説明

ダイナミック・レンジを拡大したディジタルX線検出器

【課題】放射線レベルが異なる広範な様々な形式の検査に用いられるアモルファス・シリコン・ディジタルX線検出器を提供する。
【解決手段】ディジタルX線検出器(22)の各々のピクセル領域(54)は、第一の面積(116)を有する第一のフォトダイオード(86)と、第一の面積(116)に等しい又はより小さい第二の面積(122)を有する第二のフォトダイオード(88)とを含んでいる。ディジタルX線検出器(22)はまた、各々のピクセル領域(54)の第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードの上に位置する遮蔽構造(94)を含んでおり、遮蔽構造(94)は、第一のフォトダイオード(86)に第一の感度を与え、第二のフォトダイオード(88)に第一の感度よりも低い第二の感度を与えるように、第二のフォトダイオード(88)よりも比例的に少ない第一のフォトダイオード(86)を遮蔽している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本書に開示される主題は、ディジタル・イメージング・システムに関し、具体的には、ディジタルX線検出器のダイナミック・レンジを拡大することに関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタルX線イメージング・システムは、有用なラジオグラフィ画像として再構成され得るディジタル・データを生成するために益々広く普及しつつある。現在のディジタルX線イメージング・システムでは、線源からの放射線が、被検体、医用診断応用では典型的には患者へ向けて照射される。放射線の一部は患者を透過して検出器に入射する。検出器の表面が放射線を光フォトンへ変換し、これらの光フォトンが感知される。検出器は、マトリクスを成す不連続な画素又はピクセルに分割されており、各々のピクセル領域に入射する放射線の量又は強度に基づいて出力信号を符号化する。放射線が患者を透過すると放射線強度が変化するため、出力信号に基づいて再構成される画像は、従来の写真フィルム手法によって利用可能であるものと同様の患者の組織の投影を形成する。
【0003】
ディジタルX線イメージング・システムは、放射線科医及び診断を行なう医師によって要求される画像に再構成され、ディジタル方式で記憶され、又は必要となるまで保管され得るディジタル・データを収集する能力のため特に有用である。従来のフィルム方式のラジオグラフィ手法では、実際のフィルムが準備され、露光され、現像されて、放射線科医による利用のために保管されていた。特にフィルムは重要な解剖学的細部を捕捉する能力のため優れた診断ツールを提供するが、撮像を行なう施設又は診療科から様々な医師の位置まで等のように位置と位置との間で伝送することが本質的に困難である。一方、直接型ディジタルX線システムによって生成されるディジタル・データは、所望の任意の位置においてモニタ及び他のソフト・コピィ表示器に表示され得る画像を再構成するように処理及び強調を施され、記憶され、網を介して伝送されて利用されることができる。従来のラジオグラフィ画像をフィルムからディジタル・データへ変換するディジタル化システムでも同様の利点が提供される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7606347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ディジタルX線システムは、画像データを捕捉し、記憶し、伝送する有用性にも拘わらず、依然として多くの問題の克服途上にある。例えば、X線システムは、ラジオグラフィ撮像及びフルオロスコピィ撮像を含む広範な様々な形式の検査に用いられ得る。これら二つの形式の撮像検査は、他の特徴の中でも特に、画像データを生成するのに用いられる放射線レベルが著しく異なることにより特徴付けられる。明確に述べると、ラジオグラフィ画像はフルオロスコピィ画像よりも実質的に高い放射線レベルを用いる。多数の応用において、両方の形式の撮像手順を相次いで実行して異なる形式のデータを得ることが望ましい場合がある。しかしながら、現在のディジタルX線システムは、同じ検出器を用いてフルオロスコピィ撮像及びラジオグラフィ撮像の両方を実行する際に困難に遭遇し得る。尚、かかる検出器は多数の他の応用及び設定において用いられることが特記される。例えば、投影X線応用に加えて、ディジタルX線検出器は計算機式断層写真法撮像及びトモシンセシス撮像に用いられる。また、かかるシステムは、小包及び手荷物検査、セキュリティ・システム(例えば空港警備)、スクリーニング・システム、及び工業用部品検査等において益々利用されている。
【0006】
