説明

ナノインプリント用モールドの製造方法およびレジストパターンの形成方法

【課題】電子線照射によるレジストパターンのドライエッチング耐性を向上させる手段において、酸素が存在する雰囲気中でも、レジストパターンの形状劣化を防止し、微細な転写パターンを形成することを可能とするナノインプリント用モールドの製造方法およびレジストパターンの形成方法を提供する
【解決手段】レジストパターン2を形成した後に、前記レジストパターンの上に、オゾンアッシングからレジストを保護する保護膜3を形成し、次に、大気中のように、酸素が存在する雰囲気中において、前記保護膜を介して前記レジストパターンに電子線4を照射し、その後、前記保護膜を除去してドライエッチング耐性が向上した前記レジストパターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用モールドの製造方法およびレジストパターンの形成方法に関し、より詳しくは、ナノインプリント用モールドの転写パターン形成に用いるレジストのドライエッチング耐性を向上させ、パターン形状劣化を防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、特に半導体デバイスについては、微細化の一層の進展により高速動作、低消費電力動作が求められ、また、システムLSIという名で呼ばれる機能の統合化などの高い技術が求められている。このような中、半導体デバイスのパターンを作製する要となるリソグラフィー技術は、パターンの微細化が進むにつれ、露光装置などが極めて高価になってきており、また、それに用いるマスク価格も高価になっている。
【0003】
これに対して、1995年Princeton大学のChouらによって提案されたナノインプリント法(インプリント法とも呼ばれる)は、装置価格や使用材料などが安価でありながら、10nm程度の高解像度を有する微細パターン形成技術として注目されている(特許文献1)。
【0004】
上述のナノインプリント法は、ナノメートルサイズの微細な凹凸構造からなる転写パターンを形成したモールド(テンプレート、スタンパ、金型とも呼ばれる)を、半導体ウエハなどの被転写基板表面に形成された樹脂に接触させ、前記樹脂を力学的に変形させて前記凹凸パターンを転写し、このパターン転写された樹脂をマスクに用いて被転写基板を加工する技術である。
【0005】
一度モールドを作製すれば、ナノ構造が簡単に繰り返して成型できるため高いスループットが得られて経済的であるとともに、近年、半導体デバイスに限らず、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0006】
このようなインプリント法には、熱可塑性樹脂を用いて熱により凹凸パターンを転写する熱インプリント法や、光硬化性樹脂を用いて紫外線により凹凸パターンを転写する光インプリント法などが知られている(特許文献2)。
【0007】
光インプリント法は、室温で、低い印加圧力でパターン転写でき、熱インプリント法のような加熱・冷却サイクルが不要であって、モールドや樹脂の熱による寸法変化が生じないために、解像性、アライメント精度、生産性などの点で優れていると言われている。
【0008】
ここで、従来の半導体用フォトマスクにおいては、フォトマスク上のパターンは、露光装置(ステッパー)の光学系で1/4に縮小されて被転写基板(主にSiウェハ)にパターン転写されるため、フォトマスクに形成される転写パターンのサイズは、被転写基板に形成するパターンの4倍の大きさであったが、上述のインプリント法においては、モールドに形成される転写パターンのサイズは、被転写基板に形成するパターンと等倍の大きさになる。
【0009】
すなわち、ナノインプリント用モールドに、上述のような凹凸の転写パターンを形成するためには、従来の半導体用フォトマスクよりも微細なパターン形成技術が必要となり、それゆえ、パターン形成に用いるレジストも薄膜化される傾向にある。
【0010】
一般に、ラインアンドスペースのレジストパターンを形成する場合、レジストの膜厚は、そのサイズの2倍程度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特表2004−504718号公報
【特許文献2】特開2002−93748号公報
【特許文献3】特開平2−252233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、レジストは微細加工においてドライエッチングのマスクに用いられるものであるから、レジストを薄膜化するためには、よりドライエッチング耐性を向上させる必要がある。
【0013】
