説明

ナノ粒子太陽光制御コンセントレート

赤外線吸収性無機ナノ粒子とマトリック材料とを含む組成物およびその組成物を製造する方法が提供される。赤外線吸収性無機ナノ粒子は、好ましくはアンチモン錫酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)またはそれらの混合物を含む。ポリマーブレンド、高分子フィルムおよびシート、太陽光制御積層物、ならびにポリマーブレンド、高分子フィルムおよびシート、および太陽光制御積層物を製造する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線の透過を低減させる材料、特に、赤外線の透過を低減させる高分子材料と無機材料のブレンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス積層製品、すなわち「安全ガラス」は、殆ど一世紀にわたって社会に貢献してきた。安全ガラスは、高い耐衝撃性および耐貫通性によって、および破砕時のガラスの破片とガラス屑の最少の散乱によって特徴付けられる。積層物は、典型的には、高分子フィルムまたはシートであるとともに、2枚のガラスシートまたはパネルの間に置かれる中間層のサンドイッチからなる。ガラスシートの一方または両方は、例えばポリカーボネート材料のシートなどの光学的にクリアな硬質ポリマーシートで置き換えることが可能である。安全ガラスは、2層以上の中間層と合わせて接着されたガラスおよび/または高分子シートの3層以上の層を含むように更に進化されてきた。
【0003】
中間層は、典型的には、靱性を示すとともに割れまたは破壊の場合にガラスに接着する比較的厚いポリマーフィルムまたはシートにより製造される。長年にわたって、多様な高分子中間層がガラス積層製品のために開発されてきた。一般に、これらの高分子中間層が、特に、光学的透明度、耐衝撃性、耐貫通性、耐紫外線性、長期熱安定性、ガラスおよび/または他の硬質高分子シートへの粘着力、紫外線透過性、水分吸収性、耐水性、長期耐候性および4%未満の曇り度の許容できるレベルを有することが望ましい。
【0004】
広く用いられた中間層材料には、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、メタロセン触媒線状低密度ポリエチレン(mPE)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、エチレン酸コポリマーイオノマー、高分子脂肪酸ポリアミド;、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂、シリコーンエラストマー、エポキシ樹脂およびゴム弾性ポリカーボネートなどのポリマーを含む複合多成分組成物が挙げられる。酸コポリマーは透明積層物を製作するために使用がより広く行きわたるようになっている。
【0005】
自動車ウィンドシールドにおいて一般に用いられる周知された安全ガラスを超えて、ガラス積層物は列車、航空機、船舶および輸送のほぼあらゆる他の形式に窓として導入されている。安全ガラスの建築用途も、設計者がより多くのガラス表面を建物に導入するにつれて近年急速に広がってきている。ガラス積層製品は、ガラス積層製品の望ましい美的特徴に加えて、例えば、より新しい多くの建物において特色をなすガラス階段などの重量支持構造のために必要とされる強度を今日において達成している。
【0006】
より新しい安全ガラス製品も自然災害および人災に抵抗するために設計されている。例には、ハリケーンを被りやすい多くの地域で今日において指令されているハリケーン抵抗ガラスの最近の開発、窃盗に強いグレージングおよび耐突風ガラス積層製品が挙げられる。これらの製品は、例えば、強い力の風によって、または飛んできた瓦礫類の衝撃によって、または構造に押し入ろうとする犯罪的試みによって積層物の脆弱な部分が破壊された後でさえも貫入に耐える十分な強度を有する。
【0007】
社会は、上述した光学的能力および装飾能力ならびに安全特性以上に積層ガラス製品からのより多くの機能を要求し続けている。1つの望ましい目標は、例えば、太陽光制御グレージングの開発を通した自動車または建物などの構造内のエネルギー消費の減少である。近赤外スペクトルが人の目によって感知されないので、典型的なアプローチは、近赤外スペクトルからの太陽光エネルギーの一部が構造に入ることを防ぐガラス積層物を開発することであった。例えば、空調で消費されたエネルギーは、近赤外スペクトルの一部を遮断する太陽光制御窓を備えた構造において透過可視光スペクトルの減少もひずみもなしに減少され得る。
【0008】
ガラス積層物における太陽光制御は、ガラスまたは高分子中間層の改良を通して、更なる太陽光制御層の追加によって、またはこれらのアプローチの組み合わせによって達成し得る。太陽光制御積層ガラスの1つの形態は、典型的には真空蒸着またはスパッタリングプロセスを通して被着させたアルミニウム金属または銀金属などの導電性金属層を有するポリエステルフィルムなどの金属化基材フィルムを含む。金属化フィルムは、一般に、適切な太陽光制御特性を提供するために適切な波長の光を反射する。しかし、金属化フィルムは、高真空装置および精密気圧制御システムを必要とする真空蒸着またはスパッタリングプロセスによって一般に製造される。
【0009】
赤外線に加えて、金属化フィルムは特定の放射性波長も反射し、よってラジオ、テレビ、全地球測位システム(GPS)、自動料金徴収、キーレスエントリー、通信システム、自動車庫開放装置、自動投票計算機、高周波識別(RFID)、自動車において一般に用いられる類似システムまたは太陽光制御積層ガラスによって保護され得る他の構造の機能を損なう。
【0010】
最後に、ガラス積層プロセス中およびガラス積層プロセス後にスパッタリングされた金属被覆フィルムへの水分侵入は、中間層からの縁欠失を見込んでおくために追加の複雑なプロセスを必要とする。これらの問題および他の問題を克服するために、金属化フィルムは積層ガラス構造の内層として用いられてきた。しかし、このタイプの構造も製造プロセスの複雑化を強いる。
【0011】
より最近の傾向は赤外線を反射するのはでなく吸収する金属酸化物ナノ粒子の使用であった。基材のクラリティおよび透明性を保存するために、これらの材料は、理想的には、約200ナノメートル(nm)未満の公称粒子サイズを有する。これらの材料は導電性フィルムを形成しないので、このタイプの太陽光制御グレージングによって保護された構造内部に位置する放射線送受信装置の運転は妨害されない。
【0012】
商業的意義を達成した幾つかの赤外線吸収金属酸化物はアンチモン錫酸化物およびインジウム錫酸化物である。アンチモン錫酸化物およびインジウム錫酸化物で被覆された幾つかのフィルム基材は太陽光制御窓カバーとして記載されてきた。例えば、米国特許第5,518,810号明細書を参照されたい。金属酸化物粒子は触圧接着剤の薄層と合わせて窓に接着させてもよい。例えば、米国特許第6,191,884号明細書、米国特許第6,261,684号明細書および米国特許第6,528,156号明細書を参照されたい。更に、米国特許第6,663,950号明細書には、アンチモン錫酸化物ナノ粒子およびランタン六硼化物ナノ粒子を含む樹脂結合剤を含むハードコート層が記載されている。
【0013】
しかし、太陽光制御窓カバーを含む窓カバーには、経年劣化と、例えばクリーニングなどの環境応力に対して不安定であるという欠点がある。窓カバーは、経時的にフィルム上で引掻または応力割れを発現する場合がある。窓カバーは気泡を形成する場合もあり、あるいはそうでない場合は例えば湿気、熱またはその両方を原因とする窓への粘着力の部分欠損または全面欠損を発現する場合もある。
【0014】
従って、アンチモン錫酸化物およびインジウム錫酸化物はガラス積層物の高分子中間層に導入されてきた。一般に、ナノ粒子は、可塑剤、溶媒またはもう1種の液体などのビヒクル中の分散体として高分子材料に導入される。あるいは、超微細金属酸化物粒子は、赤外線吸収中間層のために望まれる最終濃度で高分子溶融物に直接導入されてきた。例えば、米国特許第5,830,568号明細書、米国特許第6,315,848号明細書、米国特許第6,329,061号明細書、米国特許第6,579,608号明細書、米国特許第6,506,487号明細書、米国特許第6,620,477号明細書、米国特許第6,686,032号明細書、米国特許第6,632,274号明細書、米国特許第6,673,456号明細書および米国特許第6,733,872号明細書ならびに国際公開第02/060988号パンフレットを参照されたい。
【0015】
しかし、高周波送信を妨害せずに赤外線エネルギーの透過を減らす新規材料を提供することが必要とされ続けている。可塑剤または他の任意選択の原料を必要とせず、非常に良好なクラリティまたは低い曇り度を有する積層物を製造するために用いられ得る赤外線遮断材料を提供することが必要とされ続けている。これらの材料をコンパウンディングするために単純化されたプロセスを提供することも必要とされ続けている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0016】
