説明

タイヤ製造方法及びタイヤ製造用金型

【課題】熱可塑性樹脂を含んで構成されたタイヤ骨格部材にトレッドゴムを接着する際の、タイヤ骨格部材への熱供給に伴う影響を少なくできるタイヤ製造方法と、このタイヤ製造方法に適用可能なタイヤ製造用金型を得る。
【解決手段】タイヤ骨格部材14に対し、クラウン部26よりも外周側にトレッドゴム16を配置する。外金型部材56及び内金型部材60、62に熱を供給すると、トレッドゴム16がクラウン部26に接着される。内金型部材60、62からの供給熱量は、外金型部材56からの供給熱量よりも少なくされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ製造方法及びタイヤ製造用金型に関し、さらに詳しくは、溶融した熱可塑性材料を金型内に注入してタイヤ骨格部材を成形するタイヤ製造方法と、このようなタイヤ製造方法に適用可能なタイヤ製造用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴム、有機繊維材料、及びスチール部材で形成されているタイヤが知られている。近年、軽量化やリサイクルのし易さ等の観点から、熱可塑性エラストマー(TPE)や熱可塑性樹脂等の熱可塑性材料をタイヤ材料として用いることが求められている。たとえば特許文献1には、高分子材料からなるタイヤ本体と、加硫金型内で加硫によってタイヤ本体と一体化したトレッド本体とを備えた空気入りタイヤが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−257606号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この特許文献1にも記載されているようにタイヤ本体(タイヤ骨格部材)は、熱可塑性を有する材料で構成される。したがって、このような熱可塑性を有する材料への熱供給は、タイヤ骨格部材の収縮や変形等といった影響を考慮すると、少なくすることが望まれる。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤ骨格部材にトレッドゴムを接着する際の、タイヤ骨格部材への熱供給に伴う影響を少なくできるタイヤ製造方法と、このタイヤ製造方法に適用可能なタイヤ製造用金型を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤ骨格部材に、タイヤのトレッドを構成するトレッドゴムをタイヤ外周側から配置し、前記トレッドゴムよりもさらにタイヤ外周側に外挟持部材を配置すると共に、前記トレッドゴム及び前記タイヤ骨格部材を挟んで外挟持部材と反対側からトレッドゴム及びタイヤ骨格部材を内挟持部材で挟持する挟持工程と、少なくとも前記タイヤ骨格部材のうち前記トレッドゴムが配置されていないトレッドゴム非配置部分への前記内挟持部材からの供給熱量を、前記外挟持部材から前記トレッドゴムへの供給熱量よりも少なくして前記トレッドゴムを加熱しタイヤ骨格部材に接着する加熱工程と、を有する。
【0007】
このタイヤ製造方法では、まず、挟持工程において、タイヤのトレッドを構成するトレッドゴムを、熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤ骨格部材にタイヤ外周側から配置する。そして、トレッドゴムよりもさらにタイヤ外周側に外挟持部材を配置する。さらに、トレッドゴム及びタイヤ骨格部材を挟んで外挟持部材と反対側において、トレッドゴム及びタイヤ骨格部材を内挟持部材で(外挟持部材との間に)挟持する。
【0008】
次に、加熱工程により、トレッドゴムを加熱しタイヤ骨格部材に接着する。このとき、少なくともトレッドゴム非配置部分への内挟持部材からの供給熱量は、外挟持部材からトレッドゴムへの供給熱量よりも少なくされる。したがって、熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤ骨格部材において、少なくともトレッドゴム非配置部分では、熱供給に伴う影響が少なくなる。
【0009】
請求項2に記載の発明では、熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤ骨格部材に、タイヤのトレッドを構成するトレッドゴムをタイヤ外周側から加硫完了前の状態で配置し、前記トレッドゴムよりもさらにタイヤ外周側に外挟持部材を配置すると共に、前記トレッドゴム及び前記タイヤ骨格部材を挟んで外挟持部材と反対側からトレッドゴム及びタイヤ骨格部材を内挟持部材で挟持する挟持工程と、少なくとも前記タイヤ骨格部材のうち前記トレッドゴムが配置されていないトレッドゴム非配置部分への前記内挟持部材からの供給熱量を、前記外挟持部材から前記トレッドゴムへの供給熱量よりも少なくして前記トレッドゴムを加熱しタイヤ骨格部材に加硫接着する加硫接着工程と、を有する。
【0010】
このタイヤ製造方法では、まず、挟持工程において、タイヤのトレッドを構成するトレッドゴムを、熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤ骨格部材にタイヤ外周側から配置する。この段階では、トレッドゴムは加硫完了前(未加硫あるいは半加硫)とされており、加硫によってタイヤ骨格部材に接着する(加硫接着する)ことが可能な状態である。なお、半加硫の状態とは、未加硫の状態よりは加硫度が高いが、最終製品として必要とされる加硫度には至っていない状態をいう。そして、トレッドゴムよりもさらにタイヤ外周側に外挟持部材を配置する。さらに、トレッドゴム及びタイヤ骨格部材を挟んで外挟持部材と反対側において、トレッドゴム及びタイヤ骨格部材を内挟持部材で(外挟持部材との間に)挟持する。
【0011】
次に、加硫接着工程により、トレッドゴムを加熱しタイヤ骨格部材に加硫接着する。このとき、少なくともトレッドゴム非配置部分への内挟持部材からの供給熱量は、外挟持部材からトレッドゴムへの供給熱量よりも少なくされる。したがって、熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤ骨格部材において、少なくともトレッドゴム非配置部分では、熱供給に伴う影響が少なくなる。
【0012】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記トレッドゴム非配置部分には非接触とされた前記内挟持部材を用いて前記加熱工程を行う。
【0013】
