説明

セラミック部品及びその製造方法、配線基板

【課題】外部電極の表面にめっき層を確実に形成することができるセラミック部品を提供する。
【解決手段】セラミックコンデンサのセラミック焼結体104は、コンデンサ主面102及びコンデンサ裏面を有し、コンデンサ主面102上及びコンデンサ裏面上には複数のプレーン状電極111,112が配置されている。各電極111,112のメタライズ導体層152は、ニッケル金属157、ニッケル酸化物158及びチタン酸バリウム159を含んで構成され、ニッケル金属相とペロブスカイト型酸化物相との界面にニッケル酸化物158が存在している。メタライズ導体層152の表面におけるニッケル金属157の割合は、その内部におけるニッケル金属157の割合よりも高くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板主面及び基板裏面を有するセラミック基板と、その基板主面及び基板裏面の少なくとも一方に配置される外部電極とを備えたセラミック部品及びその製造方法、セラミック部品を内蔵した配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータのマイクロプロセッサ等として使用される半導体集積回路素子(ICチップ)は、近年ますます高速化、高機能化しており、これに付随して端子数が増え、端子間ピッチも狭くなる傾向にある。一般的にICチップの底面には多数の端子が密集してアレイ状に配置されており、このような端子群はマザーボード側の端子群に対してフリップチップの形態で接続される。ただし、ICチップ側の端子群とマザーボード側の端子群とでは端子間ピッチに大きな差があることから、ICチップをマザーボード上に直接的に接続することは困難である。そのため、通常はICチップをICチップ搭載用配線基板上に搭載してなるパッケージを作製し、そのパッケージをマザーボード上に搭載するという手法が採用される。この種のパッケージを構成するICチップ搭載用配線基板においては、ICチップのスイッチングノイズの低減や電源電圧の安定化を図るために、コンデンサ(「キャパシタ」とも言う)を設けることが提案されている。例えば、樹脂コア基板内にコンデンサを埋め込んだ配線基板(例えば特許文献1や特許文献2参照)や、樹脂コア基板の表面や裏面に形成されたビルドアップ層内にコンデンサを埋め込んだ配線基板が従来提案されている。
【0003】
上記の配線基板に内蔵されるコンデンサとしては、ビアアレイタイプのセラミックコンデンサが実用化されている。このセラミックコンデンサは、複数のセラミック誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層配置されたセラミック焼結体を備える。そして、このセラミック焼結体において、各セラミック誘電体層を貫通して各内部電極層と電気的に接続される複数のコンデンサ内ビア導体がアレイ状に配置されている。さらに、セラミック焼結体の表面及び裏面には、コンデンサ内ビア導体の端部に接続される外部電極が配置されている。
【0004】
この種のセラミックコンデンサは以下のようにして製造される。まず、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料のグリーンシートに、内部電極層用の導電体ペーストを所定のパターンで印刷する。その後、複数のグリーンシートを積層した後、シート積層方向に押圧力を付与することにより、各グリーンシートを一体化してグリーンシート積層体を形成する。また、レーザ加工によりグリーンシート積層体にビアホールを多数個形成し、導電体ペーストを各ビアホールに充填する。さらに、グリーンシート積層体の表面及び裏面に導電体ペーストを印刷することで外部電極となる導体層を形成する。次に、周知の手法に従って乾燥工程や脱脂工程などを行った後、さらにセラミックが焼結しうる1000℃〜1300℃程度の温度にて焼成工程を行う。これにより、グリーンシート積層体を焼結させてセラミック焼結体とする。この時点でセラミックは硬質化しかつ収縮すると同時に、導電体ペーストも焼結して硬質化する。その結果、内部電極層、コンデンサ内ビア導体、及び外部電極を有するセラミック焼結体を得ることができる。
【0005】
ところで、前記導電体ペーストの導電材としては、一般にパラジウムが用いられてきたが、パラジウムは高価であるため、比較的に安価なニッケルが使用されるようになってきている。このニッケルを用いる場合、セラミック焼結体の焼成時において、内部電極層やコンデンサ内ビア導体と誘電体層との熱収縮挙動が大きく異なるため、クラックやデラミネーションなどの問題が発生してしまう。このため、ニッケル金属を主材料とする導電体ペーストにセラミック焼結体と同種のセラミック粉末(チタン酸バリウムの粉末)を共材として添加し、熱膨張係数差を低減することにより、上記の問題を回避している。
【0006】
また、外部電極の低抵抗化を図るために、その外部電極の表面には銅めっきが施される。さらに、外部電極の銅めっき層を粗化することにより、配線基板への内蔵時において、その配線基板を構成する絶縁樹脂層との接触面積が大きくなるため、セラミックコンデンサと絶縁樹脂層との密着性が向上する。
【特許文献1】特開2005−39243号公報(図4など)
【特許文献2】特開2007−194617公報(図16など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記セラミック焼結体の焼成時には、外部電極の表面が酸化されるため、その表面でのニッケル酸化物の割合が多くなる。ところが、外部電極の表面において、ニッケル酸化物やチタン酸バリウムが多く存在すると、めっき濡れ性が低下してしまうため、外部電極の表面に銅めっきを確実に形成することができなくなる。
【0008】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、外部電極の表面にめっき層を確実に形成することができるセラミック部品を提供することにある。また本発明の別の目的は、上記のセラミック部品を製造するのに好適なセラミック部品の製造方法を提供することにある。さらに本発明の別の目的は、上記セラミック部品を内蔵した好適な配線基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そして上記課題を解決するための手段(手段1)としては、基板主面及び基板裏面を有するセラミック基板と、ニッケル金属、ニッケル酸化物及びペロブスカイト型酸化物を含んで構成され、ニッケル金属相とペロブスカイト型酸化物相との界面に前記ニッケル酸化物が存在し、前記基板主面及び前記基板裏面の少なくとも一方の上に配置される外部電極とを備えたセラミック部品であって、前記外部電極の最表部におけるニッケル金属の割合は、前記外部電極の内部におけるニッケル金属の割合よりも高いことを特徴とするセラミック部品がある。
