トルクロッド取付け用ブラケット構造
【課題】エンジンの振動を抑制し、ブラケットの軽量化を図り、強度を向上させたトルクロッド取付け用ブラケット構造を提供する。
【解決手段】トルクロッド取付け用ブラケット構造は、ダンパハウジング28から張り出したブラケット15にエンジン17側から延びるトルクロッド13の端(ロッド連結端21)を連結した。ブラケット15は、トルクロッド13の上方のアッパブラケット37と、トルクロッド13の下方のロアブラケット38と、ロアブラケット38のロアロッド締結端41にダンパハウジング28から張り出して接合したステイブラケット42と、を備える。ステイブラケット42は、ダンパハウジング28とで閉断面形状を形成している。ダンパハウジング28の縦ビード45にアッパブラケット37の後端47及びロアブラケット38の後端48を接合している。
【解決手段】トルクロッド取付け用ブラケット構造は、ダンパハウジング28から張り出したブラケット15にエンジン17側から延びるトルクロッド13の端(ロッド連結端21)を連結した。ブラケット15は、トルクロッド13の上方のアッパブラケット37と、トルクロッド13の下方のロアブラケット38と、ロアブラケット38のロアロッド締結端41にダンパハウジング28から張り出して接合したステイブラケット42と、を備える。ステイブラケット42は、ダンパハウジング28とで閉断面形状を形成している。ダンパハウジング28の縦ビード45にアッパブラケット37の後端47及びロアブラケット38の後端48を接合している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン側から車体まで延ばしたトルクロッドを車体に取付けるためのトルクロッド取付け用ブラケット構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トルクロッド取付け用ブラケット構造には、車体にトルクロッドのゴムに嵌めた筒を締結しているものがある。
この構造は、車体にトルクロッドの端部に設けた筒の一端を載せ、筒の他端から筒にボルトを通して車体のおねじにねじ込むことによって、車体に端部を締結している。
その結果、エンジンを支持しつつ、エンジンからの荷重(振動)を抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、エンジンから入力される荷重(振動)が大きくなると、車体の強度を高める必要がある。
例えば、車体の板厚を厚くしたり、トルクロッドの端部を締結するために車体に板厚の厚いブラケットを取付けたりすると、振動を抑制できるが、重量が増加する。特に、ブラケットの重量が増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−248616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エンジンの振動を抑制し、ブラケットの軽量化を図り、強度を向上させ、振動に伴う異音(ビビリ音)が発生しないトルクロッド取付け用ブラケット構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、エンジンルームの壁のダンパハウジングから張り出したブラケットにエンジン側から延びるトルクロッドの端を連結したトルクロッド取付け用ブラケット構造であって、ブラケットは、トルクロッドの上方に張り出したアッパブラケットと、トルクロッドの下方に張り出したロアブラケットと、ロアブラケットのロアロッド締結端にダンパハウジングから張り出して接合したステイブラケットと、を備え、ステイブラケットは、ダンパハウジングとで閉断面形状を形成していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、ダンパハウジングにエンジンルームへ向け突出した凸形状で車両の上下方向に延びる縦ビードを備え、縦ビードにアッパブラケットの後端及びロアブラケットの後端を接合していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、アッパブラケット及びロアブラケットは、縦ビードに接合されるそれぞれの後端を形成したそれぞれの面が車両の車幅方向へ向いているアッパフランジ、ロアフランジを有し、アッパフランジは、後端の下部を含むアッパ下部にロアブラケットの板厚より高いアッパ段差部と、アッパ段差部に連なりロアフランジに接合しているアッパ下部接合部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明では、縦ビードは、長手方向の中途にエンジンルームへ向け突出した凸部を備え、ロアフランジは、中央に凸部の高さより低く形成したロア段差部と、ロア段差部に連なり凸部に接合しているロア下部接合部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、アッパ段差部とロア段差部は、車両前後方向へ延ばして形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明では、ロアフランジは、車両後方へ向かうに連れて車両上下方向の高さが高くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、ダンパハウジングから張り出したブラケットは、トルクロッドの上方のアッパブラケットと、トルクロッドの下方のロアブラケットと、ロアブラケットのロアロッド締結端にダンパハウジングから張り出して接合したステイブラケットと、を備え、ステイブラケットは、ダンパハウジングとで閉断面形状を形成しているので、トルクロッドから入力された荷重(振動)はステイブラケットの接合で形成した閉断面形状によって分散され、ステイブラケットを含むブラケット及びダンパハウジングの強度が向上する。その結果、ブラケットの板厚が薄くても、支持している大きなエンジンの振動を抑制でき、且つ、ブラケットの板厚を薄くして、ブラケットの軽量化を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、ダンパハウジングにエンジンルームへ向け突出した凸形状で車両の上下方向に延びる縦ビードを備え、縦ビードにアッパブラケットの後端及びロアブラケットの後端を接合しているので、トルクロッドから入力された荷重(振動)はアッパブラケットの後端及びロアブラケットの後端から縦ビードに伝達され、この伝達された荷重を縦ビードが分散する。従って、トルクロッドの支持(荷重)に対するダンパハウジング及びブラケットの強度を向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、アッパブラケット及びロアブラケットは、縦ビードに接合されるそれぞれの後端を形成したそれぞれの面が車両の車幅方向へ向いているアッパフランジ、ロアフランジを有し、アッパフランジは、後端の下部を含むアッパ下部にロアブラケットの板厚より高いアッパ段差部と、アッパ段差部に連なりロアフランジに接合しているアッパ下部接合部と、を備えているので、ロアフランジにアッパフランジのアッパ下部(のアッパ下部接合部)をエンジンルーム側から重ねると、アッパ段差部によって、ダンパハウジングに向いているロアフランジの面とアッパフランジの面をほぼ段差のない面一にすることができる。
