説明

セルロースアシレートフィルムおよびその製造方法、並びに、これを用いた偏光板、液晶表示装置用光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置

【課題】適切な透水率を有し、偏光膜との接着性に優れ、ケン化処理後の水の接触角が小さく、面内または両面における接触角の差を小さくすることができ、高温高湿環境に要求される偏光度の経時安定性および良好な密着性を満たすことができるセルロースアシレートフィルムを提供すること。
【解決手段】溶融流延によって形成され、40℃・相対湿度95%における透水率が150〜800g/m2・24hrであり、且つ、下記式(1)〜(3)を満足することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(1):2.0≦X+Y≦3.0
式(2):0≦X≦2.0
式(3):1.2≦Y≦3.0
〔Xはアセチル基の置換度を表し、Yは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融流延によって形成されたセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法に関する。また、前記セルロースアシレートフィルムを用い、耐久性に優れる偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化写真感光材料の支持体、位相差板、位相差板の支持体、偏光板の保護フィルムや液晶表示装置に使用されている。これらのうち、液晶表示装置等の光学用途として最も一般的に用いられているセルローストリアセテート(TAC)フィルムでは、適度な透湿度を有する特性を生かし、表面をアルカリ水溶液に浸漬処理してケン化し親水化することにより、ポリビニルアルコールを主成分とする偏光膜に直接貼ることができる。しかし、TACフィルムは透湿度、吸水率が高い。そのため、TACフィルムを保護フィルムとする偏光板は、屋外用や車載用などの耐熱性・耐湿性に対して高度な信頼性が要求される分野で用いられると、過剰な水分の浸入によって光学特性の劣化が大きいことが問題となってきた。
【0003】
また、セルロースアセテートフィルムを製造する際に、ジクロロメタンのような塩素系有機溶剤に溶解し、これを基材上に流延、乾燥して製膜する溶液流延法が主に実施されている。塩素系有機溶剤として用いられるジクロロメタン(沸点約40℃)は、従来からセルロースアシレートの良溶媒として知られており、製造工程の製膜および乾燥工程において沸点が低いことから乾燥させ易いという利点を有することから好ましく使用されている。 近年、環境保全の観点で低沸点である塩素系有機溶媒は、密閉設備でも取り扱い工程での漏れを著しく低減されるようになった。例えば、徹底的なクローズドシステムによる系からの漏れ防止や、万が一漏れても外気に出す前にガス吸収塔を設置し、有機溶媒を吸着させて処理する方法が進められた。さらに、排出する前に火力による燃焼あるいは電子線ビームによる塩素系有機溶媒の分解などで、殆ど有機溶媒を排出することはなくなったが、完全な非排出までにはさらに研究する必要がある。
【0004】
このような有機溶媒の排出を防止する対策としては、セルロースアシレートを、有機溶剤を用いず溶融製膜する方法が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。これは、セルロースアシレートのエステル基の炭素鎖を長くすることで融点を下げ、溶融製膜しやすくしたものである。具体的には、セルロースアセテートから、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等に変えることで溶融製膜を可能にしている。また、これらの炭素鎖の長いセルロースアシレートを用いると、含水率および透水率を低減するという一定の効果も得られるものであった。
【0005】
しかしながら、これらの方法で溶融製膜したものを偏光板の保護フィルムとして、上述の特許文献2の実施例などに従って作製した偏光板は、セルロースアシレートフィルムと偏光膜との接着強度不足や、高温高湿環境下における偏光度の低下や、湿熱環境下に置いた場合や温水に浸漬した場合に偏光膜からの剥がれを生じるという問題点があり、その改良が急務とされている。
【0006】
【特許文献1】特表平6−501040号公報
【特許文献2】特開2000−352620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、溶融製膜されたセルロースアシレートフィルムを用いた偏光板が、高偏光度、高透過率であり、且つ、高温高湿環境下で使用された場合でも、偏光度の低下や偏光膜との剥れがなく、耐久性および接着性に優れたセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法、並びに、これを用いた偏光板、液晶表示装置用光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上述のセルロースアシレートフィルムと偏光膜との接着不良は、セルロースアシレートフィルム表面にケン化適性の付与が不十分であり、フィルム面内および面外の水の接触角の不均一性に起因することを明らかにした。この考えに基づいて鋭意工夫を進めたところ、接触角およびその分布が一定条件を満たすセルロースアシレートを用いることで、溶融製膜されたセルロースアシレートフィルムと偏光膜との接着強度を飛躍的に向上させることができることを見出した。
【0009】
また、セルロースアシレートフィルムの溶融製膜条件を種々検討した結果、複数のキャスティングドラムを有する多連式キャスティングドラムを用い、ドラム表面温度および左右温度分布をコントロールすることにより、製膜したセルロースアシレートフィルムの両面の物性の均一性を向上させ、アルカリケン化処理する際に、フィルム両面の接触角の差が少なくなり、どちら面を用いても、偏光膜との接着性の差を解消できることを見出した。
【0010】
さらに意外なことに通常の溶融製膜で作製したフィルムと比べ、前記多連式キャスティングドラムで溶融製膜したフィルムは、透水率を低下させる効果が得られる。このため、これを用いた偏光板が高温高湿環境下で使用された場合でも、偏光度の低下がなく、耐久性に優れることを見出し、本発明に至った。特に、このような多連式キャスティング方式と後述のタッチロール製膜法と併用することにより、透水率の低下効果及び偏光板耐久性の向上効果がより顕著に表れ、且つ面状に優れるフィルムが得られる。このような性能を有するフィルムを組み込んだ偏光板を用いた液晶表示装置は、画像が極めて良好になる。
【0011】
すなわち、上記課題は、以下の構成を有する本発明により達成される。
(1) 溶融流延によって形成され、40℃・相対湿度95%における透水率が150〜800g/m2・24hrであり、且つ、下記式(1)〜(3)を満足することを特徴と
するセルロースアシレートフィルム。
式(1):2.0≦X+Y≦3.0
式(2):0≦X≦2.0
式(3):1.2≦Y≦3.0
〔式中、Xはアセチル基の置換度を表し、Yは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。〕
【0012】
(2) アルカリケン化処理を施され、水の接触角が45°以下であり、且つ、接触角の面内分布の差が5°以内あることを特徴とする(1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
【0013】
(3) フィルム両面の接触角の差が5°以内あることを特徴とする(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
【0014】
(4) 未延伸セルロースアシレートフィルムの面内のレターデーション(Re)が0≦Re≦20nmであり、且つ、厚み方向のレターデーション(Rth)が0≦Rth≦60nmであることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0015】
(5) (1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1方向に1〜250%延伸した後、面内のレターデーション(Re)が0≦Re≦300nmであり、且つ、厚み方向のレターデーション(Rth)が0≦Rth≦500nmを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0016】
(6) 複数のキャスティングドラムを備えた多連式キャスティングドラムを用いてセルロースアシレートを溶融流延によってフィルム状に形成するセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、
ダイから押し出されたセルロースアシレートが溶融流延される第一キャスティングドラムの表面温度が、(Tg−30)℃〜(Tg+15)℃であり、且つ、前記キャスティングドラムは、ロール表面の両端の温度の差が10℃以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0017】
(7) タッチロールを用いて製膜することを特徴とする(6)に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(8) 前記多連式キャスティングドラムによって形成されたフィルム状のセルロースアシレートを41〜80℃の温度でアルカリケン化処理を施すことを特徴とする(6)または(7)に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【0018】
(9) (6)〜(8)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法で作製されたことを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
【0019】
(10) 偏光膜に、(1)〜(5)または(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1層積層したことを特徴とする偏光板。
【0020】
(11) 透過率が42.0%以上、および、偏光度が99.0%以上であることを特徴とする(10)に記載の偏光板。
【0021】
(12) 80℃・相対湿度90%の環境下に1000時間保持した後の偏光度低下が1%以下であることを特徴とする(10)または(11)に記載の偏光板。
【0022】
(13) (1)〜(5)または(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
【0023】
(14) (1)〜(5)または(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
【0024】
(15) (1)〜(5)および(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム、(10)〜(12)のいずれかに記載の偏光板、(13)に記載の光学補償フィルム並びに(14)に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される1枚以上のフィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、適切な透水率を有し、偏光膜との接着性に優れ、ケン化処理後の水の接触角が小さく、面内または両面における接触角の差を小さくすることができ、高温高湿環境に要求される偏光度の経時安定性および良好な密着性を満たすことができるセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、高品位な偏光板、偏光板の保護機能且つ位相差補償機能を兼ね備える光学補償フィルム、反射防止フィルム、またこれらを用いた液晶表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下において、本発明のセルロースアシレートフィルムおよび製造方法並びに偏光板、液晶表示装置用光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0027】
《本発明のセルロースアシレートフィルムの特徴》
本発明のセルロースアシレートフィルムは、溶融流延によって形成され、40℃・相対湿度95%における透水率が150〜800g/m2・24hrであり、且つ、下記式(1)〜(3)を満足することを特徴とする。
式(1):2.0≦X+Y≦3.0
式(2):0≦X≦2.0
式(3):1.2≦Y≦3.0
〔式中、Xは、アセチル基の置換度を表し、Yは、炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。〕
【0028】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、複数のキャスティングドラムを備えた多連式キャスティングドラムを用いてセルロースアシレートを溶融流延によってフィルム状に形成するセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、ダイから押し出されたセルロースアシレートが溶融流延される第一キャスティングドラムの表面温度が、(Tg−30)℃〜(Tg+15)℃であり、且つ、前記複数のキャスティングドラムは、ロール表面の両端の温度の差が10℃以下であることが好ましい。
【0029】
[透水率]
本発明の特徴の一つであるセルロースアシレートフィルムの透水率は、(40℃・相対湿度95%において)150〜800g/m2・24hrであり、200〜800g/m2・24hrであることが好ましく、さらに好ましくは250〜750g/m2・24hr
であり、最も好ましくは250〜700g/m2・24hrである。前記セルロースアシレートフィルムの透水率が、150g/m2・24hr未満の場合、接着剤の乾燥工程で偏光膜や接着剤中の水分がセルロースアシレートフィルムを通じて十分に蒸発しないために偏光板中の水分率が高くなり、その結果、十分な接着強度が得られにくく、得られた偏光板の偏光性能や耐久性が悪くなる。一方、前記透水率が800g/m2・24hrを超える場合、得られた偏光板の高温高湿(80℃・相対湿度90%)環境下での耐久性が悪くなる。
【0030】
[水の接触角]
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ケン化処理後の水の接触角が小さいことが好ましい。親水的な偏光膜との貼合性を向上する観点からは、ケン化処理後の水の接触角が45°以下が好ましく、より好ましくは40°以下、さらに好ましくは35°以下、最も好ましくは30°以下である。ケン化処理後の水の接触角が45°以下であると、セルロースアシレートフィルムと偏光膜との接着性が高く、高温高湿環境下における偏光度の低下や偏光膜からの剥がれを防止することができる。
【0031】
前記水の接触角については、セルロースアシレートフィルムを、25℃・相対湿度60%で3時間以上調湿した後、フィルムの表面に直径3mmの純水の液滴を落とし、フィルム表面と水滴とのなす角から水の接触角を求めることができる。
【0032】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、両面にケン化処理を施した後の接触角の面内分布および両面接触角の差がそれぞれ5°以内であることが好ましく、より好ましくは4°以下、さらに好ましくは3°以下である。このようして面内および面外の接触角の均一性を向上させることにより、本発明のセルロースアシレートフィルムと偏光膜との接着性が全面的に均一化され、高温高湿環境下における局部の剥がれや局部の偏光度の低下などの問題が生じせず、良好な耐久性が得られる。
【0033】
このような透水率および水の接触角は、後述のセルロースアシレート素材、溶融製膜条件(キャスティング条件)およびケン化処理条件を本発明の範囲内に調整することにより達成される。
以下は、セルロースアシレート素材、溶融製膜条件(キャスティング条件)およびケン化処理条件の順に詳細の説明を加える。
【0034】
≪セルロースアシレート素材》
本発明で用いられるセルロースアシレートのアシレート基は下記式(1)〜(3)を満足する。
式(1):2.0≦X+Y≦3.0
式(2):0≦X≦2.0
式(3):1.2≦Y≦3.0
〔式中、Xは、アセチル基の置換度を表し、Yは、炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。〕
【0035】
本発明におけるセルロースアシレートは、下記式(4)〜(6)の全てを満足することがより好ましく、下記式(7)〜(9)の全てを満たすことが特に好ましい。
【0036】
式(4):2.4≦X+Y≦3.0
式(5):0.05≦X≦1.8
式(6):1.3≦Y≦2.99
【0037】
式(7):2.5≦X+Y≦2.95
式(8):0.1≦X≦1.6
式(9):1.4≦Y≦2.95
【0038】
前記炭素数3〜7のアシル基の置換度であるYの対象となる、炭素数3〜7のアシル基のうち好ましいものは、プロピオニル基、ブチリル基、2−メチルプロピオニル基、ペンタノイル基、3−メチルブチリル基、2−メチルブチリル基、2,2−ジメチルプロピオニル(ピバロイル)基、ヘキサノイル基、2−メチルペンタノイル基、3−メチルペンタノイル基、4−メチルペンタノイル基、2,2−ジメチルブチリル基、2,3−ジメチルブチリル基、3,3−ジメチルブチリル基、シクロペンタンカルボニル基、ヘプタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、ベンゾイル基などを挙げることができ、より好ましくは、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ベンゾイル基であり、特に好ましくは、プロピオニル基、ブチリル基であり、最も好ましくは、プロピオニル基である。本発明に用いられるセルロースアシレートを構成するアシル基は、単一種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0039】
次に、本発明におけるセルロースアシレートの製造方法について詳細に説明する。セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。また、本発明のセルロースアシレートの原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7頁〜12頁にも詳細に記載も適用できる。
【0040】
(原料)
セルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。セルロース原料としては、α−セルロース含量が92〜99.9質量%の高純度のものを用いることが好ましい。
【0041】
(活性化)
セルロース原料はアシル化に先立って、活性化剤と接触させる処理(活性化)を行うことが好ましい。活性化剤としては、カルボン酸または水を用いることができる。添加方法としては噴霧、滴下、浸漬などの方法から選択することができる。
【0042】
活性化剤として好ましいカルボン酸は、炭素数2〜7のカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸など)であり、より好ましくは、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸であり、特に好ましくは酢酸である。活性化の際は、必要に応じて更に硫酸などのアシル化の触媒を、セルロースに対して好ましくは0.1質量%〜10質量%加えることもできる。また、2種類以上の活性化剤を併用したり、炭素数2〜7のカルボン酸の酸無水物を添加してもよい。
【0043】
活性化剤の添加量は、セルロースに対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、30質量%以上であることが特に好ましい。活性化剤の添加量の上限は生産性を低下させない限りにおいて特に制限はないが、セルロースに対して質量で100倍以下であることが好ましく、20倍以下であることがより好ましく、10倍以下であることが特に好ましい。
【0044】
活性化の時間は20分以上であることが好ましく、上限については生産性に影響を及ぼ
さない範囲であれば特に制限はないが、好ましくは72時間以下、更に好ましくは24時間以下、特に好ましくは12時間以下である。また、活性化の温度は0℃〜90℃が好ましく、15℃〜80℃が更に好ましく、20℃〜60℃が特に好ましい。
【0045】
(アシル化)
本発明におけるセルロースアシレートを製造する方法においては、セルロースとカルボン酸の酸無水物とをブレンステッド酸またはルイス酸を触媒として反応させることで、セルロースの水酸基をアシル化することが好ましい。
【0046】
セルロース混合アシレートを得る方法としては、アシル化剤として2種のカルボン酸無水物を混合または逐次添加により反応させる方法、2種のカルボン酸の混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を用いる方法、カルボン酸と別のカルボン酸の酸無水物(例えば、酢酸とプロピオン酸無水物)を原料として反応系内で混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を形成させてセルロースと反応させる方法、置換度が3に満たないセルロースアシレートを一旦合成し、酸無水物や酸ハライドを用いて、残存する水酸基を更にアシル化する方法などを用いることができる。