【0010】
従って、手段1のセラミック部品によると、外部電極の最表部は、ニッケル金属の割合が外部電極の内部におけるニッケル金属の割合よりも高いため、銅めっきの密着性が向上する。従って、外部電極の最表部にめっき層を確実に形成することができ、製品の信頼性を高めることができる。
【0011】
前記外部電極の最表部におけるニッケル金属の割合は50%よりも大きいことが好ましい。このようにすれば、外部電極の最表部におけるニッケル金属の割合が比較的大きくなるため、銅めっきの密着性を向上することができる。また、外部電極の内部では、ニッケル金属の割合が外部電極最表部よりも低くなっており、ペロブスカイト型酸化物がより多く存在するため、セラミック基板と銅めっきとの熱膨張係数の差を低減することができる。ゆえに、クラックやデラミネーションなどの問題を未然に防ぐことができる。
【0012】
前記外部電極の最表部におけるニッケル金属の見掛け上の粒子径は、前記外部電極の内部におけるニッケル金属の見掛け上の粒子径よりも大きいことが好ましく、具体的には前記外部電極の内部におけるニッケル金属の見掛け上の粒子径よりも2倍以上大きいことが好ましい。この場合、外部電極の最表部において、銅めっきの密着性を向上することができるとともに、水分の浸入経路が少なくなることで耐湿性を向上することができる。
【0013】
前記セラミック部品としては、チップコンデンサやセラミックコンデンサなどを挙げることができる。また、好適なセラミックコンデンサの例としては、前記ペロブスカイト型酸化物を含むセラミック誘電体層を介して複数の内部電極層が積層配置されたセラミック基板を備え、ニッケル金属を主体とし前記複数の内部電極層に接続された複数のコンデンサ内ビア導体が設けられ、前記外部電極が、前記複数のコンデンサ内ビア導体における前記基板主面側及び前記基板裏面側の少なくとも一方の端部に接続されたセラミックコンデンサなどを挙げることができる。なお、セラミックコンデンサは、前記複数のコンデンサ内ビア導体が全体としてアレイ状に配置されたビアアレイタイプのセラミックコンデンサであることが好ましい。このような構造であれば、コンデンサのインダクタンスの低減化が図られ、ノイズ吸収や電圧安定化が可能となる。また、コンデンサ全体の小型化が図りやすくなり、ひいては配線基板全体の小型化も図りやすくなる。しかも、小さい割りに高静電容量が達成しやすく、より安定した電源供給が可能となる。
【0014】
なお、前記ペロブスカイト型酸化物としては、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、チタン酸ストロンチウムなどを挙げることができる。この種の酸化物は高い誘電率を有しているのでコンデンサにおける誘電体として極めて好適であり、それを使用することにより高容量のコンデンサを実現しやすくなる。
【0015】
前記外部電極の表面上には銅めっきが施されていることが好ましい。この場合、外部電極の低抵抗化を図ることができる。また、銅めっきは比較的柔らかいので、その表面の粗化を容易に行うことができる。
【0016】
また、上記課題を解決するための別の手段(手段2)としては、前記セラミック部品を製造する方法であって、前記外部電極の表面に砥粒をぶつけることで、その表面に存在するペロブスカイト型酸化物及びニッケル酸化物を選択的に除去する表面研磨処理を施すことを特徴とするセラミック部品の製造方法がある。
【0017】
従って、手段2のセラミック部品の製造方法によると、表面研磨処理において、外部電極の表面に砥粒がぶつけられることにより、外部電極の表面に存在するペロブスカイト型酸化物及びニッケル酸化物が選択的に除去される。また、外部電極の最表部におけるニッケル金属は、砥粒の衝突によって面状に延ばされてその粒子径が大きくなる。従って、外部電極の最表部におけるニッケル金属の割合が外部電極の内部におけるニッケル金属の割合よりも高くなり、外部電極の最表部における銅めっきの密着性を向上することができる。さらに、外部電極の最表部におけるニッケル金属の粒子径が大きくなるため、その最表部における耐湿性を向上することができる。
【0018】
前記表面研磨処理は、湿式状態で研磨するウェットブラスト処理であることが好ましい。この場合、砥粒による外部電極の表面の研磨とその表面の洗浄とを迅速に行うことができ、その処理コストを低減することができる。ウェットブラスト処理は、乾式処理に比べて、多数個取り基板のような大面積のワークを均一に研磨するうえで有利だからである。ウェットブラスト処理は一般的な圧力条件よりも低圧の条件にて行われることが望ましく、具体的には5.0MPa以下、特には0.2MPa以上1.0MPa以下で処理を行うことが好適である。また、ウェットブラスト処理用いられる研磨材としては特に限定されないが、ペロブスカイト型酸化物及びニッケル酸化物よりも硬質の無機物砥粒が好ましく、その具体例としては、アルミナ、窒化珪素、炭化珪素、窒化ほう素などの砥粒が挙げられる。
【0019】
さらに、上記課題を解決するための別の手段(手段3)としては、前記セラミック部品が、コア主面及びコア裏面を有する樹脂コア基板内、または、樹脂層間絶縁層及び導体層を積層した構造を有する配線積層部内に収容されていることを特徴とする配線基板がある。
【0020】
従って、手段3の配線基板によると、セラミック部品の外部電極にめっき層を確実に形成することができるため、その外部電極を介して配線基板の導体層との電気的接続を適切に行うことができる。また、外部電極に形成された銅めっき層の粗化を行うことにより、絶縁樹脂層との接触面積が大きくなるため、セラミック部品と絶縁樹脂層との密着性を向上することができる。
【0021】
前記樹脂コア基板の具体例としては、EP樹脂(エポキシ樹脂)基板、PI樹脂(ポリイミド樹脂)基板、BT樹脂(ビスマレイミド・トリアジン樹脂)基板、PPE樹脂(ポリフェニレンエーテル樹脂)基板などがある。そのほか、これらの樹脂とガラス繊維(ガラス織布やガラス不織布)やポリアミド繊維等の有機繊維との複合材料からなる基板を使用してもよい。あるいは、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料からなる基板等を使用してもよい。
