説明

ハイブリッド車両の駆動制御装置

【課題】内燃機関を停止させる際に内燃機関が共振することを抑制可能なハイブリッド車両の駆動制御装置を提供する。
【解決手段】キャリアCaに第1クラッチC1を介して内燃機関11が連結され、サンギヤSuに第1MG12が連結され、リングギヤRiに第2MG13が連結された遊星歯車機構16を備え、第1MG12が第2クラッチC2を介して内燃機関11と連結された車両1に適用され、駆動制御装置は第1クラッチC1を係合状態にするとともに第2クラッチC2を解放状態にして内燃機関11及び第2MG13を駆動源とするシリーズパラレルモードから第1クラッチC1を解放状態にし、内燃機関11を停止させて第2MG13を駆動源とするEVモードに切り替える場合、まず第1クラッチC1を解放状態に切り替え、次に第2クラッチC2を係合状態に切り替え、その後第1MG12で内燃機関11の回転数を低下させて内燃機関11を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関及びモータ・ジェネレータを備えたハイブリッド車両に適用され、それら内燃機関及びモータ・ジェネレータの両者を駆動源として車両を走行させているときに所定の機関停止条件が成立した場合に内燃機関を停止させる駆動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動源として内燃機関及びモータ・ジェネレータが搭載され、車両の走行状態に応じてそれら両方の動力で走行するハイブリッド走行モードと、モータ・ジェネレータの動力で走行する電気走行モードとに切り替え可能なハイブリッド車両が知られている。例えば、内燃機関、第1モータ・ジェネレータ、第2モータ・ジェネレータ、及び駆動輪に連結された出力軸が遊星歯車機構に連結され、ハイブリッド走行モードでは内燃機関及び第2モータ・ジェネレータにて走行し、電気走行モードでは第2モータ・ジェネレータにて走行するハイブリッド車両が知られている。このような車両に適用される制御装置として、ハイブリッド走行モードから電気走行モードに切り替える場合に、まず内燃機関と遊星歯車機構との間の第1クラッチを解放し、車両停止後に遊星歯車機構と第1モータ・ジェネレータとの間の第2クラッチを解放し、内燃機関と第1モータ・ジェネレータとの間の第3クラッチを係合して電気走行モードに遷移するものが知られている(特許文献1参照)。その他、本発明に関連する先行技術文献として特許文献2〜4が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−168679号公報
【特許文献2】特開2006−077858号公報
【特許文献3】特開平8−324262号公報
【特許文献4】特開2003−237392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハイブリッド車両では、車両をモータ・ジェネレータのみで走行させる場合に内燃機関を停止させることがある。この際に内燃機関のフリクション等により成り行きで回転数を低下させると内燃機関が共振するおそれがある。特許文献1の制御装置では、走行モードの切り替えに伴って内燃機関を停止させる場合にどのように回転数を低下させるか開示も示唆もされていないため、停止時に内燃機関が共振して振動等が発生するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、内燃機関を停止させる際に内燃機関が共振することを抑制可能なハイブリッド車両の駆動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両の駆動制御装置は、相互に差動回転可能な第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を有する差動機構と、前記第1回転要素と第1クラッチ手段を介して連結された内燃機関と、前記第2回転要素と連結されるとともに第2クラッチ手段を介して前記内燃機関と連結された第1モータ・ジェネレータと、駆動輪に動力を伝達するために設けられて前