センサ付き転がり軸受装置
【課題】回転体の回転角度の検出精度を高め、回転同期信号を確実に除去することができるセンサ付き転がり軸受装置を提供する。
【解決手段】本発明のセンサ付き転がり軸受装置は、回転体の変位を検出する変位センサ装置20を搭載している。また、回転体が所定角度回転する毎にパルスを発生させるABSセンサ装置30と、演算装置40とを備え、演算装置40は、パルスが発生するタイミングで回転体の回転角度を求めるとともに、パルス発生間隔に基づいて回転角速度を求め、パルスの合間で次のパルス発生までの間は、当該回転角速度に基づいて経過時間に応じた回転角度を推定し、得られた回転角度に基づく回転同期信号を、変位センサ装置20の出力信号から除去する。
【解決手段】本発明のセンサ付き転がり軸受装置は、回転体の変位を検出する変位センサ装置20を搭載している。また、回転体が所定角度回転する毎にパルスを発生させるABSセンサ装置30と、演算装置40とを備え、演算装置40は、パルスが発生するタイミングで回転体の回転角度を求めるとともに、パルス発生間隔に基づいて回転角速度を求め、パルスの合間で次のパルス発生までの間は、当該回転角速度に基づいて経過時間に応じた回転角度を推定し、得られた回転角度に基づく回転同期信号を、変位センサ装置20の出力信号から除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の変位を検出するセンサ付きの転がり軸受装置に関し、典型的には、自動車のハブユニットに変位センサ装置が搭載されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の分野においては、走行の際の運転制御を行うために、車輪に作用する荷重の情報が必要とされている。かかる情報を得るため、車輪用の転がり軸受装置であるハブユニットに、変位センサ装置が設けられる(例えば、特許文献1参照。)。この変位センサ装置は、車輪と繋がった回転体と径方向に対向してセンサが配置され、対向距離の変化に伴うインダクタンスの変化によって出力を変化させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−127253号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のセンサ付き転がり軸受装置では、回転体に荷重が作用していないときは、理想的には、変位が検出されないはずである。ところが、現実には、ごく僅かの回転体の回転振れがあり、荷重に関わらず周期的な距離変動が生じるので、変位センサ装置の出力に回転同期信号成分が含まれてしまう。かかる回転同期信号を除去する方法としては、2軸の直交座標系から回転座標系へ変換する方法が知られており、この変換には車輪の回転速度の情報が必要である。回転速度の元になる回転角度を示す信号としては、通常、ABS(Antilock Brake System)センサから回転体の1回転当たり48パルスで出力されるパルス列信号が用いられ、パルス数をカウントすることにより、回転体の回転角度を求めている。
【0005】
しかしながら、この回転角度の検出に誤差があると、回転同期信号が除去できずに残ってしまうという問題点があった。
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、回転体の回転角度の検出精度を高め、回転同期信号を確実に除去することができるセンサ付き転がり軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のセンサ付き転がり軸受装置は、車輪に繋がる回転体を支持する転がり軸受装置と、回転中の前記回転体の変位を検出する変位センサ装置と、前記回転体が所定角度回転する毎にパルスを発生させるパルス発生装置と、前記パルスが発生するタイミングで前記回転体の回転角度を求めるとともに、パルス発生間隔に基づいて回転角速度を求め、次のパルス発生までの間は、当該回転角速度に基づいて経過時間に応じた回転角度を推定し、得られた回転角度に基づく回転同期信号を、前記変位センサ装置の出力信号から除去する演算装置とを備えたものである。
【0007】
上記のように構成されたセンサ付き転がり軸受装置では、変位センサ装置の出力に含まれる回転同期信号が、演算装置によって除去される。1パルスの発生から次のパルスの発生までの途中の時間においては、前パルス発生からの経過時間と回転角速度とに基づいて回転角度(すなわち、パルスの合間での回転角度)を推定するので、パルスの合間にも直前の傾向を考慮した回転角度の検出が可能となる。
【0008】
(2)また、上記(1)のセンサ付き転がり軸受装置において、演算装置は、車輪にかかる荷重とブレーキ力との関係を予め記憶しておき、変位センサ装置の出力に基づいて算出した荷重からブレーキ力を推定するようにしてもよい。
この場合、変位センサ装置の出力から得られる荷重にブレーキ力が影響を及ぼすことを利用して、荷重からブレーキ力を簡易に推定することができる。すなわち、本来は荷重を求めるための変位センサ装置の出力に基づいて、いわば副産物のごとくブレーキ力をも知ることができる。
【0009】
(3)また、上記(2)のセンサ付き転がり軸受装置において、推定したブレーキ力に基づいて、ブレーキ力制御のためのフィードバック信号を出力するようにしてもよい。
この場合、ブレーキディスクやブレーキパッドの状態に左右されることなく、ブレーキ力の制御を、より正確に行うことができる。従って、制動に関する車両の安全性が向上する。
【0010】
(4)また、上記(1)のセンサ付き転がり軸受装置において、変位センサ装置の出力に基づいて荷重を算出するとともに、パルス発生装置の発生するパルスに基づいて減速度を求め、減速度とブレーキ力との所定の関係から求めたブレーキ力に基づいて荷重の算出値を補正するようにしてもよい。
この場合、変位センサ装置の出力から得られる荷重(ブレーキ力が含まれている。)を補正することにより、ブレーキ力の影響を排除して、正確に荷重(ブレーキ力が含まれていない。)を検出することができる。特に、車輪の前後方向に外乱や雪道での滑りが発生した場合でも、ブレーキ力に惑わされずに正確に前後方向への力を検出することができる。
【0011】
(5)また、上記(4)のセンサ付き転がり軸受装置において、ブレーキ操作が行われているときにのみ補正を行うことが好ましい。
すなわちこの場合、エンジンブレーキ等の他のブレーキでは補正を行わず、変位センサ装置の検出値に影響を与えるブレーキ操作のときにのみ、補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、回転体の回転角度の検出精度を高め、回転同期信号を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】基板形センサに使用する平面コイルの原理を説明する図である。
【図2】LC回路の周波数特性の一例を示すグラフである。
【図3】(a)は基板形センサの展開図、(b)は基板形センサを円筒状に丸めた状態を示す斜視図である。
【図4】丸めた状態のフレキシブルプリント基板を支持し、かつ、その円筒形状を維持すべく、円筒状の支持部の内周面上に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図5】(a)は、支持部の図示を省略して、フレキシブルプリント基板の内側に回転体が挿通されている状態の基板形センサを示す斜視図である。(b)は、これを回転体の軸方向から見た図である。
【図6】基板形センサのコイルに信号処理回路を接続した変位センサ装置の回路構成の一例を示す回路図である。
【図7】転がり軸受装置の一種であるハブユニットの断面図である。
【図8】フレキシブルプリント基板の展開図である。
【図9】支持部の斜視図、及び、支持部に装着されたフレキシブルプリント基板が、どのような形態となっているかを示す斜視図である。
【図10】フレキシブルプリント基板を支持部に装着することにより完成した状態の変位センサ装置を示す斜視図である。
【図11】変位センサ装置の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第1実施形態)を示す図である。
【図12】演算装置の回転同期除去演算部において、あくまで参考例(実施例ではない。)としての回転角度の捉え方を示すグラフである。
【図13】演算装置の回転同期除去演算部における、実施形態としての回転角度の捉え方を示すグラフである。
【図14】演算装置の回転同期除去演算部で実行される処理のフローチャートである。
【図15】回転同期除去演算の効果をシミュレーションによって示すグラフである。
【図16】対比のための参考例として図12に示した演算を行った場合の、図15と同様なグラフである。
【図17】変位センサ装置の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第2実施形態)を示す図である。
【図18】車輪(タイヤ)を示す円に、荷重のベクトルを示した図である。
【図19】ブレーキ動作時における変位センサ装置による荷重の検出値の変化を示すグラフの一例である。
【図20】変位センサ装置の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第3実施形態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《原理》
まず、本発明のセンサ付き転がり軸受装置に使用する基板形センサの原理から説明する。図1は、基板形センサに使用する平面コイルの原理を説明する図である。この平面コイル1は、(a)に示すように、フレキシブルプリント基板(FPC)2上に、導電部を渦巻状に形成して成るコイル3を設けたものである。このような平面コイル1は、例えばポリイミド製の基板に銅やアルミニウム等の金属箔が貼着されたフレキシブルプリント基板からエッチングを行って、渦巻のパターンを残すことにより製作することができる。なお、コイル3の渦巻中心の端部は、例えばスルーホールで裏面へ導出することができる。コイル3は、渦巻のターン数(渦を巻いている回数)、コイルの断面積、コイルの長さ等に依存するインダクタンスLを有するが、ターン数は2乗で関与するため、最も支配的な要素である。従って、ターン数を確保することによって、所望のインダクタンスを得ることが可能である。