また、レジストパターンが微細になるほど、サイドエッチングの影響も問題になる。
【0014】
図3は、従来のナノインプリント用モールドの製造方法に係るレジストパターンとドライエッチングの関係を説明する図であり、(a)はドライエッチング前のレジストパターンを示す断面模式図であり、(b)はドライエッチング後のレジストパターンを示す断面模式図である。
【0015】
図3に示すように、モールド基板101の上に、例えば、膜厚60nmでレジスト102を塗布し、ハーフピッチが24nmのラインアンドスペースのレジストパターン102Aを形成し、次いで、従前の条件でドライエッチングを行うと、パターンを形成していない箇所のレジスト102は残留するものの、レジストパターン102Aは、ドライエッチング工程が完了する前にサイドエッチングにより消失してしまい、モールド基板101に所望の転写パターンを形成することはできない。
【0016】
この課題に対して、例えば、レジストパターン形成後、レジストパターン全面に電子線を照射することで前記レジストを改質し、ドライエッチング耐性を向上させる方法が提案されている(特許文献3)。
【0017】
しかしながら、大気中のように、酸素が存在する雰囲気中で、レジストパターン全面に電子線を照射すると、レジストパターンの形状が劣化するという問題が判明した。
【0018】
図4は、従来のナノインプリント用モールドの製造方法に係るレジストパターンと電子線照射の関係を説明する図であり、(a)は電子線照射前のレジストパターンを示す断面模式図であり、(b)は電子線照射後のレジストパターンを示す断面模式図である。
【0019】
図4に示すように、モールド基板101の上に、例えば、膜厚60nmでレジスト102を塗布し、ハーフピッチが200nmのラインアンドスペースのレジストパターン102Aを形成し、次いで、モールド基板101の上のレジストパターン102Aを含むレジスト102全面に対して、大気中で電子線照射を行うと、図4(a)に示すように、当初、断面形状が略矩形状であったレジストパターンが、図4(b)に示すように、角部が消失して、平らな略半円状の断面形状になってしまう。
【0020】
この現象は、電子線照射により大気中の酸素がプラズマ化してオゾンが生じ、このオゾンが、レジストをアッシングするためと考える。それゆえ、例えば、酸素が存在しない真空中で、上述の電子線照射を行うという方法を用いれば、上述のようなレジストパターン形状劣化を防止することが可能であるとも考えられる。
【0021】
しかしながら、真空中で電子線照射を行うという方法は、大気中で行う方法に比べて生産性が落ち、また専用の真空装置が必要になる等、コストの面からも好ましくない。
【0022】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、大気中のように、酸素が存在する雰囲気中で電子線照射を行いつつも、レジストパターンの形状劣化を防止して、レジストパターンのドライエッチング耐性を向上させ、前記レジストパターンをエッチングマスクに用いることにより、微細な転写パターンを形成することを可能とするナノインプリント用モールドの製造方法およびレジストパターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明者は、種々研究した結果、レジストパターンを形成した後に、前記レジストパターンの上に、オゾンアッシングからレジストを保護する保護膜を形成し、次に、大気中のように、酸素が存在する雰囲気中において、前記保護膜を介して前記レジストパターンに電子線を照射し、その後、前記保護膜を除去してドライエッチング耐性が向上した前記レジストパターンを形成することにより、上記課題を解決できることを見出して本発明を完成したものである。
【0024】
すなわち、本発明の請求項1に係る発明は、モールド基板の上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをエッチングマスクに用いて所望の転写パターンを形成するナノインプリントモールドの製造方法であって、前記レジストパターンを形成した後に、前記レジストパターンの上に保護膜を形成し、酸素が存在する雰囲気中において、前記保護膜を介して前記レジストパターンに電子線を照射し、その後、前記保護膜を除去し、露出した前記レジストパターンをエッチングマスクに用いて所望の転写パターンを形成することを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法である。
【0025】
