説明

ハイブリッド電気自動車用給熱システム

【課題】電気モータと燃料使用発電機を有するハイブリッド電気自動車において、乗員の快適度を高めるためのヒータを備え、低燃費であり操作が容易でかつ効率の高い給熱システムを提供する。
【解決手段】ハイブリッド電気自動車はトラクション電池とトラクション電池を充電する補助または二次電源16により駆動されるトラクション・モータ40を有する。寒冷な天候の時に乗員室を暖房するために、トラクション・モータ40と二次電源16から給熱する。条件によっては、乗員室を適度に暖房するには熱が不十分なこともある。その場合、不足分を補うためにトラクション・モータ40の効率を低下し、より多くの熱を発生させる。トラクション・モータ40が交流モータである実施例においては、モータに直流電圧を印加することで効率を低下させる。交流モータが誘導モータである実施例においては、平均スリップ周波数を増大させることで、効率を低下させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータと燃料使用発電機を有するハイブリッド電気自動車に関し、特に乗員の快適度を高めるためのヒータを備えたハイブリッド電気自動車に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリッド電気自動車は、低公害自動車の中ではもっとも実用的なものとして広く研究されている。ハイブリッド電気自動車は、また、自動車の車輪を駆動する、電気トラクションモータに電力を供給する電気「トラクション」(traction)電池を備える。ハイブリッド電気自動車の「ハイブリッド」(hybrid)な面は、自動車の駆動中にトラクション電池を再充電するために、電気エネルギーの二次もしくは補助電源を使用する点にある。この電気エネルギーの二次電源は太陽電池パネル、燃料電池、内燃機関・発電機、または一般的なその他の電気エネルギー源でもよい。内燃機関を電気エネルギーの二次電源として使用する場合は、少量の燃料を使用し低公害である比較的小型の機関(エンジン)を使用するのが一般的である。それに伴う利点は、このような小型内燃機関は限られたRPM(毎分回転数)の範囲で駆動できるので、エンジンの公害(汚染)防止効果が最適化されることである。
【0003】
「一次」および「二次」の用語は、電気エネルギー源を説明するのに使用される場合には、単に駆動中に配分されるエネルギーのルートに関するだけで、本発明における基礎的な重要性を意味するものではない。電池のみを動力源とする純粋な電気駆動自動車では、自動車が電池充電ステーション(battery charging station)から遠く離れている時に電池が消耗してしまうかもしれず、一日中使用したあとで無事にデポ(depot:駐車場)に戻ることができた場合でも、電池を再充電しなくてはならないという欠点がある。ハイブリッド電気自動車は純粋な電気駆動自動車に対して大きな利点がある。すなわち、ハイブリッド電気自動車は駆動中に電池を再充電するので、通常は外部からの電池充電を必要としない点である。したがって、ハイブリッド電気自動車は、燃料の補給を必要とする、内燃機関を動力源とする通常の自動車と同様に使用できる。
【0004】
ハイブリッド電気自動車のもう1つの主な利点は、燃費が良いことである。この燃費における利点は、少なくとも制動の一部で運動の機械的エネルギーを電気に変換し電池にエネルギーを戻す、回生発電制動(regenerative dynamic braking:ダイナミック・ブレーキ)を使用していることによる。都市輸送という条件下で自動車における全摩擦損失のほぼ半分にあたるのが制動損失であるということは既に知られている。この50%のエネルギーを復元し、再使用のために電池に戻すことによって、回生発電制動を使用しない場合に比べ、はるかに小型の「二次」燃料使用発電機を使用することが可能になる。また、より小型の二次電源を使用することで単位時間毎またはマイル毎の使用燃料を少なくできる。さらにハイブリッド電気自動車の他の1つの利点は、多くの条件下で、自動車を加速するために使用できる動力が、電池が供給する最大出力と二次発電機が発生する最大出力の合計である点である。