説明

タイヤ成型用折返しブラダーの製造方法および装置

【課題】エッジ部のシャープ性を維持しながら、ブラダーの各部における形状、ゲージを容易に規定の範囲内とする。
【解決手段】内型11の周囲に成形された円筒状部材12の軸方向一側部を、内型11の外側に外嵌されたインサート20と内型11とにより挟持した後、円筒状部材12の軸方向他側部を折返してインサート20の外側に重ね合わせ、次に、内型11、インサート20、外型61の内部に密閉収納された円筒状部材12を加硫してタイヤ成型用折返しブラダーを製造するようにしたので、加硫時における円筒状部材12の形状、ゲージは、内型11、インサート20、外型61により強力に規定される。これにより、ブラダーの各部における形状、ゲージは容易に規定の範囲内となり、エッジ部におけるシャープ性も充分となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイヤを成型する際に使用する折返しブラダーの製造方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタイヤ用ブラダーの製造方法・装置としては、例えば以下の特許文献1に記載されているようなものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−237957号公報
【0004】
このものは、本体ドラムの周囲に本体プライを巻き付けて円筒状の袋体を形成した後、該袋体の軸方向一側部外周に離型剤を塗布し、その後、前記袋体の軸方向他側部を軸方向一側に折返して袋体の軸方向一側部外側に重ね合わせ、次に、ドラム蓋を本体ドラムの外側に配置して締結することで、本体ドラム、ドラム蓋の内部に袋体を密閉収納した後、前記本体ドラム、ドラム蓋、袋体を加硫缶に収納し、その後、袋体の軸方向一側部と他側部との間にエアを注入しながら該袋体に加硫を施してブラダーを製造するようにしたものである。ここで、特許文献1に記載のブラダーは軸方向一端において連続しているが、前述の折返しの際、袋体の軸方向一端部外側にスペーサを配置しておけば、製造されたブラダーは軸方向一端において開口しながら二重に重なり合ったものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなブラダーの製造方法・装置にあっては、袋体の内部にエアを注入しながら該袋体を加硫缶によって加硫するようにしているため、加硫時に袋体の形状、ゲージが場所により規定形状、ゲージから外れてしまうことがあるという課題がある。しかも、前述のような理由から、ブラダーの端部におけるエッジ形状のシャープ性が不足し、タイヤ構成部材の折返し精度が低下してしまうことがあるという課題もある。
【0006】
この発明は、エッジ部のシャープ性を維持しながら、各部における形状、ゲージを容易に規定の範囲内とすることができるタイヤ成型用折返しブラダーの製造方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、第1に、内型の周囲に帯状部材を巻き付けて円筒状部材を成形する工程と、前記内型の外側に円筒状の金属製インサートを外嵌し、該インサートと内型とにより円筒状部材の軸方向一側部を挟持する工程と、前記円筒状部材の軸方向他側部を軸方向一側に折返してインサートの外側に重ね合わせる工程と、外型を前記内型およびインサートに組み付けることで、内型、インサート、外型の内部に円筒状部材を密閉収納する工程と、前記密閉収納された円筒状部材を加硫し、折り返されて二重となったタイヤ成型用折返しブラダーを製造する工程とを備えたタイヤ成型用折返しブラダーの製造方法により、達成することができる。
【0008】
第2に、帯状部材を周囲に巻き付けることで円筒状部材を成形することができる内型と、前記内型の外側に外嵌され、前記内型と共に円筒状部材の軸方向一側部を挟持する円筒状の金属製インサートと、前記円筒状部材の軸方向他側部が軸方向一側に折返されてインサートの外側に重ね合わされた後、前記内型およびインサートに組み付けられることで、内型、インサートと共に円筒状部材を内部に密閉収納する外型とを備え、前記密閉収納された円筒状部材を加硫することにより、折り返されて二重となったタイヤ成型用折返しブラダーを製造するようにしたタイヤ成型用折返しブラダーの製造装置により、達成することができる。
【発明の効果】
【0009】