また、本発明の請求項2に係る発明は、前記保護膜が、前記レジストパターンよりも水に対する溶解性が高いことを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用モールドの製造方法である。
【0026】
また、本発明の請求項3に係る発明は、前記保護膜が、ポリアニリンスルホン酸を含むことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法である。
【0027】
また、本発明の請求項4に係る発明は、前記レジストパターンのレジストが、α−クロロアクリル酸メチルとα−メチルスチレンとの共重合体からなる主鎖切断型のレジストであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法である。
【0028】
また、本発明の請求項5に係る発明は、基板の上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンの上に保護膜を形成し、酸素が存在する雰囲気中において、前記保護膜を介して前記レジストパターンに電子線を照射し、その後、前記保護膜を除去してドライエッチング耐性の向上したレジストパターンを形成することを特徴とするレジストパターンの形成方法である。
【0029】
また、本発明の請求項6に係る発明は、前記保護膜が、前記レジストパターンよりも水に対する溶解性が高いことを特徴とする請求項5に記載のレジストパターンの形成方法である。
【0030】
また、本発明の請求項7に係る発明は、前記保護膜が、ポリアニリンスルホン酸を含むことを特徴とする請求項5〜6のいずれかに記載のレジストパターンの形成方法である。
【0031】
また、本発明の請求項8に係る発明は、前記レジストパターンのレジストが、α−クロロアクリル酸メチルとα−メチルスチレンとの共重合体からなる主鎖切断型のレジストであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のレジストパターンの形成方法である。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、レジストパターン上に形成した保護膜により、オゾンアッシングからレジストパターンを保護してレジストパターンの形状劣化を防止できるため、真空中で電子線照射する方法に比べて、生産性や経済性の面から優位な、大気中で電子線照射する方法を用いることができ、ドライエッチング耐性が向上した略矩形状の断面を有する微細なレジストパターンを、生産性良く、低コストで形成することができる。
【0033】
そして、前記レジストパターンをエッチングマスクに用いることにより、従来、製造困難であった微細な凹凸の転写パターンを有するナノインプリント用モールドを製造することができる
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法の例を示す模式的工程図である。
【図2】図1に続く本発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法の例を示す模式的工程図である。
【図3】従来のナノインプリント用モールドの製造方法に係るレジストパターンとドライエッチングの関係を説明する図であり、(a)はドライエッチング前のレジストパターンを示す断面模式図であり、(b)はドライエッチング後のレジストパターンを示す断面模式図である。
【図4】従来のナノインプリント用モールドの製造方法に係るレジストパターンと電子線照射の関係を説明する図であり、(a)は電子線照射前のレジストパターンを示す断面模式図であり、(b)は電子線照射後のレジストパターンを示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法およびレジストパターンの形成方法について説明する。
【0036】
本発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法およびレジストパターンの形成方法は、レジストパターンのドライエッチング耐性を向上させる工程、すなわち、保護膜形成工程、電子線一括照射工程、保護膜除去工程を有することに特徴があり、その他の工程、例えば、モールド基板へのレジスト形成工程、ドライエッチング耐性を向上させる前のレジストパターン形成工程、ドライエッチング工程、レジスト除去工程については、従来の方法と同様な方法を用いることができる。
【0037】
図1および図2は、本発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法の例を示す模式的工程図である。
【0038】
まず、図1(a)に示すように、モールド基板1を準備し、このモールド基板1の上にレジスト2を形成する。
