説明

ダイアフラムポンプ

【課題】 安定したポンプ効率のダイアフラムポンプを提供する。
【解決手段】ダイアフラムポンプ10は、可動子30の連結部33を挿通して保持する挿通部と、この挿通部から可動子30の径方向に蛇行して形成される蛇行ばね部と、蛇行ばね部の端部に設けられてケース20のばね固定部212Aに固定される外周取付部とを備え、これらの挿通部、蛇行ばね部、および外周取付部が可動子30の軸心と略直交するばね形成面上に配置されるばね部材50を具備した。このため、挿通部が蛇行ばね部によりケース20の略軸心上に支持され、蛇行ばね部が設けられる方向への移動を規制されるので、可動子30は、径方向への移動を規制され、可動子30の軸心のズレや、傾斜、電磁石部への接触を防止できる。よって、可動子30は、軸心上で安定して振動でき、ダイアフラムポンプ10のポンプ効率を安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムの変位により流体を吸入および排出するダイアフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可燃性ガスなどを昇圧する昇圧装置や、室内用のエアマット、エアベッドのエアの吸排装置や、酸素供給装置などとしてダイアフラムポンプが知られている。このようなダイアフラムポンプとしては、電磁石により振動子を振動させてダイアフラムを変位させ、流体を吸入および排出させる電磁振動形ダイアフラムポンプがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のものは、電磁石部と、電磁石部の空隙部に所定の間隔を置いて挿入される磁石を固定した振動子と、振動子の両端に連結されるダイアフラムと、電磁石部の両端部にそれぞれ固定されるポンプケーシング部と、を備えている。電磁石部は、フレームと、このフレームに対応して配置されて鉄心および捲きコイル部からなる電磁石とを備えている。そして、このフレームにダイアフラムの周縁部が密着固定され、電磁石部とダイアフラムによって振動子が振動する密閉空間が形成される。また、フレームには、ダイアフラムと対向する部分に、流体を吸入する窓および気体を排出する窓が弁を介して設けられている。
【0004】
一方、特許文献1に記載のようなダイアフラムでは、ポンプの周囲温度または動作環境温度が高くなると、ダイアフラムの剛性が弱くなる。このため、電磁石部の磁石により、振動子が磁力の方向に移動してしまう場合があり、振動子の軸心が傾いたり、振動子が電磁石部に引き付けられて接触してしまったりする場合がある。このような場合、振動子の動作が阻害されたり、動作しなかったりするため、ダイアフラムポンプのポンプ効率が低下したり、ポンプとして正常に機能しなかったりするおそれがある。このような振動子の磁力の方向への移動を防止するために、振動子と電磁石との距離を大きくする構成が考えられるが、このような構成では、磁力が弱くなるために、ダイアフラムポンプのポンプ効率が低下してしまうおそれがある。このような問題に対して、振動子の傾きを防止するダイアフラムポンプが知られている(例えば、特許文献2および特許文献3参照)。
【0005】
特許文献2に記載のものは、永久磁石を備えた可動体を備えて両端にダイアフラムが取り付けられた軸棒を、電磁石の対向磁極間に配置する。そして、長手方向を有する帯状の板バネの両端の固定端と、軸棒が挿入されて固着される挿着部が自然状態で一直線上に配置するとともに固定端と挿着部との間に円弧状に屈曲した円弧状屈曲部を成形し、軸棒が軸心からずれることなく往復動自在に配設される構成が採られている。
【0006】
特許文献3に記載のものは、コルゲーション付き十字バネを用いて振動子を支持する構成が採られている。このコルゲーション付き十字バネは、弾性変形ができる波状のコルゲート部を有している。そして、このコルゲーション付き十字バネは、4片の四隅部を折り曲げた折り曲げ部を、電磁石部の窪みに嵌めこんで固定されている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−239867号公報(第3頁ないし第4頁、図1ないし図9、図11ないし図13参照)
【特許文献2】実開昭63−46683号公報(図1ないし図6参照)
【特許文献3】特開2002−285968(第4頁、図4参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2のような構成では、軸棒を保持する板ばねの略中心からこの板ばねの両端までの距離が短くなる。このため、板ばねを屈曲させる際の応力も大きくなり、軸棒を軸心に沿って往復移動させるためには、この板ばねを湾曲させるための大きな駆動力が必要となる。したがって、軸棒を往復移動させるためには、電磁石に多くの電流を流す必要があり、消費電力が増大してしまうという問題が一例として挙げられる。また、電力が弱い場合では、軸棒が十分に往復運動できず、ダイアフラムの振動が小さくなるので、ダイアフラムポンプのポンプ効率低下、すなわちダイアフラムが吸排可能な流量が減ってしまうという問題も一例として挙げられる。さらに、板ばねを屈曲させるための力を小さくするために、板ばねの両端間、すなわち長手方向の長さ寸法を長くすることも考えられるが、板ばねの長手方向の長さ寸法を大きくすると、ダイアフラムポンプが大型化してしまい、小型化することが困難であるという問題が一例として挙げられる。
【0009】
特許文献3についても同様の問題が挙げられる。すなわち、コルゲーション付き十字ばねの4片は、長さが短いため、この4片を湾曲させるためには、多くの電力が必要となる。このため、消費電力が増大してしまう。また、消費電力が小さい場合には、振動子の移動がコルゲーション付き十字ばねにより規制されてしまうため、ダイアフラムの振動が小さくなる。このため、ポンプ効率が低下してしまうという問題が挙げられる。さらに、コルゲーション付き十字ばねの4片の長さを長くすると、ダイアフラムポンプが大型化してしまい、小型化することが困難であるという問題が挙げられる。
【0010】
さらに、特許文献2では、板ばねの円弧状屈曲部が円弧状に形成されている。また、特許文献3では、コルゲーション付き十字ばねのコルゲート部が波状に形成されている。このため、この板ばねやコルゲーション付き十字ばねは、これらの円弧や波状の分だけ厚み寸法が増大してしまい、大型化してしまうという問題も一例として挙げられる。また、このような板バネやコルゲーション部は、板バネを平面に対して垂直方向に塑性変形させて円弧状屈曲部を形成しているので、製造上個体差が生じやすく、安定した製造が困難であるという問題も挙げられる。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑み、安定したポンプ効率のダイアフラムポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のダイアフラムポンプは、少なくとも一対の対向配置される電磁石を備えた電磁石部と、前記対向配置される電磁石部間に配置されるとともに、側面に前記電磁石に対向して磁石が設けられて軸心方向に往復移動可能な可動子と、前記可動子の端部に設けられる平板状のダイアフラムと、を具備したダイアフラムポンプであって、前記可動子を往復移動可能に保持する保持部と、この保持部に連結されて前記可動子の軸心と略直交する径方向に向かって非直線状に延びて形成される非直線状弾性部と、この非直線状弾性部の端部で前記ダイアフラムポンプの一部に取り付けられる取付部と、を備えるとともに、これらの保持部、非直線状弾性部、および取付部が前記可動子の軸心方向と略直交する略同一平面上に配置された弾性部材を具備したことを特徴とする。
