説明

ダイシング及びダイアタッチ接着剤

ウエファーのダイシング機能に求められる、接着の適切なバランスときれいな剥離とを提供し、続くダイアタッチ工程において求められる必要な接着を更に提供する単層接着フィルムが提供される。接着剤組成物は、官能基を有するアクリレートエステルポリマーと、多官能熱硬化性樹脂と、ここでアクリレートエステルポリマーと熱硬化性樹脂とは互いに反応可能であり、多官能アクリレートエステルと、アクリレートエステルの重合触媒又は硬化剤と、多官能熱硬化性樹脂を硬化するのに好適な熱潜在性触媒と、アクリル酸塩と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2007年3月16日に出願された米国特許仮出願第60/895,189号の利益を主張し、その開示内容全体が参照として本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は一般に、薄型ウエファーをダイシングするためのダイシングテープとして及びダイアタッチ接着剤としても機能する単層接着剤、及び半導体素子の製作において引き続き行われるダイシングされたチップのダイアタッチ作業に関する。
【背景技術】
【0003】
集積回路がその上に形成されたシリコン及びガリウムヒ素のような半導体物質のウエファーは、比較的大きい直径を有する。集積回路(IC)の製造において、このようなウエファーは、時にダイシングテープと呼ばれる感圧性接着テープに貼着されてICチップにダイシングされる。次に、ICチップ(ダイ又はダイス)はダイシングテープから剥離され、接着剤がチップ又は基板に塗布され、チップが基板上に定置され、接着剤が硬化されて、ダイが基板に取り付けられる。
【0004】
ダイシングテープは、ウエファーを個々のチップにダイシングする工程中、半導体ウエファーへの強力な接着を提供しなければならない。しかしながら、ダイシングテープはまた、その後、テープから個々のチップを迅速に、きれいに、かつ容易に剥離できるように、十分に低い接着を提供しなければならない。即ち、チップが除去されるときにはダイシングテープの接着が低くあることが有用であり、チップ上にダイシングテープからの残留物が残ってはならない。したがって、ダイシング工程中には強力に接着する、ウエファーへの接着のバランスを有するが、またチップがテープから除去されるときには、チップの上に残留物を残さずに個々のチップから剥離するテープが作製されてきた。紫外線に暴露されると粘着力が弱まり得るいくつかのダイシングテープを作製して、個々のチップのきれいな剥離が向上されてきた。接着のバランスなしには、ウエファーをダイシングして個々のチップをピックアンドプレースする工程を行うことは困難である。ダイシングテープの接着のバランスがとれておらず、ダイシングテープから個々のチップが取り外される際にチップ上に一部の接着剤が残る場合、チップから接着剤の残留物を除去するための追加工程が必要である。これら追加の工程は多くの場合有機溶剤を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ダイシング作業及びチップのシンギュレーションが完了した後、続いて、チップと基板との間に第2の接着剤を配置して、チップを基板上の適切な場所にしっかりと定置しなければならない。多くの場合ダイアタッチ接着剤と呼ばれる第2の接着剤は、チップの回路の反対側の表面に塗布されることができ、又はチップが接着される基板に直接塗布されてよい。異なるダイアタッチ接着剤を使用するとなると、接着剤をチップ又は基板のいずれかの上に定置するための追加の工程と装置とが必要となる。一部の異なるダイアタッチ接着剤は、チップが基板上に定置されると硬化され得るエポキシ樹脂である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ウエファーのダイシング機能に求められる、接着の適切なバランスときれいな剥離とを提供し、シンギュレーション後のフィルム裏材からの接着剤の転写を可能にし、また更に続くダイアタッチ工程において求められる必要な接着を提供する単層接着フィルムが必要となってきている。
【0007】
一実施形態によると、本開示は、官能基を有するアクリレートエステルポリマーと、多官能熱硬化性樹脂と、多官能アクリレートエステルと、アクリレートエステルの重合触媒又は硬化剤と、多官能熱硬化性樹脂を硬化するのに好適な熱潜在性触媒と、アクリル酸塩とを含み、アクリレートエステルポリマーと熱硬化性樹脂とが互いに反応可能である接着剤組成物に関する。本開示の目的上、アクリレート及びアクリル酸という用語は、アクリル酸及びメタクリル酸両方の誘導体を包含する。官能基を有するアクリレートエステルポリマーに言及する場合は、アクリル基又はメタクリル基以外の少なくとも1つの官能基を有する部分を説明しているものとして理解されたい。
