説明

デジタルカメラ

【課題】 従来のカメラでは、被写体の大きさを正確に測定できず、また、被写体の表示画面にスケールを表示させようとすると、撮影時のカメラ操作が煩わしくなってしまう。
【解決手段】 CPU4は、撮影画像の再生表示が開始されると(S11)、記録媒体17から読み出した撮影情報に含まれる被写体21の半画角θおよび撮影距離f’に基づいて、撮像素子2における撮影画像の単位記録画素当たりの被写体21のサイズを算出する(S12,S13)。続いて、算出した撮影画像の単位記録画素当たりの被写体21のサイズを、液晶モニタ7における再生時の撮影画像の単位表示画素当たりのサイズに変換する処理を行う(S14)。続いて、十字キーに対する操作によって、液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定されると、指定された2点間の撮影時の被写体21のサイズLABを算出する(S15,S16)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体を撮像レンズによって撮像素子に投影して撮像するデジタルカメラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のデジタルカメラでは、釣った魚などの被写体の大きさを撮影した写真において表すため、タバコの箱やメジャーといった大きさの分かる比較物を被写体と一緒に撮影する工夫が行われていた。撮影者以外の者が後で写真を見たときには、比較物と対比することによって被写体の大きさが判別できる。
【0003】
また、下記の特許文献1には、撮影時に被写体の大きさを判別できる機能を備えたカメラが開示されている。このカメラでは、撮影時にスケール(目盛り)が撮像(スルー)画像と共に液晶表示部の表示画面に表示される。このスケールにより、被写体に焦点が合ったときの被写体の縦方向や横方向などの実寸を測定することができ、表示画面中の被写体のサイズを判別できる。また、このカメラでは、被写体に焦点が合った状態で、表示画面に表示されている被写体に対して手動または自動で複数の点を指定することにより、指定された複数の点の間の長さが測定される。測定結果は、表示画面に表示されると共に、メモリに記録される。
【特許文献1】特開2005−142938号公報(段落[0084]〜[0094],[0099]〜[0115],[0118]〜[0126])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、タバコの箱やメジャーといった比較物を被写体と一緒に撮影する上記従来の撮影の工夫では、被写体のおおまかな大きさを判別することはできるが、その計測精度は低いものとなってしまう。このため、例えば魚の大きさを厳密に比較することができなかった。
【0005】
また、特許文献1に開示された上記従来のカメラでは、表示画面にスケール(目盛り)をカメラ機能によって表示させるためには、スケール表示のON/OFFの設定操作を撮影時に行わなければならず、撮影時のカメラ操作が煩わしいものになっていた。また、複数の点の間の長さを測定して測定結果を表示画面に表示させるのにも、撮影時に、表示画面上で複数の点の指定を行う必要があるため、撮影時のカメラ操作がやはり煩わしいものになっていた。また、複数の点の指定によって測定される長さは、表示画素の粗いスルー画像におけるものであるため、正確なものではなかった。さらに、測定することのできる長さが、撮影時に複数の点で指定されたものに限られ、撮影後に被写体の他の箇所の長さや他の被写体の長さを測定することができず、融通性に欠けていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
撮像レンズのレンズ位置から得られる、被写体とこの被写体が撮像レンズを介して投影される撮像素子との間の撮影距離、および撮像レンズによって撮像素子に投影される被写体の画角に基づいて、撮像素子に投影される被写体のサイズを算出する被写体サイズ算出手段と、
この被写体サイズ算出手段によって算出される被写体のサイズを、被写体が投影された撮像素子の記録画素数で除して、撮像素子の単位記録画素当たりの被写体サイズを算出する単位サイズ算出手段と、
この単位サイズ算出手段によって算出される単位記録画素当たりの被写体サイズの情報、または、単位サイズ算出手段による単位記録画素当たりの被写体サイズの算出に必要な情報を、撮像素子に投影された被写体の撮影画像と共に記録する記録手段と
を備えてデジタルカメラを構成した。
【0007】