発電機がディーゼル内燃機関である場合、電池の出力とディーゼル出力を組み合わせることで、非常に大きな総出力が得られるにも関わらず低燃費である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド電気自動車は経済的にも環境的にも利点が多い一方で、広く受け入れられるためには、その運転および運転者の入力に対する反応の両方が、従来の内燃機関動力自動車と同様に「誰でもできるほど簡単」(foolproof)でなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明によるハイブリッド電気自動車は、機械的運転に応じて前記自動車を動作させる機械運転装置を有する。電気トラクション・モータ(tractionmotor)は前記機械運転装置に結合され、付勢されたときに前記機械運転装置を機械的に運転し、それにより前記自動車を運転する。ハイブリッド電気自動車はさらに電気エネルギー蓄電部(トラクション電池であってもよい)と、前記電気エネルギー蓄電部および前記トラクション・モータに結合され前記トラクション・モータを制御可能に付勢する制御部を有する。前記トラクション・モータに付勢することで前記機械運転装置の前記機械的運転が行われる。ハイブリッド電気自動車は、燃料をたとえばタンクに入れて運搬する。制御可能な電気エネルギー源、たとえば燃料電池や内燃機関・発電機、は前記燃料源および少なくとも前記制御部に結合され、前記燃料を使用して、前記トラクション・モータの駆動または前記電気エネルギー蓄電部への蓄電、またはその両方を行うために、電気エネルギーを発生させる。前記電気エネルギー源と前記トラクション・モータを作動させることにより、不可避的に熱が発生する。ハイブリッド電気自動車は、乗員室と、前記乗員室、前記電気エネルギー源および前記トラクション・モータに結合され、前記乗員室を適温に維持するため、前記熱を前記乗員室に制御可能に結合する熱交換手段を有する。寒冷な天候のときは、前記電気エネルギー源と前記トラクション・モータにより発生した前記熱では前記乗員室の適温を維持するのには不十分なことがある。制御装置が前記制御部に連結され、第1の効率範囲を画定する第1の状態で前記トラクション・モータを駆動し、前記乗員室の適温を維持するのに必要な場合には、前記第1の状態の前記効率範囲よりも低い効率範囲を有する第2の状態で前記トラクション・モータを作動し、より多くの熱を前記トラクション・モータから発生させ、この追加熱は前記乗員室に使用することができる。本発明の1つの実施例によれば、前記トラクション・モータは交流モータであって、前記制御部は、前記電池と前記交流モータに結合され、前記直流電圧を前記交流モータのための交流電流に制御可能に変換する、直流−交流インバータを含む。本実施例の前記制御装置は前記第2の状態で前記交流モータに流す大量の直流電流を発生させる直流電流制御装置を含む。
【0007】
本発明の他の1つの実施例によれば、前記電気エネルギー蓄電部は直流電圧を発生させる電池を含み、前記トラクション・モータは交流誘導モータである。本実施例において、前記制御部は、前記電池と前記交流モータに結合され、前記直流電圧を前記交流モータのための可変周波数交流電流に制御可能に変換し、それにより前記第1の作動状態で前記誘導モータを、スリップ周波数の第1の範囲分だけ交流電流ドライブの周波数より少ない周波数で回転させる、直流−交流インバータを含む。本実施例において、前記制御装置は、最高周波数が前記第1の範囲の最高周波数より高い第2の範囲を、前記スリップ周波数がしめる、前記第2の作動状態で作動する装置を含む。本発明の他の1つの実施例によれば、電気自動車は、付勢されたときに、自動車を運転する電気トラクション・モータと、直流電圧蓄電部、たとえば電池、を有する。制御部は前記直流電圧蓄電部および前記トラクション・モータに結合されている。前記制御部は、前記トラクション・モータを駆動する交流電圧を制御可能に発生させる直流−交流インバータを含む。前記直流−交流インバータは運転中に熱を発生させる。電気自動車は、乗員室と、前記乗員室および前記インバータに結合され、前記インバータの熱の少なくともいくらかを前記乗員室に結合する流体熱伝導手段を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明による制御を実行するコマンド制御部と動力制御部を備えた、本発明の1つの特徴によるハイブリッド電気自動車の簡略化したブロック図である。