【0008】
他の実施形態において、本開示は、官能基含有アクリレートエステルポリマーを少なくとも約50重量%と、多官能熱硬化性樹脂を約20重量%〜約40重量%と、有効量の多官能アクリレートエステルと、アクリレートエステルポリマーを硬化するための触媒と、多官能熱硬化性樹脂を硬化するのに好適な熱潜在性触媒又は硬化剤と、アクリル酸塩とを含み、アクリレートエステルポリマーと熱硬化性樹脂とが接着反応生成物を生成することが可能である接着剤に関する。
【0009】
更に他の実施形態において、本開示は、官能基を有するアクリレートエステルポリマーを提供する工程と、多官能熱硬化性樹脂を提供する工程と、ここでアクリレートエステルポリマーと熱硬化性樹脂とは互いに反応可能であり、多官能アクリレートエステルを提供する工程と、アクリレートエステルの重合触媒又は硬化剤を提供する工程と、多官能熱硬化性樹脂を硬化するのに好適な熱潜在性触媒を提供する工程と、アクリル酸塩、任意に金属塩を提供する工程と、ポリマーと、熱硬化性樹脂と、多官能アクリレートエステルと、熱潜在性触媒と、アクリル酸塩とを混合し、混合物を生成する工程と、任意に混合物を脱気する工程を含む、接着剤の製造方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
数字範囲の詳細説明には、その範囲内の全ての数が包含される(例えば、1〜5には、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5が包含される)。全ての数量は「約」という語句によって修飾されるものと理解する。
【0011】
一実施形態によると、官能基を有するアクリレートエステルポリマーと、多官能熱硬化性樹脂と、同時に、多官能アクリレートエステルと、アクリレートエステルポリマーの重合触媒又は硬化剤と、多官能熱硬化性樹脂を硬化するのに好適な熱潜在性触媒と、アクリル酸塩とを含み、アクリレートエステルポリマーと熱硬化性樹脂とが互いに反応可能である接着剤組成物が提供される。
【0012】
好適な官能基を有するアクリレートエステルポリマーには、例えば、非三級アルキルアルコールの直鎖又は分枝の単官能性不飽和アクリレート又はメタクリレートのコポリマーが挙げられ、そのアルキル基は1〜14個、特に4〜12個の炭素原子を有し、1つ以上の(メタ)アクリレート官能基含有モノマーは追加の官能基を有する。一般に用いられる単官能性モノマーには、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、及び2−エチルブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。追加の官能基を有する(メタ)アクリレート官能性モノマーには、上記のモノマーが挙げられ、(メタ)アクリレートエステルはまた、カルボン酸基、ヒドロキシル基、グリシジル基、アミド基、及び無水物基から選択される1つ以上の置換基を有する。いくつかの実施形態において特に好ましいのは、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、又はグリシジルメタクリレート、及びN−メチロールアクリルアミドの1つ以上であってよい追加の官能基含有(メタ)アクリレートエステルモノマーである。
【0013】
好適な多官能熱硬化性樹脂には、例えば、ポリエポキシ官能性樹脂及びそれらのアジリジン類似体が挙げられる。多官能グリシジルエーテルエポキシ樹脂は、本発明の接着剤組成物中に約15重量%〜約40重量%の量で存在する。他の実施形態において、多官能グリシジルエーテルエポキシ樹脂は、接着剤組成物中に約23重量%〜約37重量%存在する。本発明の他の接着剤組成物は、任意の量の又は15重量%〜40重量%の範囲の任意の量の多官能グリシジルエーテルエポキシを含有してよい。
【0014】