このように、トレッドゴム非配置部分には非接触とされた内挟持部材を用いることで、トレッドゴム非配置部分への内挟持部材からの熱供給を抑制することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明では、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記加熱工程において、前記内挟持部材の温度を前記外挟持部材の温度よりも低くする。
【0015】
このように、内挟持部材の温度を前記外挟持部材の温度よりも低くすることで、トレッドゴム非配置部分に対しても、内挟持部材からの熱供給を抑制することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、前記加熱工程において、前記内挟持部材への供給熱量を前記外挟持部材の供給熱量よりも少なくする。
【0017】
このように、内挟持部材への供給熱量を前記外挟持部材への供給熱量よりも少なくすることで、トレッドゴム非配置部分に対しても、内挟持部材からの熱供給を抑制することができる。
【0018】
さらに、請求項5に記載の発明において、請求項6に記載のように、内挟持部材への熱供給を遮断するようにすれば、トレッドゴム非配置部分に対する内挟持部材からの熱供給を無くすことができる。
【0019】
請求項7に記載の発明では、前記タイヤ骨格部材と前記トレッドゴムの間にこれらを接着するための接着剤を配置した状態で、前記挟持工程及び前記加熱工程を行う。
【0020】
タイヤ骨格部材とトレッドゴムの間に接着剤を配置することで、これらを強固に接着することが可能になる。
【0021】
請求項8に記載の発明では、請求項3に記載のタイヤ製造方法に用いられるタイヤ製造用金型であって、前記トレッドゴムよりもタイヤ外周側に配置される外挟持部材と、前記トレッドゴム及び前記タイヤ骨格部材を挟んで前記外挟持部材と反対側からトレッドゴム及びタイヤ骨格部材を挟持し前記トレッドゴム非配置部分には非接触とされた内挟持部材と、を有する。
【0022】
このタイヤ製造用金型では、内挟持部材が、トレッドゴム非配置部分には非接触とされている。したがって、外挟持部材と内挟持部材とでトレッドゴム及びタイヤ骨格部材を挟持し加熱(加硫接着を含む)を行うときに、トレッドゴム非配置部分への熱供給を抑制できる。
【0023】
なお、本発明における「タイヤ製造用金型」は、金属製とされているものに限定されず、他の材料製とされていてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明は上記構成としたので、熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤ骨格部材にトレッドゴムを接着する際の、タイヤ骨格部材への熱供給に伴う影響を少なくできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のタイヤ製造方法によって製造されるタイヤを示す概略構成図である。
【図2】本発明のタイヤ製造方法によって製造されるタイヤのビード部の近傍をリムへの取付状態で示す断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型をタイヤ骨格部材及びトレッドゴムと共にタイヤ径方向の断面にて示す断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型をタイヤ骨格部材及びトレッドゴムと共に示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型をタイヤ骨格部材及びトレッドゴムと共にタイヤ径方向の断面にて示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型をタイヤ骨格部材及びトレッドゴムと共に示す説明図である。
【図7】本発明の第3実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型をタイヤ骨格部材及びトレッドゴムと共にタイヤ径方向の断面にて示す断面図である。
【図8】本発明の第3実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型をタイヤ骨格部材及びトレッドゴムと共に示す説明図である。
【図9】本発明の第4実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型をタイヤ骨格部材及びトレッドゴムと共にタイヤ径方向の断面にて示す断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型をタイヤ骨格部材及びトレッドゴムと共に示す説明図である。
【図11】本発明のタイヤ製造方法によって製造される図1とは異なる構造のタイヤを示す概略断面図である。
【図12】図11に示すタイヤをタイヤ半体で分割した状態で示す断面図である。
【図13】本発明のタイヤ製造方法によって製造される図1及び図12とは異なる構造のタイヤを示す概略断面図である。
【図14】図13に示すタイヤをタイヤ半体で分割した状態で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図3には、本発明の第1実施形態のタイヤ製造用金型52が示されている。また、図4には、このタイヤ製造用金型52を用いたタイヤ製造方法の一部工程が概略的に示されている。本実施形態のタイヤ製造方法で製造されるタイヤ12は、図1及び図2に示すように、ビードコア20が埋設されてリム18に接触されるタイヤビード部22から、タイヤ径方向外側に延びるタイヤサイド部24を経て、タイヤサイド部24どうしを連結するタイヤセンター(クラウン部26)を備え、これらが熱可塑性材料で構成されたタイヤ骨格部材14を備えている。そして、このタイヤ骨格部材14のタイヤ外周面側の位置、すなわちクラウン部26の外側にトレッドゴム16が接着されることで、車両のリム18に装着されるタイヤ12となる。
【0027】