この発明においては、内型の周囲に成形された円筒状部材の軸方向一側部を、該内型の外側に外嵌されたインサートと前記内型とにより挟持した後、円筒状部材の軸方向他側部を折返してインサートの外側に重ね合わせ、次に、内型、インサートに外型を組み付けて、これらの内部に円筒状部材を密閉収納した後、該円筒状部材を加硫して折返しブラダーを製造するようにしたので、加硫時における円筒状部材の形状、ゲージは、内型、インサート、外型により強力に規定される。これにより、製造されたブラダーの各部における形状、ゲージを容易に規定の範囲内とすることができ、また、エッジ部におけるシャープ性も充分なものとすることができる。
【0010】
また、請求項2に記載のように構成すれば、耐久性の高いブラダーを安価に製造することができる。さらに、請求項4に記載のように構成すれば、突条によってブラダーの内面に複数本の溝を形成することができ、これにより、エア等の供給気体をブラダー全域に急速かつ確実に導くことができる。また、請求項5に記載のように構成すれば、別装置の加硫缶を用いることなく、装置自身を構成する内型、外型によって円筒状部材を迅速に加硫することができる。さらに、請求項6に記載のように構成すれば、延長部を取り外して離脱させることで、装置全体を必要に応じて容易に小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の実施形態1を示す一部破断正面図である。
【図2】内型、インサート近傍の正面断面図である。
【図3】内型、インサート、外型近傍の正面断面図である。
【図4】ブラダーの製造作業を説明する一部破断正面図である。
【図5】ブラダーの製造作業を説明する一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態1を図面に基づいて説明する。
図1において、11は外周面が円筒面である金属製の内型であり、この内型11は図示していない駆動部から駆動力を受けて水平な軸線回りに回転することができる。そして、回転中の内型11に対し図示していない供給手段から少なくとも1枚の帯状部材が供給されるが、このような帯状部材は、未加硫ゴムからなるゴムシートおよびテキスタイルからなるテキスタイルシートから構成することができる。そして、複数の帯状部材、この実施形態ではゴムシート、テキスタイルシート、ゴムシートの3枚の帯状部材が内型11の周囲に順次供給されて巻き付けられるとともに、各シートの始終端同士が接合されると、これら3枚のシートは半径方向に積層されて、内型11の全幅に亘って延在する、即ち内型11の軸方向一端から軸方向他端に至るまで延在する円筒状の円筒状部材12を成形する。
【0013】
このように帯状部材を、未加硫ゴムからなるゴムシートおよびテキスタイルからなるテキスタイルシートから構成するとともに、これらゴムシートおよびテキスタイルシートを内型11に順次巻き付け積層することで円筒状部材12を成形するようにすれば、該円筒状部材12を用いて耐久性の高いブラダーを安価に製造することができる。なお、この発明においては、ゴムシートのみを少なくとも1枚巻き付けることで円筒状部材を成形するようにしてもよい。
【0014】
ここで、前記内型11は円筒状部材12の軸方向一側部が巻き付けられる本体部15と、円筒状部材12の軸方向他側部が巻き付けられる延長部16とから構成され、前記延長部16は前記本体部15と外径が同一径でかつ同軸であり、本体部15より軸方向他側に配置されている。そして、前記延長部16は本体部15の軸方向他端に複数のボルト等により着脱可能に連結されており、この結果、該延長部16を後述のように必要に応じて本体部15から取り外し離脱させれば、装置全体を容易に小型化することができる。なお、この発明においては前記内型11を前記本体部15および延長部16を一体形成したものから構成してもよい。
【0015】
図1、2において、20は金属製の剛体からなる円筒状のインサートであり、このインサート20は周方向に離れた複数、ここでは3個の円弧状をした弧状片に等分割されている。前記インサート20は軸方向一端部にフランジ状をした厚肉の厚肉部21を有しているが、この厚肉部21の軸方向他側面を前記内型11(本体部15)の軸方向一側面に当接させながら複数のボルトにより内型11に共締めすることで、インサート20は内型11に着脱可能に締結されている。
【0016】
22は前記厚肉部21の軸方向他端から軸方向他側に向かって延びる円筒状の薄肉部であり、この薄肉部22は前記厚肉部21より薄肉で、その軸方向長は本体部15の軸方向長とほぼ同一である。また、この薄肉部22の内径は内型11(本体部15)の外径に円筒状部材12の肉厚の2倍の値を加算した値と同一値である。この結果、前述のようにインサート20の厚肉部21が内型11に締結されて薄肉部22が内型11(本体部15)の外側に外嵌されると、該薄肉部22は本体部15に重なり合っている円筒状部材12の軸方向一側部外周に密着し、本体部15と共に該円筒状部材12の軸方向一側部を半径方向外側および内側から挟持する。
