説明

スピーカ装置

【課題】活性炭の物理吸着効果によって等価容積の拡大を図るとともに、音響エネルギーの損失による音圧レベルの低下を防止して、低音を豊かに再生する小型のスピーカ装置を実現する。
【解決手段】本発明に係るスピーカ装置は、キャビネットと、キャビネットに取り付けられるスピーカユニットと、キャビネットの内部空間に配置され、100Hz以上の高域においても、スピーカユニットから放射される音の圧力変動で気体分子を吸脱着することが可能な繊維状の活性炭とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関し、より特定的には、小型のキャビネットで低音再生を実現するスピーカ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のスピーカ装置では、キャビネットの内部空室が呈する音響スティフネスの影響によって、小型で低音再生が可能なスピーカ装置を実現することが困難であった。この低音の再生限界は、音響スティフネスの大きさ、つまり、キャビネットの容積で決定されるものである。そこで、この低音再生限界の課題を解決する1つの手段として、キャビネットの内部に粒状の活性炭の塊を配置するスピーカ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図22は、従来のスピーカ装置における主要部の構造断面図である。図22において、従来のスピーカ装置は、キャビネット90、低音用スピーカ91、活性炭92、支持部材93、およびダイヤフラム94を備える。低音用スピーカ91は、キャビネット90の前面に取り付けられる。活性炭92は、粒状の活性炭(以下、粒状活性炭という)であり、キャビネット90内部に塊状で配置される。また、活性炭92は、キャビネット90の背面、底面、上面、左右側面、および支持部材93によって支持されている。なお、支持部材93には、その全表面に空気を通過させる細孔が形成されている。
【0004】
次に、図22に示す従来のスピーカ装置の動作について説明する。低音用スピーカ91に電気信号が印加されると音圧が発生する。当該音圧によってキャビネット90内部の圧力が変化する。そして、この圧力変化によって、ダイヤフラム94が振動する。このダイヤフラム94の振動によって、活性炭92が配置された空室の圧力が変化する。活性炭92は、支持部材93およびキャビネット90によって塊状に支持されている。なお、支持部材93の全表面には、上述したように細孔が形成されている。そのため、ダイヤフラム94の振動による圧力変化に伴う気体が活性炭92に物理吸着されて、キャビネット90の内部の圧力変化は抑制される。つまり、キャビネット90が等価的に大きな容積のキャビネットとして動作する。このように従来のスピーカ装置では、活性炭92が等価的にキャビネットの内部容積を拡大することで、小型のキャビネットでありながら、あたかも大きなキャビネットにスピーカユニットを搭載したような低音再生が可能となる。
【特許文献1】特表昭60−500645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、活性炭92の構造について考える。上述した従来のスピーカ装置における活性炭92は、平均粒径が0.1mm〜0.3mmである粒状の活性炭が集合したものである。この粒状活性炭の内部には、無数の細孔が形成されている。粒状活性炭の単位重さあたりの比表面積は1000m2/g程度である。この細孔は、図23に示すように、粒状活性炭の表面付近に形成されるマクロ孔100と、内部に形成されるミクロ孔101とに大別される。図23は、粒状活性炭に形成される細孔の構造を模式的に示す図である。図23において、粒状活性炭の内部に形成される無数のミクロ孔101に気体が物理吸着されることで、活性炭92が上記容積拡大効果を発揮すると考えられている。なお、マクロ孔100は、気体がミクロ孔101に到達するまでの通路としての役割を果たす。
【0006】
しかしながら、粒径が0.1mm以上ある粒状活性炭では、ミクロ孔101に対してマクロ孔100が占める体積比率が大きく、物理吸着効果に制限がある。したがって、大きな物理吸着効果を得るためには、大量の粒状活性炭が必要であり、活性炭92の体積を大きくする必要がある。しかしながら、キャビネットの内部容積が小さい小型のスピーカ装置では、搭載できる活性炭92の体積が限定される。これにより、十分な物理吸着効果が得られず、所望する低音再生帯域の拡大が困難であった。
【0007】
また、気体の通路となるマクロ孔100が、ミクロ孔101に到達する気体の流れを抑制する音響抵抗として作用する。したがって、この音響抵抗において音響エネルギーの損失が発生し、低音域の音圧レベルが大幅に低下するという課題もあった。
【0008】
さらに、音圧の周波数帯域が高くなると、マクロ孔100がその通路自体の空室容積と通路長とで音の伝達を遮断するハイカットフィルタを形成してしまう。これにより、100〜200Hz以上の高域に対しては、ミクロ孔101への気体の流入が抑制される。そして、100〜200Hz以上の高域に対しては、ほとんど物理吸着効果が得られず、活性炭92の利用は100Hz以下の低音専用のスピーカ装置に限定されるという大きな課題があった。
【0009】
それ故、本発明は上記課題を解決するスピーカ装置に関し、活性炭の物理吸着効果によって等価容積の拡大を図るとともに、音響エネルギーの損失による音圧レベルの低下を防止して、低音を豊かに再生する小型のスピーカ装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の発明は、スピーカ装置であって、キャビネットと、キャビネットに取り付けられるスピーカユニットと、キャビネットの内部空間に配置され、100Hz以上の高域においても、スピーカユニットから放射される音の圧力変動で気体分子を吸脱着することが可能な繊維状の活性炭とを備える。
【0011】
本発明の第2の発明は、上記第1の発明において、繊維状活性炭は、非活性炭材料であるバインダを複合した繊維状であることを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の発明は、上記第2の発明において、バインダは、ポリエステル繊維、または、パルプ繊維であることを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の発明は、上記第1の発明において、キャビネットが密閉型のキャビネットであることを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の発明は、上記第1の発明において、キャビネットに取り付けられ、キャビネットの内部空間と外部空間とを音響的に連結する音響ポートをさらに備える。
【0015】
本発明の第6の発明は、上記第3の発明において、活性炭は、音響ポートの両端の開口部のうちキャビネットの内部空間に接続される開口部を遮らないように、キャビネットの内側に固設されることを特徴とする。
【0016】
本発明の第7の発明は、上記第1の発明において、キャビネットに取り付けられ、スピーカユニットの振動に応動して駆動されるパッシブラジエータをさらに備える。
【0017】
本発明の第8の発明は、上記第7の発明において、パッシブラジエータとの間に空隙を形成するようにパッシブラジエータと活性炭との間に固設される板状部材をさらに備える。
【0018】
本発明の第9の発明は、上記第1の発明において、活性炭がフェノール系樹脂から生成されることを特徴とする。
【0019】
本発明の第10の発明は、上記第1の発明において、スピーカユニットが動電型、圧電型、静電型、または電磁型のいずれかであることを特徴とする。
【0020】
本発明の上記第11の発明は、上記第1の発明において、活性炭の比表面積が500m2/g以上であることを特徴とする。
【0021】
本発明の第12の発明は、上記第1の発明において、活性炭は、布状に形成された活性炭が積層された構成を有することを特徴とする。
【0022】
本発明の第13の発明は、上記第12の発明において、布状に形成された活性炭が積層される方向は、スピーカユニットから当該布状に形成された活性炭へ向かう方向に対して垂直であることを特徴とする。