記第3回転要素と動力伝達可能に接続された出力部と、前記出力部に動力を伝達可能な第2モータ・ジェネレータと、を備え、前記第1クラッチ手段が前記第1回転要素と前記内燃機関との間で動力が伝達される係合状態に切り替えられるとともに前記第2クラッチ手段が前記内燃機関と前記第1モータ・ジェネレータとの間の動力伝達が遮断される解放状態に切り替えられ、かつ前記内燃機関及び前記第2モータ・ジェネレータの両方を駆動源とするシリーズパラレル走行モードと、前記第1クラッチ手段が前記第1回転要素と前記内燃機関との間の動力伝達が遮断される解放状態に切り替えられ、かつ前記内燃機関を停止させて前記第2モータ・ジェネレータを駆動源とする電気走行モードとを要求駆動力に応じて選択的に実行することが可能な駆動装置が搭載されたハイブリッド車両に適用され、前記シリーズパラレル走行モードが実行されているときに前記電気走行モードを実行すべきモード切替条件が成立した場合、まず前記第1クラッチ手段を解放状態に切り替え、次に前記第2クラッチ手段を前記内燃機関と前記第2モータ・ジェネレータとの間で動力が伝達される係合状態に切り替え、その後前記内燃機関の回転数が低下するように前記第1モータ・ジェネレータの動作を制御して前記内燃機関を停止させる機関停止手段を備えた(請求項1)。
【0007】
本発明の駆動制御装置によれば、内燃機関を停止させる場合に第1モータ・ジェネレータにて内燃機関の回転数を低下させるので、内燃機関の回転数を速やかに0に低下させることができる。そのため、内燃機関の共振を抑制できる。
【0008】
本発明の駆動制御装置の一形態において、前記機関停止手段は、前記第1モータ・ジェネレータで回生発電を行うことにより前記内燃機関の回転数を低下させてもよい(請求項2)。この場合、内燃機関を停止させる際に内燃機関から出力された動力の一部をバッテリに充電できる。
【0009】
本発明の駆動制御装置の一形態においては、前記駆動装置が前記電気走行モードを実行している間は前記第2クラッチ手段を係合状態に維持する係合維持手段をさらに備えていてもよい(請求項3)。
このように第2クラッチ手段を係合状態に維持することにより、内燃機関及び第1モータ・ジェネレータの両方のフリクションによって第2回転要素の回転を抑えることができる。そのため、例えば第2モータ・ジェネレータや駆動輪の動力が内燃機関又は第1モータ・ジェネレータに伝達しても第2回転要素が回転することを抑制できる。そのため、この第2回転要素が回転することによって生じる動力の無駄な消費を低減できる。
【発明の効果】
【0010】
以上に説明したように、本発明の駆動制御装置によれば、内燃機関を停止させる場合に第1モータ・ジェネレータで内燃機関の回転数を速やかに0に低下させることができるので、内燃機関の共振を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一形態に係る駆動制御装置が組み込まれた車両のスケルトン図。
【図2】駆動装置にて実行される各モードにおける各クラッチの状態を示す図。
【図3】シリーズパラレルモードにおける駆動装置の共線図。
【図4】EVモードにおける駆動装置の共線図。
【図5】EVモードで車両を後進させているときの駆動装置の共線図。
【図6】シリーズモードにおける駆動装置の共線図。
【図7】エンジン直結モードにおける駆動装置の共線図。
【図8】制御装置が実行するモード切替制御ルーチンを示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一形態に係る駆動制御装置が組み込まれた車両のスケルトン図を示している。この車両1はいわゆるハイブリッド車両として構成されている。車両1には、駆動装置10が搭載されている。駆動装置10は、内燃機関(以下、エンジンと称することがある。)11と、第1モータ・ジェネレータ(以下、第1MGと略称することがある。)12と、第2モータ・ジェネレータ(以下、第2MGと略称することがある。)13とを備えている。エンジン11は、ハイブリッド車両に搭載される周知のものであるため、詳細な説明を省略する。