なお、タイヤのトレッドとして求められる作用を奏することが可能であれば、トレッドゴム16に代えて樹脂製のトレッド部材を用いてもよいが、本発明の第1実施形態及び第2実施形態では、後述するように、製造段階では未加硫状態(または半加硫状態)のトレッドゴム16を用い、これを加硫接着工程(加熱工程)において、タイヤ骨格部材14のクラウン部26に加硫接着する構成としており、第1実施形態及び第2実施形態に係るタイヤ製造方法は、このように、タイヤ骨格部材14にトレッドゴム16を加硫接着してタイヤ12を製造する場合に適用される。すなわち、タイヤ骨格部材14のうち、トレッドゴム16が配置されて接触する部分(実質的にクラウン部26)が、トレッドゴム配置部分14Sとなり、トレッドゴム16が配置されていない部分(クラウン部26以外の部分)が、トレッドゴム非配置部分14Nとなっている。換言すれば、トレッドゴム16が配置されている部分においてタイヤ骨格部材14に法線を引いたとき、この法線がタイヤ骨格部材14を貫通する部分(タイヤ骨格部材14の外側から内側に至る部分)がトレッドゴム配置部分14Sとなる。
【0028】
ここで、本実施形態のタイヤ骨格部材14は、単一の熱可塑性材料で形成されているが、本発明はこの構成に限定されず、従来一般のゴム製の空気入りタイヤと同様に、タイヤ骨格部材14の各部位毎(タイヤサイド部24、クラウン部26、タイヤビード部22など)に異なる特徴を有する熱可塑性材料を用いてもよい。
【0029】
熱可塑性材料としては、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)等を用いることができるが、走行時に必要とされる弾性と製造時の成形性等を考慮すると熱可塑性エラストマーを用いることが好ましい。
【0030】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、JIS K6418に規定されるアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、エステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、熱可塑性ゴム架橋体(TPV)、若しくはその他の熱可塑性エラストマー(TPZ)等が挙げられ、特に、一部ゴム系の樹脂が混錬されているTPVが好ましい。
【0031】
また、熱可塑性樹脂としては、例えば、ウレタン樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0032】
これらの熱可塑性材料としては、たとえば、ISO75−2又はASTM D648に規定される荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78℃以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張降伏伸びが10%以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸び(JIS K7113)が50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130℃以上であるものが用いられる。
【0033】
本実施形態のタイヤビード部22には、従来一般の空気入りタイヤと同様の、スチールコードからなる円環状のビードコア20が埋設されている。しかし、本発明はこの構成に限定されず、タイヤビード部22の剛性が確保され、リムとの嵌合に問題なければ、ビードコア20は省略してもよい。なお、ビードコア20は、スチールコード等の金属製のものに限定されず、有機繊維を単独で用いたものや、有機繊維が樹脂被覆されたもの(有機繊維コード)、あるいは、硬質樹脂で成形された樹脂コードであってもよい。
【0034】
また、図2に示すように、本実施形態では、タイヤビード部22のリム18との接触部分、少なくともリム18のリムフランジ18Fと接触する部分に、タイヤ骨格部材14を形成する熱可塑性材料よりもシール性に優れた材料、例えば、ゴムあるいは樹脂からなる円環状のシール層28が形成されている。このシール層28はビードシート30と接触する部分にも形成されていてもよい。
【0035】
シール層28を形成するゴムとしては、従来一般のゴム製の空気入りタイヤのビード部外面に用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、熱可塑性材料のみでリム18との間のシール性が確保できれば、ゴムのシール層28を省略してもよく、また、タイヤ骨格部材14を形成する熱可塑性材料よりもシール性に優れる他の種類の熱可塑性材料を用いてもよい。
【0036】
図1に示すように、クラウン部26には、タイヤ骨格部材14を形成する熱可塑性材料よりも剛性が高い補強コード34が、タイヤ骨格部材14の軸方向に沿った断面視で、少なくとも一部が埋設された状態で螺旋状に巻回されて補強コード層32が形成されている。また、補強コード34は、埋設された部分が熱可塑性材料と密着した状態となっている。この補強コード34としては、金属繊維や有機繊維等のモノフィラメント(単線)、又はこれらの繊維を撚ったマルチフィラメント(撚り線)などを用いるとよい。なお、本実施形態では、補強コード34として、スチール繊維を撚ったスチールコードを用いている。なお、補強コード層32は、補強コード34を螺旋状に巻回して形成することが製造上容易であるが、タイヤ幅方向で補強コード34を不連続としても良い。さらには、たとえばタイヤビード部22やタイヤサイド部24にも、補強材(高分子材料や金属製の繊維、コード、不織布、織布等)を埋設配置し、この補強材でタイヤ骨格部材14を補強しても良い。
【0037】
クラウン部26のタイヤ径方向外周側には、タイヤ骨格部材14を形成している熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れた材料、例えばゴムからなるトレッドゴム16が配置されている。このトレッドゴム16に用いるゴムは、従来のゴム製の空気入りタイヤに用いられているゴムと同種のゴムを用いることが好ましい。なお、トレッドゴム16の代わりに、タイヤ骨格部材14を形成する熱可塑性材料よりも耐摩耗性に優れる他の種類の熱可塑性材料で形成したトレッドを用いてもよい。また、トレッドゴム16には、従来のゴム製の空気入りタイヤと同様に、路面との接地面に複数の溝からなるトレッドパターンが形成されている。
【0038】
図3及び図4に示すように、本発明のタイヤ製造方法では、タイヤ製造用外金型52Sと、タイヤ製造用内金型52Uとが用意され、これらタイヤ製造用外金型52Sとタイヤ製造用内金型52Uとで、本発明のタイヤ製造用金型52が構成されている。
【0039】