【0022】
上記配線基板を構成する配線積層部は、高分子材料を主体とする樹脂層間絶縁層及び導体層を積層した構造を有している。なお、配線積層部は、前記コア主面上及び前記コア裏面上のいずれか一方にのみ形成されていてもよいし、前記コア主面上及び前記コア裏面上の両方に形成されていてもよいが、前記コア主面上及び前記コア裏面上の両方に形成されることが好ましい。このように構成すれば、コア主面上に形成された配線積層部とコア裏面上に形成された配線積層部との両方に電気回路を形成できるため、配線基板のよりいっそうの高機能化を図ることができる。
【0023】
前記樹脂層間絶縁層は、絶縁性、耐熱性、耐湿性等を考慮して適宜選択することができる。樹脂層間絶縁層の形成材料の好適例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリプロピレン樹脂などの熱可塑性樹脂等が挙げられる。そのほか、これらの樹脂とガラス繊維(ガラス織布やガラス不織布)やポリアミド繊維等の有機繊維との複合材料、あるいは、連続多孔質PTFE等の三次元網目状フッ素系樹脂基材にエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂を含浸させた樹脂−樹脂複合材料等を使用してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を配線基板に具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
【0025】
図1に示されるように、本実施の形態の配線基板10は、ICチップ搭載用の配線基板である。配線基板10は、略矩形板状の樹脂コア基板11と、樹脂コア基板11のコア主面12(図1では上面)上に形成される第1ビルドアップ層31(配線積層部)と、樹脂コア基板11のコア裏面13(図1では下面)上に形成される第2ビルドアップ層32(配線積層部)とからなる。
【0026】
樹脂コア基板11のコア主面12上に形成された第1ビルドアップ層31は、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)からなる2層の樹脂層間絶縁層33,35と、銅からなる導体層42とを交互に積層した構造を有している。第2層の樹脂層間絶縁層35の表面上における複数箇所には、端子パッド44がアレイ状に形成されている。さらに、樹脂層間絶縁層35の表面は、ソルダーレジスト37によってほぼ全体的に覆われている。ソルダーレジスト37の所定箇所には、端子パッド44を露出させる開口部46が形成されている。端子パッド44の表面上には、複数のはんだバンプ45が配設されている。各はんだバンプ45は、矩形平板状をなすICチップ21の面接続端子22に電気的に接続されている。なお、各端子パッド44及び各はんだバンプ45からなる領域は、ICチップ21を搭載可能なICチップ搭載領域23である。ICチップ搭載領域23は、第1ビルドアップ層31の表面39に設定されている。また、第1層の樹脂層間絶縁層33内における複数箇所にはビア導体47が形成されている。各ビア導体47の上端となる箇所は樹脂層間絶縁層33の表面上に形成された導体層42に接続されている。第2層の樹脂層間絶縁層35内における複数箇所にはビア導体43が形成されている。各ビア導体43の下端となる箇所は、樹脂層間絶縁層33の表面上に形成された導体層42に接続されており、各ビア導体43の上端となる箇所は、樹脂層間絶縁層35の表面上に形成された端子パッド44に接続されている。これらのビア導体43,47は、導体層42及び端子パッド44を相互に電気的に接続している。
【0027】
樹脂コア基板11のコア裏面13上に形成された第2ビルドアップ層32は、上述した第1ビルドアップ層31とほぼ同じ構造を有している。即ち、第2ビルドアップ層32は、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂)からなる2層の樹脂層間絶縁層34,36と、導体層42とを交互に積層した構造を有している。第1層の樹脂層間絶縁層34内における複数箇所にはビア導体47が形成されている。各ビア導体47の下端となる箇所は、樹脂層間絶縁層34の表面上に形成された導体層42に接続されている。第2層の樹脂層間絶縁層36内における複数箇所にはビア導体43が形成されており、樹脂層間絶縁層36の下面上において各ビア導体43の下端となる箇所には、ビア導体43を介して導体層42に電気的に接続されるBGA用パッド48が格子状に形成されている。また、樹脂層間絶縁層36の下面は、ソルダーレジスト38によってほぼ全体的に覆われている。ソルダーレジスト38の所定箇所には、BGA用パッド48を露出させる開口部40が形成されている。BGA用パッド48の表面上には、図示しないマザーボードに対して電気的に接続可能な複数のはんだバンプ49が配設されている。そして、各はんだバンプ49により、図1に示される配線基板10は図示しないマザーボード上に実装される。
【0028】
本実施の形態の樹脂コア基板11は、縦25mm×横25mm×厚さ0.90mmの平面視略矩形板状である。樹脂コア基板11は、ガラスエポキシからなる基材161と、基材161の上面及び下面に形成され、シリカフィラーなどの無機フィラーを添加したエポキシ樹脂からなるサブ基材164と、同じく基材161の上面及び下面に形成され、銅からなる導体層163とによって構成されている。また、樹脂コア基板11には、複数のスルーホール導体16がコア主面12、コア裏面13及び導体層163を貫通するように形成されている。かかるスルーホール導体16は、樹脂コア基板11のコア主面12側とコア裏面13側とを接続導通するとともに、導体層163に電気的に接続している。なお、スルーホール導体16の内部は、例えばエポキシ樹脂などの閉塞体17で埋められている。スルーホール導体16の上端は、樹脂層間絶縁層33の表面上にある導体層42の一部に電気的に接続されており、スルーホール導体16の下端は、樹脂層間絶縁層34の下面上にある導体層42の一部に電気的に接続されている。また、樹脂コア基板11のコア主面12及びコア裏面13には、銅からなる導体層41がパターン形成されており、各導体層41は、スルーホール導体16に電気的に接続されている。さらに、樹脂コア基板11は、コア主面12の中央部及びコア裏面13の中央部にて開口する平面視で矩形状の収容穴部90を1つ有している。即ち、収容穴部90は貫通穴である。なお、収容穴部90は、四隅に面取り寸法0.1mm以上2.0mm以下の面取り部を有している。