【0013】
この発明のダイアフラムポンプでは、可動子は、弾性部材の保持部に往復移動可能に保持されている。また、この保持部には可動子の軸心の径方向に向かって非直線状に形成された非直線状弾性部が設けられ、非直線状弾性部の端部がダイアフラムポンプの一部に取り付けられている。これにより、保持部は、ダイアフラムポンプの一部に取付部が取り付けられた非直線状弾性部に支持され、この非直線状弾性部が設けられた方向への移動を規制される。よって、この弾性部材により、保持部に保持された可動子は軸心の径方向への移動を規制され、可動子の軸心からのズレや、可動子の傾斜、電磁石部への接触を防止できる。
【0014】
また、弾性部材の非直線状弾性部が、可動子の軸心の径方向に向かって非直線状に形成されているため、この非直線状弾性部の保持部からの取付部までの長さが長くなる。このため、可動子を軸心に沿って往復移動させた場合でも、非直線状弾性部を湾曲させるために大きな力を必要としない。このため、可動子の軸心に沿った往復移動を阻害することがないので、ダイアフラムの振動を安定させることができる。よって、ダイアフラムポンプの流量を減らすことなく、安定して流体を吸排させることができる。また、この構成では、非直線状弾性部の長さを長くして、保持部および取付部の間隔を短くできる。したがって、ダイアフラムポンプの小型にも対応できる。
【0015】
さらに、弾性部材の保持部、非直線状弾性部、取付部は、可動子の軸心と略直交する同一平面内に設けられている。これにより、弾性部材は、可動子の軸心に直交する平面方向に対して剛性が高くなる。このため、電磁石部の磁力により可動子が引力を受けても、弾性部材の反力により、可動子の傾斜をより確実に防止できる。さらに、弾性部材の厚み寸法を抑えることができ、小型のダイアフラムポンプなどにも容易に取り付けることができる。
【0016】
そして、本発明のダイアフラムポンプでは、前記弾性部材の平面上で所定の幅広寸法の幅広状に形成されることが好ましい。
【0017】
この構成では、非直線状弾性部が、弾性部材の平面上に幅広となる形状に形成されている。これにより、非直線状弾性部は、この幅広部分の幅広方向、すなわち可動子の軸心と略直交する平面方向への曲げ応力が高くなり、保持部の径方向への移動をより強く規制することができる。したがって、保持部に保持された可動子は、径方向への移動をより一層規制されるので、安定して軸心上で往復移動することができる。また、非直線状弾性部は、可動子の往復移動する方向に対しては、曲げ応力が低いので、容易に屈曲させることができる。これにより、可動子の往復移動を規制する力が小さくなるので、ダイアフラムポンプのポンプ効率を低下させることがない。
【0018】
また、前記非直線状弾性部は、前記保持部から前記可動子の軸心に対して略直交する方向に向かって蛇行して形成されていることが好ましい。
【0019】
この構成では、蛇行形状の非直線状弾性部が形成されているので、保持部は可動子の軸心方向に対して十分なストローク長で移動可能となる。したがって、保持部に保持される可動子は、軸心に沿った往復移動を規制されることがない。よって、ダイアフラムの振動が規制されず、ダイアフラムポンプのポンプ効率を維持できる。
【0020】
また、本発明のダイアフラムポンプでは、少なくとも前記可動子および前記ダイアフラムを内部に収納し、前記ダイアフラムの周縁部を固定するケースを備え、前記弾性部材の取付部は、前記ケースの内周部に固定されることが好ましい。
【0021】
このような構成では、可動子をケースの軸心と略同一軸心上に配置させることができる。このため、可動子とケースとの軸心のズレを防止でき、可動子とケースとの接触を防止することができる。
【0022】
そして、本発明のダイアフラムポンプでは、前記弾性部材は、前記可動子の両端側に設けられていることが好ましい。このような構成のダイアフラムポンプでは、前記弾性部材は、可動子の両端側に設けられている。これにより、一対の弾性部材で可動子両端側を安定して保持することができる。したがって、可動子の傾斜や、ケースや電磁石部への接触をより確実に防止できる。
【0023】
また、本発明のダイアフラムポンプは、前記弾性部材は、前記ダイアフラムより、前記可動子の中心位置側に設けられていることが好ましい。
【0024】
一般に、ダイアフラムポンプでは、ダイアフラムの外側には、流体が吸排されるポンプ室が形成される。このようなポンプ室に可動子の先端部が伸びていたり、弾性部材が設けられていたりすると、流体の吸排の流路を阻害することになり、ポンプ効率が低下してしまう。これに対して、本発明のような構成では、弾性部材が可動子のダイアフラムが取り付けられる位置より可動子の中心位置側、すなわちダイアフラムの内側に設けられているので、ダイアフラムの外側に流れる流体の吸排を阻害することがない。したがって、ダイアフラムポンプのポンプ効率を安定させることができる。
【0025】
さらに、本発明のダイアフラムポンプでは、前記弾性部材の前記非直線状弾性部は、前記保持部から前記電磁石が配置される径方向に延びて設けられることが好ましい。
【0026】
この構成では、弾性部材の非直線状弾性部が電磁石部が配設される方向、すなわち、可動子の軸心に直交する径方向に延びている。すなわち、電磁石の磁力の向きに弾性部材の非直線状弾性部が配置される。これにより、電磁石の磁力によって可動子が引力を受けても、非直線状弾性部にはこの引力に対して可動子を元の軸心の位置に戻そうとする反力が働くので可動子の傾斜や、可動子のケースや電磁石部への接触を一層効率的に防止できる。
【0027】
また、上記の構成において、前記弾性部材には、少なくとも一対の非直線状弾性部が互いに線対称となるように設けられることが好ましい。このような構成では、可動子に例えば軸心を中心として所定の回転方向に回転力が加わった場合、一方の電磁石部と対向する非直線状弾性部が所定の回転方向に対して回転を規制する規制力が小さくても、他方の電磁石部と対向する非直線状弾性部がこの回転方向に対して回転を規制する規制力が大きくなる。したがって、可動子にどのような回転方向の回転力が加わったとしても、その回転力に対する規制力があるので、可動子の回転を抑えることができる。
【0028】
そして、本発明では、前記弾性部材の保持部は、前記可動子を位置決めする可動子位置決め部を有することが好ましい。この構成では、例えば保持部が凹状の切り欠きを形成し、可動子にこの切り欠きに係合する突起を形成するなどして、可動子と弾性部材とを位置決めする。このように可動子と弾性部材とを位置決めすることで、可動子が弾性部材に対して回転するのを防止できる。したがって、可動子の回転による可動子の軸心のズレなどを防止できる。