【0015】
(b)は、平面コイル1を、変位の検出対象物4と近接対向させた状態を示す斜視図である。検出対象物4は金属製(例えば鉄系金属)であり、導電性を有する。コイル3のインダクタンスは、この検出対象物4によって影響を受ける。また、交流信号に対して、コイル3のパターンと検出対象物4との間に、パターン面積や相互間の距離に依存したキャパシタンスが現れる。従って、このような平面コイル1は、等価的に、(c)に示すような並列のLC回路となる。ここで、インダクタンスLやキャパシタンスCの値は、検出対象物4と平面コイル1とのギャップによって変化する。
【0016】
上記ギャップが増大すると、交流信号に対するインダクタンスL及びキャパシタンスCが共に低下し、逆に、ギャップが減少すると、インダクタンスL及びキャパシタンスCが共に上昇する。従って、ギャップの変化により、LC回路の自己共振周波数f(=1/(2π(L・C)1/2))が変化する。
図2は、LC回路の周波数特性の一例を示すグラフである。周波数特性は、例えば自己共振周波数f1でピークとなる実線の曲線であるが、自己共振周波数が低下してf2になると、周波数特性は破線の曲線となる。この結果、LC回路に一定の発振周波数f0を供給している場合において、LC回路の出力(振幅)は、V1からV2に変化する。このようにして、ギャップの変化を出力の変化として検出することができる。
【0017】
《基板形センサの基本構成》
次に、上記のような平面コイル1を複数個使用した基板形センサの基本構成について説明する。
図3の(a)は、基板形センサ10の展開図である。この基板形センサ10においては、フレキシブルプリント基板2上に、4個のコイル3(総称符号)が2段に、合計8個設けられている。なお、図ではコイル3を簡略化して同心円のように描いているが、実際は、図1に示したような渦巻である(以下、同様。)。
【0018】
ここで、各コイル個別の符号は、後述の回転体の軸方向をY方向とした場合に、Y方向に直交し、かつ、互いに直交するX方向・Z方向に対応し、数字はY軸上の組番号、+、−はX,Z方向の組を表している。すなわち、変位を検出するためのコイルの組み合わせは、以下のようになる。
X方向変位:(X1+,X1−)、(X2+,X2−)
Z方向変位:(Z1+,Z1−)、(Z2+,Z2−)
各コイル3における2つの巻端(図示せず。)は、フレキシブルプリント基板2の表裏両面の導電路6を経て、端子電極部2aに導出されている。
【0019】
このような基板形センサ10を円筒状に丸めると、(b)に示すようになり、コイルX1+及びX1−、並びに、X2+及びX2−は、それぞれ、X方向に2個1組の存在となる。また、コイルZ1+及びZ1−、並びに、Z2+及びZ2−は、それぞれ、Z方向に2個1組の存在となる。また、上段側及び下段側の各4個のコイルは、周方向の位相90度ごとに配置されている。
【0020】
図4は、丸めた状態のフレキシブルプリント基板2を支持し、かつ、その円筒形状を維持すべく、円筒状の支持部11の内周面上に取り付ける状態を示す斜視図である。支持部11は、樹脂製であってもよいが、ここでは金属製とする。金属製の場合、機械的強度を容易に確保することができるので、樹脂製に比べて薄肉の支持部とすることができる。このことは、コンパクト化に寄与する。なお、支持部が金属製であっても、高周波信号(100kHz〜500kHz)でLC回路を駆動することにより、変位検出に影響がないことが確認された。
【0021】
支持部11の内周面に固定されたフレキシブルプリント基板2の内側には、径方向の微小な隙間を確保して、検出対象物としての回転体12が挿入される。回転体12には例えば周溝が2条に形成されており、各々が、4個1組のコイル3の各組に対応して配置される。この回転体12とは例えば自動車の車軸である。その場合、支持部11は転がり軸受装置の固定輪に取り付けられ、回転輪に回転体(車軸)12が取り付けられている。そして、上記の隙間は、転がり軸受装置によって維持される。
【0022】
図5の(a)は、支持部11の図示を省略して、フレキシブルプリント基板2の内側に回転体12が挿通されている状態の基板形センサ10を示す斜視図である。(b)は、これを回転体12の軸方向から見た図である。フレキシブルプリント基板2と回転体12の表面との間には径方向へのギャップがあり、このギャップの変化によって、前述のインダクタンスL,キャパシタンスCが変化する。従って、車輪に荷重が作用した際に発生する車軸の径方向の変位を、前述の出力の変化として検出することができる。また、4個1組×2列のコイル3は、周溝12aと対向し、回転体12の軸方向への変位によって周溝12aとの対向面積が2列で対照的(一方の列が増加なら他方は減少)に変化するよう構成されている。従って、各列のコイル3に関する出力が軸方向の変位によって変化する。すなわち、車輪に荷重が作用した際に発生する車軸方向への変位を、前述の出力の変化として検出することができる。
【0023】
図6は、基板形センサ10のコイル3に信号処理回路18を接続した変位センサ装置20の回路構成の一例を示す回路図である。このような信号処理回路18は、フレキシブルプリント基板2に実装することが可能である。
各コイルは前述のように等価的にはLC回路であり、発振回路13から抵抗14を介して所定の発振周波数f0の交流信号が供給される。LC回路の出力はインピーダンス変換を行うバッファ回路(電圧フォロワ回路)15を経て、差動増幅回路16に入力される。また、各列(添え字の1系、2系)の4個のコイルの出力が加算回路17で加算され、差動増幅回路16に入力される。
【0024】
差動増幅回路16は、対を成す2つのLC回路や加算回路17からの信号電圧の差をとることで信号の線形化を行い、かつ、増幅を行う。線形化によって、回転体12の径方向への変位を正確に検出することができる。すなわち、軸方向に直交する方向にコイルを2個1組で設け、出力の差をとることで、回転体12の径方向への変位を正確に検出することができる。差動増幅後の信号は、X方向の2出力(X1,X2)と、Z方向の2出力(Z1,Z2)として出力される。また、各列の4個のコイルの出力差をとることで、回転体12の軸方向への変位を正確に検出することができる。差動増幅後の信号は、Y方向の出力(Y)として出力される。
【0025】
《センサ付き転がり軸受装置の基本構造》
次に、上記のような変位センサ装置措置20(一部の部品を除く。)が固定輪と回転輪との間に取り付けられたセンサ付き転がり軸受装置について説明する。
図7は、転がり軸受装置の一種であるハブユニット(これは従動輪用)の断面図である。このハブユニット100は車両に取り付けられるものであり、取り付けた状態では、図7における右側が車両のアウター側(車両の外側)であり、左側が車両のインナー側(車両の内側)である。図7において、ハブユニット100の中心軸Cに沿った方向をY方向とし、これに直交する紙面に垂直な方向をX方向とし、Y方向及びX方向の双方に直交する鉛直方向をZ方向とする。従って、このハブユニット100が自動車に取り付けられた状態においてX方向は車輪の前後水平方向となり、Y方向は車輪の左右水平方向(軸方向)となり、Z方向は上下方向となる。
【0026】
このハブユニット100は、主たる構造部分として、外輪101、内軸102、内輪部材103、ナット104、及び、転動体105を備えている。外輪101は、筒状部101aと、この筒状部101aの一部の外周面から径方向外方へ伸びたフランジ部101bとを有している。このフランジ部101bは、車体側の固定部材(図示せず。)に固定され、これによってハブユニット100が車体に固定される。内軸102は、外輪101内に挿通される主軸部102aと、車両アウター側にあって径方向外方へ延びるフランジ部102bとを有している。このフランジ部102bが、車輪のホイールやブレーキディスクの取付部となる。なお、円柱状の主軸部102aは、前述の回転体12(図4,図5)に相当する部分である。
【0027】
内軸102の車両インナー側には、筒状の内輪部材103が外嵌され、さらに、内軸102の端部に形成された雄ねじ部102dにナット104が螺着されることにより、内輪部材103が内軸102に固定されている。転動体105は、周方向に複数個配置された玉からなる複列の構成となっている。各列の玉は保持器(図示せず。)によって周方向に所定間隔で保持されている。
このハブユニット100において、外輪101は、車体側の固定部材に固定される固定輪である。また、内軸102と内輪部材103とは、外輪101に転動体105を介して回転自在に支持された回転輪である。外輪101、内軸102及び内輪部材103は、互いに同軸(中心軸C)に配置されている。
【0028】
このように構成されたハブユニット100においては、外輪101の内周面上に取り付けられた変位センサ装置20により、検出対象物である内軸102(主軸部102a)の変位を非接触で検出することができる。この場合、固定輪たる外輪101と、回転輪たる内軸102の主軸部102aとの間の狭い径方向隙間に、変位センサ装置20を設けることができる。なお、主軸部102aには図4の回転体12の周溝12aに相当するものが設けられるが、ここでは図示を省略する。
【0029】
《変位センサ装置の具体例》
図8〜10は、一例としての変位センサ装置20を示す図であり、図8はフレキシブルプリント基板22の展開図である。図9は、支持部21の斜視図、及び、支持部21に装着されたフレキシブルプリント基板22が、どのような形態となっているかを示す斜視図、図10は、フレキシブルプリント基板22を支持部21に装着することにより完成した状態の変位センサ装置20を示す斜視図である。
