デバイス及びその製造方法
【課題】所望の領域に所望の材料を配置するデバイスにおいて、プロセスの簡素化を行う。
【解決手段】表面に第1の材料を有する基板101上に、第2の材料と第3の材料とを含む膜を形成した後、エネルギー照射により、第3の材料の表面張力を利用して、基板表面の第1の領域上に前記第2の材料102が、前記基板表面の第2の領域上に前記第3の材料103が来るように、前記第2の材料および前記第3の材料を移動させる。
【効果】簡便に微細なデバイスを製造できる。
【解決手段】表面に第1の材料を有する基板101上に、第2の材料と第3の材料とを含む膜を形成した後、エネルギー照射により、第3の材料の表面張力を利用して、基板表面の第1の領域上に前記第2の材料102が、前記基板表面の第2の領域上に前記第3の材料103が来るように、前記第2の材料および前記第3の材料を移動させる。
【効果】簡便に微細なデバイスを製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性の異なる複数の領域を持つデバイスとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスとはエネルギーを与えることで生じる化学的性質、物理的性質が異なる微少領域を利用するもののことで、例えば光ディスクや磁気ディスクのような電子デバイス、半導体デバイス、ナノサイズの凹凸形状を利用するものなどのことである。
【0003】
デバイスの例として、半導体や光ディスクが挙げられるが、これらの凹凸パターンの形成では、基板上に塗布したレジストにレーザ光や電子線(EB)照射によって潜像を形成し、その潜像を現像して照射した部分あるいはしなかった部分を除去することで凹凸パターンを形成する、光エネルギーを利用する方法が知られている。どちらの場合でも、レーザ光やEBのスポット径を小さくすればより微細なパターンが形成される。スポット径の縮小は、光源波長を短くすることや、対物レンズの開口数(NA)を大きくすることで対応できる。他に、熱エネルギーを利用する方法としては、非特許文献1記載の結晶、非晶質のどちらか一方を選択的に除去することで凹凸パターンを形成する加工方法が記載されている。
【0004】
また別のデバイスの例として、ハードディスク等の磁気記録媒体が挙げられるが、これは、磁力を印加することで変化する磁性の向きの違いを信号としている。近年、記録層を構成する磁性粒子の微細化、材料の変更、ヘッド加工の微細化等の改良により、著しい面記録密度の向上が図られている。そこで、一層の面記録密度の向上を実現可能である磁気記録媒体の候補として、特許文献1に記録層を所定の凹凸パターンで形成し、凹凸パターンの凹部に非磁性材を充填して記録エリアを分割するディスクリートタイプの磁気記録媒体が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−97419号
【非特許文献1】Applied Physics Letters, Vol.85, No.4, 639-641 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のいずれの方法でも、デバイス製造の工程は複雑で、手間や時間がかかってしまう。このように、簡便で短時間で製造可能なデバイスを製造することは、困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の発明により上記の問題点を解決することができる。
表面に第1の材料を有する基板と、前記基板の第1の領域上に形成された第2の材料と、前記第2の材料とは表面エネルギーまたは表面曲率が異なる第3の材料とを有し、前記第2の材料および前記第3の材料とは、化学的または物理的性質が異なるものであり、表面エネルギーまたは表面曲率が第2の材料よりも第3の材料の方が大きく、かつ、第3の材料で形成された領域において、第2の材料を20%未満の範囲で含むものであるデバイスとする。
【0008】
第1の材料を有する基板上に、第2の材料と第3の材料が混在あるいは接する構造に形成した機能層に、光あるいは熱的なエネルギーを与えたことにより、機能層内の組成変化や形状変化を生じさせる。つまり、機能層内に混在している表面エネルギーの異なる第2の材料である機能材料Bと第3の材料である機能材料Cを加熱し部分的に溶解させ、元素が動きやすくなった状態において表面エネルギーの大きい材料が、表面積を小さくしようと働くこと、および表面エネルギーが小さい材料がその動きを阻止することなく働くことにより、化学的あるいは物理的な特性の異なる領域を形成することができる。または、光や熱のエネルギーを受けたことにより結晶化する材料が結晶化する過程において余分な材料を排除するように働くこと、および結晶化の過程を妨害することなくスムーズに行い、結晶化材料から分離するように働くことによっても同様で、機能層内でそれぞれの機能材料毎に集まるよう組成が流動し、所望の領域に所望の材料を形成することができる。表面エネルギーの関係は材料2<材料3が好ましい。なお、20%未満としたのは、分離して流動する結果、材料3に材料2が含まれていることを示すものであり、相分離した証拠でもある。
【0009】
特に、第3の材料で形成された領域は、下地である第1の材料近傍付近で、第2の材料が残存するため、膜厚方向で、下地側に向けて第2の材料の含有量が増えることが多い。勿論、相分離した結果なので、その含有量は20%未満である。
【0010】
それぞれの材料毎でなくとも構成する組成の一部が流動し、構成組成濃度が異なるということは光学的、熱的あるいは磁気的な特性が異なるため信号(記録マーク)とそれ以外として識別することができる。表面エネルギーが高い機能材料Cの領域にはわずかに機能材料Bの主成分が含まれており、表面側と基板に接している側での機能材料Bの含有量が異なり、基板に接している側の方が機能材料Bの含有量が多い。組成の変化は基板表面や機能層に接する下地表面などに微細な凹凸あるいは熱的な揺らぎなどのきっかけがあるとより容易である。例えば、基板表面に凹凸があれば容易に凹部分と凸部分に機能層内の機能材料Bと機能材料Cが分かれやすい。また、下地に濡れ性など表面エネルギーの異なる領域を設けることにより機能材料Bと機能材料C間の流動が起こり易くなる。
【0011】
さらに、組成の違いから生じる特性の差、例えば化学反応や接着性の差を利用することにより、所望の領域に形成された材料のみを残すあるいは除去する処理を行うことで、形状の変化や、その材料が持つ化学的または物理的な特性を有効に利用することができる。一方の材料を除去する方法としてはウェットエッチング、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングや、高温の熱処理による昇華または酸化による透明化を行う。透明化は光ディスクの多層構造においては特に有効な手段である。
【0012】
また、表面エネルギーの高い材料が光あるいは熱エネルギーを与えることにより自然に流動することを利用するため、形成された領域の形状は曲率を持つという特徴がある。
【0013】
このように形成した領域の化学的あるいは物理的特徴を利用するデバイスにおいては、使用する温度が融解温度未満であることが重要である。融解温度以上にした場合、形成した所望の形状がさらに変化を続けてしまうことや、組成が変質し、所望の特性が得られなくなる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によるデバイスは基板上に形成した機能材料層に熱または光のエネルギーを与えることにより、所望の領域に所望の材料を、従来の複雑な工程を経ることなく、簡単に短時間で形成することができる。また、材料Bと材料Cとが相分離した結果、微細なデバイス構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
光あるいは熱的なエネルギー照射により、形成した機能層が溶解する。それにより形成した機能層内の機能材料Bと機能材料C間の表面エネルギーおよび機能層に接する下地膜Aの表面エネルギーの差を利用することで、機能層内に組成の分布を生じさせることができる。
【0016】
デバイスとしては、機能層は層内に表面エネルギーの異なる機能材料を混在させて形成するかもしくは積層構造にすればよい。それにより、光あるいは熱的なエネルギーにより微小領域の組成分布を変化させることができる。また、積層した場合には組成変化させる平面方向のある領域を選ぶことで所望の領域のみ積層方向に渡って、異なる特性にすることも可能である。下地膜Aと機能層内の機能材料Bと機能材料Cの表面エネルギーに差があることにより、光あるいは熱的なエネルギー照射を部分的に与えることで積層した機能層内で混ざり合い、部分的に組成が変化することで異なる特性の領域が得られる。機能材料Bのみ、機能材料Cのみどちらか一方を形成した場合にはエネルギーを与えても形状、組成の変化は起こらなかった。機能材料Bと機能材料Cが同じ層内に混在していること、あるいは接した構造であることが重要な点である。表面エネルギーは機能材料B、機能材料C間で異なることが好ましく、表面エネルギーの関係としては機能材料B<機能材料Cが好ましい。下地膜の表面エネルギーは機能材料B、Cよりも小さくても大きくても、または中間でもよいが、加熱処理温度で溶解しないものであれば、エネルギー照射により機能層内に組成分布を生じさせることができた。
【0017】
(機能材料BとCの組合せ)
機能材料AにSiO2、Al2O3、Si、Pt、などを用い、機能材料BとCを変えながら調べたところ、機能材料とBとCは、Bとして、Ge−Sb-Te、Ge-Te、Ge−Bi-Te、In-Sb-Te、Sb、Ge−Bi−Sb-Te、Ge−Sb-Te-O 、Ge−Sb-Te−N、CとしてAu、Ag、Cu、Pt、Pd、Ni、Ir、Rh、Co、Os、Ru、Fe、Re、Mn、W、Mo、Cr、Ta、Nb、V、Hf、Zr、Ti、Zn、Al、Siが好ましかった。このようにCの表面エネルギーがBの表面エネルギーより2倍以上大きいことが好ましかった。
【0018】
機能材料Bの中で、Ge-Sb-Teは、均一に分離されるため、ノイズの低いパターンを形成でき良好である。Ge-Bi-Teは、溶融後の結晶化速度が速く、再生速度を上げられるため、良好である。Ge-Teは、再生時の感度は良くないが、コントラストが大きく良好である。Sbは、溶融時の変化率が大きく、SNRが大きく良好である。In-Sb-Te、Ge−Bi−Sb-Teは、溶融温度が低く、再生時の感度が良く良好である。Ge−Sb-Te-O 、Ge−Sb-Te−Nは、保存安定性が高く良好である。
【0019】
機能材料Cの中で、Au、Ag、Cu、Ni、Ir、Rh、Co、Os、Ruは、照射エネルギーが低くても分離するため好ましかった。Auはノイズが少ない点がより好ましい。Ag、Coは、機能材料Bの結晶化を促進する働きがありより好ましい。Cu, Niは、下地や保護層との接着力が強く、より好ましい。機能材料Cの中で、Pt、Pdは照射エネルギーを高くする必要があるが、分離後安定なため、耐久性に優れる。Ptは、さらに粒径が小さな10−30nmのマークやスペースを形成することが出来、より好ましい。Fe、Re、Mn、W、Mo、Cr、Ta、Nb、V、Hf、Zr、Ti、Zn、Al、Siは、Au等の貴金属に比べ、材料費が安価である点が好ましい。W、Mo、Cr、Ta、は、硬く、分離後に機能材料Bが溶融、固化を繰返す際に、媒体中での膜変形を起こしにくくより好ましい。Zn、Al、Siはこれらの中でもさらに安価で、取扱いが容易な点がより好ましい。Fe, Re、Zr、Ti、V, Hf は、分離後に機能材料Bとの光学特性が非溶融時に近いことから、機能材料の溶融時と非溶融時の信号変化を大きくし、再生時のSNRを大きくできより好ましい。
【0020】
(機能材料A)
ここで、機能材料BにGe−Sb-Te、機能材料CにAgを用い、機能材料Aを変えながら相分離が生じるかどうかを調べたところ、表2に示す結果が得られた。機能材料Bの表面張力γ0 は、333(mN/m) 、機能材料Cの表面張力γ0 は、903(mN/m) である。ここで、表中の融点には、溶融する温度もしくは、ガラス状になり表面形状が大きく変化する温度を記載した。
【0021】
【表1】
【0022】
表中、混合ガラスの組成は、SiO2-Al2O3-Na2O-MgOであった。以上の結果より、機能材料Aの表面エネルギーが、B、Cより大きくても小さくても、またこれらの中間の値であっても分離できることがわかった。エネルギー照射で膜は420℃以上になっているため、融点が420℃以下の機能材料Aを用いた場合には、分離しなかった。つまり、分離するためのエネルギー照射で機能材料Aが溶融するばあいには、十分に分離されないことがわかった。
