説明

スリーブ印刷版の検査装置

【課題】スリーブ印刷版の凸版の径方向位置情報を正確に得ることができるとともに、効率良く、かつ、精度良く前記凸版の検査を行うことが可能なスリーブ印刷版の検査装置を提供する。
【解決手段】スリーブ印刷版30に設けられた凸版の形状を検査するスリーブ印刷版の検査装置50であって、円筒面51Aを有するとともに、円筒面51Aの軸線L中心に回動可能な回転ドラム51と、回転ドラム51の円筒面51Aから離間して配置され、軸線Lに平行な方向に移動可能な直動部56と、直動部56に支持され、軸線Lからの径方向距離を測定する距離センサ60と、回転ドラム51の回転方向位置情報θ、距離センサ60の軸線L方向位置情報Z、距離センサ60による径方向位置情報r、を得て、円筒面51Aに装着されたスリーブ印刷版30の凸版33の形状を再現する演算部と70、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置のシリンダに装着されて使用されるスリーブ印刷版に設けられた凸版の形状を検査するスリーブ印刷版の検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前述のスリーブ印刷版は、例えば特許文献1に記載されているように、フレキソ印刷、凸版印刷の分野において広く使用されている。また、特許文献2に記載されているように、缶等の円筒物に対するオフセット印刷の分野においても、スリーブ印刷版が適用されている。
このスリーブ印刷版では、画像パターンの周方向位置がスリーブ支持体上で予め設定されているので、スリーブ支持体とシリンダとの位置合わせを行うことで画像パターンの見当合わせを行うことができ、画像パターンの交換作業に掛かる時間と労力を大幅に削減することが可能となる。
【0003】
このようなスリーブ印刷版は、通常、繊維強化プラスチック(FRP)又は金属製のスリーブ支持体と、このスリーブ支持体の外周面に配設されたプラスチック樹脂からなる版材と、を備えており、この版材に対して、例えばレーザー光による彫刻や、露光現像処理(エッチング処理)等によって凸版が形成される。若しくは、平板の上にレーザー彫刻や露光現像処理等によって凸版に形成し、その後に、溶接若しくは接着によりスリーブ状に形成される。
ここで、スリーブ印刷版を使用する場合、凸版の形状が所定の画像パターンとなっているか否かを検査する必要がある。従来は、彫刻前の版材の外周面に着色をしておき、彫刻された部分の色が変化するように構成し、凸版の形状を外周側から目視検査していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−326938号公報
【特許文献2】特開2006−272682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、缶の印刷装置において使用されるスリーブ印刷版の凸版においては、スリーブ印刷版の径方向外方に位置するベタ部と、径方向内方に向けて凹んだ基底部及びこの基底部から突出する複数の突起部を備えた網点部と、を備えている。この凸版においては、印圧が大きくなると突起部がつぶれるように変形して印刷される点(ドット)が太る現象(いわゆるドットゲイン)が大きくなってしまう。そこで、このドットゲインを抑制する手段として、突起部の頂部の径方向位置を前記ベタ部の径方向位置よりも僅かに径方向内方に位置させた凸版が提案されている。
【0006】
また、この突起部は、径方向外方に向かうにしたがい漸次断面積が小さくなるようにテーパ状に形成されているが、このテーパ角が所定の角度でない場合には、突起部の剛性が不足してしまうおそれがある。
さらに、基底部とベタ部との径方向位置の差、すなわち基底部の深さについても、印刷の品質に影響を与えることがある。例えば、基底部の深さが不足した場合には、インキ詰まりが発生し易くなり、基底部の深さが深すぎるとスリーブ印刷版自体の剛性が低下してしまい画像が歪むおそれがある。
【0007】
したがって、形成された凸版においては、突起部の頂部の径方向位置とベタ部の径方向位置との差、突起部のテーパ角、基底部の深さ等を、精度良く検査することが望まれている。しかしながら、従来の目視検査では、凸版の最外周部(径方向外方端)部分しか検査できず、径方向位置情報を得ることができなかった。また、目視検査では、検査効率が悪く、検査精度も充分ではなかった。
