説明

ドア装置

【課題】ヒンジによる取付作業性を向上できるドア装置を提供する。
【解決手段】サイドドア17のドアパネル本体20の一側は、このドアパネル本体20の一側部に取付けたヒンジ31により、機体側のフレームに取付ける。ヒンジ31は、フレームに固定する側でフレーム方向に長尺に形成した単一の一方ヒンジプレート41と、この一方ヒンジプレート41の長尺方向一端部および他端部の一側部にて長尺方向に沿って同一直線上に回転中心軸を配置した複数の軸部材42と、これらの軸部材42により一方ヒンジプレート41に対し開閉自在に軸支した、ドアパネル本体20を取付ける複数の他方ヒンジプレート43とを具備したものである。一方ヒンジプレート41には、一端部、中央部および他端部に、締着用ボルト挿入用の長穴51,52,51を穿設し、これらの長穴51,52,51に挿入した締着用ボルト53,54,53により、機体側のフレームに固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒンジにより開閉自在のドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17などにより覆われている。サイドドア17は、ヒンジ18により開閉自在に取付けられ、ラッチ装置19により閉じ状態が保持される。
【0003】
この種のサイドドア17のヒンジ18は、ドアパネル本体に補強部材を介して取付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、作業機械のカバー体構造としては、外側板および内側板からなる2重構造のものがあり、その内側板にヒンジ部材が直接取付けられている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2005−188219号公報(第5−6頁、図2−4)
【特許文献2】特開平9−228412号公報(第2−3頁、図2−8)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のヒンジは、ドアパネル本体の上下部2箇所にそれぞれ個別に取付けているため、ヒンジ相互間の調整およびドア取付状態の微調整が容易でなく、さらに取付ボルト個数の削減が不可能であり、ドアを取付ける上での作業性を損なっている。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、ヒンジによる取付作業性を向上できるドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載された発明は、ドアパネル本体と、このドアパネル本体の一側をフレームに取付けたヒンジとを備え、このヒンジは、フレームに固定される側でフレーム方向に長尺に形成された単一の一方ヒンジプレートと、この一方ヒンジプレートの長尺方向一端部および他端部の一側部にて長尺方向に沿って同一直線上に回転中心軸が配置された複数の軸部材と、これらの軸部材により一方ヒンジプレートに対し開閉自在に軸支された、ドアパネル本体を取付ける複数の他方ヒンジプレートとを具備したドア装置である。
【0008】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のドア装置におけるドアパネル本体が、外側板と、この外側板の内側面に固定された内側板と、これらの外側板と内側板との間に充填された発泡材とを具備したものである。
【0009】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のドア装置における一方ヒンジプレートの少なくとも中央部を、締着用ボルトにより固定可能としたものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載された発明によれば、長尺の一方ヒンジプレートに複数の他方ヒンジプレートを、同一直線上に配置された複数の軸部材により開閉自在に軸支することで、2つのヒンジを一体化したので、2つのヒンジ相互間の調整が必要ないとともに、ドア取付状態の微調整を容易にでき、また取付ボルト個数の削減も可能であり、ヒンジによる取付作業性を向上できる。さらに、長尺の一方ヒンジプレートが、複数のヒンジを一体化するプレートの役割を果すので、複数のヒンジを一体化するために複数のヒンジ間にプレートを溶接するなどの必要もなく、そのような溶接製品と比べて溶接工程を省略できるとともに、剛性の向上も図れる。