【0023】
本発明の第14の発明は、上記第13の発明において、布状の活性炭は、スピーカユニットから当該布状の活性炭へ向かう方向を軸とし、当該軸を中心にして巻回されることによって渦巻状に積層されることを特徴とする。
【0024】
本発明の第15の発明は、携帯端末装置であって、上記第1から14のいずれかの発明のスピーカ装置と、スピーカ装置を支持するケースとを備える。
【0025】
本発明の第16の発明は、上記第15の発明において、スピーカユニットは、ボイスコイルと、ボイスコイルを一方面に固着した振動板とを有し、スピーカユニットは、振動板の他方面を内部空間に向けて取り付けられることを特徴とする。
【0026】
本発明の第17の発明は、上記第15の発明において、スピーカ装置は、スピーカユニットと活性炭との間を仕切るようにキャビネットの内側に固設される防塵部材をさらに備える。
【0027】
本発明の第18の発明は、車両であって、上記第1から14のいずれかの発明のスピーカ装置と、スピーカ装置を内部に配置する車体とを備える。
【0028】
本発明の第19の発明は、映像機器であって、上記第1から14のいずれかの発明に記載のスピーカ装置と、スピーカ装置を内部に配置する筐体とを備える。
【発明の効果】
【0029】
上記第1の発明によれば、繊維状の活性炭の物理吸着効果によって、等価容積の拡大を図るとともに、音響エネルギーの損失による音圧レベルの低下を防止して、低音を豊かに再生する小型のスピーカ装置を提供することができる。また、本発明によれば、繊維状の活性炭にはハイカットフィルタを形成するマクロ孔がないため、物理吸着効果は100〜200Hz以上の高域でも発揮される。つまり、本発明によれば、低域の再生周波数帯域が比較的高い小型のキャビネットに対しても、物理吸着効果が発揮された低音豊かな再生を実現することができる。
【0030】
上記第4の発明によれば、キャビネットの内部は密閉されているので、活性炭がキャビネット外部の外気と直接触れることがない。これにより、活性炭が湿気や不要なガスを吸着して性能が劣化することを防止することができる。
【0031】
上記第5の発明によれば、位相反転方式のスピーカ装置として動作し、低音域の再生限界をさらに拡大することができる。
【0032】
上記第6の発明によれば、活性炭がスピーカユニットと音響ポートとの間を遮ることによって生じる、バスレフ方式としての動作の損失を防止することができる。
【0033】
上記第7の発明によれば、位相反転方式のスピーカ装置として動作し、低音域の再生限界をさらに拡大することができる。
【0034】
上記第8の発明によれば、パッシブラジエータが駆動する際、活性炭と接触することを防止することができる。
【0035】
上記第9の発明によれば、フェノール系樹脂は気体を物理吸着するミクロ孔が多数形成されやすい材料であり、比表面積が大きな繊維状の活性炭を得ることができる。
【0036】
上記第11の発明によれば、ユーザに対して、活性炭の物理吸着効果による低音感の向上をより効果的に提供することができる。
【0037】
上記第12の発明によれば、布状の活性炭を積層して配置することで、積層しない場合と比べて、所望する位置に配置しやすくすることができる。
【0038】
上記第13の発明によれば、活性炭にはその繊維と繊維との間に音の進行方向と同じ方向の隙間が形成され、スピーカユニットから放射された音はその隙間を通過することが容易となる。その結果、気体が物理吸着するまでに生じる損失は低減され、低音域での音圧レベルの低下を大幅に低減することができる。
【0039】
上記第14の発明によれば、渦巻状に積層することは容易であり、製造工数を削減することができる。
【0040】
上記第16の発明によれば、ボイスコイルに対して内部空間側にある振動板によって活性炭などの粉塵がボイスコイルに接触しない構造となるので、活性炭などの粉塵がボイスコイルと接触して、電気的なショートによる故障や異音の発生を防止することができる。
【0041】
上記第17の発明によれば、防塵部材によってスピーカユニットに活性炭などの粉塵が流入しない構造となるので、活性炭などの粉塵が振動板などに接触して発生する異音を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0043】
(第1の実施形態)
図1を参照して、本発明における第1の実施形態に係るスピーカ装置について説明する。図1は、第1の実施形態に係るスピーカ装置の一例を示す構造断面図である。図1において、スピーカ装置は、キャビネット10、スピーカユニット11、および活性炭12を備える。なお、図1に示すスピーカ装置は、密閉方式のスピーカ装置である。
【0044】
図1において、スピーカユニット11は、例えば動電型スピーカである。スピーカユニット11は、キャビネット10の前面に形成された開口部に取り付けられる。活性炭12は、繊維状の活性炭(以下、活性炭繊維と記載する)である。活性炭12は、キャビネット10の内部に配置される。また、キャビネット10の内部空間であって、上述したスピーカユニット11および活性炭12以外の空間を空間R1とする。
【0045】
活性炭12は、活性炭繊維である。ここでは、具体例として活性炭繊維を編んで布状にしたものを用いるとする。活性炭12は、折り畳んだ状態(積層した状態)でキャビネット10の内部に配置される。ここで、活性炭繊維に形成される細孔は、図2に示すように、ミクロ孔101のみである。つまり、活性炭繊維には、上述したマクロ孔100は形成されず、活性炭繊維の表面に直接ミクロ孔101が形成されている。図2は、活性炭繊維に形成される細孔を模式的に示す図である。このような活性炭繊維を生成するための材料としては、例えばフェノール系、セルロース系、アクリルニトリル系、またはピッチ系などの樹脂が挙げられる。特に、フェノール系樹脂は、他の樹脂に比べてミクロ孔が多数形成されやすい材料であり、比表面積が大きい活性炭繊維を得ることのできる材料である。なお、生成方法としては、例えば布状にした活性炭繊維を高温処理して炭化させる方法などがある。
【0046】
次に、上述したスピーカ装置の動作について説明する。スピーカユニット11は、動電型スピーカであり、電気信号が印加されるとボイスコイルに駆動力が発生する。この駆動力によってスピーカユニット11の振動板が振動し、音圧が発生する。そして、振動板から発生した音圧によって、キャビネット10内部に形成される空間R1の圧力が変化する。しかしながら、活性炭12の物理吸着作用によって、キャビネット10の内部の圧力変化は抑制され、キャビネット10の内部容積が等価的に拡大する。
【0047】
図3は、活性炭繊維である活性炭12の効果を示す実測結果である。また図3は、容積が0.5リットルあるキャビネットに8cm口径のスピーカユニットを取り付けて、活性炭12を入れない場合、従来の粒状活性炭を入れた場合、活性炭繊維を入れた場合で、それぞれの音圧周波数特性および電気インピーダンス特性を測定した結果である。図3において、グラフAは活性炭12を入れない場合、グラフBは従来の粒状活性炭(材質:フェノール系樹脂、粒径:φ1.0mm〜φ2.0mm、ミクロ孔径:約φ1.5nm)を120g入れた場合、グラフCは布状の活性炭繊維(材質:フェノール系樹脂、ミクロ孔径:約φ1.5nm)を46g入れた場合の測定結果をそれぞれ示す。
【0048】
活性炭12を入れないときのグラフAにおいて、共振周波数はf0A=129.1Hz、電気インピーダンスの共振の鋭さを示す先尖度はQA=5.71となる。グラフBの粒状活性炭の場合、共振周波数はf0B=112.5Hz、先尖度はQB=2.91となる。グラフCの活性炭繊維の場合、共振周波数はf0C=107.4Hz、先尖度はQC=4.08となる。共振周波数がキャビネット容積の2乗に比例するという関係から、グラフBの従来の粒状活性炭を用いた場合のキャビネット容積の拡大率は(f0A/f0B2=1.3となる。また、グラフCの活性炭繊維の場合は(f0A/f0C2=1.4となる。このように、活性炭繊維を用いた方が従来の粒状活性炭を用いるよりも容積の拡大率は大きくなる。
【0049】