【0023】
(基板)
本実施例では、保護基板にROMパターンに応じた凹凸を有するプラスチック基板やパターン転写したガラス基板を用いている。凹凸を有する基板とは、基板表面全面または一部に、原子サイズより大きな深さの溝を持つ基板である。ピットや溝などの凹凸は一周で連続的に形成されていても、途中分割されていてもよい。その大きさは場所により異なっていてもよい。また、基板には、プラスチック基板としてはポリカーボネートやや、ポリオレフィン、紫外線硬化樹脂からなるものや、この他、Siなど光が透過しない材料を用いてもよい。
【0024】
本実施例では、基板を射出成型にて大量生産したが、ガラスやSiをレーザや電子ビームでじかに彫ってもよいし、マスクを用いたエッチングなどで形成してもよい。
【0025】
実施例4に記載の表面粗さの違いは、表面の一部に硬いものを押し当て傷を形成してもよいし、表面が粗い基板の一部をエネルギービームにて溶融させ平坦化してもよい。
【0026】
実施例5に記載の表面化学処理は、ナノ印刷などによって形成してもよいし、塗布後にエネルギービームで変質または取り除いてもよい。
【0027】
次に、機能材料Cと機能材料Bを合計した平均膜厚Dtと形成出来る分離した形状の最小の大きさSmの関係を調べたところ、機能材料Cの表面エネルギーと機能材料Bの表面エネルギーの比Zに、
Dt*10/Z ≦ Sm 式(1)
Z ≦ 4 式(2)
式(1)かつ式(2)で示される関係があることがわかった。いくつかの機能材料を組合せた結果を表1に示す。ここで、材料ごとの表面エネルギーは、表面張力(mN/m)の測定値により比較した。以上より、分離した形状の大きさを小さくするには、平均膜厚Dtが式(1)かつ式(2)の関係または、後述の式(3)かつ式(4)の関係を満たすように、薄くなっていればよいことがわかる。また、この平均膜厚は、両機能材料の表面エネルギーの比で決まるため、材料の組合せによって異なることがわかる。例えば、機能材料CがAu、機能材料BがGe−Sb-Teで、100nmのマークを形成するには、平均膜厚は33nm以下、50nmのマークを形成するには、17nmにする必要があった。但し、表1に示されるように、平面方行への移動を抑制するエネルギーも働くため、表面エネルギー比Zが4以上になると、Zが4と同様の結果となった。すなわち、DtとSmの関係は、式(3)と式(4)で示された。
Dt*10/4 ≦ Sm 式(3)
Z > 4 式(4)
【0028】
【表2】
【0029】
また、表面エネルギー比が2未満の場合、分離が不十分で機能材料C中に機能材料Bが3〜4割含まれていた。弱いエネルギーを長時間照射すると、分離状況はやや改善される。
【0030】
本発明は各材料での表面エネルギーの差が重要であるため、組合せにより適した材料を選べばよく、例にあげた限りではない。組成変化を生じさせる時の構造により処理温度には適した範囲がある。プラスチック基板を用いる場合とガラス板やSi基板を用いた場合の違いや、デバイスとして利用する際の到達温度で異なる。例えばプラスチック基板を用いた場合、基板全体を加熱するには100℃程度となるため材料選びが難しいが、レーザ光により集光させたエネルギーを用いればよい。この場合、機能層のみの加熱となるため基板全体が加熱されるわけではなく、プラスチック基板においても熱変形などの影響は少ないが、組成変化温度(流動温度)が高すぎないことが望ましく、目安としては機能材料Cの融点が1000℃程度までであることが好ましい。例えば機能材料BとしてGe-Sb-Teを使用した場合より好ましい機能材料CはAu、Ag、Cuなどである。
ガラス基板やSi基板を用いた場合には基板全体を加熱処理することができ、高温処理が可能であるため、材料範囲は広がる。
【0031】
組成が流動する変化は基板表面や機能層に接する下地表面などに微細な凹凸あるいは熱的な揺らぎなどのきっかけがあるとより容易に起こる。例えば、基板表面に凹凸があれば容易に凹部分と凸部分に機能層内の組成が分かれやすい。また、下地に濡れ性など表面エネルギーの異なる領域を設けることにより流動による組成変化が起こり易くなる。この流動は、材料や温度にも依存するが、たいてい1〜数分で完了する。従来方法で凹部と凸部に組成の異なる材料を形成する場合は、例えばレジストを用いて凹凸パターン形状を形成しておき、薄膜を製膜する。レジストを除去するとレジスト上の膜も一緒に除去されるため凸状領域にある材料のパターンが形成される。その後さらに別の材料を製膜、研磨などの手法で凸部上の膜のみを除去すると異なる材料を所望のパターン状に存在させることができる。この従来の方法では、トータルで2から3日を要する。このように、本願の方法を用いれば、簡単な工程で、高額な装置を用いずに、所望の領域へのパターン形成ができる。
【0032】
また、流動させて異なる特性を持つ領域を形成する条件として、機能材料Bに対する機能材料Cの含有比率と膜厚、きっかけとなる凹形状と流動材料の体積との関係を調整することで、流動した後の各領域における表面曲率や、形状を任意に形成することができる。例えば機能材料Cの含有量が少ない場合、所望の領域全てに存在させることが困難となり、多すぎると所望の領域より広い領域に存在することになる。
【0033】
また、機能層を一部融解させて移動した機能材料Cの領域の中に、組成分布があることがわかった。表面エネルギーが高い材料は表面積を小さくしようと働くことで、他の組成を含まずほぼ主成分のみであったが、下地膜あるいは基板表面に近い部分では、溶融した機能材料Bがわずかに存在した。接着層として機能していることからも機能材料Bの組成が混在していることがわかった。この部分をEDX(日立製、S5200)により組成分析した結果、わずかに2〜19%のGe、Teを含んでいることがわかった。他の組成の検出ピークと近いこともあり、測定には誤差が含まれるが有意差ではあった。しかしながらこの領域の化学的あるいは物理的特性を変質する範囲ではなく、問題は生じなかった。
【0034】
起こりうる形状の例を図1に示す。
図1(a)は基板101は凹凸形状を有し、凸部に機能性材料B102,凹部に機能性材料C103が形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。これは、凹凸基板101上に、材料Bと材料Cとの混合物を形成した後、熱をかけることによって、材料Bと材料Cとが分離して形成されたものである。
【0035】
図1(b)は図1(a)と加熱条件が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部に材料Bと材料Cが形成されたものである。
【0036】
図1(c)は図1(a)に比べ凹凸基板101の凹凸形状が異なる場合や含有比率が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部の幅が狭い場合や材料Cの含有比率が高い場合の、凹部に形成される材料Cの形状を示す一例である。
【0037】
図1(d)は図1(c)と加熱条件が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部に材料Bと材料Cが形成されたものである。
この図1(c)(d)の特徴は、材料Cの大きな表面張力により、材料Bの表面よりも突出している点である。
【0038】
図1(e)は図1(a)に比べ凹凸基板101の凹凸形状が異なる場合や含有比率が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部の幅が広い場合や材料Cの含有比率が低い場合の、凹部に形成される材料Cの形状を示す一例である。
【0039】
図1(f)は図1(e)と加熱条件が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部に材料Bと材料Cが形成されたものである。
この図1(e)(f)の特徴は、基板形状や材料Cの含有量により、材料Bの表面よりも窪んでいる点である。
【0040】
図1(g)は図1(a)に比べ凹凸基板101の凹凸形状が異なる場合や含有比率が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部の幅が狭い場合や材料Cの含有比率が高い場合の、凹部に形成される材料Cの形状を示す一例である。
【0041】
図1(h)は図1(g)と加熱条件が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部に材料Bと材料Cが形成されたものである。
この図1(g)(h)の特徴は、材料Cの大きな表面張力により、材料Bの表面よりも突出している点である。
【0042】
図1(i)は平面上にある微細な凹凸形状104を持つ基板101上に、機能材料Bと機能材料Cが形成された機能層の組成分布を示す一例図である。これは材料Bと材料Cとの混合物を形成した後、熱をかけることによって、微細な凹凸形状をきっかけに材料Bと材料Cとが分離して形成されたものである。
【0043】
図1(j)は平面上にある表面エネルギーの違い105、106を持つ基板上に、機能材料Bと機能材料Cが形成された機能層の組成分布を示す一例図である。これは材料Bと材料Cとの混合物を形成した後、熱をかけることによって、表面エネルギーの違いにより材料Bと材料Cとが分離して形成されたものである。
【0044】
図1(k)は平面上の表面荒れ107のある領域を持つ基板101上に、機能材料Bと機能材料Cが形成された機能層の組成分布を示す一例図である。これは材料Bと材料Cとの混合物を形成した後、熱をかけることによって、表面荒れの違いにより材料Bと材料Cとが分離して形成されたものである。
この図1(k)の特徴は、材料Cの大きな表面張力により、材料Bの表面よりも突出している点である。
【0045】
図1(l)は従来方法の均一に形成された膜を示す一例図である。凹凸形状を有する基板101上に均一に形成された膜である。
【実施例1】
【0046】
実施例1は、光を用いたROM基板の製法について記載する。図2に、本発明におけるディスク状デバイスの断面構造図の一例を示す。このデバイスは、表面に凹凸パターンを有する基板101上で、凹部には主成分が機能材料C102からなるスペース部、凸部には主成分が機能材料B103からなるマーク部が分離しており、表面が保護基板108で覆われている構成となっている。
図3に光ディスクの形成方法の一例を示す。
【0047】
ガラス板301上に塗布したレジスト302に、カッティング用に集光したレーザ光303を照射し現像することにより表面にピットパターンあるいはラインパターンの凹凸を形成し、その表面をメッキ法によりNi板を形成しNiスタンパ304を作製した。その後Niスタンパを金型として射出成型法により、表面に凹凸を有するプラスチック基板305を作製した。この基板上にスパッタリングによりSiO2を10nm下地層306として形成し、次にAu−Ge−Sb−Teよりなる機能層307を25nm積層しディスク状デバイスとした。
本実施例では機能層307を機能材料B、Cの2種類とし、機能材料B102としてGe-Sb-Teを、機能材料Bより表面エネルギーの大きい機能材料C103としてAuを用いた。その後、工程3として、レーザ光308を機能層307へ照射した。ここでは、移動方向に示されるように、ディスク状デバイスを回転してレーザ光を移動させながら照射した。この処理により、工程8に示されるよう機能層構成材料が融解して、表面エネルギーの大小により凹部、凸部へ移動し、組成の濃度分布が変化した。凹部には主成分Auからなる領域103、凸部には主成分Ge−Sb−Teからなる領域102が形成された。工程7は、工程6から8への間の様子を示しており、主成分Auからなる部分と主成分Ge−Sb−Teからなる部分からなる部分が分離する途中の様子を模式的に示してある。このように記録マークを形成後、保護基板107で貼り合わせにより表面を保護した。レーザ光照射は相変化光ディスクの初期化に使用されている装置で可能であり、幅5μm、長さ50μmの長円形のシートビームであるため短時間で処理することが可能であった。尚、集光したスポット径の小さなレーザ光で部分的に照射しても機能層の変化は起こる。変化させる領域を狭小領域としたい場合に有効である。
【0048】
また、機能層の機能材料CとしてPt、Cuを用いても同様の状態が得られた。凹部には表面に曲率を持つ主成分Pt、Cuからなる膜が形成された。また、これらの組成分布をSEM(走査電子顕微鏡)、微小領域のTEM(透過電子顕微鏡)などによりその効果を確認した。また、凹凸パターンを転写する母型としては射出成型に対応するものであればNiスタンパでなくともよい。
【0049】