好ましい多官能グリシジルエーテルエポキシ樹脂には、分子内に平均して2つ以上のグリシジル基を有するエポキシ樹脂が挙げられる。グリシジルエーテルエポキシ樹脂の具体例には、多官能フェノールノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラックとエピクロロヒドリンとを反応させて合成)、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、及びビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂が挙げられる。市販の多官能グリシジルエーテルエポキシ樹脂の例には、オハイオ州コロンバス(Columbus)のヘキシオン・スペシャルティ・ケミカルズ(Hexion Specialty Chemicals)から入手可能な商品名「Epon 1050」、「Epon 160」、「Epon 164」、「Epon 1031」、「Epon SU−2.5」、「Epon SU−3」、及びEpon SU−8」であるエポキシ樹脂、ミシガン州ミッドランド(Midland)のダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から入手可能なエポキシ樹脂の「DEN」シリーズ、及びミシガン州イーストランシング(East Lansing)のハンツマン・ケミカル(Huntsman Chemical)から入手可能な商品名「タクティクス(Tactix)756」及び「タクティクス556」であるエポキシ樹脂が挙げられる。
【0015】
いくつかの実施形態において、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルである有用な多官能グリシジルエーテルエポキシ樹脂には、ヘキシオン・スペシャルティ・ケミカルズ(Hexion Specialty Chemicals)から入手可能な商品名「エポンレジン(Epon Resins)825、826、及び828」であるエポキシ樹脂、ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)から入手可能な商品名「D.E.R.330、331、及び332」であるエポキシ樹脂、及びニューヨーク州タリタウン(Tarrytown)のチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から入手可能な商品名「アラルダイト(Araldite)GY 6008」、「GY 6010」、及び「GY 2600」であるエポキシ樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
ビスフェノールFのジグリシジルエーテルである有用な多官能グリシジルエーテルエポキシ樹脂の例には、ヘキシオン・スペシャルティ・ケミカルズ(Hexion Specialty Chemicals)から入手可能な商品名「エポンレジン(Epon Resins)862」であるエポキシ樹脂、及びチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から入手可能な商品名「GY 281、GY 282、GY 285、PY 306、及びPY 307」の樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
多官能グリシジルエーテルエポキシ樹脂は通常、約170〜約500のエポキシ当量を有し、他の実施形態では約170〜約350、他の実施形態では約170〜約250のエポキシ当量を有する。平均エポキシ官能性の範囲には1.5〜10が挙げられる。
【0018】
アクリレートエステルポリマー及び熱硬化性樹脂は、典型的には開環反応又は縮合反応を介して、反応生成物が鎖延長された及び/又は架橋性ポリマーであるように互いに反応することができる。
【0019】
好適な多官能アクリレートエステルには、例えば、エチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート及びペンタエリスリトールテトラメタクリレートのような、ジ−、トリ−、テトラ−ヒドロキシ化合物の(メタ)アクリレートエステルが挙げられる。ペンシルベニア州エクストン(Exton)のサートマー社(Sartomer Co)から入手可能なCN2301、2302、2303、2304のような超分岐ポリオールのアクリレートエステルもまた有用である。トリメチロールプロパントリアクリレートは、光化学的に誘発された重合によって接着剤の粘着を減少させるのに特に好適である。
【0020】
好適なアクリレートエステル重合触媒には、例えば、光開始剤及び熱開始剤が挙げられ、長時間の貯蔵寿命が特に所望である用途においては光開始剤が一般に好ましい。好適な紫外線活性化光開始剤の例は、イルガキュア(Irgacure)(商標)651、イルガキュア184、イルガキュア369及びイルガキュア819として、並びにダロキュア(Darocur)(商標)1173(全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals Co.)の製品)として、及びルシリン(Lucirin)(商標)TPO−L(BASF社(BASF Corp)の製品)として入手可能である。