この構成によれば、撮像レンズのレンズ位置から、被写体と撮像素子との間の撮影距離、および被写体の画角が得られ、これら撮影距離および画角に基づいて被写体サイズ算出手段により被写体のサイズが算出される。算出された被写体のサイズは、単位サイズ算出手段により、被写体が投影された撮像素子の記録画素数で除され、撮像素子の単位記録画素当たりの被写体サイズが算出される。算出された単位記録画素当たりの被写体サイズの情報、または、単位記録画素当たりの被写体サイズの算出に必要な情報は、撮像素子に投影された被写体の撮影画像と共に記録手段によって記録される。このため、被写体の撮影画像を再生表示するときに、記録手段によって記録されたいずれかの上記情報に基づいて、単位記録画素当たりの被写体サイズから被写体のサイズを正確に算出することが可能となる。よって、従来の、比較物と被写体とを一緒に撮影して、比較物との対比のうえで被写体のサイズを把握する場合や、スルー画像において指定された点間の長さが測定される場合に比べて、被写体のサイズを高い精度で測定することができるようになる。また、撮影時には、各手段による各処理がカメラ機能として行われ、撮影者は、従来のカメラのように、スケール(目盛り)を表示させるON/OFFの設定操作や、複数の点を指定する操作などのカメラ操作を行う必要がないため、撮影時の操作が煩わしくなってしまうことが防止される。
【0008】
また、本発明は、
撮像素子によって撮影された被写体の撮影画像を電子処理により拡大する電子ズーム手段を備え、
単位サイズ算出手段が、被写体サイズ算出手段によって算出される被写体のサイズを、被写体が投影された撮像素子の記録画素数で除したものを、電子ズーム手段により拡大される被写体の撮影画像の拡大倍率でさらに除して、撮像素子の単位記録画素当たりの被写体サイズを算出することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、電子ズーム手段により被写体の撮影画像が拡大される場合には、被写体サイズ算出手段によって算出される被写体のサイズを撮像素子の記録画素数で除したものを、電子ズーム手段の拡大倍率でさらに除することで、撮像素子の単位記録画素当たりの被写体サイズが算出される。このため、電子ズーム手段により被写体の撮影画像が拡大される場合にも、撮像素子の単位記録画素当たりの被写体サイズが正確に算出される。
【0010】
また、本発明は、
撮像素子によって撮影された被写体の撮影画像を所定の表示画素サイズで再生表示する再生表示手段と、
この再生表示手段の表示画素サイズの撮像素子の記録画素サイズに対する比に、記録手段に記録された単位記録画素当たりの被写体サイズ、または、記録手段に記録された単位記録画素当たりの被写体サイズの算出に必要な情報を基に単位サイズ算出手段によって算出される単位記録画素当たりの被写体サイズを乗じて、再生表示手段の単位表示画素当たりの表示サイズを算出する表示サイズ算出手段と
を備えていることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、表示サイズ算出手段により、表示画素サイズの記録画素サイズに対する比に、単位サイズ算出手段によって算出される単位記録画素当たりの被写体サイズを乗じることで、再生表示手段の単位表示画素当たりの表示サイズが算出される。
このため、再生表示手段によって再生表示される撮影画像中における被写体のサイズを、表示サイズ算出手段によって算出された単位表示画素当たりの表示サイズに基づいて、算出することが可能となる。また、再生表示手段により撮影画像が再生表示されているときに、表示サイズ算出手段により算出される単位表示画素当たりの表示サイズに基づいて、再生表示される撮影画像にスケールや被写体のサイズの情報を表示させたりするなどして、再生表示画像を見る者の好みに合わせた表示画像にすることが可能になる。
【0012】
また、本発明は、
再生表示手段によって再生表示される被写体の撮影画像の任意の2点を指定する指定手段と、
この指定手段によって指定された2点間の表示画素数に、表示サイズ算出手段によって算出される単位表示画素当たりの表示サイズを乗じて、指定手段によって指定された2点間のサイズを算出する2点間サイズ算出手段と、
この2点間サイズ算出手段によって算出されたサイズを再生表示手段に表示させる表示手段と
を備えていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、指定手段によって指定された撮影画像の任意の2点間の表示画素数に、撮像素子の単位記録画素当たりの被写体サイズを基に表示サイズ算出手段によって算出される単位表示画素当たりの表示サイズを乗じることで、指定手段によって指定された2点間の被写体のサイズが2点間サイズ算出手段によって算出される。算出された2点間の被写体のサイズは、表示手段によって再生表示手段に表示させられる。このため、被写体の任意の2点間のサイズは、撮像素子の単位記録画素当たりの被写体サイズを基に算出されるため、従来のスルー画像で指定された長さが測定される場合よりも正確に算出されるようになる。また、撮影画像の再生時に任意の2点を指定するため、測定する被写体の箇所および種類は従来のカメラのように限定されず、所望の被写体の所望の任意の2点間のサイズを測定することが可能である。