図4(a)に、上記のような製法で形成されたピットパターン状に形成された機能材料Bと機能材料Cの領域を上面からみた配置図を示した。長さの異なる領域から構成されている。例えば機能材料C 103の領域が光ディスクのROMの信号となるピットパターンに相当する。(b)にライン状に形成された機能材料Bと機能材料Cを上面からみた図を示した。(c)は別の形状に形成した場合の機能材料Bと機能材料Cを上面からみた図を示した。
【0050】
図3(a)ようにピットパターンが形成された光ディスクの場合、ピットパターン部のみに反射率の高い材料を存在させることができる。それにより高い信号レベルが容易に得られる。従来の光ディスクの信号は均一に反射膜が形成され深さの違いを利用したものであるが、信号部以外の領域を反射率の低い材料とし、信号領域との反射率差を大きくすることで、本実施例のディスクの方が高い信号レベルが得られた。
【0051】
従来は、複数の工程を経てデバイスを製造するので、デバイスの製造に、通常数日〜数週間程かかったが、このデバイスは、相分離を利用することで、数分〜数十分と、短時間で済み、反射率特性の異なる領域の形成が簡単な製造方法で得ることができた。
【0052】
また、従来の光エネルギーを利用したレジスト加工技術では、微細な形状の形成にはビーム中央部のごく一部のパワーを使うので、ビームのパワー変動の影響が大きくなる結果、歩留まりが低下してしまったが、本願発明の製造方法を用いることにより、このような課題を解消することができた。
【実施例2】
【0053】
凹凸形状を有する基板を作製するための別の方法について、作製方法の一例を図5に示す。ガラス板401の上に均一にSOG(スピンオングラス)402を塗布し、Niスタンパ304とガラス板の間に挟み加圧した後、UV光403を照射してNiスタンパとの界面で剥離し、Niスタンパのパターンを転写した。ガラス板はプラスチック基板に比べ平坦性に優れている。また、SOGは主成分がSiO2であることから耐熱性に優れており、上述のシートビームの変わりにベーク炉による加熱が可能になる。また、ベーク炉による加熱は複数枚を同時に処理できるため生産効率が良い。Niスタンパから凹凸を転写したSOG付ガラス基板上にAu−Ge−Sb−Teよりなる機能層307を13nm、スパッタリングにより形成した。その後ベーク炉404中で熱処理を400℃1分施した。加熱処理により機能層は表面エネルギーの大小により凹部、凸部へ移動し、組成の濃度分布が変化し、凹部には主成分Auからなる機能材料C103、凸部には主成分Ge−Sb−Teからなる機能材料B102が形成された。熱処理中は静止、固定していても機能層中の組成の移動が生じたが、外部からわずかな振動を加えると、凹凸部への組成の濃度分布が速やかに完了した。例えば上下、左右の振動や回転、などである。
【0054】
機能層の機能材料CとしてPt-Co、Cr-Coを用いても同様の状態が得られた。凹部には主成分Pt-Co、Cr-Coからなる磁性を持つ膜が形成され、凸部表面には非磁性材料が形成された。SEM、微小領域のTEMなどにより組成分布を確認した。機能層の変化などについては実施例1と同じであった。
【実施例3】
【0055】
凹凸形状を有する基板を作製するための別の方法について説明する。
実施例2と同様にSOGを用いる転写の場合、Niスタンパの代わりに石英スタンパ601も可能であった。実施例2と異なる部分について図6に示す。透明な石英スタンパ601,602を2枚用いれば、基板の両面へのパターン形成が一度の転写で行うことができ、高密度のデバイスを短時間で作製することが可能である。石英スタンパは石英板上にレジストを塗布した後に集光したレーザ光により所望のサイズ(ピットパターンあるいはラインパターン)になるよう露光し、現像した後にRIE(反応性イオンエッチング)処理を行い石英板表面に凹部を形成した。RIE処理の後、レジストを除去することで所望の深さの凹凸を有する石英スタンパを作製した。もちろんこの石英スタンパを原盤として複数枚のNiスタンパを作製することも可能である。石英スタンパを母型とする場合は、凹凸パターンを転写するガラス板の代わりにSi基板でも良い、UV光を照射することができれば良く、スタンパあるいは凹凸パターンを転写する基板のどちらかが透明であればよい。次にガラス板401の上に均一にSOG(スピンオングラス)402を塗布し、石英スタンパ601,602とガラス板401の間にSOG402を均一に挟み加圧して、UV光を照射して石英スタンパとの界面で剥離すると凹凸が転写されたガラス基板が得られた。この基板上に、図5のようにAu−Ge−Sb−Teよりなる機能層307を13nm、スパッタリングにより形成した。その後熱処理を400℃1分施した。加熱処理により機能層中で融解し、表面エネルギーの大小により凹部、凸部へ移動し、組成の濃度分布が変化した。その結果、凹部、凸部で組成の異なる領域が得られた。これにより、基板両面に機能層を形成できた。両面 に記録層を有するROMなどに適用できる。
【0056】
なお、Si基板を用いた場合には光が透過しないため基板越しのシートビームによる加熱はできないが、ガラス基板同様、ベーク炉加熱が可能であることから複数枚を一度に処理できる上、ガラス基板よりも安価に同様の結果を得ることができた。ベーク炉加熱による機能層の変化については実施例1、2と同じであった。
【実施例4】
【0057】
凹凸形状を有する基板を作製するための別の方法について説明する。
機能層中の組成変化を促すものとしてわずかなきっかけでも有効であった。作製方法の一例を図7に示す。まず凹凸を形成したNiスタンパ304を作製した。レジストに露光する光を電子線とし直径50nmのピットパターンあるいは線幅50nmのラインパターンを凹凸に形成した。一例としてガラス基板301上に、PMMA樹脂701をスピン塗布し、基板全体を約110℃に加熱した後に樹脂薄膜にNiスタンパを真空雰囲気中で押し当てた。押し当てる圧力を2メガパスカルとした。その後樹脂が軟化している状態を維持し、樹脂を引き伸ばすように両者を並行かつ垂直方向へ均一にNiスタンパと基板を剥離する。それにより、Niスタンパの凹部のPMMA樹脂は基板と垂直方向に、Niスタンパの凹部の深さよりも高い針状の凸部が形成される。例えば深さ70nm、直径120nmのNiスタンパのピットが転写後には高さ300nm直径30nmとNiスタンパよりも高く小さい凸部が得られた。次に、先端のとがった形状のパターンをもつPMMA樹脂基板をマスター基板に用いて微小凹凸を有する基板702を作製した。ポリカーボネート平板702表面あるいは下地膜表面に、上記の針状の凸部を有するマスター基板の尖った形状の先端のみが接するように押し当て、ポリカーボネート平板702表面あるいは下地膜表面にわずかな凹状のくぼみ(傷)を形成した。ここで、ポリカーボネート基板は70℃〜135℃の範囲の温度に保持しておくと、より凹状のくぼみ形状変化が生じやすい。この基板上にスパッタにより下地膜703としてSiO2を10nm、Au−Ge−Sb−Teよりなる機能層22を25nm形成した。その後このディスクを回転させながら初期化機のシートビームを照射することにより機能層は加熱され、機能層中の各材料が融解し、表面エネルギーの大小により凹部、凸部へ移動し、組成分布が変化した。その結果、図1(i)に示すような組成および形状の変化が起こり、図7の一番下に示すように、材料BであるGe−Sb−Te102、材料CであるA103が分離した。この結果からわずかな凹状のくぼみでもAuが移動することがわかった。ここで、10nm程度以上あれば、材料Bと材料Cが相分離する。したがって、表面エネルギーの差があれば極微小な凹凸でも任意のパターンで組成分布が得られることがわかった。同様にして尖った形状のパターン先端をポリカーボネート基板上に直接スパッタしたAu−Ge−Sb−Te膜22の表面に押し当て、膜自身にわずかな凹状のくぼみ(傷)を形成した。この場合、すなわち、下地としてSiO2膜を形成しなくても、加熱による機能層中の組成変化はこのくぼみ(傷)をきっかけに同じように起こった。
【0058】
図4(a)に示すように機能材料Bと機能材料Cの領域はピットパターン状に形成された。長さの異なる領域から構成されている。例えば103が光ディスクのROMの信号となるピットである。
【0059】
このようにわずかなくぼみ上に形成された組成領域は他の領域に比べ膜厚が厚くなるように形成される。光ディスクの信号として、図4(a)のようなピット状に形成した機能材料C103としてのAuは表面に曲率を持った形状で存在することになる。これを信号として読み出した場合、図4(l)のような従来の矩形ピットに比べ、肩の部分が無く、なだらかな曲線を持つピットとなることから、従来よりもノイズ成分の少ない信号レベルが得られた。
【実施例5】
【0060】
機能層中の組成変化を促すための別の方法について説明する。
機能層中の組成変化を促すものとして、基板表面あるいは下地表面の表面状態の違いを利用する方法も効果的だった。図8に製造方法を示す。機能層が光あるいは熱によるエネルギーを受けて変化する際に、下地の表面状態の影響を受けて組成が変化する。下地層としてTiO2膜を使用する。基板305上にスパッタにより下地層306としてTiO2を30nm形成し、この膜表面に所望のパターンが形成してあるマスク801を介してUV光403を照射した。TiO2膜はUV光が照射された部分のみ反応し、改質することで表面エネルギーが低下する。よってこの表面エネルギーの差を利用して機能層の組成変化を促すことができる。UV光を照射した後、TiO2上に機能層307としてAu-Ge-Sb-Teを25nm製膜した。その後この基板を回転させながらレーザ光を照射した。レーザ光による加熱処理により、機能層は図1(g)に示すようにAuを主成分とする領域106とGe-Sb-Teを主成分とする領域105に分かれた。
【0061】
また、図4(a)(b)(c)に示すような機能材料Bと機能材料Cの領域を形成することができた。この製造方法においては遮蔽マスクの形状に依存するため、所望のサイズに応じて遮蔽マスクを形成しておけばよい。UV光を使用する場合は比較的大きいパターンの場合となり、狭小パターンを得るためにはEBなどの光源を使用すればよい。遮蔽マスクの場合はあらかじめ遮蔽マスクと基板の位置制御をしっかりしておくことで、パターン一つ一つの制御は必要でない。このことから光源となる光を必要な領域全体に照射するかもしくは走査すればよいことや、真空工程を含まずに所望の領域に所望の材料を形成できることは生産性の上でメリットである。
【0062】
また、表面状態の異なる領域を形成する方法として、遮蔽マスクを利用したスパッタでも可能であった。機能層とは表面エネルギーの異なる材料を基板上にスパッタしたところ、マスクを通過した部分のみに下地膜が形成される 同様にして、この基板上にAu-Ge-Sb-Teを25nm製膜し、基板を回転させながらレーザ光を照射した。レーザ光による加熱処理により、機能層は図1(j)に示すようにAuを主成分とする領域とGe-Sb-Teを主成分とする領域に分離して形成された。
【実施例6】
【0063】
磁気ディスクに応用した例について示す。図9に示す。
機能層を2層に分けて積層した場合において試みた。ガラス基板上に下地306としてCr合金を20nm、機能材料B102としてGe-Sb-Teを10nm、機能材料C103としてCo-Cr-Pt合金を20nm積層した。その後波長約400nmの集光したレーザ光308を用いて、基板を回転させながら200nmの送りピッチで内周から外周へと円状に加熱した。シートビームではなく集光したレーザ光での狭い範囲のエネルギー照射であるため、時間的には課題があるが線幅が50nmとわずかなエリア内での組成変化を生じさせることができた。レーザ光が照射された領域901はその他の領域とは磁気特性が異なる結果が得られた。この901の領域は、Ge-Sb-Te+Co-Cr-Ptからなっている。この場合加熱されない領域が磁気記録エリアであり、磁気特性が変化した加熱部分は、記録マークの磁界の広がりを制限し、磁界の広がりに起因するサイドフリンジ、クロストークなどを防ぐ領域となる。レーザ光による加熱により、機能層内の一部が融解し、組成が混ざり合うことで磁気特性を変化させた。これによる凹凸変化はほとんどなく、安定したヘッド浮上を行うことができた。この方法であればレーザ光照射のみで所望のデバイスが形成されるため、従来のディスクリート媒体作製に比べ製造工程が簡単で製造にかかる時間ははるかに短い時間で済む。例えば基板に凹凸を形成する工程が不要となるなどである。
【実施例7】
【0064】