すなわち、アッパ段差部が無いとすると、縦ビードにロアフランジの板厚を吸収する段部を形成することになるが、このような段を縦ビードに形成する必要がなくなることから、縦ビードの段に荷重が集中するということがない。その結果、トルクロッドの支持(荷重)に対するダンパハウジングの強度を確保することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、縦ビードは、長手方向の中途にエンジンルームへ向け突出した凸部を備え、ロアフランジは、中央に凸部の高さより低く形成したロア段差部と、ロア段差部に連なり凸部に接合しているロア下部接合部と、を備えているので、凸部によってダンパハウジング(の縦ビード)から、ロア下部接合部を除いたロアフランジは乖離し、ダンパハウジングに接触しない。
その結果、ロアフランジにアッパフランジのアッパ下部(アッパ下部接合部)をエンジンルーム側から重ねた接合部は、凸部によってアッパ下部もダンパハウジングから乖離し、ダンパハウジングに接触しない非接合部となり、振動による異音(ビビリ音)が発生しないという利点がある。
【0016】
また、ダンパハウジング(の凸部)からロア下部接合部に伝わった振動をロア段差部によって抑制することができ、ダンパハウジングからの乖離(隙間)を大きくする必要がなくなり、乖離(隙間)を小さくすることができる。従って、ロアフランジの接合強度を向上させることができる。
【0017】
すなわち、アッパ下部(アッパ下部接合部)を重ねた接合部は、ダンパハウジングから離れて非接合部となるため、振動によるビビリ音の発生を防止する隙をダンパハウジングとの間に設定する必要がある。この隙が小さいとビビリ音が発生し、逆に大き過ぎるとダンパハウジングと接合した部位の接合強度が低下する。
しかし、ロア段差部によってダンパハウジングとロア下部接合部との接合部からの振動が非接合部に伝わり難くすることができるとともに、大きな隙を設定する必要も無くなり、ロアブラケットとダンパハウジングとの接合強度も向上させることができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、アッパ段差部とロア段差部は、車両前後方向へ延ばして形成されているので、アッパブラケット及びロアブラケットの強度が向上し、結果的にアッパブラケット及びロアブラケットのトルクロッドを支持する強度が向上する。
【0019】
請求項6に係る発明では、ロアフランジは、車両後方へ向かうに連れて車両上下方向の高さが高くなっているので、トルクロッドから入力される車両前後方向の荷重をロアフランジからダンパハウジングの広範囲に伝達することができ、荷重を広範囲に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係るトルクロッド取付け用ブラケット構造を採用したフロントボデーの斜視図である。
【図2】実施例に係るトルクロッド取付け用ブラケット構造の斜視図である。
【図3】実施例に係るブラケットにトルクロッドを連結した連結状態の斜視図である。
【図4】図3の4矢視図兼作用説明図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図5の6部詳細図である。
【図7】図2の7−7線断面図である。
【図8】図2の8−8線断面図である。
【図9】図2の9−9線断面図である。
【図10】ブラケット構造のステイブラケットをダンパハウジングに接合した状態を示す図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【図12】ステイブラケット及びスティフナを下方から見上げた斜視図である。
【図13】図12の13矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
実施例に係るトルクロッド取付け用ブラケット構造は、図1〜図3に示すように、車両11のフロントボデー12に採用されている。フロントボデー12にトルクロッド13を支持する構造で、主にフロントボデー12にブラケット15を固定し、このブラケット15にトルクロッド13の端を連結している。
【0023】
トルクロッド13は、エンジン17を車体18に支持するロッドで、車体18のフロントボデー12に連結するロッド連結端21(図3の図下)を有する。
ロッド連結端21は短い筒状で、緩衝部材(例えば、ゴム)を介して中央(筒の半径の中心と同心)に鋼製ブッシュ22が設けられている。鋼製ブッシュ22の長さ(高さ)はHsである。
そして、鋼製ブッシュ22がブラケット15にボルト23で締結されて、トルクロッド13がフロントボデー12に支持されることになる。
【0024】
フロントボデー12は、エンジンルーム26を有し、エンジンルーム26に配置したエンジン17をトルクロッド13やトルクロッド13以外の装置で支持する。
エンジン17は、右側にシリンダを配置し、左側に減速機を配置し、シリンダを配置した右側にトルクロッド13を取付けている。
【0025】
また、フロントボデー12は左右のフロントサイドフレーム27、左右のダンパハウジング28、左右のホイールハウスインナ31、左右のフロントアッパメンバ32、車室33とエンジンルーム26を隔絶するダッシュボード34、トルクロッド取付け用ブラケット構造を備える。
【0026】
次に、トルクロッド取付け用ブラケット構造の主要構成を図1〜図13で説明する。
図10は、ブラケット15のアッパブラケット37及びロアブラケット38を取り外した状態を示している。
車両前後方向はX軸方向、車幅方向はY軸方向、車両上下方向はZ軸方向とする。
【0027】
トルクロッド取付け用ブラケット構造は、エンジンルーム26の壁(ダンパハウジング28とホイールハウスインナ31とからなる)のダンパハウジング28から張り出したブラケット15にエンジン17側から延びるトルクロッド13の端(ロッド連結端21)を連結した。
【0028】
ブラケット15は、トルクロッド13の上方に張り出したアッパブラケット37と、トルクロッド13の下方に張り出したロアブラケット38と、ロアブラケット38のロアロッド締結端41にダンパハウジング28から張り出して接合したステイブラケット42と、を備える。
【0029】
