説明

ナビゲーション装置

【課題】目的地として複数の到着地点を有した施設が設定された場合に適切な案内経路を提供できるナビゲーション装置を提供する。
【解決手段】制御装置2は、目的地として設定された施設が複数の到着地点を有している場合、設定された出発地から各到着地点までの走行経路を探索する経路探索手段23と、この経路探索手段23により複数の走行経路が探索された場合、各走行経路のうち目的地となる施設周辺の道路において車両にUターンをさせる必要がない走行経路を選択し、その選択した走行経路を案内経路として設定する案内経路設定手段24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出発地から目的地に至る経路を道路地図データに基づいて探索するナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ナビゲーション装置においては、ユーザの好みに合った経路を提供可能とするため、様々な工夫がなされている。例えば、特許文献1には、互いに異なる複数の探索条件に基づいてそれぞれ経路を探索し、探索された経路を探索条件を表す名称と対応付けて表示させる技術が開示されている。また、特許文献2には、ユーザにより指定された複数の経由地の全てを、最も効率のよい順に経由し、最終的に目的地に至るような経路を探索する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−337909号公報
【特許文献2】特開2003−083757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ナビゲーション装置は、目的地となる施設の代表地点に基づいて経路探索を行うようになっていることが多い。また、経路探索の目的地となる施設のうち、例えば空港や新幹線の駅などの大きな施設は、駐車場、降車場など、車両の到着地点となり得る施設や場所を複数有している。上記従来のナビゲーション装置を用いてこのような施設への経路を探索した場合、代表地点と駐車場、降車場などいずれかの到着地点とが一致していないと、車両を駐車または停車可能な場所に案内することができない可能性がある。つまり、代表地点は、施設周辺の道路状況等は考慮されず、例えば施設の中心地点に設定されていることが多い。このため、代表地点に至る経路を案内された結果、目的とする施設側の道路とは中央分離帯を挟んで反対側の道路上で経路が終了する場合や、目的地となる施設周辺の道路において車両をUターンさせなければならないような不便な経路が設定される場合など、適切な経路案内を実施できない場合が多い。
【0005】
そこで、複数の駐車場などを持つ施設を目的地として検索した場合には、各駐車場などの施設を一覧表示し、ユーザに対して目的地とする駐車場を選択可能にするということが考えられている。しかし、この場合、例えば表示画面に多くの駐車場が表示されるため、この施設についてよく知らないユーザにとっては、どの駐車場を選択すれば、出発地点から目的地となる施設に容易に到着することができるのかが分かり難い。このため、選択する駐車場によっては、目的地となる施設周辺の道路において車両をUターンさせなければならないような不便な経路が設定されるおそれがある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、目的地として複数の到着地点を有した施設が設定された場合に適切な案内経路を提供できるナビゲーション装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の手段によれば、目的地として複数の到着地点を有した施設が設定された場合には、経路探索手段が出発地から各到着地点のそれぞれに至る経路を探索する。次に、探索された経路の中で、目的地である施設付近の道路において車両をUターンさせる必要のない経路、つまり出発地点から最も最適と考えられる経路が存在する場合、その経路を案内経路として設定する。これにより、施設付近の道路において運転が煩雑になることが抑制された経路が案内経路として設定される。従って、ユーザに対し、目的地である施設に容易に到着することができる適切な案内経路を提供することができる。
【0008】
請求項1記載の手段において、施設付近の道路において車両をUターンさせる必要のない経路が複数探索されることも考えられる。このような場合、請求項2記載の手段を採用するとよい。すなわち、案内経路設定手段は、施設付近の道路において車両をUターンさせる必要のない経路のうち最も距離が短い経路を案内経路として設定する。つまり、最短距離であるということを第2の条件として案内経路を設定する。このように、Uターンが必要でない経路が複数ある場合でも、その中で最も距離が短い経路を選択することで、ユーザに対し、適切な案内経路を提供することができる。
