説明

ナビゲーションシステム及び磁気ディスク装置

【課題】ナビゲーションシステムと磁気ディスク装置間に、高度あるいは気圧に関する情報を要求したり、送信したりする規格を新設することなく、磁気ディスク装置がナビゲーションシステムから高度情報を得る手段を提供する。
【解決手段】ナビゲーションシステムの制御装置は、高度情報を磁気ディスク装置に記録し、磁気ディスク装置は自身に記録された高度情報を読み込んで磁気ヘッドスライダの浮上量を調整する。制御装置が高度情報を記録するタイミングは、システムの停止前に一度、あるいは一定の時間間隔毎に一度、あるいは高度が一定の閾値以上変化した時に一度、であり、磁気ディスク装置が高度情報を読み込んで磁気ヘッドスライダの浮上量を調整するタイミングは、システムの起動時に一度、あるいは一定の時間間隔毎に一度、あるいはエラーリカバリ動作に入る際に一度である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ディスク装置を搭載するナビゲーションシステムに係り、特に、各種情報を記録再生する磁気ディスク装置の信頼性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両などのナビゲーションシステムには、磁気ディスク装置(HDD)が、地図情報、音楽、映像など、各種情報を記録再生する記憶装置として利用されている。磁気ディスク装置は、磁気ディスク媒体と磁気ヘッドとを備えている。磁気ヘッドは「磁気ヘッドスライダ」とも言われるように、空気軸受の作用で磁気ディスク上を浮上しつつ、磁気ディスク媒体を磁化して情報を記録し、また磁気ディスク媒体の磁化状態を読み取って、情報の再生を行っている。ここで例えば情報の書き込みを行う際、磁気ディスクと磁気ヘッドとの間隔が狭まれば狭まるほど、磁気ヘッドが形成する磁場の広がりを小さくすることができ、磁気ディスク媒体上で磁化される面積が小さくなる。つまり、磁気ディスク装置の記録密度を上昇させるには、磁気ディスクと磁気ヘッドとの隙間、すなわち磁気ヘッドの浮上量を小さくすることが要求される。
【0003】
一方、磁気ヘッドの浮上量が小さくなりすぎると、磁気ヘッドと磁気ディスクが間歇的あるいは連続的に接触する。その結果、接触振動が情報の記録再生エラーを引き起こしたり、摩耗やスクラッチが磁気ヘッドや磁気ディスク媒体にダメージを与えたりする危険性が高まる。従って、磁気ヘッドの浮上量は、接触しない範囲でできるだけ小さく保つことが望ましい。
【0004】
しかし、磁気ヘッドの製造・組み立て公差、磁気ディスク上での半径位置、動作モード(記録/再生)の別、環境温度差、環境気圧差などによって、前記浮上量はバラツキ、変動を持つ。そこで従来、磁気ヘッド浮上量のバラツキ、変動を取り除く技術として、記録再生素子の近傍に薄膜抵抗体などから成る加熱素子(ヒータ)を取り付け、磁気ヘッドスライダの一部を加熱し熱膨張させて、記録再生素子を磁気ディスク側へ近接させるものがある。(例えば、特許文献1)。この技術の適用形態としては、出荷前の検査時に個々の磁気ヘッドの浮上量を検査し記憶しておき、使用時は当該磁気ヘッド固有の適正通電量と、磁気ディスク装置の使用状況とに応じて加熱素子への通電量を制御している。
【0005】
特許文献2には、磁気ディスクを内蔵する携帯端末装置において、現在位置を検出する位置検出部と、位置検出部で検出された位置のおよその標高を判断し、判断した標高が所定高度以上の場合に、磁気ディスクの使用を制限する技術が開示されている。特許文献3には、ナビゲーション装置が、磁気ディスク装置と、空気の密度を検出する密度検出手段と、密度検出手段によって検出された密度が所定値より大きい場合に磁気ディスク装置に記憶されている情報に基づき所定の機能を実現するための情報処理を実行し、所定値以下になったときに磁気ディスク装置の動作を停止させる制御部とを有し、磁気ヘッドの浮上量の低下に起因する破損を防止する発明が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−135501号公報
【特許文献2】特開2006−351136号公報
【特許文献3】特開2007−026620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現状の磁気ディスク装置では、使用状況に関する情報としては、温度センサを搭載しているので、周囲の温度情報を得ることができる。また、動作モードや半径位置の情報も持っている。しかし、気圧についての情報は得ることができない。空気軸受の作用で浮上している磁気ヘッドの浮上量は、気圧が変われば変化するので、気圧の低い高地でも磁気ヘッドと磁気ディスクが接触しないよう、その分のマージンを見込んで高い浮上量に設計すれば、十分な記録密度を達成できなくなる。逆にマージンを見込まずに低い浮上量に設計すれば、高地で磁気ヘッドと磁気ディスクの接触が起こる危険性が高まり、十分な信頼性を達成できなくなる。微小電気機械システム(MEMS)技術によって作製された気圧センサを、磁気ディスク装置に搭載し、そのセンサから気圧情報を得ることもできるが、大幅なコストアップの要因となってしまう。
【0008】
一方、ナビゲーションシステム全体としては、地図情報と、全地球測位システム(GPS)などの位置検出装置によって得られる位置情報から、高度に関する情報を利用可能である。高度がわかれば気圧も算出できる。従って、ナビゲーションシステムの制御装置が、高度あるいは気圧に関する情報を、記憶装置である磁気ディスク装置に、送信してやればよい。しかし、現状の磁気ディスク装置と、そのホストであるナビゲーションシステムの制御装置の間では、高度あるいは気圧に関する情報を要求したり、送信したりする規格が存在しない。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、現状規格の変更を伴わずに、ナビゲーションシステムが持っている高度情報あるいは気圧情報を、磁気ディスク装置が利用する手段を提供することを目的とする。また、その結果、磁気ヘッドスライダの浮上量を、使用高度にかかわらず適切な値に保ち、磁気ディスク装置の性能・信頼性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係るナビゲーションシステムにおいては、ナビゲーションシステムの制御装置が高度情報あるいは気圧情報を磁気ディスク装置に記録し、磁気ディスク装置は自身に記録された高度情報あるいは気圧情報を読み込んで磁気ヘッドスライダの浮上量を調整する。