【0030】
まず、図8において、フレキシブルプリント基板22は、コイル3等のセンサ回路要素を含む横長・長方形の基板本体22aと、この基板本体22aから上下にそれぞれ延伸して形成された合計13片の止め代部22bと、中央上部から上方へ延伸して形成された引出し部22cとを一体に有するものである。
【0031】
基板本体22aは、複数種類の領域a1〜a4を有している。4つの領域a1にはそれぞれ図3の要領で一対のコイル3が設けられ、全体で8個のコイル3(X1+,Z1+,X1−,Z1−,X2+,Z2+,X2−,Z2−)が設けられている。これらのコイル3は、図の表面側(紙面側)に設けられている。一方、斜線を付した裏面側の3つの領域a2には、対応する回路図に示す電子部品(抵抗14,バッファ回路15,差動増幅器16、加算回路17)が実装され、回路接続用の導電路が形成されている。また、斜線を付した裏面側の6つの領域a3にも、補助的に、電子部品の実装が可能である。
【0032】
残る6つの領域a4は、電子部品が実装されず、導電路のみが形成される。従って、領域a4での折り曲げが可能である。コイル3の2つの巻端は、スルーホール(図示せず。)を通って裏面側に導出されている。引出し部22cには外部回路との接続のための導電路が集約されている。なお、裏面側の表面の、少なくとも導電路の部分には、絶縁コーティングが施される。
一方、止め代部22bは、フレキシブルプリント基板22を支持部21(図9)に固定するにあたっての、ねじやリベット等の止め具23(図9)による固定の用に供する部位である。各止め代部22bには、丸孔hが形成されている。
【0033】
次に、図9において、支持部21は、内周は多角形(8角形)で、外周は円筒となる全体としてはリング状の物体(リング体)である。この支持部21は、前述の支持部11と同様に金属製で、具体的には、温度特性を合わせる観点から、外輪101(図7)と同じ鉄系材料が好ましい。支持部21には、周方向へ規則的にポケットが形成されている。本例では、内外貫通の大きいポケット21aが周方向に90度ごとに、8角形の1辺の範囲内で形成されている。また、内外貫通の一対の小さなポケット21bが、周方向に90度ごとに、8角形の1辺の範囲内で形成されている。一対の小さなポケット21bの間に残る平面部21cは、コイル3の取り付け面となる。支持部21の軸方向の両端面には、止め具23の取り付け孔21dが形成されている。
【0034】
フレキシブルプリント基板22の基板本体22aは、前述の領域a4(図8)を折り曲げ箇所として、開いた多角形状に折り曲げられ、支持部21の内周側に装着される。また、止め代部22b及び引出し部22cは、外側へ折り曲げられる。折り曲げられた止め代部22bの孔h(図8)には止め具23が通され、取り付け孔21dに固定される。こうして、図10に示すように、フレキシブルプリント基板22が支持部21に固定される。電子部品E1,E2は、フレキシブルプリント基板22の外側にあって、外方へ少し突出しているが、それぞれ、ポケット21a,21bへ収容されることにより、フレキシブルプリント基板22を内方へ膨らませることなく装着することができる。
【0035】
上記のように構成された変位センサ装置20では、支持部21に沿って支持されたフレキシブルプリント基板22において、コイル3は、内方に向けて露出させた状態にある。従って、コイル3を、検出対象物(図7の主軸部102a)に近接して対向させることが容易である。電子部品E1,E2は逆に、外方に向けられた状態にあるので、検出対象物との接触を避けるには好適な配置である。従って、検出対象物の変位を検出する機能を確保しつつ、検出対象物と電子部品との接触を防止することができる。また、コイル3が設けられた基板部分は平面部21cに張り付くように取り付けられる。これにより、コイル3による検出の精度を安定させることができる。
【0036】
また、電子部品E1,E2による外方への突出部位はポケット21a,21bに収容されるので、フレキシブルプリント基板22を、内方へ膨らませることなく装着することができる。しかも、ポケット21a,21bを多数形成することにより支持部21の体積が大幅に減少し(例えば約半減)、支持部21の軽量化に寄与する。また、ポケット21a,21bに収容されることで電子部品E1,E2を保護することができるので、支持部21が保護機能も発揮する。すなわち、保護用の部材を別途設けなくても、支持部21によって電子部品を保護することができる。
なお、ポケット21a,21bの配置は、電子部品を収容するか否かにかかわらず、回点対称な配置を基本形とする。これにより、支持部21の熱膨張及び、コイル3の磁場を、径方向の対向部間で均一にすることができる。
【0037】
《演算装置を含む第1実施形態》
図11は、変位センサ装置20の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第1実施形態)を示す図である。この回路部は、変位センサ装置20の他、ABSセンサ装置30及び演算装置40を備えている。ABSセンサ装置30は、センサ部とセンサドライバとを含むもので、センサ部はハブユニット100(図7)の例えば内輪部材103の外周に設けられる(但し、図7には図示せず。)。ABSセンサ装置30はパルス発生装置であり、車輪/内軸102(図7)の1回転当たり、例えば48パルスを出力する。従って、1パルスは角度Kr(=360/48度)に相当する。
【0038】
演算装置40は、ハブユニット100又はその近傍に設けられ、回転同期除去演算部41及び5分力分離演算部42を機能として備えている。ここで、先に5分力分離演算部42について簡単に説明すると、回転同期除去演算部41によって回転同期信号が除去された変位信号は、5分力分離演算部42に入力される。5分力とは、変位センサ装置20によって検出される変位に基づいて、回転体すなわち図7の主軸部102aに作用しているとされるX(前後),Y(軸),Z(上下)の各方向への荷重Fx,Fy,Fz、並びに、X軸周りのモーメントMx、及び、Z軸周りのモーメントMzである。これら5分力と変位とはマトリックスの係数を持つ線形の関係にあり、既知の演算(例えば特開2007−127253号公報)によって5分力を求めることができる。5分力の演算そのものは本発明の本質的事項ではないので、ここでは、その詳細については省略する。
【0039】
次に、回転同期除去演算について詳しく説明する。
図12は、回転同期除去演算部41において、あくまで参考例(実施例ではない。)としての回転角度の捉え方を示すグラフである。図示しているのは、上のグラフがパルス列、下のグラフが回転角度(実線:演算による回転角度、二点鎖線:実回転角度)である。このパルス列の例は、回転速度(車速)が徐々に増大しているときの一状態を示している。パルスは、立ち上がりでカウントされる。従って、カウントするタイミングは離散的である。演算による回転角度は、カウント数にKrを乗じたものであり、図示のように、階段状に増加する。従って、実角度と一致するのはカウントした瞬間だけで、カウントと次のカウントとの間では誤差が大きくなる。
【0040】
そこで、本実施形態では、誤差を激減させる。図13は、回転同期除去演算部41における、本実施形態としての回転角度の捉え方を示すグラフである。図において、パルスが立ち上がると、直前の1周期をTとして、回転角速度Kr/Tを求め、次のパルスの立ち上がりまでは、この勾配で回転角度が変化していくと推定し、その推定の基に回転角度を演算する。そして、次のパルスが立ち上がると、また直前の1周期をTとして、回転角速度Kr/Tを求め、さらに次のパルスの立ち上がりまでは、この勾配で回転角度が変化していくと推定し、その推定の基に回転角度を演算する。以下同様に、直前の回転角速度のペースでパルスの合間の回転角度を求めていく。
【0041】
図14は、演算装置40の回転同期除去演算部41で実行される処理のフローチャートである。まず、ステップS1において演算装置40は、回転角度の初期値θ0(=0)設定を行う。次に、演算装置40は、ABSセンサ装置30(図11)から入力されるパルスがLレベルからHレベルに変化したか否かを判定する(ステップS2)。ここで、LからHへの変化があったとすると、演算装置40はパルス数nをカウント(積算)する(ステップS3)。ここで、処理上の最初のパルスすなわちパルス数n=1であればパルスの周期が得られないので次のパルスを待つ(ステップS4からステップS2)。ここで、次のパルスが来るまでは、処理はステップS2からステップS6へ進むが、ここで周期Tの直前値があるか否かを判定し(ステップS6)、直前値が無い場合すなわち処理上の最初の時点ではステップS2に戻る。
【0042】
ステップS2において次のパルスを捉えると、演算装置40は、パルス数をカウントする(ステップS3)。これにより、ステップS4での判定は「No」となって、演算装置40は、パルス間の周期Tを検出するとともに、回転角度θの演算を行う(ステップS5)。ここで、パルスが立ち上がる瞬間の回転角度をθLとすると、
θL=θ0+Kr・n ・・・(1)
となる。
【0043】
一方、パルス間の時間領域で、次のパルスを待つ間は、ステップS2からステップS6へ進み、既にTの直前値があるときは、演算装置40は回転角速度ωの演算を行う(ステップS7)。この演算では、回転角速度ωを、
ω=Kr/T ・・・(2)
とする。すなわち、直前の周期Tと、その値が得られた瞬間(パルスの立ち上がりの瞬間)の時刻tPの回転角速度が、次のパルスが来るまでの暫定的な一定値とされる。そして、演算装置40は、時刻tPを基準として、そこからの経過時間Δt(0<Δt<T)における回転角度の変化量Δθを下記の演算で求める。
Δθ=(Kr/T)・Δt ・・・(3)
そして、演算装置40は、式(1)、式(3)より、
θ=θL+Δθ ・・・(4)
