説明

ナビゲーション装置およびプログラム

【課題】 運転席以外の座席で聞こえるナビゲーション装置の案内音声の音量を抑える。
【解決手段】 車両用ナビゲーション装置は、誘導経路の音声案内において、案内音声データおよび案内音声逆位相データを生成し(ステップ110、120)、その音声案内データに基づく音声と音声案内逆位相データに基づく音声とを同時にそれぞれ運転席スピーカおよび後席スピーカに出力させる(ステップ130、140参照)ることで、車両後席において、運転席スピーカ21から出力される案内音声と後席スピーカ22から出力される案内音声とが同一振幅かつ逆位相で重なるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的地までの誘導経路を案内するための案内音声をスピーカに出力させるためのナビゲーション装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ナビゲーション装置は、楽曲データに基づく音や、目的地までの誘導経路において右左折等の案内を行うための案内音声を、車内のスピーカに出力させるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−93157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、車内の運転者にとっての案内音声は目的地へ行くための必要不可欠な情報である一方、同乗者にとっての案内音声はあまり意味を持たない雑音であることが多く、案内音声の音量が大きいと同乗者にとって耳障りとなる場合がある。
【0004】
本発明は上記点に鑑み、運転席以外の座席で聞こえるナビゲーション装置の案内音声の音量を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、目的地までの誘導経路を案内するための案内音声データを生成する生成手段と、前記案内音声データに基づく案内音声を、第1のスピーカに出力させる第1制御手段と、前記第1制御手段によって前記第1のスピーカが出力する案内音声に対して、運転席以外の座席において逆位相となる音声を、前記第1のスピーカよりも前記運転席以外の座席に近い第2のスピーカに出力する第2制御手段と、を備えたナビゲーション装置である。
【0006】
このようになっているので、本発明のナビゲーション装置によって、第1のスピーカから出力される案内音声は、この第1のスピーカよりも運転席以外の他の座席に近い第2のスピーカから出力される音声と、当該他の座席において逆位相で重なり合うので、当該他の座席で聞こえる案内音声の音量が抑えられる。
【0007】
また、請求項2に記載の発明は、において、目的地までの誘導経路を案内するための案内音声データを生成する生成手段、前記案内音声データに基づく案内音声を、第1のスピーカに出力させる第1制御手段、および、前記第1制御手段によって前記第1のスピーカが出力する案内音声に対して、運転席以外の座席において逆位相となる音声を、前記第1のスピーカよりも前記運転席以外の座席に近い第2のスピーカに出力する第2制御手段として、コンピュータを機能させるプログラムである。このように、プログラムとしても本発明は把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について説明する。図1に、本実施形態に係る車両用ナビゲーション装置1のハードウェア構成を示す。
【0009】
この車両用ナビゲーション装置1は、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13、第1音声出力装置14、第2音声出力装置15、RAM16、ROM17、外部記憶媒体18、およびCPU19を有している。
【0010】
位置検出器11は、いずれも周知の図示しない地磁気センサ、ジャイロスコープ、車速センサ、およびGPS受信機等のセンサを有しており、これらセンサの各々の性質に基づいた、車両の現在位置や向きを特定するための情報をCPU19に出力する。
【0011】
操作スイッチ群12は、車両用ナビゲーション装置1に設けられた複数のメカニカルスイッチ、画像表示装置13の表示面に重ねて設けられたタッチパネル等の入力装置から成り、ユーザによるメカニカルスイッチの押下、タッチパネルのタッチに基づいた信号をCPU19に出力する。
【0012】
画像表示装置13は、CPU19から出力された映像信号に基づいた映像をユーザに表示する。表示映像としては、例えば現在地を中心とする地図等がある。
【0013】
第1音声出力装置14は、CPU19から出力された音データ(例えば音声データや楽曲データ)に基づくアナログ音声信号を直ちに生成し、その信号に増幅等の処理を施した結果の音信号を運転席スピーカ21に出力する。
【0014】
第2音声出力装置15は、CPU19から出力された音データに基づくアナログ音声信号を直ちに生成し、その信号に増幅等の処理を施した結果の音信号を後席スピーカ22に出力する。
【0015】
ここで、運転席スピーカ21および後席スピーカ22の車両内における配置について説明する。運転席スピーカ21と後席スピーカ22との関係は、運転席スピーカ21よりも後席スピーカ22の方が、後席右側(または左側)に近くなっている。また、後席右側(または左側)から見て、運転席スピーカ21および後席スピーカ22は一直線に並んでいる。例えば、運転席スピーカ21は、車両のインストゥルメントパネル中央部に取り付けられており、後席スピーカ22は、運転席シート(または助手席シート)の背面部に、車両後部向きに取り付けられている。
【0016】
外部記憶媒体18は、HDD等の不揮発性の記憶媒体であり、CPU19が読み出して実行するプログラム、経路案内用の地図データ等を記憶している。