【0011】
更に望ましくは、制御装置が高度情報あるいは気圧情報を記録するタイミングは、システムの停止前に一度、あるいは一定の時間間隔毎に一度、あるいは高度または気圧が一定の閾値以上変化した時に一度、であり、磁気ディスク装置が高度情報あるいは気圧情報を読み込んで磁気ヘッドスライダの浮上量を調整するタイミングは、システムの起動時に一度、あるいは一定の時間間隔毎に一度、あるいはエラーリカバリ動作に入る際に一度である。
【0012】
更に望ましくは、制御装置は、システムの開発時にあらかじめ定めた論理アドレスに、高度情報あるいは気圧情報を書き込むコマンドを出し、磁気ディスク装置は、装置の開発時にあらかじめ定められた論理アドレスに対応する物理アドレスにアクセスし、高度情報あるいは気圧情報を読み込み磁気ヘッドスライダの浮上量を調整する。
【0013】
更に望ましくは、磁気ディスク装置が、自身に記録された高度情報あるいは気圧情報を読み込む際には、当該ナビゲーションシステムの仕様に対して最高限度の高度で、最低限度の気圧であっても、前記磁気ヘッドスライダが磁気ディスク媒体に接触しないように、磁気ヘッドスライダの浮上量を調整する。
【0014】
更に望ましくは、磁気ディスク装置が、自身に記録された高度情報あるいは気圧情報を読み込む際には、加熱素子への印加電力を実質ゼロにする。
【0015】
更に望ましくは、磁気ディスク装置が、制御装置から送られた高度情報あるいは気圧情報を記録するため、システムの開発時にあらかじめ定められた論理アドレスに記録せよというコマンドを受信した際には、通常のデータを記録する周波数よりも低い周波数で記録する。
【0016】
あるいは、磁気ディスク装置が、制御装置から送られた高度情報あるいは気圧情報を記録するため、システムの開発時にあらかじめ定められた論理アドレスに記録せよというコマンドを受信した際には、冗長性を持たせて繰り返し記録する。
【0017】
あるいは、前記磁気ディスク装置が、ディスク上に磁気的に記録する記憶領域と、付属する不揮発半導体メモリに記憶する記憶領域を併せ持つハイブリッド型の磁気ディスク装置であり、システムの開発時にあらかじめ定めた論理アドレスは、不揮発半導体メモリ上に配置されている記憶領域の一部である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、現状規格の変更を伴わずに、ナビゲーションシステムが持っている高度情報あるいは気圧情報を、磁気ディスク装置が利用する手段を提供することができる。その結果、磁気ヘッドスライダの浮上量を、使用高度にかかわらず適切な値に保ち、磁気ディスク装置の性能・信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下本発明の実施形態について図面に基づき説明する。
[全体構成]
図1は、本発明の実施形態に係るナビゲーションシステムのブロック図である。このナビゲーションシステムは、車両に搭載して用いられるほか、例えば人が持ち歩く携帯端末などに搭載されたナビゲーションシステムも含むものとするが、ここでは車両に搭載されたナビゲーションシステムを想定して以下の説明を行う。
【0020】
図1に示したナビゲーションシステム30において中心的な役割を果たすのが制御装置31で、演算処理を行うCPU、プログラムを格納するROM、ワーキングメモリとして機能するRAM等を有する。制御装置31は、以下の各装置と接続されている。
【0021】
通信装置32:ワイヤレス通信を用いてナビゲーションシステム30の外部と通信するための機能である。Bluetoothなどの近距離通信を用いて車両内の他機器と情報をやりとりしたり、道路近傍に設けられた通信端末との間で渋滞情報、駐車場の空き状況などを無線通信したり、携帯電話あるいは簡易型携帯電話のインフラストラクチャを用いてインターネット網に接続したりする機能を持つ。
【0022】
位置検出装置33:ナビゲーションシステム30の現在位置を検出する。現在では全地球測位システム(GPS:Global Positioning System)の手法で現在位置を検出する位置検出装置が一般的であるが、他の手法で現在位置を検出する装置でも良い。
【0023】
記憶装置10:一般的には光ディスク装置などもあり得るが、本実施形態においてはすなわち、磁気ディスク装置にほかならない。地図情報、入力された移動予定情報、目的地情報などが記録・再生される。また近年では、ナビゲーションシステムが車両搭乗者への娯楽を提供する機能を持つことも多く、映像や音楽情報を記録再生する機能も要求されることがある。
【0024】
表示装置34:具体的には液晶ディスプレイなどであり、制御装置31の要求に応じて地図情報や経路検索結果、目的地到着予定時刻などを表示する。視覚による表示の他に、聴覚(音声ガイダンス)による案内も含まれる。
【0025】
入力装置35:ユーザがナビゲーションシステム30に情報を入力する際に使用する。具体的には、ボタン、タッチパネル、キーボード、音声認識装置などを含む。
【0026】
ここではナビゲーションシステムの代表的な構成を示したが、例えば通信装置32を備えていないナビゲーションシステムや、表示装置34を備えず、テレビに接続して用いるナビゲーションシステムなども、本発明の範疇に含まれる。
【0027】
[磁気ディスク装置:HDD]
図2は、上記ナビゲーションシステム30に搭載される磁気ディスク装置全体のブロック図であり、図3は、磁気ディスク装置に搭載される磁気ヘッドスライダとその周辺部の構成を示す断面模式図である。