【0009】
請求項1記載の手段において、施設付近の道路において車両をUターンさせる必要のない経路が探索されないことも考えられる。このような場合、請求項3記載の手段を採用するとよい。すなわち、案内経路設定手段は、探索された各経路のうち最も距離が短い経路を案内経路として設定する。つまり、最短距離であるということを第2の条件として案内経路を設定する。このように、いずれの経路を選択してもUターンが必要となる場合でも、その中で最も距離が短い経路を選択することで、ユーザに対し、適切な案内経路を提供することができる。
【0010】
請求項1ないし3のいずれかに記載の手段によれば、施設付近の道路において車両をUターンさせる必要がないという第1の条件または最も距離が短いという第2の条件のいずれか、もしくはこれらの組み合わせにより、案内経路が設定されてしまう。このため、例えば、ユーザが複数の到着地点のうち所定の到着地点に必ず行かなければならない状況でも、その所定の到着地点に至る経路を案内経路として設定できない可能性がある。このような場合、請求項4記載の手段を採用するとよい。すなわち、目的地設定手段により、施設が有する到着地点が目的地として設定されると、経路探索手段は、出発地からその到着地点に至る経路を探索する。これにより、ユーザは、所望の到着地点を目的地として設定できる。従って、たとえユーザが望む到着地点への経路が上記第1および第2の条件を満たす経路でなくとも、その到着地点までの経路を案内経路として設定することができる。
【0011】
請求項5記載の手段によれば、案内経路を設定するための条件を満たす経路が複数存在する場合にいずれか1つを選択可能な経路選択手段を備えている。例えば、経路探索手段により、探索された経路のうち、上記第1および第2の条件を満たす経路が複数存在する場合、いずれを選択した場合であっても適切な案内経路を提供できる。このような場合、ユーザにこれらの中から1つの経路を選択してもらうことにより、ユーザの好みに一層合致した経路案内を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態を示すナビゲーション装置の構成を示すブロック図
【図2】制御装置により実現される機能を示すブロック図
【図3】ナビゲーション機能全体の流れを示すフローチャート
【図4】案内経路設定処理の内容を示すフローチャート
【図5】複数の到着地点を持つ施設を目的地にした場合の案内経路の一例を示す図
【図6】従来技術を示す図5相当図
【図7】多方面から目的地に至る最適な案内経路の一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、車両に搭載されるナビゲーション装置の構成を機能ブロックにより概略的に示している。ナビゲーション装置1は、この装置の動作全般を制御する制御装置2に対して、位置検出器3、地図データ入力器4、外部メモリ5、操作スイッチ群6、リモコンセンサ7、表示装置8および音声コントローラ9が接続された構成を備えている。
【0014】
制御装置2は、CPU、ROM、RAM等を備えたマイクロコンピュータを主体として構成されている。このうち、ROMにはナビゲーション機能のためのプログラム等が格納され、RAMにはプログラム実行時の処理データや地図データ入力器4を介して取得した道路地図データ等が一時的に格納される。
【0015】
位置検出器3は、車両の絶対方位を検出するための地磁気センサ10、車両の相対方位を検出するためのジャイロスコープ11、車両の走行距離を検出する距離センサ12およびGPS(Global Positioning System)用人工衛星からの信号を受信するGPS受信機13から構成されている。位置検出器3は、上記各位置検出要素の検出信号を補間しながら高精度に車両の位置を検出するようになっている。なお、要求される検出精度によってはこれらの一部のみで構成してもよいし、さらに、加速度を検出する加速度センサ等を加えてもよい。
【0016】
地図データ入力器4(地図データ記憶手段に相当)は、CD−ROM、DVD−ROM、ハードディスク、不揮発性の半導体メモリ等のような大容量の情報記憶媒体を利用して各種データを入力するためのものである。この各種データとしては、道路地図データ、目印データ、マップマッチング用データ、施設データなどがある。
【0017】