また、活性炭12に気体が吸着される過程での音響エネルギーの損失の大きさは電気インピーダンスのQ値で評価できる。損失が大きいほどQ値は小さくなる。グラフBで示す粒状活性炭のQB=2.91に対して、グラフCの活性炭繊維はQC=4.08となる。この結果より、活性炭繊維は従来の粒状活性炭に比べて音響エネルギーの損失が少ないことがわかる。従来の粒状活性炭においては、気体がミクロ孔101に流入する過程でマクロ孔100を通過することで、音響エネルギーの損失が生じるためである。これに対し、活性炭繊維はミクロ孔が繊維の表面に存在するため、気体がミクロ孔に直接流入して吸着される。つまり、活性炭繊維は粒状活性炭に比べて音響エネルギーの損失が少ないといえる。
【0050】
次に、共振周波数や共振の先尖度の差異が音圧周波数特性に与える影響について考える。まず、グラフBおよびグラフCの音圧周波数特性は、活性炭12を入れていないときのグラフAの音圧周波数特性と比べて、100Hz以下の低音域で音圧レベルが高くなっている。これは、粒状活性炭および活性炭繊維の容積拡大効果によるものである。さらに、グラフBとグラフCとを比較すると、従来の粒状活性炭に比べて、活性炭繊維は気体の物理吸着作用の過程での音響エネルギーの損失が少ないため、100Hz以下の低音域で音圧レベルが高いことがわかる。
【0051】
また、上述したように、粒状活性炭では、音圧の周波数帯域が高くなると、気体の通路となるマクロ孔100が、その通路自体の空室容積と通路長とで音の伝達を遮断するハイカットフィルタを形成してしまう。このため、100〜200Hz以上の高域に対しては、ほとんど物理吸着効果が得られなかった。これに対し、本実施形態の活性炭繊維にはマクロ孔が形成されないため、活性炭12は100〜200Hz以上の高域でも物理吸着効果を発揮することができる。このように本発明は、低域の再生周波数帯域が比較的高い小型のキャビネットを有する機器などに対しても有用である。
【0052】
以上のように、本実施形態に係るスピーカ装置によれば、活性炭繊維を用いることにより、等価容積の拡大を図るとともに、音響エネルギーの損失による音圧レベルの低下を防止して、低音を豊かに再生する小型のスピーカ装置を提供することができる。
【0053】
なお、上述では、活性炭12は布状の活性炭繊維を用いるとしたが、これに限定されない。例えば、糸状やチョップ状の活性炭繊維を用いてもよい。また、上述では、布状の活性炭繊維を折り畳んだ状態にしてキャビネット10の内部に配置するとしたが、折り畳まずに済む程度の小さい布状の活性炭繊維を複数枚積層して配置してもよい。また、活性炭繊維は、バインダとしてポリエステル繊維、あるいはパルプ等を用いた複合繊維であってもよい。さらに、活性炭繊維は金型を用いてバインダを溶着させて任意の形状に成形したものでもよい。このような応用手段は、材料の表面で気体を物理吸着させるという本発明の思想の範囲内である。
【0054】
また、図3の測定においては、ミクロ孔径が約φ1.5nmである活性炭繊維を測定に用いた。本発明に用いる活性炭繊維としては、ミクロ孔径がφ1.0nm〜φ2.5nm程度となる活性炭繊維が好ましい。また、活性炭繊維の比表面積は、例えば500m2/g以上であることが好ましい。比表面積[m2/g]とは、単位重量あたりの表面積のことであり、物理吸着性能の尺度として用いられている。
【0055】
以下、比表面積が500m2/g以上であることがより好ましい根拠について説明する。上述したように、活性炭繊維のミクロ孔は表面に存在する。このため、活性炭繊維の比表面積が大きいものほど、ミクロ孔の個数も多いと考えられる。図4は、比表面積別の容積拡大効果について測定した結果を示す図である。なお、図4は、容積が0.5リットルあるキャビネット内に比表面積が異なる活性炭繊維を入れて測定した結果である。また、測定には、フェノール系樹脂を材料とした活性炭繊維を用いている。また、図4において、縦軸は活性炭繊維がないときのキャビネット容積に対する等価的に拡大した容積(等価容積)を、横軸は比表面積をそれぞれ示している。図4に示すように、比表面積が500m2/gとなる活性炭繊維を用いた場合、等価容積は約1.3倍になることがわかる。比表面積が1700〜1800m2/g以上となる活性炭繊維を用いた場合には、等価容積が2倍以上になることがわかる。
【0056】
図5は、等価容積と音圧周波数特性との関係を計算により求め、グラフ化した図である。計算の条件としては、キャビネット容積が0.5リットルのバスレフ方式を基準とし、これに8cm口径のスピーカを取り付けた場合を条件としている。また、図5において、グラフDはキャビネット内に活性炭繊維がない場合、グラフEは等価容積が1.3倍となった場合、グラフFは等価容積が2倍となった場合の音圧周波数特性をそれぞれ示す。グラフEとグラフDを比較すると、周波数90Hz付近において、グラフEの方が音圧レベルが約3dB高いことがわかる。つまり、比表面積が500m2/gとなる活性炭繊維を用いることで、等価容積が1.3倍に拡大され、音圧レベルが約3dB向上することがわかる。そして、音圧レベルが約3dB違えば、聴感上でも低音感の向上が認知されると予測される。したがって、活性炭繊維の比表面積としては500m2/g以上であることがより好ましいといえる。なお、活性炭繊維による等価容積の拡大効果は使用する繊維材料、ミクロ孔の径の大きさ等でも変化すると考えられるが、このような場合でも容積拡大効果は1.3倍以上であることがより好ましいといえる。
【0057】
(第2の実施形態)
図6を参照して、本発明における第2の実施形態に係るスピーカ装置について説明する。本実施形態に係るスピーカ装置は、第1の実施形態に係るスピーカ装置に対して、音響ポート21を有するバスレフ型のスピーカ装置であり、また活性炭12が遮蔽部材23で包まれている点で異なる。以下、異なる点を中心に説明する。図6は、第2の実施形態に係るスピーカ装置の正面図および側面の構造断面図を示す図である。図6において、スピーカ装置は、キャビネット20、スピーカユニット11、仕切板22、活性炭12、および遮蔽部材23を備える。なお、スピーカユニット11および活性炭12は、上述した第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0058】
図6において、スピーカユニット11は、キャビネット20の前面上部に形成された開口部に取り付けられる。キャビネット20の前面下部付近には、開口部211hが形成される。仕切板22は、板状部材である。仕切板22は、当該仕切板22と、開口部211hおよび後述する開口部212hと、キャビネット20の内側とで音響ポート21を形成するようにキャビネット20の内部に固設される。この音響ポート21によって、本実施形態に係るスピーカ装置はバスレフ方式のスピーカ装置として動作する。活性炭12は、上述した第1の実施形態と同様、活性炭繊維である。
【0059】
遮蔽部材23は、空気を通過させない例えば袋状の薄膜フィルムである。薄膜フィルムは、例えば厚みが0.1mm以下のナイロンフィルムなどがある。なお、薄膜フィルムは、例えばポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデンなどを材料とした薄膜フィルムでもよい。
【0060】
活性炭12は、折り畳まれた状態で遮蔽部材23で包装され、キャビネット20の内部に配置される。また、キャビネット20の内部空間であって、上述したスピーカユニット11の背面と遮蔽部材23で包装された活性炭12上部との間の空間を空間R2とする。音響ポート21の開口部211hと逆側の開口部であって、キャビネット20の内部に形成される開口部212hは、空間R2に位置している。このように音響ポート21は、キャビネット20の内部空間である空間R2と、キャビネット20の外部空間とを音響的に連結したものである。また、開口部212hはスピーカユニット11の背面と開口部212hとの間に活性炭12が配置されない空間に配置されている。これにより、活性炭12がスピーカユニット11と音響ポート21との間を遮ることによって生じる、バスレフ方式としての動作の損失を防止することができる。また、本実施形態に係るスピーカ装置は、音響ポート21を介してキャビネット20の内部が外気と通気する構造である。しかしながら、上述したように、遮蔽部材23で活性炭12を包装することで、活性炭12が外気の湿気や不要なガス等を吸着して性能が劣化することを防止することができる。
