説明

スパイラル鋼管の製造方法および形状測定装置

【課題】スパイラル鋼管の製造工程において、鋼帯の成形・溶接後の鋼管の形状をオンラインで計測可能であるとともに、現状の設備を活用し極力簡単な設備改造で計測可能なスパイラル鋼管の製造方法および形状測定装置を提供する。
【解決手段】このスパイラル鋼管の形状測定装置は、鋼帯2を内面ローラー4および外面ローラー4を備える成形装置3を用いて管状に成形した後、鋼帯2の幅方向端面突合せ部をサブマージアーク溶接して鋼管7にするスパイラル鋼管の製造方法の溶接工程に用いられるスパイラル鋼管の形状測定装置であって、内面ローラー4を支持するマンドレル1の先端部に設けられて鋼管7の内面までの距離を非接触で測定する距離計17と、距離計17を鋼管7の周方向に回転させるモータ15と、距離計17の回転角を計測する回転角計測手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパイラル鋼管の製造工程中の鋼管の形状、すなわち鋼帯の成形・溶接後の鋼管の形状、とりわけ内周長をオンラインで計測可能なスパイラル鋼管の製造方法および形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパイラル鋼管は、素材である鋼帯を螺旋状に巻き曲げ成形しながら、その継ぎ目を溶接接合することにより連続的に製造される。そして、スパイラル鋼管の製造では、溶接位置の移動、溶接ギャップや管周長の変動、更にオフセット(溶接部の段差)を発生させながら鋼管の成形を行っている。これら変動原因の大半は、材料コイルの降伏点のばらつきやコイルキャンバー(蛇行)であり、いずれも予測し難い要因であるため、変動への対処はオペレーターの経験と習熟度に頼るところが多い。特に鋼管の周長、ギャップ、オフセットの3つは、相互に関連があり、品質に直結するものであるが、オンラインで連続的に計測することは、技術的にハードルが高く、実現できていないのが現状である。
【0003】
従来、スパイラル鋼管の周長の測定は、オペレーターが周長テープで行っているが、この方法では、オペレーターが測定のために高所に上がる必要がある。
一方、従来、鋼管の内径や内周長を測定する方法が、以下の特許文献1〜6に開示されている。
【0004】
まず、特許文献1は、大口径鋼管など管状体の管端における形状を測定する管体の形状測定装置に関するものであり、特許文献2も、大口径鋼管などの管状体の管体における形状、すなわち、内外径・内外周長・肉厚・溶接部ビード形状などを測定する管体の形状測定装置に関するものである。
【0005】
特許文献3は、鋼管の内径を高精度、短時間で自動的に測定し、しかも管の変形状態が明確に判明することが出来る鋼管の内径測定装置に関するものであり、内径測定装置本体は、内径測定バーおよび芯出しバーとスプリングにより本体を支持する測定器支え軸より構成され、該内径測定バーには、寸法測定端子及びディジタル表示ダイヤルゲージを設けるとともに、芯出しハンドルおよび芯出しハンドルストッパーによって45°毎に内径測定バーを回転可能とし、該ディジタル表示ダイヤルゲージの移動量によって内径を表示する装置からなるものである。
【0006】
特許文献4は、コンパクトな構成で、迅速かつ正確に鋼管の内径および内周長を測定する装置に関するものであり、基準プレートと、基準プレートの延出部に設けたガイド孔に案内される固定可能な爪と、基準プレートの中心にこれと直交すべく回転自在に枢着された回転体と、この回転体を伝達機構を介して回転させると共に回転体の回転角度を測定するパルスモータと、回転体の先端にこれと直交するように取り付けられたアームと、このアームに取り付けられたリニアゲージセンサー,レーザ距離計と、このリニアゲージセンサー,レーザ距離計を1回転させ一定角度毎に測定したリニアゲージセンサー,レーザ距離計の回転中心から鋼管の内周面までの距離とその回転角度に基づいて各角度における内径、および内周長を求める演算器を備えた構成である。
【0007】
特許文献5は、直径方向に内面位置を計測することによって内径を測定することができ、またレーザ式距離センサを用いているので非接触で摩耗等の影響を受けることなく測定することができる内径測定装置に関するものである。
