.5mmである。
【0026】
次に、保管棚2に載置された保管物9をポート3に移載する際の手順について説明する。なお、本実施の形態においては、スタッカ装置4が移載動作を行っていない時は、走行台車42は、走行レール6のポート3側とは反対側(図1、2において図中右側)の端部である初期位置に位置していることとする。また、このとき、ハンド47は、スタッカ装置4の走行路内に位置するように、引っ込められている。
【0027】
まず、図5に示すフローチャートを参照しつつ、移載対象の保管物9よりも保管棚2の伸延方向と直交する方向に関してスタッカ装置4側(手前側)に他の保管物9が存在しない場合の移載手順の一例として、図1に示す黒塗りされた保管物9(アドレス:V−14−C)を移載する場合について説明する。なお、移載対象の保管物9よりも手前側に他の保管物9が存在しない場合とは、黒塗りされた保管物9のように、アドレスB又はアドレスCに位置する保管物9が移載対象である場合の他に、アドレスA又はアドレスDに位置する保管物9が移載対象であって、アドレスB又はアドレスCに他の保管物9が存在しない場合、及びアドレスA、B、又はアドレスC、Dに位置する2つの保管物9が移載対象である場合がある。
【0028】
最初に、走行制御部52の制御により、走行台車42を初期位置からアドレス14の近傍である所定位置まで走行させる(S1)。続いて、昇降制御部53の制御により、昇降台44を所定位置まで昇降させる。より詳細には、図6(a)に示すように、ハンド47の当接面47aが、アドレスVの高さ位置よりも若干下方となる位置に合わせる。そして、リンク制御部54の制御により、図6(b)に示すように、ハンド47の当接面47aが、移載対象の保管物9の下面9aと対向する位置まで、ハンド47を前進させる。なお、このとき、ハンドの当接面47aは、ハンド47の進退方向に対して、移載対象の保管物9の奥側にある保管物9(アドレスV−14−Dに位置する保管物9)の下面9aとは対向しない。さらに、昇降制御部53の制御により、移載対象の保管物9が持ち上がる位置まで、昇降台44を上昇させる。より詳細には、図6(c)に示すように、ハンド47の当接面47aが、アドレスVの高さ位置よりも若干上方となる位置に合わせる。その後、リンク制御部54の制御により、ハンド47を後退させて走行路内に引っ込める。このようにして、移載対象の保管物9をハンド47に受け取らせる(S2:対象受取工程)。
【0029】
次に、ハンド47の先端がポート3側を向くように、ハンド47を90°回転させ、昇降制御部53の制御により昇降台44を昇降させる。より詳細には、ハンド47の当接面47aが、ポート3の高さよりも若干上方となる位置に合わせる。その後、走行制御部52の制御により、走行台車42をポート3近傍まで走行させる。このようにして、保管棚2からポート3まで移載対象の保管物9が運搬される(S3:対象運搬工程)。続いて、リンク制御部54の制御により、図7(a)に示すように、支持している移載対象の保管物9が、ポート3のアドレス30−aと鉛直方向に重なる位置までハンド47前進させてから、昇降制御部53の制御により、図7(b)に示すように、移載対象の保管物9がポート3に載置されるまで、昇降台44を降下させる。すなわち、ハンド47の当接面47aが、ポート3の高さよりも若干下方となる位置まで降下させる。そして、リンク制御部54の制御により、ハンド47を後退させて走行路内に引っ込める。このようにして、移載対象の保管物9をポート3に受け渡す(S4:対象引渡工程)。なお、ポート3のアドレス30−aに他の保管物9が載置されている場合等には、移載対象の保管物9はアドレス31−aに載置される。
【0030】
続いて、図8に示すフローチャートを参照しつつ、移載対象の保管物9よりも保管棚2の伸延方向と直交する方向に関してスタッカ装置4側(手前側)に他の保管物9が存在する場合、すなわちアドレスA又はアドレスDに位置する保管物9が移載対象であって、アドレスB又はアドレスCに他の保管物9が存在する場合の移載手順の一例として、図1に示す網掛けされた保管物9(アドレス:V−19−A)を移載する場合について説明する。
【0031】