ステイブラケット42は、図10、図11に示すように、ダンパハウジング28とで閉断面形状を形成している。44は閉断面形状で形成された空間である。
【0030】
ブラケット構造では、ダンパハウジング28にエンジンルーム26へ向け突出した凸形状で車両11の上下方向(Z軸方向)に延びる縦ビード45を備え、縦ビード45にアッパブラケット37の後端47及びロアブラケット38の後端48を接合している。
【0031】
アッパブラケット37及びロアブラケット38は、縦ビード45に接合されるそれぞれの後端47、48を形成したそれぞれの面が車両11の車幅方向(Y軸方向)へ向いているアッパフランジ51、ロアフランジ52を有する。
【0032】
アッパフランジ51は、図2、図6に示す通り、後端47の下部を含むアッパ下部53にロアブラケット38の板厚twより高い(高さGuの)アッパ段差部54と、アッパ段差部54に連なりロアフランジ52に接合しているアッパ下部接合部55と、を備えている。
【0033】
縦ビード45は、図2、図5、図6、図10に示す通り、長手方向(Z軸方向)の中途にエンジンルーム26へ向け突出した凸部56を備える。
ロアフランジ52は、中央に凸部56の高さHbより低く(高さGuで)形成したロア段差部57と、ロア段差部57に連なり凸部56に(溶接部116で)接合しているロア下部接合部58と、を備えている。
【0034】
アッパ段差部54とロア段差部57は、車両11前後方向(X軸方向)へ延ばして形成されている(図2〜図4)。
ロアフランジ52は、車両11後方へ向かうに連れて車両11上下方向(Z軸方向)の高さHf(図2)が高くなっている。
【0035】
次に、トルクロッド取付け用ブラケット構造を詳しく説明していく。
このブラケット構造は、既に述べたダンパハウジング28からアッパブラケット37、ロアブラケット38、ステイブラケット42を張り出して、スティフナ64で補強している。
【0036】
ダンパハウジング28は、図2、図10、図11に示すように、エンジンルーム26へ向いているダンパハウジング側壁65に連続してダンパハウジング前壁66が車両11の正面へ向け(矢印a1の方向)形成されている。そして、これら65、66の上部からアッパブラケット37が張り出している
【0037】
アッパブラケット37は、図2、図3に示す通り、トルクロッド13のロッド連結端21を締結するアッパロッド締結端68がほぼ水平に形成され、アッパロッド締結端68に連なるアッパ本体部71がほぼ水平に形成されている。
【0038】
アッパ本体部71には、ダンパハウジング28に接合した上アッパ接合フランジ72、アッパフランジ(第1下アッパ接合フランジ)51、第2下アッパ接合フランジ73が形成されている。
上アッパ接合フランジ72は、アッパ本体部71の第1の縁から車両11の上方へ延びている。
【0039】
アッパフランジ(第1下アッパ接合フランジ)51は、アッパ本体部71の第2の縁から連続して車両11の下方へ延びロアブラケット38に重なる。そして、ダンパハウジング28の縦ビード45に、アッパ段差部54、アッパ下部接合部55を除いて接合するアッパフランジ基端部74(図2、図6)が形成されている。
つまり、アッパフランジ基端部74のみがダンパハウジング28に直接接合している。そしてアッパ下部接合部55がロアブラケット38に接合している。
【0040】
ロアブラケット38は、図2〜図4に示す通り、トルクロッド13のロッド連結端21を締結するロアロッド締結端41がほぼ水平に形成され、ロアロッド締結端41に連なるロア本体部76がほぼ水平に形成されている。
ロアロッド締結端41にロッド連結端21の鋼製ブッシュ22の端面が接触している。
また、トルクロッド13の下方へ延びる別のロアフランジ38aを有する。
【0041】
ロア本体部76には、ダンパハウジング28に接合した上ロア接合フランジ77、ロアフランジ(下ロア接合フランジ)52、別のロアフランジ38aが形成されている。
上ロア接合フランジ77は、ロア本体部76の第1の縁から車両11の上方へ延びている。
【0042】
ロアフランジ52は、ロア本体部76の第2の縁から連続して車両11の下方へ延びて、車両11の側面側から視て(図2の視点)、ほぼ三角形である。
【0043】
そして、ダンパハウジング28の縦ビード45に、ロア段差部57から乖離して接合するロアフランジ基端部81(図2、図6)が形成されている。このロアフランジ基端部81を含めた後端48から車両11の前方へ向け延び、アッパフランジ51にほぼ平行である。
【0044】
つまり、ロアフランジ基端部81のみがダンパハウジング28に接合している。
そして、アッパ下部接合部55に、ロア段差部57に連なるロア上部接合部82が接合し、ロアブラケット38の下にステイブラケット42を接合している。
【0045】
ステイブラケット42は、図2、図10〜図13に示す通り、車両11の正面側から視て(図13の視点)、概略L字形である。そして、ほぼ水平なステイロア接合部85と、車両11の下方へ延びる側壁部86と、前壁部87と、からなる。
また、図11に示す通り、この側壁部86と、前壁部87と、ダンパハウジング前壁66とで閉断面形状を形成している。
【0046】
ステイロア接合部85は、ロアブラケット38のロアロッド締結端41に重ねて接合している。
前壁部87は、略三角形の本体が形成され、本体の下部に連ねてダンパハウジング28に接合した接合代部91、92が形成されている。
【0047】
側壁部86は、前部に隆起部93が断面コ字形に上縁から下縁まで形成され、隆起部93にはスティフナ64が重なる。
【0048】
スティフナ64は、図12、図13に示す通り、ステイブラケット42に第1スティフナ接合部96及び第2スティフナ接合部97を接合している。
【0049】
第1スティフナ接合部96は、隆起部93の形状にほぼ一致して接触する形状に形成されている。
また、隆起部93の傾斜辺98に重なる起立縁101が形成されている。その結果、第1スティフナ接合部96の強度が高まり、結果的に、ロアブラケット38の強度を高め、トルクロッド13を支持する強度を高めることができる。
【0050】
第2スティフナ接合部97は、ステイブラケット42のステイロア接合部85に重なり接合した接合盤部103が形成され、この接合盤部103に締結用の凹部104が形成されている。この凹部104には軸力受け部材105を一体的に接合している。
なお、図13に示す接合盤部103はステイロア接合部85から離れているが、間のものを確認できるよう離している。
【0051】
軸力受け部材105は、トルクロッド13の鋼製ブッシュ22から荷重を受ける受圧部108を形成し、受圧部108にめねじ部111をボルト23の径に対応する径で形成している。
受圧部108は凹部104に一体的に嵌合して、接合盤部103とステイロア接合部85との間に介在している。そして、ステイロア接合部85及びロアブラケット38のロアロッド締結端41を介して締結の締め付け力(軸力)を受ける。
