説明

ターボ機械

【課題】動翼の振動を抑制する。
【解決手段】静翼10の高さ方向の形状は、動翼に作用する外力が、動翼が共振した際の動翼の高さ方向における振動を抑える方向に作用するように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械では、回転移動される動翼の前段あるいは後段に、静翼が配置される場合がある。例えば、ジェットエンジン等の圧縮機やタービン、あるいは過給機においては、動翼の前段あるいは後段に静翼が配置されたものがある。
このようなターボ機械では、動翼は、前段に配置された静翼によって形成されるウェーク(速度欠陥領域)に起因する外力、あるいは後段に配置された静翼によるポテンシャル干渉(堰止め効果)に起因する外力を繰り返し受けることとなる。この動翼に作用する外力の繰り返しパターン(すなわち外力の周波数)が、動翼の固有振動数と合致した場合には、動翼が共振して大きく振動することとなり、最悪の場合、ターボ機械を停止に至らしめる場合もある。
極力共振を回避する方針で設計がおこなわれるが、種々の制約からそれが困難な場合は振動低減対策がとられる。振動低減方法としては減衰機構を設ける方法と外力を低減する方法がある。前者の代表例としては摩擦ダンパー、後者の方法としては例えば励振源となる翼列の不等配置などがある(特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−200808号公報
【特許文献2】特開平8−61001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、振動モードが高次となり振動モード形状が複雑となると、いずれの方法も効果が小さいという問題がある。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、ターボ機械において動翼の振動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、動翼の前段側及び後段側の少なくともいずれかに静翼が配置されたターボ機械であって、上記静翼の高さ方向の形状が、上記動翼に作用する外力が、上記動翼が共振した際の動翼の高さ方向における振動を抑える方向に作用するように設定されているという構成を採用する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、静翼によって動翼に作用する外力が、動翼の共振による振動を抑えるように作用するため、ターボ機械において動翼の振動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ターボ機械の概念図である。
【図2】3次曲げモードにて共振した場合の動翼の変化を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明に係るターボ機械の一実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、動翼の前段にのみ静翼が配置されているターボ機械について説明する。
【0010】
図1は、ターボ機械の概念図であり、(a)が従来のターボ機械の概念図、(b)が本実施形態のターボ機械の概念図である。
この図に示すように、従来のターボ機械は、静翼1がターボ機械の半径方向に対して一直線状に形成されている。このような従来のターボ機械では、図1に示すように、静翼1の高さ方向の全ての位置において同じ位置にウェーク(速度欠損領域)が形成される。
【0011】
そして、従来のターボ機械において、動翼2(図2参照)が静翼1によって形成されるウェークに起因する外力を繰り返し受けることによって共振し、その振動モードが3次曲げモードである場合には、動翼2は、図2に示すように振動する。
より具体的には、従来のターボ機械において、動翼が3次曲げモードで振動する場合には、ハブに対するチップの高さ方向の位置を100%とすると、a%の位置、b%の位置及び100%の位置に振動の山が形成され、a%の位置及び100%の位置と、b%の位置とで変位方向が反対となる。
【0012】
なお、図1に示すように、静翼1の高さ方向の全ての位置において同じ位置にウェーク(速度欠損領域)が形成されるため、動翼のa%の位置、b%の位置及び100%の位置には、外力が同じタイミングで作用する。
そして、ウェークに起因して動翼2に作用する外力(Fx)は、式(1)で示される。つまり、動翼2が受ける外力の支配的な成分は、正弦波である。
【0013】
【数1】

【0014】
そして、従来のターボ機械では、動翼2の高さ方向のa%の位置、b%の位置及び100%の位置に対して同位相で外力(Fx)が作用することによって、動翼2が3次曲げモードで振動していると考えられる。
【0015】
これに対して、本実施形態のターボ機械では、図1(b)に示すように、静翼10の高さ方向において、a%の位置及び100%の位置に対して、b%の位置が静翼10の配置ピッチPの半分までずらされて配置されている。このような本実施形態のターボ機械では、図1に示すように、静翼10の高さ方向のb%の位置に形成されるウェークが、a%の位置及び100%の位置に形成されるウェークに対して、配置ピッチPの半分だけずれて形成される。
【0016】
この結果、動翼のb%の位置に作用する外力の位相は、動翼のa%の位置及び100%の位置に作用する外力に対して180°ずれることとなる。つまり、本実施形態のターボ機械によれば、動翼2の振動幅を抑える方向に外力が作用することとなり、動翼2が3次曲げモードで振動した場合における変位量を抑えることが可能となる。
【0017】
このように本実施形態のターボ機械によれば、振動モードが高次となり振動モード形状が複雑となっても、動翼の振動を抑制することが可能となる。
【0018】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0019】
例えば、上記実施形態においては、動翼の前段側のみに静翼が配置されている構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、動翼の後段側のみ、あるいは動翼の前段側及び後段側に静翼が配置されたターボ機械に適用することができる。
なお、動翼の後段側に静翼が配置される場合には、当該静翼のポテンシャル干渉に起因する外力が動翼に対して作用することとなるが、外力の発生原因が異なるだけであり、考え方としては、上記実施形態と同様である。
【0020】
また、上記実施形態においては、動翼の3次曲げモードにおける振動を抑える構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。抑制したい振動モードが他の振動モードである場合には、当該振動モードに応じて静翼の形状が変化される。例えば、抑制したい振動モードが2次曲げモードである場合には、従来のターボ機械における2次曲げモードの振動を解析し、振動の山に相当する部位に作用する外力が振動を抑制する力となるように静翼の形状を変化させる。
【符号の説明】
【0021】
1,10……静翼、2……動翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動翼の前段側及び後段側の少なくともいずれかに静翼が配置されたターボ機械であって、
前記静翼の高さ方向の形状は、前記動翼に作用する外力が、前記動翼が共振した際の動翼の高さ方向における振動を抑える方向に作用するように設定されていることを特徴とするターボ機械。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−47101(P2012−47101A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−189699(P2010−189699)
【出願日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】