6位置換度の大きいセルロースアシレートの合成については、特開平11−5851号、特開2002−212338号、特開2002−338601号などの各公報に記載がある。
【0047】
(酸無水物)
カルボン酸の酸無水物として、好ましくはカルボン酸としての炭素数が2〜7であり、例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ヘキサン酸無水物、安息香酸無水物などを挙げることができる。より好ましくは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、ヘキサン酸無水物などであり、特に好ましくは、無水酢酸、プロピオン酸無水物、酪酸無水物である。
酸無水物は、セルロースに対して、通常は過剰当量添加する。すなわち、セルロースの水酸基に対して1.1〜50当量添加することが好ましく、1.2〜30当量添加することがより好ましく、1.5〜10当量添加することが特に好ましい。
【0048】
(触媒)
本発明におけるセルロースアシレートの製造に用いるアシル化の触媒には、ブレンステッド酸またはルイス酸を使用することが好ましい。ブレンステッド酸およびルイス酸の定義については、例えば、「理化学辞典」第五版(2000年)に記載されている。触媒としては、硫酸または過塩素酸がより好ましく、硫酸が特に好ましい。触媒の好ましい添加量は、セルロースに対して0.1〜30質量%であり、より好ましくは1〜15質量%であり、特に好ましくは3〜12質量%である。
【0049】
(溶媒)
アシル化を行う際には、粘度、反応速度、攪拌性、アシル置換比などを調整する目的で、溶媒を添加してもよい。溶媒として好ましくはカルボン酸であり、更に好ましくは、炭素数2以上7以下のカルボン酸{(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、安息香酸)などを挙げることができる。特に好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸などを挙げることができる。これらの溶媒は混合して用いてもよい。
【0050】
(アシル化の条件)
アシル化剤はセルロースに対して一度に添加しても、分割して添加してもよい。また、アシル化剤に対してセルロースを一度に添加しても、分割して添加してもよい。アシル化の際の反応熱による反応容器内の温度上昇を制御するために、アシル化剤は予め冷却しておくことが好ましい。
【0051】
本発明のセルロースアシレートを製造する方法においては、アシル化の際の最高到達温度が50℃以下であることが好ましい。より好ましくは40℃以下であり、特に好ましくは35℃以下である。反応の最低温度は−50℃以上が好ましく、−30℃以上がより好ましく、−20℃以上が特に好ましい。
【0052】
アシル化の反応時間は0.5時間〜24時間が好ましく、1時間〜12時間がより好ましく、1.5時間〜10時間が特に好ましい。
アシル化の終点は、目的とする置換度、重合度に応じて、光線透過率、溶液粘度、反応系の温度変化、反応物の有機溶媒に対する溶解性、顕微鏡観察などの手段により決定することができる。
【0053】
(反応停止剤)
本発明に用いられるセルロースアシレートを製造する方法においては、アシル化反応の後に、反応停止剤を加えることが好ましい。
反応停止剤としては、酸無水物を分解するものであればいかなるものでもよく、好ましい例として、水、アルコール(例えばエタノール、メタノール、プロパノール、イソプロピルアルコールなど)又はこれらを含有する組成物などを挙げることができるが、水とカルボン酸(酢酸、プロピオン酸、酪酸等)との混合物が更に好ましく、カルボン酸としては酢酸が特に好ましい。水とカルボン酸との組成比は任意の割合で用いることができるが、水の含有量が5質量%〜80質量%、さらには10質量%〜60質量%、特には15質量%〜50質量%の範囲であることが好ましい。
【0054】
(中和剤)
アシル化の反応停止工程あるいはアシル化の反応停止工程後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解、カルボン酸及びエステル化触媒の一部または全部の中和、残留硫酸根量と残留金属量の調整などのために、中和剤またはその溶液を添加してもよい。
中和剤の好ましい例としては、アンモニウム、有機4級アンモニウム、アルカリ金属、2族の金属、3〜12族の金属、または13〜15族の元素の、炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、フタル酸水素塩、クエン酸塩、酒石酸塩など)、水酸化物又は酸化物などを挙げることができる。
中和剤として更に好ましくは、アルカリ金属または2族の金属の、炭酸塩、炭酸水素塩、有機酸塩、水酸化物又は酸化物などであり、特に好ましくは、ナトリウム、カリウム、マグネシウムまたはカルシウムの、炭酸塩、炭酸水素塩、酢酸塩または水酸化物である。
中和剤の溶媒としては、水、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸など)および、これらの混合溶媒を好ましい例として挙げることができる。
【0055】
(部分加水分解)
このようにして得られたセルロースアシレートは、全置換度がほぼ3に近いものであるが、所望の置換度のものを得る目的で、少量の触媒(一般には、残存する硫酸などのアシル化触媒)と水との存在下で、20〜90℃に数分〜数日間保つことによりエステル結合を部分的に加水分解し、セルロースアシレートのアシル置換度を所望の程度まで減少させること(いわゆる熟成)が一般的に行われる。
【0056】
所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を、前記のような中和剤またはその溶液を用いて完全に中和し、部分加水分解を停止させることが好ましい。反応溶液に対して溶解性が低い塩を生成する中和剤(例えば、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウムなど)を添加することにより、溶液中あるいはセルロースに結合した触媒(例えば、硫酸エステル)を効果的に除去することも好ましい。
【0057】
(ろ過)
セルロースアシレート中の未反応物、難溶解性塩、その他の異物などを除去または削減する目的として、反応混合物(ドープ)のろ過を行うことが好ましい。ろ過は、アシル化の完了から再沈殿までの間のいかなる工程において行ってもよい。ろ過圧や取り扱い性の制御の目的から、ろ過に先立って適切な溶媒で希釈することも好ましい。
【0058】
(再沈殿)
このようにして得られたセルロースアシレート溶液を、水もしくはカルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸など)水溶液のような貧溶媒中に混合するか、セルロースアシレート溶液中に、貧溶媒を混合することにより、セルロースアシレートを再沈殿させ、洗浄及び安定化処理により目的のセルロースアシレートを得ることができる。再沈殿は連続的に行っても、一定量ずつバッチ式で行ってもよい。
【0059】
(洗浄)
生成したセルロースアシレートは洗浄処理することが好ましい。洗浄溶媒はセルロースアシレートの溶解性が低く、かつ、不純物を除去することができるものであればいかなるものでも良いが、通常は水または温水が用いられる。洗浄の進行はいかなる手段で追跡を行ってよいが、水素イオン濃度、イオンクロマトグラフィー、電気伝導度、ICP、元素分析、原子吸光スペクトル、カルボン酸臭の官能検査などの方法を好ましい例として挙げることができる。
【0060】
(安定化)
洗浄後のセルロースアシレートは、安定性を更に向上させたり、カルボン酸臭を低下させるために、安定化剤またはその水溶液などで処理することも好ましい。
安定化剤としては、弱アルカリが挙げられ、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウムなどの炭酸塩、炭酸水素塩、水酸化物、酸化物などが好ましい。
【0061】
(乾燥)
本発明においてセルロースアシレートの含水率を好ましい量に調整するためには、セルロースアシレートを乾燥することが好ましい。乾燥温度として好ましくは0〜200℃であり、さらに好ましくは40〜180℃であり、特に好ましくは50〜160℃である。本発明のセルロースアシレートは、その含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.7質量%以下であることが特に好ましい。
【0062】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、平均重合度100〜700、好ましくは120〜550、さらに好ましくは120〜400であり、特に好ましくは平均重合度130〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に記載されるように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布測定などの方法により測定できる。さらに、平均重合度の測定方法については、特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
【0063】
本発明で用いられるセルロースアシレートは、質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜5.5のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜5.0であり、さらに好ましくは2.0〜4.5であり、さらに好ましくは2.0〜4.5のセルロースアシレートが用いられる。
【0064】
これらのセルロースアシレートは1種類のみを用いてもよく、2種以上混合してもよい。また、セルロースアシレート以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースアシレートと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。セルロースアシレートはペレット化することが好ましく、好ましいペレットの大きさは1mm3〜10cm3であり、より好ましくは5mm3〜5cm3、さらに好ましくは10mm3〜3cm3である。この後、上述の条件で乾燥する。得られたセルロースアシレートは、その保存は環境による影響を受けにくくするために、低温暗所で保存することが望ましい。さらに、保管用としてアルミニウムなどの防止素材で作製された防湿袋や、SUS製ドラムあるいはコンテナに保存することがさらに好ましい。
【0065】
セルロースアシレートの具体的な合成法については、後述の合成例1および合成例2を参考にすることができる。
【0066】
《添加剤》
本発明ではセルロースアシレートに下記のような添加剤を加えてもよい。
(可塑剤)
可塑剤としては、例えば、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、リン酸エステルやカルボン酸エステル、多価アルコール系の可塑剤等が挙げられる。
アルキルフタリルアルキルグリコレート類として例えばメチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が挙げられる。
【0067】
前記リン酸エステルとしては、例えば、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、フェニルジフェニルホスフェート等を挙げることができる。さらに特表平6−501040号公報の請求項3〜7に記載のリン酸エステル系可塑剤を用いることが好ましい。上述のようにリン酸エステルはセルロースアシレートの結晶化を促しスジを発生させる効果があるが、本低分子化合物と併用することでこの効果は抑制される。このため本低分子化合物とリン酸エステルと併用することも可能である。
【0068】
カルボン酸エステルとしては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートおよびジエチルヘキシルフタレート等のフタル酸エステル類;およびクエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等のクエン酸エステル類、ジメチルアジペート、ジブチルアジペート、ジイソブチルアジペート、ビス(2−エチルヘキシル)アジペート、ジイソデシルアジペート、ビス(ブチルジグリコールアジペート)等のアジピン酸エステルを挙げることができる。またその他、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン等を単独あるいは併用するのが好ましい。
【0069】
前記多価アルコール系可塑剤は、セルロースアシレートとの相溶性が良く、また熱可塑化効果が顕著に現れるグリセリンエステル、ジグリセリンエステルなどグリセリン系のエステル化合物や、ポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物などである。
具体的なグリセリンエステルとして、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートミスチレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートノナネート、グリセリンジアセテートオクタノエート、グリセリンジアセテートヘプタノエート、グリセリンジアセテートヘキサノエート、グリセリンジアセテートペンタノエート、グリセリンジアセテートオレート、グリセリンアセテートジカプレート、グリセリンアセテートジノナネート、グリセリンアセテートジオクタノエート、グリセリンアセテートジヘプタノエート、グリセリンアセテートジカプロエート、グリセリンアセテートジバレレート、グリセリンアセテートジブチレート、グリセリンジプロピオネートカプレート、グリセリンジプロピオネートラウレート、グリセリンジプロピオネートミスチレート、グリセリンジプロピオネートパルミテート、グリセリンジプロピオネートステアレート、グリセリンジプロピオネートオレート、グリセリントリブチレート、グリセリントリペンタノエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンプロピオネートラウレート、グリセリンオレートプロピオネートなどが挙げられるがこれに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、グリセリンジアセテートカプリレート、グリセリンジアセテートペラルゴネート、グリセリンジアセテートカプレート、グリセリンジアセテートラウレート、グリセリンジアセテートミリステート、グリセリンジアセテートパルミテート、グリセリンジアセテートステアレート、グリセリンジアセテートオレートが好ましい。
【0070】
ジグリセリンエステルの具体的な例としては、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラバレレート、ジグリセリンテトラヘキサノエート、ジグリセリンテトラヘプタノエート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトラペラルゴネート、ジグリセリンテトラカプレート、ジグリセリンテトララウレート、ジグリセリンテトラミスチレート、ジグリセリンテトラパルミテート、ジグリセリントリアセテートプロピオネート、ジグリセリントリアセテートブチレート、ジグリセリントリアセテートバレレート、ジグリセリントリアセテートヘキサノエート、ジグリセリントリアセテートヘプタノエート、ジグリセリントリアセテートカプリレート、ジグリセリントリアセテートペラルゴネート、ジグリセリントリアセテートカプレート、ジグリセリントリアセテートラウレート、ジグリセリントリアセテートミスチレート、ジグリセリントリアセテートパルミテート、ジグリセリントリアセテートステアレート、ジグリセリントリアセテートオレート、ジグリセリンジアセテートジプロピオネート、ジグリセリンジアセテートジブチレート、ジグリセリンジアセテートジバレレート、ジグリセリンジアセテートジヘキサノエート、ジグリセリンジアセテートジヘプタノエート、ジグリセリンジアセテートジカプリレート、ジグリセリンジアセテートジペラルゴネート、ジグリセリンジアセテートジカプレート、ジグリセリンジアセテートジラウレート、ジグリセリンジアセテートジミスチレート、ジグリセリンジアセテートジパルミテート、ジグリセリンジアセテートジステアレート、ジグリセリンジアセテートジオレート、ジグリセリンアセテートトリプロピオネート、ジグリセリンアセテートトリブチレート、ジグリセリンアセテートトリバレレート、ジグリセリンアセテートトリヘキサノエート、ジグリセリンアセテートトリヘプタノエート、ジグリセリンアセテートトリカプリレート、ジグリセリンアセテートトリペラルゴネート、ジグリセリンアセテートトリカプレート、ジグリセリンアセテートトリラウレート、ジグリセリンアセテートトリミスチレート、ジグリセリンアセテートトリパルミテート、ジグリセリンアセテートトリステアレート、ジグリセリンアセテートトリオレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンステアレート、ジグリセリンカプリレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレートなどのジグリセリンの混酸エステルなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
この中でも、ジグリセリンテトラアセテート、ジグリセリンテトラプロピオネート、ジグリセリンテトラブチレート、ジグリセリンテトラカプリレート、ジグリセリンテトララウレートが好ましい。
【0071】
前記ポリアルキレングリコールの具体的な例としては、平均分子量が200〜1000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられるがこれらに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
【0072】
ポリアルキレングリコールの水酸基にアシル基が結合した化合物の具体的な例として、ポリオキシエチレンアセテート、ポリオキシエチレンプロピオネート、ポリオキシエチレンブチレート、ポリオキシエチレンバリレート、ポリオキシエチレンカプロエート、ポリオキシエチレンヘプタノエート、ポリオキシエチレンオクタノエート、ポリオキシエチレンノナネート、ポリオキシエチレンカプレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンミリスチレート、ポリオキシエチレンパルミテート、ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンリノレート、ポリオキシプロピレンアセテート、ポリオキシプロピレンプロピオネート、ポリオキシプロピレンブチレート、ポリオキシプロピレンバリレート、ポリオキシプロピレンカプロエート、ポリオキシプロピレンヘプタノエート、ポリオキシプロピレンオクタノエート、ポリオキシプロピレンノナネート、ポリオキシプロピレンカプレート、ポリオキシプロピレンラウレート、ポリオキシプロピレンミリスチレート、ポリオキシプロピレンパルミテート、ポリオキシプロピレンステアレート、ポリオキシプロピレンオレート、ポリオキシプロピレンリノレートなどが挙げられるがこられに限定されず、これらを単独もしくは併用して使用することができる。
これらの可塑剤は、セルロースアシレートフィルムに対し、好ましくは0〜20質量%であり、より好ましくは1〜20質量%であり、さらに好ましくは2〜15質量%である。これらの可塑剤は必要に応じて、2種類以上を併用して用いてもよい。
【0073】
(マット剤)
本発明におけるセルロースアシレートには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度を低くでき好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
【0074】
これらの微粒子は、通常平均粒子サイズが0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子サイズは0.2μm〜1.5μmが好ましく、0.4μm〜1.2μmがさらに好ましく、0.6μm〜1.1μmが最も好ましい。1次若しくは2次粒子サイズはフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとした。
【0075】
前記二酸化珪素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。また、前記酸化ジルコニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルR976およびR811(以上、日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、これらを使用することができる。