【0052】
めねじ部111にボルト23を所望の締め付け力でねじ込むと、ボルト23は所望の軸力を付与して、鋼製ブッシュ22を受圧部108に所望の面圧で押圧するので、トルクロッド13のロッド連結端21(の鋼製ブッシュ22)をブラケット15により確実に締結することができる。
【0053】
次に、ブラケットに施すスポット溶接の溶接箇所を図2、図4、図6で説明する。
図2、図4では溶接箇所を白丸印で示している。
【0054】
ホイールハウスインナ31にブラケット15を溶接部115で接合している。
ダンパハウジング28にブラケット15を溶接部116で接合している。
アッパブラケット37にロアブラケット38を溶接部117で接合している。
【0055】
ステイブラケット42にスティフナ64を溶接部118で接合している。
ステイブラケット42にロアブラケット38の別のロアフランジ38aを溶接部121で接合している。
【0056】
ステイブラケット42のステイロア接合部85、ロアブラケット38のロアロッド締結端41及び、スティフナ64の第2スティフナ接合部97を溶接部122で接合している。
なお、溶接部115は、スポット溶接を施すことによって結成されたナゲット及び母材(鋼板)の熱影響部である。
溶接部116〜118、121、122は溶接部115と同様である。
【0057】
次に、トルクロッド取付け用ブラケット構造の作用を説明する。
このブラケット構造では、図4、図11に示す通り、トルクロッド13からブラケット15に荷重が矢印a2のように入力されると、閉断面形状を形成しているロアブラケット38及びダンパハウジング28にそれぞれ矢印a3、矢印a4のように伝わり、分散される。
【0058】
その結果、ブラケット15の板厚が薄くても、支持している大きなエンジン17の振動を抑制でき、且つ、ブラケット15の軽量化を図ることができる。
【0059】
また、ブラケット構造では、図3、図6、図7、図9に示す通り、トルクロッド13からブラケット15に荷重が矢印a2のように入力されると、アッパブラケット37の後端47、ロアブラケット38の後端48から縦ビード45にそれぞれ矢印a5、矢印a6のように伝わり、分散される。従って、ダンパハウジング28及びブラケット15のトルクロッド13の支持(荷重)に対する強度を向上させることができる。
【0060】
さらに、ブラケット構造では、図6に示す通り、ロアフランジ52にアッパフランジ51のアッパ下部53(アッパ下部接合部55)をエンジンルーム26側から重ねると、アッパ段差部54によって、ダンパハウジング28に向いているロアフランジ52の面125とアッパフランジ51の面126をほぼ段差のない面一にすることができる。
【0061】
その上、ブラケット構造では、ロアフランジ52(のロア上部接合部82)にアッパフランジ51のアッパ下部53(アッパ下部接合部55)をエンジンルーム26側から重ねた接合部128は、凸部56によってダンパハウジング28から距離Eだけ乖離し、ダンパハウジング28に接触しない非接合部となり、振動による異音(ビビリ音)が発生しないという利点がある。
【0062】
すなわち、アッパ下部53(アッパ下部接合部55)を重ねた接合部128は、ダンパハウジング28から距離Eだけ離れて非接合部となるため、振動によるビビリ音の発生を防止する隙をダンパハウジング28との間に設定する必要がある。この隙(距離E)が小さいとビビリ音が発生し、逆に大き過ぎるとダンパハウジング28と接合した部位の接合強度が低下する。
【0063】
尚、本発明のトルクロッド取付け用ブラケット構造は、実施の形態では自動車に採用されているが、振動を発するものを支持する構造にも採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のトルクロッド取付け用ブラケット構造は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0065】
13…トルクロッド、15…ブラケット、17…エンジン、21…トルクロッドの端(ロッド連結端)、26…エンジンルーム、28…ダンパハウジング、31…エンジンルームの壁(ホイールハウスインナ)、37…アッパブラケット、38…ロアブラケット、41…ロアロッド締結端、42…ステイブラケット、44…閉断面形状で形成された空間、45…縦ビード、47…アッパブラケットの後端、48…ロアブラケットの後端、51…アッパフランジ、52…ロアフランジ、53…アッパ下部、54…アッパ段差部、55…アッパ下部接合部、56…凸部、57…ロア段差部、58…ロア下部接合部、tw…ロアブラケットの板厚。
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン側から車体まで延ばしたトルクロッドを車体に取付けるためのトルクロッド取付け用ブラケット構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トルクロッド取付け用ブラケット構造には、車体にトルクロッドのゴムに嵌めた筒を締結しているものがある。
この構造は、車体にトルクロッドの端部に設けた筒の一端を載せ、筒の他端から筒にボルトを通して車体のおねじにねじ込むことによって、車体に端部を締結している。
その結果、エンジンを支持しつつ、エンジンからの荷重(振動)を抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、従来技術(特許文献1)は、エンジンから入力される荷重(振動)が大きくなると、車体の強度を高める必要がある。
例えば、車体の板厚を厚くしたり、トルクロッドの端部を締結するために車体に板厚の厚いブラケットを取付けたりすると、振動を抑制できるが、重量が増加する。