【0014】
また、再生表示手段によって再生表示される被写体の撮影画像を拡大する機能を有する場合には、単位表示画素当たりの表示サイズが拡大表示の表示倍率に応じて小さくなる。このため、この拡大機能により被写体の撮影画像が拡大された状態では、撮影画像を拡大しない場合に比べて、指定手段により任意の2点を細かく指定することができると共に、2点間サイズ算出手段により算出される表示サイズの精度を向上させることが可能になる。また、指定手段としてタッチパネルが用いられる場合には、再生表示画像を見る者は、撮影画像の所望の2点間を結ぶ曲線経路も指定でき、所望の2点間の直線距離だけでなく、2点間の曲線経路の距離をも測定することができる。よって、撮影画像の2点間の種々の経路に沿う被写体サイズを容易に得ることが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によるデジタルカメラによれば、上記のように、従来の、比較物と被写体とを一緒に撮影して、比較物との対比のうえで被写体のサイズを把握する場合や、スルー画像において指定された点間の長さが測定される場合に比べて、被写体のサイズを高い精度で測定することができるようになる。また、撮影時に、撮影者は、従来のカメラのようなカメラ操作を行う必要がないため、撮影時の操作が煩わしくなってしまうことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明を実施するための最良の形態によるデジタルカメラについて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態によるデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【0018】
本実施形態におけるデジタルカメラは、ズームレンズ11およびフォーカスレンズ12からなる光学レンズ系1、撮像素子2、A/D変換部3、CPU(中央演算処理部)4、画像処理部5、バッファメモリ6、液晶モニタ7ならびにI/F部(インターフェース部)8を備えて構成されている。A/D変換部3、CPU4、画像処理部5、バッファメモリ6、液晶モニタ7およびI/F部8は、それぞれバス9に接続されている。また、CPU4には、撮影する際に撮影者により押圧操作されるレリーズボタン(シャッターボタン)、光学ズーム機能を使用する際に操作されるズームボタン、および種々の操作に用いられる十字キーなどからなる操作部10が接続されている。
【0019】
ズームレンズ11およびフォーカスレンズ12を介して導かれた光は、撮像素子2の受光面2a上に被写体の画像を投影する。ズームレンズ11およびフォーカスレンズ12は、CPU4に接続されたステッピングモータ14,16がCPU4の制御によってそれぞれ駆動されて、矢示するように光軸上を前後に移動する。ズームレンズ11が光軸上を移動することにより、撮像素子2の受光面2a上に投影される被写体の画像は拡大または縮小され、光学ズームの拡大倍率が調節される。また、フォーカスレンズ12が光軸上を移動することにより、撮像素子2の受光面2a上に投影される被写体像のピントが調節される。ステッピングモータ14,16によって移動した各レンズ11,12の光軸上の位置は、各レンズ11,12に接続された位置検出部13,15により検出されて、CPU4に出力される。
【0020】
撮像素子2は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などからなる。光学レンズ系1によってこの撮像素子2の受光面2a上に結像した被写体像はアナログの撮像信号に変換され、変換された撮像信号は、A/D変換部3においてデジタル信号に変換される。画像処理部5は、A/D変換部3でデジタル信号に変換された撮像信号に対して、ホワイトバランス処理やガンマ補正、圧縮処理などの画像処理を行い、撮影された画像の画像データを生成する。また、画像処理部5は、撮像素子2によって撮影された被写体の撮影画像を電子処理により拡大する電子ズーム手段を構成している。本実施形態によるデジタルカメラは、上述したズームレンズ11による光学ズーム機能に加え、画像処理部5における電子ズーム処理によって被写体像を拡大するズーム機能を備えている。画像処理部5によって生成された画像データは、CPU4により、バッファメモリ6に格納されると共に、I/F部8を介してSDカードやコンパクトフラッシュ(登録商標)などの取り外しが自由に行える記録媒体17に記録される。また、CPU4は、記録媒体17に記録された画像データに基づいて、操作部10に対する撮影者の操作に従い、撮影画像を液晶モニタ7に表示させる。液晶モニタ7には、撮影画像だけでなく、デジタルカメラの操作情報なども表示される。
【0021】
図2(a)は、液晶モニタ7の表示面の概略構成を示す図であり、同図(b)は、撮像素子2の受光面2aの概略構成を示す図である。
【0022】