明確に述べると、現在のディジタルX線システムは、X線シンチレータの下にフォトダイオード及び薄膜トランジスタのアレイを設けたアモルファス・シリコン検出器を用いている。入射X線はシンチレータと相互作用して光フォトンを放出し、光フォトンはフォトダイオードによって吸収されて電子正孔対を生成する。最初は数ボルトの逆バイアスによって充電されているダイオードはこれにより、X線照射の強度に比例して放電される。次いで、ダイオードに付設されている薄膜トランジスタ・スイッチが相次いで起動され、ダイオードは電荷感受回路を通じて再充電されて、この過程に要した電荷が測定される。
【0007】
しかしながら、アモルファス・シリコン検出器のダイナミック・レンジ(すなわち最小曝射量及び最大曝射量)は、幾つかの曝射レベルにおいて各々のピクセルにおいて積算され得る電荷の量によって制限される。高曝射では飽和が起こり、得られる信号が、検出器表面の個々のピクセル領域に入射するフォトンの数又は放射線の強度を表わさない場合がある。結果として、再構成画像において細部が失われ得る。上述のように、これらの検出器の幾つかは、ラジオグラフィ撮像及びフルオロスコピィ撮像の両方を実行する。フルオロスコピィに用いられる検出器は典型的には、可能な限り高い変換係数を可能な限り低い電子雑音と共に要求するが、これらの検出器はラジオグラフィ動作に望ましいものよりも低い最大曝射レベルを有する傾向がある。従って、ラジオグラフィ動作及びフルオロスコピィ動作の両方に用いられる検出器は一般的には、これらの撮像動作の一方については妥協させられている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、複数のピクセル領域を備えたディジタルX線検出器が提供される。各々のピクセル領域は、第一の面積及び第一の感度を有する第一のフォトダイオードと、第一の面積に等しい又はより小さい第二の面積及び第一の感度よりも低い第二の感度を有する第二のフォトダイオードとを含んでいる。このディジタルX線検出器はまた、各々のピクセル領域の第一及び第二のフォトダイオードに結合されて第一及び第二のフォトダイオードの読み出しをイネーブルにするイネーブル回路を含んでいる。このディジタルX線検出器はさらに、各々のピクセル領域の第一及び第二のフォトダイオードに結合されて第一及び第二のフォトダイオードからデータを読み出す読み出し回路を含んでいる。
【0009】
もう一つの実施形態によれば、複数のピクセル領域を備えたディジタルX線検出器が提供される。各々のピクセル領域は、第一の面積を有する第一のフォトダイオードと、第一の面積に等しい又はより小さい第二の面積を有する第二のフォトダイオードとを含んでいる。このディジタルX線検出器はまた、各々のピクセル領域の第一及び第二のフォトダイオードの上に位置する遮蔽構造を含んでおり、遮蔽構造は、第一のフォトダイオードに第一の感度を与え、第二のフォトダイオードに第一の感度よりも低い第二の感度を与えるように、第二のフォトダイオードよりも比例的に少ない第一のフォトダイオードを遮蔽する。
【0010】
第三の実施形態によれば、X線放射線源と、線源からの放射線を着目した被検体を横断した後に受光するように構成されているディジタル検出器とを備えたディジタルX線システムが提供される。検出器は、複数のピクセル領域を有している。各々のピクセル領域は、第一の面積及び第一の感度を有する第一のフォトダイオードと、第一の面積に等しい又はより小さい第二の面積及び第一の感度よりも低い第二の感度を有する第二のフォトダイオードとを含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の上述の特徴、観点及び利点並びに他の特徴、観点及び利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むとさらに十分に理解されよう。図面全体を通して類似の符号は類似の部分を表わす。
【図1】本発明の手法の各観点によるディジタルX線イメージング・システムの全体図である。
【図2】再構成用の画像データを生成するために図1のシステムの検出器において画像データを生成する作用回路の一部の線図である。
【図3】画像データを生成する検出器構造を示す部分断面図である。
【図4】図3の検出器構造におけるピクセル構造を示す上面図である。
【図5】本発明の手法の各観点による曝射レベルに関する様々なピクセル構造の信号レベルのグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、不連続ピクセルの画像データを取得して処理するイメージング・システム10を線図で示す。図示の実施形態では、システム10は、本発明の手法に従って原画像データを取得すること及び表示のために画像データを処理することの両方を行なうように設計されたディジタルX線システムである。但し、以下の議論を通じて、医療診断応用に用いられるディジタルX線システムについての基礎情報及び背景情報を掲げるが、本発明の手法の各観点は、様々な設定(例えば投影X線、計算機式断層写真法撮像、及びトモシンセシス撮像等)において様々な目的(例えば小包、手荷物、車輛及び部品の検査等)に用いられるX線検出器を含むディジタル検出器に適用され得ることに留意されたい。