【図2】図2は、図1の動力制御部の詳細を示す簡略化したブロック図である。
【図3】図3は本発明の1つの特徴による温度制御システムの簡略化したブロック図である。
【図4】図4は、適正な作動モードを決定し、モータ効率を設定するため、図1および図2のコマンド制御部により実行される論理を示す簡略化したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例について、添付の図面を参照して詳細に説明する。
図1において、ハイブリッド電気自動車10は、ギアボックス(変則装置)40dを介して交流電圧電気トラクション・モータ40、本発明の1つの実施例では3位相交流モータ(three-phase alternating current motor)、に接続された少なくとも1つの車輪12を有する。モータ40は公知のモータ発電機であり、発電制動中、運動の機械的エネルギーを電気エネルギーに変換する。動力制御部14は、動力ハンドリング(power handling)パスを介してトラクション・モータ40、トラクション電池20、ブロック16で示される補助または二次電源に接続される。ブロック16に示されるように、補助電源は、発電機22を駆動させるディーゼルエンジン18等の内燃機関、または燃料電池24を備えてもよい。両方ともタンク18tの燃料を使用する。ブロック50で示されるコマンド(指令)制御部は、コマンド制御部50にプログラムされた適切な制御法則にしたがって、動力制御部14、補助電源16、およびトラクション・モータ40の動作を制御するために、情報パスを介して動力制御部14、補助電源16、およびトラクション・モータ40に接続される。
【0010】
比較的高出力を蓄電できる最も一般的で安価なタイプの電池は、一般的な鉛蓄電池(lead/H2SO4 battery)からなるものである。電池が最大容量まで充電されているときに充電電流を印加しないように注意すれば、また電解質のガス化と望ましくない熱の発生を防止するようにすれば、さらに硫酸化を避けることができれば、安全性のためにゲルタイプの電解質を使用する、このタイプの電池は電気自動車での使用に適している。
【0011】
図1において、自動車10の表示部と運転者制御部はブロック30で示されている。運転コマンドをコマンド制御部50に与えるため、ブロック30が双方向データパス31を介してコマンド制御ブロック50に接続されていることが示されている。コマンド制御部50は、運転コマンドを動力制御部14、補助電源16、およびトラクション・モータ40等の電力装置に対する適切なコマンドに変換する。さらに、ブレーキペダル30aに接続された従来のハイドリック・ブレーキ(液圧ブレーキ)システムによるフリクション・ブレーキ(摩擦制動)の直接制御を行うため、ブロック30がパス34を介してフリクション・ブレーキ36a,36bに接続されていることが示されている。
【0012】
図2は図1の動力制御部14の要素と図1の他の要素との相互接続を示すものである。特に、(もし必要であれば)補助電源16の交流電流出力を直流電圧に変換するために、動力制御部14は補助電源16に接続された整流装置26を有する。動力制御部14はさらに、電池20、整流装置26、およびトラクション・モータ40に電力接続で結合された双方向直流−交流インバータ28を有する。信頼性を維持するためにスイッチから熱を逃がすため、少なくともインバータ28の電力スイッチは蓄熱槽28hに接続される。上記のように、インバータ28、補助電源16、トラクション・モータ40の動作はコマンド制御部50により制御される。
【0013】
図1および図2の装置の基本的動作は、以下の通りである。コマンド制御部(50)がインバータ28の各スイッチ(図示せず)を切り替えパルス幅コマンド(switched pulse-width command)により制御し、その結果、トラクション・モータ40に結合されたインバータ28のポート28mで、選択された周波数と大きさを有する交流電圧に、量的に近似する電圧が発生する。トラクション・モータ40によりコマンド(指令)された交流電流の周波数と大きさは、選択されたモータ速度で選択されたトラクション電流によって、モータを駆動するするように選択されている。