【0061】
次に、上述したスピーカ装置の動作について説明する。スピーカユニット11は、動電型スピーカであり、電気信号が印加されるとボイスコイルに駆動力が発生する。この駆動力によってスピーカユニット11の振動板が振動し、音圧が発生する。そして、振動板から発生した音圧によって、キャビネット20内部に形成される空間R2の圧力が変化する。この圧力の変化は、遮蔽部材23の表面に伝わり、遮蔽部材23を振動させる。この振動によって、遮蔽部材23内部の圧力が変化する。しかしながら、遮蔽部材23の内部にある活性炭12の物理吸着作用によって、遮蔽部材23内部の圧力変化は抑制される。つまり、活性炭12は、遮蔽部材23を介して、キャビネット20の内部圧力の変化を抑制し、第1の実施形態と同様にキャビネット20の等価容積を拡大させる。また、本実施形態に係るスピーカ装置には、音響ポート21が設けられている。これにより、スピーカ装置は、位相反転方式の1つであるバスレフ方式のスピーカ装置として動作する。
【0062】
図7は、活性炭繊維である活性炭12の効果を示す実測結果である。また図7は、容積が0.5リットルあるキャビネットに8cm口径のスピーカユニットを取り付けたバスレフ方式のスピーカ装置で、活性炭12を入れない場合、従来の粒状活性炭を入れた場合、活性炭繊維を入れた場合で、それぞれの音圧周波数特性と電気インピーダンス特性を測定した結果である。図7において、グラフGは活性炭12を入れない場合、グラフHは従来の粒状活性炭(材質:フエノール系樹脂、粒径:φ1.0mm〜φ2.0mm、ミクロ孔径:約φ1.5nm)を120g入れた場合、グラフIは布状の活性炭繊維(材質:フェノール系樹脂、ミクロ孔径:約φ1.5nm)を46g入れた場合の測定結果をそれぞれ示す。
【0063】
以下、図7における音圧周波数特性についてのみ説明する。グラフHおよびグラフIの音圧周波数特性は、活性炭12を入れていないときのグラフGと比べて、100Hz以下の低音域で音圧レベルが高くなっている。これは、粒状活性炭および活性炭繊維の容積拡大効果によるものである。さらに、グラフHとグラフIとを比較すると、従来の粒状活性炭に比べて、活性炭繊維は気体がミクロ孔101に流入するまでの過程での音響エネルギーの損失が少ないため、200Hz以下の低音域で音圧レベルが高いことがわかる。例えば周波数80Hzでは、活性炭繊維のグラフIが粒状活性炭のグラフHと比べて約4dB高いことがわかる。
【0064】
以上のように、本実施形態に係るスピーカ装置は、活性炭12による容積拡大効果とバスレフ方式として動作する点とにより、さらなる大型容積のバスレフシステムとして動作する。換言すれば、本実施形態に係るスピーカ装置は、第1の実施形態で説明した密閉方式のスピーカ装置と比べて、低音域の再生限界をさらに拡大することができる。
【0065】
また、本実施形態に係るスピーカ装置によれば、活性炭繊維を遮蔽部材23で包装することによって、キャビネット内部が外気と通気してしまうバスレフ方式のスピーカ装置においても、活性炭を劣化させることなく、より安定的に低音域の再生限界帯域の拡大を図ることができる。
【0066】
また、上述した音響ポート21の開口部212hは、スピーカユニット11の背面と遮蔽部材23との間の空間R2に位置している。つまり、開口部212hとスピーカユニット11の背面との間に活性炭12および遮蔽部材23が遮らない構造となる。これにより、本実施形態に係るスピーカ装置は、バスレフ方式としての動作損失の発生を防止することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、活性炭12を例えば図8で示すような糸状の活性炭繊維として、遮蔽部材23が糸状の活性炭繊維を包装する形態であってもよい。図8は、遮蔽部材23で包装した糸状の活性炭繊維を示す図である。この場合、糸状の活性炭繊維は、遮蔽部材23によって外気と遮蔽されるという作用とともに、糸状繊維がキャビネット内部で飛散することを防止するという効果も期待される。また、活性炭繊維を切断してチョップ状にした場合でも、遮蔽部材23は外気との遮蔽と飛散防止という効果を発揮することができる。
【0068】
(第3の実施形態)
図9を参照して、本発明における第3の実施形態に係るスピーカ装置について説明する。本実施形態に係るスピーカ装置は、第1の実施形態に係るスピーカ装置に対して、パッシブラジエータ31を有する、いわゆるパッシブラジエータ方式のスピーカ装置である点で異なる。以下、異なる点を中心に説明する。図9は、第3の実施形態に係るスピーカ装置の正面図および側面の構造断面図を示す図である。図9において、スピーカ装置は、キャビネット30、スピーカユニット11、仕切板32、活性炭12、パッシブラジエータ31、および仕切板32を備える。なお、スピーカユニット11および活性炭12は、上述した第1の実施形態と同様であり、同一の符号を付して説明を省略する。
【0069】
図9において、スピーカユニット11は、キャビネット30の前面上部に形成された開口部に取り付けられる。パッシブラジエータ31は、振動板311およびサスペンション312で構成される。パッシブラジエータ31は、キャビネット30の前面下部に形成された開口部に取り取り付けられる。振動板311は、例えば円板状の部材である。サスペンション312の内周部は、振動板311の外周部に固設され、振動板311が振動可能となるように振動板311の外周を支持する。サスペンション312の外周部は、上記キャビネット30の前面下部に形成される開口部に固設される。活性炭12は、上述した第1の実施形態と同様、活性炭繊維である。活性炭12は、キャビネット30の内部に配置される。キャビネット30の内部空間であって、上述したスピーカユニット11の背面と活性炭12上部との間の空間を空間R3とする。仕切板32は、板状部材であり、キャビネット30の内側であって、パッシブラジエータ31と活性炭12との間を仕切る位置に固設される。また、仕切板32は、パッシブラジエータ31との間に空間R4を介して固設されている。仕切板32によって形成された空間R4によって、パッシブラジエータ31と活性炭12とが接触することを防止することができる。また、空間R3と空間R4とは連結している。これにより、活性炭12がスピーカユニット11とパッシブラジエータ31との間を遮ることによって生じる、位相反転方式としての動作の損失を防止することができる。このように、仕切板32は、空間R4を形成するための板状部材であり、活性炭12を支持するための支持部材である。
【0070】
次に、上述したスピーカ装置の動作について説明する。スピーカユニット11は、動電型スピーカであり、電気信号が印加されるとボイスコイルに駆動力が発生する。この駆動力によってスピーカユニット11の振動板が振動し、音圧が発生する。そして、振動板から発生した音圧によって、キャビネット30の内部に形成される空間R3およびR4の圧力が変化する。しかしながら、キャビネット30の内部に配置された活性炭12の物理吸着作用によって、キャビネット30の内部空間(空間R3およびR4)の圧力変化は抑制される。つまり、活性炭12は、キャビネット30の内部圧力の変化を抑制し、第1の実施形態と同様にキャビネット30の等価容積を拡大させる。
【0071】
また、本実施形態に係るスピーカ装置には、キャビネット30の前面下部にパッシブラジエータ31が設けられる。そして、このパッシブラジエータ31は、空室R4を介してスピーカユニット11の背面の空室R3に音響的に連結される。つまり、パッシブラジエータ31は、スピーカユニット11の振動に応動して駆動される。これにより、本実施形態に係るスピーカ装置は、位相反転方式の1つであるパッシブラジエータ方式のスピーカ装置として動作する。
【0072】
以上のように、本実施形態に係るスピーカ装置は、活性炭12による容積拡大効果とパッシブラジエータ方式として動作する点とにより、第1の実施形態で説明した密閉方式のスピーカ装置と比べて、低音域の再生限界をさらに拡大することができる。
【0073】
また、本実施形態に係るスピーカ装置によれば、パッシブラジエータ31を設けることによって、キャビネット30の内部が外気に触れることがない。したがって、本実施形態に係るスピーカ装置によれば、活性炭12の劣化を防止した、より安定的な低音域の再生限界帯域の拡大を図ることができる。