【0029】
また、前記弾性部材の取付部は、前記ケースの内周断面形状と略同一形状となる環状に形成され、前記取付部および前記ケースを位置決めする少なくとも1つの弾性部材位置決め部を有することが好ましい。
【0030】
この構成では、弾性部材とケースとを位置決めできる。これにより、弾性部材がケースに対して回転することがない。このため、弾性部材の回転による可動子の傾斜などを防止でき、弾性部材は安定した可動子の往復移動を誘導できる。また、弾性部材位置決め部を設けることで、ケースに弾性部材を取り付ける作業が容易となり、組み立て性の向上を図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の一実施形態にかかるダイアフラムポンプを図面に基づいて説明する。
【0032】
[ダイアフラムポンプの構成]
図1は、本発明の一実施の形態にかかるダイアフラムポンプの全体斜視図である。図2は、ダイアフラムポンプの平断面図である。図3は、ダイアフラムポンプの一部を断面した側面図である。図4は、ダイアフラムポンプのケースの内部および電磁石部の斜視図である。図5は、ばね部材の平面図である。
【0033】
図1ないし図4において、10はダイアフラムポンプであり、このダイアフラムポンプ10は、例えば、都市ガスなどの可燃性ガスの昇圧ポンプ、また、エアマットやエアベッドなどのエアを吸排する吸排装置や、酸素供給装置などの他、その他流体を吸排するポンプとして利用可能である。なお、本実施の形態のダイアフラムポンプ10は、一例として都市ガスなどの可燃性ガスを昇圧するための昇圧装置に利用されるものとして説明する。このダイアフラムポンプ10は、ケース20と、可動子30と、ダイアフラム40と、弾性部材としてのばね部材50と、電磁石部60と、流体吸排部70と、ベース体としての台座部80と、を備えている。
【0034】
ケース20は、平面H型に形成され、この内部空間に可動子30、ダイアフラム40、およびばね部材50を保持している。このケース20は、可動子収納部21と、可動子収納部21の両端に設けられるポンプ部22と、を備えている。このケース20は、例えば非導電性プラスチックなどの非導電性部材にて形成されている。
【0035】
可動子収納部21は、略筒状に形成されている。そして、可動子収納部21の軸心と略同軸上に可動子30が配設される。可動子収納部21の両端部には、外側に向かって突出する、略環状のフランジ部211が形成されている。また、フランジ部211の周縁には、ポンプ部22側に突出するフランジ壁部212が設けられている。このフランジ壁部212は、フランジ部211側の周縁から立ち上がって形成されるばね固定部212Aと、このばね固定部212Aに固定され、ポンプ部22側に突出するダイアフラム固定部212Bと、を備えている。また、ばね固定部212Aは、可動子収納部21のフランジ部211と一体的に形成されている。
【0036】
ばね固定部212Aには、ダイアフラム固定部212B側に、略環状の凹溝部212Cが形成されている。また、この凹溝部212Cの外周壁面には、可動子収納部21の筒の軸心方向、すなわち内径方向に向かって突出する複数の係合突起部212Dが形成されている。そして、この凹溝部212Cに後述するばね部材50が嵌合されて固定される。
【0037】
ダイアフラム固定部212Bは、凹溝部212Cにばね部材50を嵌合して、ばね固定部212Aとともにこのばね部材50を挟持した状態で、ばね固定部212Aに固定される。この時、ダイアフラム固定部212Bは、図示しないパッキン部材などを介して、可動子収納部21の内部が密封される状態に、ばね固定部212Aに固定される。また、ばね固定部212Bのポンプ部22側には、略環状の可動子収納部側凹溝部213が形成されていて、この可動子収納部側凹溝部213にダイアフラム40の周縁部が係合されてシールされる。これにより、可動子収納部21の内部は、密封された可動子収納室21Aを形成している。この可動子収納室21Aには、例えば窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガスが封入されている。
【0038】
ポンプ部22は、可動子収納部21の両端部に、可動子収納部21の筒部を両端から覆う状態に固定される。そして、ポンプ部22および可動子収納部21の間にはダイアフラム40が設けられ、これらのポンプ部22およびダイアフラム40の間にポンプ室22Aが形成される。また、ポンプ部22は、平面形状が可動子収納部21のフランジ部211と略同一形状に形成される平面状の上壁部221と、上壁部221の周縁部から可動子収納部21側に所定の寸法だけ突出する略環状のケース固定部222と、が一体的に形成されて構成されている。
【0039】
上壁部221には、流体を吸入する吸入口223と、流体を排出する排出口224とが形成されている。また、吸入口223には、吸入弁223Aが取り付けられ、排出口224には排出弁224Aが取り付けられている。吸入弁223Aは、ポンプ室22A、すなわち、ポンプ部22の上壁部221とダイアフラム40との間に可燃性ガスが吸入される際にダイアフラム40側に移動され、吸入口を開口させる。また、吸入弁223Aは、ポンプ部22の内部から可燃性ガスを排出される際には、吸入口223側に密着して吸入口223を閉口する。排出弁224Aは、ポンプ部22の内部から可燃性ガスを排出する際に、流体吸排部70側に移動し、排出口224を開口する。そして、可燃性ガスが吸入される際には、排出口224に密着して排出口224を閉口する。なお、図1ないし図3において、この吸入口223および排出口224はポンプ部22の上壁部221につきそれぞれ1個ずつ形成されている例を示すが、これらの吸入口223および排出口224の数は特に限定されない。すなわち、吸入口223および排出口224が複数設けられていてもよい。この場合、吸入口223と排出口224との数を同数にすると、可燃性ガスの吸排が安定して実施できる
【0040】
ケース固定部222には、可動子収納部21のフランジ壁部212と対向する面に、ポンプ部側凹溝部225が形成されている。このポンプ部側凹溝部225にダイアフラム40の周縁部を係合する。そして、ケース固定部222を、可動子収納部21のフランジ壁部212に密着固定することで、ダイアフラム40は、可動子収納部側凹溝部213およびポンプ部側凹溝部225に周縁部を圧着固定されてシールされる。ここで、可動子収納部21およびポンプ部22は、ねじ70Aにより、後述する流体吸排部70とともにねじ止めすることにより固定される。なお、その他、可動子収納部21のフランジ壁部212およびポンプ部22のケース固定部222は、例えば溶着、接着剤により固定されてもよい。また、可動子収納部側凹溝部213およびポンプ部側凹溝部225にシール剤などを充填した上で可動子収納部21とポンプ部22とを固定し、ダイアフラム40を圧着する構成としてもよい。このような構成では、可動子収納室21Aの密封度をより向上させることが可能となる。
【0041】