実施例4のように小さなくぼみ上に形成された領域は他の領域よりも膜厚を厚く形成することがたやすい。表面エネルギーの高い材料の含有比率を多めにすれば図10に示すように曲率をもった領域が他の部分よりも凸状態で存在する。機能材料B102と機能材料C103、および下地101の表面では表面エネルギーが異なり、液体に対する濡れ性も異なる。例えば液体を塗布し、表面エネルギーが異なることを利用し、一方の領域のみに液体を存在させることができる。ピット状の領域あるいはライン状の領域にのみに分離して存在させることができる。また、凹部にある機能材料B102のみを除去してもよい。この場合も下地あるいは基板と機能材料C103の表面エネルギーが異なることを利用し、一方の領域のみに液体を存在させることができる。
【0065】
例えばバイオチップトレーとして用いた場合について説明する。図10の凹部1002に、ヌクレオチド配列又はタンパク等のプローブを形成する。このとき、凹部それぞれの領域には、それぞれ異なる種類のプローブ1001を形成する。このプローブは、共有結合で基板と結合するようにしても、イオン結合で結合するようにしても、どちらでも良い。続いて、血液等、調べたいサンプル(検体)を、プローブが配置された基板に滴下する。ここでは、機能材料Bと機能材料Cの表面の濡れ性が異なるため、チップトレー上に検体の液体を滴下し上下、左右に多少揺らすだけで、検体1002は凸部ではじかれて凹部に集まり、簡単に振り分けることができる。こうして、所望の検査を行うことができる。サンプルは、凹部の領域毎に、きちんと分離され、凹部同士でコンタミネーションすることがないので、高い精度で反応を検出することができる。また、プローブ自身も親水性、疎水性、帯電の性質を持つことから、プローブの整列、配列も可能である。同様に親水性、疎水性、帯電の性質をもつ生体分子の整列にも上記トレーの濡れ性の違いを利用できる。
【実施例8】
【0066】
実施例1示した製造方法において、光ディスク用ピットパターン状に形成された機能材料Bと機能材料Cの領域のうち、一方の領域の機能材料をドライまたはウェットエッチング、加熱処理による昇華や酸化作用を利用することで、除去または透明化することでパターン以外の領域をレーザ光が光を吸収しない状態にした。例えば機能材料BをGe-Sb-Teにした場合はアルカリのウェットエッチングで除去でき、酸化作用を利用するには機能材料BをIrOx、Ag合金-ZnS、TaNなどを選ぶと、熱処理により透過率が増すことで透明化ができる。パターンとしては図4(a)のピットパターンの他に(b)(c)に示すような領域が形成できる。その後、形成した領域が移動しないように保護膜を形成する。さらにピット形状を形成する工程と、機能層を形成して加熱処理および一方の領域の除去、保護層の形成を繰り返し行うことで、パターン領域にのみ機能材料が存在し、それ以外の領域にはレーザ光が透過する膜が形成されている多層構造の光ディスクを形成した。
このような多層ディスクを形成することにより、従来の問題であったレーザ光が奥の層を読むために通過する手前の層の、各層におけるレーザ光の吸収を低下させることができ、信号部分とその他の領域との反射率差が大きいことから高い信号レベルが得られることができた。図11に(a)本発明を用いた2層構造、(b)従来の2層構造を比較する図を示す。図11(a)において基板101に形成された機能材料C103と中間層1101と2層目の層1102、保護基板107の構造とした。レーザ光308を照射し信号を読み出す。2層目を読み出す場合でも、信号となる領域103以外の領域が透明であるため中間層を通過したレーザ光1103の光量の減衰は少ない。一方、図11(b)の従来構造では1層目1104でのレーザ光の吸収が多いために中間層を通過した光量1103が減衰する。
【0067】
尚、層と層を分けるために存在するスペーサ層(ピットパターンを形成する層)は多重反射の影響を防ぐため、厚みは一定でなくてもよい。
【実施例9】
【0068】
図12に半導体装置における配線の製造方法に応用した例について示す。まず、Si基板上にあらかじめ形成したい配線パターン上にわずかな凹凸を形成しておく。その後、Cu-Ge-Sb-Te膜を製膜し、ベーク炉で400℃1分の加熱処理を行った。その結果、凹部にはわずかな凹みをきっかけとしてCuを主成分とした組成が集まった領域となり、他はGe-Sb-Teを主成分とした領域に分かれた。その後Ge-Sb-Teのみを除去し、図12(a)に示すようにCuのみを残した。配線となるCuの領域はGe-Sb-Teが融解したことにより、基板に接する部分で一部Ge-Sb-Teの組成を含み、接着層として機能している他、Cuのマイグレーションによる分離、断線をも防ぐ効果が得られた。図12(b)に形成した配線の平面図を示す。
【0069】
従来は、複数の工程を経て配線を製造するので、通常少なくともレジスト処理、パターン露光、レジスト一部除去、ドライエッチングによる深さ処理、レジスト除去、配線材料製膜、研磨という複数の工程を経て製造されるため、製造には数日程かかったが、この製造方法の場合は相分離を利用するため、あらかじめきっかけとしてのパターン形成は必要であるが、加熱処理のみで配線エリアへの材料形成ができるため処理時間は数分で済み、電気的特性の異なる領域の形成が簡単な製造方法で得ることができた。
【実施例10】
【0070】
図13に発光素子の製造方法に応用した例について示す。実施例2に示した製造方法で透明基板1301上にSOG402から成る凹凸パターンを形成した。その上に機能材料BとしてGe−Sb−Teと機能材料CとしてZnOが混在した膜をスパッタにより製膜し、ベーク炉内で400℃1分の加熱処理を行った。加熱により機能材料B102と機能材料C103の領域に分離し、その後一方の機能材料B、Ge−Sb−Teをエッチングにより除去した。除去されずに残ったZnOは透明電極1302となる。その後アルキレート錯体からなる有機発光層1303、金属電極1304としてAg-Mgを製膜した。透明電極と金属電極との間に電圧を印加することによって発光する光は曲率形状を持つ透明電極のプリズム現象により、光の取り出し効率が高くなった。従来方法では曲率形状を持つ電極を作製するには曲率を持つ母系作製、パターン転写、製膜と複雑な工程が必要であったため高価な装置と日数が必要であったが、これにより曲率形状を持つ透明電極を簡単な製造方法で短時間に得ることが実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明によるデバイス断面図。
【図2】本発明による第1の実施例のデバイス断面図。
【図3】本発明による第1の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図4】本発明により形成されたパターンを示す平面図。
【図5】本発明による第2の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図6】本発明による第3の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図7】本発明による第4の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図8】本発明による第5の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図9】本発明による第6の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図10】本発明による第8の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図11】本発明による第9の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図12】本発明による第10の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図13】本発明による第10の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0072】
101:基板
102:機能材料B
103:機能材料C
104:わずかなくぼみ
105、106:濡れ製の違う表面
107:表面荒れの異なる領域
108:保護基板
301:ガラス板
302:レジスト
303:レーザ光
304:Niスタンパ
305:プラスチック基板
306:下地層
307:機能層
308:レーザ光
401:ガラス板
402:SOG(スピンオングラス)
403:UV光
404:ベーク炉
601:石英スタンパ
701:PMMA樹脂
801:マスク
901:磁気特性が異なる領域
1001:プローブ
1002:サンプル
1101:中間層
1102:2層目の層
1103:中間層を通過した光
1104:1層目の層
1301:透明基板
1302:透明電極
1303:有機発光層
1304:金属電極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性の異なる複数の領域を持つデバイスとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスとはエネルギーを与えることで生じる化学的性質、物理的性質が異なる微少領域を利用するもののことで、例えば光ディスクや磁気ディスクのような電子デバイス、半導体デバイス、ナノサイズの凹凸形状を利用するものなどのことである。
【0003】
デバイスの例として、半導体や光ディスクが挙げられるが、これらの凹凸パターンの形成では、基板上に塗布したレジストにレーザ光や電子線(EB)照射によって潜像を形成し、その潜像を現像して照射した部分あるいはしなかった部分を除去することで凹凸パターンを形成する、光エネルギーを利用する方法が知られている。どちらの場合でも、レーザ光やEBのスポット径を小さくすればより微細なパターンが形成される。スポット径の縮小は、光源波長を短くすることや、対物レンズの開口数(NA)を大きくすることで対応できる。他に、熱エネルギーを利用する方法としては、非特許文献1記載の結晶、非晶質のどちらか一方を選択的に除去することで凹凸パターンを形成する加工方法が記載されている。
【0004】
また別のデバイスの例として、ハードディスク等の磁気記録媒体が挙げられるが、これは、磁力を印加することで変化する磁性の向きの違いを信号としている。近年、記録層を構成する磁性粒子の微細化、材料の変更、ヘッド加工の微細化等の改良により、著しい面記録密度の向上が図られている。そこで、一層の面記録密度の向上を実現可能である磁気記録媒体の候補として、特許文献1に記録層を所定の凹凸パターンで形成し、凹凸パターンの凹部に非磁性材を充填して記録エリアを分割するディスクリートタイプの磁気記録媒体が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特開平9−97419号
【非特許文献1】Applied Physics Letters, Vol.85, No.4, 639-641 (2004)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のいずれの方法でも、デバイス製造の工程は複雑で、手間や時間がかかってしまう。このように、簡便で短時間で製造可能なデバイスを製造することは、困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の発明により上記の問題点を解決することができる。
表面に第1の材料を有する基板と、前記基板の第1の領域上に形成された第2の材料と、前記第2の材料とは表面エネルギーまたは表面曲率が異なる第3の材料とを有し、前記第2の材料および前記第3の材料とは、化学的または物理的性質が異なるものであり、表面エネルギーまたは表面曲率が第2の材料よりも第3の材料の方が大きく、かつ、第3の材料で形成された領域において、第2の材料を20%未満の範囲で含むものであるデバイスとする。
【0008】
第1の材料を有する基板上に、第2の材料と第3の材料が混在あるいは接する構造に形成した機能層に、光あるいは熱的なエネルギーを与えたことにより、機能層内の組成変化や形状変化を生じさせる。つまり、機能層内に混在している表面エネルギーの異なる第2の材料である機能材料Bと第3の材料である機能材料Cを加熱し部分的に溶解させ、元素が動きやすくなった状態において表面エネルギーの大きい材料が、表面積を小さくしようと働くこと、および表面エネルギーが小さい材料がその動きを阻止することなく働くことにより、化学的あるいは物理的な特性の異なる領域を形成することができる。または、光や熱のエネルギーを受けたことにより結晶化する材料が結晶化する過程において余分な材料を排除するように働くこと、および結晶化の過程を妨害することなくスムーズに行い、結晶化材料から分離するように働くことによっても同様で、機能層内でそれぞれの機能材料毎に集まるよう組成が流動し、所望の領域に所望の材料を形成することができる。表面エネルギーの関係は材料2<材料3が好ましい。なお、20%未満としたのは、分離して流動する結果、材料3に材料2が含まれていることを示すものであり、相分離した証拠でもある。