【0039】
モールド基板1の材料は、ナノインプリント用のモールドに用いられるものであれば用いることができ、一般的には、石英やSiである。
【0040】
レジスト2は、電子線一括照射でドライエッチング耐性が向上するものであれば用いることができる。ただし、ナノインプリント用としては、微細なパターン形成を必要とすることから、高解像性のレジストであることが必要である。
【0041】
上述のような高解像性のレジストとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)や、α−クロロアクリル酸メチルとα−メチルスチレンとの共重合体などを主成分とする主鎖切断型のレジストや、ノボラック系樹脂などを主成分とする結合鎖切断型レジストなどが挙げられる。
【0042】
次に、図1(b)に示すように、レジストパターン2Aを形成する。レジストパターン2Aの形成には、例えば、レジスト2を電子線描画し、現像する方法を用いることができる。
【0043】
次に、図1(c)に示すように、レジストパターン2Aを被覆するように保護膜3を形成する。
【0044】
保護膜3は、続く電子線一括照射工程におけるオゾンアッシングからレジストパターン2Aを保護するものであり、レジストパターン2A上に被覆でき、オゾンアッシングで消失せずに残留し、レジストパターン2Aから剥離できるものであれば用いることができる。
【0045】
ここで、一般に、パターンサイズが10nm〜50nmレベルの高解像度レジストは、有機溶剤で現像され、中性の水に難溶性である場合が多いことから、保護膜3は水溶性であることが、剥離性の面から好ましい。
【0046】
なお、保護膜3のオゾンアッシング耐性は、電子線一括照射の際のオゾンアッシングからレジストパターン2Aを保護することができればよく、例えば、保護膜3が、オゾンアッシングによりその膜厚が薄くなる場合であっても、電子線一括照射が終了するまでの間、レジストパターン2A上に残留することにより、レジストパターン2Aを保護することができる膜厚を初期に有していれば足りる。
【0047】
保護膜3を構成する材料としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、セルロースアセテートヘキサヒドロフタレート、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロースなどのセルロース系重合体、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N−メチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、アクリル酸などを単量体とするアクリル酸系重合体、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどのビニル系重合体などからなる水溶性材料を挙げることができる。また、水溶性のポジ型レジストも用いることが可能である。
【0048】
これらの中でもビニル系重合体やアクリル酸系重合体、特にポリビニルピロリドンやポリアクリル酸はレジスト膜との接触角を低くする作用に優れるため好ましく使用できる。これらの水溶性膜形成成分は単独で用いてもよく、また2種以上を組合せて用いてもよい。
【0049】
その他にも、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアゴム、トラガント、ペクチン、デンプン、デキストリン、ゼラチン、カゼイン、コラーゲンなどの天然高分子や、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、可溶性デンプン、カルボキシメチルデンプン、メチルデンプン、アルギン酸塩などの半合成高分子や、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニルポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、酸化エチレンなどの合成高分子を用いることもできる。
【0050】
また、ポリアニリンスルホン酸などからなる導電性高分子を微粒子として含む分散液を塗布し、水などの溶液を乾燥させることで導電性高分子の塗膜を形成する方法で保護膜3を形成してもよい。
【0051】
また、Al(アルミニウム)、Cr(クロム)、Nb(ニオブ)、Ta(タンタル)などの金属を含む薄膜や、これらの炭化物、窒化物、ホウ化物、ケイ化物、酸化物などからなる薄膜も用いることができる。
【0052】