特許文献6は、円筒状部材の内外径を測定する装置であり、円筒状部材の内周面または外周面に沿って距離センサを周方向に回転移動させると共に、センサの回転中心で多等分した中心角毎に、センサ中心から円筒状部材の内周面または外周面までの距離を測定してこれを記憶し、蓄積されたデータから最大および最小の測定距離を夫々判定した後、最大測定距離から最小測定距離を引いた値を等分することにより、部材中心とセンサ中心との偏差を算出し、この偏差と多等分した中心角とを基礎として補正計算を行なうものである。
【0008】
【特許文献1】特開平1−232203号公報
【特許文献2】特開平4−65610号公報
【特許文献3】特開平7−43103号公報
【特許文献4】特開平9−311034号公報
【特許文献5】特開平4−160303号公報
【特許文献6】特開平4−283611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、これらの引用文献1〜6に記載の発明は、スパイラル鋼管の製造ラインに適用し、オンラインで鋼管の形状(例えば内周長など)を正確に測定することができるものではない。
すなわち、特許文献1および2については、管体の端部の形状を測定するためのものであって、スパイラル鋼管の製造工程における成形直後の鋼管の内周長測定などの内面形状測定は出来ない。また、測定装置自体が大掛かりなものとなる。
特許文献3は、鋼管の内径測定装置であるが、測定には人の介入が必要となり、これも、スパイラル鋼管の製造工程における成形直後の鋼管の内面形状測定に適用は出来ない。
【0010】
特許文献4および5は、特許文献1および2と同じく、管体の端部の形状を測定するためのものであって、スパイラル鋼管の製造工程における成形直後の鋼管の内面形状測定は出来ない。また、測定装置自体が大掛かりなものとなる。
特許文献6は、その目的が円筒状部材の内外径を測定することであり、構造的にもスパイラル鋼管の製造工程における成形直後の鋼管の内面形状測定に適用することは困難である。
【0011】
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、スパイラル鋼管の製造工程において、鋼帯の成形・溶接後の鋼管の形状をオンラインで計測可能であるとともに、現状の設備を活用し極力簡単な設備改造で計測可能なスパイラル鋼管の製造方法および形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために、請求項1に記載のスパイラル鋼管の製造方法は、鋼帯を内面ローラーおよび外面ローラーを備える成形装置を用いて管状に成形した後、前記鋼帯の幅方向端面突合せ部をサブマージアーク溶接して鋼管にするスパイラル鋼管の製造方法において、前記内面ローラーを支持するマンドレルの先端部に前記鋼管の内面までの距離を非接触で測定する距離計を設け、前記鋼管の溶接工程中に前記距離計を前記鋼管の周方向に回転させることにより前記鋼管の形状を計測することを特徴とする。
【0013】
また、請求項2に記載のスパイラル鋼管の製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記鋼管の溶接工程中に前記距離計を前記鋼管の周方向に回転させるとともに、前記鋼管の長さ方向に前記鋼管の進行速度で移動させることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3に記載のスパイラル鋼管の製造方法は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記距離計の回転中心から前記距離計を用いて計測した前記鋼管の内面までの距離と、前記距離計の回転角度とを用いて、前記鋼管の周長を計測することを特徴とする。
【0015】
また、請求項4に記載のスパイラル鋼管の製造方法は、請求項3に記載の発明において、前記鋼管の内周長を計測する際に、前記鋼管の溶接ビードおよび前記鋼管の内面付着物の影響を除外して周長を計算することを特徴とする。
【0016】