道路地図データには、道路形状、道路幅、道路種別(一般道、県道、国道、高速道路等)、信号、踏切等のデータが含まれるとともに、その道路地図を表示装置8の画面上に表示するためのデータが含まれている。そして、各道路について一方通行、進入禁止などが設定されている場合には、それら交通規則情報も併せて記録されている。
【0018】
施設データは、ナビゲーション機能における目的地として設定可能な施設に関する情報からなる。すなわち、施設データは、空港、駅等の交通機関、レジャー施設、宿泊施設、公共施設等の施設や、小売店、デパート、レストラン等の各種の店舗、住居やマンション、地名などに関する情報からなる。この施設データには、それらの電話番号や住所、その施設の代表地点(例えば施設の中心地点)の地点情報(緯度および経度等)のデータが含まれている。また、施設データには、その施設を示すランドマーク等を表示装置8の画面上に道路地図に重ね合せて表示するためのデータも含まれている。
【0019】
上述した施設の中には、車両の駐車または停車が可能な駐車場や降車場など、車両の到着地点となり得る施設が付随して設けられているものがある。特に空港や新幹線駅などの大きな施設では、複数の駐車場や降車場などが設けられていることが多い。本実施形態の施設データには、このような施設に付随して設けられる到着地点(駐車場や降車場など)についての地点情報も含まれており、これら到着地点の情報は、それらが設けられている施設の情報と対応付けられている。
【0020】
外部メモリ5は、例えばフラッシュメモリなどのデータ書き換え可能な不揮発性メモリやハードディスクにより構成されている。外部メモリ5は、例えば、地点登録データ、音楽データ、映像データ等の特定データの保存や呼出等を行うために設けられている。
操作スイッチ群6は、表示装置8の画面の近傍に設けられたメカニカルスイッチ、表示装置8の画面上に設けられるタッチパネル等から構成されている。この操作スイッチ群6は、車両の目的地、目的地の検索に必要な情報(目的地検索条件)、通過点などの入力や、表示装置8の画面や表示態様の切り替え(地図縮尺変更、メニュー表示選択、経路探索、経路案内開始、現在位置修正、音量調整等)を行うための各種のコマンドを制御装置2に与えるために設けられている。
【0021】
リモコン14には複数の操作スイッチ(図示せず)が設けられており、そのスイッチ操作によりリモコン14からリモコンセンサ7を介して各種の指令信号(コマンド)が制御装置2に送信される。なお、操作スイッチ群6とリモコン14とは、いずれの操作によっても制御装置2に同様の機能を実行させることが可能となっている。
【0022】
表示装置8は、地図や文字等を表示するためのカラー液晶ディスプレイ等から構成されており、車両の運転席近傍に設置されている。表示装置8の画面には、車両の位置周辺の地図が各種縮尺で表示されるとともに、その表示に重ね合わせて車両の現在位置と進行方向とを示す自車位置マークが表示される。また、目的地までの経路案内の実行時には経路案内用の画面が表示され、ユーザが目的地の検索に必要な情報等を入力したり、目的地の検索や設定を行うための入力用の画面や、各種のメッセージ等も表示される。
【0023】
音声認識装置15は、マイク16を介して入力された音声と内部に記憶する認識用の辞書データとを照合し、入力された音声を認識する。音声コントローラ9は、音声認識装置15を制御して音声認識結果を制御装置2に出力するとともに、認識された音声はスピーカ17を介してトークバック出力する。また、制御装置2からの音声出力指令に基づいて音声出力信号をスピーカ17に出力する。スピーカ17から出力される音声は、案内に関する音声、操作説明に関する音声、音声認識結果に応じたトークバック音声などである。
【0024】
図2は、制御装置2により実現される機能をブロック図により示している。この図2に示すように、制御装置2は、出発地設定手段21、目的地設定手段22、経路探索手段23および案内経路設定手段24としての機能を実現するように構成されている。出発地設定手段21は、操作スイッチ群6、リモコン14などの操作を介してユーザにより出発地が設定された場合には、それを出発地とし、出発地が設定されていない場合には、位置検出器3により検出される車両の現在位置を出発地として設定する。
【0025】
目的地設定手段22は、表示装置8に所定の目的地設定画面を表示させたり、または、目的地設定を促す所定の音声をスピーカ17から出力させる。目的地設定手段22は、操作スイッチ群6、リモコン14などの操作を介してユーザにより設定された地点を目的地として設定する。
【0026】
経路探索手段23は、設定された出発地から設定された目的地に至る最適な走行経路を計算(探索)する。この経路探索の手法としては例えばダイクストラ法が用いられる。経路探索手段23は、目的地として複数の到着地点(駐車場、降車場など)を有している施設が設定された場合、出発地から複数の到着地点のそれぞれに至るまでの走行経路を計算する。