【0029】
そして、収容穴部90内には、図2,図3等に示すセラミックコンデンサ101(セラミック部品)が、埋め込まれた状態で収容されている。なお、セラミックコンデンサ101は、コンデンサ主面102をコア主面12と同じ側に向け、かつ、コンデンサ裏面103をコア裏面13と同じ側に向けた状態で収容されている。本実施の形態のセラミックコンデンサ101は、縦12.0mm×横12.0mm×厚さ0.74mmの平面視略矩形板状である。セラミックコンデンサ101は、樹脂コア基板11において前記ICチップ搭載領域23の真下の領域に配置されている。なお、ICチップ搭載領域23の面積(ICチップ21において面接続端子22が形成される面の面積)は、セラミックコンデンサ101のコンデンサ主面102の面積よりも小さくなるように設定されている。セラミックコンデンサ101の厚さ方向から見た場合、ICチップ搭載領域23は、セラミックコンデンサ101のコンデンサ主面102内に位置している。
【0030】
図1等に示されるように、収容穴部90の内面と、セラミックコンデンサ101のコンデンサ側面106との隙間は、高分子材料(本実施の形態ではエポキシ等の熱硬化性樹脂)からなる樹脂充填部92によって埋められている。この樹脂充填部92は、セラミックコンデンサ101を樹脂コア基板11に固定する機能を有している。なお、セラミックコンデンサ101は、平面視略正方形状をなしており、四隅に面取り寸法0.55mm以上(本実施の形態では面取り寸法0.6mm)の面取り部を有している。これにより、セラミックコンデンサ101を配線基板10に内蔵するときや、温度変化に伴う樹脂充填部92の変形時において、セラミックコンデンサ101の角部への応力集中を緩和できるため、樹脂充填部92のクラックの発生を防止できる。
【0031】
図1〜図3等に示されるように、本実施の形態のセラミックコンデンサ101は、いわゆるビアアレイタイプのセラミックコンデンサである。セラミックコンデンサ101を構成するセラミック焼結体104(セラミック基板)は、基板主面である1つのコンデンサ主面102(図1では上面)、基板裏面である1つのコンデンサ裏面103(図1では下面)、及び、4つのコンデンサ側面106(図1では左面、右面)を有する板状物である。
【0032】
図2に示されるように、セラミック焼結体104は、セラミック誘電体層105を介して電源用内部電極層141(内部電極)とグランド用内部電極層142(内部電極)とを交互に積層配置した構造を有している。また、セラミック誘電体層105は、高誘電率セラミックの一種であるチタン酸バリウムの焼結体からなり、電源用内部電極層141及びグランド用内部電極層142間の誘電体(絶縁体)として機能する。電源用内部電極層141及びグランド用内部電極層142は、いずれもニッケルを主成分として形成された層であって、セラミック焼結体104の内部において一層おきに配置されている。
【0033】
図1,図2等に示されるように、セラミック焼結体104には、多数のビアホール130が形成されている。これらのビアホール130は、セラミック焼結体104をその厚さ方向に貫通するとともに、セラミック焼結体104の全面にわたって格子状(アレイ状)に配置されている。各ビアホール130内には、セラミック焼結体104のコンデンサ主面102及びコンデンサ裏面103間を連通する複数のコンデンサ内ビア導体131,132が、ニッケルを主材料として形成されている。なお本実施の形態において、ビアホール130の直径は約100μmに設定されているため、コンデンサ内ビア導体131,132の直径も約100μmに設定されている。各電源用コンデンサ内ビア導体131は、各電源用内部電極層141を貫通しており、それら同士を互いに電気的に接続している。各グランド用コンデンサ内ビア導体132は、各グランド用内部電極層142を貫通しており、それら同士を互いに電気的に接続している。各電源用コンデンサ内ビア導体131及び各グランド用コンデンサ内ビア導体132は、全体としてアレイ状に配置されている。
【0034】
そして図2,図3等に示されるように、セラミック焼結体104のコンデンサ主面102上には、複数の主面側電源用プレーン状電極111(外部電極)と複数の主面側グランド用プレーン状電極112(外部電極)とが設けられている。各プレーン状電極111,112は、コンデンサ主面102において互いに平行に配置されており、幅300μm×厚さ25μmの平面視略矩形状をなす帯状パターンである(図3参照)。主面側電源用プレーン状電極111は、複数の電源用コンデンサ内ビア導体131におけるコンデンサ主面102側の端面に対して直接接続されており、主面側グランド用プレーン状電極112は、複数のグランド用コンデンサ内ビア導体132におけるコンデンサ主面102側の端面に対して直接接続されている。
【0035】
また、図2等に示されるように、セラミック焼結体104のコンデンサ裏面103上には、複数の裏面側電源用プレーン状電極121(外部電極)と複数の裏面側グランド用プレーン状電極122(外部電極)とが設けられている。各プレーン状電極121,122は、コンデンサ裏面103において互いに平行に配置されており、幅300μm×厚さ25μmの平面視略矩形状をなす帯状パターンである。裏面側電源用プレーン状電極121は、複数の電源用コンデンサ内ビア導体131におけるコンデンサ裏面103側の端面に対して直接接続されており、裏面側グランド用プレーン状電極122は、複数のグランド用コンデンサ内ビア導体132におけるコンデンサ裏面103側の端面に対して直接接続されている。よって、電源用プレーン状電極111,121は電源用コンデンサ内ビア導体131及び電源用内部電極層141に導通しており、グランド用プレーン状電極112,122はグランド用コンデンサ内ビア導体132及びグランド用内部電極層142に導通している。
【0036】
図4にて模式的に示されるように、プレーン状電極111,112,121,122は、第1の金属層であるメタライズ導体層151と、第2の金属層であるめっき層152とからなっている。メタライズ導体層151は、前記コンデンサ主面102及びコンデンサ裏面103の上に配置されており、ニッケル金属157、ニッケル酸化物158及びチタン酸バリウム159(ペロブスカイト型酸化物)を含んで構成されている。具体的には、メタライズ導体層151は、主材料のニッケル金属157に対して、例えば30vol%のチタン酸バリウム159を含んでいる。また、メタライズ導体層151では、ニッケル金属157の金属相とチタン酸バリウム159の酸化物相との界面にニッケル酸化物158が存在している。
