説明

トンネル炉

【課題】 ワークの搬送手段がコンパクトであり、炉の外部と内部の間の開口や、炉内の複数の環境槽の間の開口をきわめて小さくすることができるので、炉全体がコンパクトでしかも運転効率の良好なトンネル炉を提供すること。
【解決手段】 条件の異なる環境を形成するために仕切られた複数の環境槽41,42,43,44,45と、該環境槽の送り方向に沿って、加工対象であるワーク2を送る搬送手段20とを有しており、前記搬送手段が前記ワークの搬送を案内する手段21と、前記ワークの搬送方向に沿って前記案内手段と並列的に延びており、前記搬送方向に沿って往復移動される長尺体25と、該長尺体の外周に所定間隔ごとに設けられており、前記ワークもしくはワーク保持治具を係止するための係止手段26と、前記長尺体を駆動する手段1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品などのワークを加熱加工するためのトンネル炉の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、リフロー半田付工程などにおいては、トンネル状の温度環境槽をもつトンネル炉(リフロー炉)が広く使用されている。
例えば、プリント基板のリフロー炉においては、クリーンルーム内に配置され、基板上などの部品をマウントした状態で、該リフロー炉の温度環境槽に導入される際には、炉内の搬送手段であるコンベアベルト上に置かれ、ベルト搬送されて炉内に導かれるようになっている(例えば、特許文献1、第3図など参照)。
【0003】
このようなベルト炉もしくはトンネル炉は、特定の工程が終了したワークを順次温度環境槽に送り込み、連続的に加工を行うことができるので、例えば、所定の数のワークについて、前工程が完了するまで待ち、オーブン形式の炉で、バッジ処理する場合等と比較すると、どのワークに対しても、前工程の終了から時間を置かないで加熱工程を実行できるという利点を有している。
すなわち、予め熱硬化性接着剤などを塗布して、後の工程で加熱炉を用いて硬化させる作業などにおいては、接着剤の塗布後の経過時間により接着剤の特性が変化してしまうので、接着剤を塗布したばかりのワークと、塗布後、ある程度時間の経過したワークとでは、同一条件で加熱しても、接合もしくは実装状態が変化してしまう場合があるからである。
【0004】
【特許文献1】特開平3−19390号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1をはじめとする従来のトンネル炉では、ワークの搬送をコンベアベルトにより行っていた。
このようなコンベアベルトは、無端のベルトをループ状に循環させる構成であり、比較的大きな装置である。しかも、ワークを搬送させるために、温度環境槽の入り口からワークをベルト上に置こうとすると、どうしても大きな装置の一部が温度環境槽から露出する。
【0006】
すなわち、循環する無端ベルトの往復工程を全て炉内に置くと、炉全体は必要以上に大きくなってしまう。
このため、ワークの搬送を終えた復路のベルトが炉内から外に出るように構成すると、ベルトが炉外(温度環境槽の外)で大気にさらされる際に酸化して、ススが発生し、クリーンルーム内における発塵源となってしまい、精密な部品の加工において、品質劣化の原因となる。
【0007】
さらに、無端ベルトによる往復構造を含むコンベアベルトは、全体の構造が大きく、温度環境槽への入り口や出口付近で、ベルトの炉内への導入箇所や出口における開口部、すなわち温度環境槽の開口部が比較的大きくなる。特に、ベルト上にはワークが直接置かれず、所定の収容治具にワークを入れて、該収容治具をベルト上に載置することが常態であるから、その分上記開口部は大きくなる。
このため、温度環境槽内に不活性ガスなどを所定濃度で導入して加工を行う場合などでは、該不活性ガスが大きな開口部から逃げるので、常時これを上回る導入量のガスを必要とする。
また、当然のことながら、ワークの加工時には、ワークを順次送るベルトは常時駆動されており、種々の点で効率が悪い。
【0008】
また、ワークに対する加工の種類によっては、複数の温度領域の加熱を必要とするものがある。
この場合、例えば、ひとつの環境槽内にひとつの加熱手段であるヒータなどを設けて、複数の温度帯にわたる温度プロファイルを実現する手法もある。
しかしながら、このような手法では、ひとつの空間のひとつのヒータの温度制御で、ワークに作用する温度を複数段階に変化させるものである。このため、該空間内のワークについて処理が終了したら、次のワークを該空間内に入れてまた、最初から複数の温度プロファイルを行うことになる。
したがって、きわめて効率に劣るものになってしまう。
【0009】
この点、特許文献1では、仕切りにより区分した空間を互いに異なる温度帯として、ベルト上を運ばれる基板が、この異なる温度帯の空間を順次移動して、異なる温度による加熱を受けるようにしたものである。
ところで、この場合にも、複数の温度環境槽を移動するための搬送手段には上述したようにコンベアベルトを用いており、全体の構造が大きく、仕切られた温度環境槽への入り口や出口付近で、ベルトの炉内への導入箇所や出口における開口部がやはり大きくなってしまう。
【0010】
このため、該特許文献1では、隣接する環境槽の間における気流の介入を阻止するために、温度環境槽どうしの間に、吸気口や吸引排気口を設けて大がかりな設備とした分、全体が大型化し、機構も複雑なものとなっている。
【0011】