従って、本発明は高周波送信を妨害せずに赤外線エネルギーの透過を低減させる新規材料を提供する。可塑剤も他の任意選択の原料も必要とせず、得られた積層物は非常に良好なクラリティまたは低い曇り度を有する。これらの材料をコンパウンディングするために単純化されたプロセスも提供される。
【0017】
詳しくは、第1の実施形態において、本発明は無機赤外線吸収ナノ粒子とマトリックス材料とを含むナノ粒子太陽光制御コンセントレートを提供する。ナノ粒子太陽光制御コンセントレートを製造する方法も提供される。
【0018】
もう1つの実施形態において、本発明は、ナノ粒子太陽光制御コンセントレートを含むポリマーブレンド、およびシート、フィルムなどの成形物品ならびに太陽光制御積層物を提供する。ポリマーブレンドおよび成形物品を製造する方法も提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本明細書の中の定義は、特定の場合に特に限定されない限り本明細書全体を通して用いられる用語に適用する。
【0020】
以後用いられる「ナノ粒子」という用語は、赤外線吸収性無機ナノ粒子を意味する。
【0021】
本明細書で用いられる「太陽光制御」という用語は、太陽によって放出される光のあらゆる波長の強度の減少に関連する。好ましくは、本発明において、赤外線波長または近赤外線波長の強度は減少する。同様に好ましくは、可視光波長の強度は実質的に不変である。有利には、これらの2つの好ましい条件下で、熱の伝達は減少する一方で、視覚透明性は維持され、着色物体の外観は実質的にひずまない。
【0022】
本明細書で用いられる「有限量」および「有限値」は、零に等しくない量または値を意味する。
【0023】
本明細書で用いられる「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータおよび他の量および特性が厳密でなく、且つ厳密である必要がなく、公差、換算係数、丸めおよび測定誤差など、ならびに当業者に対して明らかである他のファクターを反映して、近似および/または必要に応じてより大きいかまたはより小さくてもよいことを意味する。一般に、量、サイズ、配合、パラメータまたは他の量あるいは特性は、そのように明示的に規定されているか否かを問わず「約」または「近似」である。
【0024】
1つの態様において、本発明はマトリックス材料に分散された赤外線吸収性無機ナノ粒子を含むナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物を提供する。
【0025】
赤外線吸収性無機ナノ粒子は、好ましくは金属、金属含有化合物、金属含有複合材、または金属、金属含有化合物および金属含有複合材から選択された2種以上の物質の混合物を含む。適する金属には、錫、亜鉛、ジルコニウム、鉄、クロム、コバルト、セリウム、インジウム、ニッケル、銀、銅、白金、マンガン、タンタル、タングステン、バナジウム、アンチモンおよびモリブデンが制限なく挙げられる。適する金属含有化合物には、金属酸化物、金属窒化物、金属オキシ窒化物および金属硫化物が制限なく挙げられる。適する金属含有複合材には、少なくとも1種のドーピング物質でドープされた金属および少なくとも1種のドーピング物質でドープされた金属含有化合物が挙げられる。適するドーピング物質には、アンチモン、アンチモン化合物、弗素、弗素化合物、錫、錫化合物、チタン、チタン化合物、珪素、珪素化合物、アルミニウムおよびアルミニウム化合物が制限なく挙げられる。
【0026】
適するナノ粒子は、約200ナノメートル(nm)未満の公称粒子サイズまたは平均粒子サイズを有する。好ましくは、ナノ粒子は約100nm未満の公称粒子サイズを有する。より好ましくは、ナノ粒子は約50nm未満の公称粒子サイズを有する。さらにより好ましくは、ナノ粒子は約30nm未満の公称粒子サイズを有する。さらにより好ましくは、ナノ粒子は約1nm〜約20nmの範囲内の公称粒子サイズを有する。
【0027】
好ましくは、ナノ粒子は、アンチモン錫酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)またはそれらの混合物を含む。より好ましくは、ナノ粒子は、アンチモン錫酸化物(ATO)、インジウム錫酸化物(ITO)およびそれらの混合物から本質的になる。
【0028】
アンチモン錫酸化物は、アンチモンドープ錫酸化物または比較的少量のアンチモン酸化物を含む錫酸化物として表現することが可能である。アンチモンレベルは、アンチモン錫酸化物の全重量を基準にして好ましくは約0.1重量%〜約20重量%の範囲内である。より好ましくは、アンチモンレベルは、アンチモン錫酸化物の全重量を基準にして約5重量%〜約15重量%の範囲内である。アンチモン酸化物により約8重量%〜約10重量%の範囲内のレベルにドープされた錫酸化物は更により好ましい。
【0029】
それに反して、インジウム錫酸化物は、錫ドープインジウム酸化物または比較的少量の錫酸化物を含むインジウム酸化物として表現することが可能である。錫レベルは、錫原子およびインジウム原子の合計を基準にして好ましくは約1〜約15原子%、より好ましくは約2〜約12原子%の範囲内である。別案として規定すると、ITO粉末中の錫含有率のモル分率(モルSn)/[(モルSn)+(モルIn)]は、好ましくは約0.01〜約0.15である。より好ましくは、錫含有率のモル分率は約0.02〜約0.12である。
【0030】
ATOナノ粒子およびITOナノ粒子は、例えば、気相分解法、プラズマ気化法、アルコキシド分解法、共沈殿法および熱水法を含む適するいかなる方法を通しても製造してよい。
【0031】
以下に記載されたプロセス問題を条件として、ナノ粒子太陽光制御コンセントレートを形成するためにマトリックス材料に導入されるナノ粒子の量は、ナノ粒子およびマトリックス材料の組み合わせ重量を基準にして約30〜約80重量%、好ましくは約30〜約50重量%、より好ましくは約35〜約45重量%の範囲であってもよい。
【0032】
ナノ粒子が中に導入されるマトリックス材料は、好ましくはポリマーである。本質的にいかなるポリマーも本発明のマトリックス材料として有用性を見つけることが可能である。好ましくは、マトリックス材料は可視光に対して透明である。
【0033】
好ましい高分子マトリックス材料には、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ノルボルネンポリマー、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、スチレン−アクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ナイロンを含むポリアミド、ポリ(ウレタン)、アクリル樹脂(acrylics)、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、塩化ビニルポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、エチルアクリルアセテート(EM)、エチルメタクリレート(EMAC)、メタロセン触媒ポリエチレン、可塑化ポリ(塩化ビニル)、ISD樹脂、ポリウレタン、その例がSekisui Companyから市販されている音響的に改質されたポリ(塩化ビニル)、可塑化ポリ(ビニルブチラール)、音響的に改質されたポリ(ビニルブチラール)など、およびそれらのコポリマーまたはそれらの組み合わせが制限なく挙げられる。
【0034】
好ましくは、ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物は、安定化のために1種以上の分散剤を含む。必要とされる分散剤の量は、例えば、ナノ粒子の表面特性、マトリックス材料の種類および用いられる混練技術に応じて異なる。しかし、分散剤レベルは、ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物の全重量を基準にして好ましくは約0〜約10重量%の範囲内である。
【0035】
ナノ粒子の表面張力を下げるために、好ましくは、1種以上の界面活性剤もナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物に含めてもよい。適する界面活性剤には、アニオン界面活性剤、非イオン界面活性剤およびカチオン界面活性剤が挙げられる。好ましい界面活性剤使用量は、ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物の全重量を基準にして約0〜約5重量%の範囲内であってもよい。
【0036】
加工性または機械的特性を改善するため、またはナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物を含むフィルムおよびシートのガラガラ音またはサラサラ音を減らすために、好ましくは、1種以上の可塑剤もナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物に含めてもよい。本質的にいかなる可塑剤も本発明において用いるために適する。