通常、トラクション・モータ40は、モータ速度が上がるにしたがって増大する逆起電力(back EMF)を発生させるので、インバータは(コマンド制御部50の制御下では)同様のトラクション・モータ駆動電流を維持するためにより高い周波数でより多くの交流電圧を発生させなければならない。モータはインバータ出力のコマンド(指令)周波数に一致した周波数で回転する。また、図1および図2の電気自動車の基本的動作においては、発電制動ブレーキ(ダイナミック・ブレーキ)と摩擦制動ブレーキ(friction brake:フリクション・ブレーキ)の両方が作動される。発電機として機能しているトラクション・モータにより、自動車が速度を落としたときに運動の機械的エネルギーを取り戻せるので、発電制動ブレーキがより望ましい。発電制動ブレーキが作動する時には、図2の直流−交流インバータ28は、第2の、または回生的方向で作動しており、トラクション・モータ40で発電した交流電流をトラクション電池20充電のための直流電圧に変換する。さらに、電気自動車が補助電源16を有するハイブリッド電気自動車である時は、コマンド制御部50のコマンドにしたがって、電池を再充電するため、および/またはトラクション・エネルギーのいくらかを供給するために、自動車運転中に補助電源が作動する。
【0014】
図1および図2の制御部50は、自動車10の運転に適切なその他の多くの制御機能を行うことも注目されるべきである。これらの制御機能の中で、インバータ28により生成したパルス幅変調された電力スイッチ波形の周波数を微調整する機能がある。上記のように、インバータ28は、生成した波形の周波数よりはるかに高いリカレンス(recurrence:再帰)率を有し、生成した波形の瞬間的な大きさを確定するために、幅および時間が制御された、リカレント(recurrent:再帰)駆動パルスにより制御される。トラクション・モータの駆動効率を最大限にするために、制御部50は駆動パルスのリカレンス率をかく乱し、その結果、波形生成のサイクルの間、整数の駆動パルスが生成される。また、整数のサイクルは、トラクション・モータの効率を低減させがちな、直流電圧成分を有する出力電圧波形の生成を防ぐのに役立つ。
【0015】
図3は、図1に示す自動車10の熱伝導システムの簡略化したブロック図である。図3において、トラクション・モータは、第1の熱交換器310に熱的に結合され、補助電源16も第1の熱交換器310に結合されている。高温の位置によって、熱は双方向的にこれらのパスを流れるので、トラクション・モータ40と補助電源16が第1の熱交換器310によって熱的に結合されているのは明らかである。同時に、補助電源16は、第2の熱交換器312を介して、ブロック316で示される乗員室に熱的に結合されている。またはブロック318で示される、図1のコマンド制御部50により制御される制御弁を介することも可能である。さらに、図1のトラクション・モータ40に付随するギアボックスが図3の340として示されている。ギアボックス340は第1の熱交換器130に結合されていることが示されている。ハイブリッド電気自動車の他の熱源は、図2の交流−直流インバータ28であり、その蓄熱槽28hは第2の熱交換器312に熱的に結合されていることが図3に示されている。図3の要素16、28h、40、310、312および340は熱的に結合され、もしさまざまなパスに熱が十分に流れれば、同じ温度になるはずである。同時に、図3の要素16、28h、40、310、312および340は乗員室316に結合しうる熱源を形成する。選択された温度を維持するために、コマンド制御部50は乗員室の温度を(図示されない手段によって)検出し、弁318を公知の帰還(feedback)方式で制御する。本発明の実施例においては、少なくとも1つの熱交換器が循環性の熱伝導流体として油を使用していることに注目すべきである。図3のシステムはシステム全体から放熱するために熱交換器310に結合されたラジエータ(放熱器)を備える。
【0016】