この発明は上述のような課題を解決するためになされたもので、ワークの搬送手段がコンパクトであり、炉の外部と内部の間の開口や、炉内の複数の環境槽の間の開口をきわめて小さくすることができるので、炉全体がコンパクトでしかも運転効率の良好なトンネル炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、第1の発明にあっては、条件の異なる環境を形成するために仕切られた複数の環境槽と、該環境槽の送り方向に沿って、加工対象であるワークを送る搬送手段と を有しており、前記搬送手段が前記ワークの搬送を案内する手段と、前記ワークの搬送方向に沿って前記案内手段と並列的に延びており、前記搬送方向に沿って往復移動される長尺体と、該長尺体の外周に所定間隔ごとに設けられており、前記ワークもしくはワーク保持治具を係止するための係止手段と、前記長尺体を駆動する手段とを備えるトンネル炉。
【0013】
第1の発明の構成によれば、このトンネル炉では、ワークの搬送手段が従来にない構成となっている。
すなわち、ワークもしくはワークを保持した治具としての例えばトレーは、搬送手段の一部としての案内手段である例えばレール上に置かれる。
前記長尺体は前記レールと並列に配置されており、該長尺体から突出する係止手段が前記ワークを例えば、当接し、あるいは引っかけ等して、これを押すことでワークはレール上を搬送方向に送られる。
したがって、本発明における搬送手段は従来のような往復工程を常時循環する無端ベルトを有するものではなく、レールなどの案内手段と長尺体だけであるから、ワークの温度環境槽への取り込み、および取り出し口の面積を極力小さくすることができる。また、搬送手段を小型にできる分、炉全体も小型とすることができる。さらに、長尺体はワークを送る時だけ駆動されるので、効率的であり、複数の環境槽の境界に設けられる開口も小さくできるので、温度環境が外部の影響で破壊されにくく、したがって複数の環境槽のそれぞれについて環境維持も効率良く容易に行える。
【0014】
ここで、前記「長尺体」は前記係止手段が設けられるものであるから、ワークの搬送方向に沿って長尺とされたものであれば、なんでもよく、丸棒のシャフトに限らず、角棒、長尺の平板、長尺の梯子状のもの等でもよい。また、長尺体は複数配置されてもよい。
前記「係止手段」は長尺体と並列的に位置する案内手段に保持されたワークもしくはワーク保持治具(以下、「ワーク」という)に対して、長尺体から延びて、当てることができるものであればなんでもよい。つまり、長尺体に設けた係止手段が前記ワークに当てられて、これを係止し、長尺体の動きに従って案内手段上を移動させることができるものであれば、該係止手段の形態は問わない。つまり、該ワークに単に当接して、ワークを移動させる場合や、該係止手段が該ワークを確実に保持もしくは把持し、これを移動させる形態をとる場合などを含んでいる。
【0015】
なお、複数の環境槽は、温度環境が異なるものを用いると、順番に異なる温度条件で加工する場合に用いる加熱炉になるし、例えば、各環境槽で、異なる金属を蒸着もしくはスパッタリングするように、ターゲットを異ならせた環境槽を連続させるようにすれば、複数の金属層を順次成膜するための成膜装置としてのトンネル炉となる。
かくして、本発明によれば、ワークの搬送手段がコンパクトであり、炉の外部と内部の間の開口や、炉内の複数の環境槽の間の開口をきわめて小さくすることができるので、炉全体がコンパクトでしかも運転効率の良好なトンネル炉を提供することができる。
【0016】
第2の発明は第1の発明の構成によれば、前記複数の環境槽が、異なる温度環境を形成するための複数の温度環境槽であることを特徴とする。
第2の発明の構成によれば、順番に異なる温度条件で加工する場合に用いる加熱炉を構成することができる。
【0017】
第3の発明は、第1または2のいずれかの発明の構成において、前記長尺体がその長さ方向に沿った中心軸回りに駆動されるとともに、前記複数の環境槽のうちの少なくともいくつかの環境槽を貫通するように延びており、かつ該長尺体に設けられる前記係止手段は、それぞれの環境槽に対応して、該長尺体の外周の異なる角度位置にそれぞれ形成されていて、各環境槽に対応した各係止手段が、環境槽内に同時に収容されるワークもしくはワーク保持具に対応した数だけ設けられていることを特徴とする。
第3の発明の構成によれば、前記長尺体を中心軸周りに回動させることにより、前記係止手段が該長尺体の外面において、出没する構成としなくても、ワークに対して係脱させることができる。また、前記長尺体が、前記複数の環境槽のうちの少なくともいくつかの環境槽を貫通するように延びていることで、搬送手段を複数の環境槽において共通に形成することができる。さらに、前記長尺体を前記のように回動させる回動の角度位置により、前記係止手段の一部が、それぞれ対応する環境槽内で、上方に起立して、ワークを係止できるようにされる。
【0018】
第4の発明は、第1または2のいずれかの発明の構成において、前記長尺体が、前記複数の環境槽に対応した数だけ並列に配置されて、別々に駆動される構成としたことを特徴とする。
第4の発明の構成によれば、前記長尺体が、前記複数の環境槽に対応した数だけ並列に配置されて、別々に駆動される構成であると、搬送手段は長尺体の数だけ増加してしまうが、個別に駆動すればよいので、駆動が容易となる。
【0019】
第5の発明は、第1ないし4のいずれかの発明の構成において、前記温度環境槽内では、前記長尺体と平行に一対の平行なレールが配置されており、ワークもしくはワークを載せたワーク治具が前記レールにより搬送方向を案内されるとともに、前記平行なレールの直下に前記長尺体が配置されていて、前記長尺体の前記係止手段が前記一対のレールの間に出入りする構成としたことを特徴とする。
第5の発明の構成によれば、リニアガイドである一対の平行なレールを用いれば、これらレール間で前記係止手段を動かすことができるので案内手段と搬送駆動手段である長尺体とを好適に組み合わせることができる。