また、請求項5に記載のスパイラル鋼管の形状測定装置は、鋼帯を内面ローラーおよび外面ローラーを備える成形装置を用いて管状に成形した後、鋼帯の幅方向端面突合せ部をサブマージアーク溶接して鋼管にするスパイラル鋼管の製造方法の溶接工程に用いられるスパイラル鋼管の形状測定装置であって、前記内面ローラーを支持するマンドレルの先端部に設けられて前記鋼管の内面までの距離を非接触で測定する距離計と、前記距離計を前記鋼管の周方向に回転させる回転手段と、前記距離計の回転角を計測する回転角計測手段と、を備えていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項6に記載のスパイラル鋼管の形状測定装置は、請求項5に記載の発明において、前記距離計を前記鋼管の長さ方向に前記鋼管の進行速度で移動させる直線移動手段を備えていることを特徴とする。
【0018】
また、請求項7に記載のスパイラル鋼管の形状測定装置は、請求項5または請求項6に記載の発明において、前記距離計の前記鋼管の径方向の位置を調整する位置調整手段を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載のスパイラル鋼管の製造方法によれば、製管(成形・溶接)中に刻々変化する鋼管の形状(周長、平均径)をオンラインで(製造中に)把握することが可能となり、計測データを用いて製管条件を調整することにより品質の安定したスパイラル鋼管の製造が可能となる。また、従来人手により測定していた作業を自動化することにより安全面での作業環境の向上に貢献できる。さらに、スパイラル鋼管の成形装置の内面ローラーを支持するマンドレルを活用しているので、極力簡単な設備改造でスパイラル鋼管の形状を計測することができる。
【0020】
請求項2に記載のスパイラル鋼管の製造方法によれば、鋼管の溶接工程中に距離計を鋼管の周方向に回転させるとともに、鋼管の長さ方向に鋼管の進行速度で移動させて、鋼管の形状を測定しているので、鋼管の長手方向の同一断面の形状(周長、平均径)を測定することができる。
【0021】
請求項3に記載のスパイラル鋼管の製造方法によれば、距離計の回転中心から距離計を用いて計測した鋼管の内面までの距離と、距離計の回転角度とを用いて、鋼管の周長を計測するので、距離計の回転速度と回転方向を変えることにより、適正な計測データを容易に得ることができる。
【0022】
請求項4に記載のスパイラル鋼管の製造方法によれば、鋼管の内周長を計測する際に、鋼管の溶接ビードおよび鋼管の内面付着物の影響を除外して周長を計算するので、鋼管の内面に溶接ビードや内面付着物があっても、精度の高い内周長のデータを得ることができる。
【0023】
請求項5に記載のスパイラル鋼管の形状測定装置によれば、製管(成形・溶接)中に刻々変化する鋼管の形状(周長、平均径)をオンラインで把握することが可能となり、計測データを用いて製管条件を調整することにより品質の安定したスパイラル鋼管の製造が可能となる。また、従来人手により測定していた作業を自動化することにより安全面での作業環境の向上に貢献できる。さらに、スパイラル鋼管の成形装置の内面ローラーを支持するマンドレルを活用しているので、極力簡単な設備改造でスパイラル鋼管の形状を計測することができる。さらには、距離計の回転速度と回転方向を変えることにより、適正な計測データを容易に得ることができる。
【0024】
請求項6に記載のスパイラル鋼管の形状測定装置によれば、鋼管の溶接工程中に回転手段により距離計を鋼管の周方向に回転させるとともに、直線移動手段により鋼管の長さ方向に鋼管の進行速度で移動させて、鋼管の形状を測定することにより、鋼管の長手方向の同一断面の形状(周長、平均径)を測定することができる。
【0025】
請求項7に記載のスパイラル鋼管の形状測定装置によれば、位置調整手段により距離計の鋼管の径方向の位置を調整することにより、鋼管の径が種々変化しても、距離計と鋼管計が緩衝しないように、あるいは距離計が測定可能範囲を外れないように、距離計を位置させることができるので、様々な径の鋼管製造に対して計測可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態に係るスパイラル鋼管の形状測定装置を示す図であって、図1はスパイラル鋼管の出側(下流側)から素材である鋼帯の入側(上流側)に向かって見た図(正面図)であり、図2は側面図である。
【0027】