【0017】
25は前記内型11の直下で床面26上に敷設された一対の平行なガイドレールであり、これらのガイドレール25は内型11の軸線に平行に延びている。27はスライドベースであり、このスライドベース27の下面には前記ガイドレール25に摺動可能に係合する複数のスライドベアリング28が取り付けられている。また、前記スライドベース27の上端には内型11と同軸で内径が該内型11の外径より大径である支持リング29が一体的に形成されており、この結果、該支持リング29が内型11の外側に遊嵌されているときには、これら内型11と支持リング29との間にいずれの周方向位置においても同一幅の間隙が形成される。
【0018】
32は半径方向に延び、その半径方向中央部が前記支持リング29に摺動可能に挿入された複数のスライダであり、これらのスライダ32は周方向に等距離離れて配置されるとともに、図示していない駆動機構から駆動力を受けて半径方向に同期移動することができる。各スライダ32の半径方向内端には吸着部材としてのバキュームカップ33が取り付けられ、これらのバキュームカップ33は図示していない真空ホースを介して真空源に接続されている。そして、各バキュームカップ33が円筒状部材12の外周に押し付けられた後、これらバキュームカップ33内が真空となると、該バキュームカップ33は円筒状部材12を外側から周方向に等距離離れた複数の位置において吸着保持する。このように各バキュームカップ33が円筒状部材12を吸着保持しているとき、スライダ32が同期して半径方向外側に移動すると、バキュームカップ33に吸着されている部位の円筒状部材12はバキュームカップ33と共に半径方向外側に移動して拡径する。
【0019】
36はスライダ32より軸方向他側の支持リング29内周に固定された複数対(スライダ32と同数対)の支持プレートであり、これら複数対の支持プレート36は支持リング29から半径方向内側に向かって延びるとともに、周方向に等距離離れて配置されている。これら対をなす支持プレート36には回転可能な本体37が支持され、これらの本体37は、図示していないモータから駆動力を受けたとき、回転軸回りにほぼ半回転する。各本体37には一対の開閉可能な把持爪38が設置され、これらの把持爪38は図示していない把持機構から駆動力を受けると、互いに接近離隔する。ここで、前述のように円筒状部材12の軸方向他端部がバキュームカップ33により拡径されているとき、該把持爪38が閉止すると、円筒状部材12の軸方向他端は把持爪38により周方向に離れた複数箇所で両側から把持される。
【0020】
その後、バキュームカップ33が円筒状部材12を吸着保持するとともに、スライダ32、バキュームカップ33が半径方向外側に同期移動すると、図示していない移動機構が作動してスライドベース27、支持リング29、本体37、把持爪38が一体的に軸方向一側に移動し、これにより、延長部16の外側に位置していた円筒状部材12の軸方向他側部は把持爪38により引っ張られながら軸方向一側に向かって折返される。このような折返しの初期に前記モータが作動して本体37が図1において時計回りにほぼ半回転するため、前述した円筒状部材12の折返し作業は円滑に行われる。
【0021】
そして、円筒状部材12の折返しが進行し、該円筒状部材12の折返し位置12aが本体部15と延長部16との境界に位置する薄肉部22の軸方向他端まで到達するとともに、把持爪38が把持している円筒状部材12の軸方向他端(折返し部12bでは軸方向一端)がインサート20の軸方向一端まで到達すると、前記把持爪38は円筒状部材12を把持から解放する。このとき、該円筒状部材12の軸方向他端部(折返し部12bでは軸方向一端部)は弾性復元力により縮径し、インサート20の半径方向外側に密着した状態で重ね合わされた前述の折返し部12bとなる。前述したスライドベース27、支持リング29、スライダ32、バキュームカップ33、本体37、把持爪38は全体として、円筒状部材12の軸方向他側部を軸方向一側に向かって折返し、インサート20の外側に該円筒状部材12の軸方向他側部を重ね合わせる折返し手段40を構成する。
【0022】