ハイブリッド電気自動車の効率が比較的高いために、特に寒冷な天候のとき乗員室を十分に熱するには、補助電源16、トラクション・モータ40、およびギアボックス340の組み合わせで発生した熱では不十分な場合がある。かかる条件のときには別の燃料燃焼ヒータを備えることも可能であるが、一時的に使用されるだけの追加設備が必要になり、温暖な天候で自動車を運転するときまでもこのような設備の追加的重量を運搬すると、燃費を悪くなる。本発明の1つの特徴によれば、コマンド制御部は通常の運転条件の下で上記のように第1の作動状態を仮定する。天候が寒冷で、さまざまな動力装置から発生する熱量では不十分であるときは、コマンド制御部は追加の熱が必要であることを判断し、システムは第2の作動状態に入る。第2の作動状態において、追加の熱を発生させるために、コマンド制御部はこのような間トラクション・モータの効率を減少させる。いかなるトラクション・モータの作動状態においても、その効率は周囲の条件、速度、および負荷によって変わるものと予想される。高効率作動状態における効率範囲は、より高い効率値にまで至るもの予想され、低効率条件での作動に期待される効率範囲は、高効率条件の最低効率より低い効率値でなければならない。しかし、効率範囲の重複する状態もありうる。
【0017】
特に、本発明の1つの実施例では、図1および図2のコマンド制御部50は、追加熱を発生させる必要があることを判断して、(a)交流電圧出力波形の各半サイクルで整数の駆動波形を生成するために、インバータスイッチ駆動周波数の調整を減少または排除することで、インバータ28の駆動を調整する、または(b)出力電圧波形の各半サイクルでの駆動波形の数を非整数の値に確実に再調整する。この結果、第2の作動状態では、この非整数の出力電圧波形の各半サイクルでの駆動波形の数は、モータの平均直流電流を生成する。直流電界と交流電界の間の相互作用により、全モータ電流のうちの直流電流成分は効率を低減し、それにより熱がより多く発生する。要するに、第2の低効率状態では、コマンド(指令)された動力を供給するために必要とされる交流電流から、モータがさらに交流電流を引き出し、この追加電流が熱に変換され、最終的には乗員室にとって使用可能となる。
【0018】
本発明の他の実施例においては、図1、図2および図3のトラクション・モータ40は交流誘導モータである。かかる誘導モータが、「スリップ」(slip)周波数として知られる差分周波数(difference frequency)の分だけ固定子の磁界の回転周波数より少ない、回転周波数または速度を有することは当業者にとって公知である。スリップ周波数は誘導モータに対する負荷により決定される。スリップは負荷が減少するにしたがい減少する。これは、単にモータ固定子に印加される交流電圧ドライブの周波数を増大することで、実現できる。スリップ周波数を増大することはモータ効率を低減することになるので、スリップ周波数が小さいときより多くの熱を発生させることになる。
【0019】
図4は、第1の高モータ効率モードでの作動が必要か、第2の低モータ効率モードでの作動が必要かを決定する、コマンド制御部での論理フローを示す簡略化したフローチャートである。図4において、論理は開始(START)ブロック510から開始し、冷却システム温度の検出を示す、次の論理ブロック512に進む。論理はブロック512から、追加の熱が要求されているかを決定する、決定ブロック514へと進む。もし追加の熱が要求されていなければ、論理は決定ブロック514からNO出力へと進み、論理パス514Nを通ってブロック512へと進む。自動車の発進時、または寒冷な条件下では追加熱が要求されることがあり、そのとき論理は決定ブロックからYES出力へ進み、トラクション・モータの効率を低減することを示す、次のブロック516へと達する。ブロック516から、論理は冷却システム温度の検出を示すブロック517を通って、自動車の運転者により変えられるあらかじめセットされた基準と冷却システムの温度を比較する、次の決定ブロック518に達する。冷却システムの温度が通常の作動温度でないときは、論理は決定ブロック518からNO出力を通って、ブロック516へと戻り、低効率作動を続ける。一方、決定ブロック518が冷却システムが通常の作動温度であることを発見した場合には、論理はYES出力から、冷却システムの通常または高効率作動状態を維持することを示す、ブロック520へと進む。本発明の他の実施例は当業者にとって明らかである。たとえば、弁318が乗員室316への熱の流れを制御するために使用されることが示されているが、調流器(flow diverter)やその他の装置を使用することもできる。温度は帰還(feedback)型システムで制御していると説明されているが、例えば図3の弁318が自動車の運転者により制御される今日の自動車に一般的に使用されているオープン・ループ(open-loop)型システムで制御してもよい。