タイヤ製造用外金型52Sは、図4からも分かるように、複数(本実施形態では合計で8つ)の外金型部材56を備えている。図3からも分かるように、上記した未加硫状態のトレッドゴム16がタイヤ骨格部材14のクラウン部26に配置された状態で、タイヤ製造用外金型52S(外金型部材56)は全体として環状となり、タイヤ外周側からトレッドゴム16を隙間無く覆うことができるようになっている。
【0040】
図4に示すように、それぞれの外金型部材56は、押圧機構58によって、タイヤ内周側に押圧及び押圧解除される。押圧時には、タイヤ製造用外金型52Sが全体として、タイヤ内周側へとトレッドゴム16を押圧する。また、押圧解除時には、トレッドゴム16に対するタイヤ内周側への押圧が解除され、外金型部材56をトレッドゴム16から離間させることができるようになる。なお、この押圧機構58は、他の公知の押圧手段等に置き換えることも可能である。
【0041】
また、それぞれの外金型部材56は、図示しない熱源から、トレッドゴム16をタイヤ骨格部材14に加硫接着させるために十分な熱量を供給される。
【0042】
図3に示すように、外金型部材56のそれぞれは、タイヤ骨格部材14のクラウン部26に配置された未加硫状態のトレッドゴム16を、タイヤ幅方向で全体に渡って接触し覆うことが可能な幅を有する形状とされている。また、外金型部材56のそれぞれにおける、トレッドゴム16との接触面には、所定のトレッドパターンを形成するためのリブ56Tが形成されている。
【0043】
これに対し、タイヤ製造用内金型52Uは、図4から分かるように、タイヤ骨格部材14のクラウン部26よりもタイヤ内周側で、周方向に交互に配置された複数ずつ(本実施形態では4つずつ)の内金型部材60、62を有している。これらのうち、4つの内金型部材60は、タイヤ内周側からタイヤ外周側に向かって先細り形状となる略台形状に形成されており、側面60Sがテーパー状とされている。そして、これら内金型部材60の間にもう一方の内金型部材62が配置されており、内金型部材60の側面60Sが内金型部材62の側面62Sに面接触している。この状態で、タイヤ製造用内金型52U(内金型部材60、62)は全体として環状となり、タイヤ内周側からクラウン部26を隙間無く覆うことができるようになっている。
【0044】
内金型部材60は、さらにタイヤ内周側で移動機構64が移動することで、タイヤ外周側の内面形状を決める位置に支持されるようになっている。この時には、内金型部材60の側面60Sが内金型部材62の側面62Sを支持するので、タイヤ製造用内金型52Uが全体として、クラウン部26とトレッドゴム16とをタイヤ製造用外金型52Sとの間で挟持する。また、押圧解除時には、外金型部材56からトレッドゴム16に対するタイヤ内周側への押圧が解除されるので、内金型部材60、62をタイヤ骨格部材14から抜くことができる。
【0045】
図3に示すように、内金型部材60、62のそれぞれは、クラウン部26にタイヤ内周側から接触する接触面66を有している。換言すれば、内金型部材60、62は接触面66によって、トレッドゴム配置部分14Sには接触している。しかしながら、この接触面66はタイヤ幅方向、すなわちタイヤサイド部24に向かっては延在されておらず、タイヤ製造用内金型52U(内金型部材60、62)は、トレッドゴム非配置部分14Nではタイヤ骨格部材14に対し非接触となっている。
【0046】
また、それぞれの内金型部材60、62も、図示しない熱源から熱を供給されるようになっているが、この熱量は、外金型部材56への熱源からの供給熱量よりも少なくなるように設定されている。特に本実施形態では、内金型部材60、62に、スチームガスや油などの熱媒を流す流路が形成されており、この流路は、未加硫のトレッドゴム16をクラウン部26に加硫接着させるために必要な部位のみを加熱できるように、所定の位置及び形状とされている。
【0047】
次に、本実施形態のタイヤ製造用金型52を用いてタイヤ12を製造するタイヤ製造方法を説明する。
【0048】
図4に示すように、所定形状(図4では環状の断面が現れている)に形成されたタイヤ骨格部材14に対し、タイヤ外周側、すなわち、クラウン部26よりも外周側に、未加硫状態のトレッドゴム16を配置する。トレッドゴム16としては、帯状に形成されたものをタイヤ骨格部材14のクラウン部26に接触させつつ巻き付けて所定位置で切断し、クラウン部26を取り囲む環状(切断部分は適宜接合する)としてもよいし、あらかじめ環状に形成されたトレッドゴム16をわずかに拡径した状態でクラウン部26の外側に配置し、拡径解除によりクラウン部26に接触させてもよい。
【0049】
そして、トレッドゴム16よりもタイヤ周方向外側からはタイヤ製造用外金型52S(外金型部材56)をトレッドゴム16に接触させ、タイヤ骨格部材14のクラウン部26よりもタイヤ内周側からは、タイヤ製造用内金型52U(内金型部材60、62)を接触させる。
【0050】
この状態で、押圧機構58を駆動して、トレッドゴム16をタイヤ外周側から外金型部材56でタイヤ内周側に押圧すると共に、移動機構64により、クラウン部26をタイヤ内周側から内金型部材60、62でタイヤ外周側へ支持する。すなわち、トレッドゴム16とタイヤ骨格部材14とを、タイヤ製造用外金型52Sとタイヤ製造用内金型52Uとで挟持する(挟持工程)。このとき、図3から分かるように、タイヤ製造用内金型52Uは、トレッドゴム非配置部分14Nと非接触となっている(タイヤ製造用外金型52Sも、トレッドゴム非配置部分14Nと非接触となっている)。
【0051】
ここで、図示しない熱源から外金型部材56及び内金型部材60、62に熱を供給する(加熱工程、加硫接着工程)と、未加硫のトレッドゴム16がクラウン部26に加硫接着されると共に、トレッドゴム16に、外金型部材56のリブ56Tによって所定のトレッドパターンが形成される。
【0052】
このとき、内金型部材60、62は、トレッドゴム配置部分14Sには接触面66により接触しているが、トレッドゴム非配置部分14Nには非接触となっている。すなわち、トレッドゴム16をクラウン部26に加硫接着させるために必要な部位でのみタイヤ骨格部材14に熱供給を行い、これ以外の部位ではタイヤ骨格部材14に熱供給を行わない。本実施形態のタイヤ骨格部材は、上記したように、熱可塑性材料で構成されているため、所定以上の熱供給によって熱収縮や溶融により変形するおそれがある。しかし、本実施形態では、タイヤ製造用内金型52Uからトレッドゴム非配置部分14Nへの熱供給が行われないので、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制できる。
【0053】