【0021】
いくつかの実施形態において、熱開始剤を使用してよい。熱開始剤には、有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル)、アゾ化合物、キノン、ニトロソ化合物、ハロゲン化アシル、ヒドラゾン、メルカプト化合物、ピリリウム化合物、イミダゾール、クロロトリアジン、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル、ジケトン、フェノン、及びこれらの混合物が挙げられる。好適な熱開始剤の例は、バゾ(Vazo)52、バゾ64及びバゾ67のアゾ化合物熱開始剤(全てデュポン(DuPont)から入手可能)として販売されている。
【0022】
多官能熱硬化性樹脂を硬化するのに適している好適な熱潜在性触媒には、例えば、一液性エポキシ接着剤において有用な潜在性触媒が挙げられる。例示的な触媒には、ブロックイミダゾールMZ−A、MA−OK及びPHZ−S(エアープロダクツ)及びインテリマー(Intelimer)7004(ランデック社(Landec Inc.))のようなポリマーに結合したイミダゾールが挙げられる。いくつかの実施形態において、特に固体のイミダゾール触媒、例えば、1,3ジアルキルイミダゾリウム塩、イミダゾール誘導体−遷移金属錯体、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾール−(1)’]エチル−s−トリアジン等を使用することができる。触媒は、実施形態中に存在する場合、組成物を少なくとも約0.01重量%、好ましくは少なくとも約0.1重量%含む。他の実施形態において、触媒は組成物を約5重量%以下含むことができ、好ましくは約10重量%以下である。
【0023】
好適なアクリル酸塩には、例えば、1つ以上の多価金属による塩橋によって結合されたオリゴマーを含有する(メタ)アクリル酸が挙げられる。このような塩橋は周囲温度より高い温度で解離し、それによって接着剤組成物の流れを良くすることができる。好適なアクリル酸塩には、サートマー(Sartomer)CN2404(ポリエステルアクリレートオリゴマー)、及びCN2405(ウレタンアクリレートオリゴマー)が挙げられる。
【0024】
いくつかの実施形態において、多官能熱硬化性樹脂はエポキシ樹脂である。いくつかの実施形態において、アクリレートエステルポリマーは、ブチルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのコポリマーである。更に他の実施形態において、多官能アクリレートエステルはトリメチロールプロパントリアクリレートを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、ポリマー触媒又は硬化剤は光開始フリーラジカル硬化剤である。いくつかの実施形態において、熱潜在性触媒はイミダゾール促進剤である。更に他の実施形態において、アクリル酸塩はアクリル酸の金属塩である。
【0026】
いくつかの実施形態において、半導体ウエファーは、活性表面と、基板表面と、基板表面に近接した接着剤の層とを有する。半導体ウエファーの活性表面は集積回路を有する領域であり、これに対し、基板表面は集積回路を有さない。他の実施形態において、半導体チップは、活性表面と、基板表面と、基板表面に近接した硬化した接着剤の領域とを有する。いくつかの実施形態において、接着剤は裏材を有する。更に他の実施形態において、接着剤の構成成分は、混合されて剥離ライナーの上にコーティングされて、接着剤テープ前駆体を形成する。いくつかの実施形態において、接着剤テープ前駆体は、加熱されて、テープを形成する。他の実施形態において、接着剤テープ前駆体は好適な裏材に積層される。裏材は、存在する場合、エチレン・プロピレン・ゴム(EPR)、アイオノマーポリマー、例えば、デュポン(DuPont)のサーリン(Surlyn)(登録商標)などのようなエラストマーであってよい。更に他の実施形態において、テープはウエファーに積層される。
【0027】
本発明の目的及び利点は、下記の実施例によって更に例示されるが、これらの実施例において列挙された特定の材料及びその量は、他の諸条件及び詳細と同様に本発明を過度に制限するものと解釈すべきではない。
【実施例】
【0028】
【表1】

【0029】
試験方法
剥離接着試験