図3の装置は、熱的に結合した2つの分離した熱交換器310および312を使用するが、それが適切であれば、単一の装置に統合したり、または必要であれば2つ以上の熱交換器を使用してもよいことは明らかである。そこで、本発明によるハイブリッド電気自動車(10)は、機械的運転に応じて前記自動車(10)を動作させる機械運転装置(40d、12)を有する。電気トラクション・モータ(40)は前記機械運転装置(40d、12)に結合され、付勢されたときに前記機械運転装置(40d、12)を機械的に運転し、それにより前記自動車(10)を運転する。ハイブリッド電気自動車はさらに電気エネルギー蓄電部(20)(トラクション電池であってもよい)と、前記電気エネルギー蓄電部(20)および前記トラクション・モータ(40)に結合され前記トラクション・モータ(40)を制御可能に付勢する制御部(14、50)を有する。前記トラクション・モータ(40)に付勢することで前記機械運転装置(40d、12)の前記機械的運転が行われる。ハイブリッド電気自動車(10)は、燃料をたとえばタンク(18t)に入れて運搬する。制御可能な電気エネルギー源(16)、たとえば燃料電池(24)や内燃機関・発電機(18、22)、は前記燃料源(18t)および少なくとも前記制御部(14、50)に結合され、前記燃料を使用して、前記トラクション・モータ(40)の駆動または前記電気エネルギー蓄電部(20)への蓄電、またはその両方を行うために、電気エネルギーを発生させる。前記電気エネルギー源(20)と前記トラクション・モータ(40)を作動させることにより、不可避的に熱が発生する。ハイブリッド電気自動車(10)は、乗員室(316)と、前記乗員室(316)、前記電気エネルギー源(20)および前記トラクション・モータ(40)に結合され、前記乗員室(316)を適温に維持するため、前記熱を前記乗員室(316)に制御可能に結合する熱交換手段(310、312)を有する。寒冷な天候のときは、前記電気エネルギー源(20)と前記トラクション・モータ(40)により発生した前記熱では前記乗員室(316)の適温を維持するのには不十分なことがある。制御装置(400)が前記制御部(14、50)に連結され、第1の効率範囲を画定する第1の状態で前記トラクション・モータ(40)を駆動し、前記乗員室(316)の適温を維持するのに必要な場合には、前記第1の状態の前記効率範囲よりも低い効率範囲を有する第2の状態で前記トラクション・モータ(40)を作動し、より多くの熱を前記トラクション・モータ(40)から発生させ、この追加熱は前記乗員室(316)に使用することができる。
【0020】
本発明の1つの実施例によれば、前記トラクション・モータ(40)は交流モータであって、前記制御部(14、50)は、前記電池(20)と前記交流モータ(40)に結合され、前記直流電圧を前記交流モータ(40)のための交流電流に制御可能に変換する、直流−交流インバータ(28)を含む。本実施例の前記制御装置(14、50)は前記第2の状態で前記交流モータに流す大量の直流電流を発生させる直流電流制御装置を含む。
【0021】
本発明の他の1つの実施例によれば、前記電気エネルギー蓄電部(20)は直流電圧を発生させる電池を含み、前記トラクション・モータ(40)は交流誘導モータである。本実施例において、前記制御部(14、50)は、前記電池(20)と前記交流モータ(40)に結合され、前記直流電圧を前記交流モータのための可変周波数交流電流に制御可能に変換し、それにより前記第1の作動状態で前記誘導モータ(40)を、スリップ周波数の第1の範囲分だけ交流電流ドライブの周波数より少ない周波数で回転させる、直流−交流インバータ(28)を含む。本実施例において、前記制御装置(14、50)は、最高周波数が前記第1の範囲の最高周波数より高い第2の範囲を、前記スリップ周波数がしめる、前記第2の作動状態で作動する装置(400)を含む。
【0022】
本発明の他の1つの実施例によれば、電気自動車(10)は、付勢されたときに、自動車を運転する電気トラクション・モータ(40)と、直流電圧蓄電部(20)、たとえば電池、を有する。制御部(14、50)は前記直流電圧蓄電部(20)および前記トラクション・モータ(40)に結合されている。前記制御部(14、50)は、前記トラクション・モータ(40)を駆動する交流電圧を制御可能に発生させる直流−交流インバータ(28)を含む。前記直流−交流インバータ(28)は運転中に熱を発生させる。電気自動車(10)は、乗員室(316)と、前記乗員室(316)および前記インバータ(28)に結合され、前記インバータ(28)の熱の少なくともいくらかを前記乗員室(316)に結合する流体熱伝導手段(310、312)を有する。