まず、上述の手順と同様に、走行台車42を初期位置からアドレス19の近傍である所定位置まで走行させる(S11)。そして、図9(a)に示すように、ハンド47を所定の高さ位置に合わせた後、図9(b)に示すように、ハンド47の当接面47aが、移載対象の保管物9の下面9aと対向する位置まで、ハンド47を前進させる。さらに、図9(c)に示すように、移載対象の保管物9が持ち上がる位置まで、ハンド47を上昇させる。このとき、アドレスV−19−Bに位置する縦縞模様の他の保管物9も移載対象の保管物9と一緒に持ち上げられることとなる。その後、ハンド47を後退させて走行路内に引っ込める。このようにして、2つの保管物9をハンド47に受け取らせる(S12:双方受取工程)。
【0032】
その後、ハンド47の先端がポート3側を向くように、ハンド47を90°回転させ、ハンド47の当接面47aが、ポート3の高さよりも若干上方となる位置に合わせてから、走行台車42をポート3近傍まで走行させる。このようにして、保管棚2からポート3まで2つの保管物9が運搬される(S13:双方運搬工程)。
【0033】
続いて、図10(a)に示すように、支持している移載対象の保管物9が、ポート3のアドレス30−aと鉛直方向に重なる位置までハンド47を前進させる。このとき、ハンド47に支持されている他の保管物9は、アドレス31−aと鉛直方向に重なることとなる。その後、図10(b)に示すように、ハンド47に支持されている2つの保管物9がポート3に載置されるまで、ハンド47を降下させる。このとき、移載対象の保管物9はアドレス30−aに載置され、他の保管物9はアドレス31−aに載置される(S14:双方載置工程)。次に、ハンド47を、図10(c)に示すように、移載対象の保管物9と対向せず、且つ他の保管物9と対向する位置まで後退させる。さらに、図10(d)に示すように、他の保管物9が持ち上がる位置まで、ハンド47を上昇させる。これにより、図10(a)に示すように、当接面47aにおけるハンド47の進退方向に関して手前側で支持されていた他の保管物9が、当接面47aにおけるハンド47の前進方向に関して奥側に持ち替えられることとなる(S15:持替工程)。その後、ハンド47を後退させて走行路内に引っ込める。このようにして、双方受取工程においてハンド47が受け取った2つの保管物9のうち、移載対象の保管物9のみがポート3に載置されることとなる(一方引渡工程)。
【0034】
さらに、ハンド47が他の保管物9を支持した状態で、走行台車42をアドレス19の近傍である所定位置まで走行させた後、ハンド47の先端が図1中上方の保管棚2側を向くように、ハンド47を90°回転させ、図11(a)に示すように、ハンド47の当接面47aが、アドレスVの高さよりも若干上方となる位置に合わせする(S16:他方運搬工程)。そして、図11(b)に示すように、支持している他の保管物9が、保管棚2のアドレスV−19−Bと鉛直方向に重なる位置までハンド47を前進させる。続いて、図11(c)に示すように、ハンド47に支持されている保管物9が保管棚2に載置されるまで、ハンド47を降下させる。そして、ハンド47を後退させて走行路内に引っ込める。このようにして、他の保管物9を保管棚2の元の位置(アドレスV−19−B)に返還する(S17:他方返還工程)。
【0035】
なお、ポート3に載置された保管物9を保管棚2に移載する際には、上記の保管棚2からポート3に移載する際の動作において保管棚2とポート3とを入れ換えた動作を行えばよい。
【0036】
以上のように、本実施の形態では、保管棚2にハンド47の進退方向に沿って保管物9が載置される載置領域が2つ設けられている。したがって、載置領域がハンド47の進退方向に沿って1つしか設けられていない場合に比べて、ストッカ1の収納能力を高めることができる。また、保管物9の下面9aと当接する当接面47aにおけるハンド47の進退方向に沿う長さは、保管棚2においてハンド47の進退方向に沿って設けられる2つの載置領域に跨る長さ以上である。そして、ハンド47が、当接面47aが当該2つの載置領域のうち、スタッカ装置4側に位置する載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態と、当該2つの載置領域の両方と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態とを取り得る。これにより、ハンド47によって、当該2つの載置領域への保管物9受け渡しが可能となる。