【0020】
第6の発明は、第2ないし5のいずれかの発明の構成において、前記複数の温度環境槽内には、それぞれ個別に温調器が配置され、かつ該温調器による温度を伝達するための不活性ガスが導入される構成としたことを特徴とする。
第6の発明の構成によれば、各温度環境槽毎に、個別の温調器が駆動されて、異なる温度条件とされるが、この場合、同時に不活性ガスを導入するので、温調器からの熱を不活性ガスに保持させ、該不活性ガスを攪拌すれば、温度環境槽内を容易に均一温度環境とすることができワークに対して対流による加熱が行われる。
【0021】
第7の発明は、第6の発明の構成において、前記各温度環境槽内に前記不活性ガスを導入するに当たり、主として該温度環境槽内を攪拌しないで槽内の空気を排出して、大量の不活性ガスを導入する第1の段階と、前記空気の排出後であって、槽内を攪拌しながら該温度環境槽から漏れ出る不活性ガスを補う量の不活性ガスを導入する第2の段階とを含むように不活性ガスを導入する構成としたことを特徴とする。
第7の発明の構成によれば、第1の段階で空気を排出して大量の不活性ガスを導入するので速やかに不活性ガス濃度が加工に必要とされる条件に適合する状態に達することができ、第2の段階では、従来と同様の程度の不活性ガスを導入すれば当該条件を維持できる。このため、その消費量は極端に大きくならない。
【0022】
第8の発明は、第2ないし7の発明のいずれかの構成において、前記各温度環境槽のそれぞれの槽内において、前記レールおよび長尺体の配置された位置の下に、加熱手段および/または送風攪拌手段が配置されていることを特徴とする。
第8の発明の構成によれば、炉内の高さ寸法を小さく抑えてコンパクトな炉とすることができ、その分消費エネルギも小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面を参照して説明する。
図1は、本発明のトンネル炉の一実施形態を示す概略断面図である。
この実施形態では、トンネル炉40は、ワークである圧電デバイスの圧電素子をパッケージなどに熱硬化性接着剤で接合する場合における熱硬化工程に使用するものであるが、これに限らず、各種実装工程や、ワークに対する成膜工程等に広く使用することができる。
【0024】
図1において、トンネル炉40は、この実施形態では、複数の環境槽を備えており、例えば、ワークの搬送方向Hに沿って、順次第1槽41、第2槽42、第3槽43、第4槽44および第5槽45を有した工程の方向に長いトンネル状である。
このトンネル炉40の全体は、内側に断熱構造を備えた金属槽で形成されており、金属槽は例えばステンレススチールの板体(SUS板)により形成され、断熱槽としてはウレタン材を用いることができる。
しかも、この実施形態では、複数の環境槽は、それぞれ独自の温度環境を保持できる温度環境槽とされており、上記第1槽41ないし第5槽45の各槽において、隣接する槽間には、断熱板としてのウレタンを挟んだSUS板により仕切り壁46を設けることで、空間的および熱的に区画している。
【0025】
また、温度環境槽である第1槽41ないし第5槽45のそれぞれに、シーズヒータなどの加熱を行うための温調器16,16,16,16,16が取付けられている。温調器16は加熱のみならず、冷却を行う冷却器もしくは加熱・冷却器であってもよい。
温調器16としては例えばペルチェ素子などを利用した加熱プレートなどを用いれば、加熱および冷却の両方を行うことができるだけでなく、半導体を利用したコンパクトな温調手段とすることができる利点がある。
これにより、第1槽41ないし第5槽45について、大きな温度差で異なる温度環境を作ることができ、ワークの温度特性検査などにも利用できる。
なお、この実施形態では、温度特性検査ではなく、後述するように、異なる温度プロファイルを実行して、圧電振動片のマウント工程を行うものである。
【0026】
さらに、温度環境槽である第1槽41ないし第5槽45のそれぞれに、不活性ガス、例えば窒素ガスの導入手段(送り手段)22が配置されており、ほぼ気密に形成したチャンバー状の第1槽41ないし第5槽45内に、それぞれ矢印に示すように、窒素ガスを導入できるようになっている。
また、第1槽41ないし第5槽45のそれぞれの内部には、気体センサ49,49,49,49,49が配置されている。これらの気体センサは例えば半導体を利用して、特定の気体の濃度を検出する公知の気体センサが利用されることで、各槽内の例えば酸素濃度などを検出でき、当該検出信号を送出することができるようになっている。
同様にして、第1槽41ないし第5槽45のそれぞれの内部には、温度センサ23,23,23,23,23が配置されている。これらの温度センサは例えば半導体を利用したサーミスタで各槽内の温度を検出して検出信号を送出することができるようになっている。
【0027】
さらに、第1槽41ないし第5槽45のそれぞれに、送風機29,29,29,29,29などの気体の攪拌手段を備えることにより、各槽内では、ワーク2に対して、温調器16から直接放射される輻射熱ではなく、加熱された窒素ガスにより、槽内全体が均一な温度に調整された状態における熱が伝達されるようになっている。
また、第1槽41の前段には、該温度環境槽への導入部12が、第5槽45の後段にはトンネル炉からの取り出し部13がそれぞれ設けられている。
【0028】
導入部12には光学式センサ、例えばインタラプタ型フォトセンサなどにより導入部センサ47が設けられており、後述するようにワーク2が導入部12に到達して、トンネル炉40内に取り込まれることを検出することができる。
また、取り出し部13には、取り出し部センサ48が配置されており、加工が終了したワーク2がトンネル炉40から取り出されることを検出することができる。