【0009】
特に、第3の材料で形成された領域は、下地である第1の材料近傍付近で、第2の材料が残存するため、膜厚方向で、下地側に向けて第2の材料の含有量が増えることが多い。勿論、相分離した結果なので、その含有量は20%未満である。
【0010】
それぞれの材料毎でなくとも構成する組成の一部が流動し、構成組成濃度が異なるということは光学的、熱的あるいは磁気的な特性が異なるため信号(記録マーク)とそれ以外として識別することができる。表面エネルギーが高い機能材料Cの領域にはわずかに機能材料Bの主成分が含まれており、表面側と基板に接している側での機能材料Bの含有量が異なり、基板に接している側の方が機能材料Bの含有量が多い。組成の変化は基板表面や機能層に接する下地表面などに微細な凹凸あるいは熱的な揺らぎなどのきっかけがあるとより容易である。例えば、基板表面に凹凸があれば容易に凹部分と凸部分に機能層内の機能材料Bと機能材料Cが分かれやすい。また、下地に濡れ性など表面エネルギーの異なる領域を設けることにより機能材料Bと機能材料C間の流動が起こり易くなる。
【0011】
さらに、組成の違いから生じる特性の差、例えば化学反応や接着性の差を利用することにより、所望の領域に形成された材料のみを残すあるいは除去する処理を行うことで、形状の変化や、その材料が持つ化学的または物理的な特性を有効に利用することができる。一方の材料を除去する方法としてはウェットエッチング、反応性イオンエッチングなどのドライエッチングや、高温の熱処理による昇華または酸化による透明化を行う。透明化は光ディスクの多層構造においては特に有効な手段である。
【0012】
また、表面エネルギーの高い材料が光あるいは熱エネルギーを与えることにより自然に流動することを利用するため、形成された領域の形状は曲率を持つという特徴がある。
【0013】
このように形成した領域の化学的あるいは物理的特徴を利用するデバイスにおいては、使用する温度が融解温度未満であることが重要である。融解温度以上にした場合、形成した所望の形状がさらに変化を続けてしまうことや、組成が変質し、所望の特性が得られなくなる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によるデバイスは基板上に形成した機能材料層に熱または光のエネルギーを与えることにより、所望の領域に所望の材料を、従来の複雑な工程を経ることなく、簡単に短時間で形成することができる。また、材料Bと材料Cとが相分離した結果、微細なデバイス構造を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。
光あるいは熱的なエネルギー照射により、形成した機能層が溶解する。それにより形成した機能層内の機能材料Bと機能材料C間の表面エネルギーおよび機能層に接する下地膜Aの表面エネルギーの差を利用することで、機能層内に組成の分布を生じさせることができる。
【0016】
デバイスとしては、機能層は層内に表面エネルギーの異なる機能材料を混在させて形成するかもしくは積層構造にすればよい。それにより、光あるいは熱的なエネルギーにより微小領域の組成分布を変化させることができる。また、積層した場合には組成変化させる平面方向のある領域を選ぶことで所望の領域のみ積層方向に渡って、異なる特性にすることも可能である。下地膜Aと機能層内の機能材料Bと機能材料Cの表面エネルギーに差があることにより、光あるいは熱的なエネルギー照射を部分的に与えることで積層した機能層内で混ざり合い、部分的に組成が変化することで異なる特性の領域が得られる。機能材料Bのみ、機能材料Cのみどちらか一方を形成した場合にはエネルギーを与えても形状、組成の変化は起こらなかった。機能材料Bと機能材料Cが同じ層内に混在していること、あるいは接した構造であることが重要な点である。表面エネルギーは機能材料B、機能材料C間で異なることが好ましく、表面エネルギーの関係としては機能材料B<機能材料Cが好ましい。下地膜の表面エネルギーは機能材料B、Cよりも小さくても大きくても、または中間でもよいが、加熱処理温度で溶解しないものであれば、エネルギー照射により機能層内に組成分布を生じさせることができた。
【0017】
(機能材料BとCの組合せ)
機能材料AにSiO2、Al2O3、Si、Pt、などを用い、機能材料BとCを変えながら調べたところ、機能材料とBとCは、Bとして、Ge−Sb-Te、Ge-Te、Ge−Bi-Te、In-Sb-Te、Sb、Ge−Bi−Sb-Te、Ge−Sb-Te-O 、Ge−Sb-Te−N、CとしてAu、Ag、Cu、Pt、Pd、Ni、Ir、Rh、Co、Os、Ru、Fe、Re、Mn、W、Mo、Cr、Ta、Nb、V、Hf、Zr、Ti、Zn、Al、Siが好ましかった。このようにCの表面エネルギーがBの表面エネルギーより2倍以上大きいことが好ましかった。
【0018】
機能材料Bの中で、Ge-Sb-Teは、均一に分離されるため、ノイズの低いパターンを形成でき良好である。Ge-Bi-Teは、溶融後の結晶化速度が速く、再生速度を上げられるため、良好である。Ge-Teは、再生時の感度は良くないが、コントラストが大きく良好である。Sbは、溶融時の変化率が大きく、SNRが大きく良好である。In-Sb-Te、Ge−Bi−Sb-Teは、溶融温度が低く、再生時の感度が良く良好である。Ge−Sb-Te-O 、Ge−Sb-Te−Nは、保存安定性が高く良好である。
【0019】
機能材料Cの中で、Au、Ag、Cu、Ni、Ir、Rh、Co、Os、Ruは、照射エネルギーが低くても分離するため好ましかった。Auはノイズが少ない点がより好ましい。Ag、Coは、機能材料Bの結晶化を促進する働きがありより好ましい。Cu, Niは、下地や保護層との接着力が強く、より好ましい。機能材料Cの中で、Pt、Pdは照射エネルギーを高くする必要があるが、分離後安定なため、耐久性に優れる。Ptは、さらに粒径が小さな10−30nmのマークやスペースを形成することが出来、より好ましい。Fe、Re、Mn、W、Mo、Cr、Ta、Nb、V、Hf、Zr、Ti、Zn、Al、Siは、Au等の貴金属に比べ、材料費が安価である点が好ましい。W、Mo、Cr、Ta、は、硬く、分離後に機能材料Bが溶融、固化を繰返す際に、媒体中での膜変形を起こしにくくより好ましい。Zn、Al、Siはこれらの中でもさらに安価で、取扱いが容易な点がより好ましい。Fe, Re、Zr、Ti、V, Hf は、分離後に機能材料Bとの光学特性が非溶融時に近いことから、機能材料の溶融時と非溶融時の信号変化を大きくし、再生時のSNRを大きくできより好ましい。
【0020】
(機能材料A)
ここで、機能材料BにGe−Sb-Te、機能材料CにAgを用い、機能材料Aを変えながら相分離が生じるかどうかを調べたところ、表2に示す結果が得られた。機能材料Bの表面張力γ0 は、333(mN/m) 、機能材料Cの表面張力γ0 は、903(mN/m) である。ここで、表中の融点には、溶融する温度もしくは、ガラス状になり表面形状が大きく変化する温度を記載した。
【0021】
【表1】
【0022】
表中、混合ガラスの組成は、SiO2-Al2O3-Na2O-MgOであった。以上の結果より、機能材料Aの表面エネルギーが、B、Cより大きくても小さくても、またこれらの中間の値であっても分離できることがわかった。エネルギー照射で膜は420℃以上になっているため、融点が420℃以下の機能材料Aを用いた場合には、分離しなかった。つまり、分離するためのエネルギー照射で機能材料Aが溶融するばあいには、十分に分離されないことがわかった。
【0023】
(基板)
本実施例では、保護基板にROMパターンに応じた凹凸を有するプラスチック基板やパターン転写したガラス基板を用いている。凹凸を有する基板とは、基板表面全面または一部に、原子サイズより大きな深さの溝を持つ基板である。ピットや溝などの凹凸は一周で連続的に形成されていても、途中分割されていてもよい。その大きさは場所により異なっていてもよい。また、基板には、プラスチック基板としてはポリカーボネートやや、ポリオレフィン、紫外線硬化樹脂からなるものや、この他、Siなど光が透過しない材料を用いてもよい。
【0024】
本実施例では、基板を射出成型にて大量生産したが、ガラスやSiをレーザや電子ビームでじかに彫ってもよいし、マスクを用いたエッチングなどで形成してもよい。
【0025】
実施例4に記載の表面粗さの違いは、表面の一部に硬いものを押し当て傷を形成してもよいし、表面が粗い基板の一部をエネルギービームにて溶融させ平坦化してもよい。
【0026】
実施例5に記載の表面化学処理は、ナノ印刷などによって形成してもよいし、塗布後にエネルギービームで変質または取り除いてもよい。
【0027】
次に、機能材料Cと機能材料Bを合計した平均膜厚Dtと形成出来る分離した形状の最小の大きさSmの関係を調べたところ、機能材料Cの表面エネルギーと機能材料Bの表面エネルギーの比Zに、
Dt*10/Z ≦ Sm 式(1)
Z ≦ 4 式(2)
式(1)かつ式(2)で示される関係があることがわかった。いくつかの機能材料を組合せた結果を表1に示す。ここで、材料ごとの表面エネルギーは、表面張力(mN/m)の測定値により比較した。以上より、分離した形状の大きさを小さくするには、平均膜厚Dtが式(1)かつ式(2)の関係または、後述の式(3)かつ式(4)の関係を満たすように、薄くなっていればよいことがわかる。また、この平均膜厚は、両機能材料の表面エネルギーの比で決まるため、材料の組合せによって異なることがわかる。例えば、機能材料CがAu、機能材料BがGe−Sb-Teで、100nmのマークを形成するには、平均膜厚は33nm以下、50nmのマークを形成するには、17nmにする必要があった。但し、表1に示されるように、平面方行への移動を抑制するエネルギーも働くため、表面エネルギー比Zが4以上になると、Zが4と同様の結果となった。すなわち、DtとSmの関係は、式(3)と式(4)で示された。
Dt*10/4 ≦ Sm 式(3)
Z > 4 式(4)
【0028】
【表2】
【0029】
また、表面エネルギー比が2未満の場合、分離が不十分で機能材料C中に機能材料Bが3〜4割含まれていた。弱いエネルギーを長時間照射すると、分離状況はやや改善される。
【0030】
本発明は各材料での表面エネルギーの差が重要であるため、組合せにより適した材料を選べばよく、例にあげた限りではない。組成変化を生じさせる時の構造により処理温度には適した範囲がある。プラスチック基板を用いる場合とガラス板やSi基板を用いた場合の違いや、デバイスとして利用する際の到達温度で異なる。例えばプラスチック基板を用いた場合、基板全体を加熱するには100℃程度となるため材料選びが難しいが、レーザ光により集光させたエネルギーを用いればよい。この場合、機能層のみの加熱となるため基板全体が加熱されるわけではなく、プラスチック基板においても熱変形などの影響は少ないが、組成変化温度(流動温度)が高すぎないことが望ましく、目安としては機能材料Cの融点が1000℃程度までであることが好ましい。例えば機能材料BとしてGe-Sb-Teを使用した場合より好ましい機能材料CはAu、Ag、Cuなどである。
ガラス基板やSi基板を用いた場合には基板全体を加熱処理することができ、高温処理が可能であるため、材料範囲は広がる。
【0031】
組成が流動する変化は基板表面や機能層に接する下地表面などに微細な凹凸あるいは熱的な揺らぎなどのきっかけがあるとより容易に起こる。例えば、基板表面に凹凸があれば容易に凹部分と凸部分に機能層内の組成が分かれやすい。また、下地に濡れ性など表面エネルギーの異なる領域を設けることにより流動による組成変化が起こり易くなる。この流動は、材料や温度にも依存するが、たいてい1〜数分で完了する。従来方法で凹部と凸部に組成の異なる材料を形成する場合は、例えばレジストを用いて凹凸パターン形状を形成しておき、薄膜を製膜する。レジストを除去するとレジスト上の膜も一緒に除去されるため凸状領域にある材料のパターンが形成される。その後さらに別の材料を製膜、研磨などの手法で凸部上の膜のみを除去すると異なる材料を所望のパターン状に存在させることができる。この従来の方法では、トータルで2から3日を要する。このように、本願の方法を用いれば、簡単な工程で、高額な装置を用いずに、所望の領域へのパターン形成ができる。
【0032】