これらの図に示すように、このスパイラル鋼管の形状測定装置は、マンドレル(インナービーム)1を備えている。このマンドレル1は、鋼帯2を管状に成形する成形装置3の内面ローラー(上ローラー)4を支持しているものである。内面ローラー4は、マンドレル1の下側にマンドレル1の長さ方向に沿って複数個が等間隔に回転自在に固定されている。成形装置3は、これらの複数個の内面ローラー4と複数個の外面ローラー(下ローラー)5とを備えている。外面ローラー5は、間隔をおいて2列設けられている。これらの内面ローラー4と外面ローラー5との間を鋼帯2が通過することにより鋼帯2が螺旋状に巻き曲げされ、鋼帯2が管状に成形される。また、マンドレル1の先端部の下側には、内面溶接用のノズル6が支持されている。
【0028】
管状に形成された鋼帯2は、鋼帯2の幅方向端面突合せ部を内面溶接用のノズル6により内面溶接された後、外面溶接用のノズル(図示せず)により外面溶接されてスパイラル鋼管(以下、単に鋼管ともいう。)7とされ、その後走行切断されて、所定の長さの鋼管7とされる。内面溶接および外面溶接はサブマージアーク溶接により行われる。鋼帯2を内面ローラー4および外面ローラー5を備える成形装置3を用いて管状に成形する成形工程、鋼帯2の幅方向端面突合せ部をサブマージアーク溶接して鋼管7とする溶接工程、およびその後に行われる切断工程はすべて、連続して行われる工程となっている。
【0029】
マンドレル1は鋼管7の長さ方向に延びており、このマンドレル1の先端部には、マンドレル1の長さ方向(中心軸方向)に沿って伸縮するシリンダー(直線移動手段)11が取り付けられている。このシリンダー11の先端部には、台座12が固定されており、したがってシリンダー11が伸縮すると、この台座12が鋼管7の長さ方向(鋼管7の中心軸と平行)に鋼管7内の下部を直線移動するようになっている。
【0030】
台座12の上部には、上下方向に伸縮するシリンダー(位置調整手段)14が取り付けられており、このシリンダー14の先端部にはモーター(回転手段)15が固定されている。このモーター15の出力軸は鋼管7の長さ方向に延びている。モーター15の出力軸にはローター16が結合されており、このローター16の端部に距離計17が固定されている。これにより、シリンダー14を伸縮させることにより、距離計17が鋼管7の径方向に上下移動し、距離計17が鋼管7の中心部近傍に位置するように位置調整できるようになっている。また、モーター15を回転駆動させることにより、距離計17が鋼管7の内側で鋼管7の周方向に回転するようになっている。
【0031】
この例では、距離計17は、レーザー式変位センサーから構成されている。ローター16には、図示しないが、距離計17の回転角θを検出するためのエンコーダ(センサー;回転角計測手段)が設けられている。なお、モーター15が回転角を制御可能なステッピングモーターである場合は、当然のことながらエンコーダは不要であり、モーター15に回転角検出手段が付随していることになる。
【0032】
距離計17は、シリンダー11を伸縮させることにより鋼管7の長さ方向の位置を変えることができるようになっている。そして、鋼管7の長さ方向(中心軸方向)の同一断面の距離計17から鋼管7内面までの距離の測定が可能なように、距離計17の鋼管7の長さ方向の速度と鋼管7の進行速度とが同期するように、シリンダー11のピストンの伸長速度を設定する。ただし、シリンダー11のピストンのストロークには限りがあるので、鋼管7の進行速度や距離計17の回転速度、内周長の測定頻度(鋼管7の長さ方向の測定ピッチ)によっても異なるが、1回(鋼管7の1断面)の内周長測定後、該ピストンを下限値(シリンダー内に最も収納された位置)にまで速やかに移動させ、次の測定に備えるようにするのが好ましい。
【0033】
シリンダー11には、距離計17の鋼管7の長さ方向の位置・速度の制御が可能なように、図示しないが位置検出器が取り付けられている。なお、シリンダー11に、位置検出器とシリンダーが一体になったシルナックシリンダーを用いてもよい。
また、シリンダー11、14には、油圧式、空気圧式あるいは電動式のいずれかが用いられ、そして遠隔操作される。
【0034】