特に、ブラケットの重量が増加してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−248616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エンジンの振動を抑制し、ブラケットの軽量化を図り、強度を向上させ、振動に伴う異音(ビビリ音)が発生しないトルクロッド取付け用ブラケット構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、エンジンルームの壁のダンパハウジングから張り出したブラケットにエンジン側から延びるトルクロッドの端を連結したトルクロッド取付け用ブラケット構造であって、ブラケットは、トルクロッドの上方に張り出したアッパブラケットと、トルクロッドの下方に張り出したロアブラケットと、ロアブラケットのロアロッド締結端にダンパハウジングから張り出して接合したステイブラケットと、を備え、ステイブラケットは、ダンパハウジングとで閉断面形状を形成していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、ダンパハウジングにエンジンルームへ向け突出した凸形状で車両の上下方向に延びる縦ビードを備え、縦ビードにアッパブラケットの後端及びロアブラケットの後端を接合していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明では、アッパブラケット及びロアブラケットは、縦ビードに接合されるそれぞれの後端を形成したそれぞれの面が車両の車幅方向へ向いているアッパフランジ、ロアフランジを有し、アッパフランジは、後端の下部を含むアッパ下部にロアブラケットの板厚より高いアッパ段差部と、アッパ段差部に連なりロアフランジに接合しているアッパ下部接合部と、を備えていることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明では、縦ビードは、長手方向の中途にエンジンルームへ向け突出した凸部を備え、ロアフランジは、中央に凸部の高さより低く形成したロア段差部と、ロア段差部に連なり凸部に接合しているロア下部接合部と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、アッパ段差部とロア段差部は、車両前後方向へ延ばして形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明では、ロアフランジは、車両後方へ向かうに連れて車両上下方向の高さが高くなっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明では、ダンパハウジングから張り出したブラケットは、トルクロッドの上方のアッパブラケットと、トルクロッドの下方のロアブラケットと、ロアブラケットのロアロッド締結端にダンパハウジングから張り出して接合したステイブラケットと、を備え、ステイブラケットは、ダンパハウジングとで閉断面形状を形成しているので、トルクロッドから入力された荷重(振動)はステイブラケットの接合で形成した閉断面形状によって分散され、ステイブラケットを含むブラケット及びダンパハウジングの強度が向上する。その結果、ブラケットの板厚が薄くても、支持している大きなエンジンの振動を抑制でき、且つ、ブラケットの板厚を薄くして、ブラケットの軽量化を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明では、ダンパハウジングにエンジンルームへ向け突出した凸形状で車両の上下方向に延びる縦ビードを備え、縦ビードにアッパブラケットの後端及びロアブラケットの後端を接合しているので、トルクロッドから入力された荷重(振動)はアッパブラケットの後端及びロアブラケットの後端から縦ビードに伝達され、この伝達された荷重を縦ビードが分散する。従って、トルクロッドの支持(荷重)に対するダンパハウジング及びブラケットの強度を向上させることができる。
【0014】
請求項3に係る発明では、アッパブラケット及びロアブラケットは、縦ビードに接合されるそれぞれの後端を形成したそれぞれの面が車両の車幅方向へ向いているアッパフランジ、ロアフランジを有し、アッパフランジは、後端の下部を含むアッパ下部にロアブラケットの板厚より高いアッパ段差部と、アッパ段差部に連なりロアフランジに接合しているアッパ下部接合部と、を備えているので、ロアフランジにアッパフランジのアッパ下部(のアッパ下部接合部)をエンジンルーム側から重ねると、アッパ段差部によって、ダンパハウジングに向いているロアフランジの面とアッパフランジの面をほぼ段差のない面一にすることができる。
すなわち、アッパ段差部が無いとすると、縦ビードにロアフランジの板厚を吸収する段部を形成することになるが、このような段を縦ビードに形成する必要がなくなることから、縦ビードの段に荷重が集中するということがない。その結果、トルクロッドの支持(荷重)に対するダンパハウジングの強度を確保することができる。
【0015】
請求項4に係る発明では、縦ビードは、長手方向の中途にエンジンルームへ向け突出した凸部を備え、ロアフランジは、中央に凸部の高さより低く形成したロア段差部と、ロア段差部に連なり凸部に接合しているロア下部接合部と、を備えているので、凸部によってダンパハウジング(の縦ビード)から、ロア下部接合部を除いたロアフランジは乖離し、ダンパハウジングに接触しない。
その結果、ロアフランジにアッパフランジのアッパ下部(アッパ下部接合部)をエンジンルーム側から重ねた接合部は、凸部によってアッパ下部もダンパハウジングから乖離し、ダンパハウジングに接触しない非接合部となり、振動による異音(ビビリ音)が発生しないという利点がある。
【0016】
また、ダンパハウジング(の凸部)からロア下部接合部に伝わった振動をロア段差部によって抑制することができ、ダンパハウジングからの乖離(隙間)を大きくする必要がなくなり、乖離(隙間)を小さくすることができる。従って、ロアフランジの接合強度を向上させることができる。
【0017】
すなわち、アッパ下部(アッパ下部接合部)を重ねた接合部は、ダンパハウジングから離れて非接合部となるため、振動によるビビリ音の発生を防止する隙をダンパハウジングとの間に設定する必要がある。この隙が小さいとビビリ音が発生し、逆に大き過ぎるとダンパハウジングと接合した部位の接合強度が低下する。
しかし、ロア段差部によってダンパハウジングとロア下部接合部との接合部からの振動が非接合部に伝わり難くすることができるとともに、大きな隙を設定する必要も無くなり、ロアブラケットとダンパハウジングとの接合強度も向上させることができる。
【0018】
請求項5に係る発明では、アッパ段差部とロア段差部は、車両前後方向へ延ばして形成されているので、アッパブラケット及びロアブラケットの強度が向上し、結果的にアッパブラケット及びロアブラケットのトルクロッドを支持する強度が向上する。
【0019】
請求項6に係る発明では、ロアフランジは、車両後方へ向かうに連れて車両上下方向の高さが高くなっているので、トルクロッドから入力される車両前後方向の荷重をロアフランジからダンパハウジングの広範囲に伝達することができ、荷重を広範囲に分散させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施例に係るトルクロッド取付け用ブラケット構造を採用したフロントボデーの斜視図である。
【図2】実施例に係るトルクロッド取付け用ブラケット構造の斜視図である。
【図3】実施例に係るブラケットにトルクロッドを連結した連結状態の斜視図である。
【図4】図3の4矢視図兼作用説明図である。
【図5】図1の5−5線断面図である。
【図6】図5の6部詳細図である。