これらの中でもアエロジル200V、アエロジルR972Vが、1次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
【0076】
(紫外線吸収剤)
次に本発明におけるセルロースアシレートには、紫外線防止剤を含有することが好ましく、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させてもよい。紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。前記紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物であり、中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースアシレートに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
【0077】
好ましい紫外線防止剤として具体的には、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイトなどが挙げられる。
【0078】
さらに、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物、また紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報記載のポリマータイプの紫外線吸収剤なども好ましく用いられる。
【0079】
また、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また例えば、N,N’−ビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジンなどのヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトなどの燐系加工安定剤を併用してもよい。これらの化合物の添加量は、セルロースアシレートに対して質量割合で1ppm〜3.0%が好ましく、10ppm〜2%がさらに好ましい。
【0080】
これらの紫外線吸収剤は、市販品として下記のものがあり利用できる。
ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、TINUBIN 234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、TINUBIN 320(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、TINUBIN 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、TINUBIN 327(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、TINUBIN 328(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)、スミソーブ340(住友化学(株)製)などがある。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100(シプロ化成(株)製)、シーソーブ101(シプロ化成(株)製)、シーソーブ101S(シプロ化成(株)製)、シーソーブ102(シプロ化成(株)製)、シーソーブ103(シプロ化成(株)製)、アデカスタイプLA−51(旭電化(株)製)、ケミソープ111(ケミプロ化成(株)製)、UVINUL D−49(BASF社製)などを挙げられる。オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)やTINUBIN 315(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)がある。またサリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201(シプロ化成(株)製)やシーソーブ202(シプロ化成(株)製)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501(シプロ化成(株)製)、UVINUL N−539(BASF社製)がある。
紫外線吸収剤としては上記以外に例えば特開平2001−151901号公報に記載のものが使用できる。紫外線吸収剤は、セルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。
【0081】
(安定剤)
本発明においては必要に応じて要求される性能を損なわない範囲内で、熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、ホスファイト系化合物、亜リン酸エステル化合物、フォスフェイト、チオフォスフェイト、弱有機酸、エポキシ化合物等を単独または2種類以上を混合して添加してもよい。ホスファイト系安定剤の具体例としては、特開2004−182979号公報の段落[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を用いることができる。
【0082】
本発明における安定剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.005〜0.5質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.4質量%であり、さらに好ましくは0.05〜0.3質量%である。添加量を0.005質量%未満の場合、溶融製膜時の劣化防止および着色抑制の効果が不十分であるため、好ましくない。一方、0.5質量%以上の場合、溶融製膜したセルロースアシレートフィルムの表面にしみ出し、好ましくない。
また、劣化防止剤および酸化防止剤を添加することも好ましい。フェノール系化合物、チオエーテル系化合物、リン系化合物などは劣化防止剤もしくは酸化防止剤として添加することにより、劣化および酸化防止に相乗効果が現れる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
【0083】
(その他添加剤)
上記以外に種々の添加剤、例えば赤外線吸収剤、光学調整剤、界面活性剤および臭気トラップ剤(アミン等)など)を加えることができる。これらの詳細は、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)17〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。
赤外吸収染料としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されるものを使用することができる。赤外吸収染料は、セルロースアシレートに対して0.001〜5質量%含有させることが好ましい。
【0084】
前記光学調整剤としては、例えば特開2001−166144号公報、特開2003−344655号公報、特開2003−248117号公報、特開2003−66230号公報に記載のものを使用することができる。これにより面内のレターデーション(Re),厚み方向のレターデーション(Rth)を制御できる。前記光学調整剤の好ましい添加量は0〜15質量%であり、より好ましくは0〜12質量%であり、さらに好ましくは0〜10質量%である。
【0085】
《セルロースアシレートの溶融製膜》
1)ペレット化
前記セルロースアシレートと添加物とは溶融製膜に先立ち混合しペレット化するのが好ましい。
ペレット化を行うにあたりセルロースアシレートおよび添加物は事前に乾燥を行うことが好ましいが、ベント式押出機を用いることで、これを代用することもできる。乾燥を行う場合は、乾燥方法として、加熱炉内にて90℃で8時間以上加熱する方法等を用いることができるが、この限りではない。ペレット化は前記セルロースアシレートと添加物を、2軸混練押出機を用い150℃〜250℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを水中で固化し裁断することで作製することができる。また、押出機による溶融後水中に口金より直接押出ながらカットする、アンダーウォーターカット法等によりペレット化を行ってもかまわない。
押出機は十分な、溶融混練が得られる限り、任意の公知の単軸スクリュー押出機、非かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、かみ合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。
【0086】
好ましいペレットの大きさは断面積が1mm2〜300mm2、長さが1mm〜30mmがこのましく、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。
【0087】
またペレット化を行う時に、上記添加物は押出機の途中にある原料投入口やベント口から投入することもできる。
【0088】
押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは、20rpm〜700rpm、さらにより好ましくは30rpm〜500rpmである。これより、回転速度が遅くなると滞留時間が長くなり、熱劣化により分子量が低下したり、黄色味が悪化しやすくなる為、好ましくない。また回転速度が速すぎると剪断により分子の切断がおきやすくなり、分子量低下を招いたり、架橋ゲルの発生は増加するなどの問題が生じやすくなる。
【0089】
ペレット化における押出滞留時間は10秒間〜60分間、より好ましくは、15秒間〜30分間である。十分に溶融ができれば、滞留時間は短い方が、樹脂劣化、黄色み発生を抑えることができる点で好ましい。
【0090】
2)乾燥
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法においては、上述の方法でペレット化したものを用いるのが好ましく、溶融製膜に先立ちペレット中の含水率を1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは、0.01%以下に乾燥した後、溶融押出し機のホッパーに投入するのが好ましい。このときホッパー内の温度を好ましくは20℃〜110℃、より好ましくは40℃〜100℃、さらに好ましくは50℃〜90°にする。この際、ホッパーは除湿風エアー等で一定風量・温度に保たれていることが好ましいが、目的とする含水率が得られるのであればこの限りでは無い。この際、ホッパー内を真空密閉構造および、窒素等の不活性ガスを封入することがより好ましい。
【0091】
3)溶融押出し
上述したセルロースアシレート樹脂は、図1に示すようなスクリューを備えた溶融押出機22を用いて溶融押出しする。すなわち、セルロースアシレート樹脂は、ホッパーの供給口40を介してシリンダー32内に供給され、スクリュー38で矢印の方向に誘導される。シリンダー32内は供給口40側から順に、供給口から供給したセルロースアシレート樹脂を定量輸送する供給部(領域A)とセルロースアシレート樹脂を溶融混練・圧縮する圧縮部(領域B)と溶融混練・圧縮されたセルロースアシレート樹脂を計量する計量部(領域C)とで構成される。樹脂は上述の方法により水分量を低減させるために、乾燥することが好ましいが、残存する酸素による溶融樹脂の酸化を防止するために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用い真空排気しながら実施するのがより好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されている。ここでスクリュー圧縮比とは供給部(領域A)と計量部(領域C)との容積比、即ち供給部(領域A)の単位長さあたりの容積÷計量部(領域C)の単位長さあたりの容積で表され、供給部(領域A)のスクリュー軸の外径d1、計量部(領域C)のスクリュー軸の外径d2、供給部(領域A)の溝部径a1、および計計量部(領域C)の溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとはシリンダー内径(D)に対するシリンダー長さ(L)の比である。また、押出温度は190〜240℃に設定される。押出機内での温度が230℃を超える場合には、押出機とダイとの間に冷却機4を設ける様にするとよい。
【0092】
スクリュー圧縮比が2.5を下回って小さ過ぎると、十分に溶融混練されず、未溶解部分が発生したり、せん断発熱が小さ過ぎて結晶の融解が不十分となり、製造後のセルロースアシレートフィルムに微細な結晶が残存し易くなり、さらに、気泡が混入し易くなる。これにより、セルロースアシレートフィルムの強度が低下したり、あるいはフィルムを延伸する場合に、残存した結晶が延伸性を阻害し、配向を十分に上げることができなくなる。逆に、スクリュー圧縮比が4.5を上回って大き過ぎると、せん断応力がかかり過ぎて発熱により樹脂が劣化し易くなるので、製造後のセルロースアシレートフィルムに黄色味が出易くなる。また、せん断応力がかかり過ぎると分子の切断が起こり分子量が低下してフィルムの機械的強度が低下する。従って、製造後のセルロースアシレートフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強くさらに延伸破断しにくくするためには、スクリュー圧縮比は2.5〜4.5の範囲がよく、より好ましくは2.8〜4.2、特に好ましいのは3.0〜4.0の範囲である。
【0093】
また、L/Dが20を下回って小さ過ぎると、溶融不足や混練不足となり、圧縮比が小さい場合と同様に製造後のセルロースアシレートフィルムに微細な結晶が残存し易くなる。逆に、L/Dが70を上回って大き過ぎると、押出機内でのセルロースアシレート樹脂の滞留時間が長くなり過ぎ、樹脂の劣化を引き起こし易くなる。また、滞留時間が長くなると分子の切断が起こったり分子量が低下してセルロースアシレートフィルムの機械的強度が低下する。従って、製造後のセルロースアシレートフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強くさらに延伸破断しにくくするためには、L/Dは20〜70の範囲が好ましく、より好ましくは22〜65の範囲、特に好ましくは24〜50の範囲である。
【0094】
また、押出温度が190℃を下回って低過ぎると、結晶の融解が不十分となり、製造後のセルロースアシレートフィルムに微細な結晶が残存し易くなり、フィルム強度が低下したり、あるいはフィルムを延伸する場合に、残存した結晶が延伸性を阻害し、配向を十分に上げることができなくなる。逆に、押出し温度が240℃を超えて高過ぎると、セルオースアシレート樹脂が劣化し、黄色味(YI値)の程度が悪化してしまう。従って、製造後のセルロースアシレートフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が高く延伸破断しにくくするためには、押出温度は190〜240℃が好ましく、195〜235℃さらに好ましく、特に好ましくは200〜230℃の範囲である。
【0095】
上記の如く押出温度が設定された押出機を用いて製膜されたセルロースアシレートフィルムは、ヘイズが2.0%以下、イエローインデックス(YI値)が10以下である特性値を有している。
【0096】
ここで、ヘイズは押出温度が低過ぎないかの指標、換言すると製造後のセルロースアシレートフィルムに残存する結晶の多少を知る指標になり、ヘイズが2.0%を超えると、製造後のセルロースアシレートフィルムの強度低下と延伸時の破断が発生し易くなる。また、イエローインデックス(YI値)は押出温度が高過ぎないかを知る指標となり、イエローインデックス(YI値)が10以下であれば、黄色味の点で問題は無い。
押し出し機の種類として、一般的には設備コストの比較的安い単軸押し出し機が用いられることが多く、フルフライト、マドック、ダルメージ等のスクリュータイプがあるが、熱安定性の比較的悪いセルロースアシレート樹脂には、フルフライトタイプが好ましい。また、設備コストは高価であるが、スクリューセグメントを変更することにより、途中でベント口を設けて不要な揮発成分を脱揮させながら押出ができる二軸押出機を用いることが可能である、二軸押し出し機には大きく分類して同方向と異方向のタイプがありどちらも用いることが可能であるが、滞留部分が発生し難くセルフクリーニング性能の高い同方向回転のタイプが好ましい。二軸押出機は設備が高価であるが、混練性が高く、樹脂の供給性能が高いため、低温での押出が可能となる。このため、セルロースアセテート樹脂の製膜に適している。また、ベント口を適正に配置することにより、未乾燥状態でのセルロールアシレートペレットやパウダーをそのまま使用することも可能である。さらに、製膜途中で出たフィルムのミミ等も乾燥させることなしにそのまま再利用することもできる。
【0097】
なお、好ましいスクリューの直径は目標とする単位時間あたりの押出量によってことなるが、10mm〜300mm、より好ましくは20mm〜250mm、さらに好ましくは30mm〜150mmである。
【0098】
厚み精度を向上させるためには、吐出量の変動を減少させることが重要であり、押出機出機とダイスとの間にギアポンプを設けて、ギアポンプから一定量のセルロースアシレート樹脂を供給することは効果がある。ギアポンプとは、ドライブギアとドリブンギアとからなる一対のギアが互いに噛み合った状態で収容され、ドライブギアを駆動して両ギアを噛み合い回転させることにより、ハウジングに形成された吸引口から溶融状態の樹脂をキャビティ内に吸引し、同じくハウジングに形成された吐出口からその樹脂を一定量吐出するものである。押出機先端部分の樹脂圧力が若干の変動があっても、ギアポンプを用いることにより変動を吸収し、製膜装置下流の樹脂圧力の変動は非常に小さなものとなり、厚み変動が改善される。ギアポンプを用いることにより、ダイ部分の樹脂圧力の変動巾を±1%以内にすることが可能である。
【0099】
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。また、ギアポンプのギアの変動を解消した3枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。
【0100】
ギアポンプを用いるその他のメリットとしては、スクリュー先端部の圧力を下げて製膜できることから、エネルギー消費の軽減・樹脂温上昇の防止・輸送効率の向上・押出機内での滞留時間の短縮・押出機のL/Dを短縮が期待できる。また、異物除去のために、フィルターを用いる場合には、ギアポンプが無いと、ろ圧の上昇と共に、スクリューから供給される樹脂量が変動したりすることがあるが、ギアポンプを組み合わせて用いることにより解消が可能である。一方、ギアポンプのデメリットとしては、設備の選定方法によっては、設備の長さが長くなり、樹脂の滞留時間が長くなることと、ギアポンプ部のせん断応力によって分子鎖の切断を引き起こすことがあり、注意が必要である。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分間〜60分間であり、より好ましくは3分間〜40分間であり、さらに好ましくは4分間〜30分間である。
【0101】
ギアポンプの軸受循環用ポリマーの流れが悪くなることにより、駆動部と軸受部とにおけるポリマーによるシールが悪くなり、計量および送液押し出し圧力の変動が大きくなったりする問題が発生するため、セルロースアシレート樹脂の溶融粘度に合わせたギアポンプの設計(特にクリアランス)が必要である。また、場合によっては、ギアポンプの滞留部分がセルロースアシレート樹脂の劣化の原因となるため、滞留のできるだけ少ない構造が好ましい。押出機とギアポンプあるいはギアポンプとダイ等をつなぐポリマー管やアダプタについても、できるだけ滞留の少ない設計が必要であり、且つ溶融粘度の温度依存性の高いセルロースアシレート樹脂の押出圧力安定化のためには、温度の変動をできるだけ小さくすることが好ましい。一般的には、ポリマー管の加熱には設備コストの安価なバンドヒーターが用いられることが多いが、温度変動のより少ないアルミ鋳込みヒーターを用いることがより好ましい。さらに上述のように押出し機内でG’、G”、tanδ、ηに最大値、最小値を持たせるために、押出し機のバレルを3〜20に分割したヒーターで加熱し溶融することが好ましい。
【0102】
上記の如く構成された押出機によってセルロースアシレート樹脂が溶融され、その溶融樹脂が吐出口からダイに連続的に送られる。ダイはダイス内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイの何れのタイプでも構わない。また、Tダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサーを入れることも問題ない。Tダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜5.0倍がよく、好ましくは1.2〜3倍、さらに好ましくは1.3〜2倍である。リップクリアランスがフィルム厚みの1.0倍小さい場合には製膜により面状の良好なシートを得ることが困難である。また、リップクリアランスがフィルム厚みの5.0倍を超えて大きい場合にはシートの厚み精度が低下するため好ましくない。ダイはフィルムの厚み精度を決定する非常に重要な設備であり、厚み調整がシビアにコントロールできるものが好ましい。通常厚み調整は40〜50mm間隔で調整可能であるが、好ましくは35mm間隔以下、さらに好ましくは25mm間隔以下でフィルム厚み調整が可能なタイプが好ましい。また、セルロールアシレート樹脂は、溶融粘度の温度依存性、せん断速度依存性が高いことから、ダイの温度ムラや巾方向の流速ムラのできるだけ少ない設計が重要である。また、下流のフィルム厚みを計測して、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも長期連続生産の厚み変動の低減に有効である。