【0013】
図1に示す実施形態では、イメージング・システム10は、コリメータ14に隣接して配置されたX線放射線源12を含んでいる。コリメータ14は、患者18のような被検体18が配置されている領域に放射線流16を流入させる。放射線の一部20は、被検体18を透過し又は被検体18の周囲を通過して、参照番号22において全体的に表わされるディジタルX線検出器に入射する。後にさらに詳述するように、検出器22は、当該検出器の表面において受光されたX線フォトンを相対的に低いエネルギのフォトンへ変換し、続いて電気信号へ変換して、これらの電気信号が取得され処理されて、被検体18の内部の特徴の画像を再構成する。
【0014】
線源12は、検査系列のための電力信号及び制御信号の両方を供給する電源/制御回路24によって制御される。また、検出器22は、当該検出器において発生される信号の取得を命令する検出器制御器26に結合されている。検出器制御器26はまた、ダイナミック・レンジの初期調節及びディジタル画像データのインタリーブ等のような様々な信号処理作用並びにフィルタ処理作用を実行することができる。電源/制御回路24及び検出器制御器26の両方が、システム制御器28からの信号に応答する。一般的には、システム制御器28は、検査プロトコルを実行して取得された画像データを処理するようにイメージング・システムの動作を命令する。本書の状況では、システム制御器28はまた、典型的には汎用又は特定応用向けディジタル・コンピュータを基本構成要素とする信号処理回路と、コンピュータによって実行されるプログラム及びルーチン並びに構成パラメータ及び画像データを記憶する付設のメモリ回路と、インタフェイス回路等とを含んでいる。図1に示す実施形態では、システム制御器28は、参照番号30に示す表示器又はプリンタのような少なくとも一つの出力装置に結合されている。出力装置は、標準型又は特殊目的のコンピュータ・モニタ及び付設されている処理回路を含み得る。1又は複数の操作者ワークステーション32をさらにシステムに結合して、システム・パラメータを出力し、検査を依頼し、画像を観察する等を行なうことができる。一般的には、システム内に供給される表示器、プリンタ、ワークステーション及び同様の装置は、データ取得構成要素に対してローカルに位置していてもよいし、或いはこれらの構成要素からリモートに位置して、同じ施設若しくは病院内の他の位置又は全く異なる位置等に位置し、インターネット及び仮想私設網等のような1又は複数の構成可変型網を介して画像取得システムに結合されていてもよい。
【0015】
図2は、ディジタル検出器22の作用構成要素の線図である。図2はまた、典型的には検出器制御器26の内部に構成される撮像検出器制御器すなわちIDC34を表わしている。IDC34は、CPU又はディジタル信号プロセッサ、及びメモリ回路を含んでおり、感知された信号の検出器からの取得を命令する。IDC34は、検出器22の内部の検出器制御回路36に結合されている。IDC34は、ケーブル(例えば光ファイバ・ケーブル)を介して又は無線式で検出器制御回路36に結合され得る。IDC34はこれにより、動作時に検出器の内部の画像データについての命令信号を交換する。
【0016】
検出器制御回路36は、参照番号38に全体的に表わされる電源から直流電力を受ける。検出器制御回路36は、システムの動作のデータ取得段階時に信号を送信するのに用いられる横列ドライバ及び縦列読み出し回路のためにタイミング命令及び制御命令を発するように構成されている。従って、回路36は、電力信号及び制御信号を参照/調節器回路40に送信し、回路40からディジタル画像ピクセル・データを受け取る。
【0017】
図示されている現在の好適実施形態では、検出器22は、検査時に検出器表面において受光されるX線フォトンを相対的に低いエネルギの(光)フォトンへ変換するシンチレータから成っている。次いで、光検出器のアレイは光フォトンを、検出器表面の個々のピクセル領域に入射するフォトンの数又は放射線の強度を表わす電気信号へ変換する。後述するように、読み出し電子回路は得られるアナログ信号をディジタル値へ変換し、これらのディジタル値を処理し、記憶して、画像の再構成に続いて表示器30又はワークステーション32等に表示することができる。現在の好適実施形態では、光検出器のアレイはアモルファス・シリコンの単一の基材に形成されている。アレイの素子又はピクセル領域は横列及び縦列に配置されており、各々のピクセル領域が第一及び第二のフォトダイオードから成っている。各々のフォトダイオードは、付設された薄膜トランジスタを有している。各々のダイオードのカソードはトランジスタのソースに接続され、全てのダイオードのアノードが負バイアス電圧に接続されている。各々の横列のトランジスタのゲートは共に接続され、横列電極は後述するように走査用電子回路に接続される。縦列1列のトランジスタのドレインは共に接続され、各々の縦列の電極は読み出し電子回路に接続される。