磁気ディスク装置10は、スピンドルモータ2、磁気ディスク媒体3、キャリッジアセンブリ4、磁気ヘッドスライダ5、プリアンプ7、ボイスコイルモータ8、温度センサ9、リードライトチャネル11、モータドライバ12、ハードディスクコントローラ(HDC)13、マイコン14、及びメモリ15を含んで構成されている。リードライトチャネル11、モータドライバ12、HDC13、マイコン14、及びメモリ15、以上5つの構成要素は、信号処理基板上で、各要素が別個のチップに別れていてもよく、複数の構成要素が1つのチップに同居していてもよい。
スピンドルモータ2は、1枚または複数枚の円盤状の磁気ディスク媒体3を回転駆動する。キャリッジアセンブリ4は、ボイスコイルモータ8によって回転駆動され、その先端部に取り付けられた磁気ヘッドスライダ5を磁気ディスク媒体3上で、略動径方向に相対移動させる。この磁気ヘッドスライダ5は空気軸受面を備え、磁気ディスク媒体3上に空気の圧力で浮上している。
【0028】
[磁気ヘッドスライダ]
図3に磁気ヘッドスライダ5とその周辺部を示すように、磁気ヘッドスライダ5はその内部に、磁気ディスク媒体3に対してデータを磁気的に記録する記録素子5aと、記録されたデータを再生する再生素子5bとを備える。さらにこの磁気ヘッドスライダ5には、記録再生素子の近傍に、熱膨張変形を利用して記録再生素子と磁気ディスク媒体との間隔(浮上量)を調整する加熱素子5cが設けられている。
なお、加熱素子を用いた浮上量調整はあくまで一例であり、圧電素子や静電アクチュエータなどによる、別の浮上量調整方法でも、本発明の効果は同等に得られる。
【0029】
[プリアンプ]
プリアンプ7は、記録するべき情報を表す信号の入力を受けて、当該信号を増幅して磁気ヘッド5の記録素子5aに出力する。また、このプリアンプ7は、再生素子5bが出力する再生信号を増幅して出力する。さらに本実施の形態のプリアンプ7は、加熱素子5cに出力する電力量の指示の入力を受けて、当該指示された電力量の電流(あるいは電圧)を、加熱素子5cに対して供給する。
磁気ヘッドスライダ5とリードライトチャネル11を電気的に接続する経路の途中に、ボイスコイルモータ8による回転運動を変形吸収する可撓性の配線「フレキシブルプリンテッドケーブル」(FPC)6があり、プリアンプ7はこのフレキシブルプリンテッドケーブル6上にハンダ付け等で装着されている。
【0030】
[HDD全体構成(続き)]
図2に戻り、温度センサ9は、磁気ヘッドスライダ5近傍の環境温度を検出し、検出した温度を表す信号を出力する。この温度センサ9は、例えばフレキシブルプリンテッドケーブル6上に配置されてもよい。あるいはHDC13、マイコン14などと同じく信号処理基板(カード)上に配置されてもよい。
【0031】
リードライトチャネル11は、記録の対象となるデータをコード変調した信号をプリアンプ7に出力する。また、このリードライトチャネル11は、プリアンプ7が出力する再生信号をコード復調し、復調して得たデータをHDC13に出力する。
【0032】
モータドライバ12は、マイコン14から入力される指示に従って、スピンドルモータ2やボイスコイルモータ8に対して駆動電流を出力し、これらスピンドルモータ2やボイスコイルモータ8を動作させる。
【0033】
HDC13は、外部のホストから転送された記録対象のデータやコマンドを受信し、また、リードライトチャネル11が出力する再生データをホストに転送する。本実施形態においては、外部のホストとはすなわち、ナビゲーションシステムの制御装置31である。
【0034】
マイコン14は、磁気ヘッドスライダ5の位置制御を行うため、モータドライバ12を制御する等、各部を制御する。このマイコン14は、プログラム制御デバイスであり、内蔵するプログラム、及び/又はメモリ15に格納されているプログラムに従って動作している。浮上量調整機能を備えた磁気ディスク装置では、このマイコン14が、加熱素子5cに供給するべき電流量を、プリアンプ7に対して指示する。
【0035】
メモリ15は、マイコン14で実行されるプログラムや、当該プログラムの実行に必要となるデータを格納している。さらにこのメモリ15には、加熱素子5cの制御を行う際にマイコン14が参照し、プリアンプ7の加熱素子制御レジスタにセットする値(加熱素子5cへの通電量に対応する制御パラメータ)を格納している。この制御パラメータの例(テーブル)については後に述べる。なお、このメモリ15は、例えばEEPROM(電気的消去可能ROM)などの不揮発性メモリを含む。更にこのメモリ15は、磁気ディスク媒体3上の一部の領域も含むこともある。その場合前記制御パラメータは、製造時には磁気ディスク媒体3上に記憶され、使用時には電源投入後にまず磁気ディスク媒体3上から高速にアクセスできるメモリ上にコピーされて、加熱素子5cの制御において参照される。
【0036】
[スライダおよびヒータの作り方]
磁気ヘッドスライダ5の概略形成方法を図3を参照して説明する。まずアルミナ・炭化チタン焼結体(アルチックと呼ぶ)のウエハ5d上に、多数の記録素子5a、再生素子5b、加熱素子5cおよびそれらに通じる配線などを薄膜プロセスによって積層形成する。次にダイシングによってウエハ状態からバー状態、更には個々のスライダなどに切断分離する。それと前後してバー状態あるいはスライダ状態で、空気軸受面5fを平滑に研磨し、炭素保護膜を形成する。また、空気軸受面5f上に効果的に空気圧力を発生させる形状のステップ軸受を形成する。
【0037】
図4は、図3の空気流出端面5g側から見た、加熱素子5c層の断面図である。加熱素子5cの材料は、ニッケル・クロム合金などの、比較的抵抗値の高い導電薄膜である。スパッタリングなどで一様な膜を形成した後、ミリングなどで不要部を除去して図4に示すような輪郭を形成する。除去した部分はアルミナなどの絶縁膜5eによって埋める。図3に示した本実施形態ではアルチック部5dと、再生素子5bの間に加熱素子5cを配置したが、熱膨張によって記録再生素子部の浮上量を効果的に制御できる位置ならば別の位置でもよい。例えば記録素子5aと再生素子5bの間でもよい。導電膜の厚さと、蛇行部分細線の長さと幅の比を適切に設計すれば、例えば100オームなどの抵抗値を実現できる。
【0038】
[ヒータの使い方(浮上量設計)]