【0037】
めっき層152は、ニッケルよりも導電性の高い銅からなり、メタライズ導体層151の表面を全体的に被覆している。さらに、めっき層152の表面は粗化されており、めっき層152の表面の算術平均粗さRaは0.4μmに設定されている。なお、「算術平均粗さRa」とは、JIS B0601で定義されている算術平均粗さRaである。算術平均粗さRaの測定方法はJIS B0651に準じるものとする。
【0038】
図1に示されるように、コンデンサ主面102側にあるプレーン状電極111,112は、ビア導体47、導体層42、ビア導体43、端子パッド44、はんだバンプ45及びICチップ21の面接続端子22を介して、ICチップ21に電気的に接続される。一方、コンデンサ裏面103側にあるプレーン状電極121,122は、ビア導体47、導体層42、ビア導体43、BGA用パッド48及びはんだバンプ49を介して、図示しないマザーボードが有する電極に対して電気的に接続される。
【0039】
例えば、マザーボード側からプレーン状電極121,122を介して通電を行い、電源用内部電極層141−グランド用内部電極層142間に電圧を加えると、電源用内部電極層141に例えばプラスの電荷が蓄積し、グランド用内部電極層142に例えばマイナスの電荷が蓄積する。その結果、セラミックコンデンサ101がコンデンサとして機能する。また、セラミックコンデンサ101では、電源用コンデンサ内ビア導体131及びグランド用コンデンサ内ビア導体132がそれぞれ交互に隣接して配置され、かつ、電源用コンデンサ内ビア導体131及びグランド用コンデンサ内ビア導体132を流れる電流の方向が互いに逆向きになるように設定されている。これにより、インダクタンス成分の低減化が図られている。
【0040】
次に、本実施の形態のセラミックコンデンサ101の製造方法について述べる。
【0041】
先ず、チタン酸バリウムを主成分とする誘電体材料のグリーンシートを形成し、このグリーンシートに内部電極層用ニッケルペーストをスクリーン印刷して乾燥させる。これにより、後に電源用内部電極層141となる電源用内部電極部と、グランド用内部電極層142となるグランド用内部電極部とが形成される。次に、電源用内部電極部が形成されたグリーンシートとグランド用内部電極部が形成されたグリーンシートとを交互に積層し、シート積層方向に押圧力を付与することにより、各グリーンシートを一体化してグリーンシート積層体を形成する。
【0042】
さらに、レーザ加工機を用いてグリーンシート積層体にビアホール130を多数個貫通形成し、図示しないペースト圧入充填装置を用いて、ビア導体用ニッケルペーストを各ビアホール130内に充填する。次に、グリーンシート積層体の上面上に電極用ニッケルペーストを印刷し、グリーンシート積層体の上面側にて各導体部の上端面を覆うようにプレーン状電極111,112のメタライズ導体層151を形成する。また、グリーンシート積層体の下面上に電極用ニッケルペーストを印刷し、グリーンシート積層体の下面側にて各導体部の下端面を覆うようにプレーン状電極121,122のメタライズ導体層151を形成する。
【0043】
この後、グリーンシート積層体の乾燥を行い、各メタライズ導体層151をある程度固化させる。次に、グリーンシート積層体を脱脂し、さらに所定温度で所定時間焼成を行う。その結果、チタン酸バリウム及びペースト中のニッケルが同時焼結し、セラミック焼結体104となる。
【0044】
なお、このセラミック焼結体104は、コンデンサとなるべき製品領域155が平面方向に沿って縦横に複数配列され、それら製品領域155を分割するためのブレイク溝156が形成された多数個取り用セラミック基板である(図5参照)。
【0045】
セラミック焼結体104の焼成時には、メタライズ導体層151の表面が酸化されるため、図6に示されるように、メタライズ導体層151の表面にはニッケル酸化物158が形成される。また、メタライズ導体層151の表面の一部にはチタン酸バリウム159の粒体が露出している。このため、本実施の形態では、セラミック焼結体104の各メタライズ導体層151に対してウェットブラスト処理(表面研磨処理)を施す。具体的には、水に研磨材(例えば、アルミナの砥粒)を含ませた処理液をジェットスクラブ装置(図示略)から所定の圧力(例えば、0.2MPa)でメタライズ導体層151の表面に噴射する。このとき、図7に示されるように、研磨材160がメタライズ導体層151の表面にぶつかり、湿式状態でメタライズ導体層151の表面が研磨される。その結果、図8に示されるように、メタライズ導体層151の表面に存在するチタン酸バリウム159及びニッケル酸化物158が選択的に除去される。また、メタライズ導体層151の表面におけるニッケル金属157は、研磨材160の衝突によって面状に延ばされ、その見掛け上の粒子径が大きくなる。ここで、チタン酸バリウム159の粒体の上部が削り取られることで凹部が形成されるが、ニッケル金属157がその凹部を覆うように変形する。この結果、メタライズ導体層151の表面(外部電極の最表部)におけるニッケル金属157の割合がメタライズ導体層151の内部におけるニッケル金属157の割合よりも高くなり、メタライズ導体層151の表面における銅めっきの密着性が向上する。
【0046】
本発明者は、メタライズ導体層151の表面及び内部におけるSEM写真を撮影し、そのSEM写真に基づいて、ニッケル金属157の割合(面積率)及び粒子径を測定した。その結果、メタライズ導体層151の表面におけるニッケル金属157の割合は61%であり、内部におけるニッケル金属157の割合は39%であった。また、粒子径は、表面が7.5μmであり、内部が2.7μmであった。なおここでは、SEM写真において、左右、上下、中央の5箇所で測定ラインを縦横方向に設定した。そして、各測定ライン上でのニッケル金属の割合や粒子径を測定し、それらの平均値を測定値として求めた。
【0047】
上記のようにセラミック焼結体104の各メタライズ導体層151に表面研磨処理を施した後、各メタライズ導体層151に対して電解銅めっき(厚さ15μm)を行う。その結果、各メタライズ導体層151の上にめっき層152が形成されることで、各プレーン状電極111,112,121,122が形成される。そして、セラミック焼結体104のブレイク溝156で各製品領域155を分割することにより、複数個のセラミックコンデンサ101が完成する。