図3に示すように、シリンダー14を伸縮させることにより、鋼管7の径が種々に変化しても、距離計17と鋼管7とが干渉しないように、また距離計17の測定可能範囲を外れないように、距離計17の鋼管7の高さ方向の位置(径方向の位置)を調整できるようになっている。なお、図示しないが距離計17の昇降量を検出するためのセンサー(位置検出器)がシリンダー14に付随して取り付けられており、距離計17およびローター16の位置をシリンダー14の可動範囲で自在に設定することが可能になっている。なお、シリンダー14に、位置検出器とシリンダーが一体になったシルナックシリンダーを用いてもよい。
【0035】
次に、鋼管7の内面の形状(内周長)を測定する原理を図4に示す。
スパイラル鋼管7の製管中に距離計17を用いて内周長を測定するため、スパイラル鋼管7の回転方向と距離計17の回転方向によって、内周長の測定方法は以下のようになる。
【0036】
【数1】

【0037】
N1またはN2は多いほど高精度で内周長の測定が可能となるが、計測データ(L)の処理量も増大するため、マイコンやパソコン等の電子計算機のデータ処理能力を考慮して適正な値に設定する。
また、距離計17の回転中心周りの角速度ωsについては、大きくする方がスパイラル鋼管7の長さ方向に内周長を細かく測定することが可能となるメリットがあるが、必要以上に大きくすると時間あたりの計測データ処理量が増大するため、適正範囲に設定する。
【0038】
図5は、内周長測定における台座12の移動用シリンダー11の動作状況を模式的に示す図である。
同図には、AパターンおよびBパターンの2種類を例示しているが、Aパターンは、製管速度(鋼管7の長さ方向の進行速度)が大きい、すなわち比較的小径のスパイラル鋼管7を測定する場合を表し、Bパターンは、製管速度が小さい、すなわち比較的大径のスパイラル鋼管7を測定する場合を表す。
同図を見ると、鋼管7の長さ方向の測定ピッチ(間隔)は、Aパターンの方(=P)がBパターン(=P)に比べて大きくなっているが、Aパターンにおける距離計17の回転速度を増加させるか、あるいは上述のように距離計17の回転方向をスパイラル鋼管7の回転方向と逆にして、上記式(2)で内周長を算出することにより、内周長測定時間を短縮させ、測定ピッチを小さく、すなわち内周長を小刻みに測定することは可能である。
【0039】
図6に示すように、被測定対象であるスパイラル鋼管7の内面に、溶接ビード21や内面サブマージアーク溶接の際のフラックス等からなる凸部22があると、距離計17による鋼管7の内面形状測定に悪影響を及ぼす。
例えば、距離計17がレーザー式変位センサーからなる場合、レーザービームの照射部に凸部22があると、ビームの乱反射により測定が不能になるか、たとえ計測できたとしても図6に示すように本来の距離L4やL5に比べて異常に小さな値として検出される可能性がある。
【0040】
このような場合には、図6に示すように、(1)距離Lの時系列計測データからA点、B点、C点およびD点のような変曲点を検出、(2)A点とB点間、ならびにC点とD点間のLの実測値を除外、(3)A点とB点間、ならびにC点とD点間を補間するL値を計算し、これを用いて内周長を算出する。これにより、精度の高い内周長が計算できる。
【0041】
なお、以上の説明では、スパイラル鋼管7の内周長の測定方法について述べたが、スパイラル鋼管7の外周長を測定する場合には、前記式(1)および式(2)において、L(θ)の代わりに、以下に記載のL’(θ)を用いることで外周長も算出できる。
【0042】
L’(θ)=L(θ)+t ‥‥(3)
ここで、L(θ)は、θにおける距離計の回転中心からスパイラル鋼管内面までの距離であり、tは、鋼帯の平均肉厚である。
【0043】
さらに、式(1)あるいは式(2)で求まる内周長、式(3)で求まる外周長を各々、πで除することにより、鋼管の平均内径、および平均外径の算出が可能である。
【0044】
また、以上の説明では、距離計17としてレーザー式変位センサーからなる距離計を用いた場合を説明したが、距離計17は超音波距離計等他の非接触タイプの距離計であってもよい。