【0018】
図2に示す特定の実施形態では、例として述べると、横列バス42が、検出器の様々な縦列からの読み出しをイネーブルにし、また所望に応じて横列をディスエーブルにして選択された横列に電荷補償電圧を印加する複数の導体を含んでいる。縦列バス44が、横列が相次いでイネーブルにされる間に各縦列を読み出す付加的な導体を含んでいる。横列バス42は、各々が検出器の一連の横列のイネーブルを命令するイネーブル回路又は一連の横列ドライバ46に結合される。同様に、読み出し回路48が縦列バス44に結合されて、検出器の全ての縦列を読み出す。
【0019】
図示の実施形態では、横列ドライバ46及び読み出し回路48は検出器パネル50に結合されており、検出器パネル50は複数の区画52に細分され得る。各々の区画52は横列ドライバ46の一つに結合され、多数の横列を含んでいる。同様に、各々の縦列モジュール48は、一連の縦列に結合されている。上述のフォトダイオード及び薄膜トランジスタ構成はこれにより、横列56及び縦列58に構成されている一連のピクセル領域又は不連続な画素54を画定する。各横列及び各縦列は、高さ62及び幅64を有する画像マトリクス60を画定している。
【0020】
やはり図2に示すように、各々のピクセル領域54の各々のフォトダイオードは、横列電極又は走査線68が縦列電極又はデータ線70に交差する横列と縦列との交点に全体的に画定される。前述のように、薄膜トランジスタ72が各々のピクセル領域54の各々のフォトダイオード毎に各々の交差位置に設けられている。各々の横列56が横列ドライバ46によってイネーブルにされると、各々のフォトダイオード74からの信号が読み出し回路48を介してアクセスされ、後続の処理及び画像再構成のためにディジタル信号へ変換され得る。
【0021】
図3は、図2に線図で示す構成要素の物理的構成を全体的に示す。図3に示すように、検出器は、後述する各構成要素が配設されたガラス基材76を含み得る。横列電極70及び縦列電極68が基材に設けられて、上述の薄膜トランジスタ及びフォトダイオードを含むアモルファス・シリコン・フラット・パネル・アレイ78が画定されている。アモルファス・シリコン・アレイ78の上にシンチレータ80が設けられて、上述のような検査系列時に放射線を受光する。接点フィンガ82が、縦列電極68からの信号を受け取るために形成され、接点リード84が、接点フィンガ82と外部回路との間で信号を連絡するために設けられている。
【0022】
アモルファス・シリコン・フラット・パネル・アレイ78を有する検出器を採用しているシステムでは、検出器のダイナミック・レンジが、幾つかの曝射レベルにおいて各々のピクセル領域において積算され得る電荷の量によって制限されることが判明している。各々のピクセル領域の最大曝射量(すなわちダイオードの飽和によって制限される)及び最小曝射量(すなわち雑音レベルによって制限される)が検出器のダイナミック・レンジを決定する。フォトダイオードのキャパシタンス及びピクセル領域の変換係数又は利得が、各々のピクセル領域の最大曝射量を決定する。変換係数に対する電子雑音の比が、各々のピクセル領域の最小曝射量を決定する。高曝射では飽和が起こり、得られる信号が、検出器表面の個々のピクセル領域に入射するフォトンの数又は放射線の強度を表わさない場合がある。結果として、再構成画像において細部が失われ得る。これらの検出器の幾つかは、ラジオグラフィ撮像及びフルオロスコピィ撮像の両方を実行する。フルオロスコピィに用いられる検出器は典型的には、可能な限り高い変換係数を可能な限り低い電子雑音と共に要求するが、これらの検出器はラジオグラフィ動作に望ましいものよりも低い最大曝射量レベルを有する傾向がある。従って、ラジオグラフィ動作及びフルオロスコピィ動作の両方に用いられる検出器は一般的には、これらの撮像動作の一方については妥協させられている。
【0023】
本発明の手法は、最小曝射レベルに及ぼす影響を最小限にしつつさらに高い最大曝射レベルを可能にする機構を提供する。図4は、検出器のダイナミック・レンジを拡大するためのピクセル領域54の一実施形態を示す。ピクセル領域54は、間隙90によって離隔されている第一のフォトダイオード86及び第二のフォトダイオード88を含んでいる。被覆層92が、フォトダイオード86及び88の両方を覆っている。被覆層92は酸化インジウムスズで製造され得る。被覆層92はバイアス付き電圧(例えば−9V)に保たれる。構造94が、被覆層92をバイアス付き電圧に保つ。構造94は、各々のピクセル領域54の第一及び第二のフォトダイオード86及び88に共通の電極94を含んでいる。共通の電極94は、アルミニウム又は他の何らかの導体で製造され得る。第一のフォトダイオード86は、データを読み出すための第一のトランジスタ96に結合されている。また、第二のフォトダイオード88は、データを読み出すための第二のトランジスタ98に結合されている。