【0008】
本発明は、前述の事情に鑑みてなされたものであって、突起部の頂部の径方向位置とベタ部の径方向位置との差、突起部のテーパ角、基底部の深さ等の、スリーブ印刷版の凸版の径方向位置情報を正確に得ることができるとともに、効率良く、かつ、精度良く前記凸版の検査を行うことが可能なスリーブ印刷版の検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の課題を解決するために、本発明に係るスリーブ印刷版の検査装置は、印刷装置のシリンダに装着されて使用されるスリーブ印刷版に設けられた凸版の形状を検査するスリーブ印刷版の検査装置であって、前記スリーブ印刷版が装着される円筒面を有するとともに、該円筒面の軸線中心に回動可能な回転ドラムと、前記回転ドラムの前記円筒面から離間して配置され、前記回転ドラムの前記軸線に平行な方向に移動可能な直動部と、前記直動部に支持され、前記軸線からの径方向距離を測定する距離センサと、前記回転ドラムの回転方向位置情報、前記距離センサの軸線方向位置情報、前記距離センサによる径方向位置情報、を得て、前記円筒面に装着された前記スリーブ印刷版の前記凸版の形状を再現する演算部と、を備えていることを特徴としている。
【0010】
この構成のスリーブ印刷版の検査装置によれば、回転ドラムの円筒面に装着されたスリーブ印刷版に対して、直動部に設けられた距離センサを用いて凸版の径方向位置情報を得ることが可能となる。この径方向位置情報と、回転ドラムの回転方向位置情報と、距離センサの軸線方向位置情報とを得ることによって、演算部において凸版の形状を再現することが可能となるのである。
よって、スリーブ印刷版に形成された凸版の突起部の頂部の径方向位置とベタ部の径方向位置との差、突起部のテーパ角、基底部の深さ等の、スリーブ印刷版の凸版の径方向位置情報を正確に得ることができ、凸版の検査を、効率良く、かつ、精度良く行うことが可能となる。
【0011】
ここで、前記演算部が、前記凸版の形状をグレースケールで再現する構成とすることが好ましい。
この場合、凸版の径方向位置情報がグレースケールにて表現されることになる。例えば、凸版の径方向位置情報を8bitで分割した場合、凸版の径方向位置情報が256階調で表現されることになり、例えば径方向外方端部分を256(黒色)とすると、突起部の頂部の位置が例えば230とされ、基底部の位置が例えば100と表現され、径方向高さについてそれぞれ評価することが可能となるのである。
【0012】
さらに、前記演算部に、前記回転ドラムに装着された前記スリーブ印刷版の傾き及び歪みを補正する補正手段が備えていることが好ましい。
スリーブ印刷版においては、その肉厚が薄く、変形しやすい傾向にある。また、レーザー彫刻やエッチング処理によって版材が除去された部分については、剛性が他の部分よりも低くなるため、歪み等が発生するおそれがある。そこで、これらの傾きや歪みを補正する補正手段を備えることによって、凸版の形状を精度良く検査することが可能となる。
【0013】
また、前記演算部に、再現された前記凸版の形状を基準モデルと比較する比較手段が設けられていることが好ましい。
この場合、基準モデルとの比較によって、凸版の合否を簡単にかつ正確に判断することが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、突起部の頂部の径方向位置とベタ部の径方向位置との差、突起部のテーパ角、基底部の深さ等の、スリーブ印刷版の凸版の径方向位置情報を正確に得ることができるとともに、効率良く、かつ、精度良く前記凸版の検査を行うことが可能なスリーブ印刷版の検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態であるスリーブ印刷版の検査装置において検査されるスリーブ印刷版の斜視図である。
【図2】図1のスリーブ印刷版を軸線方向から見た図である。
【図3】図1に示すスリーブ印刷版に設けられた凸版の拡大断面図である。
【図4】図1に示すスリーブ印刷版が使用されるオフセット印刷装置の模式図である。
【図5】本実施形態であるスリーブ印刷版の検査装置の説明図である。
【図6】実施例1の結果を示す説明図である。