液晶モニタ7は、同図(a)に示すように、例えば、表示画素41が縦方向に480個,横方向に640個配列されたVGA液晶で構成されており、最大で640px(ピクセル)×480pxの解像度の画像を表示する。各表示画素41は、縦方向および横方向にa1およびb1の一定の間隔(ピッチ)で配列されている。液晶モニタ7は、撮像素子2によって撮影された被写体の撮影画像を所定の表示画素サイズ、例えば640px×480pxや320px×240pxなどの表示画素サイズで再生表示する再生表示手段を構成している。
【0023】
また、同図(b)に示すように、撮像素子2の受光面2aには、例えば、記録画素42が縦方向に2000個,横方向に4000個配列されており、最大で8M(4000×2000)の解像度の画像が撮像される。各記録画素42は、縦方向および横方向にa2およびb2の一定の間隔(ピッチ)で配列されている。
【0024】
図3は、被写体21が光学レンズ系1を介して撮像素子2に投影された状態を概念的に示した概略図である。
【0025】
同図に示すように、3人の人物21A,21B,21Cで構成される被写体21は、光学レンズ系1を介して撮像素子2の受光面2aに投影されており、ピントが合った状態になっている。この状態で、焦点距離はf、被写体21の画角の半分はθとなっている。また、撮像素子2の受光面の一辺のサイズ(長さ)はL、被写体21のサイズはL’であり、被写体21と光学レンズ系1との間の撮影距離は、f’となっている。
【0026】
このとき、被写体21のサイズL’、撮影距離f’および被写体21の半画角θの間には、次の(1)式の関係が成立する。
L’/2 = f’tanθ ・・・(1)
【0027】
CPU4により、上記の(1)式により算出される被写体21のサイズL’を、撮像素子2の一辺の長さLにおける記録画素数で除することで、撮像素子2の単位記録画素(1記録画素)当たりの被写体サイズが算出される。
【0028】
上記の被写体21の半画角θおよび撮影距離f’は、フォーカスレンズ12の光軸方向におけるレンズ位置を示すAF(オートフォーカス)レンズポジション、および、ズームレンズ11の光軸方向におけるレンズ位置を示すズームポジションに基づいて、それらの値が定まる。本実施形態では、これらの値はAFレンズポジションおよびズームポジションに応じたテーブルとして予めメモリに記録されており、CPU4は、このテーブルを参照することで、各ポジションから直ちに半画角θおよび撮影距離f’の各値を得ることができる。
【0029】
単位記録画素当たりの被写体サイズの算出に必要な上記のθ、f’の情報は、撮影画像の画像データと共に上述した記録媒体17に記録される。記録媒体17は、後述する単位サイズ算出手段による単位記録画素当たりの被写体サイズの算出に必要な情報(θ、f’)を、撮像素子2に投影された被写体21の撮影画像と共に記録する記録手段を構成している。
【0030】
CPU4は、光学レンズ系1を構成するズームレンズ11およびフォーカスレンズ12の各レンズ位置から得られる、被写体21とこの被写体21が光学レンズ系1を介して投影される撮像素子2との間の撮影距離f’、および光学レンズ系1によって撮像素子2に投影される被写体21の半画角θに基づいて、撮像素子2に投影される被写体21のサイズL’を(1)式によって算出する被写体サイズ算出手段を構成していると共に、この被写体サイズ算出手段によって算出される被写体21のサイズL’を、被写体21が投影された撮像素子2の記録画素数mで除して、撮像素子2の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mを算出する単位サイズ算出手段を構成している。本実施形態では、この単位サイズ算出手段は、被写体サイズ算出手段によって算出される被写体21のサイズL’を、被写体21が投影された撮像素子2の記録画素数mで除したものL’/mを、電子ズーム手段により拡大される被写体21の撮影画像の拡大倍率nでさらに除して、撮像素子2の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mnを算出する。また、CPU4は、液晶モニタ7の640px×480px、320px×240pxなどといった表示画素サイズの、撮像素子2の4000×2000といった記録画素サイズに対する比R(例えば640/4000,480/2000)に、記録媒体17に記録された単位記録画素当たりの被写体サイズの算出に必要な情報(θ、f’)を基に単位サイズ算出手段によって算出される単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mを乗じて、液晶モニタ7の単位表示画素当たりの表示サイズRL’/mを算出する表示サイズ算出手段も構成している。
【0031】