可動子30は、略棒状に形成され、可動子収納部21の内周面から所定の寸法だけ離間した位置に、可動子収納部21の内周面に接触しない状態で配設されている。可動子30の側面には、等間隔に2つの略環状の磁石嵌合溝部31が形成されている。この磁石嵌合溝部31には、それぞれ磁石32が嵌合されている。なお、磁石嵌合溝部31は、環状に形成されている例を示すが、これに限らず、例えば、後述する電磁石部60と対向する面にのみ磁石嵌合溝部31が形成されていてもよい。
【0042】
また、この可動子30の両端部には、他部と比べて径小となる連結部33が形成されている。この連結部33の基端側には、ばね部材50が取り付けられ、連結部33の先端側には、ダイアフラム挟持部35が取り付けられる。そして、ばね部材50が取り付けられる連結部33の基端側には、外側に突出した係合部34が形成されている。そして、この連結部33には、後述するばね部材50の保持部としての挿通部51が挿通され、連結部33の基端側およびダイアフラム挟持部35において、ばね部材50が固定される。
【0043】
また、ダイアフラム挟持部35は、可動子30の連結部33に固定される第一挟持部35Aと、ダイアフラム40のポンプ室22A側に設けられる第二挟持部35Bと、を備え、これらの第一挟持部35Aおよび第二挟持部35Bでダイアフラム40を挟持している。これらの第一挟持部35Aおよび第二挟持部35Bは、例えば合成樹脂素材などにて形成されている。そして、第一挟持部35Aは、連結部33に固定される略棒状の連結軸35A1と、連結軸35A1のダイアフラム40側に設けられる略円盤状の挟持部35A2を備えている。そして、連結軸35A1を連結部33に固定することで、連結部33の基端側の可動子30とこの連結軸35A1とでばね部材50が挟持される。なお、連結軸35A1の連結部33への固定は、例えばねじ止めや溶着、接着剤による接着固定など、各種固定方法が利用できる。また、挟持部35A2には、略環状の凹状溝が形成されている。一方、第二挟持部35Bは、略円盤状に形成されて、ダイアフラム40側に略環状の凹状溝が形成されている。そして、ダイアフラム挟持部35は、ダイアフラム40の両面に形成される略環状の突状部を挟持部35A2および第二挟持部35Bの凹状溝に係合させた状態で、第二挟持部35B側から第一挟持部35Aにねじ止めしてダイアフラム40を挟持して固定する。この際、第一挟持部35Aの挟持部35A2および第二挟持部35Bは、ねじ止めによりダイアフラム40に圧着され、可動子収納室21Aが密封された状態となる。
【0044】
上記のようにして、可動子30は、可動子収納部21の両端に固定される2つのダイアフラム40を連結する。これにより、可動子30は、一方のダイアフラム40をポンプ部22側に変位させると同時に、他方のダイアフラム40を可動子収納部21側に変位させることが可能となる。
【0045】
ダイアフラム40は、例えば都市ガスなどに対する耐蝕性を有する合成ゴム、例えば耐熱性耐蝕性および可撓性に優れたフッ素ゴム、NBR(Nitril-Butadien-Rubber)などが用いられる。なお、本実施の形態では、流体として都市ガスなどの可燃性ガスを用いたが、その他の流体を用いる場合この流体の種類によりダイアフラム40の素材を決定することができる。ただし、いずれの場合でも、ダイアフラム40は、変位によりポンプ室22Aの圧力を変化させ、吸入口223および排出口224を開口させる必要があるため、可撓性に優れたNBR、フッ素ゴムなどの合成ゴムを用いることが好ましい。
【0046】
このダイアフラム40は、略円盤状に形成され、両面の略中心位置に略環状に突起した突状部が形成され、ダイアフラム挟持部35に設けられる凹状溝に嵌合される。
そして、ダイアフラム挟持部35により、ダイアフラム40の略中心部が可動子30の端部に固定され、周縁部が可動子収納部21およびポンプ部22に圧着固定される。そして、このダイアフラム40は、可動子30の移動によりポンプ室22A側に変位されると、ポンプ室22Aの体積が圧迫して排出弁224Aを移動されて排出口224を開口させ、可動子30の移動により可動子収納室21A側に変位されると、ポンプ室22Aの体積が膨張して吸入弁223Aを移動されて吸入口223を開口させる。
【0047】
ばね部材50は、図4および図5に示すように、略環状に形成され、可動子30の軸心と略直交して、可動子30の連結部33の基端側に固定される。また、ばね部材50は、例えばアルミなどの金属製素材にて形成されていてもよく、弾性を有する合成樹脂素材にて形成されていてもよい。このばね部材50は、略中心位置に設けられる保持部としての挿通部51と、この挿通部51に連結された蛇行形状の非直線状弾性部としての蛇行ばね部52と、蛇行ばね部52に連結されてばね部材50の外周縁を形成する取付部としての外周取付部53と、を備えている。これらの挿通部51、蛇行ばね部52、および外周取付部53は、外力が加わらない状態で、略同一平面(以後、ばね形成面と称す)上に配置されて形成されている。また、このばね部材50は、例えば1枚の板金を打抜き加工することで一体的に形成されている。
【0048】
挿通部51は、略円盤状に形成され、この円盤中心位置に連結部33の径寸法と略同一径寸法の挿通孔51Aが形成されている。また、連結部33に形成される係合部34の位置に合わせて、挿通孔51Aから挿通部50の径方向に向かって切り欠かれた可動子位置決め部としての切り欠き51Bが形成されている。この切り欠き51Bは、係合部34の幅寸法と略同一もしくは若干小さい寸法に形成される。そして、挿通部51は、可動子30の連結部33が挿通孔51Aに挿通された状態で連結部33の基端側に固定される。この時、挿通部51は、切り欠き51Bに係合部34を嵌合させて、かしめることにより固定される。また、接着剤や溶接などによりさらに強固に固定してもよい。そして、この挿通部51は、蛇行ばね部52によりケース20の略中心軸上に配置されるように支持されている。
【0049】
蛇行ばね部52は、ばね形成面上で幅広となる非直線の線状にて形成されている。すなわち、この蛇行ばね部52は、ばね形成面に直交する方向の厚み寸法に対して、ばね形成面における幅寸法が大きい線材となるように形成されている。この蛇行ばね部52の幅広部分の幅広寸法は、ダイアフラムポンプ10の大きさやばね部材50の大きさにより任意に決定されるものであればよく、例えば、大型のダイアフラムポンプ10などにおいて、電磁石部60の磁力が強くなる場合には、蛇行ばね部52の幅広の寸法を大きくすることが好ましい。そして蛇行ばね部52は、挿通部51と外周取付部53との間を蛇行形状に形成され、挿通部51および外周取付部53を連結している。ここで、蛇行ばね部52は、ばね部材50の略中心点から一対の電磁石部への2方向に向かう直線を基準線として、この基準線および挿通部51が交差する位置と、基準線および外周取付部53が交差する位置とを連結している。これにより、蛇行ばね部52が挿通部51に連結される連結点、および蛇行ばね部52が外周取付部53に連結される連結点を結ぶ直線は、一対の電磁石部60にて形成される磁界の磁力線と略平行となり、蛇行ばね部52は電磁石部60の磁力に対して屈曲しにくくなる。また、蛇行ばね部52は、基準線から所定の角度内の領域を蛇行して形成されている。この所定の角度は、例えば、基準線から45度の範囲内に設定してもよく、その他の角度に設定してもよい。この角度が小さい場合は、蛇行ばね部52の電磁石部60が配置される方向への剛性が高くなる。さらに、一対の電磁石部60に向かって形成される一対の蛇行ばね部52は、図5に示すように、互いに線対称となるように形成されている。