【0037】
ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物は、好ましくは少なくとも1種のキレート剤を含む。キレート剤は、欧州特許第1227070A1号明細書に記載された通りEDTA;ベータジケトン、たとえばアセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルトリフルオロアセトン、ジピバロイルメタンなどであってもよい。キレート剤のレベルは、ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物の全重量を基準にして有限量から約2重量%以下、好ましくは有限量から約1重量%以下であってもよい。
【0038】
ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物は、組成物の全重量を基準にして好ましくは有限量から約10.0重量%以下の一種以上の熱安定剤も含む。本質的にいかなる熱安定剤も本発明内で有用性を見つける。より好ましくは、組成物は、ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物の全重量を基準にして有限量から約5.0重量%、さらにより好ましくは有限量から約1.0重量%の熱安定剤を含む。
【0039】
ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物は、組成物の全重量を基準にして好ましくは有限量から約10.0重量%以下の一種以上のUV吸収剤を含む。本質的にいかなるUV吸収剤も本発明内で有用性を見つける。より好ましくは、組成物は、ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物の全重量を基準にして有限量から約5.0重量%、さらにより好ましくは有限量から約1.0重量%のUV吸収剤を含む。
【0040】
好ましくは、ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物は、有効量の1種以上のヒンダードアミン安定剤(HALS)も含む。一般に、HALSは、第二アセチル化環状アミンまたは第三アセチル化環状アミン、N−ヒドロカルビルオキシ置換環状アミン、ヒドロキシ置換N−ヒドロカルビルオキシ置換環状アミンあるいはアミン官能基に隣接した炭素原子上の脂肪族置換から典型的に誘導された立体障害を更に含む他の置換環状アミンである。本質的にいかなるHALSも本発明内で有用性を見つけることが可能である。ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物は、ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物の全重量を基準にして好ましくは約0〜約10.0重量%のHALS、より好ましくは約0〜約5.0重量%、さらにより好ましくは約0〜約1.0重量%のHALSを含む。
【0041】
ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物は、加工助剤、流動強化添加剤、潤滑剤、顔料、着色剤、染料、難燃剤、酸化防止剤、結晶度を増すための核剤、スリップ剤、シリカなどの粘着防止剤、Mobil Chemical Companyから市販されているRMR(商標)イソプレンブタジエンイソプレン樹脂などの耐衝撃性改良剤、UV安定剤、架橋剤、硬化剤、pH調節剤、消泡剤、湿潤剤、シラン型、チタン型、アルミニウム型、ジルコニウム型またはマグネシウム型のカップリング剤、接着剤およびプライマなどを制限なく含む他の添加剤も含んでよい。これらの添加剤の適するレベルおよびポリマー組成物に添加剤を導入する方法は当業者に入手可能である。例えば、「Modern Plastics Encyclopedia」、McGraw−Hill,New York,NY,1995を参照されたい。
【0042】
もう1つの実施形態において、本発明はナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物を製造する方法を提供する。これらの方法において、適するとともに好ましいナノ粒子、マトリックス材料、任意選択の添加剤および適する濃度範囲は、本発明の組成物に関して上述した通りである。
【0043】
好ましくは、ナノ粒子はマトリックス材料内に分散される。供給されたままのナノ粒子を一次粒子に解凝集するプロセスである分散は、適するいかなる手段によっても実行してよい。例えば、曇り度測定を通して実証されるようなナノ粒子を含有する物品のクラリティは、ナノ粒子が十分に解凝集されていない場合に問題がある。
【0044】
好ましくは、分散プロセスは、溶融マトリックス材料がナノ粒子および存在してもよい組成物のあらゆる任意選択の成分と組み合わされる高剪断溶融混合プロセスである。適する高剪断混合装置には、スタティックミキサー、ゴムミル、ブラベンダーミキサー、ブスコニーダー、一軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機および加熱二本ロール機または非加熱二本ロール機などが挙げられる。
【0045】
正確なプロセス条件は、マトリックス材料の化学的種類に応じて異なるが、しかし、マトリックス材料に導入されるべきナノ粒子の量に応じて異なる。当業者は適切な加工条件および装置を決定することが可能である。例えば、国際公開第01/00404号パンフレットには、加熱二本ロール機を用いてマトリックス材料内にナノ粒子を分散させる方法が記載されている。この方法は、マトリックス材料またはナノ粒子太陽光制御コンセントレートが、スタティックミキサー、ゴムミル、ブラベンダーミキサー、ブスコニーダー、一軸スクリュー押出機および二軸スクリュー押出機などの他の装置での効率的な加工のために高すぎる溶融粘度を有する時により好ましい。
【0046】
更に、ナノ粒子太陽光制御コンセントレートの中のナノ粒子のレベルは、解凝集プロセスの効率に影響を及ぼす主要なパラメータである。溶融粘度はナノ粒子のレベルにつれて増加し、溶融粘度とナノ粒子のレベルの両方は、好ましくは分散プロセス中に高い剪断応力を付与するのに十分である。逆に、不適切に低いレベルのナノ粒子は十分に高い溶融粘度を提供しない。結果として、剪断応力も不適切に低く、供給されたままのナノ粒子は一次粒子サイズに効率的に解凝集されない。マトリックス材料内に導入されたナノ粒子のレベルの上限が、選択された分散プロセスおよび装置によって許容され得る最大溶融粘度によってある程度決定されることが論理的に引き続いて起きる。
【0047】
マトリックス材料は、あらゆる混合工程の前に乾燥させても、紛状にさせても、またはペレット化させてもよい。マトリックス材料は、混合装置にフィードするために典型的には「ペレットブレンド」または「粉末ブレンド」と呼ばれるドライブレンドにおいてナノ粒子および任意選択の成分に混合してもよい。あるいは、マトリックス材料、ナノ粒子および任意選択の成分は、2種以上の異なるフィーダーを通して個別にフィードしてもよい。
【0048】
典型的な押出プロセスにおいて、マトリックス材料、ナノ粒子および存在するなら任意選択の成分は、押出機の後区画または「フィード」区画にフィードしてもよい。しかし、マトリックス材料、ナノ粒子および任意選択の成分を押出機の2つ以上の異なる位置にフィードすることも有利な場合がある。例えば、マトリックス材料は押出機の後区画にフィードしてもよい一方で、ナノ粒子は、ダイプレート付近で押出機の前線にフィードされる。押出機の温度分布は、好ましくは加工条件下でマトリックス材料を溶融させることを可能にする。スクリューデザインは、好ましくは、スクリューが溶融マトリックス材料をナノ粒子および他の任意選択の成分に混合するにつれて剪断応力、従って熱も付与する。マトリックス材料またはナノ粒子コンセントレートの溶融加工温度は、好ましくは約50℃〜約300℃の範囲内である。しかし、上述したように、正確な加工条件は、マトリックス材料の化学的種類および溶融物中のナノ粒子のレベルなどに応じて異なる。
【0049】
本発明の好ましいプロセスにおいて、比較的多い量のナノ粒子が比較的少ない量のマトリックス材料にブレンドされて、比較的高いレベルのナノ粒子を有するコンセントレートを形成する。コンセントレートは、マトリックス材料と同じかまたは異なってもよい高分子樹脂にブレンドされて、赤外線の所望の量を吸収するために必要なナノ粒子の所望の比較的低いレベルを有する太陽光制御組成物を製造する。より好ましい幾つかのプロセスにおいて、ブレンドは製造プロセスにおいて現場(in−situ)で製造される。例えば、ナノ粒子太陽光制御コンセントレートは、フィルムおよびシートなどの添加剤として成形物品のために以下で記載した製造プロセスに添加剤として直接添加してもよい。適するとともに好ましい加工方法および条件は、ナノ粒子太陽光制御コンセントレート組成物をコンパウンディングするプロセスに関して上述した通りである。
【0050】