第1MG12及び第2MG13は、電動機及び発電機として機能する周知のものである。第1MG12は、不図示のケースに固定されたステータ12aと、そのステータ12aの内周側に同軸に配置されたロータ12bとを備えている。また、第1MG12は、ロータ12bの回転角に対応した信号を出力する第1回転角センサ12cを備えている。第2MG13も同様に、不図示のケースに固定されたステータ13aと、そのステータ13aの内周側に同軸に配置されたロータ13bと、ロータ13bの回転角に対応した信号を出力する第2回転角センサ13cとを備えている。なお、回転角センサ12c、13cとしては、例えばレゾルバやロータリエンコーダ等の周知のセンサが設けられる。第1MG12及び第2MG13は不図示のバッテリと電気的に接続されている。
【0013】
エンジン11の出力軸14、第1MG12のロータ12b、及び第2MG13のロータ13bは、動力分割機構15と接続されている。動力分割機構15は、差動機構としての遊星歯車機構16を備えている。遊星歯車機構16は、シングルピニオン型の遊星歯車機構であり、外歯歯車であるサンギヤSuと、そのサンギヤSuに対して同軸的に配置された内歯歯車としてのリングギヤRiと、これらのギヤSu、Riに噛み合うピニオンギヤPiを自転可能かつサンギヤSuの周囲を公転可能に保持するキャリアCaとを備えている。サンギヤSuは、第1MG12のロータ12bと連結されている。キャリアCaは、第1クラッチ手段としての第1クラッチC1を介してエンジン11の出力軸14と連結されている。第1クラッチC1は、キャリアCaと出力軸14との間で動力が伝達される係合状態と、その動力伝達が遮断される解放状態に切り替え可能に構成されている。リングギヤRiは、第2MG13のロータ13bと連結されている。また、リングギヤRiの外周にはドライブギヤ17が設けられている。
【0014】
この図に示すようにエンジン11の出力軸14は、第2クラッチ手段としての第2クラッチC2を介して第1MG12のロータ12bと連結されている。第2クラッチC2は、出力軸14とロータ12bとの間で動力が伝達される係合状態と、その動力伝達が遮断される解放状態とに切り替え可能に構成されている。第1クラッチC1及び第2クラッチC2は、摩擦式クラッチでもよいし噛み合い式クラッチでもよい。また、エンジン11の出力軸14は、ワンウェイクラッチ18を介してオイルポンプOPと接続されている。このワンウェイクラッチ18は、エンジン11の運転時に出力軸14が回転する方向の回転は伝達し、逆方向の回転の伝達は阻止する。
【0015】
動力分割機構15には、車両1の駆動輪2に動力を出力するための出力部19が接続されている。出力部19は、ドライブギヤ17と噛み合うとともに中間軸20に固定されたドリブンギヤ21と、中間軸20に固定された出力ギヤ22とを備えている。出力ギヤ22は、駆動輪2に連結されたディファレンシャル機構23のケースに設けられたリングギヤ24と噛み合っている。なお、このように連結されることにより遊星歯車機構16のサンギヤSuが本発明の第2回転要素に、キャリアCaが本発明の第1回転要素に、リングギヤRiが本発明の第3回転要素にそれぞれ相当する。
【0016】
この駆動装置10では、エンジン11、第1MG12、第2MG13、及び各クラッチC1、C2の動作を制御することにより複数のモードが実行される。複数のモードとしては、シリーズパラレルモード、EVモード、シリーズモード、エンジン直結モード、発電モード、及びエンジン始動モードが設定されている。シリーズパラレルモード、EVモード、シリーズモード、及びエンジン直結モードは、車両1を走行させる際に実行される走行モードである。図2は、各モードにおける各クラッチC1、C2の状態を示している。なお、この図において「○」は係合状態を示し、「×」は解放状態を示している。また、図3〜図7は、各走行モードにおける駆動装置10の共線図を示している。なお、図3〜図7において「ENG」はエンジン11を、「MG1」は第1MG12を、「MG2」は第2MG13、「OUT」はドライブギヤ17を、「OP」はオイルポンプをそれぞれ示している。また、「Su」はサンギヤSuを、「Ri」はリングギヤRiを、「Ca」はキャリアCaをそれぞれ示している。そして、縦軸は回転数を示している。