【0050】
外周取付部53は、ばね固定部212Aの凹溝部212Cの形状と略同一寸法、略同一形状となる略環状に形成されている。また、この外周取付部53の外周縁には、内周側に向かってばね部材位置決め部としての切り欠き部53Aが形成されている。そして、外周取付部53は、切り欠き部53Aを凹溝部212Cの係合突起部212Dに係合させた状態で、凹溝部212Cに嵌合され、ダイアフラム固定部212Bおよびばね固定部212Aに挟持されて固定される。なお、ばね固定部212Aと外周取付部53を例えば接着剤や溶着などにより固定してもよい。同様に、ダイアフラム固定部212Bと外周取付部53とを例えば接着剤や溶着などにより固定してもよい。
【0051】
電磁石部60は、ケース20を挟んで少なくとも一対設けられる。これらの電磁石部60は、ケース20から所定寸法だけ離間して設けられる。この電磁石部60は、鉄心61、およびこの鉄心61に捲きつけられるコイル62を有した電磁石63を備えている。この電磁石63は、可動子30に設けられる磁石32に対向する位置に配置されている。そして、電磁石部60は、ケース20を挟む電磁石63からそれぞれが対向する磁石32までの離間距離が略同一となるように配置されていることが好ましい。このように電磁石63と磁石32との距離を略同一にすることで、可動子30の軸心が可動子収納部21の軸心に対して傾いたり、可動子30が可動子収納部21の内周面に接触したりせずに、可動子30を安定して振動させることが可能となる。
【0052】
流体吸排部70は、ケース20のポンプ部22の上壁部221に、例えばねじ止めなどにより固定される。この固定には、図3に示すように、ねじ70Aにより流体吸排部70およびポンプ部22を可動子収納部21にねじ止めして固定する。なお、流体吸排部70の固定には、例えば溶着や接着剤による他の固定法を用いてもよい。この流体吸排部70は、ポンプ部22の吸入口223に連結される吸入管71と、排出口224に連結される排出管72と、を備えている。また、吸入口223と吸入管71との間、および排出口224と排出管72との間は、Oリング74によりシールされている。そして、これらの吸入管71および排出管72の先端部には、管取付部73が突出して形成される。また、流体吸排部70には、取付孔を有する取付片75が突出して形成されている。
【0053】
台座部80は、図1ないし図3に示すように、矩形状に形成され、この矩形の4隅に図示しないケース取付孔が形成されている。そして、このケース取付孔に流体吸排部70の取付片75の取付孔を重ね、ねじ80Aを螺合させることで、台座部80に流体吸排部70およびケース20が固定される。
【0054】
また、台座部80には、円筒空洞状の連結ポート81が一対形成されている。この連結ポート81には、流体吸排部70の管取付部73に対応する位置に外部に開口する管嵌合部81Aが形成されている。また、この管嵌合部81Aは、流体吸排部70の管取付部73の突起形状が嵌合される形状に形成されている。この連結ポート81の管嵌合部81Aには、Oリング81Bを介して、流体吸排部70の管取付部73が取り付けられる。そして、この連結ポート81の略中心には、連結ポート81と連通する筒状の外部配管取付部81Cが形成されている。この外部配管取付部81Cは、台座部80の外側に突出して形成され、例えば都市ガスを供給するガス管などの配管に接続される。
【0055】
また。台座部80には、略棒状の電磁石取付部82が立設されている。この電磁石取付部82は、流体吸排部70およびケース20を台座部80に取り付けた際に、ケース20の側面方向を挟む位置に配置される。この時、電磁石部60は、ケース20の可動子収納部21に凹状部、すなわち、可動子収納部21の両端に設けられるフランジ部211に挟まれる状態で配置される。そして、この電磁石取付部82には、電磁石部60がねじ80Bによりねじ止めされて固定される。この時、前述したように、電磁石部60は、可動子30の磁石32と対向するとともに、磁石32から所定の寸法だけ離間した位置に電磁石63が配置されるように固定される。さらに、台座部80には、電磁石63に供給する電力を制御する図示しない制御部が設けられる。そして、この制御部から電磁石取付部82を介して電磁石部60の電磁石63にリード線が接続され、電磁石63に電力が供給される。なお、ここでは、台座部80に制御部が設けられる構成を示したが、制御部がダイアフラムポンプ10の外部に設けられる構成としてもよい。すなわち、電磁石部60は、別途設けられる制御装置に接続され、制御装置により供給される電力が制御される構成としてもよい。
【0056】
[ダイアフラムポンプの動作]
このようなダイアフラムポンプでは、電磁石部60に電力を供給して、コイル部に交流電流を流すことで、電磁石63のケース20側の磁極を変動させ、可動子30を振動、すなわち、可動子収納室21Aの軸心に沿って往復移動させる。そして、可動子30が振動することによりダイアフラム40が可動子収納部21側およびポンプ部22側に交互に変位する。ダイアフラム40が可動子収納室21A側に変位すると吸入口223が開口しポンプ室22Aに可燃性ガスが吸入され、ダイアフラム40がポンプ室22A側に変位すると、排出口224が開口してポンプ室22Aの可燃性ガスが押出されて排出される。
【0057】
そして、可動子30の両端側の連結部33に固定された挿通部51は、ばね部材50の略中心位置に設けられ、ばね形成面上で幅広となる線材にて形成される蛇行ばね部52にてケース20のばね固定部212Aに固定された外周取付部53と連結されている。これにより、可動子30が軸心に沿って振動すると、ばね部材50の挿通部51は、可動子30とともに可動子30の軸心上で振動する。ここで、可動子30は一対の電磁石部60による磁力の引力または斥力を受けるが、ばね部材50は平面形状に形成されており、さらに蛇行ばね部52が幅広状に形成されているため、可動子30の径方向への移動を規制する。
【0058】
[ダイアフラムポンプの作用効果]
上述したように上記実施の形態のダイアフラムポンプ10では、可動子30は、可動子30の軸心と略直交するばね部材50の挿通部51に振動可能に保持されている。また、この挿通部51には、径方向に向かって蛇行した蛇行ばね部52が設けられ、蛇行ばね部52の端部の外周取付部53がケース20のばね固定部212Aに固定されている。このため、挿通部51は、蛇行ばね部52によりケース20の略軸心上に支持され、蛇行ばね部52が設けられる方向への移動を規制される。したがって、挿通部51にて保持された可動子30も径方向への移動を規制され、可動子30が軸心からずれたり、可動子が傾斜したり、電磁石部へ接触したりすることを防止できる。よって、可動子30は、軸心上で安定して振動でき、ダイアフラムポンプ10のポンプ効率も安定させることができる。