【0017】
地図データは、道路片(リンク)および交差点(ノード)の位置、種別、交差点と道路片との接続関係情報等を含む道路データ、および施設データを有している。施設データは、施設毎のエントリを複数有しており、各エントリは、対象とする施設の名称情報、所在位置情報、施設種類情報等を示すデータを有している。
【0018】
CPU(コンピュータに相当する)19は、ROM17および外部記憶媒体18から読み出した車両用ナビゲーション装置1の動作のためのプログラムを実行し、その実行の際にはRAM16、ROM17、および外部記憶媒体18から情報を読み出し、RAM16および外部記憶媒体18に対して情報の書き込みを行い、位置検出器11、操作スイッチ群12、画像表示装置13、第1音声出力装置14、および第2音声出力装置15と信号の授受を行う。
【0019】
CPU19がプログラムを実行することによって行う具体的な処理としては、現在位置特定処理、誘導経路探索処理、経路案内処理等がある。
【0020】
現在位置特定処理は、位置検出器11からの信号に基づいて、周知のマップマッチング等の技術を用いて車両の現在位置や向きを特定する処理である。
【0021】
誘導経路探索処理は、操作スイッチ群12からユーザによる目的地の入力を受け付け、現在位置から当該目的地までの最適な誘導経路を算出する処理である。
【0022】
経路案内処理は、外部記憶媒体18から地図データを読み出し、算出された誘導経路、目的地、経由地および現在位置等をこの地図データの示す地図上に重ねた画像を、画像表示装置13に出力し、案内交差点の手前に自車両が到達した等の必要時に、右折、左折等を指示する案内音声データ等を第1音声出力装置14および第2音声出力装置15に出力する処理である。
【0023】
図2に、この経路案内処理において音声案内データを第1音声出力装置14または第2音声出力装置15に出力するために、CPU19が実行するプログラム100のフローチャートを示す。このプログラム100の実行において、CPU19は、まずステップ110で、案内音声データを生成する。ここで、案内音声データは、時間毎の音声強度を表すデータとなっている。
【0024】
続いてステップ120で、案内音声逆位相データを生成する。音声案内逆位相データは、ステップ110において生成された音声案内データに従った音声が運転席スピーカ21から音声が出力されると同時に、この音声案内逆位相データに従う音声が後席スピーカ22から出力されたとき、特定の位置において、運転席スピーカ21から出力された音声と後席スピーカ22から出力された音声が同一振幅かつ逆位相で重なり合うように、当該案内音声データを加工することによって生成される。ここで、特定の位置は、車両後席右側(または左側)のいずれかにおける特定の位置(例えば平均的な人がその席に座ったときの耳の位置)である。
【0025】
この目的のために行う案内音声データの加工は、遅延処理と振幅調整処理である。遅延処理は、運転席スピーカ21から当該特定の位置までの距離と、後席スピーカ22から当該特定の位置までの距離との差によって生じる音声伝達時刻の差を吸収し、さらに、その特定位置における運転席スピーカ21からの音声と後席スピーカ22からの音声の位相が180度ずれるように、案内音声データの先頭部(すなわち案内音声の発声開始時の部分)に遅延時間分のゼロ強度データを挿入する。この遅延処理において、CPU19が利用する遅延時間のデータは、運転席スピーカ21および後席スピーカ22の設置位置を想定してあらかじめ外部記憶媒体18に記憶されている。あるいは、外部記憶媒体18に、運転席スピーカ21から当該特定の位置までの距離と、後席スピーカ22から当該特定の位置までの距離のデータが記憶されており、CPU19は、このデータに基づいて、遅延時間を計算するようになっていてもよい。
【0026】
振幅調整処理は、運転席スピーカ21から発せられた音声が当該特定の位置に到達するまでに減衰する量と、後席スピーカ22から発せられた音声が当該特定の位置に到達するまでに減衰する量との差を吸収するために、案内音声データの強度を調整する。この遅延処理において、CPU19が利用する強度調整値のデータは、運転席スピーカ21および後席スピーカ22の設置位置を想定してあらかじめ外部記憶媒体18に記憶されている。あるいは、外部記憶媒体18に、運転席スピーカ21から当該特定の位置までの距離と、後席スピーカ22から当該特定の位置までの距離のデータが記憶されており、CPU19は、このデータに基づいて、強度調整値を計算するようになっていてもよい。
【0027】
また、運転席スピーカ21から当該特定の位置までの音響特性(第1音響特性と記す)と、後席スピーカ22から当該特定の位置までの音響特性(第2音響特性)を表すデータが外部記憶媒体18にあらかじめ記憶されている場合、CPU19は、ステップ110で生成された案内音声データに対して、第1音響特性を有するフィルタを作用させ、更に第2音響特性の逆特性を有するフィルタを作用させることで、振幅調整処理を実現してもよい。
【0028】
続いてステップ130では、ステップ110で生成した案内音声データに基づく音声データを運転席スピーカ21に出力させるために、当該案内音声データを第1音声出力装置14に出力する。またステップ140では、ステップ120で生成した案内音声逆位相データに基づく音声データを運転席スピーカ21に出力させるために、当該案内音声逆位相データを第2音声出力装置15に出力する。なお、ステップ130およびステップ140の処理は、同時に行われる。ここでいう同時とは、2つのタイミングのずれが音声信号の振動周期より十分短い期間以下であることをいう。ステップ130、140の後、プログラム100の実行は終了する。