なお、この発明においては、折返し手段を、周方向に離れて複数配置されほぼ軸方向に延びるとともに、基端を中心に同期揺動可能な複数のフィンガーと、各フィンガーの先端に回転可能に支持された折返しローラと、前記フィンガーを一体的に軸方向に移動させる移動機構とから構成し、折返しローラを内型と円筒状部材との間に侵入させた後、フィンガー、折返しローラを一体的に軸方向一側に移動させることで、折返しローラにより円筒状部材の軸方向他側部を軸方向一側に向かって折返すようにしてもよい。また、この発明においては、前述した円筒状部材の軸方向他側部の折返し作業は作業者が手作業で行うようにしてもよい。
【0023】
図2、3において、43は略円筒状をした金属製の外型本体であり、この外型本体43は内径が前記円筒状部材12の折返し部12bの外径(インサート20の外径に円筒状部材12の肉厚の2倍の値を加算した値)と同径である円筒状の円筒部44と、該円筒部44の軸方向他端から半径方向内側に向かって延びる環状のフランジ部45とから構成されている。また、前記外型本体43はインサート20と同様に周方向に離れた複数、ここでは3個の円弧状をした弧状片に等分割されている。そして、この外型本体43は、フランジ部45を本体部15の軸方向他端面に当接させながら複数のボルトにより本体部15に共締めすることで、本体部15に着脱可能に組み付けられる。このように外型本体43が本体部15に組み付けられると、該外型本体43の円筒部44はインサート20の外側に外嵌されるが、このとき、該円筒部44の内周面が前記折返された円筒状部材12の軸方向他側部(折返し部12b)の外周に密着し、これにより、該円筒状部材12の軸方向他側部(折返し部12b)は外型本体43とインサート20とによって半径方向外側および内側から挟持される。
【0024】
また、前記外型本体43の半径方向外端部でその軸方向一端部および他端部にはそれぞれ軸方向外側に向かうに従い半径方向内側に向かうよう傾斜した円錐面の一部からなる傾斜面48、49が形成されている。50は外型本体43(フランジ部45)の軸方向他端面に密着している略円板状を呈する金属製の他側プレートであり、この他側プレート50の半径方向外端部でその軸方向一端面には、前記傾斜面49と面接触している円錐面の一部から構成された傾斜面51が形成されている。また、傾斜面51より半径方向外側の他側プレート50には複数の連結ロッド52の軸方向他端部が固定され、これら連結ロッド52は外型本体43の軸方向一端を越えるまで軸方向一側に向かって延びるとともに、周方向に等距離離れて配置されている。
【0025】
55は前記他側プレート50と対をなし略円板状を呈する金属製の一側プレートであり、この一側プレート55は前記インサート20および外型本体43の軸方向一端面に密着している。また、この一側プレート55の半径方向外端部でその軸方向他端面には前記傾斜面48に面接触している円錐面の一部から構成された傾斜面56が形成されている。さらに、前記傾斜面56より半径方向外側の一側プレート55には前記連結ロッド52の軸方向一端部が貫通するとともに、一側プレート55より軸方向一側に突出した連結ロッド52の突出部外周にはおねじ57が形成され、これら突出部のおねじ57にはナット58がそれぞれ螺合している。このように内型11の本体部15およびインサート20の半径方向外側に外型本体43が配置されるとともに、その軸方向他側に他側プレート50が、その軸方向一側に一側プレート55がそれぞれ配置されると、円筒状部材12およびインサート20は、前記本体部15、外型本体43、他側、一側プレート50、55により周囲から囲まれる。
【0026】
そして、前述のナット58をおねじ57に強力にねじ込んで他側、一側プレート50、55同士を接近させると、傾斜面49、51および48、56は楔作用を発揮して内型11の本体部15、インサート20、外型本体43に、円筒状部材12の加硫時に必要である強力な締め付け力を付与する。前述した外型本体43、他側、一側プレート50、55は全体として、前記内型11(本体部15)およびインサート20に組み付けられる外型61を構成し、この外型61は、内型11(本体部15)およびインサート20に組み付けられたとき、内型11(本体部15)およびインサート20と共に円筒状部材12を内部に密閉収納する。なお、この発明においては、外型を1個または2個の成形品から構成してもよい。
【0027】
前記内型11の本体部15の内部には環状の内側加硫室63が形成され、この内側加硫室63には給排口64を通じて図示していない媒体源が接続されている。そして、前記円筒状部材12に対し加硫を施す場合には、前記媒体源から給排口64を通じて内側加硫室63内に高温、高圧の加硫媒体を供給する。一方、前記外型61の外型本体43の内部にも環状の外側加硫室65が形成され、この外側加硫室65には給排口66を通じて前記媒体源が接続されている。そして、前記円筒状部材12に対し加硫を施す場合には、前記媒体源から給排口66を通じて外側加硫室65内に高温、高圧の加硫媒体を供給する。これにより、円筒状部材12は加硫されて折返し用ブラダーが製造されるが、このようにして製造された折返しブラダーは、成形ドラムに装着されるとともに、内部にエア等の供給気体が供給されて膨張することで、タイヤ構成部材、例えばビードより軸方向外側のカーカス層等をビード回りに折返す。