【0059】
また、ばね部材50の蛇行ばね部52が、可動子30の軸心の径方向に向かって蛇行して形成されているため、この蛇行ばね部52の長さが長くなる。このため、可動子30を軸心に沿って振動させた場合でも、蛇行ばね部52をこの軸心方向に湾曲させるために大きな力を必要としない。このため、可動子30の振動を阻害することがない。よって、ダイアフラム40の振動を安定させることができ、流体吸排部70の流量を減少させることなく、安定して流体を吸排させることができる。さらに、このばね部材50の挿通部51、蛇行ばね部52、および外周取付部53は、ばね形成面内に配設されている。このため、ばね部材50の厚み寸法を抑えることができ、例えば小型のダイアフラムポンプ10などにも容易に取り付けることができる。
【0060】
そして、蛇行ばね部52が、ばね部材50のばね形成面上で幅広となる線材にて形成されている。このため、蛇行ばね部52の幅広部の幅広方向への剛性を高くできる。したがって、挿通部51の径方向への移動をより強く規制することができる。よって、挿通部51が固定される可動子30も、径方向への移動を規制されるので、可動子30が電磁石部60側に傾斜したり、ケース20の内面に接触したりすることをより確実に防止できる。一方、蛇行ばね部52は幅広状に形成されているので、幅広部分と直交する方向、すなわち、ばね部材50のばね形成面と直交する可動子30の軸心方向に対しては、剛性が低くなる。したがって、蛇行ばね部52は、軸心方向に対して容易に屈曲させることができる。よって、可動子の振動を規制しないので、可動子の振動の振幅が大きくなる。よって、ダイアフラムポンプ10のポンプ効率を低下させることなく、流体を吸排させることができる。
【0061】
また、外周取付部53は、ケース20のばね固定部212Aに固定されている。このため、挿通部51をケース20の軸心上に配置することができる。したがって、挿通部51が固定される可動子30もケース20の軸心上に配置され、可動子30をケース20の軸心上で振動させることができる。よって、可動子30の傾斜や、可動子30のケース20の内面への接触をより確実に防止できる。
【0062】
さらに、可動子30の両端側にばね部材50が固定されている。このため、可動子30を両端の2点において、保持することができるので、より確実に可動子の傾斜やケース20の内面への接触を防止できる。また、可動子30の両端のばね部材50の挿通部51をケース20の軸心上に配置させることで、可動子30の軸心を確実にケース20の軸心を略一致させることができる。
【0063】
また、ばね部材50は、ダイアフラム40より、可動子収納室21A側に固定されている。このため、ばね部材50が、ポンプ室22Aに流れる流体の吸排を阻害することがない。したがって、ダイアフラムポンプ10のポンプ効率を低下させることなく、可動子30の振動を安定させることができる。
【0064】
さらに、ばね部材50の蛇行ばね部52が電磁石部60へ向かう径方向に形成されている。このため、蛇行ばね部52は、電磁石63の磁力に対抗することができる。したがって、可動子の傾斜や、可動子のケースや電磁石部への接触を一層効率的に防止できる。
【0065】
また、ばね部材50の一対の蛇行ばね部52は、互いに線対称となるように形成されている。このため、可動子30に例えば軸心を中心として所定の回転方向の回転力が加わった場合、一方の蛇行ばね部52が所定の回転方向に対して回転を規制する規制力が小さくても、他方の蛇行ばね部52がこの回転方向に対して回転を規制する規制力が大きくなる。したがって、可動子30にどのような回転方向の回転力が加わったとしても、その回転力に対する規制力を備えているので、可動子30の回転を防止することができる。よって、可動子30の回転による軸ズレや、回転による傾斜などを防止することができる。
【0066】
そして、挿通部51の切り欠き51Bを可動子30の連結部33に形成される係合部34に係合させて位置決めしている。このため、可動子30に対してばね部材50が回転することを防止できる。したがって、可動子30の回転による軸ズレや傾斜を防止できる。さらに、可動子30の回転することでダイアフラム挟持部35のねじが緩んだり、ダイアフラム40が損傷したりすることをも防止できる。
【0067】
また、外周取付部53は、ケース20のばね固定部212Aの凹溝部212Cと略同一形状に形成され、この凹溝部212Cに形成される係合突起部212Dを外周取付部53に形成される切り欠き部53Aに係合させた状態で、ケース20に固定される。このため、外周取付部53は、係合突起部212Dおよび切り欠き部53Aの係合により位置決めされ、ばね部材50がケース20に対して回転することがない。したがって、ばね部材50の回転により可動子30が傾斜したり、ばね部材50が傾斜したりすることがない。したがって、ばね部材50は、可動子30の安定した振動を補助できる。
【0068】
[他の実施の形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0069】
例えば、上記実施の形態では、ばね部材50の蛇行ばね部52が互いに線対称となる形状に形成される例を示したが、これに限定されない。すなわち、蛇行ばね部52は、例えば図6および図7に示すように形成されていてもよい。図6、図7において、ばね部材50Aは、挿通部51と、蛇行ばね部52Aと、外周取付部53とがばね形成面上に配列されて一体的に形成されている。このばね部材50Aの蛇行ばね部52Aは、一対の電磁石部60が配設される方向に、互いにばね部材50Aの中心点に対して点対称となるように形成されている。また、ばね部材50Aは、可動子30の両端側に一対取り付けられる。これらの一対のばね部材50Aの一方の電磁石部60に向かう側の蛇行ばね部52Aは、互いに上下逆転した形状、つまり蛇行方向が逆転した形状となるように設けられている。すなわち、図7に示すように、一方のばね部材50Aの一方の電磁石部60と対向する側の蛇行ばね部52Aが挿通部51の斜め下側に連結されて上方向に向かって蛇行している場合、他方のばね部材50Aの一方の電磁石部60と対向する側の蛇行ばね部52Aは挿通部51の斜め上側に連結されて下方向に向かって蛇行している。このような形状であっても、電磁石部60の磁力に対して可動子30の移動を規制する応力が得られるので、可動子30の傾斜や可動子30の電磁石部60への接触などを防止できる。また、一対のばね部材50Aの一方の電磁石部60に向かう側の蛇行ばね部52Aが互いに蛇行方向が逆転した形状となるように設けられているので、可動子30の軸心を中心に回転力が加わった場合に、一方のばね部材50Aで例えば時計回り方向の回転力を規制し、他方のばね部材50Aで反時計回りの回転力を規制できる。したがって、可動子30の軸心を中心に回転力が加わったとしても、一対のばね部材50Aのうちいずれか一方でこの回転力を規制でき、可動子30の回転を防止できる。よって、可動子30の回転による軸ズレや傾斜などを防止できる。
【0070】