【図7】実施例2の結果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
まず、本実施形態であるスリーブ印刷版の検査装置50によって検査されるスリーブ印刷版30について図1〜図3を用いて説明する。
このスリーブ印刷版30は、図1及び図2に示すように、軸線Oに沿って延びる円筒状をなすスリーブ支持体31と、スリーブ支持体31の外周側に配設された版材32と、を備えている。
【0017】
スリーブ支持体31は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で形成されており、外径Dが100mm≦D≦250mm、軸線O方向長さLが50mm≦L≦500mm、とされ、外径Dと軸線O方向長さLとの比L/Dが0.2≦L/D≦2に設定されている。さらに、スリーブ支持体31の肉厚tは、0.25mm≦t≦2mmとされている。
【0018】
版材32は、例えばレーザー光による彫刻が可能な感光性樹脂からなり、肉厚が0.5mm〜1.0mmの円筒状をなしている。この版材32の外周面には、エッチングやレーザー加工によって画像パターンを有する凸版33が刻設されている。なお、本実施形態では、図2に示すように、2つの凸版33、33が軸線Oを挟んで対向する位置に刻設されている。
【0019】
凸版33は、図3に示すように、スリーブ印刷版30の径方向外方端に位置するベタ部41と、径方向内方側に大きく凹んだ基底部43及びこの基底部43から立設された突起部44を有する網点部42と、を備えている。
ここで、ベタ部41と突起部44の頂部44Aとの径方向距離H1は、10μm≦H1≦200μmの範囲内に設定されている。つまり、突起部44の頂部44Aがベタ部41よりも径方向内方に後退させられているのである。
また、基底部43の深さ(ベタ部41からの径方向深さ)H2は、400μm≦H2≦700μmの範囲内に設定されている。
【0020】
さらに、突起部44は、図3に示すように、径方向外方に向かうにしたがい漸次断面積が小さくなるようにテーパ状に形成されており、このテーパ角αが、40°≦α≦80°の範囲内に設定されている。
【0021】
次に、このような構成とされたスリーブ印刷版30を用いたオフセット印刷装置Aの概略を図4に示す。
このオフセット印刷装置Aは、缶の外周面に印刷を施す缶の印刷装置であり、複数配置されたインク付着機構Bと、缶移動機構Cとで概略構成されている。
【0022】
インク付着機構Bは、インクを供給するインカーユニット1と、このインカーユニット1に接触してインクを写し取った後、缶胴20の外周面に接触して該インクを印刷する(付着させる)ブランケット9を複数枚備えるブランケットホイール8とから構成される。
インカーユニット1は、インク源2と、インク源2に接触してインクを受けるダクティングロール3と、このダクティングロール3に接続して複数のローラからなる中間ローラ4と、この中間ローラ4に接続するゴムローラ5と、このゴムローラ5に接続するシリンダ6とからなり、シリンダ6の外周面には缶胴20に転写するパターンと同形状に形成された凸版33(スリーブ印刷版30)が配設されている。このシリンダ6は印刷装置Aのシャフト部に回転自在に支持されている。
ブランケットホイール8の外周面には、ブランケット9が複数枚備えられており、このブランケット9は、シリンダ6の外周面に配設されたスリーブ印刷版30の凸版33に接触するとともに、缶胴20に接触する構成とされている。
【0023】
缶移動機構Cは、缶胴20を取り入れる缶シュータ10と、この缶シュータ10から供給された缶胴20を回転自在に保持するマンドレル11と、このマンドレル11に装着された缶胴20を、順次、インク付着機構B方向に回転移動させるマンドレルターレット12とで構成されている。
【0024】
このような構成とされたオフセット印刷装置Aにおいては、各々のインカーユニット1のインク源2から各々異なった色のインクが、ダクティングロール3、中間ローラ4、ゴムローラ5を介して、シリンダ6の外周面に配設されたスリーブ印刷版30の凸版33に付着させられ、これら各色のインクが、回転するブランケットホイール8上のブランケット9にパターンとして乗せられ、このパターンがマンドレル11に保持された缶胴20に接触しながら印刷される。
【0025】