【0011】
請求項2に記載された発明によれば、外側板と内側板との間に発泡材を充填して、ドアパネル本体の軽量化と振動吸収性能の向上とを図ることで、ヒンジに作用する負担を軽減でき、ヒンジの耐久性を向上できる。
【0012】
請求項3に記載された発明によれば、一方ヒンジプレートの少なくとも中央部を締着用ボルトにより固定可能であるため、この締着用ボルトを緩めることにより、この締着用ボルトを支点にして一方ヒンジプレートの長尺方向一端部および他端部にそれぞれ配置された他方のヒンジプレートを可動調整して、一体のドアパネル本体の取付位置を微調整しながら、このドアパネル本体の取付作業を円滑に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を、図1乃至図9に示された一実施の形態、図10および図11に示された他の実施の形態を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図7は、作業機械としての油圧ショベル10を示し、下部走行体11に上部旋回体12が旋回可能に設けられ、この上部旋回体12上にキャブ13、作業装置14、エンジンなどの動力装置15が搭載されている。動力装置15は、上部カバー16およびサイドドア17などにより覆われている。
【0015】
図8は、サイドドア17のドアパネル本体20を示し、このドアパネル本体20は、外側板21と、この外側板21より薄い板厚の板金を凹凸状にプレス成形して外側板21の内側面に凹部を固定するとともに凸部と外側板21との間に空間22を形成する内側板23と、これらの外側板21と内側板23との間の空間22に充填された発泡材24とを具備している。
【0016】
外側板21の周縁部は、内側板23の周縁部を包みこむように折返して押しつぶすようにヘミング加工したへミング加工部25を備えている。内側板23は、凹状に成形されて外側板21に接着剤により接合された凹部27と、これらの凹部27に対し膨出成形された凸部29とを具備している。接着剤は、外側板21と内側板23とを接合するとともにシールするため、粘性と熱硬化性を有するペーストタイプ構造用接着剤が望ましい。
【0017】
図9に示されるように、サイドドア17のドアパネル本体20の一側は、このドアパネル本体20の一側部に取付けられたヒンジ31により、上部旋回体12上に設置された機体側のフレーム32に取付けられている。すなわち、このフレーム32の一側部材32aにヒンジ31により、ドアパネル本体20の一側部が水平方向開閉自在に取付けられている。このドアパネル本体20は、垂直面部20aに対し、上部がフレーム32側に折曲されて折曲面部20bが形成されている。
【0018】
このドアパネル本体20のヒンジ31とは反対側のラッチ取付穴部33には、ドアパネル本体20の垂直面部20aをフレーム32側に係脱可能なラッチ装置19のラッチ機構部34が設けられている。一方、ドアパネル本体20の開閉にともないドアパネル本体20が当接される方向に対向してフレーム32の他側部材32bに固定された取付板35よりラッチ装置19の係合体としてのストライカ36が突設され、このストライカ36に対しドアパネル本体20側に設けられたラッチ機構部34が係脱可能となっている。
【0019】
このラッチ機構部34の上側には、ドアパネル本体20の内側板23を凹状に成形した制振係合部37が設けられている。一方、機体側のフレーム32の他側部材32bには、ドアパネル本体20の開閉にともない制振係合部37と係脱自在の制振プランジャ38が、取付板39を介して取付けられている。
【0020】
図1乃至図4に示されるように、前記ヒンジ31は、機体側のフレーム32に固定される側でフレーム方向に長尺に形成された単一の一方ヒンジプレート41と、この一方ヒンジプレート41の長尺方向一端部および他端部の一側部にて長尺方向に沿って同一直線上に回転中心軸が配置された複数の軸部材42と、これらの軸部材42により一方ヒンジプレート41に対し開閉自在に軸支された、ドアパネル本体20を取付ける複数の他方ヒンジプレート43とを具備したものである。
【0021】
一方ヒンジプレート41は、平板状のフレーム当接板部44に対して軸受板部45が折曲形成され、この軸受板部45の中央切欠部46を介して一端部および他端部に一体成形された複数の軸受環部47と、複数の他方ヒンジプレート43にそれぞれ一体成形された複数の軸受環部48とが交互に嵌合されて、それらの軸受環部に軸部材42が挿入されている。