【図7】図2の7−7線断面図である。
【図8】図2の8−8線断面図である。
【図9】図2の9−9線断面図である。
【図10】ブラケット構造のステイブラケットをダンパハウジングに接合した状態を示す図である。
【図11】図10の11−11線断面図である。
【図12】ステイブラケット及びスティフナを下方から見上げた斜視図である。
【図13】図12の13矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、実施例で詳細に説明する。
【実施例】
【0022】
実施例に係るトルクロッド取付け用ブラケット構造は、図1〜図3に示すように、車両11のフロントボデー12に採用されている。フロントボデー12にトルクロッド13を支持する構造で、主にフロントボデー12にブラケット15を固定し、このブラケット15にトルクロッド13の端を連結している。
【0023】
トルクロッド13は、エンジン17を車体18に支持するロッドで、車体18のフロントボデー12に連結するロッド連結端21(図3の図下)を有する。
ロッド連結端21は短い筒状で、緩衝部材(例えば、ゴム)を介して中央(筒の半径の中心と同心)に鋼製ブッシュ22が設けられている。鋼製ブッシュ22の長さ(高さ)はHsである。
そして、鋼製ブッシュ22がブラケット15にボルト23で締結されて、トルクロッド13がフロントボデー12に支持されることになる。
【0024】
フロントボデー12は、エンジンルーム26を有し、エンジンルーム26に配置したエンジン17をトルクロッド13やトルクロッド13以外の装置で支持する。
エンジン17は、右側にシリンダを配置し、左側に減速機を配置し、シリンダを配置した右側にトルクロッド13を取付けている。
【0025】
また、フロントボデー12は左右のフロントサイドフレーム27、左右のダンパハウジング28、左右のホイールハウスインナ31、左右のフロントアッパメンバ32、車室33とエンジンルーム26を隔絶するダッシュボード34、トルクロッド取付け用ブラケット構造を備える。
【0026】
次に、トルクロッド取付け用ブラケット構造の主要構成を図1〜図13で説明する。
図10は、ブラケット15のアッパブラケット37及びロアブラケット38を取り外した状態を示している。
車両前後方向はX軸方向、車幅方向はY軸方向、車両上下方向はZ軸方向とする。
【0027】
トルクロッド取付け用ブラケット構造は、エンジンルーム26の壁(ダンパハウジング28とホイールハウスインナ31とからなる)のダンパハウジング28から張り出したブラケット15にエンジン17側から延びるトルクロッド13の端(ロッド連結端21)を連結した。
【0028】
ブラケット15は、トルクロッド13の上方に張り出したアッパブラケット37と、トルクロッド13の下方に張り出したロアブラケット38と、ロアブラケット38のロアロッド締結端41にダンパハウジング28から張り出して接合したステイブラケット42と、を備える。
【0029】
ステイブラケット42は、図10、図11に示すように、ダンパハウジング28とで閉断面形状を形成している。44は閉断面形状で形成された空間である。
【0030】
ブラケット構造では、ダンパハウジング28にエンジンルーム26へ向け突出した凸形状で車両11の上下方向(Z軸方向)に延びる縦ビード45を備え、縦ビード45にアッパブラケット37の後端47及びロアブラケット38の後端48を接合している。
【0031】
アッパブラケット37及びロアブラケット38は、縦ビード45に接合されるそれぞれの後端47、48を形成したそれぞれの面が車両11の車幅方向(Y軸方向)へ向いているアッパフランジ51、ロアフランジ52を有する。
【0032】
アッパフランジ51は、図2、図6に示す通り、後端47の下部を含むアッパ下部53にロアブラケット38の板厚twより高い(高さGuの)アッパ段差部54と、アッパ段差部54に連なりロアフランジ52に接合しているアッパ下部接合部55と、を備えている。
【0033】
縦ビード45は、図2、図5、図6、図10に示す通り、長手方向(Z軸方向)の中途にエンジンルーム26へ向け突出した凸部56を備える。
ロアフランジ52は、中央に凸部56の高さHbより低く(高さGuで)形成したロア段差部57と、ロア段差部57に連なり凸部56に(溶接部116で)接合しているロア下部接合部58と、を備えている。
【0034】
アッパ段差部54とロア段差部57は、車両11前後方向(X軸方向)へ延ばして形成されている(図2〜図4)。
ロアフランジ52は、車両11後方へ向かうに連れて車両11上下方向(Z軸方向)の高さHf(図2)が高くなっている。
【0035】
次に、トルクロッド取付け用ブラケット構造を詳しく説明していく。
このブラケット構造は、既に述べたダンパハウジング28からアッパブラケット37、ロアブラケット38、ステイブラケット42を張り出して、スティフナ64で補強している。
【0036】
ダンパハウジング28は、図2、図10、図11に示すように、エンジンルーム26へ向いているダンパハウジング側壁65に連続してダンパハウジング前壁66が車両11の正面へ向け(矢印a1の方向)形成されている。そして、これら65、66の上部からアッパブラケット37が張り出している
【0037】
アッパブラケット37は、図2、図3に示す通り、トルクロッド13のロッド連結端21を締結するアッパロッド締結端68がほぼ水平に形成され、アッパロッド締結端68に連なるアッパ本体部71がほぼ水平に形成されている。
【0038】
アッパ本体部71には、ダンパハウジング28に接合した上アッパ接合フランジ72、アッパフランジ(第1下アッパ接合フランジ)51、第2下アッパ接合フランジ73が形成されている。
上アッパ接合フランジ72は、アッパ本体部71の第1の縁から車両11の上方へ延びている。
【0039】
アッパフランジ(第1下アッパ接合フランジ)51は、アッパ本体部71の第2の縁から連続して車両11の下方へ延びロアブラケット38に重なる。そして、ダンパハウジング28の縦ビード45に、アッパ段差部54、アッパ下部接合部55を除いて接合するアッパフランジ基端部74(図2、図6)が形成されている。
つまり、アッパフランジ基端部74のみがダンパハウジング28に直接接合している。そしてアッパ下部接合部55がロアブラケット38に接合している。
【0040】
ロアブラケット38は、図2〜図4に示す通り、トルクロッド13のロッド連結端21を締結するロアロッド締結端41がほぼ水平に形成され、ロアロッド締結端41に連なるロア本体部76がほぼ水平に形成されている。
ロアロッド締結端41にロッド連結端21の鋼製ブッシュ22の端面が接触している。
また、トルクロッド13の下方へ延びる別のロアフランジ38aを有する。
【0041】
