説明

ハイブリッド車両の制御方法

【課題】エンジンの出力にかかわらず安定したフューエルカット制御を行うハイブリッド車両の制御方法を提供する。
【解決手段】エンジンへの燃料供給の停止を要求してからフューエルカット制御を実行するまでの遅延時間の有無を判定するフューエルカットディレー判定工程(S12)と、エンジンの出力に関する情報に基づいて補正値を算出する補正値算出工程(S16)と、算出した補正値に基づいて補正トルクを出力し、モータのトルク変動を緩和する補正トルク出力工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータとエンジンとを備えるハイブリッド車両の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド車両(HV:Hybrid Vehicle)やいわゆる電気自動車(EV:Electric Vehicle)等の、1または複数のモータからの駆動力により走行する車両がある。このような車両には一般に、電源(バッテリ)を含む電源制御システムが搭載されており、電源の電圧を変換して昇降圧させるコンバータ、コンバータから出力される直流電圧を交流電圧に変換するインバータを介してモータに電力が供給され、インバータが出力する交流電圧に基づいてモータが回転し、車両を駆動させる。
【0003】
1または複数のモータとエンジンとを備えるハイブリッド車両は、走行状態に応じてエンジンとモータとの出力を制御することにより、様々な態様の運用を行うことができる。例えば、エンジンまたはモータのどちらか一方で走行する、エンジンとモータを協調させて走行する、またエンジンの出力の一部によりモータで発電を行うなど様々な態様の運用を行うことができる。さらに、減速時において、駆動輪から入力されるハイブリッド車両の運動エネルギによりモータで回生発電を行うこともできる。
【0004】
一方、エンジンを備える車両では、アクセルを戻した際に燃料の噴射を停止させるフューエルカット制御が知られている。フューエルカット制御の方法としては、所定のフューエルカットの条件が成立してから所定の時間遅延させた後に燃料供給を停止するものや、シフトポジションや走行モードなどの諸条件によっては、遅延時間を短縮し、速やかに燃料供給を停止するものなどが知られている。特に、ハイブリッド車両では、必要に応じてエンジンへの燃料供給を停止させるフューエルカット制御を実行してモータを作動させるモータリング運転に移行すると、車両の燃費改善や排気ガスの低減に有効である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−126115号公報
【特許文献2】特開2007−203900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3は、モータとエンジンとを備えるハイブリッド車両における従来のフューエルカット制御の一例を説明するためのタイミングチャートである。図3の破線に示すように、アクセルを戻してから(アクセル開度saccrが開→閉)所定の時間遅延させた後にフューエルカット(F/C)フラグsxfcallがオフ→オンに切り替わる場合には(F/Cディレーあり)、例えば、フューエルカット制御が実行されるまでの間にエンジンの点火時期を徐々に遅角させることにより、エンジンの出力Pもまた、徐々に低下する。そして、エンジンの回転数Nの程度に応じて、モータの出力トルクを補正するための補正トルクを算出し、出力することによりモータのトルク変動を緩和することで、フューエルカット制御時の衝撃や騒音を低減させることができる。
【0007】
これに対し、図3の実線に示すように、例えば負荷運転からの移行時など、アクセルを戻してからフューエルカットフラグがオフ→オンになるまでの遅延時間がほとんどなく、速やかにフューエルカット制御が実行される場合には(F/Cディレーなし)、エンジンの出力Pは、エンジン駆動時とほとんど変化がない状態である。このとき、上述の場合と同様にエンジンの回転数Nの程度に応じて補正トルクを算出し、出力すると、モータのトルク変動をある程度は緩和するができるが、フューエルカット制御時の衝撃や騒音が十分に低減されない場合が有り得た。
【0008】
本発明は、エンジンの出力Pにかかわらず安定したフューエルカット制御を行うことができるハイブリッド車両の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、モータとエンジンとを備えるハイブリッド車両の制御方法であって、前記エンジンへの燃料供給の停止を要求してからフューエルカット制御を実行するまでの遅延時間の有無を判定するフューエルカットディレー判定工程と、前記エンジンの出力に関する情報に基づいて補正値を算出する補正値算出工程と、算出した補正値に基づいて補正トルクを出力し、前記モータのトルク変動を緩和する補正トルク出力工程と、を含む、ハイブリッド車両の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
エンジンの出力Pにかかわらず安定したフューエルカット制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態におけるハイブリッド車両の制御方法を説明するためのフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態におけるハイブリッド車両のフューエルカット制御を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】従来のフューエルカット制御の一例を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図1及び図2を用いて説明する。図1において、エンジンへの燃料供給の停止が要求されると、まず前処理が行われる(S10)。ここでいう前処理には例えば、点火タイミングの切り替え、EGR(排気ガス再循環装置)の切り替えなどが含まれるが、これらに限定されるものではなく、フューエルカット制御の前段階として必要となるあらゆる処理が含まれうる。
【0013】
次いで、F/Cディレーの有無、つまりF/Cを速やかに行なう(即F/Cする)か否か、を判定する(S12)。即F/Cするか否かは、例えばエンジンの回転数、バッテリの充電状態などの諸条件に基づいて判定することができる。即F/Cする条件が成立した場合には、図2に示すように、F/Cを速やかに行なうか否かを判定するための即F/Cフラグがオフ→オンに切り替わり、アクセルが開→閉に切り替わったことが確認されると速やかに燃料の供給停止を行なう。
【0014】
本発明の実施の形態において、即F/Cフラグは、例えば、エンジン制御・触媒臭対策やフェイルセーフのために用いられている既存のフラグを利用してもよく、また新たに専用のフラグとして設けることも可能である。
【0015】
即F/Cされる場合には、エンジンの出力Pに応じて補正トルクのレートリミット値を算出し(S14)、エンジンの出力Pに応じて補正トルクを算出する(S16)。ここでいうレートリミット値および補正トルクはそれぞれ、例えば、エンジンが吸入する空気量、エンジンの回転数に基づいて算出することができる。図1において、即F/Cされる場合の補正トルクは、例えば実線aのように示すことができる。
【0016】
一方、即F/Cされずに、F/Cディレー有りの場合には、エンジンの回転数Nに応じて補正トルクのレートリミット値を算出し(S18)、エンジンの回転数Nに応じて補正トルクを算出する(S20)。エンジンの出力Pに代えてエンジンの回転数Nを用いることを除き、レートリミット値および補正トルクはそれぞれ、S14、S16と同様に算出することができる。図1において、F/Cディレー有りの場合の補正トルクは、例えば破線bのように示すことができる。
【0017】
エンジンの出力Pまたはエンジンの回転数Nに応じてレートリミット値および補正トルクが算出されると、これらの値に基づいてレート処理が行なわれる(S22)。すなわち、上述の処理において算出した補正トルクに対し、増減レートおよびガードを設定し、かかる設定値に基づいて補正トルクが適切に出力される。これにより、フューエルカット制御時におけるモータのトルク変動を適切に緩和することができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、モータとエンジンとを備えるハイブリッド車両のフューエルカット制御において利用することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータとエンジンとを備えるハイブリッド車両の制御方法であって、
前記エンジンへの燃料供給の停止を要求してからフューエルカット制御を実行するまでの遅延時間の有無を判定するフューエルカットディレー判定工程と、
前記エンジンの出力に関する情報に基づいて補正値を算出する補正値算出工程と、
算出した補正値に基づいて補正トルクを出力し、前記モータのトルク変動を緩和する補正トルク出力工程と、
を含むことを特徴とするハイブリッド車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−162068(P2011−162068A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27255(P2010−27255)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】