高分子樹脂のために適する材料は、マトリックス材料のために上述した通りである。好ましくは、最適なクラリティのために、マトリックス材料は高分子樹脂と混和性である。より好ましくは、高分子樹脂および高分子マトリックス材料は同等である。
【0051】
しかし、特にポリ(エチレンテレフタレート)などのより高い融点の高分子樹脂と合わせて、より低い融点のマトリックス材料を用いてもよいことは考慮されている。最終のフィルムまたはシートのクラリティは、フィルムの相対的な薄さのゆえにおよび最終のフィルム組成物またはシート組成物内に導入されるべきマトリックス材料の比較的低いレベルのゆえに、これらの場合に過度に劣化することが予想されない。
【0052】
本発明の方法によって形成される本発明による太陽光制御組成物は、約0.0001重量%〜約75重量%のナノ粒子太陽光制御コンセントレートおよび約99.9999重量%〜約25重量%の高分子樹脂を含んでもよい。好ましくは、組成物は約0.0001重量%〜約40重量%のナノ粒子太陽光制御コンセントレートおよび約99.9999重量%〜約60重量%の高分子樹脂を含む。より好ましくは、組成物は約0.0001重量%〜約20重量%のナノ粒子太陽光制御コンセントレートおよび約99.9999重量%〜約80重量%の高分子樹脂を含む。さらにより好ましくは、組成物は約0.0001重量%〜約10重量%のナノ粒子太陽光制御コンセントレートおよび約99.9999重量%〜約90重量%の高分子樹脂を含む。
【0053】
太陽光制御組成物は1種以上の任意選択の添加剤を含んでもよい。適するとともに好ましい添加剤および適するとともに好ましいレベルは、ナノ粒子太陽光制御コンセントレートに関して上述した通りである。太陽光制御組成物をコンパウンディングする際に、任意選択の添加剤を別個に添加してもよいか、またはマトリックス材料、ナノ粒子太陽光制御コンセントレート、高分子樹脂と合わせて含めてもよいか、あるいはマトリックス材料、ナノ粒子太陽光制御コンセントレートまたは高分子樹脂の1種以上に添加してもよい。
【0054】
本発明は、好ましくは本発明の組成物を含むフィルムまたはシートの形態を取った成形物品および本発明の方法によって製造された組成物も提供する。本発明のフィルムおよびシートは、上述したマトリックス材料、高分子樹脂および任意選択の添加剤のどれも含んでよい。更に、リサイクル高分子材料はマトリックス材料およびポリマー樹脂の中でバージン材料に加えて用いてもよい。
【0055】
フィルムとシートとの間の相違は厚さである。しかし、フィルムがシートになる厚さを定義する工業規格はない。本発明の目的において、フィルムは約10ミル(0.25ミリメートル(mm))以下の厚さを有する。好ましくは、フィルムは約0.5ミル(0.012mm)〜約10ミル(0.25mm)の厚さを有する。より好ましくは、フィルムは約1ミル(0.025mm)〜約5ミル(0.13mm)の厚さを有する。自動車用途において、フィルム厚さは、好ましくは約1ミル(0.025mm)〜約4ミル(0.1mm)の範囲内であってもよい。本発明の目的において、シートは、約10ミル(0.25mm)より厚い厚さを有する。好ましくは、シートは約15ミル(0.38mm)以上の厚さを有する。より好ましくは、シートは約30ミル(0.75mm)以上の厚さを有する。
【0056】
しかし、異なる物理的特性がフィルムおよびシートからしばしば望まれる。例えば、シートは自立であることが必要とされる場合があるか、またはフィルムは空気漏れまたは引き裂きへの抵抗を必要とする場合がある。従って、本発明において、異なる高分子樹脂は異なる厚さで用いるために好まれる。
【0057】
フィルムの中で用いるために好ましい高分子樹脂には、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ノルボルネンポリマー、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、スチレン−アクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ナイロン、ポリ(ウレタン)、アクリル樹脂、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、塩化ビニルポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(ビニルブチラール)およびエチレン−co−酢酸ビニルなどが制限なく挙げられる。より好ましくは、高分子樹脂は、二軸配向ポリ(エチレンテレフタレート)フィルムである。さらにより好ましくは、ポリ(エチレンテレフタレート)フィルムは二軸配向されている。
【0058】
本発明のシートの中で用いるために好ましいマトリックス材料および高分子樹脂はASTM方法D−638によって測定した時に約20,000psi(138MPa)以下の弾性率を有する独立して選択されたポリマーを含む。より好ましくは、シートは約15,000psi(104MPa)以下の弾性率を有する独立して選択されたポリマーを含む。シートの中で用いるためのマトリックス材料および高分子樹脂の好ましい例には、例えば、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、エチルアクリルアセテート(EM)、エチルメタクリレート(EMAC)、メタロセン触媒ポリエチレン、可塑化ポリ(塩化ビニル)、ISD樹脂、ポリウレタン、その例がSekisui Companyから市販されている音響的に改質されたポリ(塩化ビニル)、可塑化ポリ(ビニルブチラール)および音響的に改質されたポリ(ビニルブチラール)など、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0059】
フィルム組成物およびシート組成物の溶融加工温度は、好ましくは約50℃〜約300℃、より好ましくは約100℃〜約250℃である。フィルム組成物およびシート組成物は、一般に、有効溶融粘度を低下させるのに十分高い温度での加工を見込む優れた熱安定性を有する。
【0060】
ポリ(ビニルブチラール)は、シートのためにより好ましい高分子樹脂である。好ましいポリ(ビニルブチラール)樹脂は、低角レーザ光散乱を用いるサイズ排除クロマトグラフィによって測定した時、約30,000〜約600,000ダルトン、好ましくは約45,000〜約300,000ダルトン、より好ましくは約200,000〜300,000ダルトンの重量平均分子量範囲を有する。好ましいポリ(ビニルブチラール)材料は、ポリビニルアルコール(PVOH)として計算して、約5〜約30%、好ましくは約11〜約25%、より好ましくは約15〜約22%のヒドロキシル基を重量基準で含む。更に、好ましいポリ(ビニルブチラール)材料は、ポリビニルエステルとして計算して約0〜約10%、好ましくは約0〜約3%のエステル残基、典型的にはアセテート基を含み、残りはブチルアルデヒドアセタールである。ポリ(ビニルブチラール)は、米国特許第5,137,954号明細書に記載されたように、ブチラール以外のアセタール基、例えば2−エチルヘキサナールの比較的少量も含んでよい。ポリ(ビニルブチラール)樹脂は、水性アセタール化または溶媒アセタール化によって、または他の適するいかなる手段によっても製造してよい。
【0061】
好ましくは、ポリ(ビニルブチラール)は少なくとも1種の可塑剤を含有する。可塑剤の全量は、特定のポリ(ビニルブチラール)樹脂および所望の特性に応じて異なる。適する可塑剤は、例えば、米国特許第3,841,890号明細書、米国特許第4,144,217号明細書、米国特許第4,276,351号明細書、米国特許第4,335,036号明細書、米国特許第4,902,464号明細書、米国特許第5,013,779号明細書および国際公開第96/28504号パンフレットに記載されている。一般に用いられる可塑剤は、多塩基酸または多価アルコールのエステルである。特に適する可塑剤は、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、トリエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、オリゴエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエート、テトラエチレングリコールジ−n−ヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘプチルアジペートとノニルアジペートの混合物、ジブチルセバケート、トリブトキシエチルホスフェート、イソデシルフェニルホスフェート、トリイソプロピルホスフィット、油変性セバシドアルキッドなどの高分子可塑剤およびホスフェートとアジペートの混合物、ならびにアジペートおよびアルキルベンジルフタレートである。樹脂100部当たり一般に可塑剤約15〜約85部の間、樹脂100部当たり好ましくは可塑剤約25〜約45部が用いられる。この後者の濃度は、17〜25重量%のビニルアルコールを含有するポリ(ビニルブチラール)樹脂と合わせて一般に用いられる。
【0062】
ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)樹脂も、シートの中で用いるためにより好ましい高分子樹脂である。適するポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)樹脂には、Bridgestone Corporation、Exxon Corporation、Specialized Technologies Resources,Inc.およびWilmington,DEのE.I.du Pont de Nemours & Co.から購入できる樹脂が制限なく挙げられる。ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)樹脂は、樹脂重量の好ましくは約10〜約50重量%の間、より好ましくは約20〜約40重量%の間、さらにより好ましくは約25〜約35重量%の間の酢酸ビニルレベルを有する。
【0063】
ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)樹脂は、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの混合物を含む他の不飽和コモノマーを導入してもよい。本発明のエチレン酢酸ビニルコポリマーは、有限量から約50重量%以下、好ましくは有限量から約25重量%以下のもう1種の不飽和コモノマーを導入してもよい。しかし、さらにより好ましくは、本発明のエチレンコポリマーは、ポリマーの全重量を基準にして約0重量%の他の不飽和コモノマーを導入する。他のコモノマーのレベルは、約20,000psi以下の弾性率、好ましくは約15,000psi以下の弾性率を有するポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)樹脂を提供するように選択される。
【0064】
上述した可塑剤のどれもポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)樹脂と合わせて用いてもよい。一般に、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)樹脂組成物内の可塑剤レベルは、フィルム組成物またはシート組成物の全重量を基準にして約5重量%を超えない。
【0065】
ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)樹脂を含むシートは、好ましくは架橋剤として有機過酸化物も含む。有機過酸化物は、10時間の半減期において、好ましくは約70℃以上、より好ましくは約100℃以上の熱分解温度を有する。適切な有機過酸化物の選択は、シート形成温度、組成物を調製するためのプロセス、硬化(接着)温度、接着されるべき本体の耐熱性および貯蔵安定性などを考慮して当業者が実施してもよい。有機過酸化物のレベルは、フィルム組成物またはシート組成物の全重量を基準にして好ましくは約0.1重量%〜約5重量%の範囲内である。
【0066】
あるいは、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)樹脂は光によって硬化させてもよい。この場合、有機過酸化物を光開始剤または光増感剤で置き換えてもよい。光開始剤のレベルは、フィルム組成物またはシート組成物の全重量を基準にして好ましくは約0.1重量%〜約5重量%の範囲内である。
【0067】
ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)樹脂は、1種以上のラジカル発生剤も導入してよい。好ましくは、ラジカル発生剤は、例えば、機械的強度、粘着力特性;、透明性などの光学特性、耐熱性、耐光性および架橋の速度などの樹脂の種々の特性の改善または調節のためにアクリロイル(オキシ)基含有化合物、メタクリロイル(オキシ)基含有化合物および/またはエポキシ基含有化合物を含有する材料である。これらの材料は、フィルム組成物またはシート組成物の全重量を基準にして好ましくは約50重量%以下のレベル、より好ましくは約10重量%以下のレベル、さらにより好ましくは約0.1重量%〜約2重量%の範囲内のレベルで用いられる。アクリロイル(オキシ)基含有化合物およびメタクリロイル(オキシ)基含有化合物の例には、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドなどのアクリル酸またはメタクリル酸の誘導体が一般に挙げられる。エステル残基の例には、線状アルキル基(例えば、メチル、エチル、ドデシル、ステアリルおよびラウリル)、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基が挙げられる。更に、エステルには、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリトールなどのアクリル酸またはメタクリル酸と多価アルコールのエステルが挙げられる。アミドの例には、ジアセトンアクリルアミドが挙げられる。多官能性化合物の例には、グリセロール、トリメチロールプロパンまたはペンタエリトリトールなどの複数のアクリル酸またはメタクリル酸と多価アルコールのエステルが挙げられる。エポキシ基含有化合物の例には、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)サブ−5−グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルアジペート、ジグリシジルフタレート、グリシジルメタクリレートおよびブチルグリシジルエーテルなど、ならびにそれらの混合物などの複数のアクリル酸またはメタクリル酸と多価アルコールのエステルが挙げられる。
【0068】
ガラス硬質層と高分子フィルムまたはシートとの間の接着結合を制御するための粘着力制御添加剤もポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)またはポリ(ビニルブチラール)を含むフィルムまたはシートの中に含めてもよい。粘着力制御添加剤は、一般に、有機酸または無機酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。好ましくは、粘着力制御添加剤は、炭素原子数2〜16の有機カルボン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。より好ましくは、粘着力制御添加剤は、炭素原子数2〜16の有機カルボン酸のマグネシウム塩またはカリウム塩である。粘着力制御添加剤の特定の例には、例えば、酢酸カリウム、蟻酸カリウム、プロパン酸カリウム、ブタン酸カリウム、ペンタン酸カリウム、ヘキサン酸カリウム、2−エチル酪酸カリウム、ヘプタン酸カリウム、オクタン酸カリウム、2−エチルヘキサン酸カリウム、酢酸マグネシウム、蟻酸マグネシウム、プロパン酸マグネシウム、ブタン酸マグネシウム、ペンタン酸マグネシウム、ヘキサン酸マグネシウム、2−エチル酪酸マグネシウム、ヘプタン酸マグネシウム、オクタン酸マグネシウムおよび2−エチルヘキサン酸マグネシウムなど、ならびにそれらの混合物が挙げられる。粘着力制御添加剤は、フィルム組成物またはシート組成物の全重量を基準にして典型的には約0.001〜約0.5重量%の範囲内で用いられる。
【0069】
本発明のフィルムおよびシートは適するいかなるプロセスによっても製造してもよい。例えば、薄いフィルムは、米国特許第4,372,311号明細書に記載された浸漬被覆、米国特許第4,427,614号明細書に記載された圧縮成形、米国特許第4,880,592号明細書に記載された溶融押出、米国特許第5,525,281号明細書に記載された溶融ブロー成形または他の適するプロセスによって形成してもよい。高分子シートは、例えば、押出、カレンダー成形、溶液キャスティングまたは射出成形によって形成してもよい。当業者は、高分子組成に基づくとともにシート形成またはフィルム形成のために用いられる方法に基づく適切なプロセスパラメータを特定することが可能である。
【0070】
しかし、好ましくは、本発明のフィルムは溶液キャスティングまたは押出によって形成され、本発明のシートは押出によって形成される。押出は連続長さとして現れるフィルムおよびシートなどの「エンドレス」製品の形成のために特に好ましい。
【0071】
本発明のシートおよびフィルムは2層以上の層を有する多層積層物を含む。多層のフィルム構造およびシート構造は、例えば、共押出、ブローフィルム、浸漬被覆、溶液被覆、ブレード、パドル、エアナイフ、印刷、ダルグレン、グラビア、粉末被覆、噴霧または他のアートプロセスなどの適するいかなる手段によっても形成してよい。個々の層は、例えば、熱、接着剤および/または繋ぎ層によって互いに接合してもよい。好ましくは、多層フィルムは押出キャスティングプロセスを通して製造される。
【0072】