【0017】
図2に示したようにシリーズパラレルモードでは、第1クラッチC1が係合状態に切り替えられ、第2クラッチC2が解放状態に切り替えられる。図3は、このシリーズパラレルモードにおける駆動装置10の共線図を示している。この図に示したようにこのモードでは、エンジン11及び第2MG13の両者の動力で車両1を走行させる。なお、第1MG12の動作は、車両1に要求される駆動力に応じて適宜に制御される。このように車両1を走行させることより、シリーズパラレルモードが本発明のシリーズパラレル走行モードに相当する。
【0018】
EVモードでは、第1クラッチC1が解放状態に切り替えられ、第2クラッチC2が係合状態に切り替えられる。図4は、このEVモードにおける駆動装置10の共線図を示している。この図に示すようにこのモードでは、エンジン11を停止させ、第2MG13の動力で車両1を走行させる。そして、第2クラッチC2が係合状態であり、かつエンジン11が停止しているので、第1MG12も停止状態に維持される。なお、車両1の後進はこのEVモードで実施される。図5は、後進時における駆動装置10の共線図を示している。このように車両1を走行させることにより、EVモードが本発明の電気走行モードに相当する。
【0019】
シリーズモードでは、第1クラッチC1が解放状態に切り替えられ、第2クラッチC2が係合状態に切り替えられる。図6は、シリーズモードにおける駆動装置10の共線図を示している。このモードでは、第2MG13の動力で車両1を走行させる。また、エンジン11で第1MG12を駆動して発電を行い、不図示のバッテリの充電を行う。
【0020】
エンジン直結モードでは、第1クラッチC1及び第2クラッチC2の両方が係合状態に切り替えられる。そのため、このモードではサンギヤSu、キャリアCa、及びリングギヤRiが一体に回転する。図7は、エンジン直結モードにおける駆動装置10の共線図を示している。このモードでは、エンジン11及び第2MG13の両者の動力で車両1を走行させる。
【0021】
発電モードは車両1の停車時に実行されるモードである。このモードでは、第1クラッチC1が解放状態に切り替えられ、第2クラッチC2が係合状態に切り替えられる。そして、エンジン11で第1MG12を駆動して発電を行い、不図示のバッテリの充電を行う。エンジン始動モードは、エンジン11の停止時に実行されるモードである。このモードでも、第1クラッチC1が解放状態に切り替えられ、第2クラッチC2が係合状態に切り替えられる。また、このモードでは第1MG12を電動機として機能させ、第1MG12でエンジン11のクランキングを行う。そして、これによりエンジン11の始動を行う。
【0022】
駆動装置10の動作は制御装置30にて制御される。制御装置30は、駆動装置10の各部を制御するコンピュータとして構成され、エンジン11の始動及び停止制御、エンジン11の出力制御、各MG12、13の出力制御、及び各クラッチC1、C2の動作制御等の種々の制御を実行する。また、制御装置30は車両1への要求駆動力に応じて駆動装置10のモードを切り替える。制御装置30は、例えばアクセル開度が所定の判定開度以上の場合には駆動装置10のモードをシリーズパラレルモードに切り替え、アクセル開度が判定開度未満の場合にはモードをEVモードに切り替える。また、制御装置30は、EVモードのときに不図示のバッテリの充電率が予め設定した判定値未満になると駆動装置10のモードをシリーズモードに切り替える。制御装置30には、これらの制御を行うため車両1の走行状態を取得する各種のセンサが接続されている。例えば、エンジン11の出力軸14の回転速度に対応した信号を出力するクランク角センサ31及びアクセル開度に対応した信号を出力するアクセル開度センサ32等が接続されている。また、制御装置30には、第1回転角センサ12c及び第2回転角センサ13cも接続されている。制御装置30には、これら以外にも種々のセンサが接続されているがそれらの図示は省略した。