そして、これらの導入部センサ47と取り出し部センサ48の間において、全ての温度環境槽である第1槽41ないし第5槽45を貫通するようにワーク2の搬送手段20が設けられている。
【0029】
ここで、トンネル炉40は5つの槽を有しているが、これより少ない数の槽を含む場合もあるし、あるいは5つよりも多い数の槽を含んでいてもよい。さらに、第1槽41ないし第5槽45は、それぞれ同じ大きさである必要はなく、むしろ実行する加工条件、例えば、ここの温度プロファイルの相違に基づいて送り距離を変えて大きさを異ならせることができる。また、それに対応して、ひとつの槽内に複数の温調器や送風手段などを配置することもある。
【0030】
図2は導入部12付近の概略平面図であり、図3は図2のA−A線断面図である。
これらの図において、導入部12には、導入部搬送手段の一部であるベルトコンベア17が配置されており、ワーク2が載せられて矢印Hで示す搬送方向に送られるようになっている。
この実施形態では、ワーク2は、上述したように、圧電デバイスのパッケージに熱硬化性接着剤を塗布して、圧電素子をマウントしたものであり、トンネル炉40にて熱硬化工程を行うものである。したがって、ワーク2は、このような圧電デバイスのセラミックパッケージそのものであり、もしくは、該パッケージを一つないし所定数収容した治具トレーなどである。
【0031】
ベルトコンベア17は、図2に示すように、平行な一対のコンベアベルト17a,17bを有しており、これらの間の空間はあいている。図2および図3に示すように、ベルトコンベア17の直下には導入部搬送手段の他の一部である長尺体であるシャフト3が配置されている。シャフト3は後述する温度環境槽内の長尺体としてのシャフトと同じ構成であり、その構造は後で詳しく説明する。
シャフト3はシリンダ1により、搬送方向Hに沿って送られるが、その向きは往路の向きH1と復路の向きH2の両方に往復駆動される。
ベルトコンベア17の途中を基端として、該ベルトコンベア17の上には、案内手段18が延びている。該案内手段18は、図2から理解されるように、平行なレール18a,18aを有するリニアガイドであり、案内レールであって、図3に模式的に示されているように、温度環境槽内に延びている。なお、ベルトコンベア17は、トンネル炉40の一部ではなく、トンネル炉40に加熱加工対象となるワーク2を送るための実装機などの一部である。
【0032】
かくして、例えばパッケージ上に(導電性の)熱硬化性接着剤、すなわち、所定の樹脂バインダー中に導電粒子を含有した接着剤が塗布されて、その上に圧電素子が塗布されたワーク2は、ベルトコンベア17の図2における左端付近に供給される。ベルトコンベア17が駆動されると、ワーク2は図2および図3の位置に送られ、次いでシャフト3が駆動される。すなわち、シャフト3が駆動されて、図3に示されているように、ワーク2は温度環境槽の第1槽41内に送られるようになっている。
【0033】
図4は温度環境槽の第1槽41内を示す概略平面図であり、図5は図4のB−B線概略断面図、図6は図4のC−C線切断端面図である。
これらの図を参照しながら、温度環境槽内の構造を説明する。
ワークの搬送手段20は、図2で示した上記導入部12における各レール18a,18aと一体になった一対のレール21a,21aでなるリニアガイド21を有している。
このリニアガイドは、図6に示すように各レール21a,21aが上向きの段部21b,21bを備えており、パッケージもしくはトレー、あるいは治具などであるワーク2を載置可能である。
【0034】
また、ワークの搬送手段20は、長尺体としてのシャフト25を少なくとも一つ含んでおり、この実施形態では、丸棒でなる1本のシャフト25が、上記リニアガイド21の直下において、該リニアガイド21と平行に配置されている。すなわち、この実施形態においてはシャフト25は、耐熱性のある材料、例えば金属材料で形成された丈夫で変形しにくい棒材である。
また、図5に示すように、シャフト25の駆動手段としてのシリンダ28が図3の符号1で説明したのと同様に配置されている。
ここで、シャフト25は、この実施形態では、図1に示すように、温度環境槽の第1槽41から第5槽45に至るまで貫通する1本のものとして形成されている。すなわち、図1で説明した各槽間の仕切り壁46には、搬送手段が貫通するだけの僅かな開口を設けて上記シャフト25を貫通させている。
【0035】
図4ないし図6を参照して、該シャフト25の構成例を説明する。
シャフト25には、等間隔P1を置いて、搬送方向Hに沿って一列に並ぶように係止手段26,26,26・・・が形成されている。係止手段26は、この実施形態では、側面視三角形のひれ状もしくは直角三角形状であり、上記間隔P1はワーク2の寸法に対応している。係止手段26は、少なくともリニアガイドであるレール21aの上向き段部21bの表面から突出する高さを有し、図6に示すようにワーク2に当接することができるようになっている。
【0036】
すなわち、係止手段26は、ワーク2に当接し、あるいは、これを係止し、もしくは保持、あるいは把持して、このワーク2をシャフトの搬送方向Hに沿った動きとともに、レール21a,21a上を送るためのものである。このため、シャフト25に設ける係止手段26の数は、例えばひとつの槽としての温度環境槽内で同じ条件で同時に加熱加工するワークの数に対応させて設けることが好ましい。例えば、該ワークの数をnとすると、係止手段26の数はnプラス1等とすることができる。係止手段26どうしの間のピッチP1は、ワーク2のサイズに相当する。
【0037】
ここで、搬送手段20の一部であり、ワーク2を送る構造の中心となるシャフト25に係止手段を設ける構造には、大別して2種類の考え方がある。