フィルムおよびシートの多くの形成方法ならびに特に押出プロセスは、拡大した融通性のために様々なポスト押出操作と組み合わせることも可能である。こうしたポスト形成操作には、丸形状を卵形状に変える、異なる方向にフィルムをブローする、機械加工、打抜、延伸または配向、ロール作業、カレンダー加工、被覆、エンボス、印刷およびビカット軟化点を高めるためのE−ビーム処理などの放射線照射などが挙げられる。高分子組成、ポリマーを形成する方法およびフィルムまたはシートを形成する方法と合わせたポスト押出操作は、クラリティ、収縮、引張強度、破断点伸び、衝撃強度、絶縁耐力および誘電率、引張弾性率、耐薬品性、融点、熱変形温度および粘着力などの多くの特性に影響を及ぼす。
【0073】
例えば、いずれかの方法によって形成されたフィルムおよびシートは、適するいずれかの方法により、形成後に機械方向および横方向の一方または両方に延伸することにより一軸または二軸に配向させてもよい。好ましくは、配向されたフィルムまたはシートの収縮は、熱安定化によって、すなわち、フィルムまたはシートを延伸された位置に保持し、冷却前に数秒にわたり加熱することにより制御される。これは、配向されたフィルムまたはシートを安定化し、フィルムまたはシートは、その後、熱安定化温度より高い温度でのみ収縮する場合がある。好ましくは、配向されたフィルムまたはシートは150℃で30分後に両方向に2%より少なく収縮する。
【0074】
好ましくは、高分子フィルムまたはシートの一方の表面または両方の表面は粘着力を強化するために処理される。この処理は、接着剤、シランなどのプライマ、火炎処理、プラズマ処理、電子ビーム処理、酸化処理、コロナ放電処理、化学処理、クロム酸処理、高温空気処理、オゾン処理、紫外線処理、サンドブラスト処理および溶媒処理など、ならびにそれらの組み合わせを制限なく含む適するいかなる形態も取ってよい。
【0075】
本発明のフィルムおよびシートは、ポリアリルアミン系プライマの被膜を含むプライマ被膜であって、好ましくは一方の表面または両方の表面、より好ましくは両方の表面上のプライマ被膜を含む。ポリアリルアミン系プライマおよびポリ(エチレンテレフタレート)高分子フィルムへのポリアリルアミン系プライマの塗布は、例えば、米国特許第5,411,845号明細書、米国特許第5,770,312号明細書、米国特許第5,690,994号明細書および米国特許第5,698,329号明細書に記載されている。
【0076】
フィルムまたはシートは、一方の表面または両方の表面上に紫外線(UV)硬化樹脂から形成されたハードコート層も有してよい。適するいかなるハードコート配合も用いてよい。ハードコートは接着剤を更に導入してもよいか、または高い耐引掻性などの他の望ましい特性を提供するために改質してもよい。
【0077】
本発明のシートおよびフィルムは平滑な表面を有してもよい。しかし、好ましくは、積層物内で中間層として用いられるシートおよびフィルムは、積層プロセス中に積層物の表面間から大部分の空気を除去することを効果的に可能にするために少なくとも1つの粗面を有する。押し出されたフィルムまたはシートの片側または両側の粗面は、押出物が通るダイ出口表面のダイの開きおよび温度の設計によって提供してもよい。しかし、粗化は、押出後にシートを機械的にエンボスするなどのポスト押出操作またはシートの押出中のメルトフラクチャなどによって実行してもよい。
【0078】
本発明は太陽光制御積層物も提供する。幾つかの実施形態において、太陽光制御積層物は、本発明の少なくとも1つの高分子フィルムまたはシートを含むか、または本発明の少なくとも1つの高分子フィルムまたはシートから本質的になる。しかし、本発明の太陽光制御積層物は、被覆されていてもよいか、または被覆されていなくてもよい他の高分子フィルムまたはシートなどの1層以上の追加の層を任意選択的に含んでもよい。任意選択の被膜は、例えば、上述した金属化フィルムおよび有機赤外線吸収材料を含む。こうした追加の層は、好ましくは、例えば防音などの補足特性を提供する。
【0079】
幾つかの好ましい実施形態において、追加の層は、軟質太陽光制御積層物を製造するために軟質である。好ましくは、軟質層は、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリビニルブチラール、ポリエチレン−co−酢酸ビニル、アクリリック、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエステルおよび二軸配向ポリ(エチレンテレフタレート)からなる群から選択される。軟質層のために特に好ましい材料には、二軸配向ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリビニルブチラールおよびポリエチレン−co−酢酸ビニルが挙げられる。
【0080】
軟質太陽光制御積層物は適するいかなるプロセスによっても製造してよい。例えば、本発明のフィルムまたはシートは、ニップロール接着プロセスを通して高分子フィルムの追加の層に軽く接着させてもよい。任意選択的に、得られた太陽光制御積層物は、オーブンなどの加熱ゾーンを通過させることにより中程度の加熱に供してもよい。加熱は融着を促進する、すなわち、フィルムまたはシートの表面を粘着性にするのに十分な温度までであるのがよい。融着は一時的または永続的であってもよい。好ましいシートおよびフィルムのために適する表面温度は約50℃〜約120℃の範囲内であり、表面温度は好ましくは約65℃である。あるいは、適する接着剤および/またはプライマは、シートまたはフィルムと追加の層との間の接着強度を強化するために用いてもよい。
【0081】
あるいは、追加の層は、中程度の圧力下で層が共に合流するニップロールを通してナノ粒子含有フィルムまたはナノ粒子含有シートに加えてフィードして、弱く接着した積層物を形成させてもよい。必要ならば、ニップロールは接着プロセスを促進するために加熱してもよい。ニップロールによって加えられる接着圧力は、接着される層の組成および用いられる温度により異なってもよい。
【0082】
接着圧力は、一般に約10psi(0.7kg/cm2)〜約75psi(5.3kg/cm2)の範囲内であり、好ましくは約25psi(1.8kg/cm2)〜約30psi(2.1kg/cm2)の範囲内である。接着後、積層物は、ロール上に巻き取られた積層物が過度に粘着性でないことを確実にするために一連の冷却用シリンダを横切ってもよい。
【0083】
このプロセスまたは類似のプロセスを通して製造された太陽光制御積層物は、本発明の太陽光制御積層物を導入した製品を製造するコンバータによる取り扱いを可能にするのに十分な強度を有することが予測される。当業者は、本明細書に記載されたプロセスを修正して、多様な積層物タイプを製造してもよいこと知っている。
【0084】
もう1つの実施形態において、追加の層は硬質シートである。硬質シートは例えばガラスであってもよい。本明細書で用いられる「ガラス」という用語は、窓ガラス、板ガラス、シリケートガラス、シートガラス、フロートガラス、着色ガラス、例えばソーラーヒーティングを制御するための原料を含んでもよい特殊ガラス、例えば銀などのスパッター金属で被覆されたガラスまたはATOおよび/またはITOで被覆されたガラス、E−ガラス、Solex(商標)ガラス(Pittsburgh,PAのPPG Industriesから入手できる)およびToroglass(商標)などを含む。典型的なガラスのタイプは厚さ90ミルの焼鈍平板ガラスであり、最適の粘着力を達成するためにガラスの錫側を中間層に向けることが好ましい。あるいは、硬質シートは、例えば、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリアクリレート;、エチレンノルボルネンポリマーなどの環状ポリオレフィンおよびメタロセン触媒ポリスチレンなど、ならびにそれらの混合物または組み合わせなどの硬質透明プラスチックシートであってもよい。クラリティが太陽光制御積層物において要求されない場合、金属板またはセラミック板を硬質シートとして同様に用いてもよい。
【0085】
好ましい太陽光制御積層物には、次の通り隣接層を含む構造が挙げられる。
硬質シート/ナノ粒子含有シートまたはフィルム、
硬質シート/ナノ粒子含有シートまたはフィルム/軟質層、
硬質シート/軟質層/ナノ粒子含有シートまたはフィルム、
硬質シート/ナノ粒子含有シートまたはフィルム/第2の硬質シート、
硬質シート/軟質層/ナノ粒子含有シートまたはフィルム/第2の軟質層/第2の硬質シート、
硬質シート/ナノ粒子含有シートまたはフィルム/第2の硬質シート/軟質層/第3の硬質シート、および
硬質シート/軟質層/ナノ粒子含有シートまたはフィルム/第2のナノ粒子含有シートまたはフィルム/任意選択の第2の硬質シート。
【0086】
好ましい幾つかの実施形態において、軟質であろうと硬質であろうと太陽光制御積層物の層は、層が隣接するように互いに直接積層される。
【0087】
建築用途のため、および自動車、トラックおよび列車などの輸送における用途のために、好ましい太陽光制御積層物は、2層のガラスおよび両方のガラス層に直接積層された本明細書の単一中間層を有する。これらの用途において、太陽光制御積層物は、好ましくは約3mm〜約30mmの全体的厚さを有する。中間層は、典型的には約0.38mm〜約4.6mmの厚さを有し、各ガラス層は通常少なくとも厚さ1mmまたはそれより厚い。本発明の中間層は、好ましくはガラス層に直接接着され、従って、ガラスは中間層に隣接し、接着剤は好ましくは不要である。ガラス/中間層/ガラス/中間層/ガラスの5層積層物およびガラス/中間層/ガラス/中間層/ガラス/中間層/ガラスの7層積層物などの多層太陽光制御積層物も好ましい。