また、流動させて異なる特性を持つ領域を形成する条件として、機能材料Bに対する機能材料Cの含有比率と膜厚、きっかけとなる凹形状と流動材料の体積との関係を調整することで、流動した後の各領域における表面曲率や、形状を任意に形成することができる。例えば機能材料Cの含有量が少ない場合、所望の領域全てに存在させることが困難となり、多すぎると所望の領域より広い領域に存在することになる。
【0033】
また、機能層を一部融解させて移動した機能材料Cの領域の中に、組成分布があることがわかった。表面エネルギーが高い材料は表面積を小さくしようと働くことで、他の組成を含まずほぼ主成分のみであったが、下地膜あるいは基板表面に近い部分では、溶融した機能材料Bがわずかに存在した。接着層として機能していることからも機能材料Bの組成が混在していることがわかった。この部分をEDX(日立製、S5200)により組成分析した結果、わずかに2〜19%のGe、Teを含んでいることがわかった。他の組成の検出ピークと近いこともあり、測定には誤差が含まれるが有意差ではあった。しかしながらこの領域の化学的あるいは物理的特性を変質する範囲ではなく、問題は生じなかった。
【0034】
起こりうる形状の例を図1に示す。
図1(a)は基板101は凹凸形状を有し、凸部に機能性材料B102,凹部に機能性材料C103が形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。これは、凹凸基板101上に、材料Bと材料Cとの混合物を形成した後、熱をかけることによって、材料Bと材料Cとが分離して形成されたものである。
【0035】
図1(b)は図1(a)と加熱条件が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部に材料Bと材料Cが形成されたものである。
【0036】
図1(c)は図1(a)に比べ凹凸基板101の凹凸形状が異なる場合や含有比率が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部の幅が狭い場合や材料Cの含有比率が高い場合の、凹部に形成される材料Cの形状を示す一例である。
【0037】
図1(d)は図1(c)と加熱条件が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部に材料Bと材料Cが形成されたものである。
この図1(c)(d)の特徴は、材料Cの大きな表面張力により、材料Bの表面よりも突出している点である。
【0038】
図1(e)は図1(a)に比べ凹凸基板101の凹凸形状が異なる場合や含有比率が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部の幅が広い場合や材料Cの含有比率が低い場合の、凹部に形成される材料Cの形状を示す一例である。
【0039】
図1(f)は図1(e)と加熱条件が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部に材料Bと材料Cが形成されたものである。
この図1(e)(f)の特徴は、基板形状や材料Cの含有量により、材料Bの表面よりも窪んでいる点である。
【0040】
図1(g)は図1(a)に比べ凹凸基板101の凹凸形状が異なる場合や含有比率が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部の幅が狭い場合や材料Cの含有比率が高い場合の、凹部に形成される材料Cの形状を示す一例である。
【0041】
図1(h)は図1(g)と加熱条件が異なる場合に形成された、機能層の組成分布を示す一例図である。凹凸基板101の凹部に材料Bと材料Cが形成されたものである。
この図1(g)(h)の特徴は、材料Cの大きな表面張力により、材料Bの表面よりも突出している点である。
【0042】
図1(i)は平面上にある微細な凹凸形状104を持つ基板101上に、機能材料Bと機能材料Cが形成された機能層の組成分布を示す一例図である。これは材料Bと材料Cとの混合物を形成した後、熱をかけることによって、微細な凹凸形状をきっかけに材料Bと材料Cとが分離して形成されたものである。
【0043】
図1(j)は平面上にある表面エネルギーの違い105、106を持つ基板上に、機能材料Bと機能材料Cが形成された機能層の組成分布を示す一例図である。これは材料Bと材料Cとの混合物を形成した後、熱をかけることによって、表面エネルギーの違いにより材料Bと材料Cとが分離して形成されたものである。
【0044】
図1(k)は平面上の表面荒れ107のある領域を持つ基板101上に、機能材料Bと機能材料Cが形成された機能層の組成分布を示す一例図である。これは材料Bと材料Cとの混合物を形成した後、熱をかけることによって、表面荒れの違いにより材料Bと材料Cとが分離して形成されたものである。
この図1(k)の特徴は、材料Cの大きな表面張力により、材料Bの表面よりも突出している点である。
【0045】
図1(l)は従来方法の均一に形成された膜を示す一例図である。凹凸形状を有する基板101上に均一に形成された膜である。
【実施例1】
【0046】
実施例1は、光を用いたROM基板の製法について記載する。図2に、本発明におけるディスク状デバイスの断面構造図の一例を示す。このデバイスは、表面に凹凸パターンを有する基板101上で、凹部には主成分が機能材料C102からなるスペース部、凸部には主成分が機能材料B103からなるマーク部が分離しており、表面が保護基板108で覆われている構成となっている。
図3に光ディスクの形成方法の一例を示す。
【0047】
ガラス板301上に塗布したレジスト302に、カッティング用に集光したレーザ光303を照射し現像することにより表面にピットパターンあるいはラインパターンの凹凸を形成し、その表面をメッキ法によりNi板を形成しNiスタンパ304を作製した。その後Niスタンパを金型として射出成型法により、表面に凹凸を有するプラスチック基板305を作製した。この基板上にスパッタリングによりSiO2を10nm下地層306として形成し、次にAu−Ge−Sb−Teよりなる機能層307を25nm積層しディスク状デバイスとした。
本実施例では機能層307を機能材料B、Cの2種類とし、機能材料B102としてGe-Sb-Teを、機能材料Bより表面エネルギーの大きい機能材料C103としてAuを用いた。その後、工程3として、レーザ光308を機能層307へ照射した。ここでは、移動方向に示されるように、ディスク状デバイスを回転してレーザ光を移動させながら照射した。この処理により、工程8に示されるよう機能層構成材料が融解して、表面エネルギーの大小により凹部、凸部へ移動し、組成の濃度分布が変化した。凹部には主成分Auからなる領域103、凸部には主成分Ge−Sb−Teからなる領域102が形成された。工程7は、工程6から8への間の様子を示しており、主成分Auからなる部分と主成分Ge−Sb−Teからなる部分からなる部分が分離する途中の様子を模式的に示してある。このように記録マークを形成後、保護基板107で貼り合わせにより表面を保護した。レーザ光照射は相変化光ディスクの初期化に使用されている装置で可能であり、幅5μm、長さ50μmの長円形のシートビームであるため短時間で処理することが可能であった。尚、集光したスポット径の小さなレーザ光で部分的に照射しても機能層の変化は起こる。変化させる領域を狭小領域としたい場合に有効である。
【0048】
また、機能層の機能材料CとしてPt、Cuを用いても同様の状態が得られた。凹部には表面に曲率を持つ主成分Pt、Cuからなる膜が形成された。また、これらの組成分布をSEM(走査電子顕微鏡)、微小領域のTEM(透過電子顕微鏡)などによりその効果を確認した。また、凹凸パターンを転写する母型としては射出成型に対応するものであればNiスタンパでなくともよい。
【0049】
図4(a)に、上記のような製法で形成されたピットパターン状に形成された機能材料Bと機能材料Cの領域を上面からみた配置図を示した。長さの異なる領域から構成されている。例えば機能材料C 103の領域が光ディスクのROMの信号となるピットパターンに相当する。(b)にライン状に形成された機能材料Bと機能材料Cを上面からみた図を示した。(c)は別の形状に形成した場合の機能材料Bと機能材料Cを上面からみた図を示した。
【0050】
図3(a)ようにピットパターンが形成された光ディスクの場合、ピットパターン部のみに反射率の高い材料を存在させることができる。それにより高い信号レベルが容易に得られる。従来の光ディスクの信号は均一に反射膜が形成され深さの違いを利用したものであるが、信号部以外の領域を反射率の低い材料とし、信号領域との反射率差を大きくすることで、本実施例のディスクの方が高い信号レベルが得られた。
【0051】
従来は、複数の工程を経てデバイスを製造するので、デバイスの製造に、通常数日〜数週間程かかったが、このデバイスは、相分離を利用することで、数分〜数十分と、短時間で済み、反射率特性の異なる領域の形成が簡単な製造方法で得ることができた。
【0052】
また、従来の光エネルギーを利用したレジスト加工技術では、微細な形状の形成にはビーム中央部のごく一部のパワーを使うので、ビームのパワー変動の影響が大きくなる結果、歩留まりが低下してしまったが、本願発明の製造方法を用いることにより、このような課題を解消することができた。
【実施例2】
【0053】
凹凸形状を有する基板を作製するための別の方法について、作製方法の一例を図5に示す。ガラス板401の上に均一にSOG(スピンオングラス)402を塗布し、Niスタンパ304とガラス板の間に挟み加圧した後、UV光403を照射してNiスタンパとの界面で剥離し、Niスタンパのパターンを転写した。ガラス板はプラスチック基板に比べ平坦性に優れている。また、SOGは主成分がSiO2であることから耐熱性に優れており、上述のシートビームの変わりにベーク炉による加熱が可能になる。また、ベーク炉による加熱は複数枚を同時に処理できるため生産効率が良い。Niスタンパから凹凸を転写したSOG付ガラス基板上にAu−Ge−Sb−Teよりなる機能層307を13nm、スパッタリングにより形成した。その後ベーク炉404中で熱処理を400℃1分施した。加熱処理により機能層は表面エネルギーの大小により凹部、凸部へ移動し、組成の濃度分布が変化し、凹部には主成分Auからなる機能材料C103、凸部には主成分Ge−Sb−Teからなる機能材料B102が形成された。熱処理中は静止、固定していても機能層中の組成の移動が生じたが、外部からわずかな振動を加えると、凹凸部への組成の濃度分布が速やかに完了した。例えば上下、左右の振動や回転、などである。
【0054】
機能層の機能材料CとしてPt-Co、Cr-Coを用いても同様の状態が得られた。凹部には主成分Pt-Co、Cr-Coからなる磁性を持つ膜が形成され、凸部表面には非磁性材料が形成された。SEM、微小領域のTEMなどにより組成分布を確認した。機能層の変化などについては実施例1と同じであった。
【実施例3】
【0055】
凹凸形状を有する基板を作製するための別の方法について説明する。
実施例2と同様にSOGを用いる転写の場合、Niスタンパの代わりに石英スタンパ601も可能であった。実施例2と異なる部分について図6に示す。透明な石英スタンパ601,602を2枚用いれば、基板の両面へのパターン形成が一度の転写で行うことができ、高密度のデバイスを短時間で作製することが可能である。石英スタンパは石英板上にレジストを塗布した後に集光したレーザ光により所望のサイズ(ピットパターンあるいはラインパターン)になるよう露光し、現像した後にRIE(反応性イオンエッチング)処理を行い石英板表面に凹部を形成した。RIE処理の後、レジストを除去することで所望の深さの凹凸を有する石英スタンパを作製した。もちろんこの石英スタンパを原盤として複数枚のNiスタンパを作製することも可能である。石英スタンパを母型とする場合は、凹凸パターンを転写するガラス板の代わりにSi基板でも良い、UV光を照射することができれば良く、スタンパあるいは凹凸パターンを転写する基板のどちらかが透明であればよい。次にガラス板401の上に均一にSOG(スピンオングラス)402を塗布し、石英スタンパ601,602とガラス板401の間にSOG402を均一に挟み加圧して、UV光を照射して石英スタンパとの界面で剥離すると凹凸が転写されたガラス基板が得られた。この基板上に、図5のようにAu−Ge−Sb−Teよりなる機能層307を13nm、スパッタリングにより形成した。その後熱処理を400℃1分施した。加熱処理により機能層中で融解し、表面エネルギーの大小により凹部、凸部へ移動し、組成の濃度分布が変化した。その結果、凹部、凸部で組成の異なる領域が得られた。これにより、基板両面に機能層を形成できた。両面 に記録層を有するROMなどに適用できる。