次に、図1(d)に示すように、大気圧中で、保護膜3の上から電子線を一括照射する。
【0053】
この電子線一括照射は、レジストを改質してドライエッチング耐性を向上させるために行うものであり、加速電圧や照射量は、各レジストや保護膜の種類、その後のエッチングに用いられるガス種や条件等によって、適宜最適な条件を選択されるものである。
【0054】
例えば、市販の電子線照射装置を用いて、加速電圧30kV〜300kV、照射量300Mrad〜3000Mradの電子線照射を行うことができる。
【0055】
なお、この電子線一括照射の際には、照射エネルギーによってモールド基板1やレジストパターン5Aの温度が上昇し、この温度上昇によりレジストパターン5Aの形状が変形する恐れを排除すべく、モールド基板1を冷却しながら電子線照射することが好ましい。
【0056】
上述の電子線一括照射後、保護膜3を剥離し、図2(e)に示すように、ドライエッチング耐性が向上したレジストパターン5Aを得る。
【0057】
上述のように、水に難溶性のレジストと、水溶性の保護膜との組み合わせであれば、この剥離作業は容易になるため、好ましい。
【0058】
次いで、図2(f)に示すように、レジストパターン5Aをエッチングマスクに用いて、モールド基板1をドライエッチング、またはウェットエッチング加工し、その後、レジストパターン5Aを除去して、図2(g)に示すように、微細な凹凸構造の転写パターン6を有するモールド10を得る。
【0059】
ここで、ドライエッチング加工条件や、レジストパターン除去の方法は、従来の方法を用いることができる。例えば、レジストパターン除去の方法は、酸素プラズマによるアッシング方法を用いることができる。
【0060】
なお、上述の例では、レジストパターン5Aをエッチングマスクに用いて、直接、モールド基板1をエッチング加工する例を示したが、本発明においては、モールド基板1の上にモールド基板1の材料に対してエッチング選択比の高い薄膜を形成し、その薄膜の上にレジストパターン5Aを形成してもよい。
【0061】
この場合は、例えば、まず、レジストパターン5Aをエッチングマスクに用いて前記薄膜をパターン状にエッチング加工し、次に、前記薄膜パターンをエッチングマスクに用いて、モールド基板1をエッチング加工する。
【0062】
前記薄膜としては、例えば、Cr(クロム)等の金属や金属窒化膜、もしくは金属酸化膜を1nm〜20nmの厚さでスパッタ成膜した薄膜などを用いることができる。
【0063】
以上、本発明に係るナノインプリント用モールドの製造方法およびレジストパターンの形成方法についてそれぞれの実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0064】
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。
(実施例1)
まず、本発明におけるレジストのドライエッチング耐性向上の効果について評価した。
【0065】
モールド基板として6インチ角の合成石英基板を用い、この基板の主面上に、Cr(クロム)をスパッタ成膜して膜厚3nmのCr薄膜を形成し、その上に、α−クロロアクリル酸メチルとα−メチルスチレンとの共重合体からなる電子線レジスト(日本ゼオン社製、ZEP520A)を膜厚60nmで塗布形成した。
【0066】
次に、上記レジストの上に、保護膜としてポリアニリンスルホン酸を含む水溶性導電膜(三菱レイヨン社製、aquaSAVE−57xs、登録商標)を膜厚200nmで塗布形成し、超低エネルギー電子線照射装置(アイ・エレクトロンビーム社製、EC250/15/180L)を用いて、基板を冷却させながら、加速電圧175kV、照射量800Mradで、上記保護膜の上から全面に電子線を照射した。
【0067】
その後、上記の保護膜を室温で流水リンスにより剥離し、このレジストを下記条件(CrN薄膜エッチング加工条件)でドライエッチング試験し、エッチング前後のレジスト膜厚を、光干渉式膜厚計(大日本スクリーン社製、ラムダエース)を用いて計測したところ、エッチング選択比は電子線一括照射を施さない場合より、20%向上していることが確認された。
(Cr薄膜エッチング加工条件)
Cl2ガス流量: 150sccm
2ガス流量 : 50sccm
RIEパワー : 500W
圧力 : 5Pa
(実施例2)
次に、本発明におけるレジストパターン形状の劣化防止の効果について評価した。
【0068】
モールド基板として6インチ角の合成石英基板を用い、この基板の主面上に、Cr(クロム)をスパッタ成膜して膜厚3nmのCr薄膜を形成し、その上に、α−クロロアクリル酸メチルとα−メチルスチレンとの共重合体からなる電子線レジスト(日本ゼオン社製、ZEP520A)を膜厚60nmで塗布形成した。