幾つかの実施形態では、トランジスタ96及び98は電界効果トランジスタである。第一及び第二のトランジスタ96及び98は、接続102を介して走査線100に結合され、走査線100を共有している。走査線100はイネーブル回路46の一部を形成する。加えて、トランジスタ96及び98は、接続106を介して底部電極(図示されていない)に結合されている。フォトダイオード86及び88は、走査線100を正電圧に設定することによりトランジスタ96及び98のゲートを正電圧に設定することにより初期充電される。次いで、フォトダイオード86及び88は、トランジスタ96及び98のゲートを負電圧に設定することにより絶縁される。次いで、検出器はX線の曝射を受ける。X線はシンチレータによって光へ変換され、この光がフォトダイオード86及び88に入射する。フォトダイオード86及び88の電荷は、光フォトンがフォトダイオードに入射して電子正孔対を発生すると消尽する。フォトダイオード86及び88からの信号を読むためには、走査線100を正電圧によってパルス駆動することによりトランジスタ96及び98をオンにして、信号をデータ線108及び110を介して取得する。データ線108及び110は読み出し回路48の一部を形成する。第一のトランジスタ96は第一のデータ線108に結合され、第二のトランジスタ98は別個に第二のデータ線110に結合される。イネーブル回路46及び読み出し回路48は、各々のピクセル領域54の第一及び第二のフォトダイオード86及び88の読み出しを提供するように構成される。実際に、別個のデータ線108及び110によって、イネーブル回路46及び読み出し回路48も、各々のピクセル領域の第一及び第二のフォトダイオードの別個の読み出しを提供するように構成される。
【0024】
第一のフォトダイオード86は、第一の高さ118及び第一の幅120から第二のフォトダイオード88の面積122を引いたものによって全体的に画定される第一の面積116を有する。第二のフォトダイオード88は、第二の高さ124及び第二の幅126によって全体的に画定される第二の面積122を有する。第一のフォトダイオード86の面積116は、0.0025mm2〜0.1mm2にわたり得る。第二のフォトダイオード88の面積122は、第一のフォトダイオード86の面積の1%〜100%にわたり得る。第二のフォトダイオード88の面積122は、第一のフォトダイオード86の面積166に等しい又はより小さい。第一のフォトダイオード86の面積116は、第二のフォトダイオード88の面積122の約1倍〜100倍であってよい。図示のように、第二のフォトダイオード88は直線で囲まれた形状であって、ピクセル領域54の中央に位置する上部128に位置する。幾つかの実施形態では、第二のフォトダイオード88は異なる形状を有していてもよいし、且つ/又はピクセル領域54の異なる領域に位置していてもよい。
【0025】
加えて、第一のフォトダイオード86は第一の感度を有し、第二のフォトダイオード88は第二の感度を有する。第二のフォトダイオード88の感度は第一のフォトダイオード86の感度よりも低い。構造94は、各々のピクセル領域54の第一及び第二のフォトダイオード86及び88の上に位置し、各々のピクセル領域54の第一及び第二のフォトダイオード86及び88にそれぞれの感度を与える。構造94は、第一のフォトダイオード86の第一の部分130及び第二のフォトダイオード88の第二の部分132を横断して覆っており、これらの部分130及び132を放射線(すなわち光学的放射線又は光)から遮断し、遮蔽構造94として作用する。構造94は、第二のフォトダイオード88よりも比例的に少ない第一のフォトダイオード86を遮蔽し、このため第二のフォトダイオード88は第一のフォトダイオード86よりも低い感度を有する。さらに明確に述べると、構造94は第一の部位134を有し、第一の部位134は、当該第一の部位134の幅136及び高さ138(すなわち近似的に第一のフォトダイオード86の高さ118から第二のフォトダイオード88の高さ124を引いたもの)によって画定される第一のフォトダイオード86の第一の部分130を覆う。構造94は第二の部位140を有し、第二の部位140は、当該第二の部位140の幅136及び高さ142(すなわち第二のフォトダイオード88の高さ124と同じ)によって画定される第二のフォトダイオード88の第二の部分132を覆う。マスクされ又は遮蔽される第一の部分130は、第一のフォトダイオード86の面積116の約1%〜10%にわたり得る。例えば、構造94の第一の部位134は、第一のフォトダイオード86の面積116の2%を遮蔽し又はマスクし得る。マスクされ又は遮蔽される第二の部分132は、約10%から80%にわたり得る。例えば、構造94の第二の部位140は、第二のフォトダイオード88の面積122の50%を遮蔽し又はマスクし得る。
【0026】