【0037】
また、本実施の形態では、保管棚2及びポート3において、保管物9がその下面9aにおいてハンド47の進退方向と直交する方向に関する両端部を支持された状態で載置されている。したがって、ハンド47は、載置されている保管物9の下面9aにおける支持されていない箇所を当接面47aで支持しつつ、保管物9を掬い上げるように持ち上げることができる。
【0038】
加えて、本実施の形態では、スタッカ装置4の走行路を挟んで両側に保管棚2が設けられている。したがって、スタッカ装置4の走行路の一方側のみに保管棚2が設けられている場合に比べて、ストッカ1の収納能力をさらに高めることができる。
【0039】
さらに、本実施の形態では、保管棚2の奥側に載置された保管物9を移載する際には、まず移載対象の保管物9及び当該保管物9よりも手前側に位置する他の保管物9の2つの保管物9をハンド47に受け取らせ(双方受取工程)、次に2つの保管物9をポート3近傍まで運搬し(双方運搬工程)、続いて2つの保管物9のうち、移載対象の保管物9のみをポート3に移載し(一方引渡工程)、さらに他の保管物9を保管棚2における当該保管物9が載置されていた元の位置近傍まで運搬し(他方運搬工程)、最後に他の保管物9を保管棚2の元の位置に返還する(他方返還工程)。したがって、保管棚2にハンド47の進退方向に沿って2つの保管物9を載置することができる収納能力の高いストッカ1において、保管棚2における移載すべき保管物9よりもハンド47の進退方向に関して手前4側に他の保管物9が存在する場合であっても、移載すべき保管物9のみをポート3に移載することができる。
【0040】
また、本実施の形態では、一方引渡工程において、ハンド47に支持されている2つの保管物9がポート3と鉛直方向に重なる位置までハンド47を前進させた後、ハンド47を降下させて2つの保管物9をポート3に載置する双方載置工程と、ハンド47を、移載対象の保管物9と対向せず、且つ他の保管物9と対向する位置まで後退させた後、ハンド47を上昇させて他の保管物9を持ち上げる持替工程とを行う。これにより、一方引渡工程において、移載すべき保管物9のみをポート3に載置することができる。
【0041】
以上、本発明の好適な一実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能なものである。
【0042】
上述の実施の形態では、保管棚2の伸延方向に沿って延びるスタッカ装置4の走行路の一端にポート3が設けられている場合について説明したが、ポート3の設置位置についてはこれに限定されない。例えば、ポート3は、保管棚2と鉛直方向に重なる位置に設けられていてもよい。なお、この場合、保管棚2におけるポート3と鉛直方向に重なる位置に載置された保管物9をポート3に移載する際の対象運搬工程又は双方運搬工程は、昇降制御部53の制御のみで行われる。
【0043】
また、上述の実施の形態では、ハンド47の当接面47aが保管物9の下面9aと当接する場合について説明したが、これには限定されない。保管物9のハンド47の当接面47aと当接する面は、下を向いた面であればよく、例えば、保管物9の両側面に突起が設けられており、その突起の下面がハンド47の当接面47aと当接するようになっていてもよい。
【0044】
また、上述の実施の形態では、スタッカ装置4を挟んで両側に保管棚2が設けられている場合について説明したが、保管棚2は、スタッカ装置4の一方側にのみ設けられていてもよい。
【0045】
さらに、上述の実施の形態では、返還工程において、他の保管物9を保管棚2の元の位置(アドレスV−19−B)に返還する場合について説明したが、これには限られない。例えば、他の保管物9を保管棚2の奥側(アドレスV−19−A)に返還するようにしてもよい。
【0046】