しかも、本実施形態では、熱源からの内金型部材60、62への供給熱量を、外金型部材56への供給熱量よりも少なくしている。したがって、内金型部材60、62への供給熱量を、外金型部材56への供給熱量と同等とした場合と比較して、タイヤ骨格部材14への供給熱量が少なくなる。すなわち、これによっても、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制できる。
【0054】
このようにして、トレッドゴム16がタイヤ骨格部材14のクラウン部26にタイヤ外周側から加硫接着されてタイヤ12が製造されると、押圧機構58による外金型部材56の押圧と移動機構64による内金型部材60、62の支持を解除して、外金型部材56をトレッドゴム16から、内金型部材60、62をタイヤ骨格部材14からそれぞれ離間させ、タイヤ12を取り出す。
【0055】
上記説明から分かるように、本実施形態のタイヤ製造方法では、内挟持部材であるタイヤ製造用内金型52Uを、トレッドゴム非配置部分14Nには非接触とする構成と、内金型部材60、62への供給熱量を、外金型部材56への供給熱量よりも少なくする構成とを併用して、タイヤ骨格部材14への供給熱量を抑制している。要するに、内挟持部材からタイヤ骨格部材14への供給熱量を、外挟持部材からタイヤ骨格部材14への供給熱量よりも少なくすれば、熱可塑性樹脂を含んで構成されたタイヤ骨格部材14に対し、過大な熱供給に起因する変形を抑制することが可能である。たとえば、熱源からの内金型部材60、62への供給熱量を、外金型部材56への供給熱量と等しくした場合でも、タイヤ製造用内金型52Uはトレッドゴム非配置部分14Nには非接触となっているので、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制する効果がある。
【0056】
図5及び図6には、本発明の第2実施形態のタイヤ製造方法の一部工程が示されている。第2実施形態のタイヤ製造方法では、第1実施形態のタイヤ製造方法と同様のタイヤ製造用外金型52Sを用いているが、タイヤ製造用内金型52Uに代えて、ブラダー82が用いられている。
【0057】
ブラダー82は、内部に空気等の気体が導入されることで、図6に示すように、全体として環状に膨らむように形成されている。そして、このように環状に膨らむと、図5にも示すように、径方向の断面において、タイヤ骨格部材14の内側(タイヤ内周側)に入り込んで、クラウン部26及びタイヤサイド部24に接触するようになっている。第2実施形態において、ブラダー82の膨張時、すなわち挟持工程では、タイヤ外周側へとクラウン部26を押圧し、クラウン部26とトレッドゴム16とをタイヤ製造用外金型52Sとの間で挟持する。また、ブラダー82の収縮時には、クラウン部26に対するタイヤ外周側への押圧が解除され、ブラダー82をタイヤ骨格部材14の内側から抜き出すことができる。
【0058】
ブラダー82を膨張させるために、ブラダー82の内部には図示しない温風供給源から温風を供給されるようになっている。第2実施形態の加熱工程(加硫接着工程)では、この温風によるブラダー82への供給熱量は、外金型部材56への熱源からの供給熱量よりも少なくなるように設定されている。これにより、ブラダー82の温度は、外金型部材56の温度よりも低くなっている。
【0059】
第2実施形態のタイヤ製造方法では、挟持工程において、トレッドゴム16とタイヤ骨格部材14とを、タイヤ製造用外金型52Sとブラダー82とで挟持する。このとき、ブラダー82がタイヤ骨格部材14に対し、トレッドゴム非配置部分14Nにも接触している。しかし、次の加熱工程(加硫接着工程)において、ブラダー82からタイヤ骨格部材14への供給熱量は、タイヤ製造用外金型52Sからタイヤ骨格部材14への供給熱量よりも少なくなる。すなわち、第2実施形態のタイヤ製造方法においても、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制できる。
【0060】
なお、このように、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制するためには、上記したようにブラダー82への供給熱量を、外金型部材56への供給熱量よりも少なくする構成に限定されない。たとえば、外金型部材56とブラダー82の材質や、製造現場での雰囲気等によっては、ブラダー82への供給熱量と外金型部材56への供給熱量とが等しい場合や、ブラダー82への供給熱量が外金型部材56への供給熱量よりも多い状態でも、ブラダー82の温度が外金型部材56の温度より低くなることがあり、この場合でもタイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制できる。このように、ブラダー82への供給熱量と外金型部材56への供給熱量との相対関係において、タイヤ骨格部材14への熱供給を制御してもよいし、ブラダー82と外金型部材56のそれぞれの温度を温度センサ等で検知して、タイヤ骨格部材14への熱供給を制御してもよい。
【0061】
また、ブラダー82への供給熱量を、外金型部材56への供給熱量よりも少なくする構成には、ブラダー82への熱供給を遮断する構成、すなわち、ブラダー82への供給熱量をゼロにする構成も含まれる。これにより、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を、より効果的に抑制できるようになる。
【0062】
第2実施形態は、本質的には、内挟持部材(上記の例ではブラダー82)への供給熱量あるいは温度を外挟持部材(タイヤ製造用外金型52S)よりも低くする点にある。したがって、この条件が満たされるならば、第2実施形態において、内挟持部材はブラダー82に限定されない。たとえば、トレッドゴム配置部分14Sだけでなく、トレッドゴム非配置部分14Nにも接触する(この点で第1実施形態のタイヤ製造用内金型52Uと異なる)金型を内挟持部材として用いることも可能となる。さらに、ブラダー82を用いることなく、タイヤ骨格部材14をリムに組み付け、バルブ等を通じてタイヤ骨格部材14内に直接的に内圧を付与した状態で、トレッドゴム16をタイヤ骨格部材14に接着してもよい。
【0063】
上記各実施形態では、タイヤ骨格部材14のクラウン部26にトレッドゴム16を直接的に接触させて接着するタイヤ製造方法を挙げたが、クラウン部26とトレッドゴム16との間に、接着作用を奏する部材、例えば1層又は2層の接着剤92を塗布した状態で本発明のタイヤ製造方法を行ってもよい。接着剤92は、特定の種類に限定されるものではないが、例えばトリアジンチオール系のものを用いることができ、未加硫状態のゴムを用いることも可能である。