【0103】
フィルムの製造は設備コストの安い単層製膜装置が一般的に用いられるが、場合によっては機能層を外層に設けために多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。一般的には機能層を表層に薄く積層することが好ましいが、特に層比を限定するものではない。
【0104】
樹脂中の異物濾過のためや異物によるギアポンプ損傷を避けるため押し出し機出口にフィルター濾材を設けるいわゆるブレーカープレート式の濾過を行うことが好ましい。さらに精度高く異物濾過をするためには、ギアポンプ通過後にいわゆるリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。濾過は、濾過部を1カ所設けて行うことができ、また複数カ所設けて行う多段濾過でもよい。フィルター濾材の濾過精度は高い方が好ましいが、濾材の耐圧や濾材の目詰まりによる濾圧上昇から、濾過精度は15μm〜3μmが好ましくさらに好ましくは10μm〜3μmである。特に最終的に異物濾過を行うリーフ型ディスクフィルター装置を使用する場合では品質の上で濾過精度の高い濾材を使用することが好ましく、耐圧,フィルターライフの適性を確保するために装填枚数にて調整することが可能である。濾材の種類は、高温高圧下で使用される点から鉄鋼材料を用いることが好ましく、鉄鋼材料の中でも特にステンレス鋼,スチールなどを用いることが好ましく、腐食の点から特にステンレス鋼を用いることが望ましい。濾材の構成としては、線材を編んだものの他に、例えば金属長繊維あるいは金属粉末を焼結し形成する焼結濾材が使用でき、濾過精度,フィルターライフの点から焼結濾材が好ましい。
【0105】
4)キャスティング
上記方法にて、ダイよりシート状に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、セルロースアシレートフィルムを得ることができる。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出したシートとの密着性を上げることが好ましい。このような密着性の向上処理は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施してもよい。特にエッジピニングと呼ばれる、フィルムの両端部にのみを密着させる方法が取られることも多いが、これに限定される物ではない。
【0106】
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法は、溶融製膜のキャスティングドラムとして、複数のキャスティングドラムを有した多連式キャスティングドラムを用いることを特徴としている。多連式キャスティングドラムが有するキャスティングドラムの本数は、2本〜6本が好ましく、より好ましくは3本〜5本、さらに好ましくは3本〜4本である。本発明に用いられる多連式キャスティングドラムの具体例として、図2に示すような3つのキャスティングドラムを有する多連式キャスティングドラム14ものを例示することができる。3つのキャスティングドラムは、ダイ24側から第一キャスティングドラム26、第二キャスティングドラム28、第三キャスティングドラム30である。多連式キャスティングドラムを構成する各ドラムの直径r1,r2,r3は50mm〜5000mmが好ましく、より好ましくは100mm〜2000mmであり、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。また、複数本あるロールの間隔s1,s2は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは、1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
【0107】
本発明の多連式キャスティングドラムの表面温度は、徐冷することが好ましい。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法において、ダイ24から押し出されたセルロースアシレートがはじめに溶融流延される第一キャスティングドラム26の表面温度は(Tg−30)℃〜(Tg+15)℃であり、より好ましくは(Tg−30)℃〜(Tg+10)℃、さらに好ましくは(Tg−25)℃〜(Tg+10)℃である。ここで「Tg」とは、溶融流延される際のセルロースアシレートのガラス転移温度(Tg)を意味する。Tgはセルロースアシレートに添加される紫外線吸収剤、安定剤、可塑剤などの添加剤によって低下するため、Tgは溶融流延時の組成によって定まる。
また、前記第一キャスティングドラムは、ロール表面の両端の温度の差が10℃以下であり、8℃以下であることが好ましく、5℃以下がさらに好ましい。更に、第二キャスティングドラム28の表面温度は第一キャスティングドラム26より、1℃〜20℃低いことが好ましく、より好ましくは2℃〜20℃低いことであり、5℃〜20℃低いことがさらに好ましい。更に、第三キャスティングドラム30の表面温度は第二キャスティングドラム28よりも、1℃〜30℃低いことが好ましく、より好ましくは2℃〜30℃低いことであり、5℃〜30℃低いことがさらに好ましい。
【0108】
このように、多連式キャスティングドラムの本数およびドラムの温度分布の設定により、フィルム両面ともに鏡面状の金属ドラムに接触させることで、得られる本発明のセルロースアシレートフィルムの面状および両面の物性を均一化することができる。また、フィルム両面ともに鏡面状の金属ドラムに接触させることで、面状および両面の表層に含有する添加剤の量が均一化され、アルカリケン化処理を施した後には、フィルム両面の接触角の差が少なくなり、どちら面を用いても、偏光膜との接着性の差を解消できる。
【0109】
さらに、多連式キャスティングドラムの表面温度を上述のようにTg付近に設定することにより、セルロースアシレートの結晶化度を増加させ、パッキング密度の向上を促進し、結果として、得られるセルロースアシレートフィルムの透水率を低減させ、偏光板の保護フィルムとして使用した場合に、高温高湿における耐久性を向上させることができる。
【0110】
この後、フィルム状のセルロースアシレート12をキャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロール31A,31Bを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分間〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分間〜80m/分、さらに好ましくは20m/分間〜70m/分である。
本発明のセルロースアシレートフィルムの製膜幅は0.7m〜5mが好ましく、さらに好ましくは1m〜4mであり、さらに好ましくは1.3m〜3mである。
【0111】
また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン(登録商標)等の樹脂でもよく、金属ロールでもよい。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。
【0112】
本発明では溶融後ダイから押出した後、キャスティングドラム上でタッチロールを用いて製膜することがより好ましい。この方法はダイから出たメルトをキャスティングドラムとタッチロールで挟み込んで冷却固化するものである。このようなタッチロールは、ダイから出たメルトをロール間で挟む時に生じる残留歪を低減するために、弾性を有するものが好ましい。ロールに弾性を付与するためには、ロールの外筒厚みを通常のロールよりも薄くすることが必要であり、外筒の肉厚Zは、0.05mm〜7.0mmが好ましく、より好ましくは0.2mm〜5.0mm、更に好ましくは0.3mm〜2.0mm以下である。例えば、外筒厚みを薄くすることにより、弾性を付与したタイプや、金属シャフトの上に弾性体層を設け、その上に外筒を被せ、弾性体層と外筒の間に液状媒体層を満たすことにより極薄の外筒によりタッチロール製膜を可能にしたものが挙げられる。キャスティングロール、タッチロールは、表面が鏡面であることが好ましく、算術平均高さRaが100nm以下、好ましくは50nm以下、さらに好ましくは25nm以下である。具体的には例えば特開平11−314263号、特開2002−36332号、特開平11−235747号、特開2004−216717号、特開2003−145609号各公報、および国際公開第97/28950号パンフレットに記載のものを利用できる。
このようにタッチロールは薄い外筒の内側を流体が満たされているため、キャスティングロールに接触させるとその押圧で凹状に弾性変形する。従って、タッチロールとキャスティングロールは冷却ロールと面接触するため押圧が分散され、低い面圧を達成できる。このためこの間に挟まれたフィルムに残留歪を残すことなく、表面の微細凹凸を矯正できる。好ましいタッチロールの線圧は3kg/cm〜100kg/cm、より好ましくは5kg/cm〜80kg/cm、さらに好ましくは7kg/cm〜60kg/cmである。ここで言う線圧とはタッチロールに加える力をダイの吐出口の幅で割った値である。このようにして線圧を調整することによってフィルムの両面が均一に挟まれるため、フィルムの面配向を促進し、透水率が低減でき、偏光板の耐久性を一段と向上する効果が得られる。また、フィルムの両面に全体的に面圧が均一に掛けられるため、フィルム両面の物性を一段と均一化することができる。さらにフィルムに形成された微細凹凸(ダイライン)及び厚みムラを一段と低減する効果も得られる。
【0113】
タッチロール温度は60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは75℃〜140℃である。このような温度制御はこれらのロール内部に温調した液体や気体を通すことで達成できる。
【0114】
5)巻き取り
このようにして得たシートは両端をトリミングし、巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、或いは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。トリミングカッターはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等の何れのタイプの物を用いても構わない。材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼何れを用いても構わない。一般的には、超硬刃、セラミック刃を用いると刃物の寿命が長く、また切り粉の発生が抑えられて好ましい。
【0115】
また、巻き取り前に、少なくとも片面にラミフィルムを付けることも、傷防止の観点から好ましい。好ましい巻き取り張力は1kg/m幅〜50kg/幅、より好ましくは2kg/m幅〜40kg/幅、さらに好ましくは3kg/m幅〜20kg/幅である。巻き取り張力が1kg/m幅より小さい場合には、フィルムを均一に巻き取ることが困難である。逆に、巻き取り張力が50kg/幅を超える場合には、フィルムが堅巻きになってしまい、巻き外観が悪化するのみでなく、フィルムのコブの部分がクリープ現象により延びてフィルムの波うちの原因になったり、あるいはフィルムの伸びによる残留複屈折が生じるため好ましくない。巻き取り張力は、ラインの途中のテンションコントロールにより検知し、一定の巻き取り張力になるようにコントロールされながら巻き取ることが好ましい。製膜ラインの場所により、フィルム温度に差がある場合には熱膨張により、フィルムの長さが僅かに異なる場合があるため、ニップロール間のドロー比率を調整し、ライン途中でフィルムに規定以上の張力がかからない様にすることが必要である。
【0116】
巻き取り張力はテンションコントロールの制御により、一定張力で巻き取ることもできるが、巻き取った直径に応じてテーパーをつけ、適正な巻取り張力にすることがより好ましい。一般的には巻き径が大きくなるにつれて張力を少しずつ小さくするが、場合によっては、巻き径が大きくなるにしたがって張力を大きくする方が好ましい場合もある。
【0117】
≪未延伸セルロースアシレートフィルムの物性≫
このようにして得られた未延伸セルロースアシレートフィルムは面内のレターデーション(Re)が0≦Re≦20nm、且つ、厚み方向のレターデーション(Rth)が0≦Rth≦60nmであることが好ましく、より好ましくはRe=0〜15nm,Rth=0〜55nmであり、さらに好ましくはRe=0〜10nm,Rth=0〜50nmである。
Re、Rthは各々面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)で光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、面内の遅相軸(KOBRA−21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して角度を変えて、傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定した複数のレターデーション値を基にKOBRA−21ADHが算出する。本明細書においては、特に断らない限りλとして590±5nmを使用している。
このように得られた未延伸のセルロースアシレートフィルムの全光透過率は90%〜100%が好ましく、より好ましくは91〜100%、さらに好ましくは92〜100%である。好ましいヘイズは0〜1%であり、より好ましくは0〜0.8%、さらに好ましくは0〜0.6%である。
未延伸のセルロースアシレートフィルムの厚みは30μm〜250μmが好ましく、より好ましくは35μm〜200μm、さらに好ましくは40μm〜200μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
引張り弾性率は1.5kN/mm2〜3.5kN/mm2が好ましく、より好ましくは1.7kN/mm2〜2.8kN/mm2、さらに好ましくは1.8kN/mm2〜2.6kN/mm2である。
常温の破断伸度は3%〜200%が好ましく、より好ましくは5%〜200%以下、さらに好ましくは8%〜180%である。
Tg(フィルムのTg即ちセルロースアシレートと添加物の混合体のTgを指す)は95℃〜145℃が好ましく、より好ましくは100℃〜140℃、さらに好ましくは105℃〜135℃である。
80℃・1日での熱寸法変化は縦、横両方向とも0%〜±0.5%以下が好ましく、より好ましくは0%〜±0.3%、さらに好ましくは0%〜±0.2%以下である。
さらに、25℃・相対湿度80%での平衡含水率は1質量%〜4質量%が好ましく、より好ましくは1.2質量%〜3質量%、さらに好ましくは1.5質量%〜2.5質量%である。
【0118】
《延伸》
前記の方法で製膜した未延伸のセルロースアシレートフィルムを延伸してもよい。これによりRe,Rthを制御できる。
延伸はTg〜(Tg+50)℃で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+3)℃〜(Tg+30)℃、さらに好ましくは(Tg+5)℃〜(Tg+20)℃である。好ましい延伸倍率は少なくとも一方に1%〜250%、より好ましくは2%〜200%、さらに好ましくは3%〜150%である。縦、横均等に延伸してもよいが、一方の延伸倍率を他方より大きくし不均等に延伸するほうがより好ましい。縦(MD)、横(TD)いずれを大きくしてもよいが、小さい方の延伸倍率は0%〜30%が好ましく、より好ましくは0%〜25%であり、さらに好ましくは0%〜20%である。大きいほうの延伸倍率は1%〜250%であり、より好ましくは10%〜200%、さらに好ましくは30%〜150%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここで云う延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/(延伸前の長さ)
【0119】
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向と直角方向)に広げてもよい(横延伸)。また、特開2000−37772号公報、特開2001−113591号公報、特開2002−103445号公報に記載の同時2軸延伸法を用いてもよい。
Re、Rthの比を自由に制御するには、縦延伸の場合、ニップロール間をフィルム幅で割った値(縦横比)を制御することでも達成できる。即ち縦横比を小さくすることで、Rth/Re比を大きくすることができる。また、縦延伸と横延伸とを組み合わせてRe,Rthを制御することもできる。即ち縦延伸倍率と横延伸倍率を差が小さくすることでReは小さくでき、この差を大きくすることでReは大きくできる。
【0120】
このようにして延伸したセルロースアシレートフィルムのRe、Rthは下式を満足することが好ましい。
Rth≧Re
300≧Re≧0
500≧Rth≧30
【0121】
前記ReおよびRthとしてより好ましくは、
Rth≧Re×1.1
250≧Re≧10
400≧Rth≧50
であり、
さらに好ましくは、
Rth≧Re×1.2
200≧Re≧20
350≧Rth≧80
である。
【0122】
また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θが0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。即ち、縦延伸の場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±2°、さらに好ましくは0±1°である。横延伸の場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±2°あるいは−90±2°、さらに好ましくは90±1°あるいは−90±1°である。
【0123】
延伸セルロースアシレートフィルムの物性は以下の範囲が好ましい。
延伸後のセルロースアシレートフィルムの厚みは15μm〜200μmが好ましく、より好ましくは30μm〜170μm、さらに好ましくは40μm〜140μmである。厚みむらは長手方向、幅方向いずれも0%〜3%が好ましく、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
引張り弾性率は1.5kN/mm2〜3.5kN/mm2が好ましく、より好ましくは1.7kN/mm2〜2.8kN/mm2、さらに好ましくは1.8kN/mm2〜2.6kN/mm2である。
常温での破断伸度は3%〜150%が好ましく、より好ましくは5%〜140%、さらに好ましくは8%〜140%である。
80℃・1日での熱寸法変化は縦、横両方向とも0%〜±0.5%以下が好ましく、より好ましくは0%〜±0.3%以下、さらに好ましくは0%〜±0.2%以下である。
25℃・相対湿度80%での平衡含水率は1質量%〜4質量%が好ましく、より好ましくは1.2質量%〜3質量%、さらに好ましくは1.5質量%〜2.5質量%である。
ヘイズは0%〜3%、より好ましくは0%〜2%、さらに好ましくは0%〜1%である。
全光透過率は90%〜100%が好ましく、より好ましくは91%〜100%、さらに好ましくは92%〜100%である。
【0124】
≪セルロースアシレートフィルムの加工応用≫
《表面処理》
本発明の未延伸及び延伸のセルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着性の向上を達成することができる。前記表面処理としては、例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理、アルカリケン化処理を用いることができる。ここでいう「グロー放電処理」とは、プラズマ励起性気体存在下でフィルム表面にプラズマ処理を施す処理である。
前記グロー放電処理とは、10-3〜20Torr(0.13〜2700Pa)の低圧ガス下でおこる低温プラズマ処理を含む。また、大気圧下でのプラズマ処理も好ましいグロー放電処理である。前記プラズマ励起性気体とは前記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンのようなフロン類およびそれらの混合物などが挙げられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)30頁〜32頁に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000keV下で20〜500kGyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500keV下で20〜300kGyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリケン化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。具体的には特開2003−3266号、同2003−229299号、同2004−322928号、同2005−76088号各公報等を用いることができる。