さらに、例えば、図8に示すように、ばね部材50Bの蛇行ばね部52Bが、電磁石部60の方向のみだけではなく、全径方向に設けられている構成であってもよい。図8において、ばね部材50Bの蛇行ばね部52Bは、挿通部51および外周取付部53の中心点と略同一点を中心点とする複数の径寸法が異なる幅広状の環状部材が連結されて形成されている。このような構成であれば、電磁石部60が配置される方向だけでなく、全径方向に対して可動子30の移動を規制する応力が働くので、可動子30の電磁石部60が配設される方向への傾斜だけでなく、可動子30のあらゆる径方向に対して傾斜を防止できる。
【0071】
また、図9および図10に示すような、ばね部材50Cが利用されてもよい。図9、図10において、ばね部材50Cでは、一対の蛇行ばね部52Cのうち、一方は挿通部51の一方の電磁石部60側と他方の電磁石部60側の外周取付部53とを連結して形成され、他方の蛇行ばね部52Cは挿通部51の他方の電磁石部60側と一方の電磁石部60側の外周取付部53とを連結して形成されている。また、ばね部材50Cは、可動子30の両端側に一対取り付けられている。これらの一対のばね部材50Cの一方の電磁石部60に向かう側の蛇行ばね部52Cは、互いに上下逆転した形状、つまり蛇行方向が逆転した形状となるように設けられている。すなわち、図10に示すように、一方のばね部材50Cの一方の電磁石部60と対向する側の蛇行ばね部52Cが上方向に向かって蛇行している場合、他方のばね部材50Cの一方の電磁石部60と対向する側の蛇行ばね部52Cは挿通部51の下方向に向かって蛇行している。このような形状のばね部材50Cでは、蛇行ばね部52Cの長さが長くなるため、蛇行ばね部52Cがばね形成面と直交する方向へ屈曲するための曲げ応力が小さくなる。このため、挿通部51は容易にばね形成面と直交する方向に移動することができる。したがって、可動子30の軸心に沿った振動が阻害されず、ダイアフラムポンプ10のポンプ効率を低下させることがない。また、一対のばね部材50Cが互いに蛇行方向が逆転した形状となるように設けられているので、可動子30の軸心を中心に回転力が加わった場合に、一方のばね部材50Cで例えば時計回り方向の回転力を規制し、他方のばね部材50Cで反時計回りの回転力を規制できる。したがって、可動子30の軸心を中心に回転力が加わったとしても、一対のばね部材50Cのうちいずれか一方でこの回転力を規制でき、可動子30の回転を防止できる。よって、可動子30の回転による軸ズレや傾斜などを防止できる。
【0072】
さらには、ばね部材は、例えば保持部51と外周取付部53とが略円形の蛇行ばね部にて連結された形状であってもよく、一対の蛇行ばね部の長さがそれぞれ異なる形状に形成されていてもよい。なお、蛇行ばね部の形状は、上記にて例示した以外の非直線状の形状にて形成されているものであってもよい。
【0073】
そして、上記実施の形態では、ケース20の外部に電磁石部60を配設するダイアフラムポンプ10の可動子30にばね部材50を取り付ける例を示したが、これに限らない。例えば、図11に示すような、ケース20Aの内部に電磁石部60が配設されたダイアフラムポンプ10でも、可動子30にばね部材50を取り付けることで、可動子30の傾斜や、可動子30の電磁石部60への接触などを防止できる。
【0074】
また、ばね固定部212Aの凹溝部212Cには、複数の係合突起部212Dが形成されている例を示したが、例えば係合突起部212Dが1つのみ形成されている構成であってもよい。さらに、係合突起部212Dが設けられず、例えばばね部材50が接着剤などによりばね固定部212Aに固定されている構成であってもよい。
【0075】
さらに、可動子30の先端部には、棒の径寸法が小さい連結部33が形成されていれているが、連結部33は可動子30の他の部位と同じ径寸法にて形成されていてもよい。この場合、ばね部材50の挿通部51の挿通孔51Aの孔径も連結部33の径寸法に合わせて大きく形成することが好ましい。
【0076】
また、連結部33の基端側に形成される係合部34の数は、特に限定されず、1つであってもよく、また複数形成されていてもよい。複数形成されている場合には、係合部34の数および位置に応じてばね部材50の挿通部51の切り欠き51Bが形成される。
【0077】
さらに、連結部33の係合部34が形成されない構成であってもよい。この場合、ばね部材50の挿通部51は、例えば接着剤などにより連結部33の基端側に固定される構成とすることが好ましい。
【0078】
さらには、可動子位置決め部および弾性部材位置決め部として、切り欠き51Bと係合部34とを係合させる構成、および切り欠き部53Aと係合突起部212Cとを係合させる構成を示したが、これに限らず、その他の構成であってもよい。例えば、可動子30に切り欠きが設けられ、挿通部51に突起部が設けられ、これらの切り欠きと突起部を係合させて位置決めする構成としてもよい。同様に、外周取付部53に突起部が設けられ、ケース20のばね固定部212Aに切り欠きが設けられ、これらの突起部と切り欠きが係合される構成であってもよい。その他、いかなる構成にて可動子30およびばね部材50、ばね部材50およびケース20を位置決めしてもよい。
【0079】
そして、可動子30の両端部の連結部33に取り付けられたダイアフラム挟持部35でダイアフラム40を挟持する構成を示したが、これに限らない。例えば、連結部33とダイアフラム40とが、直接接着剤や溶着などの固定方法により固定されている構成であってもよい。このような構成では、ダイアフラム40にねじ孔などを空ける必要がないので、可動子収納室21Aの密封性をより高めることができる。
【0080】
また、可動子30の両端部にダイアフラム40およびポンプ室22Aが設けられる構成を示したが、可動子30の一端部にのみダイアフラム40およびポンプ室22Aが設けられる構成としてもよい。この場合でもばね部材50は、可動子30の両端側に設けられることが好ましい。可動子30の両端側をばね部材50で保持することで、可動子30の振動軸を可動子30の軸心と略同軸にすることができ、可動子30の傾斜などを防止することができる。
【0081】
さらに、上記実施の形態では、ばね部材50の蛇行ばね部52は、ばね形成面上で幅広となる形状に形成されている例を示したが、これに限らない。例えば、蛇行ばね部52が断面略円形となる線材にて形成されていてもよい。このような構成でも、蛇行ばね部52の蛇行部分の長さを長くすることで、ばね形成面に略直交する方向への屈曲に対する曲げ応力を弱めて可動子30の振動を規制することなく、可動子30の径方向への移動のみを規制することができる。
【0082】
また、外周取付部53は、略環状に形成され、ケース20のばね固定部212Aの凹溝部212Cに嵌合して固定される例を示したが、例えば、外周取付部53が設けられない構成であってもよい。この様な構成では、例えば蛇行ばね部52の端部を直接ケース20に固定することで、ばね部材50を取り付けることができる。
【0083】