として回転角度θを求める。すなわち、パルスが立ち上がった瞬間の回転角度θは、式(1)で求めたθLそのものとなり、パルス間の時間領域で、次のパルスを待つ間の回転角度θは、直近・直前のθLを基に、式(4)で求めた値となる。
【0044】
このようにして、パルスが立ち上がるときの演算による回転角度を基準としながらも、パルスの合間でも直前の傾向に基づいてきめ細かに回転角度θが求められ、更新されていく。すなわち、1パルスの発生から次のパルスの発生までの途中の時間においては、前パルス発生からの経過時間と回転角速度とに基づいて回転角度を推定するので、常に、より正確に回転角度を検出することができる。例えば図12(参考例)と図13とを比較すれば、その正確さの違いが明らかである。
【0045】
回転角度θがわかれば、回転角速度ω(=dθ/dt)を求めることができるので、演算装置40は、当該回転角速度ωの周波数f(ω/2π)を持つ回転同期信号を検出することができる。この回転同期信号を除去するための補正信号が、図11における回転同期除去演算部41によって変位センサ装置20の出力に対して与えられ、回転同期信号が除去される。正確な回転角度に基づいて回転同期信号を検出するので、より正確に、回転同期信号を除去することができる。
【0046】
図15は、上述のような回転同期除去演算の効果をシミュレーションによって示すグラフである。図において、点線は実回転同期信号すなわち実際の回転同期信号、細い実線は演算で作り出した回転同期信号すなわち補正信号、太い実線は実回転同期信号から補正信号を除去した残りの誤差信号を、それぞれ表している。図示のように、演算によって作り出される補正信号は図13に示したような小さい段差はあるものの、実回転同期信号とほぼ一致しており、従って、誤差信号は理想的な振幅0レベルに近いものである。一方、図16は、対比のための参考例として図12に示した演算を行った場合の、同様なグラフである。図示のように、この場合の補正信号は実信号とのずれが大きく、誤差信号はかなり大きな振幅を持つことがわかる。
【0047】
《演算装置を含む第2実施形態》
図17は、変位センサ装置20の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第2実施形態)を示す図である。
第1実施形態(図11)との違いは、制動力演算部43を設け、ブレーキ指令部51に対して信号を与える点である。ブレーキ指令部51は、油圧シリンダ52を駆動する。
【0048】
図18は、車輪(タイヤ)50を示す円に、荷重のベクトルを示した図である。車輪50はブレーキディスク51と一体回転し、ブレーキディスク51はフランジ部102b(図7)に取り付けられている。また、ブレーキディスク51を挟むブレーキパッド52が車体側に支持されている。ブレーキパッド52は、車輪50の中心から見て角度αの位置にある。ブレーキが動作していないときは、接地面での荷重Fx(前後方向)、Fz(上下方向)と、変位センサ装置20によって検出される荷重sFx(前後方向)、sFz(上下方向)とは、それぞれ概ね一致している。なお、接頭文字の「s」は、実値との識別の便宜上付けるものである。
【0049】
しかし、ブレーキが動作すると、ブレーキパッド52の位置から図示の接線方向へブレーキ力bFが発生するので、その分力(bFx=bFsinα,bFz=bFcosα)により変位センサ装置20の検出する値(sFx,sFz)が実際の接地面での荷重(Fx,Fz)と合わなくなる。言い換えれば、ブレーキをかけたときは、変位センサ装置20の検出する荷重に、ブレーキ力が含まれることになる。
【0050】
図19は、ブレーキ動作時における変位センサ装置20による荷重の検出値の変化を示すグラフの一例である。図示のように、ブレーキ動作を示すブレーキ信号が立ち上がると、車速は概ね一定勾配で低下し、荷重(Fx)も図示のように変化するが、実値と検出値とでは斜線部分の開きがある。この斜線部分の原因となるのが、ブレーキ力(bFx)である。そこで予め、ブレーキをかけたときの、ブレーキ力bFxと、変位センサ装置20によって検出される同方向の荷重sFxとの関係を細かく調べ上げ、データテーブルを用意しておく。
【0051】
図17に戻り、演算装置40の制動力演算部43は、ブレーキ指令が出されていることを条件に、5分力分離演算部42から出力される荷重sFxに基づいて、上記データテーブルを参照してブレーキ力bFxを推定する。bFxが求まると、bFz=bFx/tanαとなる。従って、ブレーキ力bFは、
bF=(bFx2+bFz2)1/2
として求めることができる。こうして求めたブレーキ力bFの信号は、制動力演算部43からブレーキ指令部51に、フィードバック信号として与えられる。ブレーキ指令部51は、運転者のブレーキ操作に基づくブレーキ指令に、フィードバックされたブレーキ力bFの信号を考慮して、油圧シリンダ52に付与するブレーキ指令量を適切に加減調節する。
【0052】
以上の処理によれば、変位センサ装置20の出力から得られる荷重にブレーキ力が影響を及ぼすことを利用して、荷重からブレーキ力を簡易に推定することができる。すなわち、本来は荷重を求めるための変位センサ装置20の出力に基づいて、いわば副産物のごとくブレーキ力をも知ることができる。これにより、実際のブレーキ力を適切に制御することができる。また、油圧シリンダ52へのブレーキ指令量は適切であっても、最終的に発揮されるブレーキ力はブレーキディスク51やブレーキパッド52の状態によって変化する場合がある。しかしながら、上記のようなフィードバック信号が得られれば、ブレーキディスク51やブレーキパッド52の状態に左右されることなく、ブレーキ力の制御を、より正確に行うことができる。従って、制動に関する車両の安全性が向上する。
【0053】
《演算装置を含む第3実施形態》
図20は、変位センサ装置20の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第3実施形態)を示す図である。
第1実施形態(図11)との違いは、ブレーキ補正部44及び加算部45を設け、ブレーキペダルの操作に反応するブレーキオン・オフセンサ53の出力をブレーキ補正部44に取り込む点である。また、ブレーキ補正部44には、ABSセンサ装置30からのパルス列が入力される。
【0054】
制動時に、減速度(角加速度)Dとブレーキ力bFxとの間には、ほぼ比例関係がある。すなわち、
bFx=K・D ・・・(5)
である。そこで、この係数Kを予め実験によって調べておき、演算装置40に記憶させておく。ブレーキ補正部44は、ブレーキオン・オフセンサ53からブレーキオンの信号を受けると、ABSセンサ装置30から与えられるパルスに基づいて減速度Dを演算する。減速度Dが求まると、式(5)よりブレーキ力bFxがわかる。また、bFz=bFx/tanαにより、ブレーキ力bFzも判明する。そこで、演算装置40は加算部45において、5分力分離演算部42から出力されるsFx、sFzにそれぞれbFx、bFzを加算し、変位信号を補正する。この補正は、図19における検出値を実値に変化させることを意味する。
【0055】
このようにして、変位センサ装置20の出力から得られる荷重(ブレーキ力が含まれている。)を補正することにより、ブレーキ力の影響を排除して、正確に荷重(ブレーキ力が含まれていない。)を検出することができる。特に、車輪の前後方向に外乱や雪道での滑りが発生した場合でも、ブレーキ力に惑わされずに正確に前後方向への力を検出することができる。また、ブレーキ操作が行われているときにのみ補正を行うので、エンジンブレーキ等の他のブレーキでは補正を行わず、変位センサ装置20の検出値に影響を与えるブレーキ操作のときにのみ、補正を行うことができる。
【0056】
《その他》
なお、上記実施形態における変位センサ装置20としては、支持部21の内周側にフレキシブルプリント基板22を装着する例を示したが、これは一例に過ぎず、例えば肉厚が比較的薄い、窓付きの支持部の外周側にフレキシブルプリント基板を装着して、窓から内方へコイルを露出させるような構成も可能である。すなわち、フレキシブルプリント基板は、支持部の内周・外周のどちらにでも装着することができる。
また、そもそも、変位センサ装置としてフレキシブルプリント基板を用いたものについて説明したが、これも一例に過ぎず、鉄心にコイルを巻く伝統的なタイプの変位センサ装置についても同様に、上記各実施形態の演算装置40による処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
12:回転体、20:変位センサ装置、30:ABSセンサ装置(パルス発生装置)、40:演算装置、50:車輪、100:ハブユニット(転がり軸受装置)、102a:主軸部(回転体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転体の変位を検出するセンサ付きの転がり軸受装置に関し、典型的には、自動車のハブユニットに変位センサ装置が搭載されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の分野においては、走行の際の運転制御を行うために、車輪に作用する荷重の情報が必要とされている。かかる情報を得るため、車輪用の転がり軸受装置であるハブユニットに、変位センサ装置が設けられる(例えば、特許文献1参照。)。この変位センサ装置は、車輪と繋がった回転体と径方向に対向してセンサが配置され、対向距離の変化に伴うインダクタンスの変化によって出力を変化させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−127253号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のセンサ付き転がり軸受装置では、回転体に荷重が作用していないときは、理想的には、変位が検出されないはずである。ところが、現実には、ごく僅かの回転体の回転振れがあり、荷重に関わらず周期的な距離変動が生じるので、変位センサ装置の出力に回転同期信号成分が含まれてしまう。かかる回転同期信号を除去する方法としては、2軸の直交座標系から回転座標系へ変換する方法が知られており、この変換には車輪の回転速度の情報が必要である。回転速度の元になる回転角度を示す信号としては、通常、ABS(Antilock Brake System)センサから回転体の1回転当たり48パルスで出力されるパルス列信号が用いられ、パルス数をカウントすることにより、回転体の回転角度を求めている。