二つのダイオードの感度を異なるものにする機構を、遮蔽構造を利用するものとして記載しているが、他の手段が可能であることを特記しておく。例えば、ダイオードの構造を異なるものにして、所望の感度を達成することができる。具体的には、部分吸収性薄膜例えばダイオードのp+、n+又は真性シリコン層を、二種のダイオードについて異なるものにして、これらのダイオードの感度を異なるものにすることができる。
【0027】
フォトダイオード86及び88についてのこれらの異なる感度及び別個読み出しの能力によって、検出器22はさらに広いダイナミック・レンジを有することができる。前述のように、イメージング・システム10は、検出器22のピクセル領域54から得られる信号を処理する回路を含んでいる。さらに明確に述べると、検出器22(例えば検出器制御回路36若しくは検出器22の他の構成要素)、IDC34、及び/又はシステム制御器28は、第一のフォトダイオード86からのデータを各々のピクセル領域54の第二のフォトダイオード88からのデータに結合して処理するように選択的に構成される処理回路を含んでいる。例えば、低曝射レベルでのラジオグラフィ動作又はフルオロスコピィ動作時に、第一及び第二のフォトダイオード86及び88の両方が各々信号を発生し得る。処理回路はこれらの信号を結合して、各々のピクセル領域54についての信号値を得ることができる。また、処理回路は、各々のピクセル領域54の第一のフォトダイオード86からのデータを第二のフォトダイオード88からのデータとは別個に処理するように選択的に構成される。例えば、高曝射レベルでの動作時に、第一のフォトダイオード86が飽和状態となる場合がある。すると、処理回路は、第二のフォトダイオード88から得られる信号を各々のピクセル領域54についての信号値として用いることができる。幾つかの実施形態では、処理回路は、高曝射レベルでの動作時にフォトダイオード86及び88の両方から得られる信号を結合することができる。幾つかの実施形態では、処理回路はまた、低曝射レベルでの動作時に各々のピクセル領域54の信号値について、信号を結合する代わりに第一のフォトダイオード86からの信号又は第二のフォトダイオード88からの信号の何れかを用いることができる。異なる感度及び別個読み出しを備えたフォトダイオード86及び88の構成の利点は、第一のフォトダイオード86が飽和したときには第二のフォトダイオード88から信号値を与えつつ、低曝射レベルでの動作時には第一のフォトダイオード86にさらに良好な信号対雑音比を与える。
【0028】
図5はさらに、異なる感度の二つのフォトダイオードを有することの利点を示す。図5は、様々なピクセル構造についての信号レベルを曝射レベルに関してグラフで表わしている。図5では、曝射レベルが横軸144に沿って表わされ、信号レベルが縦軸146によって全体的に示されている。線148は単一のフォトダイオード・ピクセル領域を表わす。点150に示す何らかの曝射レベルにおいて、単一のフォトダイオード・ピクセル領域148の信号レベルがフォトダイオードのバイアスのキャパシタンス倍に達し、飽和状態になる。線152によって表わされるさらに高いキャパシタンスを有する単一のフォトダイオード・ピクセル領域は、バイアスのキャパシタンス倍の上限を高めるに過ぎず、点154に示すピクセル領域が飽和に達する曝射レベル及び信号レベルを高めるに留まる。加えて、ピクセル領域152のキャパシタンスを増大させると、ピクセル領域152に関連する雑音が増大し、これにより最小曝射量を高める。代替的には、線156によって表わすように、単一のフォトダイオード・ピクセルについて変換係数又は利得を低下させることができる。しかしながら、このことによってバイアスのキャパシタンス倍、すなわち点158に示す飽和が起こる信号レベルは変化しない。代わりに、変換係数を低下させると飽和を達成する曝射レベルが高まる。さらに、変換係数を低下させるとピクセル領域156に関連する変換係数に対する雑音比も増大し、従って最小曝射量が高まる。
【0029】
しかしながら、上述のような第一及び第二のフォトダイオードを有するピクセル領域の実施形態が上述の支障を克服するのに役立つ。図示のように、線160によって表わされるピクセル領域の第一のフォトダイオードと、線162によって表わされるそれぞれの第二のフォトダイオードとを合わせると単一のフォトダイオード・ピクセル領域148の同じ容量を有する。当業者には認められるように、実際には、二つのフォトダイオードを有するピクセル領域は単一のフォトダイオードのピクセル領域とは異なるキャパシタンスを有し得る。上述のように、第一のフォトダイオードは第二のフォトダイオードに等しい又はより大きい面積及びより高い感度を有している。点164に示す何らかの曝射レベルでは、第一のフォトダイオードについての信号レベルは、単一フォトダイオードのピクセル領域148と同様にフォトダイオードのバイアスのキャパシタンス倍に達し、飽和状態になる。しかしながら、二つのフォトダイオードを有するピクセル領域はまた、第二のフォトダイオード162から得られる信号を含んでいる。第二のフォトダイオード162は、点166に示すさらに低い信号レベルにおいて飽和を得るが、遥かに高い曝射レベルにある。このため、上述のように、また図5に示すように、低曝射では信号160及び162をピクセル領域の第一及び第二のフォトダイオードの両方から得ることができ、高曝射では第一のフォトダイオードでの飽和にも拘わらず信号162をピクセル領域の第二のフォトダイオードから得ることができる。