厚さ50μmのサーリン(Surlyn)(登録商標)フィルムを接着フィルムコーティングに積層した。フィルム積層体を25mmのストリップに切断した。シリコン剥離ライナーを接着フィルムストリップから剥離し、接着剤を、2.0kgのゴムローラーを4回通過させて研磨されたシリコンウエファーに積層した。ヘプタンで表面を3回拭いてシリコンウエファーを清浄しておいた。接着フィルムストリップをシリコンウエファーから180度の角度で剥離するための力を、I−Mass SP−2000試験装置(アイマス社(IMASS Inc.)、マサチューセッツ州アコード(Accord))を用いて測定した。力は、剥離速度30.5cm/分で測定した。シリコンウエファーからいくつかの試料を剥離するための力を、試料を、フュージョンシステムズ(Fusion Systems)紫外線硬化装置(Hランプ、0.5J/)(メリーランド州ゲイサーズバーグ(Gaithersburg))に1回通過させた後で測定した。
【0030】
接着フィルムの特性
紫外線照射硬化及び熱硬化された接着フィルムの弾性率を、25℃で、動的機械分析器(TAインスツルメンツ社(TA Instruments Inc.)、デラウエア州ニューカッスル(New Castle))を用いて測定した。接着フィルムを10℃/分で加熱する際の発熱化学プロセスのピーク温度を、TAインスツルメンツ社(TA Instruments Inc.)から入手した示差走査熱量計(DSC)で測定した。硬化した接着フィルムのガラス転移温度(T)をDSCで測定した。
【0031】
ボンドライン中の空隙試験
接着フィルム試料を、手持ち式のゴムローラーを使用してガラスの顕微鏡用カバースリップに積層した。積層フィルム試料を紫外線照射で処理した(フュージョンシステムズ(Fusion Systems)Hランプ、0.5J/cm)。サーリン(Surlyn)(登録商標)を照射した接着フィルム試料から剥離した。接着フィルムサンプルの付いたガラスの顕微鏡用カバースリップを、100℃に加熱したホットプレート上に定置し、第2のガラスの顕微鏡用カバースリップを接着フィルムサンプルの上に注意深く定置して2.3Kgのゴムローラーを使用して手で積層した。積層した試料を160℃のオーブンで1時間加熱した。30倍に設定した顕微鏡で空隙は見られなかった。
【0032】
ブチルアクリレート/グリシジルメタクリレート(BA/GMA)コポリマーの調製
946mLの瓶に次を加える:ブチルアクリレート(ダウケミカル社(Dow Chemical Co.)、ミシガン州ミッドランド(Midland))72.0g、グリシジルメタクリレート(サートマー社(Sartomer Co)、ペンシルベニア州イーストン(Easton))48.0g、2,2’−アゾビス(2−メチルブタンニトリル)(デュポン(DuPont)、デラウエア州ウィルミントン(Wilmington))0.18g、エチルアセテート140g、及びトルエン140g。溶液を、1リットル/分の速度で2分間窒素パージした。瓶を密封し、60℃に維持された水浴中に24時間定置した。反応混合物は29.5重量%の固体であり、測定固有粘度0.78dL/g及びブルックフィールド粘度0.7パスカル秒を有していた。
【0033】
(実施例1)
構成成分の全てを瓶の中で混合し、続いて、室温の真空のオーブンの中で約3分間、減圧下で脱気した。接着剤コーティング溶液を、シリコン処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにナイフコーターを用いて塗布し、コーティングを強制空気オーブン中で85℃で7分間加熱した後、25μm厚さの接着剤を生成した。
【0034】
(実施例1〜6)
【0035】
【表2】

【0036】
【表3】

【0037】
【表4】

【0038】
剥離モード−初期剥離試験中にウエファーから剥離した接着剤。
【0039】
剥離モード−紫外線暴露後の剥離試験中に接着剤から剥離したサーリン(Surlyn)裏材。
【0040】
本発明の様々な修正及び変更は、本発明の範囲及び原理から逸脱することなく当業者には明白であり、また、本発明は、本明細書に記載した例示的な実施形態に不当に制限されるものではないと理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基を有するアクリレートエステルポリマーと、
多官能熱硬化性樹脂と、
多官能アクリレートエステルと、
アクリレートエステルの重合触媒又は硬化剤と、
多官能熱硬化性樹脂を硬化するのに好適な熱潜在性触媒と、
アクリル酸塩と、を含み、
アクリレートエステルポリマーと熱硬化性樹脂とが互いに反応可能である、接着剤組成物。
【請求項2】