【0056】
なお、Si基板を用いた場合には光が透過しないため基板越しのシートビームによる加熱はできないが、ガラス基板同様、ベーク炉加熱が可能であることから複数枚を一度に処理できる上、ガラス基板よりも安価に同様の結果を得ることができた。ベーク炉加熱による機能層の変化については実施例1、2と同じであった。
【実施例4】
【0057】
凹凸形状を有する基板を作製するための別の方法について説明する。
機能層中の組成変化を促すものとしてわずかなきっかけでも有効であった。作製方法の一例を図7に示す。まず凹凸を形成したNiスタンパ304を作製した。レジストに露光する光を電子線とし直径50nmのピットパターンあるいは線幅50nmのラインパターンを凹凸に形成した。一例としてガラス基板301上に、PMMA樹脂701をスピン塗布し、基板全体を約110℃に加熱した後に樹脂薄膜にNiスタンパを真空雰囲気中で押し当てた。押し当てる圧力を2メガパスカルとした。その後樹脂が軟化している状態を維持し、樹脂を引き伸ばすように両者を並行かつ垂直方向へ均一にNiスタンパと基板を剥離する。それにより、Niスタンパの凹部のPMMA樹脂は基板と垂直方向に、Niスタンパの凹部の深さよりも高い針状の凸部が形成される。例えば深さ70nm、直径120nmのNiスタンパのピットが転写後には高さ300nm直径30nmとNiスタンパよりも高く小さい凸部が得られた。次に、先端のとがった形状のパターンをもつPMMA樹脂基板をマスター基板に用いて微小凹凸を有する基板702を作製した。ポリカーボネート平板702表面あるいは下地膜表面に、上記の針状の凸部を有するマスター基板の尖った形状の先端のみが接するように押し当て、ポリカーボネート平板702表面あるいは下地膜表面にわずかな凹状のくぼみ(傷)を形成した。ここで、ポリカーボネート基板は70℃〜135℃の範囲の温度に保持しておくと、より凹状のくぼみ形状変化が生じやすい。この基板上にスパッタにより下地膜703としてSiO2を10nm、Au−Ge−Sb−Teよりなる機能層22を25nm形成した。その後このディスクを回転させながら初期化機のシートビームを照射することにより機能層は加熱され、機能層中の各材料が融解し、表面エネルギーの大小により凹部、凸部へ移動し、組成分布が変化した。その結果、図1(i)に示すような組成および形状の変化が起こり、図7の一番下に示すように、材料BであるGe−Sb−Te102、材料CであるA103が分離した。この結果からわずかな凹状のくぼみでもAuが移動することがわかった。ここで、10nm程度以上あれば、材料Bと材料Cが相分離する。したがって、表面エネルギーの差があれば極微小な凹凸でも任意のパターンで組成分布が得られることがわかった。同様にして尖った形状のパターン先端をポリカーボネート基板上に直接スパッタしたAu−Ge−Sb−Te膜22の表面に押し当て、膜自身にわずかな凹状のくぼみ(傷)を形成した。この場合、すなわち、下地としてSiO2膜を形成しなくても、加熱による機能層中の組成変化はこのくぼみ(傷)をきっかけに同じように起こった。
【0058】
図4(a)に示すように機能材料Bと機能材料Cの領域はピットパターン状に形成された。長さの異なる領域から構成されている。例えば103が光ディスクのROMの信号となるピットである。
【0059】
このようにわずかなくぼみ上に形成された組成領域は他の領域に比べ膜厚が厚くなるように形成される。光ディスクの信号として、図4(a)のようなピット状に形成した機能材料C103としてのAuは表面に曲率を持った形状で存在することになる。これを信号として読み出した場合、図4(l)のような従来の矩形ピットに比べ、肩の部分が無く、なだらかな曲線を持つピットとなることから、従来よりもノイズ成分の少ない信号レベルが得られた。
【実施例5】
【0060】
機能層中の組成変化を促すための別の方法について説明する。
機能層中の組成変化を促すものとして、基板表面あるいは下地表面の表面状態の違いを利用する方法も効果的だった。図8に製造方法を示す。機能層が光あるいは熱によるエネルギーを受けて変化する際に、下地の表面状態の影響を受けて組成が変化する。下地層としてTiO2膜を使用する。基板305上にスパッタにより下地層306としてTiO2を30nm形成し、この膜表面に所望のパターンが形成してあるマスク801を介してUV光403を照射した。TiO2膜はUV光が照射された部分のみ反応し、改質することで表面エネルギーが低下する。よってこの表面エネルギーの差を利用して機能層の組成変化を促すことができる。UV光を照射した後、TiO2上に機能層307としてAu-Ge-Sb-Teを25nm製膜した。その後この基板を回転させながらレーザ光を照射した。レーザ光による加熱処理により、機能層は図1(g)に示すようにAuを主成分とする領域106とGe-Sb-Teを主成分とする領域105に分かれた。
【0061】
また、図4(a)(b)(c)に示すような機能材料Bと機能材料Cの領域を形成することができた。この製造方法においては遮蔽マスクの形状に依存するため、所望のサイズに応じて遮蔽マスクを形成しておけばよい。UV光を使用する場合は比較的大きいパターンの場合となり、狭小パターンを得るためにはEBなどの光源を使用すればよい。遮蔽マスクの場合はあらかじめ遮蔽マスクと基板の位置制御をしっかりしておくことで、パターン一つ一つの制御は必要でない。このことから光源となる光を必要な領域全体に照射するかもしくは走査すればよいことや、真空工程を含まずに所望の領域に所望の材料を形成できることは生産性の上でメリットである。
【0062】
また、表面状態の異なる領域を形成する方法として、遮蔽マスクを利用したスパッタでも可能であった。機能層とは表面エネルギーの異なる材料を基板上にスパッタしたところ、マスクを通過した部分のみに下地膜が形成される 同様にして、この基板上にAu-Ge-Sb-Teを25nm製膜し、基板を回転させながらレーザ光を照射した。レーザ光による加熱処理により、機能層は図1(j)に示すようにAuを主成分とする領域とGe-Sb-Teを主成分とする領域に分離して形成された。
【実施例6】
【0063】
磁気ディスクに応用した例について示す。図9に示す。
機能層を2層に分けて積層した場合において試みた。ガラス基板上に下地306としてCr合金を20nm、機能材料B102としてGe-Sb-Teを10nm、機能材料C103としてCo-Cr-Pt合金を20nm積層した。その後波長約400nmの集光したレーザ光308を用いて、基板を回転させながら200nmの送りピッチで内周から外周へと円状に加熱した。シートビームではなく集光したレーザ光での狭い範囲のエネルギー照射であるため、時間的には課題があるが線幅が50nmとわずかなエリア内での組成変化を生じさせることができた。レーザ光が照射された領域901はその他の領域とは磁気特性が異なる結果が得られた。この901の領域は、Ge-Sb-Te+Co-Cr-Ptからなっている。この場合加熱されない領域が磁気記録エリアであり、磁気特性が変化した加熱部分は、記録マークの磁界の広がりを制限し、磁界の広がりに起因するサイドフリンジ、クロストークなどを防ぐ領域となる。レーザ光による加熱により、機能層内の一部が融解し、組成が混ざり合うことで磁気特性を変化させた。これによる凹凸変化はほとんどなく、安定したヘッド浮上を行うことができた。この方法であればレーザ光照射のみで所望のデバイスが形成されるため、従来のディスクリート媒体作製に比べ製造工程が簡単で製造にかかる時間ははるかに短い時間で済む。例えば基板に凹凸を形成する工程が不要となるなどである。
【実施例7】
【0064】
実施例4のように小さなくぼみ上に形成された領域は他の領域よりも膜厚を厚く形成することがたやすい。表面エネルギーの高い材料の含有比率を多めにすれば図10に示すように曲率をもった領域が他の部分よりも凸状態で存在する。機能材料B102と機能材料C103、および下地101の表面では表面エネルギーが異なり、液体に対する濡れ性も異なる。例えば液体を塗布し、表面エネルギーが異なることを利用し、一方の領域のみに液体を存在させることができる。ピット状の領域あるいはライン状の領域にのみに分離して存在させることができる。また、凹部にある機能材料B102のみを除去してもよい。この場合も下地あるいは基板と機能材料C103の表面エネルギーが異なることを利用し、一方の領域のみに液体を存在させることができる。
【0065】
例えばバイオチップトレーとして用いた場合について説明する。図10の凹部1002に、ヌクレオチド配列又はタンパク等のプローブを形成する。このとき、凹部それぞれの領域には、それぞれ異なる種類のプローブ1001を形成する。このプローブは、共有結合で基板と結合するようにしても、イオン結合で結合するようにしても、どちらでも良い。続いて、血液等、調べたいサンプル(検体)を、プローブが配置された基板に滴下する。ここでは、機能材料Bと機能材料Cの表面の濡れ性が異なるため、チップトレー上に検体の液体を滴下し上下、左右に多少揺らすだけで、検体1002は凸部ではじかれて凹部に集まり、簡単に振り分けることができる。こうして、所望の検査を行うことができる。サンプルは、凹部の領域毎に、きちんと分離され、凹部同士でコンタミネーションすることがないので、高い精度で反応を検出することができる。また、プローブ自身も親水性、疎水性、帯電の性質を持つことから、プローブの整列、配列も可能である。同様に親水性、疎水性、帯電の性質をもつ生体分子の整列にも上記トレーの濡れ性の違いを利用できる。
【実施例8】
【0066】
実施例1示した製造方法において、光ディスク用ピットパターン状に形成された機能材料Bと機能材料Cの領域のうち、一方の領域の機能材料をドライまたはウェットエッチング、加熱処理による昇華や酸化作用を利用することで、除去または透明化することでパターン以外の領域をレーザ光が光を吸収しない状態にした。例えば機能材料BをGe-Sb-Teにした場合はアルカリのウェットエッチングで除去でき、酸化作用を利用するには機能材料BをIrOx、Ag合金-ZnS、TaNなどを選ぶと、熱処理により透過率が増すことで透明化ができる。パターンとしては図4(a)のピットパターンの他に(b)(c)に示すような領域が形成できる。その後、形成した領域が移動しないように保護膜を形成する。さらにピット形状を形成する工程と、機能層を形成して加熱処理および一方の領域の除去、保護層の形成を繰り返し行うことで、パターン領域にのみ機能材料が存在し、それ以外の領域にはレーザ光が透過する膜が形成されている多層構造の光ディスクを形成した。
このような多層ディスクを形成することにより、従来の問題であったレーザ光が奥の層を読むために通過する手前の層の、各層におけるレーザ光の吸収を低下させることができ、信号部分とその他の領域との反射率差が大きいことから高い信号レベルが得られることができた。図11に(a)本発明を用いた2層構造、(b)従来の2層構造を比較する図を示す。図11(a)において基板101に形成された機能材料C103と中間層1101と2層目の層1102、保護基板107の構造とした。レーザ光308を照射し信号を読み出す。2層目を読み出す場合でも、信号となる領域103以外の領域が透明であるため中間層を通過したレーザ光1103の光量の減衰は少ない。一方、図11(b)の従来構造では1層目1104でのレーザ光の吸収が多いために中間層を通過した光量1103が減衰する。
【0067】
尚、層と層を分けるために存在するスペーサ層(ピットパターンを形成する層)は多重反射の影響を防ぐため、厚みは一定でなくてもよい。
【実施例9】
【0068】
図12に半導体装置における配線の製造方法に応用した例について示す。まず、Si基板上にあらかじめ形成したい配線パターン上にわずかな凹凸を形成しておく。その後、Cu-Ge-Sb-Te膜を製膜し、ベーク炉で400℃1分の加熱処理を行った。その結果、凹部にはわずかな凹みをきっかけとしてCuを主成分とした組成が集まった領域となり、他はGe-Sb-Teを主成分とした領域に分かれた。その後Ge-Sb-Teのみを除去し、図12(a)に示すようにCuのみを残した。配線となるCuの領域はGe-Sb-Teが融解したことにより、基板に接する部分で一部Ge-Sb-Teの組成を含み、接着層として機能している他、Cuのマイグレーションによる分離、断線をも防ぐ効果が得られた。図12(b)に形成した配線の平面図を示す。
【0069】