【0048】
次に、本実施の形態の配線基板10の製造方法について述べる。
【0049】
先ず、コア基板準備工程では、樹脂コア基板11の中間製品を従来周知の手法により作製し、あらかじめ準備しておく。
【0050】
樹脂コア基板11の中間製品は以下のように作製される。まず、縦400mm×横400mm×厚さ0.65mmの基材161の両面に銅箔が貼付された銅張積層板(図示略)を準備する。次に、銅張積層板の両面の銅箔のエッチングを行って導体層163を例えばサブトラクティブ法によってパターニングする。具体的には、無電解銅めっきの後、この無電解銅めっき層を共通電極として電解銅めっきを施す。さらにドライフィルムをラミネートし、同ドライフィルムに対して露光及び現像を行うことにより、ドライフィルムを所定パターンに形成する。この状態で、不要な電解銅めっき層、無電解銅めっき層及び銅箔をエッチングで除去する。その後、ドライフィルムを剥離する。次に、基材161の上面及び下面と導体層163とを粗化した後、基材161の上面及び下面に、無機フィラーが添加されたエポキシ樹脂フィルム(厚さ80μm)を熱圧着により貼付し、サブ基材164を形成する。
【0051】
次に、上側のサブ基材164の上面及び下側のサブ基材164の下面に導体層41(厚さ50μm)をパターン形成する。具体的には、上側のサブ基材164の上面及び下側のサブ基材164の下面に対する無電解銅めっきを行った後にエッチングレジストを形成し、次いで電解銅めっきを行う。さらに、エッチングレジストを除去してソフトエッチングを行う。次に、基材161及びサブ基材164からなる積層体に対してルータを用いて孔あけ加工を行い、収容穴部90となる貫通孔を所定位置に形成し、樹脂コア基板11の中間製品を得る(図9参照)。なお、樹脂コア基板11の中間製品とは、樹脂コア基板11となるべき領域を平面方向に沿って縦横に複数配列した構造の多数個取り用コア基板である。
【0052】
続く収容工程では、マウント装置(ヤマハ発動機株式会社製)を用いて、コア主面12とコンデンサ主面102と同じ側に向け、かつ、コア裏面13とコンデンサ裏面103とを同じ側に向けた状態で収容穴部90内にセラミックコンデンサ101を収容する(図10参照)。なお、収容穴部90のコア裏面13側開口は、剥離可能な粘着テープ171でシールされている。この粘着テープ171は、支持台(図示略)によって支持されている。かかる粘着テープ171の粘着面には、セラミックコンデンサ101が貼り付けられて仮固定されている。
【0053】
そして、この状態において、収容穴部90の内面とセラミックコンデンサ101のコンデンサ側面106との隙間に、ディスペンサ装置(Asymtek社製)を用いて、熱硬化性樹脂製の樹脂充填部92(株式会社ナミックス製)を充填する。その後、加熱処理を行うと、樹脂充填部92が硬化して、セラミックコンデンサ101が収容穴部90内に固定される(図11参照)。そして、この時点で、粘着テープ171を剥離する。
【0054】
その後、プレーン状電極111,112,121,122を構成するめっき層152の表面を粗化する(図4参照)。
【0055】
次に、従来周知の手法に基づいてコア主面12の上に第1ビルドアップ層31を形成するとともに、コア裏面13の上に第2ビルドアップ層32を形成する。具体的に言うと、まず、コア主面12及びコンデンサ主面102上に感光性エポキシ樹脂を被着して露光及び現像を行うことにより、樹脂層間絶縁層33を形成する(図12参照)。また、コア裏面13及びコンデンサ裏面103に感光性エポキシ樹脂を被着し、露光及び現像を行うことにより、樹脂層間絶縁層34を形成する。なお、感光性エポキシ樹脂を被着する代わりに、絶縁樹脂や液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystalline Polymer)を被着してもよい。
【0056】
その後、YAGレーザまたは炭酸ガスレーザーを用いてレーザ孔あけ加工を行い、樹脂層間絶縁層33においてビア導体47が形成されるべき位置にビア孔を形成する。また、樹脂層間絶縁層34においても、同様にビア導体47が形成されるべき位置にビア孔を形成する。
【0057】
さらに、ドリル機を用いて孔あけ加工を行い、樹脂コア基板11及び樹脂層間絶縁層33,34を貫通する貫通孔(図示略)を所定位置にあらかじめ形成しておく。そして、樹脂層間絶縁層33,34の表面上、ビア孔の内面、及び、貫通孔の内面に対する無電解銅めっきを行った後にエッチングレジストを形成し、次いで電解銅めっきを行う。さらに、エッチングレジストを除去してソフトエッチングを行う。これにより、樹脂層間絶縁層33上に導体層42が形成されるとともに、樹脂層間絶縁層34上に導体層42がパターン形成される。これと同時に、貫通孔内にスルーホール導体16が形成されるとともに、各ビア孔の内部にビア導体47が形成される。その後、スルーホール導体16の空洞部を絶縁樹脂材料(エポキシ樹脂)で穴埋めし、閉塞体17を形成する。
【0058】
次に、樹脂層間絶縁層33,34上に感光性エポキシ樹脂を被着し、露光及び現像を行うことにより、ビア導体43が形成されるべき位置にビア孔(図示略)を有する樹脂層間絶縁層35,36を形成する。なお、感光性エポキシ樹脂を被着する代わりに、絶縁樹脂や液晶ポリマーを被着してもよい。この場合、レーザ加工機などにより、ビア導体43が形成されるべき位置にビア孔が形成される。次に、従来公知の手法に従って電解銅めっきを行い、前記ビア孔の内部にビア導体43を形成するとともに、樹脂層間絶縁層35上に端子パッド44を形成し、樹脂層間絶縁層36上にBGA用パッド48を形成する。
【0059】
次に、樹脂層間絶縁層35,36上に感光性エポキシ樹脂を塗布して硬化させることにより、ソルダーレジスト37,38を形成する。次に、所定のマスクを配置した状態で露光及び現像を行い、ソルダーレジスト37,38に開口部40,46をパターニングする。さらに、端子パッド44上にはんだバンプ45を形成し、かつ、BGA用パッド48上にはんだバンプ49を形成する。なお、この状態のものは、配線基板10となるべき製品領域を平面方向に沿って縦横に複数配列した多数個取り用配線基板であると把握することができる。さらに、多数個取り用配線基板を分割すると、個々の製品である配線基板10が多数個同時に得られる。