浮上量を調整する加熱素子5cへの通電量は、使用ヘッドおよびゾーン、使用温度、使用高度(気圧)、使用モードによって調整される。具体的には、各磁気ヘッドスライダ5の浮上量ばらつきを考慮し、仕様として定められた最高高度に相当する最低の気圧で、さらに温度や使用モードなど他の低浮上条件が重なっても、磁気ヘッドスライダ5が磁気ディスク3に接触しないように、ステップ軸受を設計する。
【0039】
[ヒータの使い方(個別浮上量差)]
個別ヘッドスライダの浮上量差の補償について説明する。浮上量はヘッドスライダ毎に異なる。後述する接触検知方法を用いて、出荷前テスト工程で、あるゾーンにおいて、あるいは各ゾーンにおいて、加熱素子通電量を徐々に増やしていって接触検知を行えば、各ヘッドスライダについて接触にいたる距離(クリアランス)を個別に求めることができる。製品ではメモリ15に、接触にいたる加熱素子通電量から、ある信頼性マージンを引いた値を、ヘッド毎に記録してある。記録再生する前のシーク命令がホストから来た時に、記録再生するヘッド番号情報に基づいて、プリアンプ7の加熱素子制御レジスタの値が適切に更新される。
【0040】
なお、各ヘッドスライダのクリアランスを接触検知によって求めることをせず、出荷前テスト工程で、あるゾーンにおいて、あるいは各ゾーンにおいて、加熱素子通電量を徐々に増やしていってエラーレート等の記録再生性能試験を行い、望みの値に達した時の通電量を、当該ヘッドスライダの固有通電量とする方法もある。その場合、決定された通電量に上記信頼性マージンに相当する通電量を加えた値を実際に印加して、接触が起こらないことを確認する、クリアランス・チェックと呼ばれる手続きが必要である。
【0041】
[接触検知手法]
出荷前テスト工程で、加熱素子5cへの通電量を徐々に増やしていって、磁気ヘッドスライダ5と磁気ディスク3との接触の有無を判定するパラメータには下記の種類がある。
第一の手法:磁気再生信号の強度変化、すなわち、通電量を増やしても接触によってそれ以上浮上量が低下しないことを以って接触と判定する。磁気再生信号を表す指標としては、例えばゲイン調整パラメータのゲイン(VGA:ヴァリアブル・ゲイン・アンプリファイア)を用いる。VGAにはサーボ・データのVGA(サーボVGA)と、ユーザ・データのVGA(データVGA)の2種類がある。
第二の手法:磁気再生信号のバラツキ増大、すなわち、接触による摩擦振動(浮上方向)を以って接触と判定する。上述したサーボVGAのゲイン、データVGAのゲインなどの、セクタ間バラツキ、あるいは同セクタで複数回測定した時のバラツキを計算し、接触判定に用いる。
第三の手法:位置決め誤差(PES:ポジション・エラー・シグナル)のバラツキ増大、すなわち、接触による摩擦振動(面内方向)を以って接触と判定する。
第四の手法:ボイスコイルモータ8に印加している電流値のバラツキ増大、すなわち、接触による摩擦振動(面内方向)を以って接触と判定する。
【0042】
[ヒータの使い方(ゾーン)]
磁気ディスク媒体上のゾーンによる浮上量差の補償について説明する。ゾーンによって浮上量は異なる。そのプロファイルは、設計値または実験室におけるサンプルテストによって、平均的なプロファイルを知ることができる。また、出荷前テスト工程で、各ゾーンにおいて、加熱素子通電量を徐々に増やしていって接触検知を行えば、各ヘッドスライダについてプロファイルを個別に求めることができる。製品ではメモリ15に、ゾーン毎の適正加熱素子通電量を、テーブルとして記録してある。記録再生する前のシーク命令がホストから来た時に、記録再生するゾーン情報に基づいて、プリアンプ7の加熱素子制御レジスタの値が適切に更新される。
【0043】
磁気ディスク媒体3を多数のゾーンに分けて制御パラメータを格納する方法が最も高精度であるが、磁気ディスク媒体3の全体に亘って共通の制御パラメータを設定する(すなわちゾーン数が1つだけ)方法でも良い。また、例えば外周部、中周部、内周部の3つなど、少ないゾーン数に分けて制御パラメータを格納し、その間は一次式や二次式などで補間して制御する方法でも良い。
【0044】
[ヒータの使い方(温度)]
環境温度による浮上量差の補償について説明する。環境温度が高いと、記録再生素子の材料と周囲材料との線膨張係数差による熱突出(サーマルプロトルージョン)の影響で、浮上量は低くなる。逆に環境温度が高いと、浮上量は高くなる。本発明の実施形態では環境温度が浮上量に与える影響を実験室であらかじめ調べた結果をもとに、製品ではメモリ15に、温度帯毎の適正加熱素子通電量を、単独の数値(係数)あるいは複数の数値(テーブル)として記録してある。記録再生する前のシーク命令がホストから来た時に、温度センサ9からの情報に基づいて、プリアンプ7の加熱素子制御レジスタの値が適切に更新される。
【0045】
動作補償温度の上限と下限の間は、多数の温度帯に分割してそれぞれの温度帯に対応する制御パラメータを全て格納しても良いし、例えば低温、常温、高温の三温度帯など、限られた数の温度帯の制御パラメータのみを格納して、その間は一次式や二次式で補間して制御しても良い。
【0046】
[ヒータの使い方(動作モード)]
記録・再生などの動作モード別による浮上量差の補償について説明する。記録時は記録電流が加熱素子電流と同様の働きをして熱膨張変形を起こすため、再生時よりも浮上量は低くなる。その低くなる程度(ライトプロトルージョンによる浮上変化量)は、設計値または実験室におけるサンプルテストによって、平均的な値を知ることができる。また、出荷前テスト工程で、連続ライトした直後の再生信号波形振幅と、ライトを伴わない再生信号波形振幅を比べることにより、各ヘッドスライダについてライトプロトルージョンによる浮上変化量を個別に求めることができる。製品ではメモリ15に、ライトプロトルージョンを補正する加熱素子通電量を記録してある。記録再生する前のシーク命令がホストから来た時に、動作モード情報に基づいて、プリアンプ7の加熱素子制御レジスタの値が適切に更新される。
【0047】
[電力テーブル]
以上の加熱素子通電量設定方法をまとめると、図5に示すような通電量テーブルを、出荷前に作成してメモリ15に記録しておく。記録再生する前のシーク命令がホストから来た時に、記録再生するヘッド番号情報とゾーン情報、温度センサ9から出力される温度帯、および動作モード情報に基づいて、プリアンプ7の加熱素子制御レジスタの値が適切に更新される。
【0048】