従来は、複数の工程を経て配線を製造するので、通常少なくともレジスト処理、パターン露光、レジスト一部除去、ドライエッチングによる深さ処理、レジスト除去、配線材料製膜、研磨という複数の工程を経て製造されるため、製造には数日程かかったが、この製造方法の場合は相分離を利用するため、あらかじめきっかけとしてのパターン形成は必要であるが、加熱処理のみで配線エリアへの材料形成ができるため処理時間は数分で済み、電気的特性の異なる領域の形成が簡単な製造方法で得ることができた。
【実施例10】
【0070】
図13に発光素子の製造方法に応用した例について示す。実施例2に示した製造方法で透明基板1301上にSOG402から成る凹凸パターンを形成した。その上に機能材料BとしてGe−Sb−Teと機能材料CとしてZnOが混在した膜をスパッタにより製膜し、ベーク炉内で400℃1分の加熱処理を行った。加熱により機能材料B102と機能材料C103の領域に分離し、その後一方の機能材料B、Ge−Sb−Teをエッチングにより除去した。除去されずに残ったZnOは透明電極1302となる。その後アルキレート錯体からなる有機発光層1303、金属電極1304としてAg-Mgを製膜した。透明電極と金属電極との間に電圧を印加することによって発光する光は曲率形状を持つ透明電極のプリズム現象により、光の取り出し効率が高くなった。従来方法では曲率形状を持つ電極を作製するには曲率を持つ母系作製、パターン転写、製膜と複雑な工程が必要であったため高価な装置と日数が必要であったが、これにより曲率形状を持つ透明電極を簡単な製造方法で短時間に得ることが実現できた。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明によるデバイス断面図。
【図2】本発明による第1の実施例のデバイス断面図。
【図3】本発明による第1の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図4】本発明により形成されたパターンを示す平面図。
【図5】本発明による第2の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図6】本発明による第3の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図7】本発明による第4の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図8】本発明による第5の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図9】本発明による第6の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図10】本発明による第8の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図11】本発明による第9の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図12】本発明による第10の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【図13】本発明による第10の実施例のデバイス製造方法を示す断面図。
【符号の説明】
【0072】
101:基板
102:機能材料B
103:機能材料C
104:わずかなくぼみ
105、106:濡れ製の違う表面
107:表面荒れの異なる領域
108:保護基板
301:ガラス板
302:レジスト
303:レーザ光
304:Niスタンパ
305:プラスチック基板
306:下地層
307:機能層
308:レーザ光
401:ガラス板
402:SOG(スピンオングラス)
403:UV光
404:ベーク炉
601:石英スタンパ
701:PMMA樹脂
801:マスク
901:磁気特性が異なる領域
1001:プローブ
1002:サンプル
1101:中間層
1102:2層目の層
1103:中間層を通過した光
1104:1層目の層
1301:透明基板
1302:透明電極
1303:有機発光層
1304:金属電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に第1の材料を有する基板と、
前記基板の第1の領域上に形成された第2の材料と
前記基板の第2の領域上に形成された、前記第2の材料とは表面エネルギーまたは表面曲率が異なる第3の材料とを有し、
前記第2の材料および前記第3の材料とは、化学的または物理的性質が異なるものであり、
表面エネルギーまたは表面曲率が第2の材料よりも第3の材料の方が大きく、
かつ、第3の材料で形成された領域で、第2の材料を20%未満の範囲で含むものであり、前記第2の材料及び第3の材料が溶融する温度未満で用いられることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記第3の材料で形成された領域において、
前記基板に接する側と曲率を持つ表面側とでは第2の材料の含有量が異なり、
前記基板に接する側の方が第2の材料をより多く含むことを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記基板は、凹凸を有し、
前記凹部に前記第3の材料が、前記凸部に前記第2の材料が形成されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2の材料の領域は、第1の膜と第2の膜の積層構造であることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の材料は、第1の情報記録層として用いられ、
前記第2の材料上に、中間層を介して第2の情報記録層が設けられ、
前記第2の情報記録層を読み出す際に、光ビームが、前記第1の情報記録層を介して照射されるようにされた請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記第3の材料の膜厚は、前記第2の材料の膜厚よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスは、光ディスク、磁気記録媒体、半導体素子、発光素子、バイオチップの何れかであることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
表面に第1の材料を有する基板と、
前記基板の第1の領域上に形成された第2の材料と
前記基板の第2の領域上に形成された、前記第2の材料とは表面エネルギーまたは表面曲率が異なる第3の材料とを有し、
前記第2の材料および前記第3の材料とは、化学的または物理的性質が異なるものであり、
表面エネルギーまたは表面曲率が第2の材料よりも第3の材料の方が大きく、
かつ、第3の材料で形成された領域での前記第2の材料の含有量が、前記基板側ほど多く含まれ、前記第2の材料及び第3の材料が溶融する温度未満で用いられることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
前記第3の材料で形成された領域における前記第2の材料の含有量は、20%未満であることを特徴とする請求項8記載のデバイス。
【請求項10】
表面に第1の材料を有する基板上に、第2の材料と第3の材料とを含む膜を形成するステップと、
エネルギー照射により、前記基板表面の第1の領域上に前記第2の材料が、前記基板表面の第2の領域上に前記第3の材料が来るように、前記第2の材料および前記第3の材料を移動させるステップとを有し、
前記第2の材料および前記第3の材料が溶融する温度未満で用いられるためのデバイスの製造方法。
【請求項11】
前記エネルギーは、光あるいは熱エネルギーであることを特徴とする請求項10記載のデバイスの製造方法。
【請求項12】
前記基板は、ナノピラーを押し当てることにより凹凸が形成されたものであり、
前記基板の凹部に前記第3の材料が、前記凸部に前記第2の材料が、形成されることを特徴とする請求項10記載のデバイスの製造方法。
【請求項13】
前記第1の材料の前記第1の領域に、選択的にエネルギーを照射して前記第1の材料を改質した後、
前記第2の材料と前記第3の材料とを含む膜を形成することを特徴とする請求項10記載のデバイスの製造方法。
【請求項1】
表面に第1の材料を有する基板と、
前記基板の第1の領域上に形成された第2の材料と
前記基板の第2の領域上に形成された、前記第2の材料とは表面エネルギーまたは表面曲率が異なる第3の材料とを有し、
前記第2の材料および前記第3の材料とは、化学的または物理的性質が異なるものであり、
表面エネルギーまたは表面曲率が第2の材料よりも第3の材料の方が大きく、
かつ、第3の材料で形成された領域で、第2の材料を20%未満の範囲で含むものであり、前記第2の材料及び第3の材料が溶融する温度未満で用いられることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記第3の材料で形成された領域において、
前記基板に接する側と曲率を持つ表面側とでは第2の材料の含有量が異なり、
前記基板に接する側の方が第2の材料をより多く含むことを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記基板は、凹凸を有し、
前記凹部に前記第3の材料が、前記凸部に前記第2の材料が形成されていることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記第2の材料の領域は、第1の膜と第2の膜の積層構造であることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記第2の材料は、第1の情報記録層として用いられ、
前記第2の材料上に、中間層を介して第2の情報記録層が設けられ、
前記第2の情報記録層を読み出す際に、光ビームが、前記第1の情報記録層を介して照射されるようにされた請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記第3の材料の膜厚は、前記第2の材料の膜厚よりも大きいことを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記デバイスは、光ディスク、磁気記録媒体、半導体素子、発光素子、バイオチップの何れかであることを特徴とする請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
表面に第1の材料を有する基板と、
前記基板の第1の領域上に形成された第2の材料と
前記基板の第2の領域上に形成された、前記第2の材料とは表面エネルギーまたは表面曲率が異なる第3の材料とを有し、
前記第2の材料および前記第3の材料とは、化学的または物理的性質が異なるものであり、
表面エネルギーまたは表面曲率が第2の材料よりも第3の材料の方が大きく、
かつ、第3の材料で形成された領域での前記第2の材料の含有量が、前記基板側ほど多く含まれ、前記第2の材料及び第3の材料が溶融する温度未満で用いられることを特徴とするデバイス。
【請求項9】
前記第3の材料で形成された領域における前記第2の材料の含有量は、20%未満であることを特徴とする請求項8記載のデバイス。
【請求項10】
表面に第1の材料を有する基板上に、第2の材料と第3の材料とを含む膜を形成するステップと、
エネルギー照射により、前記基板表面の第1の領域上に前記第2の材料が、前記基板表面の第2の領域上に前記第3の材料が来るように、前記第2の材料および前記第3の材料を移動させるステップとを有し、
前記第2の材料および前記第3の材料が溶融する温度未満で用いられるためのデバイスの製造方法。
【請求項11】
前記エネルギーは、光あるいは熱エネルギーであることを特徴とする請求項10記載のデバイスの製造方法。
【請求項12】
前記基板は、ナノピラーを押し当てることにより凹凸が形成されたものであり、
前記基板の凹部に前記第3の材料が、前記凸部に前記第2の材料が、形成されることを特徴とする請求項10記載のデバイスの製造方法。
【請求項13】
前記第1の材料の前記第1の領域に、選択的にエネルギーを照射して前記第1の材料を改質した後、
前記第2の材料と前記第3の材料とを含む膜を形成することを特徴とする請求項10記載のデバイスの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図11】
【公開番号】特開2007−18569(P2007−18569A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−196968(P2005−196968)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】
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