【0005】
しかしながら、この回転角度の検出に誤差があると、回転同期信号が除去できずに残ってしまうという問題点があった。
かかる従来の問題点に鑑み、本発明は、回転体の回転角度の検出精度を高め、回転同期信号を確実に除去することができるセンサ付き転がり軸受装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明のセンサ付き転がり軸受装置は、車輪に繋がる回転体を支持する転がり軸受装置と、回転中の前記回転体の変位を検出する変位センサ装置と、前記回転体が所定角度回転する毎にパルスを発生させるパルス発生装置と、前記パルスが発生するタイミングで前記回転体の回転角度を求めるとともに、パルス発生間隔に基づいて回転角速度を求め、次のパルス発生までの間は、当該回転角速度に基づいて経過時間に応じた回転角度を推定し、得られた回転角度に基づく回転同期信号を、前記変位センサ装置の出力信号から除去する演算装置とを備えたものである。
【0007】
上記のように構成されたセンサ付き転がり軸受装置では、変位センサ装置の出力に含まれる回転同期信号が、演算装置によって除去される。1パルスの発生から次のパルスの発生までの途中の時間においては、前パルス発生からの経過時間と回転角速度とに基づいて回転角度(すなわち、パルスの合間での回転角度)を推定するので、パルスの合間にも直前の傾向を考慮した回転角度の検出が可能となる。
【0008】
(2)また、上記(1)のセンサ付き転がり軸受装置において、演算装置は、車輪にかかる荷重とブレーキ力との関係を予め記憶しておき、変位センサ装置の出力に基づいて算出した荷重からブレーキ力を推定するようにしてもよい。
この場合、変位センサ装置の出力から得られる荷重にブレーキ力が影響を及ぼすことを利用して、荷重からブレーキ力を簡易に推定することができる。すなわち、本来は荷重を求めるための変位センサ装置の出力に基づいて、いわば副産物のごとくブレーキ力をも知ることができる。
【0009】
(3)また、上記(2)のセンサ付き転がり軸受装置において、推定したブレーキ力に基づいて、ブレーキ力制御のためのフィードバック信号を出力するようにしてもよい。
この場合、ブレーキディスクやブレーキパッドの状態に左右されることなく、ブレーキ力の制御を、より正確に行うことができる。従って、制動に関する車両の安全性が向上する。
【0010】
(4)また、上記(1)のセンサ付き転がり軸受装置において、変位センサ装置の出力に基づいて荷重を算出するとともに、パルス発生装置の発生するパルスに基づいて減速度を求め、減速度とブレーキ力との所定の関係から求めたブレーキ力に基づいて荷重の算出値を補正するようにしてもよい。
この場合、変位センサ装置の出力から得られる荷重(ブレーキ力が含まれている。)を補正することにより、ブレーキ力の影響を排除して、正確に荷重(ブレーキ力が含まれていない。)を検出することができる。特に、車輪の前後方向に外乱や雪道での滑りが発生した場合でも、ブレーキ力に惑わされずに正確に前後方向への力を検出することができる。
【0011】
(5)また、上記(4)のセンサ付き転がり軸受装置において、ブレーキ操作が行われているときにのみ補正を行うことが好ましい。
すなわちこの場合、エンジンブレーキ等の他のブレーキでは補正を行わず、変位センサ装置の検出値に影響を与えるブレーキ操作のときにのみ、補正を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセンサ付き転がり軸受装置によれば、回転体の回転角度の検出精度を高め、回転同期信号を確実に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】基板形センサに使用する平面コイルの原理を説明する図である。
【図2】LC回路の周波数特性の一例を示すグラフである。
【図3】(a)は基板形センサの展開図、(b)は基板形センサを円筒状に丸めた状態を示す斜視図である。
【図4】丸めた状態のフレキシブルプリント基板を支持し、かつ、その円筒形状を維持すべく、円筒状の支持部の内周面上に取り付ける状態を示す斜視図である。
【図5】(a)は、支持部の図示を省略して、フレキシブルプリント基板の内側に回転体が挿通されている状態の基板形センサを示す斜視図である。(b)は、これを回転体の軸方向から見た図である。
【図6】基板形センサのコイルに信号処理回路を接続した変位センサ装置の回路構成の一例を示す回路図である。
【図7】転がり軸受装置の一種であるハブユニットの断面図である。
【図8】フレキシブルプリント基板の展開図である。
【図9】支持部の斜視図、及び、支持部に装着されたフレキシブルプリント基板が、どのような形態となっているかを示す斜視図である。
【図10】フレキシブルプリント基板を支持部に装着することにより完成した状態の変位センサ装置を示す斜視図である。
【図11】変位センサ装置の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第1実施形態)を示す図である。
【図12】演算装置の回転同期除去演算部において、あくまで参考例(実施例ではない。)としての回転角度の捉え方を示すグラフである。
【図13】演算装置の回転同期除去演算部における、実施形態としての回転角度の捉え方を示すグラフである。
【図14】演算装置の回転同期除去演算部で実行される処理のフローチャートである。
【図15】回転同期除去演算の効果をシミュレーションによって示すグラフである。
【図16】対比のための参考例として図12に示した演算を行った場合の、図15と同様なグラフである。
【図17】変位センサ装置の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第2実施形態)を示す図である。
【図18】車輪(タイヤ)を示す円に、荷重のベクトルを示した図である。
【図19】ブレーキ動作時における変位センサ装置による荷重の検出値の変化を示すグラフの一例である。
【図20】変位センサ装置の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第3実施形態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《原理》
まず、本発明のセンサ付き転がり軸受装置に使用する基板形センサの原理から説明する。図1は、基板形センサに使用する平面コイルの原理を説明する図である。この平面コイル1は、(a)に示すように、フレキシブルプリント基板(FPC)2上に、導電部を渦巻状に形成して成るコイル3を設けたものである。このような平面コイル1は、例えばポリイミド製の基板に銅やアルミニウム等の金属箔が貼着されたフレキシブルプリント基板からエッチングを行って、渦巻のパターンを残すことにより製作することができる。なお、コイル3の渦巻中心の端部は、例えばスルーホールで裏面へ導出することができる。コイル3は、渦巻のターン数(渦を巻いている回数)、コイルの断面積、コイルの長さ等に依存するインダクタンスLを有するが、ターン数は2乗で関与するため、最も支配的な要素である。従って、ターン数を確保することによって、所望のインダクタンスを得ることが可能である。
【0015】
(b)は、平面コイル1を、変位の検出対象物4と近接対向させた状態を示す斜視図である。検出対象物4は金属製(例えば鉄系金属)であり、導電性を有する。コイル3のインダクタンスは、この検出対象物4によって影響を受ける。また、交流信号に対して、コイル3のパターンと検出対象物4との間に、パターン面積や相互間の距離に依存したキャパシタンスが現れる。従って、このような平面コイル1は、等価的に、(c)に示すような並列のLC回路となる。ここで、インダクタンスLやキャパシタンスCの値は、検出対象物4と平面コイル1とのギャップによって変化する。
【0016】
上記ギャップが増大すると、交流信号に対するインダクタンスL及びキャパシタンスCが共に低下し、逆に、ギャップが減少すると、インダクタンスL及びキャパシタンスCが共に上昇する。従って、ギャップの変化により、LC回路の自己共振周波数f(=1/(2π(L・C)1/2))が変化する。
図2は、LC回路の周波数特性の一例を示すグラフである。周波数特性は、例えば自己共振周波数f1でピークとなる実線の曲線であるが、自己共振周波数が低下してf2になると、周波数特性は破線の曲線となる。この結果、LC回路に一定の発振周波数f0を供給している場合において、LC回路の出力(振幅)は、V1からV2に変化する。このようにして、ギャップの変化を出力の変化として検出することができる。
【0017】
《基板形センサの基本構成》
次に、上記のような平面コイル1を複数個使用した基板形センサの基本構成について説明する。
図3の(a)は、基板形センサ10の展開図である。この基板形センサ10においては、フレキシブルプリント基板2上に、4個のコイル3(総称符号)が2段に、合計8個設けられている。なお、図ではコイル3を簡略化して同心円のように描いているが、実際は、図1に示したような渦巻である(以下、同様。)。
【0018】
ここで、各コイル個別の符号は、後述の回転体の軸方向をY方向とした場合に、Y方向に直交し、かつ、互いに直交するX方向・Z方向に対応し、数字はY軸上の組番号、+、−はX,Z方向の組を表している。すなわち、変位を検出するためのコイルの組み合わせは、以下のようになる。
X方向変位:(X1+,X1−)、(X2+,X2−)
Z方向変位:(Z1+,Z1−)、(Z2+,Z2−)
各コイル3における2つの巻端(図示せず。)は、フレキシブルプリント基板2の表裏両面の導電路6を経て、端子電極部2aに導出されている。