【0125】
(ケン化処)
前記アルカリケン化処理は、フィルムをケン化液に浸漬してもよく(浸漬法)、ケン化液を塗布してもよい(塗布方法)。
【0126】
(アルカリ溶液)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、濃度が2mol/L以上のアルカリ溶液をケン化液として用いてケン化処理されることが好ましい。前記ケン化液はアルカリ剤と水とからなり、場合により界面活性剤および相溶化剤が含有されていてもよい。
前記アルカリ溶液の濃度(アルカリ溶液中のアルカリ剤の含有量)は、セルロースアシレートのアシル置換度に応じて決定する必要がある。すなわち、セルロースアシレートにおいては、アシル基の炭素数増大に伴って、ケン化効率が著しく低下するため、アシル基の炭素数が大きくなるほどアルカリ濃度は高くする必要があるが、アルカリ濃度が高すぎるとアルカリ溶液の安定性が損なわれ、長時間塗布において析出する場合もあるため、セルロースアシレートの一次構造に応じて適切にアルカリ溶液を選定することがポイントとなる。そのため、本発明で用いられるアルカリ溶液は2mol/L以上であることが好ましく、2.5〜15mol/Lであることがより好ましく、2.5〜10mol/Lであることがさらに好ましく、2.5〜8mol/Lであることが最も好ましい。また、アルカリ溶液の濃度は、この範囲内で、使用するアルカリ剤の種類、反応温度および反応時間に応じて調整することもできる。
【0127】
本発明では、セルローストリアセテート(TAC)フィルムに通常使われるアルカリケン化液(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの2〜4mol/Lの水溶液)を用いる場合、ケン化処理温度が41℃〜80℃の温度で行われることが好ましく、さらに好ましいのは41℃〜70℃であり、より好ましいのは41℃〜65℃である。ケン化温度が41℃以上であれば、セルロースアシレート表面のケン化が進みやすく、親水化の水の接触角が良好で、偏光膜との接着性が得られやすいため、良好な耐久性を有する偏光板を製造しやすくなる。一方、ケン化処理温度が高すぎると、アシレートフィルム中の成分(可塑剤など)が抽出されたり、フィルムの過度の膨潤が起こる場合があり、フィルム面状に白化などの問題が生じてしまうことがある。
【0128】
本発明のその他のアルカリ剤の例として、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、第二リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ほう酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同リチウム、同アンモニウムなどの無機アルカリ剤が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、DBU(1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン)、DBN(1,5−ジアザビシクロ[4,3,0]−5−ノネン)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルブチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤も用いられる。これらのアルカリ剤は単独もしくは二種以上を組み合わせて併用することもでき、一部を例えばハロゲン化したような塩の形で添加してもよい。
これらのアルカリ剤の中でも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。その理由は、これらの量を調整することにより広いpH領域でのpH調整が可能となるためである。
【0129】
前記アルカリ溶液の溶媒は、水の単独溶媒、もしくは水と有機溶媒との混合溶媒である。好ましい有機溶媒は、アルコール類、アルカノール類、グリコール化合物のモノエーテル類、ケトン類、アミド類、スルホキシド類、エーテル類が挙げられ、より好ましくは、分子量61以上のアルコール類であり、さらに好ましくは分子量61以上のグリコール類であり、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、グリセリンモノメチルエーテル、グリセリンモノエチルエーテル、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等が挙げられる。水と併用される有機溶媒は、単独もしくは2種類以上を混合して用いてもよい。
【0130】
有機溶媒を単独或いは2種以上を混合する場合の少なくとも一種の有機溶媒は、水への溶解性が大きなものが好ましい。有機溶媒の水の溶解度は、50質量%以上が好ましく、水と自由に混合するものがより好ましい。アルカリ剤、ケン化処理で副生する脂肪酸の塩、空気中の二酸化炭素を吸収して生じた炭酸の塩等への溶解性が充分なアルカリ溶液を調製できる。
有機溶媒の溶媒中の使用割合は、溶媒の種類、水との混和性(溶解性)、反応温度および反応時間に応じて決定する。短い時間でケン化反応を完了するためには、高い濃度に溶液を調製することが好ましい。ただし、溶媒濃度が高すぎるとアシレートフィルム中の成分(可塑剤など)が抽出されたり、フィルムの過度の膨潤が起こる場合があり、適切に選択する必要がある。
水と有機溶媒との混合比は、50/50〜95/5質量比が好ましい。より好ましくは60/40〜90/10質量比であり、さらに好ましくは70/30〜90/10質量比である。この範囲において、アシレートフィルムの光学特性を損なうことなく容易にフィルム全面が均一にケン化処理される。
【0131】
本発明で好ましく用いられるアルカリ溶液の如く、高濃度のアルカリ溶液は環境雰囲気のCO2を吸収して溶液中で炭酸となりpHを下げるとともに、炭酸塩の沈殿物を発生させやすくなるため、環境雰囲気のCO2濃度は5000ppm以下が好ましい。環境雰囲気のCO2の吸収を抑制するために、アルカリ溶液の塗布コーターを半密閉構造としたり、乾燥空気、不活性ガスやアルカリ溶液の有機溶剤飽和蒸気で覆うようにすることがより好ましい。
【0132】
(界面活性剤)
本発明のアルカリ溶液は、界面活性剤を含有することもできる。界面活性剤を添加することによって、たとえ有機溶媒がフィルム含有物質を抽出したとしてもアルカリ溶液中に安定に存在させ、後の水洗工程においても抽出物質が析出、固体化しない。好ましく用いられる界面活性剤については、例えば、特開2003−313326号公報などに記載がある。
【0133】
(消泡剤)
本発明のアルカリ溶液は、消泡剤を含有させることもでき、好ましく用いられる消泡剤について、例えば、特開2003−313326号公報などに記載がある。
【0134】
(防黴剤/防菌剤)
本発明に用いるアルカリ溶液には、防黴剤および/または防菌剤を含有させることもでき、好ましく用いられる防黴剤/防菌剤について、例えば、特開2003−313326号公報などに記載がある。
【0135】
(水)
また、アルカリ溶液に用いる水としては、日本国水道法(昭和32年法律第177号)およびそれに基づく水質基準に関する省令(昭和53年8月31日厚生省令第56号)、同国温泉法(昭和23年7月10日法律第125号およびその別表)、および、WHO規定水道水基準によって規定される水中の混入の状態に於ける各元素やミネラル等への影響、等に基づくものが好ましい。
本発明の効果の達成をより確実にするために、上述した水を用いることが好ましく、アルカリ溶液のカルシウム濃度は、0.001〜400mg/Lであるのが好ましく、0.001〜150mg/Lであるのがさらに好ましく、0.001〜10mg/Lであるのが特に好ましい。マグネシウム濃度は、0.001〜400mg/Lであるのが好ましく、0.001〜150mg/Lであるのがさらに好ましく、0.001〜10mg/Lであるのが特に好ましい。カルシウムやマグネシウム以外の他の多価の金属イオンも含まれないことが好ましい。多価金属イオンの濃度は0.002〜1000mg/Lであることが好ましい。一方、アルカリ溶液に塩化物イオンや炭酸イオンなどのアニオンも含まないことが好ましい。塩化物イオン濃度は0.001〜500mg/Lであることが好ましく、0.001〜300mg/Lであるのがさらに好ましく、0.001〜100mg/Lであるのが特に好ましい。また、炭酸イオンも含まれないことが好ましい。炭酸イオン濃度は0.001〜3500mg/Lであることが好ましく、0.001〜1000mg/Lであるのがさらに好ましく、0.001〜200mg/Lであるのが特に好ましい。これらの濃度範囲において、溶液中の不溶解物の生成が抑えられる。
【0136】
(アルカリケン化処理)
上述のように本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを前記アルカリ溶液でケン化処理する工程と、アルカリ溶液をフィルムから洗い落とす工程とによりアルカリケン化処理を実施されるのが好ましい。その後、アルカリ溶液を中和する工程、および中和液をフィルムから洗い落とす工程を含んでもよい。これらの工程は、フィルムを搬送しながら実施することが好ましく、特開2001−188130号公報記載のようなアルカリ溶液に浸漬する方法を用いてもよく、特開2004−203965号公報記載のようなアルカリ溶液を塗布する方法を用いてもよい。
ケン化時間は1〜10分間であることが好ましく、2〜8分間であることが好ましく、2〜6分間であることがさらに好ましい。ケン化時間が長すぎると、後述する偏光板耐久性に悪影響を及ぼしてしまう。
アルカリ溶液に浸漬するケン化工程の場合、ケン化液は、ケン化溶液槽の中で対流させることが好ましい。対流速度は、溶液に紐をつけた溶液と同等の比重を有するフロートを入れ、単位時間あたりに紐が繰り出された量から測定することができ、線速度が1m/分以上であることが好ましく、10〜1000m/分であることがより好ましく、30〜500m/分であることがさらに好ましく、50〜300m/分であることが最も好ましい。ケン化液の対流は、溶液槽中に撹拌羽により実施することができる。また、ケン化溶液槽中、フィルムが浸漬される入り口付近のケン化液温度と、フィルムがケン化液から取り出される出口付近のケン化液温度との差は、0.1℃以上であることが好ましく、0.5〜20℃であることがより好ましく、3〜10℃であることがさらに好ましい。また、出口付近の温度のほうが高いほうが最も好ましい。このことにより、フィルム中の添加剤の析出を抑え、効率的にフィルムの接触角を低下させることができる。ケン化液の温度差は、アルカリ溶液槽中に仕切り板を設けて溶液の流れを妨げ、昇温用のヒーターを追加するなどの方法を用いて設定することができる。
【0137】
また、液中に溶け出したセルロースアシレートフィルムの添加剤がセルロースアシレートフィルム上に付着して輝点故障(異物欠陥)の発生原因となるため、活性炭を用い、溶出成分を吸着、除去する方法が利用できる。活性炭は、ケン化溶液中の着色成分を除去する機能を有すれば良く、その形態、材質等に制限はない。活性炭を直接アルカリケン化溶液槽に入れる方法であったり、ケン化溶液槽と活性炭を充填した浄化装置間にケン化溶液を循環させる方法であっても構わない。
【0138】
《機能層付与》
本発明の延伸および未延伸セルロースアシレートフィルムに、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせることが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償フィルム)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)、ハードコート層の付与である。
また、機能層との接着のため下塗り層を設けることも好ましい。この層は上記表面処理をした後、塗設しても良く、表面処理なしで塗設してもよい。これらの表面処理、下塗り工程は、製膜工程の最後に組み込むこともでき、単独で実施することもできる。
【0139】
(1)偏光膜の作製
[偏光膜の使用素材]
現在、市販の偏光板に使用される偏光膜(層)は、延伸したポリマーを、浴槽中のヨウ素もしくは二色性色素の溶液に浸漬し、バインダー中にヨウ素、もしくは二色性色素を浸透させることで作製されるのが一般的である。前記偏光膜としては、Optiva Inc.に代表される塗布型偏光膜も利用できる。偏光膜におけるヨウ素および二色性色素は、バインダー中で配向することで偏光性能を発現する。二色性色素としては、アゾ系色素、スチルベン系色素、ピラゾロン系色素、トリフェニルメタン系色素、キノリン系色素、オキサジン系色素、チアジン系色素あるいはアントラキノン系色素が用いられる。二色性色素は、水溶性であることが好ましい。二色性色素は、親水性置換基(例、スルホ、アミノ、ヒドロキシル)を有することが好ましい。例えば、発明協会公開技法(公技番号2001−1745号、2001年3月15日発行、発明協会)58頁に記載の化合物が挙げられる。
【0140】
偏光膜は、厚み35μm以下のものであれば、特に制限されず、各種のものを使用できる。前記偏光膜としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。これらのなかでもポリビニルアルコール系フィルムとヨウ素などの二色性物質とからなる偏光膜が好適である。特にヨウ素染色したポリビニルアルコール系フィルムの染色性が良好で好適である。
【0141】
厚み30μm以下の偏光膜は、例えば、厚みが100μm以下のポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素にて染色、架橋、延伸、乾燥することにより形成することができる。
【0142】
前記ポリビニルアルコール系フィルムとしては、ポリビニルアルコール系樹脂を、水または有機溶媒に溶解した原液を流延成膜する流延法、キャスト法、押出法等の任意の方法で成膜されたものを使用することができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、100〜5000が好ましく、1400〜4000がより好ましい。ポリビニルアルコール系フィルムの膜厚は100μm以下が好ましく、より好ましくは20〜90μm、さらに好ましくは20〜85μmである。ポリビニルアルコール系フィルムの膜厚が100μmを超える場合は、液晶表示装置等に実装した場合に表示パネルの色変化が大きくなる。一方、膜厚が薄すぎる場合は延伸が困難となる。
【0143】
染色工程においては、ポリビニルアルコール系フィルムを、ヨウ素が添加された20〜70℃の染色浴に1〜20分間浸漬し、ヨウ素を吸着させる。染色浴中のヨウ素濃度は、通常水100質量部あたり0.1〜1質量部である。染色浴中には、染色効率を高めるために、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化銅、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を0.02〜20質量部、好ましくは2〜10質量部添加してもよい。染色浴中には、水溶媒以外に、水と相溶性のある有機溶媒が少量含有されていてもよい。なお、ポリビニルアルコール系フィルムは、ヨウ素または二色性染料含有水溶液中で染色する前に、水浴等で20〜60℃で0.1〜10分間膨潤処理してもよい。
【0144】
架橋工程においては、染色処理したポリビニルアルコール系フィルムを、ホウ素化合物含有水溶液中で延伸する。ホウ素化合物含有水溶液は、通常水100質量部に対して、ホウ酸、ホウ砂、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のポリビニルアルコールの架橋剤を単独または混合して、1〜10質量部含有する。ホウ素化合物含有水溶液中には、面内の均一な特性を得るために、ヨウ化カリウム、ヨウ化リチウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛、ヨウ化アルミニウム、ヨウ化鉛、ヨウ化鋼、ヨウ化バリウム、ヨウ化カルシウム、ヨウ化錫、ヨウ化チタン等のヨウ化物等の助剤を0.05〜15質量%、好ましくは0.5〜8質量%添加してもよい。ホウ素化合物含有水溶液の温度は通常20〜70℃、好ましくは40〜60℃の範囲である。浸漬時間は、特に限定されないが、通常1秒〜15分間、好ましくは5秒〜10分間である。ホウ素化合物含有水溶液には、水溶媒以外に、水と相溶性のある有機溶媒が少量含有されていてもよい。
【0145】
乾燥工程においては、ヨウ素吸着配向処理を施したポリビニルアルコール系フィルムを、さらに水温10〜60℃、好ましくは30〜40℃、濃度0.1〜10質量%のヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液に1秒〜1分間浸漬した後、水洗し、20〜80℃で1分間〜10分間乾燥して偏光フィルムを得る。ヨウ化物水溶液中には、硫酸亜鉛、塩化亜鉛物等の助剤を添加してもよい。
【0146】
延伸法の場合、延伸倍率は3.0〜20.0倍が好ましく、3.0〜10.0倍がさらに好ましい。延伸は、空気中でのドライ延伸で実施できる。また、水に浸漬した状態でのウェット延伸を実施してもよい。ドライ延伸の延伸倍率は、3.0〜10.0倍が好ましく、ウェット延伸の延伸倍率は、3.0〜7.5倍が好ましい。ウェット延伸の総延伸倍率が3.0倍未満の場合は高偏光度の偏光板を得難く、7.5倍を超える場合はフィルムが破断しやすくなる。なお、ここでいう延伸倍率は、(延伸後の偏光膜の長さ)/(延伸前の偏光膜の長さ)である。
延伸方向はMD方向に平行に行ってもよく(平行延伸)、斜め方向におこなってもよい(斜め延伸)。これらの延伸は、延伸方法や延伸回数等は、特に制限されるものではなく、染色,架橋の各工程で行ってもよく、いずれか一工程でのみ行ってもよい。また、同一工程で複数回行ってもよい。
【0147】
(I)平行延伸法
平行延伸法においては、延伸に先立ち、PVAフィルムを膨潤させるのが好ましい。膨潤度は1.2〜2.0倍(膨潤前と膨潤後の質量比)である。この後、ガイドロール等を介して連続搬送しつつ、水系媒体浴内や二色性物質溶解の染色浴内で、15〜50℃、就中17〜40℃の浴温で延伸するのが好ましい。延伸は2対のニップロールで把持し、後段のニップロールの搬送速度を前段のそれより大きくすることで達成できる。
【0148】
(II)斜め延伸法
斜め延伸法においては、特開2002−86554号公報に記載の斜め方向に傾斜め方向に張り出したテンターを用い延伸する方法を用いることができる。この延伸は空気中で延伸するため、事前に含水させて延伸しやすくすることが必用である。好ましい含水率は5%〜100%であり、延伸温度は40℃〜90℃が好ましく、延伸中の湿度は、相対湿度で50%〜100%が好ましい。
このようにして得られた偏光膜の吸収軸は10°〜80°が好ましく、より好ましくは30°〜60°であり、さらに好ましくは実質的に45°(40°〜50°)である。
【0149】
また、保護フィルムと貼り合わせる際の偏光膜の水分率(偏光膜の全体質量に占める偏光膜中の水分質量割合)は、偏光膜の厚さにもよるが、一般に20質量%未満であり、5〜20質量%、特に13〜17質量%の範囲であることが好ましい。水分率が20質量%を超える場合は、偏光板作製後の水分変化量が多くなり、高温高湿における偏光度の低下や耐久性に悪影響を及ぼしている。
【0150】
[貼り合せ]
上記ケン化後の延伸、未延伸セルロースアシレートフィルムと、延伸して調製した偏光膜を貼り合わせ偏光板を作製する。張り合わせる方向は特に制限はないが、セルロースアシレートフィルムの流延軸方向と偏光板の延伸軸方向が0°、45°、90°のいずれかになるように行うのが好ましい。
貼り合わせの接着剤は特に限定されないが、PVA系樹脂(アセトアセチル基、スルホン酸基、カルボキシル基、オキシアルキレン基等の変性PVAを含む)やホウ素化合物水溶液等が挙げられ、中でもPVA系樹脂が好ましい。接着剤層厚みは乾燥後に0.01〜10μmが好ましく、0.05〜5μmが特に好ましい。
貼り合せの層構成として以下のようなものが挙げられる。
イ)A/P/A
ロ)A/P/B
ハ)A/P/T
ニ)B/P/B
ホ)B/P/T
なお、「A」は本発明の未延伸セルロースアシレートフィルム、「B」は本発明の延伸セルロースアシレートフィルム、「T」はセルローストリアセテートフィルム(富士写真フイルム(株)製、フジタックTD80U等)、「P」は偏光膜を指す。
【0151】
前記イ)、ロ)の構成の場合A,Bは同一組成のセルロースアセテートでも異なっていてもよい。前記ニ)の構成の場合、Bは同一組成のセルロースアセテートでも異なっていてもよく、同一延伸倍率でも異なっていてもよい。また本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込んで使用する場合は、どちらを液晶面にしてもよいが、構成ロ)、ホ)の場合はBを液晶側にするのがより好ましい。