ロア本体部76には、ダンパハウジング28に接合した上ロア接合フランジ77、ロアフランジ(下ロア接合フランジ)52、別のロアフランジ38aが形成されている。
上ロア接合フランジ77は、ロア本体部76の第1の縁から車両11の上方へ延びている。
【0042】
ロアフランジ52は、ロア本体部76の第2の縁から連続して車両11の下方へ延びて、車両11の側面側から視て(図2の視点)、ほぼ三角形である。
【0043】
そして、ダンパハウジング28の縦ビード45に、ロア段差部57から乖離して接合するロアフランジ基端部81(図2、図6)が形成されている。このロアフランジ基端部81を含めた後端48から車両11の前方へ向け延び、アッパフランジ51にほぼ平行である。
【0044】
つまり、ロアフランジ基端部81のみがダンパハウジング28に接合している。
そして、アッパ下部接合部55に、ロア段差部57に連なるロア上部接合部82が接合し、ロアブラケット38の下にステイブラケット42を接合している。
【0045】
ステイブラケット42は、図2、図10〜図13に示す通り、車両11の正面側から視て(図13の視点)、概略L字形である。そして、ほぼ水平なステイロア接合部85と、車両11の下方へ延びる側壁部86と、前壁部87と、からなる。
また、図11に示す通り、この側壁部86と、前壁部87と、ダンパハウジング前壁66とで閉断面形状を形成している。
【0046】
ステイロア接合部85は、ロアブラケット38のロアロッド締結端41に重ねて接合している。
前壁部87は、略三角形の本体が形成され、本体の下部に連ねてダンパハウジング28に接合した接合代部91、92が形成されている。
【0047】
側壁部86は、前部に隆起部93が断面コ字形に上縁から下縁まで形成され、隆起部93にはスティフナ64が重なる。
【0048】
スティフナ64は、図12、図13に示す通り、ステイブラケット42に第1スティフナ接合部96及び第2スティフナ接合部97を接合している。
【0049】
第1スティフナ接合部96は、隆起部93の形状にほぼ一致して接触する形状に形成されている。
また、隆起部93の傾斜辺98に重なる起立縁101が形成されている。その結果、第1スティフナ接合部96の強度が高まり、結果的に、ロアブラケット38の強度を高め、トルクロッド13を支持する強度を高めることができる。
【0050】
第2スティフナ接合部97は、ステイブラケット42のステイロア接合部85に重なり接合した接合盤部103が形成され、この接合盤部103に締結用の凹部104が形成されている。この凹部104には軸力受け部材105を一体的に接合している。
なお、図13に示す接合盤部103はステイロア接合部85から離れているが、間のものを確認できるよう離している。
【0051】
軸力受け部材105は、トルクロッド13の鋼製ブッシュ22から荷重を受ける受圧部108を形成し、受圧部108にめねじ部111をボルト23の径に対応する径で形成している。
受圧部108は凹部104に一体的に嵌合して、接合盤部103とステイロア接合部85との間に介在している。そして、ステイロア接合部85及びロアブラケット38のロアロッド締結端41を介して締結の締め付け力(軸力)を受ける。
【0052】
めねじ部111にボルト23を所望の締め付け力でねじ込むと、ボルト23は所望の軸力を付与して、鋼製ブッシュ22を受圧部108に所望の面圧で押圧するので、トルクロッド13のロッド連結端21(の鋼製ブッシュ22)をブラケット15により確実に締結することができる。
【0053】
次に、ブラケットに施すスポット溶接の溶接箇所を図2、図4、図6で説明する。
図2、図4では溶接箇所を白丸印で示している。
【0054】
ホイールハウスインナ31にブラケット15を溶接部115で接合している。
ダンパハウジング28にブラケット15を溶接部116で接合している。
アッパブラケット37にロアブラケット38を溶接部117で接合している。
【0055】
ステイブラケット42にスティフナ64を溶接部118で接合している。
ステイブラケット42にロアブラケット38の別のロアフランジ38aを溶接部121で接合している。
【0056】
ステイブラケット42のステイロア接合部85、ロアブラケット38のロアロッド締結端41及び、スティフナ64の第2スティフナ接合部97を溶接部122で接合している。
なお、溶接部115は、スポット溶接を施すことによって結成されたナゲット及び母材(鋼板)の熱影響部である。
溶接部116〜118、121、122は溶接部115と同様である。
【0057】
次に、トルクロッド取付け用ブラケット構造の作用を説明する。
このブラケット構造では、図4、図11に示す通り、トルクロッド13からブラケット15に荷重が矢印a2のように入力されると、閉断面形状を形成しているロアブラケット38及びダンパハウジング28にそれぞれ矢印a3、矢印a4のように伝わり、分散される。
【0058】
その結果、ブラケット15の板厚が薄くても、支持している大きなエンジン17の振動を抑制でき、且つ、ブラケット15の軽量化を図ることができる。
【0059】
また、ブラケット構造では、図3、図6、図7、図9に示す通り、トルクロッド13からブラケット15に荷重が矢印a2のように入力されると、アッパブラケット37の後端47、ロアブラケット38の後端48から縦ビード45にそれぞれ矢印a5、矢印a6のように伝わり、分散される。従って、ダンパハウジング28及びブラケット15のトルクロッド13の支持(荷重)に対する強度を向上させることができる。
【0060】
さらに、ブラケット構造では、図6に示す通り、ロアフランジ52にアッパフランジ51のアッパ下部53(アッパ下部接合部55)をエンジンルーム26側から重ねると、アッパ段差部54によって、ダンパハウジング28に向いているロアフランジ52の面125とアッパフランジ51の面126をほぼ段差のない面一にすることができる。
【0061】
その上、ブラケット構造では、ロアフランジ52(のロア上部接合部82)にアッパフランジ51のアッパ下部53(アッパ下部接合部55)をエンジンルーム26側から重ねた接合部128は、凸部56によってダンパハウジング28から距離Eだけ乖離し、ダンパハウジング28に接触しない非接合部となり、振動による異音(ビビリ音)が発生しないという利点がある。
【0062】
すなわち、アッパ下部53(アッパ下部接合部55)を重ねた接合部128は、ダンパハウジング28から距離Eだけ離れて非接合部となるため、振動によるビビリ音の発生を防止する隙をダンパハウジング28との間に設定する必要がある。この隙(距離E)が小さいとビビリ音が発生し、逆に大き過ぎるとダンパハウジング28と接合した部位の接合強度が低下する。
【0063】