また、以上の説明では、距離計17として1個の距離計を使用してスパイラル鋼管の周長や径を測定する場合について説明を行ったが、距離計17として2個以上の距離計を使用し測定してもよい。例えば、2個の距離計を各々鋼管内面までの距離を測定可能なように背中合わせにセットし、各々180°回転させて測定した距離データと回転角データを元に1/2周長を算出し、これら1/2周長を足し合せて周長としてもよい。この場合、1個の距離計を用いる場合に比べて、1周長の測定時間が1/2に短縮されるメリットがある。一般に距離計17としてN個の距離計を用いる場合、各々の距離計を鋼管内面に向けて、回転方向に360/N(°)の一定間隔で配置すればよい。
【0045】
次に、スパイラル鋼管の周長(径)の調整方法を説明する。
(1)周長(外周長、内周長)または径(外径、内径)を大きくする方法
図7に示すように、鋼帯2の幅Bと鋼管7の外径Dと成形角度θの間には、以下の関係が成立つ。
sinθ=B/πD ‥‥(4)
これより、D=B/πsinθ ‥‥(5)
【0046】
式(5)から、Dを大きくするにはθを小さくすればよいが、同一サイズのスパイラル鋼管7の製造中には、θは固定しておき、図8に示すように、油圧シリンダー(鋼管出側揺動装置)31により出側フレーム32を角度αで揺動させるのが一般的である。なお、図8において、符号33は入側フレーム、34はサイドガイド、35がエッジミラー、36はピンチローラである。
式(5)において、Bは一定と仮定すると、
【0047】
【数2】

【0048】
式(6)と図7の関係から、
α=−Δθ=−π/B・(cosθ−1/cosθ)ΔD ‥‥(7)
ここで、ΔDは成形後の鋼管7の外径Dの変化量を表す。
ΔD>0の場合、すなわち外径Dが大きくなる方向に変化した場合、式(7)からα>0になり、出側フレーム31を反時計廻りに式(7)で計算される角度|α|(=αの絶対値)分を調整すればよい。
内径(=D−2t、tは鋼管の板厚)についても同様の調整を行えばよい。
【0049】
一方、鋼管7の外周長Lと鋼管7の外径Dの間には以下の関係が成立つ。
L=πD
ΔL=πΔD ‥‥(8)
式(7)と式(8)から、以下の関係が得られる。
α=−π/B・(cosθ−1/cosθ)ΔD=−1/B・(cosθ−1/cosθ)ΔL ‥‥(9)
ΔL>0の場合、すなわち外周長が大きくなる方向に変化した場合、式(9)からα>0になり、出側フレームを反時計廻りに式(9)で計算される角度|α|(=αの絶対値)分を調整すればよい。
内周長(=L−2πt、tは鋼管の板厚)についても同様の調整を行えばよい。
以上の説明において、鋼管7の周長あるいは径の変化に応じた出側フレーム31の調整は、手動もしくは自動制御の何れの方法を用いても良い。
【0050】
(2)周長(外周長、内周長)または径(外径、内径)を小さくする方法
同様にして、ΔD<0値の場合、すなわち外径が小さくなる方向に変化した場合、式(7)からα<0になり、出側フレームを時計廻りに式(7)で計算される角度|α|(=αの絶対値)分を調整すればよい。
内径(=D−2t、tは鋼管の板厚)についても同様の調整を行えばよい。
【0051】
また、ΔL<0の場合、すなわち外周長が小さくなる方向に変化した場合、式(9)からα<0になり、出側フレームを時計廻りに式(9)で計算される角度|α|(=αの絶対値)分を調整すればよい。
内周長(=L−2πt、tは鋼管の板厚)についても同様の調整を行えばよい。
以上の説明において、鋼管の周長あるいは径の変化に応じた出側フレームの調整は、手動もしくは自動制御の何れの方法を用いても良い。
【0052】
なお、前述の実施の形態では、シリンダー14を用いて距離計17の鋼管7の径方向の位置を調整するようにしたが、これに代えて、例えば、長さの異なるアルミ中空フレーム等の取付部材を用意し、鋼管径に応じた取付部材を用いるようにしてもよい。この場合、取付部材の交換は人手を介して行う。
【0053】
また、前述の実施例では、距離計17を鋼管7の周方向に回転させるとともに、鋼管7の長さ方向に鋼管7の進行速度で移動させるようにしたが、シリンダー(直線移動手段)を設けずに、距離計17を鋼管7の周方向に回転させるだけにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施の形態に係るスパイラル鋼管の形状測定装置を示す図であって、スパイラル鋼管の出側(下流側)から素材である鋼帯の入側(上流側)に向かって見た図である。
【図2】同、側面図である。