本発明の偏光板を液晶表示装置に組み込む場合、通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、この場合、本発明の偏光板であるイ)〜ホ)および通常の偏光板(T/P/T)を自由に組み合わせることができる。しかし液晶表示装置の表示側最表面のフィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等を設けることが好ましく、これら各層には後述のものを用いることができる。
【0152】
このようにして得られた偏光板の光線透過率は高い方が好ましく、偏光度も高い方が好ましい。本発明の偏光板の透過率は、42.0%以上であることが好ましく、具体的には、42%〜50%あることが好ましく、より好ましくは42.5%〜50%、さらに好ましくは43.0%〜50%、最も好ましくは43.5%〜50%の範囲にある。また、偏光度は、99.0%以上であることが好ましく、具体的には、99%〜100%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは99.5%〜100%、さらに好ましくは99.6%〜100%、最も好ましくは99.9%〜100%の範囲にある。
さらに、このようにして得た本発明の偏光板はλ/4板と積層し、円偏光を作製することができる。この場合λ/4の遅相軸と偏光板の吸収軸とを45°になるように積層する。この時、λ/4は特に限定されないが、より好ましくは低波長ほどレターデーションが小さくなるような波長依存性を有するものがより好ましい。さらには長手方向に対し20°〜70°傾いた吸収軸を有する偏光膜、および液晶性化合物からなる光学異方性層から成るλ/4板を用いることが好ましい。
これらの偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合してもよい。プロテクトフィルムおよびセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。
また、80℃・相対湿度90%の環境下に1000時間保持した後の偏光度低下が1%以下であることが好ましく、0.8%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。
【0153】
(2)光学補償層の付与(光学補償フィルムの作製)
光学異方性層は、液晶表示装置の黒表示における液晶セル中の液晶化合物を補償するためのものであり、延伸、未延伸セルロースアシレートフィルムの上に配向膜を形成し、さらに光学異方性層を付与することで形成される。
【0154】
[配向膜]
前記表面処理した延伸、未延伸の本発明のセルロースアシレートフィルム上に配向膜を設ける。この膜は、液晶性分子の配向方向を規定する機能を有する。しかし、液晶性化合物を配向後にその配向状態を固定してしまえば、配向膜はその役割を果たしているために、本発明の光学補償フィルムの構成要素としては必ずしも必須のものではない。即ち、配向状態が固定された配向膜上の光学異方性層のみを偏光子上に転写して本発明の偏光板を作製することも可能である。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例えば、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。配向膜に使用するポリマーは、原則として、液晶性分子を配向させる機能のある分子構造を有する。
本発明では、液晶性分子を配向させる機能に加えて、架橋性官能基(例えば、二重結合)を有する側鎖を主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する架橋性官能基を側鎖に導入することが好ましい。
【0155】
配向膜に使用されるポリマーは、それ自体架橋可能なポリマーあるいは架橋剤により架橋されるポリマーのいずれも使用することができ、これらの組み合わせを複数使用することができる。ポリマーの例には、例えば特開平8−338913号公報明細書中段落番号[0022]記載のメタクリレート系共重合体、スチレン系共重合体、ポリオレフィン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、ポリエステル、ポリイミド、酢酸ビニル共重合体、カルボキシメチルセルロース、ポリカーボネート等が含まれる。シランカップリング剤をポリマーとして用いることができる。水溶性ポリマー(例えば、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール)が好ましく、ゼラチン、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールがさらに好ましく、ポリビニルアルコールおよび変性ポリビニルアルコールが最も好ましい。重合度が異なるポリビニルアルコールまたは変性ポリビニルアルコールを2種類併用することが特に好ましい。ポリビニルアルコールのケン化度は、70〜100%が好ましく、80〜100%がさらに好ましい。ポリビニルアルコールの重合度は、100〜5000であることが好ましい。
【0156】
液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖は、一般に疎水性基を官能基として有する。具体的な官能基の種類は、液晶性分子の種類および必要とする配向状態に応じて決定する。例えば、変性ポリビニルアルコールの変性基としては、共重合変性、連鎖移動変性またはブロック重合変性により導入できる。変性基の例には、親水性基(カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、チオール基等)、炭素数10〜100個の炭化水素基、フッ素原子置換の炭化水素基、チオエーテル基、重合性基(不飽和重合性基、エポキシ基、アジリニジル基等)、アルコキシシリル基(トリアルコキシ、ジアルコキシ、モノアルコキシ)等が挙げられる。これらの変性ポリビニルアルコール化合物の具体例として、例えば特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0022]〜[0145]、同2002−62426号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0022]に記載のもの等が挙げられる。
【0157】
架橋性官能基を有する側鎖を配向膜ポリマーの主鎖に結合させるか、あるいは、液晶性分子を配向させる機能を有する側鎖に架橋性官能基を導入すると、配向膜のポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを共重合させることができる。その結果、多官能モノマーと多官能モノマーとの間だけではなく、配向膜ポリマーと配向膜ポリマーとの間、そして多官能モノマーと配向膜ポリマーとの間も共有結合で強固に結合される。従って、架橋性官能基を配向膜ポリマーに導入することで、光学補償フィルムの強度を著しく改善することができる。
【0158】
配向膜ポリマーの架橋性官能基は、多官能モノマーと同様に、重合性基を含むことが好ましい。具体的には、例えば特開2000−155216号公報明細書中段落番号[0080]〜[0100]記載のもの等が挙げられる。配向膜ポリマーは、前記の架橋性官能基とは別に、架橋剤を用いて架橋させることもできる。
架橋剤としては、アルデヒド、N−メチロール化合物、ジオキサン誘導体、カルボキシル基を活性化することにより作用する化合物、活性ビニル化合物、活性ハロゲン化合物、イソオキサゾールおよびジアルデヒド澱粉が含まれる。二種類以上の架橋剤を併用してもよい。具体的には、例えば特開2002−62426号公報明細書中の段落番号[0023]〜[0024]記載の化合物等が挙げられる。反応活性の高いアルデヒド、特にグルタルアルデヒドが好ましい。
架橋剤の添加量は、ポリマーに対して0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜15質量%がさらに好ましい。配向膜に残存する未反応の架橋剤の量は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。このように調節することで、配向膜を液晶表示装置に長期使用、或は高温高湿の雰囲気下に長期間放置しても、レチキュレーション発生のない充分な耐久性が得られる。
【0159】
配向膜は、基本的に、配向膜形成材料である前記ポリマー、架橋剤を含む透明支持体上に塗布した後、加熱乾燥(架橋させ)し、ラビング処理することにより形成することができる。架橋反応は、前記のように、透明支持体上に塗布した後、任意の時期に行ってよい。ポリビニルアルコールのような水溶性ポリマーを配向膜形成材料として用いる場合には、塗布液は消泡作用のある有機溶媒(例えば、メタノール)と水との混合溶媒とすることが好ましい。その比率は質量比で水:メタノールが0:100〜99:1が好ましく、0:100〜91:9であることがさらに好ましい。これにより、泡の発生が抑えられ、配向膜、さらには光学異方性層の層表面の欠陥が著しく減少する。
【0160】
配向膜の塗布方法は、スピンコーティング法、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、ロッドコーティング法またはロールコーティング法が好ましい。特にロッドコーティング法が好ましい。また、乾燥後の膜厚は0.1〜10μmが好ましい。加熱乾燥は、20℃〜110℃で行うことができる。充分な架橋を形成するためには60℃〜100℃が好ましく、特に80℃〜100℃が好ましい。乾燥時間は1分間〜36時間で行うことができるが、好ましくは1分間〜30分間である。pHも、使用する架橋剤に最適な値に設定することが好ましく、グルタルアルデヒドを使用した場合は、pH4.5〜5.5で、特に5が好ましい。
【0161】
配向膜は、延伸・未延伸セルロースアシレートフィルム上または前記下塗層上に設けられる。配向膜は、前記のようにポリマー層を架橋したのち、表面をラビング処理することにより得ることができる。
前記ラビング処理は、LCDの液晶配向処理工程として広く採用されている処理方法を適用することができる。即ち、配向膜の表面を、紙やガーゼ、フェルト、ゴムあるいはナイロン、ポリエステル繊維などを用いて一定方向に擦ることにより、配向を得る方法を用いることができる。一般的には、長さおよび太さが均一な繊維を平均的に植毛した布などを用いて数回程度ラビングを行うことにより実施される。
工業的に実施する場合、搬送している偏光膜のついたフィルムに対し、回転するラビングロールを接触させることで達成するが、ラビングロールの真円度、円筒度、振れ(偏芯)はいずれも30μm以下であることが好ましい。ラビングロールへのフィルムのラップ角度は、0.1〜90°が好ましい。ただし、特開平8−160430号公報に記載されているように、360°以上巻き付けることで、安定なラビング処理を得ることもできる。フィルムの搬送速度は1〜100m/minが好ましい。ラビング角は0〜60°の範囲で適切なラビング角度を選択することが好ましい。液晶表示装置に使用する場合は、40〜50°が好ましい。45°が特に好ましい。
このようにして得た配向膜の膜厚は、0.1〜10μmの範囲にあることが好ましい。
【0162】
次に、配向膜の上に光学異方性層の液晶性分子を配向させる。その後、必要に応じて、配向膜ポリマーと光学異方性層に含まれる多官能モノマーとを反応させるか、あるいは、架橋剤を用いて配向膜ポリマーを架橋させる。
光学異方性層に用いる液晶性分子には、棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子が含まれる。棒状液晶性分子および円盤状液晶性分子は、高分子液晶でも低分子液晶でもよく、さらに、低分子液晶が架橋され液晶性を示さなくなったものも含まれる。
【0163】
[棒状液晶性分子]
棒状液晶性分子としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。
なお、棒状液晶性分子には、金属錯体も含まれる。また、棒状液晶性分子を繰り返し単位中に含む液晶ポリマーも、棒状液晶性分子として用いることができる。言い換えると、棒状液晶性分子は、(液晶)ポリマーと結合していてもよい。
【0164】
棒状液晶性分子については、季刊化学総説第22巻液晶の化学(1994)日本化学会編の第4章、第7章および第11章、および液晶デバイスハンドブック日本学術振興会第142委員会編の第3章に記載がある。
棒状液晶性分子の複屈折率は、0.001〜0.7の範囲にあることが好ましい。
棒状液晶性分子は、その配向状態を固定するために、重合性基を有することが好ましい。重合性基は、ラジカル重合性不飽基或はカチオン重合性基が好ましく、具体的には、例えば特開2002−62427号公報明細書中の段落番号[0064]〜[0086]に記載の重合性基、重合性液晶化合物が挙げられる。
【0165】
[円盤状液晶性分子]
円盤状(ディスコティック)液晶性分子には、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.71巻、111頁(1981年)に記載されているベンゼン誘導体、C.Destradeらの研究報告、Mol.Cryst.122巻、141頁(1985年)、Physics lett,A,78巻、82頁(1990)に記載されているトルキセン誘導体、B.Kohneらの研究報告、Angew.Chem.96巻、70頁(1984年)に記載されたシクロヘキサン誘導体およびJ.M.Lehnらの研究報告、J.Chem.Commun.,1794頁(1985年)、J.Zhangらの研究報告、J.Am.Chem.Soc.116巻、2655頁(1994年)に記載されているアザクラウン系やフェニルアセチレン系マクロサイクルが含まれる。
【0166】
円盤状液晶性分子としては、分子中心の母核に対して、直鎖のアルキル基、アルコキシ基、置換ベンゾイルオキシ基が母核の側鎖として放射線状に置換した構造である液晶性を示す化合物も含まれる。分子または分子の集合体が、回転対称性を有し、一定の配向を付与できる化合物であることが好ましい。円盤状液晶性分子から形成する光学異方性層は、最終的に光学異方性層に含まれる化合物が円盤状液晶性分子である必要はなく、例えば、低分子の円盤状液晶性分子が熱や光で反応する基を有しており、結果的に熱、光で反応により重合または架橋し、高分子量化し液晶性を失った化合物も含まれる。円盤状液晶性分子の好ましい例は、特開平8−50206号公報に記載されている。また、円盤状液晶性分子の重合については、特開平8−27284公報に記載がある。
【0167】
円盤状液晶性分子を重合により固定するためには、円盤状液晶性分子の円盤状コアに、置換基として重合性基を結合させる必要がある。円盤状コアと重合性基は、連結基を介して結合する化合物が好ましく、これにより重合反応においても配向状態を保つことができる。例えば、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0151]〜[0168]記載の化合物等が挙げられる。
ハイブリッド配向では、円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)と偏光膜の面との角度が、光学異方性層の深さ方向でかつ偏光膜の面からの距離の増加と共に増加または減少している。角度は、距離の増加と共に減少することが好ましい。さらに、角度の変化としては、連続的増加、連続的減少、間欠的増加、間欠的減少、連続的増加と連続的減少を含む変化、あるいは、増加および減少を含む間欠的変化が可能である。間欠的変化は、厚さ方向の途中で傾斜角が変化しない領域を含んでいる。角度は、角度が変化しない領域を含んでいても、全体として増加または減少していればよい。さらに、角度は連続的に変化することが好ましい。
【0168】
偏光膜側の円盤状液晶性分子の長軸の平均方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは配向膜の材料を選択することにより、またはラビング処理方法の選択することにより、調整することができる。また、表面側(空気側)の円盤状液晶性分子の長軸(円盤面)方向は、一般に円盤状液晶性分子あるいは円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の種類を選択することにより調整することができる。円盤状液晶性分子と共に使用する添加剤の例としては、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマーおよびポリマーなどを挙げることができる。長軸配向方向の変化の程度も、前記と同様に、液晶性分子と添加剤との選択により調整できる。
【0169】
[光学異方性層の他の組成物]
前記の液晶性分子と共に、可塑剤、界面活性剤、重合性モノマー等を併用して、塗工膜の均一性、膜の強度、液晶分子の配向性等を向上することができる。液晶性分子と相溶性を有し、液晶性分子の傾斜角の変化を与えられるか、あるいは配向を阻害しないことが好ましい。
【0170】
前記重合性モノマーとしては、ラジカル重合性若しくはカチオン重合性の化合物が挙げられる。好ましくは、多官能性ラジカル重合性モノマーであり、前記の重合性基含有の液晶化合物と共重合性のものが好ましい。例えば、特開2002−296423号公報明細書中の段落番号[0018]〜[0020]記載のものが挙げられる。前記化合物の添加量は、円盤状液晶性分子に対して一般に1〜50質量%の範囲にあり、5〜30質量%の範囲にあることが好ましい。
【0171】
前記界面活性剤としては、従来公知の化合物が挙げられるが、特にフッ素系化合物が好ましい。具体的には、例えば特開2001−330725号公報明細書中の段落番号[0028]〜[0056]記載の化合物が挙げられる。
【0172】
また、円盤状液晶性分子とともに使用するポリマーは、円盤状液晶性分子に傾斜角の変化を与えられることが好ましい。
前記ポリマーの例としては、セルロースエステルを挙げることができる。セルロースエステルの好ましい例としては、特開2000−155216号公報明細書中の段落番号[0178]記載のものが挙げられる。液晶性分子の配向を阻害しないように、前記ポリマーの添加量は、液晶性分子に対して0.1〜10質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましい。
円盤状液晶性分子のディスコティックネマティック液晶相−固相転移温度は、70〜300℃が好ましく、70〜170℃がさらに好ましい。
【0173】
[光学異方性層の形成]
光学異方性層は、液晶性分子および必要に応じて後述の重合性開始剤や任意の成分を含む塗布液を、配向膜の上に塗布することで形成できる。
塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましく用いられる。有機溶媒の例には、アミド(例えば、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例えば、ピリジン)、炭化水素(例えば、ベンゼン、ヘキサン)、アルキルハライド(例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラクロロエタン)、エステル(例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライドおよびケトンが好ましい。二種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
【0174】
塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
光学異方性層の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜15μmであることがさらに好ましく、1〜10μmであることが最も好ましい。
【0175】
[液晶性分子の配向状態の固定]
配向させた液晶性分子を、配向状態を維持して固定することができる。固定化は、重合反応により実施することが好ましい。重合反応には、熱重合開始剤を用いる熱重合反応と光重合開始剤を用いる光重合反応とが含まれる。光重合反応が好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2,367,661号、同2,367,670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2,448,828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2,722,512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3,046,127号、同2,951,758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3,549,367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4,239,850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4,212,970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%の範囲にあることが好ましく、0.5〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0176】