【0064】
また、クラウン部26の外周面に接着剤92を塗布する前に、この外周面をサンドペーパーやグラインダ等でバフ掛けしておき、接着剤92を付き易くしてもよい。更に、バフ掛け後の外周面をアルコール等で洗浄しておいてもよい。加えて、バフ掛けの後に、コロナ処理や紫外線照射処理を行ってもよい。接着剤92を塗布する場合の好ましい環境は接着剤の種類によっても異なるが、概ね湿度70%以下の環境で行うことが好ましい。
【0065】
トレッドゴム16の裏面(クラウン部26と対向する面)又は、クラウン部26の外周面に、粘着性を有する材料、例えばゴムセメント組成物を塗布することで、コレッドゴム16がクラウン部26に貼り付くようにして仮止め状態とし、作業性を向上させてもよい。
【0066】
接着剤92としては、加硫前のトレッドゴム16に対する粘着性と、加硫後のトレッドゴム16に対するタイヤ骨格部材14への接着性を両立できればよい。トレッドゴム16の材質として、SBR(スチレン−ブタジエンゴム)を用いる場合には、ゴムセメント組成物42として、例えばSBR系のスプライスセメントを用いることが好ましい。また、トレッドゴム16の材質として、NR(天然ゴム)の配合比の高いSBR系ゴムを用いる場合には、SBR系のスプライスセメントにBR(ブタジエンゴム)を配合したものを用いることが好ましい。この他、ゴムセメント組成物42として、液状BR等の液状エラストマーを配合した無溶剤セメントや、IR(イソプレンゴム)−SBRのブレンドを主成分とするセメントを用いることが可能である。
【0067】
上記各実施形態において、トレッドゴム16を加硫するときの加硫温度は、100℃以上180℃以下とすることが好ましい。180℃を超えると、上記各実施形態のように内挟持部材からタイヤ骨格部材14への熱供給を抑制した構成を採った場合でも、外挟持部材(タイヤ製造用外金型52S)からタイヤ骨格部材14に熱が作用して、この熱の影響を受けることがあるが、180℃以下とすると、このような影響を小さくできる。また、100℃未満では、トレッドゴム16を十分に加硫できないおそれがあるが、100℃以上とすることで、トレッドゴムを十分に加硫できる。
【0068】
また、上記各実施形態では、未加硫状態(半加硫状態を含む)のトレッドゴム16をタイヤ骨格部材14に接着する場合のタイヤ製造方法を挙げているが、加硫済み(トレッドパターンも形成されている)のトレッドゴムをタイヤ骨格部材14に接着してもよい。
【0069】
図7には、本発明の第3実施形態として、加硫済みのトレッドゴム116をタイヤ骨格部材14のクラウン部26に接着するタイヤ製造方法の一部工程が示されている。図7から分かるように第3実施形態では、タイヤ骨格部材14のクラウン部26とトレッドゴム116との間に、前述した接着剤92が介在されている。
【0070】
図8にも示すように、第3実施形態のタイヤ製造方法では、第1実施形態と略同様のタイヤ製造用金型152を用いることができる。すなわち、第3実施形態のタイヤ製造方法に適用されるタイヤ製造用金型152は、タイヤ製造用外金型152Sと、タイヤ製造用内金型152Uとで構成されており、タイヤ製造用外金型152Sは、合計で8つの外金型部材156を備えている。
【0071】
タイヤ製造用外金型152S(外金型部材156の全体)は、上記した加硫済みのトレッドゴム116がタイヤ骨格部材14のクラウン部26に配置された状態で、クラウン部26よりもタイヤ外周側から、トレッドゴム116を隙間無く覆うことができる。また、それぞれの外金型部材156は、押圧機構58によって、タイヤ内周側に押圧されて、タイヤ製造用外金型152S全体で、タイヤ内周側へとトレッドゴム116を押圧すると共に、押圧解除により、外金型部材156をトレッドゴム116から離間させることができる。それぞれの外金型部材156は、図示しない熱源から、接着剤92を加熱して十分な接着力を発揮させるために十分な熱量を供給される。
【0072】
ただし、第3実施形態では、加硫済みのトレッドゴム116にはすでに所定のトレッドパターンが形成されているので、第1実施形態と異なり、タイヤ製造用外金型152Sには、トレッドパターンを形成するためのリブは形成されていなくてもよいが、確実な接着のためには形成されている方がよい。
【0073】
タイヤ製造用内金型152Uは、タイヤ骨格部材14のクラウン部26よりもタイヤ内周側で、周方向に交互に配置された複数の同数ずつ(本実施形態では4つずつ)の内金型部材160、162を有しており、タイヤ内周側からタイヤ外周側に向かって先細り形状となる略台形状に形成された4つの内金型部材160の間に、一方の内金型部材162が配置されている。そして、内金型部材160のテーパー状の側面160Sが内金型部材162の側面162Sに面接触している。
【0074】
内金型部材160は、タイヤ内周側から移動機構64によってタイヤ外周側に押圧されると、内金型部材160の側面160Sが内金型部材162の側面162Sを押すので、タイヤ製造用内金型152Uが全体として、タイヤ外周側へとクラウン部26を押圧し、クラウン部26、接着剤92及びトレッドゴム116とタイヤ製造用外金型52Sとの間で挟持する。押圧解除により、クラウン部26に対するタイヤ外周側への押圧が解除され、内金型部材160、162をタイヤ骨格部材14から抜くことができる。
【0075】
内金型部材160、162のそれぞれは、クラウン部26、すなわちトレッドゴム配置部分14Sにタイヤ内周側から接触する接触面66を有しているが、この接触面66はタイヤ幅方向、すなわちタイヤサイド部24に向かっては延在されておらず、トレッドゴム非配置部分14Nではタイヤ骨格部材14に対し非接触となっている。
【0076】
また、それぞれの内金型部材160、162は、図示しない熱源から熱を供給されるようになっているが、この熱量は、外金型部材156への熱源からの供給熱量よりも少なくなるように設定されている。特に本実施形態においても、第1実施形態と同様に、内金型部材160、162に、スチームガスや油などの熱媒を流す流路が形成され、接着剤92を加熱するために必要な部位のみを加熱できるように、所定の形状とされている。
【0077】