【0028】
前述のような加硫媒体が供給される加硫室は、この実施形態のように内型11、外型61の双方に形成することが、加硫を迅速に行うためには好ましいが、内型11または外型61のいずれか一方に形成してもよく、要するに、内型11または外型61の少なくともいずれか一方の内部に形成すればよい。このように内型または外型の少なくともいずれか一方の内部に加硫室を形成し、円筒状部材を加硫する際、前記加硫室に加硫媒体を供給するようにすれば、別装置の加硫缶を用いることなく、装置自身を構成する内型、外型によって円筒状部材を迅速に加硫することができる。なお、この発明においては、内型、外型内のいずれにも加硫室を形成せず、内型、外型、インサート、円筒状部材を加硫缶に収納して加硫するようにしてもよい。
【0029】
ここで、この実施形態においては、前記インサート20の内周面または外周面の少なくともいずれか一方、この実施形態では内周面および外周面の双方に、軸方向に連続して延びる複数本の細幅で高さの低い突条を形成している。そして、前述の突条は、軸方向に平行に延びていてもよく、あるいは、軸方向に対して同一方向に傾斜していてもよく、さらには、軸方向に対して逆方向に傾斜することにより複数箇所で交差していてよい。なお、前記突条が軸方向に延びているとは、周方向ではなく、どちらかといれば軸方向に延びているという意味で、軸方向に平行な場合は勿論、軸方向に対して45度未満の角度で傾斜している場合を含む。
【0030】
また、前述した突条は円筒状部材12に接触しているインサート20の内、外周面の全域に亘って形成することが好ましく、さらに、直線状に延びていることが好ましいが、多少屈曲したりジグザグ状に折れ曲がっていてもよい。このようにインサート20の内、外周面に軸方向に延びる複数本の突条を形成すると、前述のように円筒状部材12に対し加硫が行われるとき、該突条が円筒状部材12に押し込まれてブラダーの内面に複数本の溝を形成する。そして、このようにブラダーの内面に溝が形成されると、タイヤ構成部材の折返し作業を行う際、エア等の供給気体は溝を通じてブラダーの全域に急速かつ確実に導かれ、該ブラダーを均一かつ迅速に膨張させることができる。
【0031】
なお、68は本体部15の軸方向一端面でその半径方向外端部に形成された環状溝に予め収納されているリング状のゴム片であり、このゴム片68は前記加硫時に円筒状部材12の軸方向一端に加硫接着され、折返し用ブラダーが成形ドラムに装着されたとき、抜け止めとして機能する。また、69は一側プレート55の軸方向他端面でその半径方向中央部に形成された環状溝に予め収納されているリング状のゴム片であり、このゴム片69は前記加硫時に円筒状部材12の軸方向他端(折返し部12bでは軸方向一端)に加硫接着され、折返し用ブラダーが成形ドラムに装着されたとき、抜け止めとして機能する。
【0032】
次に、前記実施形態1の作用について説明する。
まず、軸線回りに回転している内型11の周囲に複数の帯状部材、ここではゴムシート、テキスタイルシート、ゴムシートと3枚の帯状部材が順次供給されて巻き付けられるとともに、各シートの始終端同士が接合され、これら3枚のシートが積層されることで構成された円筒状の円筒状部材12が内型11の周囲に全幅に亘って成形される。このとき、支持リング29は円筒状部材12の成形作業を阻害することがないよう内型11から軸方向他側に若干離れた待機位置で待機している。
【0033】
次に、周方向に3分割されている円筒状のインサート20を内型11(本体部15)の外側に外嵌させるとともに、該インサート20の厚肉部21を内型11の軸方向一端面に当接させ、この状態で複数のボルトにより厚肉部21と内型11とを共締めしてインサート20を内型11(本体部15)に締結する。このとき、厚肉部21から軸方向他側に向かって延びる薄肉部22は本体部15に重なり合っている円筒状部材12の軸方向一側部の外周に密着し、この結果、インサート20(薄肉部22)は内型11(本体部15)と共に円筒状部材12の軸方向一側部を半径方向外側および内側から挟持する。
【0034】