【0023】
制御装置30は、例えば駆動装置10がEVモードを実行しているときに車両1への要求駆動量が増加した場合は、まずエンジン始動モードを実行する。続いて第1MG12でエンジン11の回転数をリングギヤRiの回転数に同期させ、回転数が同期した後に第1クラッチC1を係合状態に切り替える。これにより駆動装置10のモードがエンジン直結モードに切り替わる。その後、第2クラッチC2を解放状態に切り替える。これにより駆動装置10のモードがシリーズパラレルモードに切り替わる、このように制御装置30は、EVモードが実行されているときに要求駆動力が増加すると駆動装置10のモードをEVモードからエンジン直結モードを経てシリーズパラレルモードに切り替える。
【0024】
また、制御装置30は、EVモード又はシリーズモードが実行されているときに車両1に対して急加速が要求された場合には、モードをエンジン直結モードに切り替える。この際の手順は上述した駆動装置10のモードをEVモードからシリーズパラレルモードに切り替える場合と殆ど同じである。すなわち、制御装置30は、急加速が要求されるとまずエンジン始動モードを実行し、続いて第1MG12でエンジン11の回転数をリングギヤRiの回転数に同期させる。その後、第1クラッチC1を係合状態に切り替えて駆動装置10のモードをエンジン直結モードに切り替える。なお、エンジン直結モードに切り替えた後は必要に応じてモードをシリーズパラレルモードに切り替える。
【0025】
このように制御装置30は、要求駆動力に応じて駆動装置10のモードを適宜に切り替える。この他、制御装置30は図8に示したモード切替制御ルーチンを実行して駆動装置10のモードをシリーズパラレルモードからEVモードに切り替える。制御装置30は、この制御ルーチンを車両1の走行中に所定の周期で繰り返し実行する。なお、この制御ルーチンは制御装置30が実行する他の制御ルーチンと並行に実行される。
【0026】
この制御ルーチンにおいて制御装置30は、まずステップS11で車両1の走行状態を取得する。車両1の走行状態としては、例えばエンジン11の回転数及びアクセル開度等が取得される。次のステップS12において制御装置30は、駆動装置10のモードがシリーズパラレルモードか否か判定する。駆動装置10のモードがシリーズパラレルモード以外のモードであると判定した場合は今回の制御ルーチンを終了する。
【0027】
一方、駆動装置10のモードがシリーズパラレルモードであると判定した場合はステップS13に進み、制御装置30は駆動装置10のモードをシリーズパラレルモードからEVモードに切り替えるモード切替条件が成立したか否か判定する。上述したようにモード切替条件は、アクセル開度が判定開度未満の場合に成立したと判定される。モード切替条件が不成立と判定した場合は今回の制御ルーチンを終了する。
【0028】
一方、モード切替条件が成立したと判定した場合はステップS14に進み、制御装置30は第1クラッチC1を解放状態に切り替える。続くステップS15において制御装置30は、第1MG12の回転数をエンジン11の回転数に同期させる回転数同期制御を実行する。回転数の同期は、クランク角センサ31の出力信号及び第1回転角センサ12cの出力信号に基づいて第1MG12の回転数を調整することにより行われる。次のステップS16において制御装置30は、第1MG12の回転数とエンジン11の回転数とが同期したか否か判定する。この判定は、例えば第1MG12の回転数とエンジン11の回転数との差が予め設定した所定範囲内の場合に回転数が同期したと判定すればよい。なお、所定範囲には、例えば第2クラッチC2を係合状態に切り替えることが可能な回転数範囲が設定される。回転数が同期していないと判定した場合はステップS15に戻り、回転数が同期するまでステップS15、S16を繰り返し実行する。
【0029】
一方、回転数が同期したと判定した場合はステップS17に進み、制御装置30は第2クラッチC2を係合状態に切り替える。次のステップS18において制御装置30は、エンジン11を減速及び停止させるための減速停止制御を実行する。この減速停止制御では、まずエンジン11への燃料供給が停止される。その後、第1MG12を発電機として動作させ、回生発電を行うことによりエンジン11の回転数を低下させる。そして、これによりエンジン11を停止させる。その後、今回の制御ルーチンを終了する。