【0022】
一方ヒンジプレート41のフレーム当接板部44には、一端部、中央部および他端部に、締着用ボルト挿入用の長穴51,52,51が穿設され、図1に示されるように、これらの長穴51,52,51に挿入された締着用ボルト53,54,53により、フレーム当接板部44が機体側のフレーム32に固定可能であるとともに弛緩可能となっている。
【0023】
また、図3乃至図6に示されるように、複数の他方ヒンジプレート43は、パネル当接板部55に対して折曲板部56を介して軸受板部57が形成され、パネル当接板部55に、ドアパネル本体20を固定するためのボルト挿入穴58が穿設され、軸受板部57に前記軸受環部48が一体成形されている。
【0024】
次に、このドアパネル本体20へのヒンジ31の取付構造を説明する。
【0025】
図5に示されるように、外側板21と内側板23の一側部間には内部補強板61が接着され、この内部補強板61の裏面に溶接付けされたナット62と、このナット62に螺合するボルト63とにより、図6に示されるように内側板23のヒンジ取付面部64上に位置するヒンジ31の他方ヒンジプレート43が取付けられている。この他方ヒンジプレート43とボルト63の頭部と間にはワッシャ65が介在されている。
【0026】
そして、このワッシャ65を通して、ヒンジ31のボルト挿入穴58と、内側板23のヒンジ取付面部64に穿設されたボルト挿入孔66とに挿入したボルト63を、内部補強板61の裏面に一体化されたナット62に螺合して、ヒンジ31を取付ける。
【0027】
次に、このようにしてサイドドア17に取付けられたヒンジ31を用いて、サイドドア17を機体側のフレーム32に取付けるときは、図1に示されるように、一方ヒンジプレート41の長穴51,52,51に挿入された締着用ボルト53,54,53を、フレーム32の一側部材32aに設けられたナット部材に螺合して締着するが、その際に、締着用ボルト53,54,53を緩めた状態で、これらの締着用ボルト53,54,53が長穴51,52,51の内部で移動し得る範囲でドアパネル本体20を動かし、ドアパネル本体20の取付位置を微調整する。特に、中央の締着用ボルト54を中心にドアパネル本体20を回動するようにして動かすと、ドアパネル本体20の取付角度や取付位置の微調整を容易に行うことができる。
【0028】
次に、この図1乃至図9に示された実施の形態の作用効果を説明する。
【0029】
図9に示されるように機体側のフレーム32の一側部材32aにヒンジ31により開閉自在に取付けられたサイドドア17のドアパネル本体20が、フレーム32の他側部材32bに向かって閉じられるときは、他側部材32bから突出されたストライカ36に向かってドアパネル本体20のラッチ機構部34が移動し、ストライカ36のフック金具により拘束係止される。
【0030】
同時に、ドアパネル本体20の垂直面部20aに設けられた凹状の制振係合部37に対し、フレーム32側に設けられた制振プランジャ38が嵌入して、ドアパネル本体20の上下方向の振動が規制される。
【0031】
ドアパネル本体20は、外側板21とこの外側板21より薄い内側板23とで形成された中空の閉断面構造により軽量化を図ることができるとともに、内側板23とこれより厚い外側板21とで形成された十分な高さをもった中空の閉断面構造により、外側からの衝撃に対して十分な強度を確保できる強固なドアパネル本体20を安価に提供でき、さらに、外側板21と内側板23との間に充填された発泡材24により、ドアパネル本体20自体から発生する音を効果的に減衰させることができ、効果的に低騒音化を図ることができる。
【0032】
また、長尺の一方ヒンジプレート41に複数の他方ヒンジプレート43を、同一直線上に配置された複数の軸部材42により開閉自在に軸支することで、2つのヒンジを一体化したので、2つのヒンジ相互間の調整が必要ないとともに、ドア取付状態の微調整を容易にでき、また、一方ヒンジプレート41は3つの締着用ボルト53,54,53によってフレーム32に取付けることが可能となり、取付ボルト個数の削減も可能であり、このヒンジ31による取付作業性を向上できる。
【0033】
さらに、長尺の一方ヒンジプレート41が、複数のヒンジを一体化するプレートの役割を果すので、複数のヒンジを一体化するために複数のヒンジ間にプレートを溶接するなどの必要もなく、そのような溶接製品と比べて溶接工程を省略できるとともに、剛性の向上も図れる。
【0034】