【0060】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0061】
(1)本実施の形態の場合では、セラミック焼結体104の焼成後に表面研磨処理が実施され、プレーン状電極111,112,121,122を構成するメタライズ導体層151の表面に研磨材160をぶつけることにより、その表面に存在するチタン酸バリウム159及びニッケル酸化物158が選択的に除去される。また、メタライズ導体層151の表面に露出したニッケル金属157は、研磨材160の衝突によって面状に延ばされてその見掛け上の粒子径が大きくなる。従って、メタライズ導体層151の表面におけるニッケル金属157の割合がメタライズ導体層151の内部におけるニッケル金属157の割合よりも高くなる。その結果、メタライズ導体層151の表面における銅めっきの密着性を向上することができ、メタライズ導体層151の表面にめっき層152を確実に形成することができる。また、メタライズ導体層151の表面におけるニッケル金属157の粒子径が大きくなるため、水分の浸入経路が少なくなりその表面の耐湿性を向上することができる。
【0062】
(2)本実施の形態の場合、セラミック焼結体104の表面研磨処理としてウェットブラスト処理が実施されるので、メタライズ導体層151の表面研磨を適切に行うことができる。具体的には、セラミック焼結体104は、複数の製品領域155を分割するブレイク溝156が形成された多数個取り用セラミック基板であり、サイズが大きな大判のセラミック基板となるため、チップコンデンサで従来から用いられているバレル研磨を適用することができない。そこで、本実施の形態では、ウェットブラスト処理を実施し、研磨材160を含ませた処理液を適度な圧力(例えば、0.2MPa)で噴射することにより、セラミック焼結体104がブレイク溝156で割れるといった問題を回避しつつセラミック焼結体104の表面全体に対して均一に研磨処理を行うことができる。さらに、ウェットブラスト処理では、研磨材160が水に混ざっているため、ドライブラスト処理のように研磨剤が粉塵として空気中に飛散することがない。また、その処理中において水が研磨材160を洗い流すため、メタライズ導体層151の表面における研磨材160の残留を抑制することができる。
【0063】
(3)本実施の形態の配線基板10では、セラミック部品としてビアアレイタイプのセラミックコンデンサ101が収容穴部90に収納されている。このセラミックコンデンサ101では、複数のビア導体131,132が全体としてアレイ状に配置されているので、セラミックコンデンサ101のインダクタンスの低減化が図られ、ノイズ吸収や電源変動平滑化のための高速電源供給が可能となる。また、セラミックコンデンサ101全体の小型化が図りやすくなり、ひいては配線基板全体の小型化も図りやすくなる。しかも、小さい割りに高静電容量が達成しやすく、ICチップ21に対してより安定した電源供給が可能となる。
【0064】
(4)本実施の形態の配線基板10では、セラミックコンデンサ101がICチップ搭載領域23に搭載されたICチップ21の直下に配置されるため、セラミックコンデンサ101とICチップ21とをつなぐ配線が短くなり、配線のインダクタンス成分の増加が防止される。従って、セラミックコンデンサ101によるICチップ21のスイッチングノイズを確実に低減できるとともに、電源電圧の確実な安定化を図ることができる。また、ICチップ21とセラミックコンデンサ101との間で侵入するノイズを極めて小さく抑えることができるため、誤動作等の不具合を生じることもなく高い信頼性を得ることができる。
【0065】
(5)本実施の形態の配線基板10では、ICチップ搭載領域23がセラミックコンデンサ101の真上の領域内に位置しているため、ICチップ搭載領域23に搭載されるICチップ21は高剛性で熱膨張率が小さいセラミックコンデンサ101によって支持される。よって、上記ICチップ搭載領域23においては、第1ビルドアップ層31が変形しにくくなるため、ICチップ搭載領域23に搭載されるICチップ21をより安定的に支持できる。従って、大きな熱応力に起因するICチップ21のクラックや接続不良を防止することができる。ゆえに、ICチップ21として、熱膨張差による応力(歪)が大きくなり熱応力の影響が大きく、かつ発熱量が大きく使用時の熱衝撃が厳しい10mm角以上の大型のICチップや、脆いとされるLow−k(低誘電率)のICチップを用いることができる。
【0066】
なお、本発明の実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0067】
・上記実施の形態のセラミックコンデンサ101は樹脂コア基板11内に収容されていた。しかし、上記実施の形態のセラミックコンデンサ101などよりも薄いセラミックコンデンサ303(厚さ0.08mm)を形成し、そのセラミックコンデンサ303を第1ビルドアップ層310内(例えば図13参照)に収容してもよい。この場合、樹脂コア基板11のコア主面12上に樹脂シート(未硬化状態の樹脂層間絶縁層30)をラミネートし、樹脂シートが硬化する前に、マウント装置(ヤマハ発動機株式会社製)を用いて、セラミックコンデンサ303を樹脂シート上に配置する。その後、樹脂シートを硬化させて樹脂層間絶縁層30とする。さらに、樹脂層間絶縁層30及び導体層42を交互に形成すれば、第1ビルドアップ層310が完成する。なお、この配線基板10では、セラミックコンデンサ303において、各プレーン状電極111,112,121,122上に銅めっきを施すことにより突起状導体50を予め形成しておき、その突起状導体50を介してプレーン状電極111,112,121,122と導体層42とを接続している。
【0068】
このようにすれば、セラミックコンデンサ101が樹脂コア基板11内に収容される場合に比べて、ICチップ21とセラミックコンデンサ303とを電気的に接続する導通経路(コンデンサ接続配線)が短くなる。これにより、配線のインダクタンス成分の増加が防止されるため、セラミックコンデンサ303によりICチップ21のスイッチングノイズを確実に低減できるとともに、電源電圧の確実な安定化を図ることができる。また、ICチップ21とセラミックコンデンサ303との間で侵入するノイズを極めて小さく抑えることができるため、誤動作等の不具合を生じることもなく高い信頼性を得ることができる。なお、薄くしたセラミックコンデンサ303を用いたとしてもセラミックコンデンサ303自体は厚いため、図13では、ビルドアップ層を、上記実施の形態よりも肉厚の樹脂層間絶縁層(樹脂層間絶縁層30)からなる第1ビルドアップ層310に具体化している。なお、上記実施の形態のセラミックコンデンサ101を、上記実施の形態と同じ第1ビルドアップ層31内に収容してもよい。