【0030】
開示される各実施形態の技術的効果は、異なる面積及び感度を有する二つのフォトダイオードを各々有する多数のピクセル領域を設けることを含んでいる。ピクセル領域の各実施形態は、両方のフォトダイオードの部分を遮蔽して二つのフォトダイオードに異なる感度を与える構造を含んでいる。加えて、イネーブル回路及び読み出し回路が、二つのフォトダイオードからの別個の読み出しを可能にする。さらに、処理回路は、低曝射では信号を別個に結合して信号値を得ることができるが、高曝射では、感度が高い方のフォトダイオードが飽和状態となった場合には感度が低い方のフォトダイオードからの信号を用いればよい。このように、二つのフォトダイオードを有するピクセル領域は、検出器の適用範囲を拡大しつつ検出器のダイナミック・レンジを拡大することを可能にする。
【0031】
この書面の記載は、最適な態様を含めて発明を開示し、また任意の装置又はシステムを製造して利用すること及び任意の組み込まれた方法を実行することを含めて当業者が本発明を実施することを可能にするように実例を用いている。本発明の特許付与可能な範囲は特許請求の範囲によって画定され、当業者に想到される他の実例を含み得る。かかる他の実例は、特許請求の範囲の書字言語に相違しない構造要素を有する場合、又は特許請求の範囲の書字言語と非実質的な相違を有する等価な構造要素を含む場合には、特許請求の範囲内にあるものとする。
【符号の説明】
【0032】
10:イメージング・システム
12:線源
14:コリメータ
16:放射線流
18:被検体
20:放射線の一部
22:ディジタルX線検出器
24:電源/制御回路
26:検出器制御器
28:システム制御器
30:表示器/プリンタ
32:操作者ワークステーション
34:撮像検出器制御器
36:検出器制御回路
38:電源
40:参照/調節器回路
42:横列バス
44:縦列バス
46:イネーブル回路
48:読み出し回路
50:検出器パネル
52:区画
54:ピクセル領域
56:横列
58:縦列
60:画像マトリクス
62:高さ
64:幅
68:縦列電極
70:横列電極
72:薄膜トランジスタ
74:フォトダイオード
76:ガラス基材
78:アモルファス・シリコン・フラット・パネル・アレイ
80:シンチレータ
82:接点フィンガ
84:接点リード
86:第一のフォトダイオード
88:第二のフォトダイオード
90:間隙
92:被覆層
94:構造
96:第一のトランジスタ
98:第二のトランジスタ
100:走査線
102、106:接続
108:第一のデータ線
110:第二のデータ線
116:第一の面積
118:第一の高さ
120:第一の幅
122:第二の面積
124:第二の高さ
126:第二の幅
128:中心部に位置する上部
130:フォトダイオード86の第一の部分
132:フォトダイオード88の第二の部分
134:構造94の第一の部位
136:幅
138、142:高さ
140:構造94の第二の部位
144:横軸
146:縦軸
148、152、156、160、162:線
150、154、158、164、166:点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々のピクセル領域(54)が第一の感度を有する第一のフォトダイオード(86)と、前記第一の感度よりも低い第二の感度を有する第二のフォトダイオード(88)とを含んでいる複数のピクセル領域(54)と、
各々のピクセル領域(54)の前記第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードに結合されて該第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードの読み出しをイネーブルにするイネーブル回路(46)と、
各々のピクセル領域(54)の前記第一(86)及び第二のフォトダイオード(88)に結合されて該第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードからデータを読み出す読み出し回路(48)と
を備えたディジタルX線検出器(22)。
【請求項2】
前記第一のフォトダイオード(86)は第一の面積(116)を有し、前記第二のフォトダイオード(88)は前記第一の面積(116)よりも小さい第二の面積(122)を有する、請求項1に記載の検出器(22)。
【請求項3】
各々のピクセル領域(54)は、前記第一のフォトダイオード(86)の第一の部分(130)及び前記第二のフォトダイオード(88)の第二の部分(132)を覆う構造(94)により横断されている、請求項1に記載の検出器(22)。