加えて、上述の実施の形態では、一方引渡工程において、2つの保管物2をポート3に載置する双方載置工程と、一旦ポート3に載置した他の保管物9を再度持ち上げる持替工程とが行われる場合について説明したが、これには限定されない。例えば、一方引渡工程において、双方運搬工程において運搬された2つの保管物9のうち、移載すべき保管物9のみがポート3を鉛直方向に重なる位置までハンド47を前進させた後、当該保管物9がポート3に載置されるまでハンド47を降下させることによって、他の保管物9を一度もポート3に載置することなく、移載すべき保管物9のみをポート3に載置するようにしてもよい。
【0047】
(比較例)
ここで、図12を参照しつつ、本実施の形態の比較例について説明する。比較例にかかるストッカ101の構成が、本発明の実施の形態にかかるストッカ1の構成と主に異なる点は、本実施の形態のストッカ1では、保管棚2にハンド47の進退方向に沿って保管物9が載置される載置領域が2つ設けられているが、比較例のストッカ101では、保管棚102にハンド147の進退方向に沿って保管物9が載置される載置領域が1つしか設けられていない点である。その他の構成については、本実施の形態とほぼ同様である。
【0048】
図12に示すように、本比較例においては、保管棚102の筐体107の短手方向に沿う長さは440mmである。そして、保管棚102は、筐体107の短手方向に関して570mmの間隔を隔てて、スタッカ装置104の走行路の両側に配置されている。すなわち、ストッカ101の幅(筐体107の短手方向に沿う長さ)は、1450mmである。ここで、本比較例のストッカ101は、幅が1450mmであり、同一の高さレベルにおいてその幅方向に沿って2つの保管物9を保管することができる。つまり、保管物9の1個当たりに要する幅は、725mmである。
【0049】
ここで、上述のように、本実施の形態のストッカ1においては、保管物9の1個当たりに要する幅は、587.5mmである。すなわち、本実施の形態のストッカ1では、比較例のストッカ101に比べて、保管物9の1個当たりに要する幅が約2割削減されている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態にかかるストッカの水平断面図である。
【図2】図1のII-II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII-III線に沿う断面図である。
【図4】図1の部分拡大図である。
【図5】図1に示すスタッカ装置が保管棚の手前側に載置された保管物を移載する際の手順を示すフローチャートである。
【図6】図1に示すスタッカ装置が対象受取工程を行う際の様子を示す図である。
【図7】図1に示すスタッカ装置が対象引渡工程を行う際の様子を示す図である。
【図8】図1に示すスタッカ装置が保管棚の奥側に載置された保管物を移載する際の手順を示すフローチャートである。
【図9】図1に示すスタッカ装置が双方受取工程を行う際の様子を示す図である。
【図10】図1に示すスタッカ装置が一方引渡工程を行う際の様子を示す図である。
【図11】図1に示すスタッカ装置が他方返還工程を行う際の様子を示す図である。
【図12】比較例にかかるストッカの水平断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ストッカ
2 保管棚
3 ポート
4 スタッカ装置
9 保管物
9a 下面(被当接面)
42 走行台車(移動機構)
43 昇降機構
46 リンク機構(進退機構)
47 ハンド
47a 当接面
52 走行制御部(移動制御手段)
53 昇降制御部(昇降制御手段)
54 リンク制御部(進退制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に沿って伸延しており保管中の保管物が載置される保管棚と、入出庫させる前記保管物が載置されるポートと、前記保管棚と前記ポートとの間で前記保管物の移載を行うスタッカ装置とを備えたストッカであって、
前記スタッカ装置は、前記保管物の下方を向いた被当接面を支持する上方を向いた当接面を有するハンド、前記ハンドを水平方向に進退させる進退機構、前記進退機構を制御する進退制御手段、前記ハンドを昇降させる昇降機構、前記昇降機構を制御する昇降制御手段、前記ハンドを前記一方向に沿って移動させる移動機構、及び前記移動機構を制御する移動制御手段を備えており、前記進退制御手段の制御により載置されている前記保管物の前記被当接面と前記当接面とが鉛直方向に重なる位置まで前記ハンドを前進させた後に、前記昇降制御手段の制御により前記保管物が持ち上がる位置まで前記ハンドを上昇させることによって前記保管物を持ち上げ、前記昇降制御手段及び前記移動制御手段の少なくともいずれか一方の制御により当該保管物を移載すべき箇所の近傍まで運搬するものであり、