【0027】
案内経路設定手段24は、経路探索手段23により計算された走行経路に基づいて案内経路を設定する。案内経路設定手段24は、経路探索手段23により複数の走行経路が計算された場合、各走行経路から所定の選択条件に従って1つの走行経路を選択し、その選択した走行経路を案内経路として設定する。一方、計算された走行経路が1つの場合には、その走行経路を案内経路として設定する。上記した選択条件とは、詳細は後述するが、目的地となる施設の周辺道路において車両にUターンをさせる必要がないこと(第1の条件)や、最短距離であるということ(第2の条件)などである。
【0028】
案内経路設定手段24は、設定した案内経路と道路地図データ内に含まれる各種情報(道路形状、交差点の情報、踏み切りの情報など)とから、表示装置8の表示画面やスピーカ17から出力する音声による案内動作(例えば交差点での右左折の案内、踏み切りがある旨の注意案内など)に必要な経路案内データを作成するようになっている。
【0029】
次に、上記構成のナビゲーション装置1の動作について、図3〜図7も参照して説明する。
まず、制御装置2を主体として行われるナビゲーション機能全体の流れについて図3のフローチャートに基づいて説明する。ステップA1では、位置検出器3を介して車両の現在位置が検出される。続いて、地図データ入力器4を介して車両の現在位置周辺の道路地図データが取得され(ステップA2)、表示装置8の画面に現在位置周辺の道路地図が表示されるとともに、車両の現在位置と進行方向を示す現在地マークが道路地図に重ね合わせて表示される(ステップA3)。
【0030】
続くステップA4では、目的地が設定されているか否かが判断される。ユーザにより目的地が設定されると(ステップA4で[YES])、ステップA5の案内経路設定処理が実行される。この案内経路設定処理については図4を用いて後述する。一方、目的地の設定がなされない場合(ステップA4で[NO])、ステップA1〜A3が繰り返し実行される。ステップA1〜A3が繰り返し実行されることにより、車両の走行に伴って現在地の表示が道路地図上を移動し、道路地図が車両の位置に応じてスクロール表示される。このとき、車両の現在位置を道路上にのせるマップマッチングが行われる。
【0031】
さて、ステップA5にて案内経路が設定されると、続くステップA6では、設定された案内経路に従う以下のような経路案内処理が実行される。すなわち、ステップA1〜A3と同様の処理が行われることにより、車両の現在位置周辺の道路地図と現在地マークとが表示される。ただし、ここでは、地図上の道路のうち、案内経路に該当する道路は着色等により強調表示される。また、車両が交差点や分岐点に接近した場合など、経路案内が必要となる場合には、これに応じた案内動作が実行される。そして、車両が目的地に到達したことを検出するか、ユーザにより案内中止の指示がなされると、経路案内処理を終了する(エンド)。
【0032】
図4は、上記した案内経路設定処理の内容を示すフローチャートである。まず、ステップA4(図3参照)において設定された目的地が駐車場などの到着地点を有さない例えば住居である場合の案内経路設定処理について説明する。この場合には、従来と同様の案内経路設定処理となる。すなわち、目的地として設定された施設には到着地点が存在しない(ステップB1で[NO])。このため、ステップB2において、出発地から当該施設(の代表地点)に至る走行経路が探索される。続くステップB3では、探索された走行経路が案内経路として設定される。
【0033】
続いて、ステップA4において設定された目的地が複数の到着地点を有する例えば駅である場合の案内経路設定処理について説明する。図5は、複数の到着地点である駐車場を有する駅周辺の道路地図を示している。なお、図5に示す道路地図は、車両右側通行の交通規則が存在すると仮定して作成されている。また、図5中、道路31は、上り線と下り線とが構造的に完全に独立分離された道路、いわゆる2条線となっている。ここでは、このような条件に基づくナビゲーションを前提として説明を行う。図5において、駅32は、3つの駐車場32a〜32cを有している。駅32の代表地点は地点32dとなっている。自車両は道路31上の地点31aに位置しており、この地点31aが出発地として設定されるものとする。
【0034】