[加算は電力で]
プリアンプ7の加熱素子制御については、電力制御、電圧制御、電流制御の3種類がある。加熱素子による浮上量変化は、おおむね電力に比例し、電圧または電流の2乗に比例する。したがって、加熱素子への加熱の程度はまず電力で計算する。電力制御の場合は単純な加算でよい。すなわち、個別ヘッドスライダ・ゾーンによる浮上量差、環境温度による浮上量差、および動作モード別による浮上量差それぞれに相当する電力を加算して、トータル電力を算出する。一方、電圧あるいは電流値を使って計算する場合は、それぞれ単独の浮上量差を補償するための電圧あるいは電流の2乗和を計算して、トータル電圧または電流を求める必要がある。
【0049】
[磁気ディスク装置の動作例]
次に、磁気ディスク装置10の動作例について説明する。以下の説明では磁気ディスク装置10のメモリ15には、ヘッド、ゾーン、温度帯ごとに、記録時と再生時とにおける加熱素子5cへの通電量を制御するための値(制御パラメータ)が設定されているものとする。
ナビゲーションシステム30の制御装置31からデータを記録させるコマンドと、記録対象のデータとを受け入れると、HDC13が当該記録対象のデータをリードライトチャネル11に出力するとともに、マイコン14がモータドライバ12に対してコマンドに応じた記録位置に磁気ヘッドスライダ5を移動させる指示を出力する。また、このときマイコン14は、温度センサ9が出力する信号に基づいて環境温度の情報を取得する。そしてマイコン14は、この取得した情報によって表される環境温度の温度帯に対応して、メモリ15に格納されている制御パラメータ(記録時の制御パラメータ)を取得する。マイコン14は、加熱素子5cへの通電量を上記所定値とするべき旨の指示をプリアンプ7に出力する。プリアンプ7は、従って、加熱素子5cへ所定値の通電量の電流供給を行う。そして加熱素子5cが磁気ヘッドスライダ5の記録再生素子近傍を加熱する。
【0050】
一方、リードライトチャネル11は、記録対象のデータを変調した信号をプリアンプ7に出力し、プリアンプ7がこの信号を増幅して磁気ヘッドスライダ5の記録素子5aに出力する。これにより磁気ディスク媒体3に記録対象となったデータが記録される。
【0051】
同様に、制御装置31からデータを再生させるコマンドを受け入れると、HDC13が当該再生のコマンドに基づく再生指示をリードライトチャネル11に出力するとともに、マイコン14がモータドライバ12に対してコマンドに応じた再生位置に磁気ヘッドスライダ5を移動させる指示を出力する。また、このときマイコン14は、温度センサ9が出力する信号に基づいて環境温度の情報を取得する。そしてマイコン14は、この取得した情報によって表される環境温度の温度帯に対応して、メモリ15に格納されている制御パラメータ(再生時の制御パラメータ)を取得する。マイコン14は、加熱素子5cへの通電量を上記所定値とするべき旨の指示をプリアンプ7に出力する。プリアンプ7は従って、加熱素子5cへ所定値の通電量の電流供給を行う。そして加熱素子5cが磁気ヘッドスライダ5の記録再生素子近傍を加熱する。
【0052】
一方、プリアンプ7は、磁気ヘッドスライダ5の再生素子5bが出力する再生信号を増幅してリードライトチャネル11に出力しており、リードライトチャネル11は、プリアンプ7で増幅された信号を復調して、再生データを生成し、HDC13に出力する。HDC13は、この再生データを制御装置31へ出力する。
【0053】
[気圧補償方法]
ここまでに、個別浮上量差、ゾーン、温度、動作モードによる浮上量バラツキ、変動を補償する方法を述べた。ここからは、本発明の実施形態において、気圧変化による浮上量変動を補償する方法について述べる。
空気軸受の作用で浮上している磁気ヘッドスライダの浮上量は、気圧が変われば変化する。現状の磁気ディスク装置は、温度センサを搭載しているが故に、温度情報を得ることができる。動作モードや半径位置の情報も持っている。出荷前テスト工程における個別浮上量の検知(接触検知)によって、個別浮上量差に関する情報も持っている。しかし、気圧についての情報は、磁気ディスク装置単体では得ることができない。気圧センサを磁気ディスク装置に搭載すると、大幅なコストアップの要因となってしまう。
【0054】
一方、ナビゲーションシステム30全体としては、磁気ディスク装置から読み出す地図情報と、位置検出装置33によって得られる位置情報から、高度に関する情報を利用可能である。より具体的には、位置検出装置33の全地球測位システム(GPS)から直接高度情報を得る第一の手法と、GPSからは水平方向位置情報だけを得て、磁気ディスク装置から読み出した地図に含まれる等高線情報から、現位置の高度を求める第二の手法があり、どちらでも本発明の効果は有効に得られる。
【0055】
高度がわかれば気圧も算出できる。ナビゲーションシステムの制御装置31が、「高度あるいは気圧」(以下、単に「高度」と称する)に関する情報を、記憶装置である磁気ディスク装置10に送信すれば、磁気ディスク装置10は気圧に関する情報を得ることができる。しかし、現状の磁気ディスク装置と、そのホストであるナビゲーションシステムの制御装置の間では、高度情報を要求したり、送信したりする規格が存在しない。従って、本実施形態では、制御装置31は高度情報を磁気ディスク装置10の特定の論理アドレスに記録するというコマンドを、特定のタイミングで発するだけとする。磁気ディスク装置10は、決められたタイミングで、自身に記録された高度情報を読み込んで磁気ヘッドスライダ5の浮上量を、加熱装置5cへの通電量を調整することによって調整する。前記「特定の論理アドレス」は、ナビゲーションシステム30と磁気ディスク装置10の開発時に、両者間で予め定めておくものとする。磁気ディスク装置10は、定められた論理アドレスに対応する物理アドレス(シリンダ番号、ヘッド番号、セクタ番号)にアクセスし、高度情報あるいは気圧情報を読み込み、磁気ヘッドスライダ5の浮上量を調整する。
【0056】