ひとつの手法としては、図4ないし6に説明されているように、シャフト25の外周の特定の位置にだけ係止手段を複数個もうけた構成であり、1本のシャフトが第1槽41ないし第5槽45のうちのひとつの槽だけにおけるワーク2の送りに使用されるようにする手法である。この場合には、槽の数だけ、つまり、本実施形態では5本のシャフトを並列に配置して、ひとつひとつのシャフトが、対応する槽におけるワーク送りだけを担当する場合であり、当該ひとつのシャフトにおいては送り駆動がとても単純になる利点がある。
【0038】
これに対して、唯ひとつのシャフトに、複数の各槽、すなわち、本実施形態では第1槽41ないし第5槽45の各ワーク送りを行う係止手段を設けて、ひとつのシャフトだけで全ての槽におけるワーク送りを行う手法が考えられる。この場合には、当該ひとつのシャフトの駆動はその分複雑になるが、搬送手段がきわめてコンパクトに構成できる利点がある。
この手法によれば、当該ひとつのシャフトでは、後述するように、係止手段26が形成された箇所とは異なるシャフト25の外周位置、すなわち、シャフト25の仮想の中心軸Oに関して、所定の角度を有するような異なる外周位置に第2の係止手段を設けることができる。同様にして、中心軸Oに関して、さらに所定の角度を加えた、異なる外周位置を選んで第3の係止手段を設ける。同様にして、この実施形態では、第4の係止手段、第5の係止手段を設けて、各係止手段を図1で説明した第1槽41から第5槽45の各温度環境槽に対応させるものである。
しかしながら、これらの各係止手段による動作を全て説明すると、煩雑にすぎるので、ひとつの温度環境槽における動作を中心に説明する。
【0039】
すなわち、シャフト25に接続された上記シリンダ28は、シャフト25を搬送方向Hに沿って、上記間隔P1に相当する距離だけ往復動(方向Hに沿って、向きH1,H2にそれぞれ移動)させることができる。
さらに、図6の矢印Aに示すように、該シャフト25をその仮想の中心軸の周囲に回動させることができる。これにより、シャフト25の係止手段26は、起立してワーク2の端部に当接可能とされたり、倒れた状態になってレール21a,21aの下に入り、ワーク2とは触れない状態とされたりできるようになされている。
【0040】
図7は、シャフト25の動きとワーク2の送りを連続的に示す概略図である。ただし、上述したように、理解の便宜のため、本実施形態の搬送手段20の動きのなかで、第1槽41における動きを中心に説明する。
図7(a)において、例えばL1は図1の第1槽41の工程であり、この第1槽41は、例えば4個のワーク(例えばワーク2−10から2−13など)を同時に処理できる大きさを有している。
また、図において、搬送方向H2に沿って各ワーク2は加熱時間が経過したものとなる。すなわち、ワーク2−10は、第1槽に入って最も加熱時間が少ないものであり、逆にワーク2−13は加熱された時間が最も長く、第1槽から一番最初に出るものである。
【0041】
図7(b)の右側の図に示すように、シャフト25が矢印A1の方向へ回動されると、左側の図に示すように、各係止手段26−1ないし26−5は倒れた状態となり、これらはどのワーク2にも当接しない。
次いで、図7(c)の左側の図に示すように、シャフト25が矢印H2の方向へ図4の間隔P1と同じだけ移動される。
続いて、図7(d)の右側の図に示すように、シャフト25が矢印A2の方向へ回動される(戻される)と、左側の図に示すように、各係止手段26−1ないし26−5は起立した状態となり、これらは、ひとつひとつの係止手段がワーク2−9ないし2−13の各ワークの間に入り込む。
【0042】
次いで、図7(e)の左側の図に示すように、シャフト25が矢印H1の方向へ図4の間隔P1と同じだけ移動される(戻される)。これにより、各係止手段26−1ないし26−5は各ワーク2−9ないし2−13の後端に当たり、図6で説明した案内手段であるリニアガイドのレール21a上を矢印H1方向へ、距離P1だけ送ることになる。
以上の動作を繰り返すことにより、ワーク2は、第1槽41内にて、所定時間の間加熱処理がなされる。しかも、第1槽では、複数のワーク2が順次連続的に送られながら、加熱処理がなされる。
【0043】
図8(a)は、図1に示した第1槽41に対応した係止手段26と、第2槽42に対応した係止手段31とを形成した構成を概略的に示す図であるが、紙面の都合もあり、さらに存在する第3の槽43ないし第5の槽45に対応したシャフト長さと、各槽に対応した係止手段の図示は省略して示すものである。
このシャフト25は、図8(b)に示すように、同じ向きに形成した複数、例えば5つの係止手段26(第1の係止手段)と、さらにこれら係止手段26が形成された箇所とは異なるシャフト25の外周位置、すなわち、シャフト25の仮想の中心軸Oに関して、閧Pの角度を有するような、異なる外周位置に第2の係止手段31を形成した例を示している。
【0044】
この場合、係止手段26は第1の槽41におけるワーク2の送りに対応しており、係止手段31は、後述するように第1の槽41とは異なる温度域の環境を作った第2槽42におけるワーク2の送りに対応させることができる。また、係止手段26どうしのピッチと、係止手段31どうしのピッチは変更することができる。また、さらに異なる外周位置に第3の槽43に対応する第3の係止手段32を形成することもでき、同様にして、図示を省略するが、第4の槽44に対応する第4の係止手段と、第5の槽45に対応する第5の係止手段を形成する。
【0045】
シャフト25の図8のような構成とすると、図7で説明したように第1槽41におけるワーク2の送りを完了した後においては、シャフト25を回動させて、第2の係止手段31を用いて、第2槽におけるワーク2の送りを図7とほぼ同様の手法で行う。以下、第3槽ないし第5槽まで順次同様の手法でワーク2を各槽毎に精度良く送ることができる。