この場合、目的地として設定された駅32には、付随する3つの駐車場32a〜32cが存在する(ステップB1で[YES])。このため、ステップB4において、道路地図データから駐車場32a〜32cの地点情報(緯度、経度など)が取得される。そして、出発地である地点31aから駐車場32a〜32cのそれぞれに至る走行経路Ra〜Rcが探索される(ステップB5)。
【0035】
地点31aから駐車場32aに至る走行経路Raは次のようになる。すなわち、走行経路Raは、交差点33で右折した後、駐車場32aを一旦通過して交差点34まで進み、ここでUターンしてから駐車場32aに到着する。最初に駐車場32aを通過するのは、道路31が2条線であり、車両が走行する車線と中央分離帯を挟んで反対側に駐車場32aが位置するためである。
【0036】
地点31aから駐車場32bに至る走行経路Rbは次のようになる。すなわち、走行経路Rbは、交差点33で左折した後、そのまま直進することで駐車場32bに到着する。地点31aから駐車場32cに至る走行経路Rcは、走行経路Rbと同じような経路となる。ただし、走行経路Rcは、走行経路Rbと比べて最後の直進距離が長くなる。
【0037】
続くステップB6〜B8において、探索された走行経路Ra〜Rcの中から所定の選択条件に従って1つの走行経路が選択される。すなわち、各走行経路Ra〜Rcのうち、駅32周辺の道路で車両にUターンさせる必要がないものが存在する場合には、その経路が選択される(第1の条件)。ただし、Uターンさせる必要がないものが複数存在する場合、またはUターンさせる必要がないものが存在しない場合、それぞれの中で最も距離の短い経路が選択される(第2の条件)。
【0038】
ここでは、走行経路RaはUターンを必要とするが、走行経路Rb、RcはUターンを必要としない。つまり、各走行経路のうち、2つの走行経路Rb、RcがUターンを必要としない(ステップB6、B7で[YES])。これら走行経路Rb、Rcの距離を比較すると、走行経路Rbの距離は走行経路Rcの距離より短い。このため、走行経路Rbが選択され(ステップB8)、案内経路として設定される(ステップB3)。
【0039】
さて、ここで、従来のナビゲーション装置、すなわち施設の代表地点を目的地として設定して経路探索を行うナビゲーション装置を用いて、地点31aから駅32に至る走行経路を探索した場合を考えてみる。図6は、このような従来のナビゲーション装置により探索された走行経路を示す図5相当図である。
【0040】
駅32の代表地点32dは、駐車場32aが面しているのと同じ側の道路に面している。このため、従来のナビゲーション装置により探索された走行経路Rdは、走行経路Raと同じような経路となる。つまり、走行経路Rdでは、駅32周辺の道路において車両をUターンさせる必要がある。このような従来のナビゲーション装置の案内によると、駅32周辺での運転が煩雑になるおそれがある。
【0041】
また、地点31a方面から駅32に向かう車両に対する案内看板が交差点33に設けられているとする。一般に、このような現地の案内看板は、Uターンを必要とする経路を案内しない。従って、ここでは、案内看板による案内が、交差点33において左折を指示して駐車場32bに誘導するようになっていると仮定する。この場合、ナビゲーション装置の案内に従うと、交差点33において左折を案内する案内看板の指示に反して右折をしなければならず、ユーザは違和感を感じてしまう。
【0042】
これに対し、本実施形態のナビゲーション装置1を用いた場合、地点31aから駅32の駐車場32bに至る走行経路Rbが案内経路として設定される。つまり、駅32周辺の道路において、車両をUターンさせる必要がなく且つ最短距離で目的地まで到達できる走行経路Rbが案内経路として設定されることになり、駅32周辺での運転が煩雑にならない。さらにこの場合、交差点33において案内看板の案内通りに左折をするため、ユーザは違和感を感じることなく、スムーズに駅32に到着することができる。
【0043】
上記した案内経路設定処理によれば、出発地が地点31aである場合において、駅32に至るまでの最適な案内経路が設定される。ただし、出発地が地点31a以外の地点である場合には、最適となる案内経路が異なる可能性がある。そこで、以下では、多方面から複数の到着地点を有する施設(目的地)に至るまでの案内経路を設定する場合について図7を参照して説明する。図7は、多方面から複数の駐車場を有する駅に至るまでの各案内経路を示している。なお、図7についても、図5および図6と同様、車両右側通行の交通規則が存在するものと仮定している。また、図7において、道路41、42は2条線となっている。
【0044】