前記「特定の論理アドレス」とは、ホストであるナビゲーションシステムの制御装置31からも、磁気ディスク装置10でも、参照可能なアドレスである必要があるのでそのように記述した。図6に、高度情報に割り当てられた論理アドレスが存在する制御装置31で認識する記憶領域と、磁気ディスク装置10が受領した論理アドレスを磁気ディスク装置10にとってのユーザ領域に存在する物理アドレスに変換する様子を模式的に示す。高度情報は、論理アドレスが割り当てられ、ナビゲーションシステムの制御装置31からアクセスできる領域(磁気ディスク装置にとってはリザーブドエリアではなくユーザ領域)に記録される。
【0057】
[記録タイミング]
制御装置31が高度情報を磁気ディスク装置10に記録するタイミングは重要である。車両や人などは、刻々と高度を変える可能性があるからである。タイミングが開きすぎると、実際には高度が上がり気圧が下がって、磁気ヘッドスライダ5の浮上量が低下しているのに、浮上量の調整が間に合わない可能性がある。そのため、制御装置31は、例えば1分など、一定の時間間隔毎に一度、高度情報を磁気ディスク装置10に記録する。現状の磁気ヘッド5の浮上量が、高度上昇(気圧低下)に伴って低減する典型的な割合は、高度3000メートルあたり1.5ナノメートルであるので、100メートルの高度差ならば約0.05ナノメートルの浮上量差となり、ほとんど問題にならない。車両が100メートルを上昇、降下するには概して1分以上は要するであろうから、1分の時間間隔毎ならば十分である。一方、1分に一度、数ミリ秒の短時間で記録するのであれば、地図検索や映像・音楽再生などの他の動作パフォーマンスに与える影響は極めて限定的である。
【0058】
更に望ましくは、常に高度を監視していて、例えばシステムの起動時に比べて100メートル以上など、一定の閾値以上の高度変化があった時には、一定の時間間隔が経過していなくても、高度情報を磁気ディスク装置10に記録するという方法がある。
また、システムの停止前には一度、一定の時間間隔が経過していなくても、最新の高度情報を磁気ディスク装置10に記録することが望ましい。
【0059】
[読み込みタイミング]
磁気ディスク装置10が高度情報を読み込むタイミングは、システムの起動時に一度、あるいは一定の時間間隔毎に一度、あるいはエラーリカバリ動作に入る際に一度である。一定の時間間隔とは、例えば1分とすれば、前述したように十分な頻度である。
【0060】
以上に説明した、ナビゲーションシステム30及び磁気ディスク装置10の起動後の、高度情報の記録タイミング、読み込みタイミングのフローチャートを図7に示す。
【0061】
[高度情報を読みに行く時は安全側に設定]
ここで、システムの起動時、すなわち磁気ディスク装置10にとっても起動する際に、気圧情報が無いので、浮上量をいかにするかという問題が生じる。磁気ディスク装置10が、起動時に種々のプログラムおよびデータをリザーブドエリアから読み込む時はもちろん、自身に記録された高度情報を読み込む際にも、当該ナビゲーションシステム30の仕様に対して最高限度の高度であっても、前記磁気ヘッドスライダ5が磁気ディスク3に接触しないように、磁気ヘッドスライダ5の浮上量を高めに調整する必要がある。望ましくは、加熱素子5cへの印加電力をゼロ、あるいは実質ゼロの微小電力にするのが良い。
【0062】
[高度情報データの記録方法]
磁気ディスク装置10が、制御装置31から送られた高度情報を記録するため、システムの開発時にあらかじめ定められた論理アドレスに記録せよというコマンドを受信した際には、通常のデータを記録する周波数よりも低い周波数で記録すると良い。なぜなら、前述したように、当該データを読み込む際には磁気ヘッドスライダ5の浮上量を高め(加熱素子への印加電力ゼロなど)に調整した場合、通常のデータ記録周波数ではうまく読めない恐れがあるが、低周波なら読み取りエラー率を減らすことができるからである。
【0063】
あるいは、磁気ディスク装置10が、制御装置31から送られた高度情報を記録するため、システムの開発時にあらかじめ定められた論理アドレスに記録せよというコマンドを受信した際には、冗長性を持たせて繰り返し記録すると良い。冗長性があれば、単独では読み取りエラーがあっても、繰り返し読んだ最終的な情報に対するエラーは防ぐことができるからである。
【0064】
上記の高度情報は、最新の一情報だけを上書き記録することを想定したが、最新のいくつか、例えば100回分程度の情報をセットで記録しておけば、故障診断に役立つ可能性がある。
【0065】
[浮上量調整詳細:電力テーブルの修正]
磁気ディスク装置10は、高度情報を読み込んだ後、必要があれば図5に示した電力テーブルを修正する。ただし、前回の高度に比較して一定の閾値以上異ならないなど、修正の必要が無い場合は修正しなくても良い。具体的には、例えば仕様として定められた3000メートルの高度でも接触しないよう設計された磁気ヘッドスライダのステップ軸受(空気軸受)であることを仮定する。また、当該ステップ軸受は、当該ゾーン(半径位置)において高度3000メートルあたり1.5ナノメートルの浮上低下を起こすとする。ここで得られた高度情報が海抜0メートルならば、3000メートルの高度差に相当する1.5ナノメートル分だけ加熱装置5cへの通電量を増やす。得られた高度情報が海抜1500メートルならば、半分の0.75ナノメートル相当分だけ加熱装置5cへの通電量を増やす。得られた高度情報が3000メートルならば、通電量は増やさない。なお、得られた高度情報が仕様限界の3000メートルを越えていて、なお通電量を減らす余地があれば、通電量を更に減らすべきである。
【0066】
磁気ディスク装置10のメモリ15上にある電力テーブルを修正するという方法の他に、電力テーブルはそのままで、実際の記録再生コマンドを受けた時に、マイコン14が、適宜加熱装置5cへの通電量を、気圧に応じて修正するという方法でも本発明の効果は同様に得られる。
【0067】
[不揮発メモリ上の記憶領域を使う]
続いて、磁気ディスク装置の他の構成例をについて、図8を用いて説明する。この磁気ディスク装置は、磁気ディスク上に磁気的に記録する記憶領域と、付属する不揮発半導体メモリ16に記憶する記憶領域を併せ持つハイブリッド型の磁気ディスク装置10′である。
【0068】