前記保管棚には、前記保管物がそれぞれ載置される第1載置領域及び第2載置領域が、前記ハンドの進退方向に沿って前記スタッカ装置側から順に形成されており、
前記ハンドは、前記当接面の前記進退方向の長さが、前記第1及び第2載置領域に跨る長さ以上であり、前記第1載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態と、前記第1及び第2載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態とを取り得ることを特徴とするストッカ。
【請求項2】
前記保管棚及び前記ポートにおいて、前記保管物がその下面における前記進退方向と直交する方向に関する両端部を支持された状態で載置されており、
前記保管物の下面が前記被当接面となっていることを特徴とする請求項1に記載のストッカ。
【請求項3】
前記スタッカ装置を挟んで両側に配置された2つの前記保管棚を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のストッカ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のストッカにおけるスタッカ装置の制御方法であって、
前記保管棚において、前記保管棚から前記ポートに移載すべき保管物よりも前記進退方向に関して前記スタッカ装置側に他の保管物が存在しない場合には、
前記移載すべき保管物のみを前記ハンドに受け取らせる対象受取工程と、
前記対象受取工程において受け取られた前記移載すべき保管物を前記ポート近傍まで運搬する対象運搬工程と、
前記対象運搬工程において運搬された前記移載すべき保管物を前記ポートに載置する対象引渡工程とを備えており、
前記他の保管物が存在する場合には、
前記移載すべき保管物及び前記他の保管物の2つの保管物を前記ハンドに同時に受け取らせる双方受取工程と、
前記双方受取工程において受け取られた前記2つの前記保管物を前記ポート近傍まで運搬する双方運搬工程と、
前記双方運搬工程において運搬された前記2つの保管物のうち、前記移載すべき保管物を前記ポートに載置する一方引渡工程と、
前記一方引渡工程において前記ポートに載置されなかった前記他の保管物を前記保管棚近傍まで運搬する他方運搬工程と、
前記他方運搬工程において運搬された前記他の保管物を前記保管棚に戻す他方返還工程とを備えていることを特徴とするスタッカ装置の制御方法。
【請求項5】
前記ポートの前記進退方向に沿う長さが、複数の前記保管物が載置される長さであり、
前記一方引渡工程が、
前記ハンドに支持されている前記2つの保管物が前記ポートと鉛直方向に重なり合う位置まで前記ハンドを前進させた後に、当該2つの保管物が前記ポートに載置されるように前記ハンドを降下させることで、当該2つの保管物を前記ポートに載置する双方載置工程と、
前記ハンドが、前記双方載置工程において前記ポートに載置された前記2つの保管物のうち、前記移載すべき保管物と対向せず、且つ前記他の保管物と対向する位置まで前記ハンドを後退させた後、当該他の保管物が持ち上がる位置まで前記ハンドを上昇させることで、当該他の保管物を持ち上げる持替工程とを含んでいることを特徴とする請求項4に記載のスタッカ装置の制御方法。
【請求項1】
一方向に沿って伸延しており保管中の保管物が載置される保管棚と、入出庫させる前記保管物が載置されるポートと、前記保管棚と前記ポートとの間で前記保管物の移載を行うスタッカ装置とを備えたストッカであって、
前記スタッカ装置は、前記保管物の下方を向いた被当接面を支持する上方を向いた当接面を有するハンド、前記ハンドを水平方向に進退させる進退機構、前記進退機構を制御する進退制御手段、前記ハンドを昇降させる昇降機構、前記昇降機構を制御する昇降制御手段、前記ハンドを前記一方向に沿って移動させる移動機構、及び前記移動機構を制御する移動制御手段を備えており、前記進退制御手段の制御により載置されている前記保管物の前記被当接面と前記当接面とが鉛直方向に重なる位置まで前記ハンドを前進させた後に、前記昇降制御手段の制御により前記保管物が持ち上がる位置まで前記ハンドを上昇させることによって前記保管物を持ち上げ、前記昇降制御手段及び前記移動制御手段の少なくともいずれか一方の制御により当該保管物を移載すべき箇所の近傍まで運搬するものであり、