液晶性分子の重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。
照射エネルギーは、20mJ/cm2〜50J/cm2の範囲にあることが好ましく、20mJ/cm2〜5000mJ/cm2の範囲にあることがより好ましく、100mJ/cm2〜800mJ/cm2の範囲にあることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。更に保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
【0177】
この光学補償フィルムと偏光膜とを組み合わせることも好ましい。具体的には、前記のような光学異方性層用塗布液を偏光膜の表面に塗布することにより光学異方性層を形成する。その結果、偏光膜と光学異方性層との間にポリマーフィルムを使用することなく、偏光膜の寸度変化にともなう応力(歪み×断面積×弾性率)が小さい薄い偏光板が作製される。本発明に従う偏光板を大型の液晶表示装置に取り付けると、光漏れなどの問題を生じることなく、表示品位の高い画像を表示することができる。
偏光膜と光学補償層との傾斜角度は、LCDを構成する液晶セルの両側に貼り合わされる2枚の偏光板の透過軸と液晶セルの縦または横方向のなす角度にあわせるように延伸することが好ましい。通常の傾斜角度は45°である。しかし、最近は、透過型、反射型および半透過型LCDにおいて必ずしも45°でない装置が開発されており、延伸方向はLCDの設計にあわせて任意に調整できることが好ましい。
【0178】
(3)反射防止膜の付与(反射防止フィルム)
反射防止膜は、一般に、防汚性層でもある低屈折率層と、低屈折率層より高い屈折率を有する少なくとも一層の層(即ち、高屈折率層、中屈折率層)とを透明基体(本発明のセルロースアシレートフィルム)上に設けて成る。
屈折率の異なる無機化合物(金属酸化物等)の透明薄膜を積層させた多層膜として、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、金属アルコキシド等の金属化合物のゾルゲル方法でコロイド状金属酸化物粒子皮膜を形成後に後処理(紫外線照射:特開平9−157855号公報、プラズマ処理:特開2002−327310号公報)して薄膜を形成する方法が挙げられる。
【0179】
一方、生産性が高い反射防止膜として、無機粒子をマトリックスに分散されてなる薄膜を積層塗布してなる反射防止膜が各種提案されている。
上述したような塗布による反射防止フィルムに最上層表面が微細な凹凸の形状を有する防眩性を付与した反射防止層から成る反射防止フィルムも挙げられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは前記いずれの方式にも適用できるが、特に好ましいのが塗布による方式(塗布型)である。
【0180】
[塗布型反射防止フィルムの層構成]
基体(本発明におけるセルロースアシレートフィルム)上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止膜は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>透明支持体の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、透明支持体と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。
【0181】
さらには、中屈折率ハードコート層、高屈折率層および低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等が挙げられる。また、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例えば、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
【0182】
反射防止膜のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また、膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
【0183】
[高屈折率層および中屈折率層]
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒子サイズ100nm以下の高屈折率の無機化合物超微粒子およびマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
【0184】
このような超微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(:特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6,210,858号明細書、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
【0185】
さらに、ラジカル重合性および/またはカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物およびその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
【0186】
高屈折率層の屈折率は、−般に1.70〜2.20である。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整される。中屈折率層は、屈折率以外は前記高屈折率層と同様の層であり、中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。
【0187】
[低屈折率層]
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55である。好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンを導入したシリコーン化合物、フッ素を導入した含フッ素化合物等から成る薄膜層の手段を適用できる。
前記含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましく、より好ましくは1.36〜1.47である。また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
前記含フッ素化合物としては、例えば、特開平9−222503号公報明細書段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報明細書段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報明細書段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報、特開2003−26732号公報の段落番号[0012]〜[0077]、特開2004−45462号公報の段落番号[0030]〜[0047]等に記載の化合物が挙げられる。
【0188】
前記シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例えば、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋または重合性基を有する含フッ素および/またはシロキサンのポリマーの架橋または重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより実施することが好ましい。
【0189】
また、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
【0190】
低屈折率層は、前記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
【0191】
[ハードコート層]
ハードコート層は、反射防止フィルムに物理強度を付与するために、延伸・未延伸セルロースアシレートフィルムの表面に設ける。特に、延伸・未延伸セルロースアシレートフィルムと前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。また、反射防止層を付与せず直接延伸・未延伸セルロースアシレートフィルム上に塗設することも好ましい。
ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また、加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
【0192】
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
また、高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒子サイズ0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層(後述)を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。また、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
【0193】
[前方散乱層]
前方散乱層は、液晶表示装置に適用した場合の、上下左右方向に視角を傾斜させたときの視野角改良効果を付与するために設ける。前記ハードコート層中に屈折率の異なる微粒子を分散することで、ハードコート機能と兼ねることもできる。
例えば、前方散乱係数を特定化した特開11−38208号公報、透明樹脂と微粒子の相対屈折率を特定範囲とした特開2000−199809号公報、ヘイズ値を40%以上と規定した特開2002−107512号公報等が挙げられる。
【0194】
[その他の層]
前記の層以外に、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0195】
[塗布方法]
反射防止フィルムの各層は、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート、マイクログラビア法やエクストルージョンコート法(米国特許第2,681,294号明細書)により、塗布により形成することができる。
【0196】
[アンチグレア機能]
反射防止膜は、外光を散乱させるアンチグレア機能を有していてもよい。アンチグレア機能は、反射防止膜の表面に凹凸を形成することにより得られる。反射防止膜がアンチグレア機能を有する場合、反射防止膜のヘイズは、3〜30%であることが好ましく、5〜20%であることがさらに好ましく、7〜20%であることが最も好ましい。
【0197】
反射防止膜表面に凹凸を形成する方法は、これらの表面形状を充分に保持できる方法であればいずれの方法でも適用できる。例えば、低屈折率層中に微粒子を使用して膜表面に凹凸を形成する方法(例えば、特開2000−271878号公報等)、低屈折率層の下層(高屈折率層、中屈折率層またはハードコート層)に比較的大きな粒子(粒子サイズ0.05〜2μm)を少量(0.1〜50質量%)添加して表面凹凸膜を形成し、その上にこれらの形状を維持して低屈折率層を設ける方法(例えば、特開2000−281410号公報、同2000−95893号公報、同2001−100004号公報、同2001−281407号公報等)、最上層(防汚性層)を塗設後の表面に物理的に凹凸形状を転写する方法(例えば、エンボス加工方法として、特開昭63−278839号公報、特開平11−183710号公報、特開2000−275401号公報等記載)等が挙げられる。
【0198】
《液晶表示装置》
本発明の液晶表示装置は、上述の偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムを用いて形成される。これらのフィルムが用いられる各液晶モードについて説明する。
【0199】
(TNモード液晶表示装置)
TNモード液晶表示装置は、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。TNモードの黒表示における液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0200】
(OCBモード液晶表示装置)
OCBモード液晶表示装置は、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルである。ベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置は、米国特許第4,583,825号、同5,410,422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensated Bend) 液晶モードとも呼ばれる。
OCBモードの液晶セルもTNモード同様、黒表示においては、液晶セル中の配向状態は、セル中央部で棒状液晶性分子が立ち上がり、セルの基板近傍では棒状液晶性分子が寝た配向状態にある。
【0201】
(VAモード液晶表示装置)
VAモード液晶表示装置は、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向しているのが特徴であり、VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0202】
(IPSモード液晶表示装置)
IPSモード液晶表示装置は、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に面内に水平に配向しているのが特徴であり、これが電圧印加の有無で液晶の配向方向を変えることでスイッチングするのが特徴である。具体的には特開2004−365941号公報、特開2004−12731号公報、特開2004−215620号公報、特開2002−221726号公報、特開2002−55341号公報、特開2003−195333号公報に記載のものなどを使用できる。
【0203】
(その他液晶表示装置)
ECBモードおよびSTN(Super Twisted Nematic)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)モード、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードに対しても、前記と同様の考え方で光学的に補償することができる。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。
以上述べてきたこれらの詳細なセルロース誘導体フィルムの用途は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)45頁〜59頁に詳細に記載されている。
【0204】
[用途]
本発明の未延伸、延伸セルロースアシレートフィルムは、光学フィルム、特に偏光板保護フィルム用、液晶表示装置の光学補償シート(位相差フィルムともいう)、反射型液晶表示装置の光学補償シート、偏光板の保護機能且つ光学補償機能を兼有する光学フィルム、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として有用である。
【0205】
以下に本発明で使用した測定法について記載する。
(1)透水度(透湿係数)
試料70mmφを25℃・相対湿度60%および40℃・相対湿度95%でそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2・24hr)した。そして、透湿度を調湿後質量−調湿前質量により求めた。
【0206】
(2) 水の接触角
接触角計(協和界面科学(株)製、CA−X型接触角計)を用いて、乾燥状態(25℃/相対湿度60%)で液体に純水を使用して直径3.0mmの液滴を針先に作り、これをフィルムの表面に接触させて液滴を作った。固体液体が接する点における液体表面に対する接線と固体表面となす角で、液体を含む方の角度を接触角とした。
各フィルムについて、1平方メートル(1m×1m)の面内において、一方の方向に等間隔に5点、もう一方の方向に等間隔に4点の計20箇所の接触角を測定し、20点の平均値として記載した。
面内の接触角の差(バラツキ)は、測定した接触角の最大値と最小値との差で求め、表2に記載した。
フィルムの両面をケン化処理した場合、両面の接触角の差(バラツキ)は、各面の20箇所の平均値の差で求め、表2に記載した。
【0207】
(3)セルロースアシレートの置換度
アシル基の置換度は、ASTM D-817-91に準じた方法、セルロースアシレートを完全に加水分解し、遊離したカルボン酸またはその塩をガスクロマトグラフィーあるいは高速液体クロマトグラフィーで定量する方法、1H-NMRあるいは13C−NMRによる方法などを単独または組み合わせることにより決定することができる。
【0208】
(4)Re,Rth
フィルムの幅方向に等間隔で20点サンプリングし、これを25℃・相対湿度60%にて4時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、サンプルフィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定する事から、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出した。この20点の平均値をRe、Rthとして表2に記載した。
【0209】
(5)Tg測定
DSCの測定パンにサンプルを10mg入れる。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温してベースラインが低温側から偏奇し始める温度をTgとして表1に記載した。
【0210】
(6) 含水率
試料7mm×35mmを水分測定器、試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))にてカールフィッシャー法で測定。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
【0211】
(7)透過率
透過率は、分光光度計(村上色彩技術研究所製,DOT−3)を用いて測定し、JIS
Z8701の2度視野(C光源)により、視感度補正を行ったY値である。
【0212】
(8)偏光度
偏光度は、2枚の同じ偏光膜を偏光軸が平行になるように重ね合わせた場合の透過率(H0)と直交に重ね合わせた場合の透過率(H90)を、上記の透過率の測定に準じて測定し、以下の式から求めた。なお、偏光の透過率(H0)と直交の透過率(H90)とは、視感度補正したY値である。
偏光度(%)={(H0 −H90)/(H0 +H90)}1/2×100
【実施例】
【0213】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0214】
[合成例1] セルロースアセテートプロピオネートの合成
セルロース(広葉樹パルプ)150質量部、酢酸75質量部を、冷却装置ならびに還流装置を付けた反応容器に取り、60℃にて加熱しながら4時間攪拌した。反応容器を2℃に冷却した。
別途、アシル化剤としてプロピオン酸無水物1545質量部、硫酸10.5質量部の混合物を作製し、−20℃に冷却した後に、上記の前処理を行ったセルロースを収容する反応容器に一度に加えた。30分経過後、外設温度を徐々に上昇させ、アシル化剤の添加から2時間経過後に内温が30℃になるように調節し、内温を30℃に保ってさらに3時間攪拌した。反応容器を5℃の氷水浴にて冷却し、5℃に冷却した25質量%含水酢酸120gを1時間かけて添加した。内温を40℃に上昇させ、1.5時間攪拌した。次いで反応容器に、硫酸の2倍モルに相当する酢酸マグネシウム4水和物を2倍量の50質量%含水酢酸に溶解した溶液を添加し、30分間攪拌した。25質量%含水酢酸、33質量%含水酢酸、50質量%含水酢酸、水をこの順に加え、セルロースアセテートプロピオネートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートプロピオネートの沈殿は温水にて洗浄を行った。20℃の0.005質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌した後に脱液を行い、70℃で真空乾燥させた。
1H−NMR及び、GPC測定によれば、得られたセルロースアセテートプロピオネートは、アセチル化度0.30、プロピオニル化度2.63、トータル置換度2.93であった。
【0215】
[合成例2] セルロースアセテートブチレートの合成
セルロース(広葉樹パルプ)100質量部、酢酸135質量部を、冷却装置ならびに還流装置を付けた反応容器に取り、60℃にて加熱しながら4時間攪拌した。反応容器を2℃に冷却した。
別途、アシル化剤として酪酸無水物1080質量部、硫酸10.0質量部の混合物を作製し、−20℃に冷却した後に、前処理を行ったセルロースを収容する反応容器に一度に加えた。30分経過後、外設温度を30℃まで上昇させ、5時間反応させた。反応容器を5℃の氷水浴にて冷却し、約5℃に冷却した12.5質量%含水酢酸2400gを1時間かけて添加した。内温を40℃に上昇させ、1時間攪拌した。次いで反応容器に、硫酸の2倍モルに相当する酢酸マグネシウム4水和物を2倍量の50質量%含水酢酸に溶解した溶液を添加し、30分間攪拌した。25質量%含水酢酸、33質量%含水酢酸、50質量%含水酢酸、水をこの順に加え、セルロースアセテートブチレートを沈殿させた。得られたセルロースアセテートブチレートの沈殿は温水にて洗浄を行った。洗浄後、0.005質量%水酸化カルシウム水溶液中で0.5時間攪拌した後に脱液を行い、70℃で減圧乾燥させた。得られたセルロースアセテートブチレートはアセチル化度0.84、ブチリル化度2.12、トータル置換度2.96であった。