【0029】
以上のようにCPU19がプログラム100を実行することで、車両用ナビゲーション装置1は、誘導経路の音声案内において、案内音声データおよび案内音声逆位相データを生成し(ステップ110、120参照)、その音声案内データに基づく音声と音声案内逆位相データに基づく音声とを同時にそれぞれ第1音声出力装置14および第2音声出力装置15に出力する(ステップ130、140参照)。したがって、車両後席において、運転席スピーカ21から出力される案内音声と後席スピーカ22から出力される案内音声とが同一振幅かつ逆位相で重なるので、当該座席で聞こえる案内音声の音量が抑えられる。
【0030】
なお、上記の実施形態において、運転席スピーカ21が第1のスピーカに相当し、後席スピーカ22が第2のスピーカに相当する。また、CPU19が、プログラム100のステップ110を実行することで生成手段として機能し、ステップ130を実行することで第1制御手段として機能し、ステップ140を実行することで第2制御手段として機能する。
【0031】
(他の実施形態)
なお、上記の実施形態において、運転席スピーカ21および後席スピーカ22の配置は、かならずしもこのようになっておらずともよい。例えば、運転席スピーカ21が運転席脇のドアに取り付けられていてもよい。また、運転席のヘッドレストの前面に運転席スピーカ21が埋め込まれ、運転席のヘッドレストの後面に後席スピーカ22が埋め込まれていてもよい。
【0032】
また、上記の実施形態においては、運転席以外の座席として、車両後席右側(または左側)が例示されているが、運転席以外の座席としては、助手席であってもよい。この場合、例えば運転席のヘッドレストの前面に第1のスピーカが埋め込まれ、運転席のヘッドレストの左面(すなわち助手席側面)に第2のスピーカが埋め込まれていてもよい。またこの場合、運転席脇のドアに第1のスピーカ取り付けられており、助手席側のドアに第2のスピーカが取り付けられていてもよい。
【0033】
また、運転席以外の座席においては、第1のスピーカからの案内音声と第2のスピーカからの案内音声が完全に逆位相となっておらずとも、当該座席で聞こえる案内音声の音量を抑える効果はある程度実現する。また、第1のスピーカからの案内音声と第2のスピーカからの案内音声が完全に同一振幅となっておらずとも、当該座席で聞こえる案内音声の音量を抑える効果はある程度実現する。
【0034】
また、CPU19は、案内音声逆位相データを生成して第2音声出力装置15に出力する処理を常に行わずともよい。例えば赤外線センサ等の乗員検知手段によって、運転席以外の座席に人が座っていることを検知したときのみに、逆位相データに基づく音声を後席スピーカ22に出力させるようになっていてもよい。
【0035】
また、CPU19は、案内音声逆位相データの生成を必ずしも行わずともよい。例えば、CPU19は、生成した案内音声データを第1音声出力装置14および第2音声出力装置15に同時に出力し、第2音声出力装置15は、受けた案内音声データを、上述のステップ130と同じように処理し、その結果のデータに基づく音声信号を後席スピーカ22に出力するようになっていてもよい。
【0036】
また、CPU19は、案内音声データおよび逆位相データを、その案内音声データに基づく音声を出力させる直前に生成してもよいし、誘導経路探索処理の直後にあらかじめ生成しておいてもよい。
【0037】
また、車両用ナビゲーション装置1は、運転席スピーカ21に案内音声を出力させると同時に、音楽を出力させるようになっていてもよい。この場合は、他の座席においては、出力された音のうち、音声案内データの音量だけが抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の車両用ナビゲーション装置1の構成を示す図である。
【図2】CPU19が実行するプログラム100のフローチャートである。
【符号の説明】
【0039】
1…車両用ナビゲーション装置、10…無線通信回路、11…位置検出器、
12…操作スイッチ群、13…画像表示装置、14…第1音声出力装置、
15…第2音声出力装置、16…RAM、17…ROM、18…外部記憶媒体、
19…CPU、21…運転席スピーカ、22…後席スピーカ、100…プログラム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的地までの誘導経路を案内するための案内音声データを生成する生成手段と、
前記案内音声データに基づく案内音声を、第1のスピーカに出力させる第1制御手段と、
前記第1制御手段によって前記第1のスピーカが出力する案内音声に対して、運転席以外の座席において逆位相となる音声を、前記第1のスピーカよりも前記運転席以外の座席に近い第2のスピーカに出力する第2制御手段と、を備えたナビゲーション装置。
【請求項2】
目的地までの誘導経路を案内するための案内音声データを生成する生成手段、
前記案内音声データに基づく案内音声を、第1のスピーカに出力させる第1制御手段、および、
前記第1制御手段によって前記第1のスピーカが出力する案内音声に対して、運転席以外の座席において逆位相となる音声を、前記第1のスピーカよりも前記運転席以外の座席に近い第2のスピーカに出力する第2制御手段として、コンピュータを機能させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−226872(P2006−226872A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−41881(P2005−41881)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】