第3実施形態のタイヤ製造方法では、所定形状に形成されたタイヤ骨格部材14に対し、タイヤ外周側、すなわち、クラウン部26よりも外周側に、加硫済みのトレッドゴム116を配置するが、さらに、クラウン部26とトレッドゴム116の間に接着剤92と介在させておく。そして、トレッドゴム116よりもタイヤ周方向外側からはタイヤ製造用外金型152S(外金型部材156)をトレッドゴム116に接触させ、タイヤ骨格部材14のクラウン部26よりもタイヤ内周側からは、タイヤ製造用内金型152U(内金型部材160、162)を接触させる。この状態で、押圧機構58を駆動して、トレッドゴム116、接着剤92及びタイヤ骨格部材14を、タイヤ製造用外金型152Sとタイヤ製造用内金型152Uとで挟持する(挟持工程)。このとき、図7から分かるように、タイヤ製造用内金型152Uは、トレッドゴム非配置部分14Nと非接触となっている(もちろん、タイヤ製造用外金型152Sも、トレッドゴム非配置部分14Nと非接触となっている)。
【0078】
図示しない熱源から外金型部材156及び内金型部材160、162に熱を供給する(加熱工程)と、接着剤92が接着効果を発揮して、加硫済みのトレッドゴム116がクラウン部26に接着される。このとき、内金型部材160、162は、トレッドゴム配置部分14Sには接触面66により接触しているが、トレッドゴム非配置部分14Nには非接触となっており、トレッドゴム116をクラウン部26に接着させるために必要な部位でのみタイヤ骨格部材14に熱供給し、これ以外の部位ではタイヤ骨格部材14に熱供給を行わない。したがって、熱可塑性材料で構成されたタイヤ骨格部材14に対し、所定以上の熱供給が行われないので、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制できる。
【0079】
しかも、本実施形態では、熱源からの内金型部材160、162への供給熱量を、外金型部材156への供給熱量よりも少なくしている。内金型部材160、162への供給熱量を、外金型部材156への供給熱量と同等とした場合と比較して、タイヤ骨格部材14への供給熱量が少なくなり、これによっても、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制できる。
【0080】
このようにして、加硫済みのトレッドゴム116がタイヤ骨格部材14のクラウン部26にタイヤ外周側から接着剤92を介して接着されてタイヤ12が製造されると、押圧機構58による外金型部材156の押圧及び移動機構64による内金型部材160、162支持を解除して、外金型部材156をトレッドゴム116から、内金型部材160、162をタイヤ骨格部材14からそれぞれ離間させ、タイヤ12を取り出す。
【0081】
上記説明から分かるように、第3実施形態のタイヤ製造方法においても、内挟持部材であるタイヤ製造用内金型152Uを、トレッドゴム非配置部分14Nには非接触とする構成と、内金型部材160、162への供給熱量を、外金型部材156への供給熱量よりも少なくする構成とを併用して、タイヤ骨格部材14への供給熱量を抑制している。要するに、内挟持部材からタイヤ骨格部材14への供給熱量を、外挟持部材からタイヤ骨格部材14への供給熱量よりも少なくすれば、熱可塑性樹脂を含んで構成されたタイヤ骨格部材14に対し、熱供給に起因する変形を抑制することが可能である。たとえば、熱源からの内金型部材160、162への供給熱量を、外金型部材156への供給熱量と等しくした場合でも、タイヤ製造用内金型152Uはトレッドゴム非配置部分14Nには非接触となっているので、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制する効果がある。
【0082】
図9には、本発明の第4実施形態のタイヤ製造方法の一部工程が示されている。第4実施形態のタイヤ製造方法では、第3実施形態のタイヤ製造方法と同様に、加硫済みのトレッドゴム116とタイヤ骨格部材14のクラウン部26との間に接着剤92を介在させて、トレッドゴム116をクラウン部26に接着するタイヤ製造方法となっている。そして、第3実施形態のタイヤ製造方法と同様のタイヤ製造用外金型52Sを用いているが、タイヤ製造用内金型52Uに代えて、第2実施形態と略同様のブラダー182が用いられている。
【0083】
ブラダー182は、内部に空気等の気体が導入されると、図10に示すように、全体として環状に膨らむように形成されており、このように環状に膨らむと、図9に示すように、径方向の断面において、タイヤ骨格部材14の内側(タイヤ内周側)に入り込んで、クラウン部26及びタイヤサイド部24に接触する。すなわち、ブラダー182は、膨張時、すなわち挟持工程では、タイヤ外周側へとクラウン部26を押圧し、クラウン部26、接着剤92及びトレッドゴム116をタイヤ製造用外金型52Sとの間で挟持する。また、ブラダー182の収縮時には、クラウン部26に対するタイヤ外周側への押圧が解除され、ブラダー182をタイヤ骨格部材14の内側から抜き出すことができる。
【0084】
ブラダー182を膨張させるために、ブラダー182の内部には図示しない温風供給源から温風を供給されるようになっている。第4実施形態の加熱工程では、この温風によるブラダー182への供給熱量は、外金型部材56への熱源からの供給熱量よりも少なくなるように設定されている。これにより、ブラダー182の温度は、外金型部材56の温度よりも低くなっている。
【0085】
したがって、第4実施形態のタイヤ製造方法では、ブラダー182がタイヤ骨格部材14に対し、トレッドゴム非配置部分14Nにも接触しているが、ブラダー182からタイヤ骨格部材14への供給熱量は、タイヤ製造用外金型152Sからタイヤ骨格部材14への供給熱量よりも少なくなる。すなわち、第4実施形態のタイヤ製造方法においても、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制できる。
【0086】
第4実施形態においても、第2実施形態と同様に、タイヤ骨格部材14への所定量以上の熱供給に起因する変形を抑制するためには、上記したようにブラダー82への供給熱量を、外金型部材56への供給熱量よりも少なくする構成に限定されず、ブラダー182への供給熱量と外金型部材56への供給熱量との相対関係において、タイヤ骨格部材14への熱供給を制御してもよいし、ブラダー182と外金型部材56のそれぞれの温度を温度センサ等で検知して、タイヤ骨格部材14への熱供給を制御してもよい。
【0087】