【符号の説明】
【0023】
10ハイブリッド電気自動車(電気自動車)
12車輪
14動力制御部
16補助電源
18ディーゼル・エンジン
18tタンク
20電池
22発電機
24燃料電池
26整流装置
28インバータ
28h蓄熱槽
28mポート
30表示部および運転者制御部
30aブレーキペダル
31双方向データパス
34パス
36a,36b(摩擦制動)フリクション・ブレーキ
40トラクション・モータ
40dギアボックス
50コマンド制御部
310、312熱交換器
316乗員室
318制御弁
340ギアボックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員室と、
機械的駆動に応じて自動車を動作させる機械駆動装置と、
前記機械駆動装置に結合され、給電されたときに、前記機械駆動装置を機械的に駆動し、それにより前記自動車を駆動する電気トラクション・モータと、
電気エネルギー蓄電部と、
直流電圧を前記トラクション・モータ用の交流電圧に制御可能に変換して前記トラクション・モータ用の繰り返し駆動パルスを発生する直流−交流インバータと、
前記直流−交流インバータを介して前記電気エネルギー蓄電部および前記トラクション・モータに結合され、前記トラクション・モータに制御可能に給電し、それにより前記機械駆動装置の前記機械的駆動を行って前記自動車を駆動する制御部と、
前記直流−交流インバータから発生される前記トラクション・モータ用の前記繰り返し駆動パルスを調節する、前記制御部と連携された調節手段と、
燃料源と、
前記燃料源および少なくとも前記制御部に結合され、前記燃料を使用して、前記トラクション・モータの駆動および前記電気エネルギー蓄電部への蓄電のうち少なくとも1つを行うために、電気エネルギーを発生させる、制御可能な電気エネルギー源と、
前記電気エネルギー源と前記トラクション・モータを作動させることにより不可避的に熱が発生し、
前記乗員室、前記電気エネルギー源および前記トラクション・モータに結合され、前記電気エネルギー源および前記トラクション・モータから発生する前記熱を前記乗員室に制御可能に結合する熱交換手段を含むことを特徴とするハイブリッド電気自動車。
【請求項2】
寒冷な天候で前記電気エネルギー源と前記トラクション・モータにより発生した前記熱では前記乗員室の適温を維持するのに不十分であるときに、前記制御部と連携され、第1の効率範囲を限定する第1の状態で前記トラクション・モータを動作させ、前記乗員室の温度を検出し、前記適温を維持することが必要な場合には、前記第1の状態の前記効率範囲よりも低い効率範囲を有する第2の状態で前記トラクション・モータを動作させ、それにより、前記乗員室に使用することができる、より多くの熱を前記トラクション・モータから発生させる制御手段であって、前記トラクション・モータの効率を制御するように前記直流−交流インバータの動作状態を調節する前記調節手段を含む前記制御手段を更に含み、
前記電気エネルギー蓄電部は直流電圧を発生させる電池を含み、
前記トラクション・モータは交流モータであって、
前記調節手段は前記第2の状態で前記交流モータに流す大量の直流電流を発生させることを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド電気自動車。
【請求項3】
寒冷な天候で前記電気エネルギー源と前記トラクション・モータにより発生した前記熱では前記乗員室の適温を維持するのに不十分であるときに、前記制御部と連携され、第1の効率範囲を限定する第1の状態で前記トラクション・モータを動作させ、前記乗員室の温度を検出し、前記適温を維持することが必要な場合には、前記第1の状態の前記効率範囲よりも低い効率範囲を有する第2の状態で前記トラクション・モータを動作させ、それにより、前記乗員室に使用することができる、より多くの熱を前記トラクション・モータから発生させる制御手段であって、前記トラクション・モータの効率を制御するように前記直流−交流インバータの動作状態を調節する前記調節手段を含む前記制御手段を更に含み、