【0046】
図9は長尺体としてのシャフトの変形例を示している。
このシャフト25−1においてシャフト25と同じ符号を付した箇所は共通する構成であるから、重複する説明は省略する。
図において、距離DL1は、第1槽41における長さに相当し、距離DL2は、第2槽42における長さに相当している。そして、これらの間の距離ALは、第1槽41と第2槽42の間の仕切り壁46(図1参照)の距離に相当する。
この変形例では、第1の係止手段26と、第2の係止手段31との間に、これらの外周位置(図8(b)参照)とは異なる位置に、受け渡し用係止手段33を設けている。
すなわち、第1槽41における加工もしくは処理が終わったワーク2を、この仕切り壁の厚み分送る際に、他のワークを同時に動かしてしまうことを避けるため、受け渡し専用の係止手段を設けたものである。
【0047】
次に、図10を参照してトンネル炉40の電気的構成の例を説明する。
トンネル炉40には、演算手段(CPU)を含むコンピュータ機能を有する制御手段51が設けられている。
この制御手段51には、画面表示などの表示手段(図示せず)を参照しながら、操作を行うためのスイッチやキーを有する操作手段52と、タイマーなどの計時手段53が接続されている。さらに制御手段51には、シャフト1を駆動するための指令を送るシャフト駆動部55、不活性ガスの送り手段22(図1参照)、各温調器16としてのヒータの制御手段としてのヒータ駆動部56が接続されている。
さらに、制御手段51には、導入部センサ47、排出部センサ48、気体センサ49、温度センサ23などが接続されている。
【0048】
図11は以上の構成に基づいて、トンネル炉40が操作される手順の例を示すフローチャートである。
図において、トンネル炉40の操作手段52を操作して、該トンネル炉40を起動する(ST11)。
起動操作を受けて、制御手段51は初期動作として、シャフト25の原点復帰などを行う(ST12)。次いで、制御手段51は、画面などの表示手段を通じて、操作者に加熱パターンなどの選択をさせる。
【0049】
ここでは、例えば、トンネル炉40内において、ワーク2を搬送しながら、第1槽41ないし第5槽45の各槽を何度に加熱するか、および/または各槽において、ワーク2をどのくらいのスピードで搬送するか、さらには不活性ガス、例えばNガスの導入の有無などを、手動で設定したり、あるいは記憶手段54に予め格納された運転パターンなどから選択させたりすることができるようにされている(ST13)。
【0050】
次に、制御手段51は、ST13で設定された条件に従って、ヒータ駆動部56を介して、第1槽41ないし第5槽45の各槽において、設定温度への昇温を行う。また、ガス送り手段22に指示を出して、必要な窒素導入を行い、温度センサ23や気体センサ49の検出値を見ながらフィードバック制御を行い、ワーク2を槽内に送り込んでよい状態とする(ST14)。
【0051】
続いて、上記各条件が設定されたら、設定条件にしたがって、主としてシャフト駆動部55などを所定のプログラムにしたがって駆動し、ワーク2を自動で搬送して運転を行うことができる状態となる。これにより、操作者が操作手段52を介して起動スイッチを入れる(ST15)。
図2や図3で説明したように、導入部12に図示しない実装機などからワーク2が供給されたこと(ST16)が導入部センサ47により検出されて、該検出信号が制御手段51に入力される(ST17)。これにより、制御手段51はシャフト駆動部55に指令を出して、ワーク2のトンネル炉40における第1槽41から第5槽45に至る搬送を行う(ST18)。この工程では、例えば、図12について後述する処理が実行される。
【0052】
次いで、最初にトンネル炉40内に供給されたワーク2から、該ワーク2が排出部13から外に出たことを、順次、排出部センサ48が検出し、検出信号を制御手段51に送る(ST19)。制御手段51は排出部センサ48の検出信号をカウントして、処理単位である1ロットが終了するかどうかを判断し(ST20)、終了しないうちは、ST16にもどって搬送の指示を続け、処理が終わったら処理を終了(ST21)し、各部を停止する。
【0053】
図12は、この実施形態において、圧電振動片のマウント工程を実行する上で、トンネル炉40にて行う温度プロファイルの一例を示し、横軸が経過時間で、縦軸は温度を表している。
図示されているように、このトンネル炉40では、連続する時間t1(ステップ1)、t2(ステップ2)、t3(ステップ3)、t4(ステップ4)、t5(ステップ5)について、順次異なる温度プロファイルを実現できる。
すなわち、図11のST14において、第1槽41ないし第5槽45の各槽内温度において、図12に示す各ステップ1ないし5のそれぞれの温度となるように準備されてから、ワーク2が各槽内で所定時間処理されるように搬送されるものである。
その処理時間と温度は、この実施形態では、例えば、第1槽41にてステップ1が摂氏150度で40分、第2槽42にてステップ2が摂氏250度で45分、第3槽43にてステップ3が摂氏100度で50分、第4槽44にてステップ4が摂氏200度で30分、第5槽45にてステップ5が摂氏300度で35分である。
【0054】
以上説明したように、本実施形態のトンネル炉40では、従来のように、炉の温度環境槽内部においてワークを搬送するために、無端ベルトを架装したベルトコンベアを有しないでリニアガイド21とシャフト25とこれを駆動するシリンダだけでワークの搬送手段を構成することができる。