図7に示すように、目的地として設定される駅43は、3つの駐車場43a〜43cを有している。まず、自車両が道路41上の地点41aに位置しており、この地点41aが出発地として設定される場合を考えてみる。この場合、駐車場43a〜43cのいずれに案内する経路もUターンを必要としない(ステップB6で[NO])。このため、これら3つの経路のうち最も距離が短い経路を選択する(ステップB8)。ここでは、駐車場43aに案内する走行経路Ra1が最短距離となるため、走行経路Ra1が案内経路として設定される(ステップB3)。
【0045】
続いて、道路44上の地点44aが出発地となる場合を考えてみる。この場合、駐車場43a、43bに案内する経路はUターンを必要としない(ステップB6、B7で[YES])。このため、これら2つの経路のうち距離が短い経路を選択する(ステップB8)。ここでは、駐車場43aに案内する走行経路Ra2が最短距離となるため、走行経路Ra2が案内経路として設定される(ステップB3)。また、道路45上の地点45aが出発地となる場合を考えてみる。この場合、駐車場43cに案内する経路のみUターンを必要としない(ステップB6で[YES]、ステップB7で[NO])。このため、この駐車場43cに案内する走行経路Rc1が案内経路として設定される(ステップB3)。
【0046】
最後に、道路46上の地点46aが出発地となる場合を考えてみる。この場合、駐車場43b、43cに案内する経路はUターンを必要としない(ステップB6、B7で[YES])、このため、これら2つの経路のうち距離が短い経路を選択する(ステップB8)。ここでは、駐車場43bに案内する走行経路Rb1が最短距離となるため、走行経路Rb1が案内経路として設定される(ステップB3)。このように、多方面から目的地である駅43に至る経路を探索する場合であっても、最適な経路が案内経路として設定される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態のナビゲーション装置1は、目的地として設定された施設が複数の到着地点を有している場合、設定された出発地から各到着地点までの走行経路を探索する経路探索手段23と、この経路探索手段23により複数の走行経路が探索された場合、各走行経路のうち目的地となる施設周辺の道路において車両にUターンをさせる必要がない走行経路を選択し、その選択した走行経路を案内経路として設定する案内経路設定手段24とを備えている。つまり、目的地となる施設周辺の道路において運転が煩雑にならない経路が案内経路として設定される。これにより、ユーザに対し、目的地の施設に容易に到着することができる適切な案内経路を提供することができる。
【0048】
また、案内経路設定手段24は、探索された各走行経路のうち、施設周辺の道路において車両にUターンをさせる必要がないものが複数存在する場合、またはUターンをさせる必要がないものが存在しない場合には、それぞれの中で最も距離の短い経路を選択し、その選択した走行経路を案内経路として設定するようにした。同一の施設を目的地に設定した場合でも、出発地として設定される地点が変わると、車両案内のための最適な走行経路は変わる。このため、Uターンを必要としない経路が複数存在する場合や、Uターンを必要とする経路のみとなる場合も考えられる。上記構成によれば、このような場合であっても、ユーザに対し、適切な案内経路を提供することができる。
【0049】
なお、本発明は上記し且つ図面に記載した実施形態に限定されるものではなく、次のような変形または拡張が可能である。
図4のステップB2またはステップB5において、現在地から目的地(施設または各到着地点)に至る走行経路を、指定された条件(例えば推奨、有料道優先、一般道優先、距離優先など)に従ってそれぞれ探索してもよい。その場合、ステップB3において、探索した各走行経路を表示装置8の表示画面などを通じてユーザに提示し、それら走行経路から所望の走行経路を選択してもらう構成とすればよい。
【0050】
目的地設定手段22は、施設に設けられた各到着地点を個別に目的地として設定可能に構成してもよい。その場合、例えば図4のステップB1の前に、目的地として到着地点が設定されているか否かを判断するステップを追加し、到着地点が目的地である場合には出発地から設定された到着地点に至る走行経路を探索し、ステップB3においてその探索した走行経路を案内経路として設定すればよい。このようにすれば、ユーザの希望に沿った駐車場などの到着地点に至る走行経路を案内経路として提供することができる。
【0051】
到着地点は、車両を駐車または停車可能なものに限らず、例えば施設の入口などナビゲーション機能の目的地として設定される可能性があるものであればよい。また、到着地点は、施設に付随するものでなくてもよい。例えばメインの施設が駅である場合、その駅の敷地内に設けられる駅専用の駐車場だけに限らず、例えばその駅周辺に存在するコインパーキングなどを到着地点としてもよい。ただし、その場合、施設データは、駅とコインパーキングとを対応付けたデータとする必要がある。