また、操作部10を構成する十字キーは、液晶モニタ7によって再生表示される被写体21の撮影画像の任意の2点を、液晶モニタ7に表示されるカーソルによって指定する指定手段を構成している。また、CPU4は、この十字キーによって指定された2点間の表示画素数Pに、表示サイズ算出手段によって算出される単位表示画素当たりの表示サイズRL’/mを乗じて、十字キーによって指定された2点間の被写体サイズPRL’/mを算出する2点間サイズ算出手段を構成していると共に、この2点間サイズ算出手段によって算出された被写体サイズPRL’/mを液晶モニタ7にスケールや数値で表示させる表示手段を構成している。
【0032】
図4は、本実施形態のデジタルカメラによる撮影の際に、CPU4によって行われる撮影時処理の概略を示すフローチャートである。
【0033】
この撮影時処理では、まず、CPU4は、撮影者によってレリーズボタンが操作されて撮影が開始されたか否かを判別する(図4,S1参照)。撮影者によってレリーズボタンが操作されて撮影が開始されると、S1の判別は“YES”となり、CPU4は、次に、AF処理(オートフォーカス処理)を開始させる(S2)。AF処理では、CPU4は、位置検出部15によって検出される位置信号に基づいてフォーカスレンズ12の位置をステッピングモータ16で制御し、被写体21が撮像素子2の受光面2aに結像してピントが合うように、フォーカスレンズ12を光軸上で移動させる処理を行う。続いて、CPU4は、AF合焦になったか、すなわちS2のAF処理で被写体21にピントが合う位置にフォーカスレンズ12が移動したか否かを判別する(S3)。この判別が“NO”である場合、CPU4は、引き続き被写体21のピントが合うようにフォーカスレンズ12を移動させて、ピント合わせを行う。AF合焦になってS3の判別が“YES”になると、CPU4は、シャッターを開いて撮像素子2の受光面2aに被写体を投影させて、撮影処理を行う(S4)。
【0034】
次に、CPU4は、被写体21のサイズ(距離)の算出に必要な被写体21の半画角θおよび撮影距離f’の撮影情報を、予め用意されている前述したテーブルを参照して取得する(S5)。続いて、CPU4は、S5で取得した撮影情報がヘッダー部に格納された、被写体21の撮影画像データを含む画像ファイルを生成し、この画像ファイルを記録媒体17に記録する(S6)。S6の処理が終了すると、撮影時処理は終了する。
【0035】
図5は、液晶モニタ7に撮影画像を再生表示させてCPU4により行われる再生時処理の概略を示す図である。
【0036】
この再生時処理では、まず、CPU4は、液晶モニタ7において撮影画像の再生表示が開始されたか否かを判別する(図5,S11参照)。撮影画像の再生表示が開始されてS11の判別が“YES”になると、CPU4は、図4,S6の処理で記録媒体17に記録された撮影画像データおよび撮影情報を、記録媒体17から読み出す処理を行う(S12)。続いて、CPU4は、S12で読み出した撮影情報に含まれる被写体21の半画角θおよび撮影距離f’に基づいて、撮像素子2における撮影画像の単位記録画素当たりの被写体21のサイズを算出する(S13)。具体的には、(1)式で算出された被写体21のサイズL’を撮像素子2の記録画素数mで除することで、単位記録画素当たりの被写体21のサイズL’/mを算出する。また、電子ズームによって被写体21の撮影画像が拡大されている場合には、(1)式で算出した被写体21のサイズL’を撮像素子2の記録画素数mで除したものL’/mを、電子ズームにより拡大される被写体21の撮影画像の拡大倍率nでさらに除することで、単位記録画素当たりの被写体21のサイズL’/mnを算出する。
【0037】
次に、CPU4は、S13で算出した撮像素子2における撮影画像の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mまたはL’/mnを、液晶モニタ7における再生時の撮影画像の単位表示画素(1画素)当たりのサイズ(距離)に変換する処理を行う(S14)。具体的には、CPU4は、液晶モニタ7の表示画素サイズの撮像素子2の記録画素サイズに対する比Rに、S13で算出した撮影画像の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mまたはL’/mnを乗じて、液晶モニタ7における再生時の撮影画像の単位表示画素当たりのサイズRL’/mまたはRL’/mnを算出する。
【0038】
次に、CPU4は、十字キーに対する操作によって、液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定済みになっているか否かを判別する(S15)。このS15の判別処理は、“YES”になるまで繰り返し行われる。液晶モニタ7に再生表示される撮影画像の任意の2点の位置が指定されて、S15の判別が“YES”になると、CPU4は、S15で指定された2点間の撮影時の被写体21のサイズ(距離)を算出する(S16)。
【0039】