システムの開発時にあらかじめ定めた、高度情報が格納される論理アドレスとは、不揮発半導体メモリ16上に配置されている記憶領域の一部である。先に説明した磁気ディスク装置10では、起動時に気圧に関する情報が無いので、浮上量を安全側に設定しなければいけないという問題があったが、このハイブリッド型磁気ディスク装置10′においては、起動時にまず不揮発半導体メモリ16から高度情報を読み込むので、磁気ヘッドスライダ5の浮上量を安全側に設定する必要はない。
【0069】
なお、従来の非ハイブリッド型の磁気ディスク装置から存在するメモリ15についても、EEPROMと呼ばれる不揮発半導体メモリが搭載されており、マイコン14で実行されるプログラム(ファームウェア)の基本部分や、当該プログラムの実行に必要となるデータを格納している。しかし、ホストであるナビゲーションシステムの制御装置31から、EEPROMを指定してデータを書き込むことはできない。
【0070】
[気圧センサを搭載するホスト]
以上、ナビゲーションシステムについて説明したが、ナビゲーションシステムに限らず、燃料噴射制御装置など車両内の他の電子機器、あるいはパーソナルコンピュータなどの携帯用電子機器が、気圧センサを備えている場合、磁気ディスク装置10あるいは10′は自身の内部には気圧センサを搭載せずに、ホスト側から気圧情報を得たいことが想定される。その場合ホストシステムは、気圧センサによる気圧情報を磁気ディスクの特定の論理アドレスに、システムの停止前に一度、あるいは一定の時間間隔毎に一度、あるいは気圧が一定の閾値以上変化した時に一度、記録する。一方磁気ディスク装置10あるいは10′は、起動時に一度、あるいは一定の時間間隔毎に一度、あるいはエラーリカバリ動作に入る際に一度、前記論理アドレスに対応する物理アドレスにアクセスし、高度情報あるいは気圧情報を読み込み、磁気ヘッドスライダの浮上量を調整する。ホスト側から磁気ディスク装置にこうして受け渡しする情報は、気圧情報単独でもGPSや地図情報から得られる高度情報とセットでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明に係るナビゲーションシステムの構成例を表すブロック図である。
【図2】本発明に係る磁気ディスク装置の構成例を表すブロック図である。
【図3】本発明に係る磁気ディスク装置の一部分の構成図と磁気ヘッドスライダの断面図である。
【図4】図2の一部分である加熱素子部分を、図2の右側から見た断面図である。
【図5】本発明に係る磁気ディスク装置の加熱素子通電量を制御する電力テーブルを表す図である。
【図6】高度情報に割り当てられた論理アドレスを磁気ディスク装置のユーザ領域に存在する物理アドレスに変換する様子を模式的に示す図である。
【図7】ナビゲーションシステム及び磁気ディスク装置起動後の、高度情報の記録タイミング、読み込みタイミングを示すフローチャートである。
【図8】磁気ディスク装置の他の構成例を表すブロック図である。
【符号の説明】
【0072】
2…スピンドルモータ、3…磁気ディスク媒体、4…キャリッジアセンブリ、5…磁気ヘッドスライダ、5a…記録素子、5b…再生素子、5c…加熱素子、5d…基板部、5e…絶縁膜、5f…空気軸受面、5g…空気流出端面、6…フレキシブルプリンテッドケーブル、7…プリアンプ、8…ボイスコイルモータ、9…温度センサ、10…磁気ディスク装置、11…リードライトチャネル、12…モータドライバ、13…ハードディスクコントローラ、14…マイコン、15…メモリ、16…不揮発半導体メモリ、30…ナビゲーションシステム、31…制御装置、32…通信装置、33…位置検出装置、34…表示装置、35…入力装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、位置検出装置と、磁気ディスク装置とを備えるナビゲーションシステムであって、
前記磁気ディスク装置は、地図情報を保持する磁気ディスクと、浮上量調整機構を備える磁気ヘッドスライダとを有し、
前記制御装置は、前記位置検出装置によって得られる位置情報から高度情報あるいは気圧情報を取得して、前記磁気ディスク装置に記録し、
前記磁気ディスク装置は自身に記録された高度情報あるいは気圧情報を読み込んで前記磁気ヘッドスライダの浮上量調整機構を制御して、当該磁気ヘッドスライダの浮上量を調整することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記制御装置が、前記位置情報から取得した高度情報あるいは気圧情報を前記磁気ディスク装置に記録するタイミングは、システムの停止前に一度、あるいは一定の時間間隔毎に一度、あるいは高度または気圧が一定の閾値以上変化した時に一度であり、
前記磁気ディスク装置が、前記自身に記録された高度情報あるいは気圧情報を読み込んで前記磁気ヘッドスライダの浮上量を調整するタイミングは、システムの起動時に一度、あるいは一定の時間間隔毎に一度、あるいはエラーリカバリ動作に入る際に一度であることを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記制御装置は、システムの開発時にあらかじめ定められた論理アドレスに、前記位置検出装置から取得した高度情報あるいは気圧情報を書き込むコマンドを出し、前記磁気ディスク装置は、前記あらかじめ定められた論理アドレスに対応する物理アドレスにアクセスし、前記高度情報あるいは気圧情報を書き込むことを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記位置検出装置は、全地球測位システム(GPS)を含み、前記制御装置は前記全地球測位システムから高度情報を取得することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記位置検出装置は、全地球測位システム(GPS)を含み、前記制御装置は前記全地球測位システムから取得した水平方向位置情報と、前記磁気ディスク装置から読み出した地図情報に含まれる等高線情報から現在位置の高度を求めることを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項6】