ここで、前述の凸版33は、ベタ部41と突起部44の頂部44Aとの径方向距離H1がH1≧10μmとされ、突起部44の頂部44Aがベタ部41よりも径方向内方に後退されているので、凸版33をブランケット9に押圧しても突起部44が大きく潰れるように変形することがなく、突起部44によって印刷される点のドットゲインを小さく抑えることが可能となる。また、ベタ部41と突起部44の頂部44Aとの径方向距離H1がH1≦200μmとされているので、通常の版圧によってブランケット9に突起部44を確実に接触させることができ、点を確実に印刷することが可能となる。
【0026】
また、基底部43の深さH2が400μm≦H2≦700μmとされているので、インキによる目詰まりの発生を抑えることができ、長時間連続して印刷作業を行うことが可能となる。
さらに、突起部44のテーパ角αが40°≦α≦80°の範囲内に設定されているので、突起部44の剛性が確保され、印刷を良好に行うことが可能となるのである。
【0027】
このように、スリーブ印刷版30に形成された凸版33の寸法は、印刷品質に大きな影響を与えることになる。したがって、スリーブ印刷版30の凸版33の寸法を精度良く検査する必要がある。
以下に、本実施形態であるスリーブ印刷版の検査装置50について、図5を用いて説明する。
【0028】
本実施形態であるスリーブ印刷版の検査装置50は、図5に示すように、スリーブ印刷版30が装着される円筒面51Aを有する回転ドラム51と、回転ドラム51の軸線Lに平行な方向に移動可能な直動部56と、直動部56に支持されるとともに軸線Lからの径方向距離を測定する距離センサ60と、回転ドラム51の回転方向位置情報θ、距離センサ60の軸線L方向位置情報Z、距離センサ60による径方向位置情報r、を得て、回転ドラム51の円筒面51Aに装着されたスリーブ印刷版30の凸版33の形状を再現する演算部70と、を備えている。
【0029】
この回転ドラム51は、回転駆動部52によって軸線Lを中心に回転される構成とされており、回転ドラム51の回転位置情報θを得るための回転方向位置センサ53を備えている。
また、回転ドラム51は、スリーブ印刷版30の内径よりも僅かに大きな外径とされており、スリーブ印刷版30は、その収縮力によって回転ドラム51の円筒面51Aに強く押圧されて固定される構成とされている。さらに、この回転ドラム51には、円筒面51Aに開口されたエア孔(図示なし)からエアを噴出するエア噴出機構(図示なし)が設けられている。
【0030】
直動部56は、回転ドラム51の軸線Lに平行な方向に延在するガイドバー57と、このガイドバー57に沿って移動する支持部材58と、支持部材58の位置情報(軸線L方向位置情報Z)を得る軸線方向位置センサ59と、を備えている。
【0031】
距離センサ60は、レーザ光を回転ドラムの軸線Lに向けて照射して、軸線Lからの径方向位置情報rを得るレーザ変位計である。この距離センサ60は、直動部56の支持部材58に支持されて、軸線Lに平行な方向に移動可能な構成とされている。
【0032】
演算部70は、回転ドラム51に設けられた回転方向位置センサ53からの回転方向位置情報θ、直動部56に設けられた軸線方向位置センサ59からの軸線L方向位置情報Z、距離センサ60による径方向位置情報r、を得て、回転ドラム51の円筒面51Aに装着されたスリーブ印刷版30の凸版33の形状を再現するものである。
【0033】
この演算部70においては、図5に示すように、回転ドラム51に装着されたスリーブ印刷版30自体の傾きや歪みを検出して補正する補正手段71と、径方向位置情報rをグレースケール化して表現するグレースケール化手段72と、再現された凸版33の形状を基準モデルと比較する比較手段73とを、を備えている。
【0034】
次に、本実施形態であるスリーブ印刷版の検査装置50によるスリーブ印刷版の検査方法について説明する。
まず、回転ドラム51の円筒面51Aにスリーブ印刷版30を装着する。このとき、スリーブ印刷版30の一端を回転ドラム51の円筒面51Aに嵌め込み、この状態でエア噴出機構によってエア孔からエアを噴出する。すると、このエアによってスリーブ印刷版30が拡径され、回転ドラム51の円筒面51Aにスリーブ印刷版30が装着される。このとき、スリーブ印刷版30の軸線Oと回転ドラムの軸線Lが一致することになる。