【0074】
なお、本実施形態に係るスピーカ装置は、キャビネット30内部が外気に触れない構造であるため、活性炭12を第2の実施形態で説明した遮蔽部材23で包装する必要は特にない。しかしながら、長期的に活性炭12の吸着効果の劣化を予防する観点から、活性炭12を遮蔽部材23で包装してもかまわない。これにより、活性炭12の劣化をより長期的に防止することができる。
【0075】
なお、図9に示すスピーカ装置において、活性炭12の積層方向はいかなる方向でもよいが、図9に示すような積層方向で活性炭12を配置するのが特に好ましい。以下、好ましい積層方向とその根拠について説明する。
【0076】
上述では、活性炭12として第1の実施形態と同様、布状の活性炭繊維を積層してキャビネット30の内部に配置している。このとき、活性炭12の積層方向によって、活性炭12の音響特性が大きく異なる。この積層方向による音響特性の差異は、活性炭12を通過する音の進行方向において、音の進入側から見た(空間R3から見た)活性炭12の呈する音響インピーダンスを測定することで明らかとなる。なお、音の進行方向は、図9で言えば、スピーカユニット11の背面から活性炭12へ向かう方向である。また、活性炭12の積層方向は、図9で言えば、キャビネット30の前後方向である。このように図9において、活性炭12の積層方向は、音の進行方向に対して垂直方向である。換言すれば、活性炭12の積層方向は、スピーカユニット11の背面から放射される音を活性炭12の面で受けないような方向である。そして、活性炭12が音の進行方向に対して垂直方向に積層されることで、活性炭12の繊維と繊維との間に上記音の進行方向と同じ方向の隙間が形成される。また、少なくとも一部の隙間が空間R3と接するように形成される。
【0077】
ここで、積層方向の違いによる音響特性の差異を説明するために、例えば図10に示す積層方向で活性炭12を配置した場合を考える。図10は、活性炭12を積層方向を変えて配置したスピーカ装置の構造断面図である。図10に示す活性炭12の積層方向は、キャビネット30の上下方向である。つまり、図10に示す活性炭12の積層方向は、上記音の進行方向と同じ方向である。さらに換言すれば、図10に示す活性炭12の積層方向は、スピーカユニット11の背面から発生する音を活性炭12の面で受けるような方向である。
【0078】
図11を参照して、図9および図10に示す活性炭12の各積層方向における音響特性について説明する。図11は、容積が0.5リットルあるキャビネット内部に活性炭12の積層方向を変えて配置した場合の音響インピーダンスの測定結果である。図11において、活性炭12は比表面積が2000m2/g、全重量が40gの布状の活性炭繊維とする。なお、図11における音響インピーダンスは、上記キャビネットに連結した音響管内の音圧特性の変化を測定することによって得られる結果である。また、図11に示す測定値は上記音響管の開口部の面積Siと空気の固有音響抵抗Z0の積で規格化した比音響インピーダンスで示している。
【0079】
図11において、グラフJは、図10に示すように活性炭12の積層方向が音の進行方向に対して同じ方向である場合の音響インピーダンスのリアクタンス成分の絶対値を示したグラフである。グラフKは、当該音響インピーダンスの抵抗成分を示したグラフである。グラフLは、図9に示すように活性炭12の積層方向が音の進行方向に対して垂直方向である場合の音響インピーダンスのリアクタンス成分の絶対値を示したグラフである。グラフMは、当該音響インピーダンスの抵抗成分を示したグラフである。
【0080】
グラフJおよびグラフLより、200Hz以下の低音域においてリアクタンス成分は、活性炭12の量を重量40gで一定としているため、積層方向の条件による音響特性の差異はほとんどない。しかし、抵抗成分においては、例えば周波数100HzにおいてグラフKが約1となるのに対して、グラフMは0.3となる。つまり、音の進行方向に対する活性炭12の積層方向により、抵抗成分の値が3倍の差異が生じることがわかる。図12は、抵抗成分の差異が音圧周波数特性に与える影響を計算により求めた図である。計算の条件としては、キャビネットは容積が1リットルのバスレフ方式とし、スピーカユニットは8cm口径としている。図12において、グラフNは、音響インピーダンスの抵抗成分が0.3とした場合の音圧周波数特性を示したグラフである。グラフOは、音響インピーダンスの抵抗成分が1.0の場合の音圧周波数特性を示したグラフである。グラフNおよびグラフOを比較すると、周波数90Hz付近で抵抗成分が0.3であるグラフNの方が約4.5dB音圧レベルが高くなることがわかる。すなわち、活性炭12の積層方向が音の進行方向に対して垂直方向に積層されることで、活性炭12にはその繊維と繊維との間に上記音の進行方向と同じ方向の隙間が形成される。これにより、スピーカユニットから放射された音はその隙間を通過することが容易となる。つまり、気体がミクロ孔まで流入する過程までの損失が少ないので、低音域での音圧レベルの低下は大幅に低減される。
【0081】
以上のように、活性炭12の積層方向が音の進行方向に対して垂直方向に積層されることが特に好ましい。なお、活性炭12を図9に示す積層方向に積層した場合と同様の効果を得る他の積層方法としては、例えば図13に示すように渦巻状に積層する方法もある。図13は、布状の活性炭繊維である活性炭12を渦巻状に積層してキャビネット30の内部に配置したスピーカ装置の構造断面図である。図13において、活性炭12はx−y断面図に示されるような渦巻状に積層され、キャビネット30の内部に配置される。このとき、活性炭12の繊維と繊維との間の隙間は、音の進行方向と同じ方向に形成される。これにより、スピーカユニット11の背面から放射された音は、布状の繊維と繊維との間を通過することが容易となる構造となり、図9に示した積層方法と同様の効果を得ることができる。
【0082】
なお、上述した活性炭12の積層方向の違いは、上述した第1、第2、および後述する第4の実施形態に係るスピーカ装置においても同様の効果を与えるものであり、本実施形態に限定されるものではない。また、上述した活性炭12は、例えば1枚の布状の活性炭繊維を折り畳んで積層したものでもよいし、複数枚の活性炭繊維を重ねて積層したものでもよい。
【0083】
(第4の実施形態)
上述した第1〜第3の実施形態に係るスピーカ装置は、例えば携帯電話などの携帯端末装置に応用することができる。携帯端末装置の他の例としては、例えばHDDプレーヤ、半導体メモリープレーヤなどのポータブル機器がある。以下、図14および図15を参照して、携帯端末装置として携帯電話に本発明のスピーカ装置を応用したものを第4の実施形態として説明する。図14は、本発明におけるスピーカ装置を搭載した携帯電話を示す図である。なお、図14(a)は、携帯電話の正面図を示す。図14(b)は、携帯電話の側面図を示す。図14(c)は、携帯電話の裏面図を示す。図15は、図14に示す線AB間で携帯電話を切断した断面図である。
【0084】
図14において、携帯電話40は、例えば2つ折り可能な携帯電話である。携帯電話40は、大略的に本体ケース41、液晶画面42、スピーカ装置43、アンテナ44、およびヒンジ部45を備える。液晶画面42は、本体ケース41に取り付けられている。本体ケース41の側面には、図14(b)に示すように、開口部411が形成されている。詳細については後述するが、スピーカ装置43は、上述した第1〜第3の実施形態に係るスピーカ装置のいずれかと同様の構成をもつスピーカ装置である。スピーカ装置43は、液晶画面42とヒンジ部45の間に設けられている。スピーカ装置43は、図15に示すように、大略的にスピーカユニット50および活性炭12を備える。なお、スピーカ装置43のキャビネットは、図15においては携帯電話40の本体ケース41の内部空間をキャビネットとして利用している。つまり、図14および図15においては、スピーカ装置43のキャビネットは、本体ケース41によって当該本体ケース41と一体的に形成されている。また、左右2つのスピーカ装置43のキャビネットを分離するための仕切板412が本体ケース41の内部に設けられている。活性炭12は、本体ケース41の内部に形成されたキャビネットの内部空間R5に配置される。