前記保管棚には、前記保管物がそれぞれ載置される第1載置領域及び第2載置領域が、前記ハンドの進退方向に沿って前記スタッカ装置側から順に形成されており、
前記ハンドは、前記当接面の前記進退方向の長さが、前記第1及び第2載置領域に跨る長さ以上であり、前記第1載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態と、前記第1及び第2載置領域と鉛直方向に重なる位置まで前進する状態とを取り得ることを特徴とするストッカ。
【請求項2】
前記保管棚及び前記ポートにおいて、前記保管物がその下面における前記進退方向と直交する方向に関する両端部を支持された状態で載置されており、
前記保管物の下面が前記被当接面となっていることを特徴とする請求項1に記載のストッカ。
【請求項3】
前記スタッカ装置を挟んで両側に配置された2つの前記保管棚を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のストッカ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のストッカにおけるスタッカ装置の制御方法であって、
前記保管棚において、前記保管棚から前記ポートに移載すべき保管物よりも前記進退方向に関して前記スタッカ装置側に他の保管物が存在しない場合には、
前記移載すべき保管物のみを前記ハンドに受け取らせる対象受取工程と、
前記対象受取工程において受け取られた前記移載すべき保管物を前記ポート近傍まで運搬する対象運搬工程と、
前記対象運搬工程において運搬された前記移載すべき保管物を前記ポートに載置する対象引渡工程とを備えており、
前記他の保管物が存在する場合には、
前記移載すべき保管物及び前記他の保管物の2つの保管物を前記ハンドに同時に受け取らせる双方受取工程と、
前記双方受取工程において受け取られた前記2つの前記保管物を前記ポート近傍まで運搬する双方運搬工程と、
前記双方運搬工程において運搬された前記2つの保管物のうち、前記移載すべき保管物を前記ポートに載置する一方引渡工程と、
前記一方引渡工程において前記ポートに載置されなかった前記他の保管物を前記保管棚近傍まで運搬する他方運搬工程と、
前記他方運搬工程において運搬された前記他の保管物を前記保管棚に戻す他方返還工程とを備えていることを特徴とするスタッカ装置の制御方法。
【請求項5】
前記ポートの前記進退方向に沿う長さが、複数の前記保管物が載置される長さであり、
前記一方引渡工程が、
前記ハンドに支持されている前記2つの保管物が前記ポートと鉛直方向に重なり合う位置まで前記ハンドを前進させた後に、当該2つの保管物が前記ポートに載置されるように前記ハンドを降下させることで、当該2つの保管物を前記ポートに載置する双方載置工程と、
前記ハンドが、前記双方載置工程において前記ポートに載置された前記2つの保管物のうち、前記移載すべき保管物と対向せず、且つ前記他の保管物と対向する位置まで前記ハンドを後退させた後、当該他の保管物が持ち上がる位置まで前記ハンドを上昇させることで、当該他の保管物を持ち上げる持替工程とを含んでいることを特徴とする請求項4に記載のスタッカ装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−174335(P2008−174335A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8041(P2007−8041)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(302059274)アシスト テクノロジーズ ジャパン株式会社 (146)
【Fターム(参考)】
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