さらに、外側板21と内側板23との間に発泡材24を充填して、ドアパネル本体20の軽量化と振動吸収性能の向上とを図ることで、ヒンジ31に作用する負担を軽減でき、ヒンジ31の耐久性を向上できる。
【0035】
さらに、一方ヒンジプレート41の少なくとも中央部を締着用ボルト54により固定可能であるため、この締着用ボルト54を緩めることにより、この締着用ボルト54を支点にして一方ヒンジプレート41の長尺方向一端部および他端部にそれぞれ配置された他方のヒンジプレート43を可動調整して、一体のドアパネル本体20の取付位置を微調整しながら、このドアパネル本体20の取付作業を円滑に行なうことができる。
【0036】
次に、図10および図11に基づいて、ヒンジ31の他の実施の形態を説明する。
【0037】
これらの図10および図11に示されたヒンジ31は、機体側のフレーム32に固定される側でフレーム方向に長尺に形成された単一の一方ヒンジプレート41と、この一方ヒンジプレート41の長尺方向一端部および他端部の一側部にて長尺方向に沿って同一直線上に回転中心軸が配置された複数の軸部材42と、これらの軸部材42により一方ヒンジプレート41に対し開閉自在に軸支された、ドアパネル本体20を取付ける複数の他方ヒンジプレート43とを具備した点で、図2乃至図6に示された前記実施形態と基本構成は同じであるが、他方ヒンジプレート43が平板状に形成されている点、軸部材42が他方ヒンジプレート43の裏面側へ膨出する点で、前記実施形態と異なる。ヒンジ基本構造および機能は同じであるから、前記実施形態と同一部分には同一符号を付して、それらの説明は省略する。
【0038】
本発明に係るドア装置は、油圧ショベルなどの作業機械のサイドドア、リアドアなどに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係るドア装置の一実施の形態を示す斜視図である。
【図2】同上ドア装置のヒンジの平面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】同上ドア装置のヒンジ取付部の断面図である。
【図6】同上ドア装置のヒンジ取付部の斜視図である。
【図7】同上ドア装置を備えた作業機械の平面図である。
【図8】同上ドア装置のドアパネル本体の断面図である。
【図9】同上ドア装置のフレームへの取付状態を示す斜視図である。
【図10】同上ヒンジの他の実施の形態を示す裏側からの斜視図である。
【図11】同上ヒンジの他の実施の形態を示す表側からの斜視図である。
【図12】従来のドア装置を備えた作業機械の斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
20 ドアパネル本体
21 外側板
23 内側板
24 発泡材
31 ヒンジ
32 フレーム
41 一方ヒンジプレート
42 軸部材
43 他方ヒンジプレート
54 締着用ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアパネル本体と、
このドアパネル本体の一側をフレームに取付けたヒンジとを備え、
このヒンジは、
フレームに固定される側でフレーム方向に長尺に形成された単一の一方ヒンジプレートと、
この一方ヒンジプレートの長尺方向一端部および他端部の一側部にて長尺方向に沿って同一直線上に回転中心軸が配置された複数の軸部材と、
これらの軸部材により一方ヒンジプレートに対し開閉自在に軸支された、ドアパネル本体を取付ける複数の他方ヒンジプレートと
を具備したことを特徴とするドア装置。
【請求項2】
ドアパネル本体は、
外側板と、
この外側板の内側面に固定された内側板と、
これらの外側板と内側板との間に充填された発泡材と
を具備したことを特徴とする請求項1記載のドア装置。
【請求項3】
一方ヒンジプレートは、少なくとも中央部が締着用ボルトにより固定可能である
ことを特徴とする請求項1または2記載のドア装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−138452(P2009−138452A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316861(P2007−316861)
【出願日】平成19年12月7日(2007.12.7)
【出願人】(000190297)キャタピラージャパン株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】