【0019】
このような基板形センサ10を円筒状に丸めると、(b)に示すようになり、コイルX1+及びX1−、並びに、X2+及びX2−は、それぞれ、X方向に2個1組の存在となる。また、コイルZ1+及びZ1−、並びに、Z2+及びZ2−は、それぞれ、Z方向に2個1組の存在となる。また、上段側及び下段側の各4個のコイルは、周方向の位相90度ごとに配置されている。
【0020】
図4は、丸めた状態のフレキシブルプリント基板2を支持し、かつ、その円筒形状を維持すべく、円筒状の支持部11の内周面上に取り付ける状態を示す斜視図である。支持部11は、樹脂製であってもよいが、ここでは金属製とする。金属製の場合、機械的強度を容易に確保することができるので、樹脂製に比べて薄肉の支持部とすることができる。このことは、コンパクト化に寄与する。なお、支持部が金属製であっても、高周波信号(100kHz〜500kHz)でLC回路を駆動することにより、変位検出に影響がないことが確認された。
【0021】
支持部11の内周面に固定されたフレキシブルプリント基板2の内側には、径方向の微小な隙間を確保して、検出対象物としての回転体12が挿入される。回転体12には例えば周溝が2条に形成されており、各々が、4個1組のコイル3の各組に対応して配置される。この回転体12とは例えば自動車の車軸である。その場合、支持部11は転がり軸受装置の固定輪に取り付けられ、回転輪に回転体(車軸)12が取り付けられている。そして、上記の隙間は、転がり軸受装置によって維持される。
【0022】
図5の(a)は、支持部11の図示を省略して、フレキシブルプリント基板2の内側に回転体12が挿通されている状態の基板形センサ10を示す斜視図である。(b)は、これを回転体12の軸方向から見た図である。フレキシブルプリント基板2と回転体12の表面との間には径方向へのギャップがあり、このギャップの変化によって、前述のインダクタンスL,キャパシタンスCが変化する。従って、車輪に荷重が作用した際に発生する車軸の径方向の変位を、前述の出力の変化として検出することができる。また、4個1組×2列のコイル3は、周溝12aと対向し、回転体12の軸方向への変位によって周溝12aとの対向面積が2列で対照的(一方の列が増加なら他方は減少)に変化するよう構成されている。従って、各列のコイル3に関する出力が軸方向の変位によって変化する。すなわち、車輪に荷重が作用した際に発生する車軸方向への変位を、前述の出力の変化として検出することができる。
【0023】
図6は、基板形センサ10のコイル3に信号処理回路18を接続した変位センサ装置20の回路構成の一例を示す回路図である。このような信号処理回路18は、フレキシブルプリント基板2に実装することが可能である。
各コイルは前述のように等価的にはLC回路であり、発振回路13から抵抗14を介して所定の発振周波数f0の交流信号が供給される。LC回路の出力はインピーダンス変換を行うバッファ回路(電圧フォロワ回路)15を経て、差動増幅回路16に入力される。また、各列(添え字の1系、2系)の4個のコイルの出力が加算回路17で加算され、差動増幅回路16に入力される。
【0024】
差動増幅回路16は、対を成す2つのLC回路や加算回路17からの信号電圧の差をとることで信号の線形化を行い、かつ、増幅を行う。線形化によって、回転体12の径方向への変位を正確に検出することができる。すなわち、軸方向に直交する方向にコイルを2個1組で設け、出力の差をとることで、回転体12の径方向への変位を正確に検出することができる。差動増幅後の信号は、X方向の2出力(X1,X2)と、Z方向の2出力(Z1,Z2)として出力される。また、各列の4個のコイルの出力差をとることで、回転体12の軸方向への変位を正確に検出することができる。差動増幅後の信号は、Y方向の出力(Y)として出力される。
【0025】
《センサ付き転がり軸受装置の基本構造》
次に、上記のような変位センサ装置措置20(一部の部品を除く。)が固定輪と回転輪との間に取り付けられたセンサ付き転がり軸受装置について説明する。
図7は、転がり軸受装置の一種であるハブユニット(これは従動輪用)の断面図である。このハブユニット100は車両に取り付けられるものであり、取り付けた状態では、図7における右側が車両のアウター側(車両の外側)であり、左側が車両のインナー側(車両の内側)である。図7において、ハブユニット100の中心軸Cに沿った方向をY方向とし、これに直交する紙面に垂直な方向をX方向とし、Y方向及びX方向の双方に直交する鉛直方向をZ方向とする。従って、このハブユニット100が自動車に取り付けられた状態においてX方向は車輪の前後水平方向となり、Y方向は車輪の左右水平方向(軸方向)となり、Z方向は上下方向となる。
【0026】
このハブユニット100は、主たる構造部分として、外輪101、内軸102、内輪部材103、ナット104、及び、転動体105を備えている。外輪101は、筒状部101aと、この筒状部101aの一部の外周面から径方向外方へ伸びたフランジ部101bとを有している。このフランジ部101bは、車体側の固定部材(図示せず。)に固定され、これによってハブユニット100が車体に固定される。内軸102は、外輪101内に挿通される主軸部102aと、車両アウター側にあって径方向外方へ延びるフランジ部102bとを有している。このフランジ部102bが、車輪のホイールやブレーキディスクの取付部となる。なお、円柱状の主軸部102aは、前述の回転体12(図4,図5)に相当する部分である。
【0027】
内軸102の車両インナー側には、筒状の内輪部材103が外嵌され、さらに、内軸102の端部に形成された雄ねじ部102dにナット104が螺着されることにより、内輪部材103が内軸102に固定されている。転動体105は、周方向に複数個配置された玉からなる複列の構成となっている。各列の玉は保持器(図示せず。)によって周方向に所定間隔で保持されている。
このハブユニット100において、外輪101は、車体側の固定部材に固定される固定輪である。また、内軸102と内輪部材103とは、外輪101に転動体105を介して回転自在に支持された回転輪である。外輪101、内軸102及び内輪部材103は、互いに同軸(中心軸C)に配置されている。
【0028】
このように構成されたハブユニット100においては、外輪101の内周面上に取り付けられた変位センサ装置20により、検出対象物である内軸102(主軸部102a)の変位を非接触で検出することができる。この場合、固定輪たる外輪101と、回転輪たる内軸102の主軸部102aとの間の狭い径方向隙間に、変位センサ装置20を設けることができる。なお、主軸部102aには図4の回転体12の周溝12aに相当するものが設けられるが、ここでは図示を省略する。
【0029】
《変位センサ装置の具体例》
図8〜10は、一例としての変位センサ装置20を示す図であり、図8はフレキシブルプリント基板22の展開図である。図9は、支持部21の斜視図、及び、支持部21に装着されたフレキシブルプリント基板22が、どのような形態となっているかを示す斜視図、図10は、フレキシブルプリント基板22を支持部21に装着することにより完成した状態の変位センサ装置20を示す斜視図である。
【0030】
まず、図8において、フレキシブルプリント基板22は、コイル3等のセンサ回路要素を含む横長・長方形の基板本体22aと、この基板本体22aから上下にそれぞれ延伸して形成された合計13片の止め代部22bと、中央上部から上方へ延伸して形成された引出し部22cとを一体に有するものである。
【0031】
基板本体22aは、複数種類の領域a1〜a4を有している。4つの領域a1にはそれぞれ図3の要領で一対のコイル3が設けられ、全体で8個のコイル3(X1+,Z1+,X1−,Z1−,X2+,Z2+,X2−,Z2−)が設けられている。これらのコイル3は、図の表面側(紙面側)に設けられている。一方、斜線を付した裏面側の3つの領域a2には、対応する回路図に示す電子部品(抵抗14,バッファ回路15,差動増幅器16、加算回路17)が実装され、回路接続用の導電路が形成されている。また、斜線を付した裏面側の6つの領域a3にも、補助的に、電子部品の実装が可能である。
【0032】
残る6つの領域a4は、電子部品が実装されず、導電路のみが形成される。従って、領域a4での折り曲げが可能である。コイル3の2つの巻端は、スルーホール(図示せず。)を通って裏面側に導出されている。引出し部22cには外部回路との接続のための導電路が集約されている。なお、裏面側の表面の、少なくとも導電路の部分には、絶縁コーティングが施される。
一方、止め代部22bは、フレキシブルプリント基板22を支持部21(図9)に固定するにあたっての、ねじやリベット等の止め具23(図9)による固定の用に供する部位である。各止め代部22bには、丸孔hが形成されている。
【0033】
次に、図9において、支持部21は、内周は多角形(8角形)で、外周は円筒となる全体としてはリング状の物体(リング体)である。この支持部21は、前述の支持部11と同様に金属製で、具体的には、温度特性を合わせる観点から、外輪101(図7)と同じ鉄系材料が好ましい。支持部21には、周方向へ規則的にポケットが形成されている。本例では、内外貫通の大きいポケット21aが周方向に90度ごとに、8角形の1辺の範囲内で形成されている。また、内外貫通の一対の小さなポケット21bが、周方向に90度ごとに、8角形の1辺の範囲内で形成されている。一対の小さなポケット21bの間に残る平面部21cは、コイル3の取り付け面となる。支持部21の軸方向の両端面には、止め具23の取り付け孔21dが形成されている。
【0034】