この場合、シャフトは温度環境槽内で搬送方向Hに沿ってピッチP1分だけ往復されればよいから、駆動される動き幅がきわめて少なくて済む。しかも、ワーク2は、常時搬送されている必要がなく、所定ピッチ毎に間欠的に送られればよい。
【0055】
これらの理由から搬送手段が従来のベルトコンベアと比較してコンパクトであり、さらに温度環境槽への入り口(導入部)、および出口(取り出し部)において、ベルトコンベアの端部が露出される必要がないから、このような開口は極力小さくできる。
また、シャフト25は、従来の搬送手段で用いられているベルトコンベアの無端ベルトのように、外部環境と温度環境槽内部を往復することがないから、その表面が酸化され、発塵のおそれもなく、クリーンルーム内を汚染する恐れもない。
かくして、本実施形態によれば、ひとつの炉において、複数の温度帯にわたる温度プロファイルを連続的に実現することができ、しかもワークの搬送手段がコンパクトであり、温度環境槽の外部に対する開口をきわめて小さくすることができることから、炉全体がコンパクトでしかも運転効率の良好なトンネル炉40を提供することができる。
【0056】
また、本実施形態では、ひとつの炉を複数槽に分割して、各槽内の温度を予め設定するようにしたことから、具体的には以下のような利点がある。
ひとつの炉に単一の槽しかなくて、その中の温度を変更して処理を行う場合には、温度切り替えの都度、制御手段などに設定温度や処理時間が入力される必要があり、煩雑であるだけでなく、図13のような現象を前提としなければならない。
【0057】
図13は、ワークを炉(槽)内に導入してから、処理に必要な温度まで、昇温(図13(a))、もしくは冷却(降温)(図13(b))する場合を示す説明図である。
昇温の際には、目標温度に達する際にオーバーシュートOSが生じた後で、一定時間TH1だけ温度の不安定域がある。降温の際にも、目標温度に達する際にアンダーシュートUSが生じた後で、一定時間TH2だけ温度の不安定域がある。
したがって、このような誤差を計算にいれた複雑な調整をした上で、ワークに対する処理を行うため、精度を要する処理を可能にするには、きわめて煩雑で困難な調整を必要とするが、本実施形態では、このような複雑な調整が全く不要である。
【0058】
さらに、図14に示すように、ひとつの炉に単一の槽しかなくて、その中の温度を変更する場合に、炉内にワークを搬入した状態で、周囲温度を昇温させていくと、符号Aのような温度上昇となる。
これに対して、本実施形態では、より高温に予め温度設定されている槽内にワークが移された場合には、符号Bに示すように、ワークの温度は直ちに上昇する特徴がある。このため、本実施形態のように塗布した接着剤を硬化させるような工程では、ワークが直ちに必要とされる温度域に達するので、より有効な硬化温度条件を作ることができる。
【0059】
図15ないし図17は、本実施形態において、図10の制御手段51がトンネル炉40の不活性ガス導入を行う上での制御手法とその利点を説明する図である。
図15は、第1槽41において(「第2槽42ないし第5槽45においても同じ」、以下同じ)、図1の窒素ガス導入手段22が窒素を槽内に導入する場合の一例を示している。
すなわち、図15(a)に示すように、第1槽41内には当初、窒素ではなく酸素を含む大気中の空気がある。槽内の送風機である攪拌手段29を駆動しながら、すなわち、槽内の気体を攪拌しながら、Q1の量の窒素を導入すると、この導入にともなって、槽内にある空気と導入された窒素が混じり合った気体が排気量q1だけ排出される。
これにより、図15(b)に示すように槽内の気体はT1の時間をかけて、必要な窒素濃度(100ppm)に達することになる。
【0060】
これに対して、本実施形態では、上記制御手段51は、図16(a)に示すように、第1槽41内に、Q1よりも多量のQ2の窒素を、排気部(排気孔)から離れた箇所に送り込みながら、送風手段である攪拌手段29の動きは止めるようにする(第1段階)。そうすると、q1の量で排出される気体は、ほとんどが槽内に当初存在した空気だけになる。
次いで、図16(b)に示すように、窒素濃度が所定の値(100ppm)となったら、攪拌手段29の駆動を開始して、排出される気体量q1より僅かに多いだけの量Q1でなる窒素を槽内に導入すると、槽内の必要窒素濃度は維持される。
この場合、図15(b)と図17を比較して理解されるように、短時間で必要な窒素濃度を得ることができる本実施形態では、図11で説明したST14に要する時間をきわめて短くすることができる。
【0061】
図18は、図1で説明したトンネル炉40における温調器としてのヒータ16および該ヒータ16の熱を送出し、攪拌する送風機29の配置のようすを示している。
この場合、ヒータ16も送風機29も搬送手段20の上に配置され、ワークに対して上から熱を加える構成である。このため、炉のサイズは高さ方向に大きくなる傾向がある。
これに対して、図19は、搬送手段20の下方にヒータ16−1と送風機29−1を配置した例を示している。
すなわち、これらヒータ16−1および送風機29−1は相当程度小型化が可能であるから、これらを搬送手段20の下方に配置することは技術的に十分可能であり、これにより、符号GLで示すように、少なくとも炉の高さ方向の寸法をその分小さくして、より一層の小型化が可能となる。
【0062】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
本発明のトンネル炉で加工されるワークは、上述したように圧電デバイスに限らない。例えば、本発明のトンネル炉は、実施形態で記載した装置の他、半導体のリフロー工程におけるリフロー装置や、金属膜の成膜装置、熱処理による振動子などの部品収容パッケージのガス出し装置、熱硬化型塗料の乾燥装置などとして広く利用することができる。