【図3】(a)は大径の鋼管の内周長を測定する場合を示す図であり、(b)は大径の鋼管の内周長を測定する場合を示す図である。
【図4】鋼管の内面の内周長を測定する原理を示す図であって、(a)は鋼管内の距離計を示す図であり、(b)は距離計の回転角と鋼管内面までの距離との関係を示す図である。
【図5】内周長測定における台座の移動用シリンダーの動作状況を示す図であって、(a)はスパイラル鋼管の形状測定装置の側面図であり、台座の移動用シリンダーのストロークを時間軸で表した図である。
【図6】鋼管の内面に溶接ビードや凸部がある場合の鋼管の内面の内周長の計算方法を説明するための図であって、(a)は鋼管内の距離計を示す図であり、(b)は補間法を用いた距離計の回転角と鋼管内面までの距離との関係を示す図である。
【図7】鋼帯の幅と鋼管の外径と成形角度との関係を説明するための図である。
【図8】スパイラル鋼管の周長(径)の調整方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0055】
1 マンドレル
2 鋼帯
3 成形装置
4 内面ローラー
5 外面ローラー
7 鋼管(スパイラル鋼管)
11 シリンダー(直線移動手段)
14 シリンダー(位置調整手段)
15 モーター(回転手段)
17 距離計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼帯を内面ローラーおよび外面ローラーを備える成形装置を用いて管状に成形した後、前記鋼帯の幅方向端面突合せ部をサブマージアーク溶接して鋼管にするスパイラル鋼管の製造方法において、
前記内面ローラーを支持するマンドレルの先端部に前記鋼管の内面までの距離を非接触で測定する距離計を設け、前記鋼管の溶接工程中に前記距離計を前記鋼管の周方向に回転させることにより前記鋼管の形状を計測することを特徴とするスパイラル鋼管の製造方法。
【請求項2】
前記鋼管の溶接工程中に前記距離計を前記鋼管の周方向に回転させるとともに、前記鋼管の長さ方向に前記鋼管の進行速度で移動させることを特徴とする請求項1に記載のスパイラル鋼管の製造方法。
【請求項3】
前記距離計の回転中心から前記距離計を用いて計測した前記鋼管の内面までの距離と、前記距離計の回転角度とを用いて、前記鋼管の周長を計測することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスパイラル鋼管の製造方法。
【請求項4】
前記鋼管の内周長を計測する際に、前記鋼管の溶接ビードおよび前記鋼管の内面付着物の影響を除外して周長を計算することを特徴とする請求項3に記載のスパイラル鋼管の製造方法。
【請求項5】
鋼帯を内面ローラーおよび外面ローラーを備える成形装置を用いて管状に成形した後、鋼帯の幅方向端面突合せ部をサブマージアーク溶接して鋼管にするスパイラル鋼管の製造方法の溶接工程に用いられるスパイラル鋼管の形状測定装置であって、
前記内面ローラーを支持するマンドレルの先端部に設けられて前記鋼管の内面までの距離を非接触で測定する距離計と、前記距離計を前記鋼管の周方向に回転させる回転手段と、前記距離計の回転角を計測する回転角計測手段と、を備えていることを特徴とするスパイラル鋼管の形状測定装置。
【請求項6】
前記距離計を前記鋼管の長さ方向に前記鋼管の進行速度で移動させる直線移動手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスパイラル鋼管の形状測定装置。
【請求項7】
前記距離計の前記鋼管の径方向の位置を調整する位置調整手段を備えていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のスパイラル鋼管の形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−44016(P2010−44016A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−209758(P2008−209758)
【出願日】平成20年8月18日(2008.8.18)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(000182982)住金大径鋼管株式会社 (12)
【Fターム(参考)】