【0030】
以上説明したように本発明の駆動制御装置では、駆動装置10のモードをシリーズパラレルモードからEVモードに切り替えるためにエンジン11を停止させる場合には第1MG12によってエンジン11の回転数を低下させるので、エンジン11の回転数を速やか低下させて0にすることができる。そのため、エンジン11の共振を抑制できる。また、このようにエンジン11の回転数を第1MG12によって速やかに0にすることにより、モード移行時に駆動装置10の各回転要素が引きずられて回転することによって生じるエネルギ損失、いわゆる引きずり損失を低減できる。さらに、第1MG12に回生発電を行わせることによってエンジン11の回転数を低下させるので、エンジン11を停止させる際にエンジン11から出力された動力の一部をバッテリに充電できる。そのため、駆動装置10で無駄に消費されるエネルギを低減できる。図8を実行してこのようにエンジン11を停止させることにより、制御装置30が本発明の機関停止手段として機能する。
【0031】
本発明の駆動制御装置では、EVモードの場合に第2クラッチC2を係合状態に維持するので、エンジン11及び第1MG12の両方のフリクションによってサンギヤSuの回転を抑えることができる。そのため、リングギヤRiに大きなトルクが入力されたり第2MG13や駆動輪2の動力がエンジン11又は第1MG12に伝達されたりしてもサンギヤSuの回転を抑制できる。従って、サンギヤSuが回転することによって生じる引きずり損失を低減できる。なお、このようにEVモードにおいて第2クラッチC2を係合状態に維持することにより、制御装置30が本発明の係合維持手段として機能する。
【0032】
上述した形態の駆動装置10では、エンジン11の出力軸14及びキャリアCaにワンウェイクラッチ18を介してオイルポンプOPを連結したので、図3〜図7に示したように車両1の後進時以外はオイルポンプOPを回転駆動することができる。そのため、車両1の走行時にオイルを供給すべき箇所に適切にオイルを供給することができる。
【0033】
上述したように本発明では、駆動装置10のモードをEVモード又はシリーズモードからシリーズパラレルモードに切り替える場合には、まずエンジン11を始動し、続いて第1MG12でエンジン11の回転数をリングギヤRiの回転数に同期させる。そして、同期後に第1クラッチC1を係合状態に切り替え、その後第2クラッチC2を解放状態に切り替える。このような手順でモードの切り替えを行うことにより、エンジン11はトルクを出力し続け、第1MG12がそのトルクの反力を受け続けばよいため、エンジン11の出力を細かく調整する必要がない。そのため、制御を簡略化できる。また、エンジン11の回転数をリングギヤRiの回転数と同期させる場合には、エンジン11の回転数は第1MG12の第1回転角センサ12cで、リングギヤRiの回転数は第2MG13の第2回転角センサ13cで検出することができる。そのため、回転数を検出するためのセンサを新規に設ける必要がない。
【0034】
また、本発明ではEVモード又はシリーズモードのときに急加速が要求された場合にはモードをエンジン直結モードに切り替えるので、エンジン11、第1MG12、及び第2MG13を駆動源として使用することができる。また、上述したようにこの際には第2クラッチC2の操作が不要であるため、速やかにモードを切り替えることができる。また、第1MG12にてエンジン11の回転数をリングギヤRiの回転数と同期させるので、これらの回転数を迅速に同期させることができる。そのため、急加速時のタイムラグを短縮できる。
【0035】