【0085】
スピーカユニット50は、動電型スピーカである。スピーカユニット50は、フレーム51、ヨーク52、マグネット53、プレート54、ボイスコイル55、振動板56、ガスケット57、および防塵メッシュ58を備える。ヨーク52は、フレーム51の下面に固着され、フレーム51と一体化されている。マグネット53は、例えば円柱状であり、ヨーク52の下面に固着される。プレート54は、例えば円柱状であり、マグネット53の下面に固着される。ヨーク52とプレート54の外周面との間には、磁気ギャップが形成される。振動板56は、例えばポリエチレンナフタレートやポリイミドなどの樹脂フィルムで構成される。振動板56の外周は、ガスケット57とフレーム51との間に挟まれるように固着される。ボイスコイル55は、例えば円筒状に成形されたコイルである。ボイスコイル55は、上記磁気ギャップ中に配置されるように、振動板56に固着される。上述したガスケット57は、例えば円環状であり、振動板56が防塵メッシュ58と接触しないように振動板56の振幅を確保するためのものである。ガスケット57は、フレーム51の下面に固着される。防塵メッシュ58は、通気性があり、埃などの粉塵を防塵するメッシュ構造の部材である。防塵メッシュ58は、ガスケット57の下面に固着される。また、防塵メッシュ58は、スピーカユニット50のボイスコイル55や振動板56と、活性炭12との間を仕切るように配置されている。フレーム51の上面には、振動板56から放射される音が開口部411から放射されるように、複数の音孔51hが形成されている。
【0086】
スピーカユニット50は、本体ケース41の底面部に対して空間R6を介した位置に配置される。なお、図15に示すように、スピーカユニット50は、ボイスコイル55が固着されていない振動板56の面を本体ケース41の内部空間に向けて配置されている。つまり、ボイスコイル55が活性炭12に対して振動板56を介した位置に配置されている。ここで、上述した防塵メッシュ58は、粉塵として活性炭12から離脱する可能性のある短繊維の欠片が振動板56側に侵入することを防ぐことができる微細な開口のメッシュであることが望ましい。しかしながら、上記短繊維の欠片が多少侵入した場合であっても、振動板56は、ボイスコイル55に対して、本体ケース41の内部空間側に配置されているので、振動板56が遮蔽板の役割を果たして上記短繊維の欠片はボイスコイル55に到達しない。その結果、上記短繊維の欠片がボイスコイル55と接触して、電気的なショートによる故障や異音の発生を防止することができる。
【0087】
次に、図15で示したスピーカ装置43の動作について説明する。スピーカユニット50は、動電型スピーカであり、その動作は一般的な動電型スピーカと同様であるので詳細な説明を省略する。例えば、携帯電話40がアンテナ44から受信信号を受け取ると、当該受信信号が信号処理部(図示しない)などで適宜処理され、スピーカユニット50に入力される。そして、例えば受信呼び出し用のメロディ信号がスピーカユニット50に印加されると、ボイスコイル55に駆動力が発生する。この駆動力によって振動板56が振動して、メロディ音が発生する。振動板56の上面から発生したメロディ音は、フレーム51に形成された音孔51hを介して開口部411から放射される。一方、振動板56の下面から発生した音は、防塵メッシュ58を通過して、本体ケース41に形成されるキャビネットの内部空間(空間R5およびR6)の圧力を変化させる。しかしながら、活性炭12の物理吸着作用によって、上記内部空間の圧力変化は抑制され、内部空間の容積は等価的に拡大する。
【0088】
以上のように、本発明のスピーカ装置を携帯電話に応用することで、携帯電話において、低音豊かな再生を実現することができる。
【0089】
また、一般的な携帯電話において、その内部容積は非常に小さく、搭載できるスピーカユニットの口径も小さい。これらの理由により、呼び出し音や会話音を再生するスピーカ装置の再生帯域は、500Hz以上の帯域となりやすい。これに対し、従来の粒状活性炭を活性炭12に用いた場合には、上述したように100Hz〜200Hz以上の高域に対して物理吸着効果がほとんど得られない。図16は、図14および図15で示したスピーカ装置43において、スピーカユニット50の振動板56の振幅特性を測定した結果を示す図である。図16において、キャビネットの内部空間(空間R5およびR6)の容積は1ccとしている。スピーカユニット50の口径は、φ14mmとしている。また、図16は、活性炭12を入れない場合の振幅特性をグラフP、従来の粒状活性炭(平均粒径;0.1〜0.3mm、重量;100mg)を入れた場合の振幅特性をグラフQ、布状の活性炭繊維(比表面積;2000m2/g、重量;100mg)を入れた場合の振幅特性をグラフR、スピーカユニット50単体の状態での振幅特性をグラフSとして、それぞれの振幅特性を相対的に示している。なお、相対的に示した振幅特性を相対振幅とする。また、スピーカユニット50単体の状態の振幅特性とは、スピーカユニット50を本体ケース41に搭載せずに、スピーカユニット50単体で測定した振幅特性である。
【0090】
スピーカユニット50単体の状態の振幅特性を示すグラフSをみると、共振周波数f0S=606Hzに振幅のピークがあることがわかる。また、その共振周波数以下の低域においては、振動板56のスティフネスの影響によって振幅値が一定となっている。
【0091】
活性炭12を入れない場合の振幅特性を示すグラフPをみると、空間R5およびR6がもつ空気のスティフネスの影響によって、共振周波数がf0P=1256Hzに上昇することがわかる。また、共振周波数f0P以下の低域においては、振動板56のスティフネスに対して、空間R5およびR6がもつ空気のスティフネスの影響が大きい。これにより、共振周波数f0P以下の低域においては、空間R5およびR6がもつ空気のスティフネスの影響によって振幅値が一定となっている。
【0092】
従来の粒状活性炭を入れた場合の振幅特性を示すグラフQをみると、共振周波数がf0Q=1256Hzとなり、活性炭12を入れない場合のグラフPと同じ周波数となる。ここで、上述した第1の実施形態においても述べたように、共振周波数がキャビネット容積の2乗に比例するという関係から、周波数1200Hz付近においては、粒状活性炭による容積拡大効果がほとんどない、つまり、物理吸着効果がほとんど得られないことがわかる。一方、共振周波数f0Q以下の低域においては、活性炭12がない場合のグラフPとは異なり、周波数が低くなるにしたがって振幅値が増加している。これは、周波数の低下とともに粒状活性炭の物理吸着効果が現れてくることを示している。グラフPとグラフQとを比較すると、平均粒径が0.1〜0.3mmである粒状活性炭では、およそ200Hz以下の低域では物理吸着効果が得られるが、200Hz以上の高域では物理吸着効果がほとんど得られないことがわかる。この結果は、上記特許文献1に開示された図6の特性とも対応づけられる。
【0093】
布状の活性炭繊維を入れた場合の振幅特性を示すグラフRをみると、共振周波数はf0R=879Hzとなる。活性炭12を入れない場合のグラフPの共振周波数f0Pに対して、グラフRの共振周波数は低下している。ここで、上述した第1の実施形態においても述べたように、共振周波数がキャビネット容積の2乗に比例するという関係から、活性炭12を入れない場合に対して、本発明の活性炭繊維を用いた場合のキャビネット容積の拡大率は(f0P/f0R2=2.04となる。つまり、キャビネットの等価容積が約2倍に拡大されていることがわかる。一方、グラフRにおいて、共振周波数f0R以下の低域においては、振幅値は一定である。また、共振周波数f0R以下の低域においては、グラフPおよびグラフQと比較すると、振幅値は増加している。また、この振幅値の増加は、200Hz以上の高域でもみられる。つまり、本発明の活性炭繊維を用いれば、200Hz以上の高域でも大きな物理吸着効果が得られることがわかる。
【0094】
これは、上述したように粒状活性炭では、気体の通路として作用するマクロ孔がハイカットフィルタとして作用して、高域ではミクロ孔への気体の流入が抑制されていた。これに対して、ミクロ孔が表面に存在する活性炭繊維では、マクロ孔が形成されず、そのマクロ孔によるハイカットフィルタの作用が減少するためである。