【0088】
本発明の硬質太陽光制御積層物は、オートクレーブプロセスおよび例えばニップロールプロセスなどの非オートクレーブプロセスを通して製造してもよい。本質的にいかなる積層プロセスも本発明の中間層と合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0089】
例示目的のためにのみ実施例を提示する。実施例は決して本発明の範囲を限定することを意図していない。
【0090】
実施例1
40重量%のNanoTek(商標)インジウム錫酸化物(10nmの公称平均粒子サイズを有するインジウム錫酸化物であると考えられる。Romeoville,ILのNanoPhase Technologies Companyから入手できる)、50重量%のポリビニルブチラール(18〜18.5のヒドロキシル価を有するポリビニルブチラールの中粘度グレード)および10重量%のトリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)を導入したペレットブレンドを調製した。ペレットブレンドを180℃〜200℃の範囲内の温度に30分にわたり加熱された二本ロール機での高剪断で激しい溶融混合に供した。溶融物をスラブにキャスティングした。スラブを室温に冷却し、その後、破砕してナノ粒子太陽光制御コンセントレートのばらばらの細片を形成させ、それを後で高分子樹脂に分散させた。
【0091】
実施例2
上の実施例1で調製されたばらばらの細片をトリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)に懸濁させて安定な分散液を提供する。18.5のヒドロキシル価を有するポリ(ビニルブチラール)を安定な分散液と混合することにより可塑化ポリ(ビニルブチラール)組成物を調製する。可塑化ポリ(ビニルブチラール)組成物を押し出し、押出機内の滞留時間は10〜25分以内にする。安定な分散液と乾燥ポリ(ビニルブチラール)フレークのフィード比は36:100(wt:wt)であり、可塑化ポリ(ビニルブチラール)組成物の全重量を基準にして約0.40重量%のインジウム錫酸化物レベルをもたらす。酢酸カリウムおよび酢酸マグネシウム(3:1)の水溶液を押出中に注入して、50〜100ppmのカリウム濃度を与える。スロットダイで測定された溶融温度は190℃〜215℃の間である。
【0092】
スロットダイから出る溶融シートを水浴内で冷却し、自立シートをもたらし、過剰の水を放置して蒸発させる乾燥機に、およびその後、「応力において冷却された」を実質的に軽減するリラクサに自立シートを通す。その後、シートを10℃未満に冷却し、ウェブ幅の中点に沿ってスリットし、ロールに巻き取る。押出でダイリップを調節して、平らな断面厚さ形材をスリットする直前にシートを与える。スリット後、平坦ポリ(ビニルブチラール)シートの2つのロールをロールに巻き取る。各ロールの平均厚さ分布は36ミル(72μm)である。ロール幅は1.12メートルである。
【0093】
実施例3
上の実施例2のシート(1メートル×1.12メートル(全幅))を72°Fの温度で相対湿度(RH)23%で一晩状態調節する。クリアな焼成フロートガラス板層(1メートル×1.12メートル×厚さ2.5mm)、状態調節されたシート層および第2のクリアな焼成フロートガラス板層(1メートル×1.12メートル×厚さ2.5mm)を含むガラス/中間層/ガラス予備プレスアセンブリを真空袋に入れ、90〜100℃で30分にわたり加熱して、ガラス/中間層/ガラスアセンブリの層間に含まれた一切の空気を除去する。その後、ガラス/中間層/ガラス予備プレスアセンブリを200psig(14.3バール)の圧力で空気オートクレーブ内で135℃で30分にわたり加熱する。その後、追加のガスを添加せずに空気を冷却して、オートクレーブ内の圧力を維持した。冷却から20分後、空気温度が約50℃未満である時、過剰の圧力をベントし、ガラス/中間層/ガラス積層物をオートクレーブから除去する。
【0094】
実施例4
実施例2のシート(1メートル×1.12メートル)および未被覆ポリ(エチレンテレフタレート)フィルム(1メートル×1.12メートル)をRH23%および72°Fで一晩状態調節する。焼成フロートガラスシート層(1メートル×1.12メートル×厚さ3mm)、状態調節されたシート層、状態調節されたポリ(エチレンテレフタレート)フィルム層、薄いTeflon(登録商標)フィルム層および第2の焼成フロートガラス層(1メートル×1.12メートル×厚さ3mm)を含む予備プレスアセンブリを真空袋に入れ、90〜100℃で30分にわたり加熱して、予備プレスアセンブリの層間に含まれた一切の空気を除去する。その後、予備プレスアセンブリを上の実施例3に記載されたように空気オートクレーブ内で加熱し冷却する。ガラスシート/中間層/ポリエステルフィルム/Teflon(登録商標)フィルム/ガラスシートアセンブリをオートクレーブから除去する。Teflon(登録商標)フィルムおよびガラスカバーシートの除去は、ガラスシート/中間層/ポリエステルフィルム積層物を提供する。
【0095】
実施例5
実施例1のインジウム錫酸化物コンセントレート、リットル当たり4グラムのTinuvin(商標)Pおよびリットル当たり1.2グラムのTinuvin(商標)123(Ciba Companyの製品)ならびにリットル当たり8グラムのオクチルフェノールも導入しているトリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)の可塑剤溶液を調製する。可塑剤溶液を乾燥ポリ(ビニルブチラール)フレークと合わせて押し出し、押出機内の滞留時間が10〜25分になるようにする。可塑剤対ポリ(ビニルブチラール)フレークのフィード比は38.5:100(wt:wt)であり、可塑剤溶液中のナノ粒子太陽光制御コンセントレートの量は、最終全組成物の重量を基準にして0.25重量%のインジウム錫酸化物レベルを提供する。酢酸カリウムおよび酢酸マグネシウム(3:1)の水溶液を押出中に注入して、50〜100ppmのカリウム濃度を与える。スロットダイで測定された溶融温度は190℃〜215℃の間である。
【0096】
スロットダイから出る溶融シートを水浴内で冷却し、自立シートをもたらし、過剰の水を放置して蒸発させる乾燥機に、およびその後、「応力において冷却された」を実質的に軽減するリラクサに自立シートを通す。その後、シートを10℃未満に冷却し、ウェブ幅の中点に沿ってスリットし、ロールに巻き取る。押出でダイリップを調節して、平らな断面厚さ形材をスリットする直前にシートを与える。スリット後、平坦ポリ(ビニルブチラール)シートの2つのロールをロールに巻き取る。各ロールの平均厚さ分布は30ミル(762μm)である。ロール幅は1.12メートルである。
【0097】
実施例6
上の実施例5のシート(1メートル×全幅1.12メートル)をRH23%および72°Fで一晩状態調節する。予備プレスアセンブリをクリアな焼成フロートガラス板層(1メートル×1.12メートル×厚さ2.5mm)、状態調節されたシート層および第2のクリアな焼成フロートガラス板層(1メートル×1.12メートル×厚さ2.5mm)で積み上げる。ガラス/中間層/ガラスアセンブリを真空袋に入れ、90〜100℃で30分にわたり加熱して、予備プレスアセンブリの層間に含まれた一切の空気を除去する。その後、予備プレスアセンブリを上の実施例3に記載されたように空気オートクレーブ内で加熱し冷却する。ガラス/中間層/ガラス積層物をオートクレーブから除去する。
【0098】
実施例7
実施例5のシート(1メートル×1.12メートル)および未被覆ポリ(エチレンテレフタレート)フィルム(1メートル×1.12メートル)をRH23%および72°Fで一晩状態調節する。予備プレスアセンブリをSolex(登録商標)グリーンガラスシート層(1メートル×1.12メートル×厚さ3mm)、状態調節されたシート層、状態調節されたポリ(エチレンテレフタレート)フィルム層、薄いTeflon(登録商標)フィルム層および焼成フロートガラス層(1メートル×1.12メートル×厚さ3mm)で積み上げる。グリーンガラスシート/中間層/ポリエステルフィルム/Teflon(登録商標)フィルム/ガラスシートアセンブリを真空袋に入れ、90〜100℃で30分にわたり加熱して、予備プレスアセンブリの層間に含まれた一切の空気を除去する。その後、予備プレスアセンブリを上の実施例3に記載されたように空気オートクレーブ内で加熱し冷却する。グリーンガラスシート/中間層/ポリエステルフィルム/Teflon(登録商標)フィルム/ガラスシートアセンブリをオートクレーブから除去する。Teflon(登録商標)フィルムおよびガラスカバーシートの除去はグリーンガラスシート/中間層/ポリエステルフィルム積層物を提供する。
【0099】