フレキシブルプリント基板22の基板本体22aは、前述の領域a4(図8)を折り曲げ箇所として、開いた多角形状に折り曲げられ、支持部21の内周側に装着される。また、止め代部22b及び引出し部22cは、外側へ折り曲げられる。折り曲げられた止め代部22bの孔h(図8)には止め具23が通され、取り付け孔21dに固定される。こうして、図10に示すように、フレキシブルプリント基板22が支持部21に固定される。電子部品E1,E2は、フレキシブルプリント基板22の外側にあって、外方へ少し突出しているが、それぞれ、ポケット21a,21bへ収容されることにより、フレキシブルプリント基板22を内方へ膨らませることなく装着することができる。
【0035】
上記のように構成された変位センサ装置20では、支持部21に沿って支持されたフレキシブルプリント基板22において、コイル3は、内方に向けて露出させた状態にある。従って、コイル3を、検出対象物(図7の主軸部102a)に近接して対向させることが容易である。電子部品E1,E2は逆に、外方に向けられた状態にあるので、検出対象物との接触を避けるには好適な配置である。従って、検出対象物の変位を検出する機能を確保しつつ、検出対象物と電子部品との接触を防止することができる。また、コイル3が設けられた基板部分は平面部21cに張り付くように取り付けられる。これにより、コイル3による検出の精度を安定させることができる。
【0036】
また、電子部品E1,E2による外方への突出部位はポケット21a,21bに収容されるので、フレキシブルプリント基板22を、内方へ膨らませることなく装着することができる。しかも、ポケット21a,21bを多数形成することにより支持部21の体積が大幅に減少し(例えば約半減)、支持部21の軽量化に寄与する。また、ポケット21a,21bに収容されることで電子部品E1,E2を保護することができるので、支持部21が保護機能も発揮する。すなわち、保護用の部材を別途設けなくても、支持部21によって電子部品を保護することができる。
なお、ポケット21a,21bの配置は、電子部品を収容するか否かにかかわらず、回点対称な配置を基本形とする。これにより、支持部21の熱膨張及び、コイル3の磁場を、径方向の対向部間で均一にすることができる。
【0037】
《演算装置を含む第1実施形態》
図11は、変位センサ装置20の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第1実施形態)を示す図である。この回路部は、変位センサ装置20の他、ABSセンサ装置30及び演算装置40を備えている。ABSセンサ装置30は、センサ部とセンサドライバとを含むもので、センサ部はハブユニット100(図7)の例えば内輪部材103の外周に設けられる(但し、図7には図示せず。)。ABSセンサ装置30はパルス発生装置であり、車輪/内軸102(図7)の1回転当たり、例えば48パルスを出力する。従って、1パルスは角度Kr(=360/48度)に相当する。
【0038】
演算装置40は、ハブユニット100又はその近傍に設けられ、回転同期除去演算部41及び5分力分離演算部42を機能として備えている。ここで、先に5分力分離演算部42について簡単に説明すると、回転同期除去演算部41によって回転同期信号が除去された変位信号は、5分力分離演算部42に入力される。5分力とは、変位センサ装置20によって検出される変位に基づいて、回転体すなわち図7の主軸部102aに作用しているとされるX(前後),Y(軸),Z(上下)の各方向への荷重Fx,Fy,Fz、並びに、X軸周りのモーメントMx、及び、Z軸周りのモーメントMzである。これら5分力と変位とはマトリックスの係数を持つ線形の関係にあり、既知の演算(例えば特開2007−127253号公報)によって5分力を求めることができる。5分力の演算そのものは本発明の本質的事項ではないので、ここでは、その詳細については省略する。
【0039】
次に、回転同期除去演算について詳しく説明する。
図12は、回転同期除去演算部41において、あくまで参考例(実施例ではない。)としての回転角度の捉え方を示すグラフである。図示しているのは、上のグラフがパルス列、下のグラフが回転角度(実線:演算による回転角度、二点鎖線:実回転角度)である。このパルス列の例は、回転速度(車速)が徐々に増大しているときの一状態を示している。パルスは、立ち上がりでカウントされる。従って、カウントするタイミングは離散的である。演算による回転角度は、カウント数にKrを乗じたものであり、図示のように、階段状に増加する。従って、実角度と一致するのはカウントした瞬間だけで、カウントと次のカウントとの間では誤差が大きくなる。
【0040】
そこで、本実施形態では、誤差を激減させる。図13は、回転同期除去演算部41における、本実施形態としての回転角度の捉え方を示すグラフである。図において、パルスが立ち上がると、直前の1周期をTとして、回転角速度Kr/Tを求め、次のパルスの立ち上がりまでは、この勾配で回転角度が変化していくと推定し、その推定の基に回転角度を演算する。そして、次のパルスが立ち上がると、また直前の1周期をTとして、回転角速度Kr/Tを求め、さらに次のパルスの立ち上がりまでは、この勾配で回転角度が変化していくと推定し、その推定の基に回転角度を演算する。以下同様に、直前の回転角速度のペースでパルスの合間の回転角度を求めていく。
【0041】
図14は、演算装置40の回転同期除去演算部41で実行される処理のフローチャートである。まず、ステップS1において演算装置40は、回転角度の初期値θ0(=0)設定を行う。次に、演算装置40は、ABSセンサ装置30(図11)から入力されるパルスがLレベルからHレベルに変化したか否かを判定する(ステップS2)。ここで、LからHへの変化があったとすると、演算装置40はパルス数nをカウント(積算)する(ステップS3)。ここで、処理上の最初のパルスすなわちパルス数n=1であればパルスの周期が得られないので次のパルスを待つ(ステップS4からステップS2)。ここで、次のパルスが来るまでは、処理はステップS2からステップS6へ進むが、ここで周期Tの直前値があるか否かを判定し(ステップS6)、直前値が無い場合すなわち処理上の最初の時点ではステップS2に戻る。
【0042】
ステップS2において次のパルスを捉えると、演算装置40は、パルス数をカウントする(ステップS3)。これにより、ステップS4での判定は「No」となって、演算装置40は、パルス間の周期Tを検出するとともに、回転角度θの演算を行う(ステップS5)。ここで、パルスが立ち上がる瞬間の回転角度をθLとすると、
θL=θ0+Kr・n ・・・(1)
となる。
【0043】
一方、パルス間の時間領域で、次のパルスを待つ間は、ステップS2からステップS6へ進み、既にTの直前値があるときは、演算装置40は回転角速度ωの演算を行う(ステップS7)。この演算では、回転角速度ωを、
ω=Kr/T ・・・(2)
とする。すなわち、直前の周期Tと、その値が得られた瞬間(パルスの立ち上がりの瞬間)の時刻tPの回転角速度が、次のパルスが来るまでの暫定的な一定値とされる。そして、演算装置40は、時刻tPを基準として、そこからの経過時間Δt(0<Δt<T)における回転角度の変化量Δθを下記の演算で求める。
Δθ=(Kr/T)・Δt ・・・(3)
そして、演算装置40は、式(1)、式(3)より、
θ=θL+Δθ ・・・(4)
として回転角度θを求める。すなわち、パルスが立ち上がった瞬間の回転角度θは、式(1)で求めたθLそのものとなり、パルス間の時間領域で、次のパルスを待つ間の回転角度θは、直近・直前のθLを基に、式(4)で求めた値となる。
【0044】
このようにして、パルスが立ち上がるときの演算による回転角度を基準としながらも、パルスの合間でも直前の傾向に基づいてきめ細かに回転角度θが求められ、更新されていく。すなわち、1パルスの発生から次のパルスの発生までの途中の時間においては、前パルス発生からの経過時間と回転角速度とに基づいて回転角度を推定するので、常に、より正確に回転角度を検出することができる。例えば図12(参考例)と図13とを比較すれば、その正確さの違いが明らかである。
【0045】
回転角度θがわかれば、回転角速度ω(=dθ/dt)を求めることができるので、演算装置40は、当該回転角速度ωの周波数f(ω/2π)を持つ回転同期信号を検出することができる。この回転同期信号を除去するための補正信号が、図11における回転同期除去演算部41によって変位センサ装置20の出力に対して与えられ、回転同期信号が除去される。正確な回転角度に基づいて回転同期信号を検出するので、より正確に、回転同期信号を除去することができる。
【0046】
図15は、上述のような回転同期除去演算の効果をシミュレーションによって示すグラフである。図において、点線は実回転同期信号すなわち実際の回転同期信号、細い実線は演算で作り出した回転同期信号すなわち補正信号、太い実線は実回転同期信号から補正信号を除去した残りの誤差信号を、それぞれ表している。図示のように、演算によって作り出される補正信号は図13に示したような小さい段差はあるものの、実回転同期信号とほぼ一致しており、従って、誤差信号は理想的な振幅0レベルに近いものである。一方、図16は、対比のための参考例として図12に示した演算を行った場合の、同様なグラフである。図示のように、この場合の補正信号は実信号とのずれが大きく、誤差信号はかなり大きな振幅を持つことがわかる。
【0047】
《演算装置を含む第2実施形態》
図17は、変位センサ装置20の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第2実施形態)を示す図である。
第1実施形態(図11)との違いは、制動力演算部43を設け、ブレーキ指令部51に対して信号を与える点である。ブレーキ指令部51は、油圧シリンダ52を駆動する。
【0048】
図18は、車輪(タイヤ)50を示す円に、荷重のベクトルを示した図である。車輪50はブレーキディスク51と一体回転し、ブレーキディスク51はフランジ部102b(図7)に取り付けられている。また、ブレーキディスク51を挟むブレーキパッド52が車体側に支持されている。ブレーキパッド52は、車輪50の中心から見て角度αの位置にある。ブレーキが動作していないときは、接地面での荷重Fx(前後方向)、Fz(上下方向)と、変位センサ装置20によって検出される荷重sFx(前後方向)、sFz(上下方向)とは、それぞれ概ね一致している。なお、接頭文字の「s」は、実値との識別の便宜上付けるものである。