例えば、図6(a)に示すように、上述した人物21A,21B,21Cからなる被写体21の撮影された撮影画像が液晶モニタ7において再生表示されている場合に、中央部に表示される人物21Bの頭部,足部にそれぞれカーソルが合わされた状態で十字キーが操作されて、2点A,Bが指定されると、CPU4は、液晶モニタ7の表示面をxy平面としたときの2点A,Bの座標をそれぞれA(x,y),B(x,y)として、2点AB間のx方向の成分(x−x)およびy方向の成分(y−y)においてそれぞれ含まれる表示画素数P1,P2を算出する。そして、算出した各方向の表示画素数P1,P2に、S14で算出した単位表示画素当たりのサイズを乗じたものをそれぞれX,Yとして、指定された2点間のサイズ(距離)LABを、次の(2)式により算出する。
AB =(X+Y1/2 ・・・(2)
【0040】
表示画面の右下方には、上述したS14の処理で算出された単位表示画素当たりの被写体サイズに基づいて、1目盛りが20cmに設定されたスケール(目盛り)が表示されている。
【0041】
続いて、CPU4は、S16で算出した2点間の撮影時の被写体サイズ(距離)を、液晶モニタ7に距離表示する(S17)。例えば、上記の例の場合には、図6(a)に示すように、人物21Bの頭部および足部間にサイズ(距離)LABを表示する。S17の処理が終了すると、再生時処理は終了する。
【0042】
また、被写体21の指定された2点間のサイズLABの算出は、次のように、液晶モニタ7に表示される被写体21を拡大表示させてから行うこともできる。
【0043】
図6(b)は、図6(a)に点線枠7aで示す部分が2倍に拡大されて液晶モニタ7に表示された状態を示している。同図(b)に示すように、表示画面の右下方に表示されるスケール(目盛り)は、1目盛りが10cmになっている。このように人物21Bの被写体が2倍に拡大された状態で2点A,Bが指定された場合においても、図5,S16の処理と同様に、指定された2点間のサイズLABが上述した(2)式に基づいて算出され、S17の処理と同様にサイズLABが表示される。
【0044】
このような本実施形態によるデジタルカメラによれば、上述したように、図4,S5の処理で、予め用意されたテーブルを参照することにより、AFレンズポジションおよびズームポジションから、被写体21と光学レンズ系1との間の撮影距離f’、および被写体21の半画角θが得られ(図3参照)、単位記録画素当たりの被写体サイズの算出に必要な情報であるこれらθ,f’は、撮像素子2に投影された被写体21の撮影画像と共に記録媒体17によって記録される(図4,S6参照)。そして、これら撮影距離f’および半画角θに基づいて被写体サイズ算出手段により被写体21のサイズL’が(1)式によって算出され、算出された被写体21のサイズL’が、単位サイズ算出手段により、被写体21が投影された撮像素子2の記録画素数mで除されて、撮像素子2の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mが算出される(図5,S13参照)。このため、被写体21の撮影画像を液晶モニタ7に再生表示するときに、記録媒体17によって記録された上記の撮影情報に基づいて、単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mから被写体のサイズL’を正確に算出することが可能となる。よって、従来の、比較物と被写体とを一緒に撮影して、比較物との対比のうえで被写体のサイズを把握する場合や、スルー画像において指定された点間の長さが測定される場合に比べて、被写体21のサイズを高い精度で測定することができるようになる。また、撮影時には、単位記録画素当たりの被写体サイズの情報の算出に必要な情報(θ,f’)の記録処理だけがカメラ機能として行われ、撮影者は、従来のカメラのように、スケール(目盛り)を表示させるON/OFFの設定操作や、複数の点を指定する操作などのカメラ操作を行う必要がないため、撮影時の操作が煩わしくなってしまうことが防止される。
【0045】
また、本実施形態では、電子ズーム手段により被写体21の撮影画像が拡大される場合には、被写体サイズ算出手段によって算出される被写体21のサイズL’を撮像素子2の記録画素数mで除したものL’/mを、電子ズーム手段の拡大倍率nでさらに除することで、撮像素子2の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mnが算出される(図5,S13参照)。このため、電子ズーム手段により被写体21の撮影画像が拡大される場合にも、撮像素子2の単位記録画素当たりの被写体サイズが正確に算出される。
【0046】