【0069】
次に、上記レジスト付き基板を、加速電圧100kV、露光量240μC/cm2で電子線描画し、有機溶剤系の専用現像液で現像してハーフピッチが200nmのラインアンドスペースのレジストパターンを形成した。
【0070】
次に、上記レジストパターンの上に、保護膜としてポリアニリンスルホン酸を含む水溶性導電膜(三菱レイヨン社製、aquaSAVE−57xs、登録商標)を膜厚200nmで塗布形成し、超低エネルギー電子線照射装置(アイ・エレクトロンビーム社製、EC250/15/180L)を用いて、基板を冷却させながら、加速電圧175kV、照射量800Mradで、上記保護膜の上から全面に電子線を照射した。
【0071】
その後、上記の保護膜を室温で流水リンスにより剥離し、レジストパターンを断面SEM観測したところ、角部が消失して平らな略半円状の断面形状になってしまうというような形状劣化は観測されず、断面形状が略矩形状のレジストパターンが得られていることを確認した。
(実施例3)
次に、上述の本発明に係る製造方法を用いてナノインプリント用モールドを製造した。
【0072】
モールド基板として6インチ角の合成石英基板を用い、この基板の主面上に、Cr(クロム)をスパッタ成膜して膜厚3nmのCr薄膜を形成し、その上に、α−クロロアクリル酸メチルとα−メチルスチレンとの共重合体からなる電子線レジスト(日本ゼオン社製、ZEP520A)を膜厚60nmで塗布形成した。
【0073】
次に、上記レジスト付き基板を、加速電圧100kV、露光量240μC/cm2で電子線描画し、有機溶剤系の専用現像液で現像してハーフピッチが24nmのラインアンドスペースのレジストパターンを形成した。
【0074】
次に、上記レジストパターンの上に、保護膜としてポリアニリンスルホン酸を含む水溶性導電膜(三菱レイヨン社製、aquaSAVE−57xs、登録商標)を膜厚200nmで塗布形成し、超低エネルギー電子線照射装置(アイ・エレクトロンビーム社製、EC250/15/180L)を用いて、基板を冷却させながら、加速電圧175kV、照射量800Mradで、上記保護膜の上から全面に電子線を照射した。
【0075】
その後、上記の保護膜を室温で流水リンスにより剥離したところ、形状劣化の無い、ハーフピッチが24nmのラインアンドスペースの本発明に係るレジストパターンを得ることができた。
【0076】
このレジストパターンをエッチングマスクに用いて、上記Cr薄膜を下記条件でドライエッチングしたところ、レジストパターンは消失せず、所望のCr薄膜パターンを得ることができた。
(Cr薄膜エッチング加工条件)
Cl2ガス流量: 150sccm
2ガス流量 : 50sccm
RIEパワー : 500W
圧力 : 5Pa
次に、上記のCr薄膜パターンをエッチングマスクに用いて、上記石英基板を下記条件でドライエッチングした。
(合成石英基板エッチング加工条件)
CF4ガス流量: 40sccm
RIEパワー : 400W
圧力 : 4Pa
その後、Cr薄膜を除去し、ハーフピッチが24nmのラインアンドスペースからなる転写パターンを有する本発明に係るナノインプリント用モールドを得た。
(比較例1)
実施例1と同様にして、モールド基板として6インチ角の合成石英基板を用い、この基板の主面上に、膜厚3nmのCr薄膜を形成し、その上に、電子線レジスト(日本ゼオン社製、ZEP520A)を膜厚60nmで塗布形成した。
【0077】
このレジストを実施例1と同じ条件(Cr薄膜エッチング加工条件)でドライエッチング試験し、エッチング前後のレジスト膜厚を計測したところ、エッチング選択比は、電子線照射によるレジスト改質がないため、上述の実施例1の結果に比べて、20%低いものであることが確認された。
(比較例2)
実施例2と同様にして、モールド基板として6インチ角の合成石英基板を用い、この基板の主面上に、膜厚3nmのCr薄膜を形成し、その上に、電子線レジスト(日本ゼオン社製、ZEP520A)を膜厚60nmで塗布形成した。
【0078】
次に、上記レジスト付き基板を、実施例2と同様にして、ハーフピッチが200nmのラインアンドスペースのレジストパターンを形成した。
【0079】
次に、超低エネルギー電子線照射装置(アイ・エレクトロンビーム社製、EC250/15/180L)を用いて、基板を冷却させながら、加速電圧175kV、照射量800Mradで、上記レジストパターンの上から全面に電子線を照射した。
【0080】
その後、上記レジストパターンを断面SEM観測したところ、電子線照射工程において実施例2のような保護膜が形成されていなかったため、当初、略矩形状であった断面形状は、角部が消失して平らな略半円状の断面形状になってしまい、レジストパターンの形状劣化が観測された。