【請求項4】
前記構造(94)は、前記第一(130)及び第二(132)の部分を光学的放射線から遮蔽する、請求項3に記載の検出器(22)。
【請求項5】
前記構造(94)は、前記第一及び第二の感度を与えるように前記第二のフォトダイオード(88)よりも比例的に少ない前記第一のフォトダイオード(86)を遮蔽する、請求項4に記載の検出器(22)。
【請求項6】
前記構造(94)は、各々のピクセル領域(54)の前記第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードに共通の電極(94)を含んでいる、請求項3に記載の検出器(22)。
【請求項7】
前記イネーブル回路(46)及び前記読み出し回路(48)は、各々のピクセル領域(54)の前記第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードの別個の読み出しを提供するように構成されている、請求項1に記載の検出器(22)。
【請求項8】
各々のピクセル領域(54)の前記第一のフォトダイオード(86)からのデータを前記それぞれの第二のフォトダイオード(88)からのデータとは別個に処理し、また各々のピクセル領域(54)の前記第一のフォトダイオード(86)からのデータを前記それぞれの第二のフォトダイオード(88)からのデータと結合して処理するように選択的に構成される処理回路を含んでいる請求項7に記載の検出器(22)。
【請求項9】
各々のピクセル領域(54)は、前記第一のフォトダイオード(86)からのデータを読み出す第一のトランジスタ(96)と、前記第二のフォトダイオード(88)からのデータを読み出す第二のトランジスタ(98)とを含んでいる、請求項7に記載の検出器(22)。
【請求項10】
各々のピクセル領域(54)が第一の面積(116)を有する第一のフォトダイオード(86)と、前記第一の面積(116)よりも小さい第二の面積(122)を有する第二のフォトダイオード(88)とを含んでいる複数のピクセル領域(54)と、
各々のピクセル領域(54)の前記第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードの上に位置する遮蔽構造(94)であって、前記第一のフォトダイオード(86)に第一の感度を与え、前記第二のフォトダイオード(88)に前記第一の感度よりも低い第二の感度を与えるように前記第二のフォトダイオード(88)よりも比例的に少ない前記第一のフォトダイオード(86)を遮蔽する遮蔽構造(94)と
を備えたディジタルX線検出器(22)。
【請求項11】
前記遮蔽構造(94)は、各々のピクセル領域(54)の前記第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードに共通の電極(94)を含んでいる、請求項10に記載の検出器(22)。
【請求項12】
各々のピクセル領域(54)の前記第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードの読み出しをイネーブルにするように構成されているイネーブル回路(46)と、各々のピクセル領域(54)の前記第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードを読み出すように構成されている読み出し回路(48)とを含んでいる請求項10に記載の検出器(22)。
【請求項13】
前記イネーブル回路(46)及び前記読み出し回路(48)は、各々のピクセル領域(54)の前記第一(86)及び第二(88)のフォトダイオードの別個の読み出しを提供するように構成されている、請求項12に記載の検出器(22)。
【請求項14】
各々のピクセル領域(54)は、前記第一のフォトダイオード(86)からデータを読み出す第一のトランジスタ(96)と、前記第二のフォトダイオード(88)からデータを読み出す第二のトランジスタ(98)とを含んでいる、請求項13に記載の検出器(22)。
【請求項15】
各々のピクセル領域(54)の前記第一のフォトダイオード(86)からのデータを前記それぞれの第二のフォトダイオード(88)からのデータとは別個に処理し、また各々のピクセル領域(54)の前記第一のフォトダイオード(86)からのデータを前記それぞれの第二のフォトダイオード(88)からのデータと結合して処理するように選択的に構成される処理回路を含んでいる請求項13に記載の検出器(22)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−75099(P2012−75099A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206681(P2011−206681)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】