なお、上記では、リムに組みつけられると共にビードコア20が埋設されたタイヤ骨格部材14を用いたタイヤ12を例に挙げているが、本発明に係るタイヤとしては、これに限定されず、図11に示す構造のタイヤ202であってもよい。
【0088】
このタイヤ202は、熱可塑性材料によって円環状とされた中空のチューブ220をタイヤ幅方向に複数本(図11では3本)配置してタイヤ骨格部材204とし、それらの外周部分に、ベルト222を埋設したトレッドゴム206を接着した構成であり、チューブ220に係合する凹部を備えたリム18に装着されるものである。なお、このタイヤ202にはビードコアは設けられていない。
【0089】
なお、チューブ220は、図12に示すように、タイヤ外周側とタイヤ内周側とに2分割された断面半円形状のチューブ半体220A、220Bを互いに向き合わせて接合用熱可塑性材料で接合したり、図示しない溶着シートで接合したりすることもできる。チューブ220をこのようにタイヤ外周側とタイヤ内周側とに2分割しておくことで、図3等に示すものと同様に、内金型部材をチューブ半体220Aの内側から配置させたり、チューブ半体22Aの内側から抜き出したりすることが可能になる。
【0090】
また、図13に示すタイヤ232のように、1本のチューブ220を用いてタイヤ骨格部材とし、チューブ220のタイヤサイド部から延長されたセンター部(チューブ外周部分)にトレッドゴム206を接着したチューブタイプの構成とすることも出来る。このチューブ220も、図14に示すように、タイヤ外周側とタイヤ内周側とに2分割された断面半円形状のチューブ半体220A、220Bからなる)。さらに、このような構造のチューブ22を用いた場合には、バルブ等を通じてチューブ220内に直接的に内圧を付与した状態で、トレッドゴム206をチューブ220に接着してもよい。
【0091】
いずれの構造のタイヤ202、232においても、上記した第1〜第4の各実施形態のタイヤ製造用方法により製造することができる。なお、タイヤ12を製造する一連の工程では、本発明を逸脱しない範囲で、各工程の順序を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0092】
12 タイヤ
14 タイヤ骨格部材
14S トレッドゴム配置部分
14N トレッドゴム非配置部分
16 トレッドゴム
18 リム
20 ビードコア
22 タイヤビード部
24 タイヤサイド部
26 クラウン部
30 ビードシート
32 補強コード層
52 タイヤ製造用金型
52S タイヤ製造用外金型
52U タイヤ製造用内金型
56 外金型部材
58 押圧機構
60、62 内金型部材
64 移動機構
66 接触面
82 ブラダー
92 中間層
116 トレッドゴム
120A チューブ半体
152 タイヤ製造用金型
152S タイヤ製造用外金型
152U タイヤ製造用内金型
156 外金型部材
160、162 内金型部材
160S、162S 側面
182 ブラダー
202 タイヤ
204 タイヤ骨格部材
206 トレッドゴム
220 チューブ
222 ベルト
232 タイヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤ骨格部材に、タイヤのトレッドを構成するトレッドゴムをタイヤ外周側から配置し、前記トレッドゴムよりもさらにタイヤ外周側に外挟持部材を配置すると共に、前記トレッドゴム及び前記タイヤ骨格部材を挟んで外挟持部材と反対側からトレッドゴム及びタイヤ骨格部材を内挟持部材で挟持する挟持工程と、
少なくとも前記タイヤ骨格部材のうち前記トレッドゴムが配置されていないトレッドゴム非配置部分への前記内挟持部材からの供給熱量を、前記外挟持部材から前記トレッドゴムへの供給熱量よりも少なくして前記トレッドゴムを加熱しタイヤ骨格部材に接着する加熱工程と、
を有するタイヤ製造方法。
【請求項2】
熱可塑性材料を含んで構成されたタイヤ骨格部材に、タイヤのトレッドを構成するトレッドゴムをタイヤ外周側から加硫完了前の状態で配置し、前記トレッドゴムよりもさらにタイヤ外周側に外挟持部材を配置すると共に、前記トレッドゴム及び前記タイヤ骨格部材を挟んで外挟持部材と反対側からトレッドゴム及びタイヤ骨格部材を内挟持部材で挟持する挟持工程と、
少なくとも前記タイヤ骨格部材のうち前記トレッドゴムが配置されていないトレッドゴム非配置部分への前記内挟持部材からの供給熱量を、前記外挟持部材から前記トレッドゴムへの供給熱量よりも少なくして前記トレッドゴムを加熱しタイヤ骨格部材に加硫接着する加硫接着工程と、
を有するタイヤ製造方法。
【請求項3】
前記トレッドゴム非配置部分には非接触とされた前記内挟持部材を用いて前記加熱工程を行う請求項1又は請求項2に記載のタイヤ製造方法。
【請求項4】
前記加熱工程において、前記内挟持部材の温度を前記外挟持部材の温度よりも低くする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のタイヤ製造方法。
【請求項5】
前記加熱工程において、前記内挟持部材への供給熱量を前記外挟持部材の供給熱量よりも少なくする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のタイヤ製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程において、前記内挟持部材への熱供給を遮断する請求項5に記載のタイヤ製造方法。
【請求項7】
前記タイヤ骨格部材と前記トレッドゴムの間にこれらを接着するための接着剤を配置した状態で、前記挟持工程及び前記加熱工程を行う請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のタイヤ製造方法。
【請求項8】
請求項3に記載のタイヤ製造方法に用いられるタイヤ製造用金型であって、
前記トレッドゴムよりもタイヤ外周側に配置される外挟持部材と、
前記トレッドゴム及び前記タイヤ骨格部材を挟んで前記外挟持部材と反対側からトレッドゴム及びタイヤ骨格部材を挟持し前記トレッドゴム非配置部分には非接触とされた内挟持部材と、
を有するタイヤ製造用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−42093(P2011−42093A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191234(P2009−191234)
【出願日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】