前記多官能熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アクリレートエステルポリマーが、ブチルアクリレート及びグリシジルメタクリレートのコポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記多官能アクリレートエステルが、トリメチロールプロパントリアクリレートを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記重合触媒又は硬化剤が、光開始フリーラジカル硬化剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記熱潜在性触媒が、イミダゾール促進剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アクリル酸塩が、多価金属イオンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の接着剤組成物と裏材とを含むダイシングテープ及びダイアタッチ接着剤として、連続使用に好適な接着剤転写ダイシングテープ。
【請求項9】
少なくとも約50重量%の官能基含有アクリレートエステルポリマーと、
約20重量%〜約40重量%の多官能熱硬化性樹脂と、
有効量の多官能アクリレートエステルと、
前記アクリレートエステルポリマーを硬化するための触媒と、
前記多官能熱硬化性樹脂を硬化するための熱潜在性触媒と、
アクリル酸塩と、を含み、
前記アクリレートエステルポリマーと前記熱硬化性樹脂とが接着剤反応生成物を生成することが可能である、接着剤。
【請求項10】
前記多官能アクリレートエステルが、約0重量%を超過しかつ約10重量%未満である量で提供される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記熱潜在性触媒が、約0重量%を超過しかつ約10重量%未満である量で提供される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記アクリル酸塩が、多価金属イオンを含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
裏材を更に含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項14】
活性表面と、基板表面と、該基板表面に近接した請求項9に記載の接着剤組成物の層と、を備える半導体ウエファー。
【請求項15】
活性表面と、基板表面と、該基板表面に近接した請求項9に記載の前記接着剤組成物の層と、を備える半導体チップ。
【請求項16】
活性表面と、基板表面と、該基板表面に近接した請求項9に記載の前記反応生成物を含む硬化した接着剤の領域と、を備える半導体チップ。
【請求項17】
官能基を有するアクリレートエステルポリマーを提供する工程と、
多官能熱硬化性樹脂を提供する工程と、
多官能アクリレートエステルを提供する工程と、
アクリレートエステルポリマーの重合触媒又は硬化剤を提供する工程と、
前記多官能熱硬化性樹脂を硬化するのに好適な熱潜在性触媒を提供する工程と、
アクリル酸塩を提供する工程と、
前記ポリマーと、熱硬化性樹脂と、多官能アクリレートエステルと、アクリレートエステルポリマーの重合触媒又は硬化剤と、熱潜在性触媒と、アクリル酸塩とを混合し、混合物を生成する工程と、
任意に前記混合物を脱気する工程と、を含み、
前記アクリレートエステルポリマーと前記熱硬化性樹脂とが互いに反応可能である、接着剤の製造方法。
【請求項18】
剥離ライナーの上に前記混合物をコーティングし、接着剤テープ前駆体を形成する工程を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
任意に前記接着剤テープ前駆体を裏材に積層した後に、前記接着剤テープ前駆体を加熱してテープを形成する工程を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記テープをウエファーに積層する工程を更に含む、請求項19に記載の方法。

【公表番号】特表2010−521555(P2010−521555A)
【公表日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553701(P2009−553701)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/056178
【国際公開番号】WO2008/115711
【国際公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】