道路地図データは、複数の到着地点を有する所定の施設付近において車両を当該施設に誘導するための車両誘導情報を含んで構成してもよい。その場合、経路探索手段23は、車両誘導情報の存在する施設が目的地である場合、その車両誘導情報に基づいて経路探索を実行するようにしてもよい。
【0052】
図4のステップB3において走行経路が1つに限定されていない場合、つまり案内経路を設定するための第1の条件(Uターン必要無し)および第2の条件(最短距離)をいずれも満たす走行経路が複数存在する場合、このステップB3の後にいずれか1つの経路をユーザにより選択可能な経路選択ステップを追加してもよい。このようにすれば、いずれの経路を選択しても適切な案内経路を提供できる場合に、ユーザは、それら経路の中から自身の希望に沿った経路を選択することができる。なお、この場合、追加する経路選択ステップを実行する制御装置2が経路選択手段に相当する。
図4のステップB5において、各到着地点に至る走行経路に加えて、目的地である施設の代表地点に至る走行経路も探索するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0053】
図面中、1はナビゲーション装置、2は制御装置(経路選択手段)、4は地図データ入力器(地図データ記憶手段)、21は出発地設定手段、22は目的地設定手段、23は経路探索手段、24案内経路設定手段を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路地図データが記憶された地図データ記憶手段と、
出発地を設定する出発地設定手段と、
目的地を設定する目的地設定手段と、
設定された出発地から設定された目的地に至る経路を前記道路地図データに基づいて探索する経路探索手段と、
前記経路探索手段により探索された経路に基づいて車両を案内するための案内経路を設定する案内経路設定手段とを備え、
前記目的地として複数の到着地点を有した施設が設定された場合には、
前記経路探索手段は、前記出発地から前記複数の到着地点のそれぞれに至る経路を探索し、
前記案内経路設定手段は、前記経路探索手段により探索された各経路に前記施設付近の道路において前記車両にUターンをさせる必要のない経路が存在する場合、その経路を案内経路として設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項2】
請求項1記載のナビゲーション装置において、
前記案内経路設定手段は、前記経路探索手段により探索された各経路に前記施設付近の道路において前記車両にUターンをさせる必要のない経路が複数存在する場合、これら複数の経路のうち最も距離が短い経路を案内経路として設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項3】
請求項1または2記載のナビゲーション装置において、
前記案内経路設定手段は、前記経路探索手段により探索された各経路に前記施設付近の道路において前記車両にUターンをさせる必要のない経路が存在しない場合、前記各経路のうち最も距離が短い経路を案内経路として設定することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載のナビゲーション装置において、
前記目的地設定手段は、複数の到着地点を有する施設の各到着地点を目的地として設定可能に構成され、
前記経路探索手段は、前記目的地設定手段により前記到着地点が目的地として設定されると、前記出発地から設定された到着地点に至る経路を探索することを特徴とするナビゲーション装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかに記載のナビゲーション装置において、
前記案内経路として設定する条件を満たす経路が複数存在する場合にいずれか1つを選択可能な経路選択手段を備え、
前記案内経路設定手段は、前記経路選択手段により選択された経路を案内経路として設定することを特徴とするナビゲーション装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−216848(P2010−216848A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61104(P2009−61104)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】