本発明の好ましい実施形態の幾つかを説明し、上で詳しく例示してきた一方で、本発明をこうした実施形態に限定することは意図されていない。以下の請求の範囲に記載されたような本発明の範囲および精神を逸脱せずに種々の修正を行ってもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.マトリックス材料と、
b.アンチモン錫酸化物、インジウム錫酸化物またはアンチモン錫酸化物とインジウム錫酸化物の混合物を含む無機赤外線吸収ナノ粒子と
を含むナノ粒子太陽光制御コンセントレートであって、
前記無機赤外線吸収ナノ粒子がナノ粒子太陽光制御コンセントレートの全重量を基準にして約30重量%〜約80重量%、好ましくは約30重量%〜約50重量%、より好ましくは約35重量%〜約45重量%のレベルで存在し、前記無機赤外線吸収ナノ粒子が好ましくは前記マトリックス材料に分散され、前記マトリックス材料が好ましくはポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ノルボルネンポリマー、ポリスチレン、スチレン−アクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリ(ウレタン)、アクリル樹脂、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、塩化ビニルポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、エチルアクリルアセテート、エチルメタクリレート、メタロセン触媒ポリエチレン、ISD樹脂およびそれらのコポリマー、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含むナノ粒子太陽光制御コンセントレート。
【請求項2】
高分子樹脂と請求項1に記載のナノ粒子太陽光制御コンセントレートとを含むポリマーブレンドであって、前記高分子樹脂が好ましくはポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ノルボルネンポリマー、ポリスチレン、スチレン−アクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリ(ウレタン)、アクリル樹脂、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、塩化ビニルポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(ビニルブチラール)、エチレン−co−酢酸ビニル、エチルアクリルアセテート、エチルメタクリレート、メタロセン触媒ポリエチレン、ISD樹脂およびそれらのコポリマー、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含むポリマーブレンド。
【請求項3】
請求項2に記載のポリマーブレンドを含む成形物品であって、前記物品が好ましくはフィルムまたはシートであり、前記フィルムが好ましくはポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、ノルボルネンポリマー、ポリスチレン、シンジオタクチックポリスチレン、スチレン−アクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ナイロン、ポリ(ウレタン)、アクリル樹脂、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、塩化ビニルポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(ビニルブチラール)またはエチレン−co−酢酸ビニルを含み、前記フィルムがより好ましくは二軸配向ポリ(エチレンテレフタレート)を含み、前記シートがASTM方法D−638によって測定した場合に約20,000psi(138MPa)以下の弾性率を有するポリマーを含む高分子樹脂を好ましくは含み、前記シートがより好ましくはポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)、エチルアクリルアセテート、エチルメタクリレート、メタロセン触媒ポリエチレン、可塑化ポリ(塩化ビニル)、ISD樹脂、ポリウレタン、音響的に改質されたポリ(塩化ビニル)、可塑化ポリ(ビニルブチラール)、音響的に改質されたポリ(ビニルブチラール)およびそれらのコポリマーまたはそれらの組み合わせからなる群から選択された高分子樹脂を含む成形物品。
【請求項4】
請求項3に記載のフィルムまたはシートを含む太陽光制御積層物であって、前記太陽光制御積層物が第1の追加の層、第2の追加の層、または第1の追加の層と第2の追加の層との両方を任意選択的に更に含み、前記第1の追加の層が硬質または軟質であり、前記第2の追加の層が前記第1の追加の層とは無関係に硬質または軟質である太陽光制御積層物。
【請求項5】
前記フィルムまたはシートが前記第1の追加の層と前記第2の追加の層との間に配置され、前記第1の追加の層が好ましくはガラスであり、前記第2の追加の層が好ましくはガラスまたは二軸配向ポリ(エチレンテレフタレート)であるか、または前記第1の追加の層と前記第2の追加の層が隣接しており、前記フィルムまたはシートが前記第2の追加の層に隣接している、請求項4に記載の太陽光制御積層物。
【請求項6】
第3の追加の層および任意選択的に第4の追加の層を更に含み、(a)前記第3の追加の層が前記第1の追加の層と前記フィルムまたはシートとの間に配置され、前記第4の追加の層が前記第2の追加の層と前記フィルムまたはシートとの間に配置され、前記第1の追加の層と前記第2の追加の層が硬質であり、前記第3の追加の層と前記第4の追加の層が軟質であるか、または(b)前記フィルムまたはシートと前記第1の追加の層および前記第2の追加の層が隣接しており、前記第3の追加の層が前記第2の追加の層に隣接しており、前記第4の追加の層が前記第3の追加の層に隣接しており、前記第3の追加の層が軟質であり、前記第4の追加の層が硬質であるか、あるいは(c)前記太陽光制御積層物が請求項3に記載の第2のフィルムまたはシートを更に含み、前記第1の追加の層および前記第2の追加の層と前記フィルムまたはシートが隣接しており、前記第1の追加の層と前記第3の追加の層が硬質であり、前記第2の追加の層が軟質であり、前記第2のフィルムまたはシートが前記フィルムまたはシートに隣接しており、前記第3の層が前記第2のフィルムまたはシートに隣接している、請求項5に記載の太陽光制御積層物。
【請求項7】
請求項1に記載のナノ粒子太陽光制御コンセントレートを提供する工程と、
高分子樹脂を提供する工程と、
好ましくは押出プロセスにおいて前記ナノ粒子太陽光制御コンセントレートと前記高分子樹脂とを組み合わせてポリマーブレンドを形成する工程と
を含むポリマーブレンドを製造する方法であって、
前記高分子樹脂が好ましくはポリ(エチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、環状ポリオレフィン、ノルボルネンポリマー、ポリスチレン、スチレン−アクリレートコポリマー、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアミド、ポリ(ウレタン)、アクリル樹脂、酢酸セルロース、三酢酸セルロース、塩化ビニルポリマー、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ(ビニルブチラール)、エチレン−co−酢酸ビニル、エチルアクリルアセテート、エチルメタクリレート、メタロセン触媒ポリエチレン、ISD樹脂およびそれらのコポリマー、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されたポリマーを含む方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法によって得ることができるポリマーブレンド。
【請求項9】
a.請求項7に記載の方法によって得ることができるポリマーブレンドを提供する工程と、
b.好ましくは押出プロセスによって前記ポリマーブレンドから成形物品を形成する工程と
を含む、成形物品を製造する方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法によって得ることができる成形物品。
【請求項11】
フィルムまたはシートである請求項10に記載の成形物品。
【請求項12】
請求項11に記載のフィルムまたはシートを含む太陽光制御積層物。

【公表番号】特表2008−545878(P2008−545878A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522778(P2008−522778)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/020717
【国際公開番号】WO2007/149068
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】