また、本実施形態では、表示サイズ算出手段により、表示画素サイズの記録画素サイズに対する比Rに、単位サイズ算出手段によって算出される単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mを乗じることで、液晶モニタ7の単位表示画素当たりの表示サイズRL’/mが算出される(図5,S14参照)。このため、液晶モニタ7によって再生表示される撮影画像中における被写体21のサイズを、表示サイズ算出手段によって算出された単位表示画素当たりの表示サイズRL’/mに基づいて、算出することが可能となる。また、液晶モニタ7により撮影画像が再生表示されているときに、表示サイズ算出手段により算出される単位表示画素当たりの表示サイズRL’/mに基づいて、再生表示される撮影画像に図6に示すようなスケールや、被写体21の表示サイズの情報を表示させたりするなどして、再生表示画像を見る者の好みに合わせた表示画像にすることが可能になる。
【0047】
また、本実施形態では、十字キーによって指定された被写体21Bの撮影画像の任意の2点A(x,y),B(x,y)間の表示画素数P1,P2に、撮像素子2の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mを基に表示サイズ算出手段によって算出される単位表示画素当たりの表示サイズRL’/mを乗じることで、十字キーによって指定された2点間のサイズLABが2点間サイズ算出手段によって算出される(図5,S16、図6(a)、(2)式参照)。算出された2点間のサイズLABは、表示手段によって液晶モニタ7に表示させられる(図5,S17参照)。このため、被写体21Bの任意の2点A,B間のサイズLABは、撮像素子2の単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mを基に算出されるため、従来のスルー画像で指定された長さが測定される場合よりも正確に算出されるようになる。また、撮影画像の再生時に任意の2点A,Bを指定するため、測定する被写体の箇所および種類は従来のカメラのように限定されず、所望の被写体の所望の任意の2点間のサイズを測定することが可能である。
【0048】
また、本実施形態によるデジタルカメラでは、液晶モニタ7によって再生表示される被写体21Bの撮影画像を拡大する機能を有するので、単位表示画素当たりの表示サイズRL’/mが拡大表示の表示倍率に応じて小さくなる(図6(b)参照)。このため、この拡大機能により被写体21Bの撮影画像が拡大された状態では、撮影画像を拡大しない場合に比べて、十字キーにより任意の2点A,Bを細かく指定することができると共に、2点間サイズ算出手段により算出される表示サイズの精度を向上させることが可能になる。
【0049】
なお、上記実施形態では、単位記録画素当たりの被写体サイズの算出に必要な情報であるθ,f’が撮影画像と共に記録媒体17によって記録される場合を説明したが(図4,S6参照)、図5,S13の処理のように算出される単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mの情報自体が、被写体21の撮影画像と共に予め記録媒体17によって記録されるようにしてもよい。この構成によれば、被写体21の撮影画像を液晶モニタ7に再生表示するときに、図5,S12の処理で、記録媒体17に記録された単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mの情報を読み出して、単位記録画素当たりの被写体サイズL’/mから被写体のサイズL’を正確に算出することが可能となる。
【0050】
また、上記実施形態では、液晶モニタ7において再生表示される撮影画像の任意の2点の指定が、十字キーに対する操作によって行われる場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、任意の2点の指定が、液晶モニタ7の表面に設けられたタッチパネルに対する操作入力によって行われる構成とすることも可能である。この構成によれば、被写体21の再生表示画像を見る者は、被写体21の撮影画像の所望の2点間を結ぶ曲線経路も指定でき、所望の2点間の直線距離だけでなく、2点間の曲線経路の距離をも測定することができる。よって、被写体21の撮影画像の2点間の種々の経路に沿う被写体サイズを容易に得ることが可能になる。
【0051】
また、上記実施形態では、ズーム機能が、光学ズームおよび電子ズームの併用により行われる場合を説明したが、本発明はこれに限られるものではない。ズーム機能は、光学ズームまたは電子ズームのいずれか一方だけが用いられて行われるものであってもよい。また、ズーム機能を一切備えない構成とすることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
上記実施形態においては、本発明をデジタルカメラに適用した場合について説明したが、動画像を撮影するデジタルビデオカメラを静止画像を撮影するデジタルカメラに用いる場合を始めとして、被写体を撮像レンズによって撮像素子に投影して撮像する他の種々の撮影装置をデジタルカメラとして用いる場合に本発明を適用することも可能である。このような装置に本発明を適用した場合においても、上記実施形態と同様な作用効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本実施形態によるデジタルカメラの構成を示すブロック図である。