駆動装置10の各クラッチC1、C2は、非制御時に係合状態又は解放状態に切り替わるものであってもよい。例えば、駆動装置10のモードのうちEVモードが他のモードよりも実行される頻度が多いと予想される場合には、第1クラッチC1を非制御時に解放状態に切り替わるノーマリーオープン型のものとし、第2クラッチC2を非制御時に係合状態に切り替わるノーマリークローズ型のものとしてもよい。この場合、EVモードでは各クラッチC1、C2に対して制御を行う必要がないので、各クラッチC1、C2の制御を簡略化できる。また、各クラッチC1、C2を各状態に維持するためのエネルギが不要となるため、エネルギ効率を改善できる。
【0036】
本発明は、上述した形態に限定されることなく、種々の形態にて実施することができる。例えば、第1MGでエンジンの回転数を低下させる際には第1MGを電動機として機能させ、第1MGからトルクを出力してエンジンの回転数を低下させてもよい。本発明は、シングルピニオン型の代わりにダブルピニオン型の遊星歯車機構が設けられた駆動装置や複数の遊星歯車機構が設けられた駆動装置を備えた車両に適用してもよい。さらに、遊星歯車機構の各回転要素とエンジン、第1MG、及び第2MGとの連結の組み合わせは上述した形態のものに限定されず、遊星歯車機構の種類や個数に応じて適宜に変更してよい。
【符号の説明】
【0037】
1 車両
2 駆動輪
10 駆動装置
11 内燃機関
12 第1モータ・ジェネレータ
13 第2モータ・ジェネレータ
16 遊星歯車機構(差動機構)
19 出力部
30 制御装置(機関停止手段、係合維持手段)
C1 第1クラッチ(第1クラッチ手段)
C2 第2クラッチ(第2クラッチ手段)
Su サンギヤ(第2回転要素)
Ca キャリア(第1回転要素)
Ri リングギヤ(第3回転要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に差動回転可能な第1回転要素、第2回転要素、及び第3回転要素を有する差動機構と、前記第1回転要素と第1クラッチ手段を介して連結された内燃機関と、前記第2回転要素と連結されるとともに第2クラッチ手段を介して前記内燃機関と連結された第1モータ・ジェネレータと、駆動輪に動力を伝達するために設けられて前記第3回転要素と動力伝達可能に接続された出力部と、前記出力部に動力を伝達可能な第2モータ・ジェネレータと、を備え、
前記第1クラッチ手段が前記第1回転要素と前記内燃機関との間で動力が伝達される係合状態に切り替えられるとともに前記第2クラッチ手段が前記内燃機関と前記第1モータ・ジェネレータとの間の動力伝達が遮断される解放状態に切り替えられ、かつ前記内燃機関及び前記第2モータ・ジェネレータの両方を駆動源とするシリーズパラレル走行モードと、前記第1クラッチ手段が前記第1回転要素と前記内燃機関との間の動力伝達が遮断される解放状態に切り替えられ、かつ前記内燃機関を停止させて前記第2モータ・ジェネレータを駆動源とする電気走行モードとを要求駆動力に応じて選択的に実行することが可能な駆動装置が搭載されたハイブリッド車両に適用され、
前記シリーズパラレル走行モードが実行されているときに前記電気走行モードを実行すべきモード切替条件が成立した場合、まず前記第1クラッチ手段を解放状態に切り替え、次に前記第2クラッチ手段を前記内燃機関と前記第2モータ・ジェネレータとの間で動力が伝達される係合状態に切り替え、その後前記内燃機関の回転数が低下するように前記第1モータ・ジェネレータの動作を制御して前記内燃機関を停止させる機関停止手段を備えた駆動制御装置。
【請求項2】
前記機関停止手段は、前記第1モータ・ジェネレータで回生発電を行うことにより前記内燃機関の回転数を低下させる請求項1に記載の駆動制御装置。
【請求項3】
前記駆動装置が前記電気走行モードを実行している間は前記第2クラッチ手段を係合状態に維持する係合維持手段をさらに備えている請求項1又は2に記載の駆動制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−71699(P2012−71699A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218446(P2010−218446)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】