請求項1に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記磁気ディスク装置が、自身に記録された高度情報あるいは気圧情報を読み込む際には、当該ナビゲーションシステムの仕様に対して最高限度の高度で、最低限度の気圧であっても、前記磁気ヘッドスライダが前記磁気ディスクに接触しないように、前記磁気ヘッドスライダの浮上量を調整することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項7】
請求項3に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記磁気ディスク装置が、前記制御装置から送られた高度情報あるいは気圧情報を記録するために、システムの開発時にあらかじめ定められた論理アドレスに記録せよというコマンドを受信した際には、通常のデータを記録する周波数よりも低い周波数で記録することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項8】
請求項3に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記磁気ディスク装置が、前記制御装置から送られた高度情報あるいは気圧情報を記録するために、システムの開発時にあらかじめ定められた論理アドレスに記録せよというコマンドを受信した際には、冗長性を持たせて繰り返し記録することを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項9】
請求項3に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記磁気ディスク装置が、前記磁気ディスク上に磁気的に記録する記憶領域と、付属する不揮発半導体メモリに記憶する記憶領域を併せ持つハイブリッド型の磁気ディスク装置であり、
システムの開発時にあらかじめ定めた論理アドレスは、前記不揮発半導体メモリ上に配置されている記憶領域の一部であることを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項10】
請求項1に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記浮上量調整機構は、前記磁気ヘッドの記録再生素子近傍に設置された加熱素子であることを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項11】
請求項10に記載のナビゲーションシステムにおいて、
前記磁気ディスク装置が、自身に記録された高度情報あるいは気圧情報を読み込む際には、前記加熱素子への印加電力を実質ゼロにすることを特徴とするナビゲーションシステム。
【請求項12】
磁気ディスクと、浮上量調整機構を備える磁気ヘッドスライダとを有し、
上位装置から受信した高度情報あるいは気圧情報を前記磁気ディスクに記録し、
前記磁気ディスクに記録された高度情報あるいは気圧情報を読み込んで、前記磁気ヘッドスライダの浮上量調整機構を制御して、当該磁気ヘッドスライダの浮上量を調整することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項13】
請求項12に記載の磁気ディスク装置において、前記磁気ディスクに記録された高度情報あるいは気圧情報を読み込んで前記磁気ヘッドスライダの浮上量を調整するタイミングは、起動時に一度、あるいは一定の時間間隔毎に一度、あるいはエラーリカバリ動作に入る際に一度であることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項14】
請求項12に記載の磁気ディスク装置において、
上位装置から指定された論理アドレスに、高度情報あるいは気圧情報を書き込むコマンドを受領した際に、前記論理アドレスに対応する物理アドレスにアクセスし、前記高度情報あるいは気圧情報を書き込むことを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項15】
請求項12に記載の磁気ディスク装置において、
前記磁気ディスクに記録された高度情報あるいは気圧情報を読み込む際には、当該磁気ディスク装置の仕様に対して最高限度の高度で、最低限度の気圧であっても、前記磁気ヘッドスライダが前記磁気ディスクに接触しないように、前記磁気ヘッドスライダの浮上量を調整することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項16】
請求項14に記載の磁気ディスク装置において、
上位装置から指定された論理アドレスに、高度情報あるいは気圧情報を書き込むコマンドを受領した際に、通常のデータを記録する周波数よりも低い周波数で記録することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項17】
請求項14に記載の磁気ディスク装置において、
上位装置から指定された論理アドレスに、高度情報あるいは気圧情報を書き込むコマンドを受領した際に、冗長性を持たせて繰り返し記録することを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項18】
請求項14に記載の磁気ディスク装置において、
さらに不揮発半導体メモリを有し、前記論理アドレスは、前記不揮発半導体メモリ上に配置されている記憶領域の一部であることを特徴とする磁気ディスク装置。
【請求項19】
請求項12に記載の磁気ディスク装置おいて、
前記浮上量調整機構は、前記磁気ヘッドの記録再生素子近傍に設置された加熱素子であることを特徴とする磁気ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−123290(P2009−123290A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296881(P2007−296881)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(503116280)ヒタチグローバルストレージテクノロジーズネザーランドビーブイ (1,121)
【Fターム(参考)】