次に、移動機構によりスライドベース27、支持リング29をガイドレール25に沿って軸方向一側に、把持爪38の軸方向位置と円筒状部材12の軸方向他端の軸方向位置とが合致するまで移動させる。次に、駆動機構によりスライダ32を半径方向内側に、バキュームカップ33が円筒状部材12の外周に押し付けられるまで同期移動させる。その後、真空源によりバキュームカップ33内を真空にすると、バキュームカップ33は円筒状部材12を外側から周方向に離れた複数の位置において吸着保持する。次に、駆動機構によりスライダ32を半径方向外側に同期移動させるが、これらスライダ32の移動によりバキュームカップ33に吸着されている部位の円筒状部材12は半径方向外側に移動し拡径する。
【0035】
そして、前記スライダ32の移動は、バキュームカップ33に吸着されている円筒状部材12の軸方向他端が把持爪38間に侵入したとき、停止する。次に、把持機構から付与された駆動力により把持爪38が互いに接近すると、これら把持爪38により円筒状部材12の軸方向他端が周方向に離れた複数箇所で両側から把持される。このときの状態が図4に示されている。次に、バキュームカップ33と真空源との接続を遮断して、円筒状部材12の軸方向他端部をバキュームカップ33による吸着から解放するとともに、駆動機構によりスライダ32、バキュームカップ33を初期位置まで半径方向外側に同期移動させる。
【0036】
次に、移動機構により支持リング29をガイドレール25に沿って軸方向一側に移動させるが、このとき、モータを作動して本体37を前記支持リング29の移動に合わせながら、図1において時計回りにほぼ半回転させる。この結果、把持爪38に把持されている円筒状部材12の軸方向他端部は軸方向一側に向かって部分的に折返される。そして、本体37がほぼ半回転しその回転が停止した後も、支持リング29は移動機構の作動によりさらに軸方向一側に移動するため、円筒状部材12の折返し部12bの軸方向長が徐々に増大する一方、折返し位置12aも軸方向一側に徐々に移動する。このとき、把持爪38は進行方向後側において円筒状部材12を把持しているので、前記円筒状部材12の折返し作業は円滑となる。
【0037】
このような支持リング29の移動により、円筒状部材12の軸方向他側部の軸方向一側に向かっての折返しが進行し、図5に示すように、円筒状部材12の折返し位置12aが薄肉部22の軸方向他端まで到達する一方、把持爪38が把持している円筒状部材12の軸方向他端(折返し部12bでは軸方向一端)がインサート20の軸方向一端まで到達すると、支持リング29の移動が停止するとともに、前記把持爪38は円筒状部材12を把持から解放する。この結果、円筒状部材12の軸方向他側部、即ち、折返し部12bは弾性復元力により縮径してインサート20の半径方向外側に密着した状態で重ね合わされる。その後、移動機構により支持リング29を待機位置まで軸方向他側に移動させる。
【0038】
このように円筒状部材12の軸方向他側部全体が軸方向一側に折返されたとき、延長部16を本体部15から取り外して離脱させる。その後、周方向に3分割されている外型本体43をインサート20の外側に外嵌するとともに、該外型本体43のフランジ部45を本体部15の軸方向他端面に当接させ、この状態で複数のボルトによりフランジ部45と本体部15とを共締して、外型本体43を内型11(本体部15)に組み付ける。次に、他側プレート50を外型本体43(フランジ部45)の軸方向他端面に密着させる一方、一側プレート55を前記インサート20および外型本体43の軸方向一端面に密着させ、その後、一側プレート55から突出した連結ロッド52の突出部にナット58をねじ込んで、内型11(本体部15)、インサート20に外型本体43、他側、一側プレート50、55からなる外型61を組み付ける。このようにして、円筒状部材12、インサート20を内型11(本体部15)と共に周囲から囲む外型61を前記内型11およびインサート20に組み付け、内型11、インサート20、外型61の内部に円筒状部材12を密閉収納する。
【0039】
このとき、ナット58によって連結ロッド52に付与された引張力により、傾斜面49、51および48、56が楔作用を発揮して内型11(本体部15)、インサート20、外型本体43に加硫時に必要充分な締め付け力を付与する。この状態で媒体源から給排口64を通じて内型11(本体部15)内の内側加硫室63に高温、高圧の加硫媒体を供給するとともに、給排口66を通じて外型61(外型本体43)内の外側加硫室65に高温、高圧の加硫媒体を供給し、外型61、内型11およびインサート20の内部に密閉収納された円筒状部材12を加硫する。このとき、延長部16は本体部15から取り外されているので、延長部16を通じての余分な放熱はなく、省エネを図ることができる。そして、前述のような加硫により、軸方向中央部で折返されることで、間に円筒状空間を形成しながら二重に重なり合うとともに、軸方向一端部において開口した折返し用ブラダーが製造される。なお、この発明においては、ブラダーの軸方向一端部の開口形状は、装着される成形ドラムに合わせて種々の形状とすることができる。