【0035】
次に、円筒面51Aに装着されたスリーブ印刷版30の凸版33に向けて距離センサ60のレーザ光が照射され、凸版33の径方向位置情報rが得られることになる。
そして、この距離センサ60による計測を行いながら、回転ドラム51を回転駆動部52によって回転させることでスリーブ印刷版30の周方向の位置情報が得られる。
さらに、直動部56によって距離センサ60を軸線Lに平行な方向に移動させることによってスリーブ印刷版30の軸線O方向の位置情報が得られる。
このようにして、スリーブ印刷版30の外周面全体を距離センサ60によって走査することにより、スリーブ印刷版30に設けられた凸版33全体の径方向位置情報rが得られることになる。
【0036】
演算部70においては、回転ドラム51の回転方向位置情報θ、距離センサ60の軸線L方向位置情報Z、距離センサ60による径方向位置情報r、を得て、凸版33の径方向外方端の形状を再現する。そして、補正手段71において、凸版33の径方向外方端の形状を参照し、スリーブ印刷版30自体の傾きや歪みを検出して補正する。次にグレースケール化手段72によって、凸版33の径方向位置情報rをグレースケールによって表現する。例えば、径方向外方端部分を256(黒色)とすると、突起部44の頂部44Aの位置が例えば230とされ、基底部43の位置が例えば100と表現される。
このようにして再現された凸版33の形状が、比較手段73によって基準モデルと比較され、凸版33の合否が判定されるのである。
【0037】
前述した構成とされた本実施形態であるスリーブ印刷版の検査装置50によれば、直動部56に設けられた距離センサ60を用いて凸版33の径方向位置情報rを得ることが可能となり、この径方向位置情報rと、回転ドラム51の回転方向位置情報θと、距離センサ60の軸線L方向位置情報Zとを得ることによって凸版33の形状を再現することが可能となる。これにより、演算部70において、スリーブ印刷版30に形成された凸版33のベタ部41と突起部44の頂部44Aとの径方向距離H1、基底部43の深さ(ベタ部41からの径方向深さ)H2、突起部44のテーパ角α等、スリーブ印刷版30の凸版33の径方向位置情報rを正確に得ることができ、凸版33の検査を、効率良く、かつ、精度良く行うことができる。
したがって、寸法精度の良い凸版33を備えたスリーブ印刷版30を印刷に用いることが可能となり、印刷品質を大幅に向上させることができる。
【0038】
さらに、演算部70が、凸版33の形状をグレースケールで再現するグレースケール化手段72を備えているので、凸版33の径方向位置rの情報が256階調で表現されることになり、凸版33の形状が正確に、かつ、分かり易く再現されることになる。
【0039】
また、演算部70が、凸版33の径方向外方端の形状から、回転ドラム51に装着されたスリーブ印刷版30の傾き及び歪みを補正する補正手段71を備えているので、凸版33の形状を精度良く検査することが可能となる。特に、本実施形態では、スリーブ支持体31の肉厚tが、0.25mm≦t≦2mmとされ、版材32の肉厚が0.5mm〜1.0mmとされていることから、剛性が比較的低く変形しやすい傾向にあるため、この補正手段71を備えていることが好ましい。
【0040】
さらに、演算部70が、再現された凸版33の形状を基準モデルと比較する比較手段73を備えているので、形成された凸版33の合否を簡単にかつ正確に判断することが可能となる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、本実施形態では、版材にレーザー加工によって凸版を形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、エッチング等によって凸版を形成してもよい。
【0042】
また、回転ドラムを回転させる回転駆動部の構成は、図示されたものに限定されることはなく、回転ドラムを軸線L中心に回転可能なものであれば特に制限はない。
さらに、直動部の構成についても、図示されたものに限定されることはなく、距離センサを軸線Lに平行な方向に移動可能であればよい。
【0043】
また、検査されるスリーブ印刷版30は、本実施形態に記載されたものに限定されることはない。例えば、スリーブ支持体が繊維強化プラスチック(FRP)で構成されたものであってもよいし、スリーブ支持体を有さないものであってもよい。