【図2】(a)は、本実施形態によるデジタルカメラの液晶モニタの表示面の概略構成を示す図、(b)は、本実施形態によるデジタルカメラの撮像素子の受光面の概略構成を示す図である。
【図3】被写体が光学レンズ系を介して撮像素子に投影された状態を概念的に示した概略図である。
【図4】本実施形態のデジタルカメラによる撮影の際に、CPUによって行われる撮影時処理の概略を示すフローチャートである。
【図5】本実施形態のデジタルカメラにおいて、液晶モニタに撮影画像を再生表示させてCPUにより行われる再生時処理の概略を示す図である。
【図6】(a)は、本実施形態のデジタルカメラにおいて、撮影画像が液晶モニタにおいて再生表示された状態を示す図であり、(b)は、(a)に点線枠で示す部分が拡大されて液晶モニタにおいて再生表示された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1…光学レンズ系
2…撮像素子
3…A/D変換部
4…CPU
5…画像処理部
6…バッファメモリ
7…液晶モニタ
8…I/F部
10…操作部
11…ズームレンズ
12…フォーカスレンズ
13,15…位置検出部
14,16…ステッピングモータ
21…被写体
21A,21B,21C…人物
41…表示画素
42…記録画素
θ…半画角
f’…撮影距離
L’…被写体のサイズ
AB…指定された2点間のサイズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像レンズのレンズ位置から得られる、被写体とこの被写体が前記撮像レンズを介して投影される撮像素子との間の撮影距離、および前記撮像レンズによって前記撮像素子に投影される前記被写体の画角に基づいて、前記撮像素子に投影される前記被写体のサイズを算出する被写体サイズ算出手段と、
この被写体サイズ算出手段によって算出される前記被写体のサイズを、前記被写体が投影された前記撮像素子の記録画素数で除して、前記撮像素子の単位記録画素当たりの被写体サイズを算出する単位サイズ算出手段と、
この単位サイズ算出手段によって算出される単位記録画素当たりの被写体サイズの情報、または、前記単位サイズ算出手段による単位記録画素当たりの被写体サイズの算出に必要な情報を、前記撮像素子に投影された前記被写体の撮影画像と共に記録する記録手段と
を備えていることを特徴とするデジタルカメラ。
【請求項2】
前記撮像素子によって撮影された前記被写体の撮影画像を電子処理により拡大する電子ズーム手段を備え、
前記単位サイズ算出手段は、前記被写体サイズ算出手段によって算出される前記被写体のサイズを、前記被写体が投影された前記撮像素子の記録画素数で除したものを、前記電子ズーム手段により拡大される前記被写体の撮影画像の拡大倍率でさらに除して、前記撮像素子の単位記録画素当たりの被写体サイズを算出することを特徴とする請求項1に記載のデジタルカメラ。
【請求項3】
前記撮像素子によって撮影された前記被写体の撮影画像を所定の表示画素サイズで再生表示する再生表示手段と、
この再生表示手段の表示画素サイズの前記撮像素子の記録画素サイズに対する比に、前記記録手段に記録された単位記録画素当たりの被写体サイズ、または、前記記録手段に記録された単位記録画素当たりの被写体サイズの算出に必要な情報を基に前記単位サイズ算出手段によって算出される単位記録画素当たりの被写体サイズを乗じて、前記再生表示手段の単位表示画素当たりの表示サイズを算出する表示サイズ算出手段と
を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のデジタルカメラ。
【請求項4】
前記再生表示手段によって再生表示される前記被写体の撮影画像の任意の2点を指定する指定手段と、
この指定手段によって指定された2点間の表示画素数に、前記表示サイズ算出手段によって算出される単位表示画素当たりの表示サイズを乗じて、前記指定手段によって指定された2点間のサイズを算出する2点間サイズ算出手段と、
この2点間サイズ算出手段によって算出されたサイズを前記再生表示手段に表示させる表示手段と
を備えていることを特徴とする請求項3に記載のデジタルカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−50597(P2010−50597A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−211455(P2008−211455)
【出願日】平成20年8月20日(2008.8.20)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】