【0216】
<実施例1> セルロースアシレートフィルムの溶融製膜
(1)セルロースアシレートの調製
前述のセルロースアシレート合成例1、2の方法から、アシル化剤の組成、アシル化の反応温度および時間、部分加水分解の温度および時間を変化させることにより、同様に合成した。目的とするアシル置換度に応じて、セルロースにアシル化剤(酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、プロピオン酸無水物、酪酸、酪酸無水物から単独または複数を組み合わせて選択される)、ならびに触媒としての硫酸を混合し、反応温度を40℃以下に保ちながらアシル化を実施した。原料となるセルロースが消失してアシル化が完了した後、さらに40℃以下で加熱を続けて、所望の重合度に調整した。酢酸水溶液を添加して残存する酸無水物を加水分解した後、60℃以下で加熱を行うことで部分加水分解を行い、所望の全置換度に調整した。残存する硫酸を過剰量の酢酸マグネシウムにより中和した。酢酸水溶液から再沈殿を行い、さらに、水での洗浄を繰り返すことにより、表1に記載のアシル基の種類と置換度の異なるセルロースアシレートを得た。
【0217】
(重合度測定法)
絶乾したセルロースアシレート約0.2gを精秤し、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶剤100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0
[η]=ln(ηrel)/C
DP=[η]/Km
[式中、Tは測定試料の落下秒数、T0は溶剤単独の落下秒数、lnは自然対数、Cは濃度(g/L)、Kmは6×10-4である。]
【0218】
(2)セルロースアシレートのペレット化
上記セルロースアシレートを100℃で3時間乾燥し含水率を0.1質量%以下にしたものに、下記から選択した光学調整剤B−1〜B−6のいずれかを表1に記載した量加えた。
光学調整剤
【0219】
【化1】

【0220】
可塑剤としては、下記の中から選び(表1に記載)添加した。
可塑剤A:ポリエチレングリコール(分子量600)
可塑剤B:グリセリンジアセテートオレート
可塑剤C:ビフェニルジフェニルフォスフェート
可塑剤D:ジオクチルアジペート
【0221】
さらに、全水準に二酸化珪素部粒子(アエロジルR972V)0.05質量%、紫外線吸収剤(2−(2’−ヒドロキシー3’、5−ジ−t−ブチルフェニル)−ベンゾトリアゾール:0.05質量%、2,4−ヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン:0.1質量%)、安定剤(ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール ジホスファイト)(PEP−24G)0.3質量%を添加した。
これら、真空排気付き2軸混練押出し機を用い、スクリュー回転数300rpm、混練時間40秒、押出し量200kg/hrでダイから押出し60℃の水中で固化した後、裁断し直径2mm、長さ3mmの円柱状のペレットを得た。
【0222】
(3)溶融製膜
上記方法で調製したセルロースアシレートペレットを、100℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これを80℃のホッパーに投入し、スクリューの直径は60mm、L/D=40、圧縮比3.5であった。なお、バレル温度は入口から出口に向かい150℃から235℃に昇温した。
溶融後、メルトを3μmフィルターで濾過し、スリット間隔0.8mmのダイから押出し、表1に示すキャスティング条件でメルトを図2に示す多連式キャスティングドラムにて固化した。この時、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用い両端10cmずつ静電印加を行った。固化したメルトをキャスティングドラムから剥ぎ取り、巻き取り直前に両端(全幅の各5%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、30m/分で3000m巻き取った。このようにして得た未延伸フィルムの幅は各水準とも1.5mであった。
【0223】
【表1】

【0224】
【表2】

【0225】
このようにして得られたセルロースアシレートの透水率、Re,Rth、水の接触角、面内および面外の接触角の差、Tgを求め、表1に記載した。
【0226】
(4)延伸
このようにして得られたセルロースアシレートフィルムを(Tg+15)℃において表1に記載の倍率で延伸した。この後、両端各5%ずつトリミングした。これらのRe,Rthを上記の方法で測定し表2に記載した。
【0227】
(5)偏光板の作製
(5−1)セルロースアシレートフィルムのケン化
未延伸、延伸セルロースアシレートフィルムを下記いずれかのケン化法を用いてケン化を行った。表1に記載した。
(i)浸漬ケン化
NaOHの2.0〜4.0mol/L水溶液をケン化液として用いた。
これを41〜80℃に調温し、セルロースアシレートフィルムを2分間浸漬した。
この後、0.05mol/Lの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通した。
ケン化液、ケン化条件をそれぞれ表1に記載した。
(ii)塗布ケン化
iso−プロパノール10質量部に水80質量部を加え、これにKOHを2.5mol/Lとなるように溶解し、これを60℃に調温したものをケン化液として用いた。
これを60℃のセルロースアシレートフィルム上に10g/m2塗布し、1分間ケン化し
た。この後、50℃の温水スプレーを用い、10L/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した

【0228】
ケン化処理したセルロースアシレートフィルムの表面の面状(異物、濁り)を下記の基準で評価した。
まず、ケン化処理フィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切りだし、この試料にシャウカステン上で光を透過させながら目視およびルーペで異物および濁りの有無を観察し、以下のランクを用いて評価した。
〔ランク〕
〇:異物、濁りの発生が全く認められなかった。
(10人で評価し、一人も認識できないレベル)
△:異物、濁りが弱く発生していた。
(10人で評価し、2〜5人が認識するレベル)
×:異物、濁りが強く発生していた。
(10人で評価し、6人以上が認識するレベル)
【0229】
ケン化処理した本発明のセルロースアシレートフィルムは、面状に優れ、いずれも異物や濁りの発生が全く認められなく、ランク「○」のものであった。
【0230】
(5−2)偏光膜の作製
特開2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
【0231】
(5−3)貼り合わせ
このようにして得られた偏光膜と、上記ケン化処理した未延伸、延伸セルロースアシレートフィルムを、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロースアシレートフィルムの長手方向が、平行となるように下記組み合わせで張り合わせた(選択した構成は表1に記載した)。「フジタックTD80UF」は富士写真フイルム(株)製の未延伸セルローストリアセテートフィルムである。
偏光板A:未延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/フジタックTD80UF
偏光板B:未延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/未延伸セルロースアシレートフィルム
偏光板C:延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/フジタックTD80UF
偏光板D:延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/未延伸セルロースアシレートフィルム
偏光板E:延伸セルロースアシレートフィルム/偏光膜/延伸セルロースアシレートフィルム
(なお、偏光板B、D、Eでは、延伸、未延伸セルロースアシレートは同じ種類のセルロースアシレートを用いた)
【0232】
(5−4)耐久性評価
このようにして得た偏光板を80℃・相対湿度90%環境下保持1000時間(サーモ処理)保持した後、透過率、偏光度を測定し、サーモ処理前後、偏光度の差を求め表2に記載した。本発明を実施したものは、良好な耐久性を示した。
また、サーモ処理前後の偏光板の接着性を表1に記載の偏光板を80℃・相対湿度90%環境下保持1000時間サーモ処理した。セルロースアシレートフィルムと偏光膜との密着性を下記の基準で、偏光板の剥がれの面積率を下式により求め、表2に記載した。
剥れ面積率(%)=剥れ発生の面積/偏光板の全面積×100
また、偏光軸とセルロースアシレートフィルムの長手方向が、直交、45°となるように貼り合せたものを作製し、同様の評価を行った。いずれも上記平行に貼り合せたときと同様の結果であった。
表2に示すように、本発明の未延伸、延伸セルロースアシレートを用いた偏光板が高温高湿環境における偏光度の低下が少なく、偏光膜との剥れがなく、耐久性および接着性に優れるものであった。一方、本発明以外の比較例1〜5では、高温高湿環境における偏光度の低下が大きく、サーモ処理後の剥れがあり、耐久性に劣るものであった。さらに、特許文献2(特開2000−352620号公報)に掲示される実施例1の方法に準じて、作製した比較例6のものでは、サーモ後の偏光度の低下が激しく、剥れた面積がさらに大きく、耐久性および接着性が最も劣るものであることが分かった。
【0233】
(6)光学補償フィルム・液晶表示素子の作製
VA型液晶セルを使用した22インチの液晶表示装置(シャープ(株)製)に設けられている観察者側の偏光板を剥がし、代わりに上記位相差偏光板A,Bの場合は偏光板を、偏光板C,D,Eの場合は偏光板と位相差板を外し、セルロースアシレートフィルムが液晶セル側となるように粘着剤を介して、観察者側に貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置して、液晶表示装置を作製した。
これを80℃・相対湿度90%の環境に1000時間保持した後、透過率、偏光度、剥がれ性等を評価した。本発明を実施したものが偏光膜との剥がれがなく、偏光度の低下が小さく、耐久性に優れるものであった。
【0234】
さらに、特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明セルロースアシレートフィルムを使用しても、良好な光学補償フィルムを作製できた。
特開平7−333433号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムに代わって、本発明セルロースアシレートフィルムに変更し光学補償フィルターフィルムを作製しても、良好な光学補償フィルムを作製できた。
【0235】
さらに本発明の偏光板、位相差偏光板を、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置、特開2004−12731号公報の図11に記載のIPS型液晶表示装置に用いたところ、良好な液晶表示素子が得られた。
【0236】
(7)低反射フィルムの作製
本発明のセルロースアシレートフィルムを発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の実施例47に従い低反射フィルムを作製した。これを80℃・相対湿度90%の環境に1000時間保持した後、透過率、偏光度、剥がれ性等を評価した。本発明を実施したものは、偏光板の時と同様の良好な結果が得られた。
さらに本発明のセルロースアシレートフィルムフィルムを、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載の20インチOCB型液晶表示装置、特開2004−12731号公報の図11に記載のIPS型液晶表示装置の最表層に貼り評価を行ったところ、良好な液晶表示素子を得た。
【0237】
<実施例2> タッチロール法による溶融製膜
本発明1、5、14及び本発明22〜本発明24に対し、特開平11−235747号公報の実施例1に記載のタッチロール(二重抑えロールと記載のあるもの)を用い(但し薄肉金属外筒厚みは3mmとした)、表3記載の条件でタッチロール製膜を実施した(タッチロール製膜を実施したこと以外、全て同じ条件で実施)。
このようにして得た未延伸セルロースアシレートフィルムの面状(厚みムラ及び微細凸凹)を下記の方法で測定して評価した。
【0238】
(厚みムラ測定)
セルロースアシレートフィルムの全幅に亘り35mm幅でサンプリングした(TDサンプル)。幅方向中央部を35mm幅で2m長サンプリングした(MDサンプル)。TDサンプル、MDサンプルを連続厚み計(FILM THICKNESS TESTER KG601A、ANRITSU(アンリツ電気(株))製)で測定し、(最大値−平均値)、(平均値−最小値)の平均を厚みムラとした。
【0239】
(微細凹凸(ダイライン)測定)
3次元表面構造解析顕微鏡(Zygo社製New View5022)を用いて下記条件でセルロースアシレートフィルムを測定した。
対物レンズ:2.5倍
イメージズーム:1倍
測定視野:幅方向(TD)2.8mm、長手方向(MD)2.1mm
この中で0.01μm〜30μmの高さの山(凸部)、0.01μm〜30μmの深さの谷(凹部)の本数を数えた。ただし、凸部、凹部はいずれもMD方向に連続して1mm以上連続しているものを指す。この凸部、凹部の本数を測定幅(2.8mm)で割った後100倍し、10cm当りの凸部、凹部の数とした。上記測定を、製膜したサンプルフィルム全幅にわたって等間隔で30点測定して平均化することにより、幅10cm当りの凸部と凹部の数を求めた。
【0240】
【表3】

【0241】
表3に示すように、タッチロール法を用いて溶融製膜したフィルムに形成された微細凹凸(ダイライン)及び厚みムラはさらに良好になることが確認された。また、タッチロール法を用いて製膜したフィルムのRthが向上し、光学特性の発現領域が広がることが確認された。さらに、額縁の実装評価により、額縁ムラ発生面積率を低減することが確認された。
【0242】
さらに、国際公開第97/28950号パンフレットの第1の実施例と同様のタッチロール(シート成形用ロールと記載のあるもの)を用い(但し金属製外筒に用いた冷却水は温度18℃から120℃のオイルに変更)、表3記載の条件でタッチロールを用いた製膜を実施したところ、表3と同様の結果を得た。
【産業上の利用可能性】
【0243】
本発明によれば、適切な透水率を有し、偏光膜との接着性に優れ、ケン化処理後の水の接触角が小さく、面内または両面における接触角の差を小さくすることができ、高温高湿環境に要求される偏光度の経時安定性および良好な密着性を満たすことができるセルロースアシレートフィルムおよびその製造方法を提供することができる。本発明により提供されるセルロースアシレートフィルムを用いれば、高品位な偏光板、偏光板の保護機能且つ位相差補償機能を兼ね備える光学補償フィルム、反射防止フィルム、およびこれらを用いた液晶表示装置を提供することができる。したがって、本発明は産業上の利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0244】
【図1】スクリューを備えた溶融押出し機の一態様の断面図である。
【図2】多連式キャスティングドラムの一態様の断面図である。
【図3】タッチロールを備えた多連式キャスティングドラムの一態様の断面図である。
【符号の説明】
【0245】
12 セルロースアシレートフィルム
14 多連式キャスティングドラム
23 タッチロール
24 ダイ
26 第一キャスティングドラム
28 第二キャスティングドラム
30 第三キャスティングドラム
31 ニップロール
60 押出機
62 シリンダ
64 スクリュー軸
66 フライト
68 単軸スクリュー
80 供給口
82 吐出口
A 供給部
B 圧縮部
C 計量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融流延によって形成され、40℃・相対湿度95%における透水率が150〜800g/m2・24hrであり、且つ、下記式(1)〜(3)を満足することを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
式(1):2.0≦X+Y≦3.0
式(2):0≦X≦2.0
式(3):1.2≦Y≦3.0
〔式中、Xはアセチル基の置換度を表し、Yは炭素数3〜7のアシル基の置換度の総和を表す。〕
【請求項2】
アルカリケン化処理を施され、水の接触角が45°以下であり、且つ、接触角の面内分布の差が5°以内あることを特徴とする請求項1に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項3】
フィルム両面の接触角の差が5°以内あることを特徴とする請求項2に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項4】
未延伸セルロースアシレートフィルムの面内のレターデーション(Re)が0≦Re≦20nmであり、且つ、厚み方向のレターデーション(Rth)が0≦Rth≦60nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1方向に1〜250%延伸した後、面内のレターデーション(Re)が0≦Re≦300nmであり、且つ、厚み方向のレターデーション(Rth)が0≦Rth≦500nmであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項6】
複数のキャスティングドラムを備えた多連式キャスティングドラムを用いてセルロースアシレートを溶融流延によってフィルム状に形成するセルロースアシレートフィルムの製造方法であって、
ダイから押し出されたセルロースアシレートが溶融流延される第一キャスティングドラムの表面温度が、(Tg−30)℃〜(Tg+15)℃であり、且つ、前記各キャスティングドラムは、ロール表面の両端の温度の差が10℃以下であることを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項7】
タッチロールを用いて製膜することを特徴とする請求項6に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項8】
前記多連式キャスティングドラムによって形成されたフィルム状のセルロースアシレートを41〜80℃の温度でアルカリケン化処理を施すことを特徴とする請求項6または7に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項6〜8のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法で作製されたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム。
【請求項10】
偏光膜に、請求項1〜5または9のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを少なくとも1層積層したことを特徴とする偏光板。
【請求項11】
透過率が42.0%以上、および、偏光度が99.0%以上であることを特徴とする請求項10に記載の偏光板。
【請求項12】
80℃・相対湿度90%の環境下に1000時間保持した後の偏光度低下が1%以下であることを特徴とする請求項10または11に記載の偏光板。
【請求項13】
請求項1〜5または9のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
【請求項14】
請求項1〜5または9のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルムを用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項15】
請求項1〜5および9のいずれか1項に記載のセルロースアシレートフィルム、請求項10〜12のいずれか1項に記載の偏光板、請求項13に記載の光学補償フィルム並びに請求項14に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される1枚以上のフィルムを有することを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−2215(P2007−2215A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29934(P2006−29934)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】