トンネル炉の温度環境槽内には、1本のシャフトに限らず、複数のシャフトを平行に配置して、それぞれ駆動してもよい。
シャフトの駆動手段は該シャフトを回動動作させないで、該シャフトの係止手段がシャフトから露出したり、シャフト内に収容されたりして、係止手段の露出状態・半露出状態と、露出しない状態とをとるように構成してもよい。
上述の実施形態の各条件や各構成は適宜その一部を省略し、あるいは言及しない他の構成と組み合わせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態に係るトンネル炉の概略構成図。
【図2】図1のトンネル炉の導入部付近の概略平面図。
【図3】図2のA−A線概略断面図。
【図4】図1のトンネル炉の内部の概略平面図。
【図5】図4のB−B線概略断面図。
【図6】図4のC−C線切断端面図。
【図7】図1のトンネル炉のシャフトの動作を説明する図。
【図8】図1のトンネル炉のシャフトの別の構成を示す図。
【図9】図1のトンネル炉のシャフトの別の構成を示す図。
【図10】図1のトンネル炉の電気的構成の一例を示すブロック図。
【図11】図1のトンネル炉の動作例の一例を示すフローチャート。
【図12】図1のトンネル炉で実現される加熱処理の一例を示すグラフ。
【図13】加熱炉における温度不安定領域の例を示す説明図。
【図14】図1のトンネル炉で実現される加熱の利点を説明する図。
【図15】炉内に不活性ガスを送る場合の一例を示す説明図。
【図16】炉内に不活性ガスを送る場合の一例を示す説明図。
【図17】本実施形態による方法で炉内に不活性ガスを送る場合の利点を示す説明図。
【図18】本実施形態のトンネル炉における温調器などの設定を簡単に示す図。
【図19】本実施形態のトンネル炉における温調器などの設定を簡単に示す図。
【符号の説明】
【0064】
40・・・トンネル炉、41・・・第1槽、42・・・第2槽、43・・・第3槽、44・・・第4槽、45・・・第5槽、16・・・温調器、20・・・搬送手段、21・・・(案内手段)(リニアガイド)レール、25・・・(長尺体)シャフト、26,31・・・係止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
条件の異なる環境を形成するために仕切られた複数の環境槽と、
該環境槽の送り方向に沿って、加工対象であるワークを送る搬送手段と
を有しており、
前記搬送手段が
前記ワークの搬送を案内する手段と、
前記ワークの搬送方向に沿って前記案内手段と並列的に延びており、前記搬送方向に沿って往復移動される長尺体と、
該長尺体の外周に所定間隔ごとに設けられており、前記ワークもしくはワーク保持治具を係止するための係止手段と、
前記長尺体を駆動する手段と
を備える
ことを特徴とするトンネル炉。
【請求項2】
前記複数の環境槽が、異なる温度環境を形成するための複数の温度環境槽であることを特徴とする請求項1に記載のトンネル炉。
【請求項3】
前記長尺体がその長さ方向に沿った中心軸回りに駆動されるとともに、前記複数の環境槽のうちの少なくともいくつかの環境槽を貫通するように延びており、かつ該長尺体に設けられる前記係止手段が、それぞれの環境槽に対応して、該長尺体の外周の異なる角度位置にそれぞれ形成されていて、各環境槽に対応した各係止手段が、環境槽内に同時に収容されるワークもしくはワーク保持具に対応した数だけ設けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のトンネル炉。
【請求項4】
前記長尺体が、前記複数の環境槽に対応した数だけ並列に配置されて、別々に駆動される構成としたことを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のトンネル炉。
【請求項5】
前記温度環境槽内では、前記長尺体と平行に一対の平行なレールが配置されており、ワークもしくはワークを載せたワーク治具が前記レールにより搬送方向を案内されるとともに、前記平行なレールの直下に前記長尺体が配置されていて、前記長尺体の前記係止手段が前記一対のレールの間に出入りする構成としたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のトンネル炉。
【請求項6】
前記複数の温度環境槽内には、それぞれ個別に温調器が配置され、かつ該温調器による温度を伝達するための不活性ガスが導入される構成としたことを特徴とする請求項2ないし5のいずれかに記載のトンネル炉。
【請求項7】
前記各温度環境槽内に前記不活性ガスを導入するに当たり、主として該温度環境槽内を攪拌しないで槽内の空気を排出して、大量の不活性ガスを導入する第1の段階と、前記空気の排出後であって、槽内を攪拌しながら該温度環境槽から漏れ出る不活性ガスを補う量の不活性ガスを導入する第2の段階とを含むように不活性ガスを導入する構成としたことを特徴とする請求項6に記載のトンネル炉。
【請求項8】
前記各温度環境槽のそれぞれの槽内において、前記レールおよび長尺体の配置された位置の下に、加熱手段および/または送風攪拌手段が配置されていることを特徴とする請求項2ないし7のいずれかに記載のトンネル炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−85688(P2007−85688A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−277669(P2005−277669)
【出願日】平成17年9月26日(2005.9.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】