【0095】
図17は、口径がφ14mmであるマイクロスピーカを容積が1ccのキャビネットに入れた場合における音圧周波数特性と電気インピーダンス特性を示す図である。図17において、グラフTは活性炭12を入れない場合の音圧周波数特性および電気インピーダンス特性を示す。グラフUは、活性炭12として活性炭繊維を入れた場合の音圧周波数特性および電気インピーダンス特性を示す。グラフTおよびグラフUの音圧周波数特性を比較すると、グラフUの方が低域が拡大していることがわかる。そして、グラフUの電気インピーダンス特性においても、共振周波数がグラフTの共振周波数に比べて低域側にシフトしている。このように、活性炭12として活性炭繊維を用いることにより、低音域が大きく拡大される。
【0096】
このように、これまで100Hz〜200Hz以下の低音域でしか物理吸着効果が得られなかった従来の粒状活性炭に対し、活性炭繊維を用いることによって、物理吸着効果が得られる周波数帯域を100Hz〜200Hz以上の高域にまで拡大させることができる。その結果、再生周波数帯域の高い携帯端末用の機器においても、低音域へ再生帯域を伸ばしたスピーカ装置を実現することができる。
【0097】
なお、本実施形態では、スピーカユニット50はボイスコイル55が固着されていない振動板56の面を本体ケース41の内部空間に向けて配置するとしたが、これに限定されない。図15に示すスピーカユニット50を上下反対にして配置してもよい。このとき、スピーカユニット50は、音孔51hが空間R6と接するように配置される。この場合、ボイスコイル55付近に活性炭12から離脱した短繊維の欠片が侵入する可能性がある。そこで、この場合には音孔51hに防塵メッシュを設けることで、短繊維の欠片の侵入を防止することができる。このように、防塵メッシュ58は、スピーカユニット50と活性炭12との間を仕切るように配置されればよい。したがって、防塵メッシュ58は、スピーカユニット50に備えるとしたが、スピーカユニット50に備えずに当該スピーカユニット50と活性炭12との間を仕切るように設けられてもよい。この場合、スピーカ装置43は、防塵メッシュ58のないスピーカユニット50と、活性炭12と、本体ケース41で形成されるキャビネットとで構成される。これにより、活性炭12から生じる粉塵などがスピーカユニット50に流入することを防止することができる。
【0098】
また、上述したスピーカ装置43のキャビネットは、本体ケース41の内部空間を利用するとしたが、本体ケース41とは別に設けられてもよい。また、第1〜第3の実施形態に係るスピーカ装置そのものを本体ケース41の内部にある専用スペースなどに取り付ける構成であってもよい。この場合、携帯電話の組立工程において、本体ケース41に一体的に形成されたキャビネット内に活性炭12を入れるという作業がなくなり、より実用的である。
【0099】
また、上述した第1〜第3の実施形態に係るスピーカ装置は、携帯端末装置に限らず、例えば自動車の車体内部に搭載するスピーカ装置であってもよい。まず図18を参照して、上述した第1〜第3の実施形態に係るスピーカ装置を自動車の車体の内部に搭載する場合について説明する。車体内部に配置する一例としては、例えば自動車のドアが挙げられる。図18は、本発明におけるスピーカ装置が自動車のドアに搭載された一例を示す図である。
【0100】
図18において、自動車のドアは、窓部70、ドア本体71、スピーカユニット72、および活性炭12で構成される。ここで、スピーカユニット72は、上述した第1〜第3の実施形態に係るスピーカユニット11と同様に、一般的な動電型スピーカである。スピーカユニット72は、ドア本体71に取り付けられる。ドア本体71内部には、空間が形成されている。そして、活性炭12はこのドア本体71の内部空間に配置される。このように、ドア本体71は、キャビネットとしての役割を果たすので、スピーカユニット11、ドア本体71、および活性炭12で本発明におけるスピーカ装置を構成することになる。以上のように、本発明におけるスピーカ装置を自動車のドアに搭載することによって、従来と同じドア本体71に取り付けられた場合であっても、等価容積の拡大を図るとともに、音響エネルギーの損失による音圧レベルの低下を防止して、低音を豊かに再生する車内リスニング環境を提供することが可能となる。
【0101】
また、上述した第1〜第3の実施形態に係るスピーカ装置は、例えば車体内部に配置される車載用のスピーカ装置であってもよい。図19は、自動車の車内に設置されたスピーカ装置の一例を示す図である。図19において、スピーカ装置76は、例えば座席75の下に設置される。ここで、スピーカ装置76は、上述した第1〜第3の実施形態に係るスピーカ装置のいずれかであり、詳細な説明を省略する。以上のように、スピーカ装置76を車両に搭載することによって、従来と同じキャビネット容積であっても等価容積の拡大を図るとともに、音響エネルギーの損失による音圧レベルの低下を防止して、低音を豊かに再生する車内リスニング環境を提供することが可能となる。
【0102】
また、上述した第1〜第3の実施形態に係るスピーカ装置は、図20に示すような車載用のスピーカ装置であってもよい。図20は、自動車の車内に設置されたスピーカ装置の他の例を示す図である。図20において、スピーカ装置は、キャビネット77、台座78、スピーカユニット11、パンチングネット79、および活性炭12を備える。活性炭12は、キャビネット77の内部に配置される。ここで、スピーカユニット11および活性炭12は、上述したスピーカユニット11および活性炭12と同様であり、詳細な説明を省略する。以上のように、図20に示すスピーカ装置を自動車の車内に搭載することによって、従来と同じキャビネット容積であっても等価容積の拡大を図るとともに、音響エネルギーの損失による音圧レベルの低下を防止して、低音を豊かに再生する車内リスニング環境を提供することが可能となる。なお、キャビネット77の形状は、図20に示す円筒形状に限定されず、直方体形状などであってもよい。
【0103】
次に、図21を参照して、上述した第1〜第3の実施形態に係るスピーカ装置を映像機器(例えば、ブラウン管テレビ、液晶テレビ、プラズマテレビなど)に搭載する場合について説明する。図21は、上記スピーカ装置を薄型テレビに搭載した構成の一例を示す図であり、当該薄型テレビの正面図と、その一部を線OAにおける断面図で示した側面図を示す。図21において、薄型テレビは、薄型テレビ本体80、ディスプレイ81、および2個のスピーカ装置82を備える。スピーカ装置82は、第1〜第3の実施形態において説明したスピーカ装置のいずれかであり、詳細な説明を省略する。
【0104】
スピーカ装置82のキャビネット83は、ディスプレイ81の下部に設けられた筐体の内部に配置される。スピーカユニット11は、例えば楕円形状のスピーカユニットであり、キャビネット83に取り付けられる。活性炭12は、キャビネット83の内部に配置される。以上のように、本発明におけるスピーカ装置を薄型テレビ本体80に搭載することで、従来と同じキャビネット容積であっても等価容積の拡大を図るとともに、音響エネルギーの損失による音圧レベルの低下を防止して、低音を豊かに再生するリスニング環境を提供することが可能となる。なお、図21に示すスピーカ装置82は、ディスプレイ81の下部に取り付けられる形態であるが、ディスプレイ81の両脇に配置される形態であってもよい。
【0105】
以上のように、上述した第1〜第3の実施形態に係るスピーカ装置が様々な機器や車両に搭載されることで、各機器や車両内において、等価容積の拡大を図るとともに、音響エネルギーの損失による音圧レベルの低下を防止して、低音を豊かに再生することを実現することができる。
【0106】
なお、上述した第1〜第4の実施形態において、スピーカユニット11、50、および72は、動電型スピーカであってもよいし、例えば圧電型、静電型、電磁型などのスピーカであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、キャビネットの内部に活性炭繊維を配置することにより、等価容積の拡大を図るとともに、音響エネルギーの損失による音圧レベルの低下を防止して、低音を豊かに再生することが可能な薄型化が進む液晶テレビ、PDP(プラズマディスプレイ)、ステレオ装置、5.1チャンネル再生のホームシアター用スピーカ、および車載用オーディオ機器等にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】第1の実施形態に係るスピーカ装置の一例を示す構造断面図