さらに、検査対象とするスリーブ印刷版がスチールをベースとする素材で構成されていてもよい。この場合、回転ドラムに対してマグネットによる固定方法を採る場合もある。。また、シリンダへの装入後に機械式により版を固定する方法を採る場合もある。
【実施例】
【0044】
次に、本発明の有効性を確認すべく行った比較実験結果について説明する。
比較例として、彫刻前の版材の外周面を着色しておき、彫刻された部分の色が変化するように構成し、形成された凸版を外周側から目視検査した。
本発明例として、実施形態において説明したスリーブ印刷版の検査装置を用いて凸版の形状を再現した。
【0045】
まず、図6(a)に示すように、凸版としてアルファベットの「A」の形状のものを準備した。なお、この凸版においては、径方向外方に向かうにしたがい漸次断面積が小さくなるようにテーパ状に形成されている。
【0046】
従来例では、図6(b)に示すように、版材の最外周の形状、すなわちアルファベットの「A」の形状については評価可能であるものの、テーパ角等についての情報を得ることはできなかった。
これに対して、本発明例では、図6(c)に示すように、グレースケールによって形状が再現されていることから、凸版の径方向位置情報を得ることができ、この径方向位置情報からテーパ角を算出して評価することが可能であった。
【0047】
次に、図7(a)に示すように、凸版として高さの異なる2つの突起部を形成した。なお、一方の突起部の頂部が凸版の径方向外方端に位置するように形成し、他方の突起部が一方の突起部よりも径方向内方に後退するように構成した。
【0048】
従来例では、図7(b)に示すように、一方の突起部の形状については評価可能であるものの、他方の突起部の形状についての情報を得ることはできなかった。
これに対して、本発明例では、図7(c)に示すように、グレースケールによって形状が再現されていることから、一方の突起部及び他方の突起部の形状について情報も得ることが可能であった。
【符号の説明】
【0049】
30 スリーブ印刷版
33 凸版
50 スリーブ印刷版の検査装置
51 回転ドラム
51A 円筒面
56 直動部
60 距離センサ
70 演算部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置のシリンダに装着されて使用されるスリーブ印刷版に設けられた凸版の形状を検査するスリーブ印刷版の検査装置であって、
前記スリーブ印刷版が装着される円筒面を有するとともに、該円筒面の軸線中心に回動可能な回転ドラムと、
前記回転ドラムの前記円筒面から離間して配置され、前記回転ドラムの前記軸線に平行な方向に移動可能な直動部と、
前記直動部に支持され、前記軸線からの径方向距離を測定する距離センサと、
前記回転ドラムの回転方向位置情報、前記距離センサの前記軸線方向位置情報、前記距離センサによる径方向位置情報、を得て、前記円筒面に装着された前記スリーブ印刷版の前記凸版の形状を再現する演算部と、
を備えていることを特徴とするスリーブ印刷版の検査装置。
【請求項2】
前記演算部は、前記凸版の形状をグレースケールで再現することを特徴とする請求項1に記載のスリーブ印刷版の検査装置。
【請求項3】
前記演算部には、前記回転ドラムに装着された前記スリーブ印刷版の傾き及び歪みを補正する補正手段が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスリーブ印刷版の検査装置。
【請求項4】
前記演算部には、再現された前記凸版の形状を基準モデルと比較する比較手段が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のスリーブ印刷版の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−214944(P2010−214944A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31811(P2010−31811)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(305060154)ユニバーサル製缶株式会社 (219)
【Fターム(参考)】