(比較例3)
実施例3と同様にして、モールド基板として6インチ角の合成石英基板を用い、この基板の主面上に、膜厚3nmのCr薄膜を形成し、その上に、電子線レジスト(日本ゼオン社製、ZEP520A)を膜厚60nmで塗布形成した。
【0081】
次に、上記レジスト付き基板を、加速電圧100kV、露光量240μC/cm2で電子線描画し、有機溶剤系の専用現像液で現像してハーフピッチが24nmのラインアンドスペースのレジストパターンを形成した。
【0082】
このレジストパターンをエッチングマスクに用いて、上記CrN薄膜を実施例3と同じ下記条件(Cr薄膜エッチング加工条件)でドライエッチングしたところ、電子線照射によるレジスト改質がないため、レジストパターンは消失してしまい、所望のCr薄膜パターンを得ることはできなかった。
(Cr薄膜エッチング加工条件)
Cl2ガス流量: 150sccm
2ガス流量 : 50sccm
RIEパワー : 500W
圧力 : 5Pa
【符号の説明】
【0083】
1・・・モールド基板
2・・・レジスト
2A・・・レジストパターン
3・・・保護膜
4・・・電子線
5・・・レジスト
5A・・・レジストパターン
6・・・転写パターン
10・・・モールド
101・・・モールド基板
102・・・レジスト
102A・・・レジストパターン
103・・・レジスト
103A・・・レジストパターン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールド基板の上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンをエッチングマスクに用いて所望の転写パターンを形成するナノインプリントモールドの製造方法であって、
前記レジストパターンを形成した後に、前記レジストパターンの上に保護膜を形成し、酸素が存在する雰囲気中において、前記保護膜を介して前記レジストパターンに電子線を照射し、その後、前記保護膜を除去し、露出した前記レジストパターンをエッチングマスクに用いて所望の転写パターンを形成することを特徴とするナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項2】
前記保護膜が、前記レジストパターンよりも水に対する溶解性が高いことを特徴とする請求項1に記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項3】
前記保護膜が、ポリアニリンスルホン酸を含むことを特徴とする請求項1〜2のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項4】
前記レジストパターンのレジストが、α−クロロアクリル酸メチルとα−メチルスチレンとの共重合体からなる主鎖切断型のレジストであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のナノインプリント用モールドの製造方法。
【請求項5】
基板の上にレジストパターンを形成し、前記レジストパターンの上に保護膜を形成し、酸素が存在する雰囲気中において、前記保護膜を介して前記レジストパターンに電子線を照射し、その後、前記保護膜を除去してドライエッチング耐性の向上したレジストパターンを形成することを特徴とするレジストパターンの形成方法。
【請求項6】
前記保護膜が、前記レジストパターンよりも水に対する溶解性が高いことを特徴とする請求項5に記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項7】
前記保護膜が、ポリアニリンスルホン酸を含むことを特徴とする請求項5〜6のいずれかに記載のレジストパターンの形成方法。
【請求項8】
前記レジストパターンのレジストが、α−クロロアクリル酸メチルとα−メチルスチレンとの共重合体からなる主鎖切断型のレジストであることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のレジストパターンの形成方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−38809(P2012−38809A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−175486(P2010−175486)
【出願日】平成22年8月4日(2010.8.4)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】