【図2】活性炭繊維に形成される細孔を模式的に示す図
【図3】活性炭繊維である活性炭12の効果を示す実測結果を示す図
【図4】比表面積別の容積拡大効果について測定した結果を示す図
【図5】等価容積と音圧周波数特性との関係を計算により求め、グラフ化した図
【図6】第2の実施形態に係るスピーカ装置の正面図および側面の構造断面図を示す図
【図7】活性炭繊維である活性炭12の効果を示す実測結果を示す図
【図8】遮蔽部材23で包装した糸状の活性炭繊維を示す図
【図9】第3の実施形態に係るスピーカ装置の正面図および側面の構造断面図を示す図
【図10】活性炭12を積層方向を変えて配置したスピーカ装置の構造断面図
【図11】容積が0.5リットルあるキャビネット内部に活性炭12の積層方向を変えて配置した場合の音響インピーダンスの測定結果を示す図
【図12】抵抗成分の差異が音圧周波数特性に与える影響を計算により求めた図
【図13】布状の活性炭繊維である活性炭12を渦巻状に積層してキャビネット30の内部に配置したスピーカ装置の構造断面図
【図14】本発明におけるスピーカ装置を搭載した携帯電話を示す図
【図15】図14に示す線AB間で携帯電話を切断した断面図
【図16】図14および図15で示したスピーカ装置43において、スピーカユニット50の振動板56の振幅特性を測定した結果を示す図
【図17】口径がφ14mmであるマイクロスピーカを容積が1ccのキャビネットに入れた場合における音圧周波数特性と電気インピーダンス特性を示す図
【図18】本発明におけるスピーカ装置が自動車のドアに搭載された一例を示す図
【図19】自動車の車内に設置されたスピーカ装置の一例を示す図
【図20】自動車の車内に設置されたスピーカ装置の他の例を示す図
【図21】本発明におけるスピーカ装置を薄型テレビに搭載した構成の一例を示す図
【図22】従来のスピーカ装置における主要部の構造断面図
【図23】粒状活性炭に形成される細孔の構造を模式的に示す図
【符号の説明】
【0109】
10、20、30、77 キャビネット
11、50、72 スピーカユニット
12 活性炭
21 音響ポート
22、32、412 仕切板
23 遮蔽部材
31 パッシブラジエータ
311、56 振動板
312 サスペンション
40 携帯電話
41 本体ケース
42 液晶画面
43、82 スピーカ装置
44 アンテナ
45 ヒンジ部
411 開口部
51 フレーム
52 ヨーク
53 マグネット
54 プレート
55 ボイスコイル
57 ガスケット
58 防塵メッシュ
70 窓部
71 ドア本体
75 座席
78 台座
79 パンチングネット
80 薄型テレビ本体
81 ディスプレイ
100 マクロ孔
101 ミクロ孔


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットと、
前記キャビネットに取り付けられるスピーカユニットと、
前記キャビネットの内部空間に配置され、100Hz以上の高域においても、前記スピーカユニットから放射される音の圧力変動で気体分子を吸脱着することが可能な繊維状の活性炭とを備える、スピーカ装置。
【請求項2】
前記繊維状活性炭は、非活性炭材料であるバインダを複合した繊維状であることを特徴とする、請求項1記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記バインダは、ポリエステル繊維、または、パルプ繊維であることを特徴とする、請求項2記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記キャビネットが密閉型のキャビネットであることを特徴とする、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記キャビネットに取り付けられ、前記キャビネットの内部空間と外部空間とを音響的に連結する音響ポートをさらに備える、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記活性炭は、前記音響ポートの両端の開口部のうち前記キャビネットの内部空間に接続される開口部を遮らないように、前記キャビネットの内側に固設されることを特徴とする、請求項3に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記キャビネットに取り付けられ、前記スピーカユニットの振動に応動して駆動されるパッシブラジエータをさらに備える、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記パッシブラジエータとの間に空隙を形成するように前記パッシブラジエータと前記活性炭との間に固設される板状部材をさらに備える、請求項7に記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記活性炭がフェノール系樹脂から生成されることを特徴とする、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項10】
前記スピーカユニットが動電型、圧電型、静電型、または電磁型のいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項11】
前記活性炭の比表面積が500m2/g以上であることを特徴とする、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項12】
前記活性炭は、布状に形成された活性炭が積層された構成を有することを特徴とする、請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項13】
前記布状に形成された活性炭が積層される方向は、前記スピーカユニットから当該布状に形成された活性炭へ向かう方向に対して垂直であることを特徴とする、請求項12に記載のスピーカ装置。
【請求項14】
前記布状の活性炭は、前記スピーカユニットから当該布状の活性炭へ向かう方向を軸とし、当該軸を中心にして巻回されることによって渦巻状に積層されることを特徴とする、請求項13に記載のスピーカ装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のスピーカ装置と、
前記スピーカ装置を支持するケースとを備える、携帯端末装置。
【請求項16】
前記スピーカユニットは、
ボイスコイルと、
前記ボイスコイルを一方面に固着した振動板とを有し、
前記スピーカユニットは、前記振動板の他方面を前記内部空間に向けて取り付けられることを特徴とする、請求項15に記載の携帯端末装置。
【請求項17】
前記スピーカ装置は、前記スピーカユニットと前記活性炭との間を仕切るように前記キャビネットの内側に固設される防塵部材をさらに備える、請求項15に記載の携帯端末装置。
【請求項18】
請求項1から14のいずれか1項に記載のスピーカ装置と、
前記スピーカ装置を内部に配置する車体とを備える、車両。
【請求項19】
請求項1から14のいずれか1項に記載のスピーカ装置と、
前記スピーカ装置を内部に配置する筐体とを備える、映像機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2008−252908(P2008−252908A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111710(P2008−111710)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【分割の表示】特願2006−537652(P2006−537652)の分割
【原出願日】平成17年8月29日(2005.8.29)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】