尚、本発明のトルクロッド取付け用ブラケット構造は、実施の形態では自動車に採用されているが、振動を発するものを支持する構造にも採用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のトルクロッド取付け用ブラケット構造は、自動車に好適である。
【符号の説明】
【0065】
13…トルクロッド、15…ブラケット、17…エンジン、21…トルクロッドの端(ロッド連結端)、26…エンジンルーム、28…ダンパハウジング、31…エンジンルームの壁(ホイールハウスインナ)、37…アッパブラケット、38…ロアブラケット、41…ロアロッド締結端、42…ステイブラケット、44…閉断面形状で形成された空間、45…縦ビード、47…アッパブラケットの後端、48…ロアブラケットの後端、51…アッパフランジ、52…ロアフランジ、53…アッパ下部、54…アッパ段差部、55…アッパ下部接合部、56…凸部、57…ロア段差部、58…ロア下部接合部、tw…ロアブラケットの板厚。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンルームの壁のダンパハウジングから張り出したブラケットにエンジン側から延びるトルクロッドの端を連結したトルクロッド取付け用ブラケット構造であって、
前記ブラケットは、前記トルクロッドの上方に張り出したアッパブラケットと、前記トルクロッドの下方に張り出したロアブラケットと、該ロアブラケットのロアロッド締結端に前記ダンパハウジングから張り出して接合したステイブラケットと、を備え、
前記ステイブラケットは、前記ダンパハウジングとで閉断面形状を形成していることを特徴とするトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項2】
前記ダンパハウジングに前記エンジンルームへ向け突出した凸形状で車両の上下方向に延びる縦ビードを備え、
前記縦ビードに前記アッパブラケットの後端及び前記ロアブラケットの後端を接合していることを特徴とする請求項1記載のトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項3】
前記アッパブラケット及び前記ロアブラケットは、前記縦ビードに接合されるそれぞれの前記後端を形成したそれぞれの面が前記車両の車幅方向へ向いているアッパフランジ、ロアフランジを有し、
前記アッパフランジは、前記後端の下部を含むアッパ下部に前記ロアブラケットの板厚より高いアッパ段差部と、該アッパ段差部に連なり前記ロアフランジに接合しているアッパ下部接合部と、を備えていることを特徴とする請求項2記載のトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項4】
前記縦ビードは、長手方向の中途に前記エンジンルームへ向け突出した凸部を備え、
前記ロアフランジは、中央に前記凸部の高さより低く形成したロア段差部と、該ロア段差部に連なり前記凸部に接合しているロア下部接合部と、を備えていることを特徴とする請求項3記載のトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項5】
前記アッパ段差部と前記ロア段差部は、車両前後方向へ延ばして形成されていることを特徴とする請求項4記載のトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項6】
前記ロアフランジは、車両後方へ向かうに連れて車両上下方向の高さが高くなっていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載のトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項1】
エンジンルームの壁のダンパハウジングから張り出したブラケットにエンジン側から延びるトルクロッドの端を連結したトルクロッド取付け用ブラケット構造であって、
前記ブラケットは、前記トルクロッドの上方に張り出したアッパブラケットと、前記トルクロッドの下方に張り出したロアブラケットと、該ロアブラケットのロアロッド締結端に前記ダンパハウジングから張り出して接合したステイブラケットと、を備え、
前記ステイブラケットは、前記ダンパハウジングとで閉断面形状を形成していることを特徴とするトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項2】
前記ダンパハウジングに前記エンジンルームへ向け突出した凸形状で車両の上下方向に延びる縦ビードを備え、
前記縦ビードに前記アッパブラケットの後端及び前記ロアブラケットの後端を接合していることを特徴とする請求項1記載のトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項3】
前記アッパブラケット及び前記ロアブラケットは、前記縦ビードに接合されるそれぞれの前記後端を形成したそれぞれの面が前記車両の車幅方向へ向いているアッパフランジ、ロアフランジを有し、
前記アッパフランジは、前記後端の下部を含むアッパ下部に前記ロアブラケットの板厚より高いアッパ段差部と、該アッパ段差部に連なり前記ロアフランジに接合しているアッパ下部接合部と、を備えていることを特徴とする請求項2記載のトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項4】
前記縦ビードは、長手方向の中途に前記エンジンルームへ向け突出した凸部を備え、
前記ロアフランジは、中央に前記凸部の高さより低く形成したロア段差部と、該ロア段差部に連なり前記凸部に接合しているロア下部接合部と、を備えていることを特徴とする請求項3記載のトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項5】
前記アッパ段差部と前記ロア段差部は、車両前後方向へ延ばして形成されていることを特徴とする請求項4記載のトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【請求項6】
前記ロアフランジは、車両後方へ向かうに連れて車両上下方向の高さが高くなっていることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1項記載のトルクロッド取付け用ブラケット構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−71648(P2012−71648A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216897(P2010−216897)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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