さらに、図11のような、ケース20の内部に電磁石部60が格納されている例では、電磁石部60にばね部材50の外周取付部53を取り付ける構成としてもよい。この場合、ばね部材50は、合成樹脂など、磁力に影響されない部材で形成されていることが好ましい。この構成では、ばね部材50の挿通部51の位置を、正確に一対の電磁石部60の略中点に配置することができる。このため、一対の電磁石部60の双方から略等距離の位置に可動子30の軸心を配置でき、より確実に可動子30の傾斜や、可動子30と電磁石部60との接触などを防止することができる。
【0084】
また、上記実施の形態では、ダイアフラム40の両面に形成される略環状の突状部と、ダイアフラム挟持部35の略環状の凹状溝が係合される例を示したが、これに限らない。例えば、ダイアフラム40に略環状の凹状溝が形成され、ダイアフラム挟持部35に略環状の突状部が形成されていてもよい。また、凹状溝や突状部の形状も環状に限定されず、例えば、例えば複数の突状部と凹状溝が形成される構成としてもよい。この場合、ダイアフラム40およびダイアフラム挟持部35Aの双方に凹状溝および突状部が形成される構成であってもよい。さらに、これらの凹状溝や突状部が形成されない構成としてもよい。
【0085】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、都市ガスなどの可燃性ガスを昇圧する昇圧装置に利用できる他、エアベッドやエアマットなどのエアを吸排する吸排装置や、酸素を供給する酸素供給装置にも利用することができる。さらに、気体を吸排するものに限らず、液体を吸排するポンプとしても利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の一実施の形態に係るダイアフラムポンプの全体斜視図である。
【図2】ダイアフラムポンプの平断面図である。
【図3】ダイアフラムポンプの一部を断面した側面図である。
【図4】ダイアフラムポンプのケースの内部および電磁石部の斜視図である。
【図5】ばね部材の平面図である。
【図6】他の実施の形態におけるばね部材の平面図である。
【図7】図6のばね部材が取り付けられた可動子の一部を示す斜視図である。
【図8】さらに他の実施の形態におけるばね部材の平面図である。
【図9】さらに他の実施の形態におけるばね部材の平面図である。
【図10】図9のばね部材が取り付けられた可動子の一部を示す斜視図である。
【図11】さらに他の実施の形態におけるダイアフラムポンプの平断面図である。
【符号の説明】
【0088】
10 ダイアフラムポンプ
20 ケース
30 可動子
32 磁石
40 ダイアフラム
50,50A,50B,50C 弾性部材としてのばね部材
51 保持部としての挿通部
51B 可動子位置決め部としての切り欠き
52,52A,52B,52C 非直線状弾性部としての蛇行ばね部
53 取付部としての外周取付部
53A ばね部材位置決め部としての切り欠き部
60 電磁石部
63 電磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一対の対向配置される電磁石を備えた電磁石部と、
前記対向配置される電磁石部間に配置されるとともに、側面に前記電磁石に対向して磁石が設けられて軸心方向に往復移動可能な可動子と、
前記可動子の端部に設けられる平板状のダイアフラムと、
を具備したダイアフラムポンプであって、
前記可動子を往復移動可能に保持する保持部と、この保持部に連結されて前記可動子の軸心と略直交する径方向に向かって非直線状に延びて形成される非直線状弾性部と、この非直線状弾性部の端部で前記ダイアフラムポンプの一部に取り付けられる取付部と、を備えるとともに、これらの保持部、非直線状弾性部、および取付部が前記可動子の軸心方向と略直交する略同一平面上に配置された弾性部材を具備した
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記非直線状弾性部は、前記弾性部材の平面上で幅広状に形成された
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記非直線状弾性部は、前記保持部から前記可動子の軸心に対して略直交する方向に向かって蛇行する形状に形成された
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3に記載のダイアフラムポンプにおいて、
少なくとも前記可動子および前記ダイアフラムを内部に収納し、前記ダイアフラムの周縁部を固定するケースを備え、
前記弾性部材の取付部は、前記ケースの内周部に固定される
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記弾性部材は、前記可動子の両端側にそれぞれ設けられている
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記弾性部材は、前記ダイアフラムより、前記可動子の中心位置側に設けられている
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記弾性部材の前記非直線状弾性部は、前記電磁石部が配置される方向に向かって設けられた
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記弾性部材には、少なくとも一対の非直線状弾性部が互いに線対称となるように設けられた
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記弾性部材の非直線状弾性部は、前記電磁石部が配置される方向から所定の角度の領域内に設けられる
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記弾性部材の保持部は、前記可動子を位置決めする可動子位置決め部を有した
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。
【請求項11】
請求項4ないし請求項10のいずれかに記載のダイアフラムポンプにおいて、
前記弾性部材の取付部は、前記ケースの内周断面形状と略同一形状となる環状に形成され、前記取付部および前記ケースを位置決めする少なくとも1つの弾性部材位置決め部を有した
ことを特徴としたダイアフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−194181(P2006−194181A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−7814(P2005−7814)
【出願日】平成17年1月14日(2005.1.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成16年度、経済産業省、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「固体高分子形燃料電池システム技術開発事業 固体高分子形燃料電池システム化技術開発事業 固体高分子形燃料電池用流量制御型ガス昇圧器開発」に係る委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000150707)長野計器株式会社 (62)
【Fターム(参考)】