前記電気エネルギー蓄電部は直流電圧を発生させる電池を含み、
前記トラクション・モータは交流誘導モータであって、
前記直流−交流インバータは、前記直流電圧を前記交流モータのための可変周波数交流駆動に制御可能に変換し、それにより前記第1の動作状態で前記誘導モータが、スリップ周波数の第1の範囲分だけ交流駆動の周波数より少ない周波数で回転し、
前記調節手段は、前記第2の動作状態で、最高周波数が前記第1の範囲の最高周波数より高い第2の範囲を、前記スリップ周波数がしめるようにすることを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド電気自動車。
【請求項4】
乗員室を有するハイブリッド電気自動車を駆動する方法において、前記方法は、
前記自動車に電池を備える工程と、
前記自動車に燃料コンテナを備える工程と、
前記自動車において、前記燃料コンテナの燃料を使用する燃料電池及び内燃機関発電機の一方を作動させて、それにより前記電池を充電するために電気を発生させる工程と、
前記自動車において、交流電圧を交流電圧周波数においてトラクション・モータに印加し、それにより機械的エネルギーを発生させ、前記トラクション・モータが前記トラクション・モータの効率に依存する量の余剰熱を発生させる工程と、
前記機械的エネルギーを前記自動車の駆動に使用する工程と、
少なくとも前記トラクション・モータと前記燃料電池及び前記内燃機関発電機の一方とからの熱を前記乗員室に伝導する工程と、
前記自動車において、前記交流電圧周波数より高いパルス幅周波数に複数の電力スイッチをパルス幅制御することにより、前記電池からの直流電圧を前記交流電圧に制御可能に変換する工程と、および、
前記乗員室を熱するためにより多くの熱を前記トラクション・モータから必要とする場合に、前記トラクション・モータの熱出力を増大するために、前記トラクション・モータの前記効率を減少させる、前記トラクション・モータを流れる直流電流を生じさせるように、前記交流電圧周波数に対して前記パルス幅周波数を調整する工程からなる、ハイブリッド電気自動車の駆動方法。
【請求項5】
乗員室を有するハイブリッド電気自動車を駆動する方法において、前記方法は、
前記自動車に電池を備える工程と、
前記自動車に燃料コンテナを備える工程と、
前記自動車において、前記燃料コンテナの燃料を使用する燃料電池及び内燃機関発電機の一方を作動させて、それにより前記電池を充電するために電気を発生させる工程と、
前記自動車において、交流電圧を交流電圧周波数で交流誘導モータに印加し、それにより機械的エネルギーを発生させ、前記交流誘導トラクション・モータが前記交流誘導トラクション・モータの効率に依存する量の余剰熱を発生させる工程と、
前記機械的エネルギーを前記自動車の駆動に使用する工程と、
少なくとも前記交流誘導トラクション・モータと前記燃料電池及び前記内燃機関発電機の一方とからの熱を前記乗員室に伝導する工程と、
前記自動車において、前記電池からの直流電圧を前記交流電圧に制御可能に変換する工程と、および、
前記乗員室を熱するためにより多くの熱を前記交流誘導トラクション・モータから必要とする場合に、前記交流誘導トラクション・モータの熱出力を増大するために、前記交流誘導トラクション・モータの前記効率を減少させる、前記交流誘導トラクション・モータの回転周波数と前記交流電圧周波数の間のスリップ(slip:滑り)を生じさせるように、前記交流電圧周波数を調整する工程からなる、ハイブリッド電気自動車の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−208630(P2010−208630A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67898(P2010−67898)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願平10−330815の分割
【原出願日】平成10年11月20日(1998.11.20)
【出願人】(500558894)ビーエーイー・システムズ・コントロールズ・インコーポレーテッド (15)
【氏名又は名称原語表記】BAE SYSTEMS Controls, Inc.
【Fターム(参考)】