【0049】
しかし、ブレーキが動作すると、ブレーキパッド52の位置から図示の接線方向へブレーキ力bFが発生するので、その分力(bFx=bFsinα,bFz=bFcosα)により変位センサ装置20の検出する値(sFx,sFz)が実際の接地面での荷重(Fx,Fz)と合わなくなる。言い換えれば、ブレーキをかけたときは、変位センサ装置20の検出する荷重に、ブレーキ力が含まれることになる。
【0050】
図19は、ブレーキ動作時における変位センサ装置20による荷重の検出値の変化を示すグラフの一例である。図示のように、ブレーキ動作を示すブレーキ信号が立ち上がると、車速は概ね一定勾配で低下し、荷重(Fx)も図示のように変化するが、実値と検出値とでは斜線部分の開きがある。この斜線部分の原因となるのが、ブレーキ力(bFx)である。そこで予め、ブレーキをかけたときの、ブレーキ力bFxと、変位センサ装置20によって検出される同方向の荷重sFxとの関係を細かく調べ上げ、データテーブルを用意しておく。
【0051】
図17に戻り、演算装置40の制動力演算部43は、ブレーキ指令が出されていることを条件に、5分力分離演算部42から出力される荷重sFxに基づいて、上記データテーブルを参照してブレーキ力bFxを推定する。bFxが求まると、bFz=bFx/tanαとなる。従って、ブレーキ力bFは、
bF=(bFx2+bFz2)1/2
として求めることができる。こうして求めたブレーキ力bFの信号は、制動力演算部43からブレーキ指令部51に、フィードバック信号として与えられる。ブレーキ指令部51は、運転者のブレーキ操作に基づくブレーキ指令に、フィードバックされたブレーキ力bFの信号を考慮して、油圧シリンダ52に付与するブレーキ指令量を適切に加減調節する。
【0052】
以上の処理によれば、変位センサ装置20の出力から得られる荷重にブレーキ力が影響を及ぼすことを利用して、荷重からブレーキ力を簡易に推定することができる。すなわち、本来は荷重を求めるための変位センサ装置20の出力に基づいて、いわば副産物のごとくブレーキ力をも知ることができる。これにより、実際のブレーキ力を適切に制御することができる。また、油圧シリンダ52へのブレーキ指令量は適切であっても、最終的に発揮されるブレーキ力はブレーキディスク51やブレーキパッド52の状態によって変化する場合がある。しかしながら、上記のようなフィードバック信号が得られれば、ブレーキディスク51やブレーキパッド52の状態に左右されることなく、ブレーキ力の制御を、より正確に行うことができる。従って、制動に関する車両の安全性が向上する。
【0053】
《演算装置を含む第3実施形態》
図20は、変位センサ装置20の出力から荷重信号を得るための、センサ付き転がり軸受装置の回路部(第3実施形態)を示す図である。
第1実施形態(図11)との違いは、ブレーキ補正部44及び加算部45を設け、ブレーキペダルの操作に反応するブレーキオン・オフセンサ53の出力をブレーキ補正部44に取り込む点である。また、ブレーキ補正部44には、ABSセンサ装置30からのパルス列が入力される。
【0054】
制動時に、減速度(角加速度)Dとブレーキ力bFxとの間には、ほぼ比例関係がある。すなわち、
bFx=K・D ・・・(5)
である。そこで、この係数Kを予め実験によって調べておき、演算装置40に記憶させておく。ブレーキ補正部44は、ブレーキオン・オフセンサ53からブレーキオンの信号を受けると、ABSセンサ装置30から与えられるパルスに基づいて減速度Dを演算する。減速度Dが求まると、式(5)よりブレーキ力bFxがわかる。また、bFz=bFx/tanαにより、ブレーキ力bFzも判明する。そこで、演算装置40は加算部45において、5分力分離演算部42から出力されるsFx、sFzにそれぞれbFx、bFzを加算し、変位信号を補正する。この補正は、図19における検出値を実値に変化させることを意味する。
【0055】
このようにして、変位センサ装置20の出力から得られる荷重(ブレーキ力が含まれている。)を補正することにより、ブレーキ力の影響を排除して、正確に荷重(ブレーキ力が含まれていない。)を検出することができる。特に、車輪の前後方向に外乱や雪道での滑りが発生した場合でも、ブレーキ力に惑わされずに正確に前後方向への力を検出することができる。また、ブレーキ操作が行われているときにのみ補正を行うので、エンジンブレーキ等の他のブレーキでは補正を行わず、変位センサ装置20の検出値に影響を与えるブレーキ操作のときにのみ、補正を行うことができる。
【0056】
《その他》
なお、上記実施形態における変位センサ装置20としては、支持部21の内周側にフレキシブルプリント基板22を装着する例を示したが、これは一例に過ぎず、例えば肉厚が比較的薄い、窓付きの支持部の外周側にフレキシブルプリント基板を装着して、窓から内方へコイルを露出させるような構成も可能である。すなわち、フレキシブルプリント基板は、支持部の内周・外周のどちらにでも装着することができる。
また、そもそも、変位センサ装置としてフレキシブルプリント基板を用いたものについて説明したが、これも一例に過ぎず、鉄心にコイルを巻く伝統的なタイプの変位センサ装置についても同様に、上記各実施形態の演算装置40による処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0057】
12:回転体、20:変位センサ装置、30:ABSセンサ装置(パルス発生装置)、40:演算装置、50:車輪、100:ハブユニット(転がり軸受装置)、102a:主軸部(回転体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪に繋がる回転体を支持する転がり軸受装置と、
回転中の前記回転体の変位を検出する変位センサ装置と、
前記回転体が所定角度回転する毎にパルスを発生させるパルス発生装置と、
前記パルスが発生するタイミングで前記回転体の回転角度を求めるとともに、パルス発生間隔に基づいて回転角速度を求め、次のパルス発生までの間は、当該回転角速度に基づいて経過時間に応じた回転角度を推定し、得られた回転角度に基づく回転同期信号を、前記変位センサ装置の出力信号から除去する演算装置と
を備えたことを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項2】
前記演算装置は、前記車輪にかかる荷重とブレーキ力との関係を予め記憶しておき、前記変位センサ装置の出力に基づいて算出した荷重からブレーキ力を推定する請求項1記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項3】
推定したブレーキ力に基づいて、ブレーキ力制御のためのフィードバック信号を出力する請求項2記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項4】
前記変位センサ装置の出力に基づいて荷重を算出するとともに、前記パルス発生装置の発生するパルスに基づいて減速度を求め、減速度とブレーキ力との所定の関係から求めたブレーキ力に基づいて荷重の算出値を補正する請求項1記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項5】
ブレーキ操作が行われているときにのみ前記補正を行う請求項4記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項1】
車輪に繋がる回転体を支持する転がり軸受装置と、
回転中の前記回転体の変位を検出する変位センサ装置と、
前記回転体が所定角度回転する毎にパルスを発生させるパルス発生装置と、
前記パルスが発生するタイミングで前記回転体の回転角度を求めるとともに、パルス発生間隔に基づいて回転角速度を求め、次のパルス発生までの間は、当該回転角速度に基づいて経過時間に応じた回転角度を推定し、得られた回転角度に基づく回転同期信号を、前記変位センサ装置の出力信号から除去する演算装置と
を備えたことを特徴とするセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項2】
前記演算装置は、前記車輪にかかる荷重とブレーキ力との関係を予め記憶しておき、前記変位センサ装置の出力に基づいて算出した荷重からブレーキ力を推定する請求項1記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項3】
推定したブレーキ力に基づいて、ブレーキ力制御のためのフィードバック信号を出力する請求項2記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項4】
前記変位センサ装置の出力に基づいて荷重を算出するとともに、前記パルス発生装置の発生するパルスに基づいて減速度を求め、減速度とブレーキ力との所定の関係から求めたブレーキ力に基づいて荷重の算出値を補正する請求項1記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【請求項5】
ブレーキ操作が行われているときにのみ前記補正を行う請求項4記載のセンサ付き転がり軸受装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2011−149517(P2011−149517A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12491(P2010−12491)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】
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