【0069】
・上記実施の形態では、メタライズ導体層151の表面研磨処理として、湿式状態で研磨するウェットブラスト処理を実施するものであったが、これに限定されるものではない。例えば、乾式状態の研磨処理であるドライブラスト処理によって、メタライズ導体層151の表面を研磨してもよい。なおこの場合には、メタライズ導体層151の表面に研磨材や研磨屑が付着するため、それら研磨材や研磨屑を洗い流すための洗浄処理を行うことが好ましい。
【0070】
・上記実施の形態のセラミックコンデンサ101では、平面視略矩形状をなすプレーン状電極111,112,121,122を外部電極として備えるものであったが、その外部電極の形状は、円形状などの形状に適宜変更してもよい。また、セラミックコンデンサ101において、プレーン状電極111,112,121,122は、コンデンサ主面102及びコンデンサ裏面103の両方に設けられるものであったが、いずれか一方のみに設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態の配線基板を示す概略断面図。
【図2】セラミックコンデンサを示す概略断面図。
【図3】セラミックコンデンサを示す上面図。
【図4】セラミックコンデンサの要部を示す概略断面図。
【図5】セラミック焼結体を示す上面図。
【図6】セラミックコンデンサの製造方法の説明図。
【図7】セラミックコンデンサの製造方法の説明図。
【図8】セラミックコンデンサの製造方法の説明図。
【図9】配線基板の製造方法の説明図。
【図10】配線基板の製造方法の説明図。
【図11】配線基板の製造方法の説明図。
【図12】配線基板の製造方法の説明図。
【図13】他の実施の形態における配線基板を示す概略断面図。
【符号の説明】
【0072】
10…配線基板
11…樹脂コア基板
12…コア主面
13…コア裏面
31…配線積層部としての第1ビルドアップ層
32…配線積層部としての第2ビルドアップ層
33,34,35,36…樹脂層間絶縁層
42…導体層
101…セラミック部品としてのセラミックコンデンサ
102…基板主面としてのコンデンサ主面
103…基板裏面としてのコンデンサ裏面
104…セラミック基板としてのセラミック焼結体
105…セラミック誘電体層
111…外部電極としての主面側電源用プレーン状電極
112…外部電極としての主面側グランド用プレーン状電極
121…外部電極としての裏面側電源用プレーン状電極
122…外部電極としての裏面側グランド用プレーン状電極
131…コンデンサ内ビア導体としての電源用コンデンサ内ビア導体
132…コンデンサ内ビア導体としてのグランド用コンデンサ内ビア導体
141…内部電極としての電源用内部電極層
142…内部電極としてのグランド用内部電極層
157…ニッケル金属
158…ニッケル酸化物
159…ペロブスカイト型酸化物としてのチタン酸バリウム
160…砥粒としての研磨材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板主面及び基板裏面を有するセラミック基板と、
ニッケル金属、ニッケル酸化物及びペロブスカイト型酸化物を含んで構成され、ニッケル金属相とペロブスカイト型酸化物相との界面に前記ニッケル酸化物が存在し、前記基板主面及び前記基板裏面の少なくとも一方の上に配置される外部電極と
を備えたセラミック部品であって、
前記外部電極の最表部におけるニッケル金属の割合は、前記外部電極の内部におけるニッケル金属の割合よりも高いことを特徴とするセラミック部品。
【請求項2】
前記外部電極の最表部におけるニッケル金属の割合は50%よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のセラミック部品。
【請求項3】
前記外部電極の最表部におけるニッケル金属の粒子径は、前記外部電極の内部におけるニッケル金属の粒子径よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載のセラミック部品。
【請求項4】
前記セラミック基板において、前記ペロブスカイト型酸化物を含むセラミック誘電体層を介して複数の内部電極が積層配置され、ニッケル金属を主体とし前記複数の内部電極に接続された複数のコンデンサ内ビア導体が設けられ、
前記外部電極が、前記複数のコンデンサ内ビア導体における前記基板主面側及び前記基板裏面側の少なくとも一方の端部に接続され、
前記複数のコンデンサ内ビア導体が全体としてアレイ状に配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のセラミック部品。
【請求項5】
前記外部電極の表面上には銅めっきが施されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のセラミック部品。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセラミック部品を製造する方法であって、
前記外部電極の表面に砥粒をぶつけることで、その表面に存在するペロブスカイト型酸化物及びニッケル酸化物を選択的に除去する表面研磨処理を施すことを特徴とするセラミック部品の製造方法。
【請求項7】
前記表面研磨処理は、湿式状態で研磨するウェットブラスト処理であることを特徴とする請求項6に記載のセラミック部品の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のセラミック部品が、コア主面及びコア裏面を有する樹脂コア基板内、または、樹脂層間絶縁層及び導体層を積層した構造を有する配線積層部内に収容されていることを特徴とする配線基板。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−147178(P2009−147178A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324080(P2007−324080)
【出願日】平成19年12月14日(2007.12.14)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】