【0040】
このように内型11の周囲に成形された円筒状部材12の軸方向一側部を、該内型11(本体部15)の外側に外嵌されたインサート20と前記内型11とにより挟持した後、該円筒状部材12の軸方向他側部を折返してインサート20の外側に重ね合わせ、次に、内型11、インサート20に外型61を組み付けて、これらの内部に円筒状部材12を密閉収納した後、該円筒状部材12を加硫してタイヤ成型用折返しブラダーを製造するようにしたので、加硫時における円筒状部材12の形状、ゲージは、内型11、インサート20、外型61により強力に規定される。これにより、製造されたブラダーの各部における形状、ゲージを容易に規定の範囲内とすることができ、また、エッジ部におけるシャープ性も充分なものとすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、タイヤを成型する際に使用するタイヤ成型用折返しブラダーを製造する産業分野に適用できる。
【符号の説明】
【0042】
11…内型 12…円筒状部材
15…本体部 16…延長部
20…インサート 61…外型
63、65…加硫室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内型の周囲に帯状部材を巻き付けて円筒状部材を成形する工程と、前記内型の外側に円筒状の金属製インサートを外嵌し、該インサートと内型とにより円筒状部材の軸方向一側部を挟持する工程と、前記円筒状部材の軸方向他側部を軸方向一側に折返してインサートの外側に重ね合わせる工程と、外型を前記内型およびインサートに組み付けることで、内型、インサート、外型の内部に円筒状部材を密閉収納する工程と、前記密閉収納された円筒状部材を加硫し、折り返されて二重となったタイヤ成型用折返しブラダーを製造する工程とを備えたことを特徴とするタイヤ成型用折返しブラダーの製造方法。
【請求項2】
前記帯状部材を、未加硫ゴムからなるゴムシートおよびテキスタイルからなるテキスタイルシートから構成するとともに、これらゴムシートおよびテキスタイルシートを内型に順次巻き付け積層することで円筒状部材を成形するようにした請求項1記載のタイヤ成型用折返しブラダーの製造方法。
【請求項3】
帯状部材を周囲に巻き付けることで円筒状部材を成形することができる内型と、前記内型の外側に外嵌され、前記内型と共に円筒状部材の軸方向一側部を挟持する円筒状の金属製インサートと、前記円筒状部材の軸方向他側部が軸方向一側に折返されてインサートの外側に重ね合わされた後、前記内型およびインサートに組み付けられることで、内型、インサートと共に円筒状部材を内部に密閉収納する外型とを備え、前記密閉収納された円筒状部材を加硫することにより、折り返されて二重となったタイヤ成型用折返しブラダーを製造するようにしたことを特徴とするタイヤ成型用折返しブラダーの製造装置。
【請求項4】
前記インサートの内周面または外周面の少なくともいずれか一方に、軸方向に延びる複数本の突条を形成した請求項3記載のタイヤ成型用折返しブラダーの製造装置。
【請求項5】
前記内型または外型の少なくともいずれか一方の内部に加硫媒体が供給される加硫室を形成し、前記円筒状部材を加硫する際、前記加硫室に加硫媒体を供給するようにした請求項3または4記載のタイヤ成型用折返しブラダーの製造装置。
【請求項6】
前記内型を、帯状部材の軸方向一側部が巻き付けられる本体部と、前記本体部の軸方向他端に着脱可能に連結され、帯状部材の軸方向他側部が巻き付けられる延長部とから構成し、円筒状部材の軸方向他側部が軸方向一側に折り返されたとき、前記延長部を本体部から取り外して離脱させるようにした請求項3〜5のいずれかに記載のタイヤ成型用折返しブラダーの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−86364(P2012−86364A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232200(P2010−232200)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】