説明

ハンダボール及びハンダバンプを有する電子部材

【課題】マザーボード基板等との接続に使用され、モバイル機器等で要求される高い耐落下衝撃特性を有する、250℃未満の溶融温度を有するハンダボール及びハンダバンプを有する電子部材を提供する。
【解決手段】実質的にSnを40質量%以上含有し、その溶融温度が250℃未満であり、ホウ素を含有するホウ素含有層で表面が被覆されているハンダボールである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロニクス部品の接続に用いられるハンダボール及びハンダバンプを有する電子部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器に内蔵される電子回路基板において、基板と電子部品とを接合するためにハンダが用いられている。ハンダは金属を接合する溶接のなかで、接合する部材(母材)よりも融点の低い金属である「ろう」を用いて、母材を溶融せずにぬれ現象で接合するろう接の一種であり、融点が450℃未満の合金をハンダと呼ぶ。一般に、抵抗、コンデンサ、ダイオード等の電子部品や半導体パッケージのアウター接続、フリップチップパッケージの二次実装等に用いられるハンダは、その溶融温度は高くても250℃未満であり、フロー、リフロー、手ハンダ等の手法で用いられている。ここで、溶融温度とは、純金属、共晶合金、化合物の場合はその融点であり、2相以上の合金の場合はその液相線温度を指すものとする。一方、主に半導体パッケージ内部の一次実装に用いられるハンダは、特に高温ハンダと呼ばれ、上記フローおよびリフロー温度(260℃程度)等では溶融しないハンダが用いられる。これらのハンダ接合部には、機器のon/offによる発熱や冷却に起因した熱疲労が負荷されるため、熱疲労特性がハンダ接合部の接続信頼性の指標として従来から一般的に用いられている。また、近年は携帯電話に代表されるモバイル機器への用途に対して、機器を落下させてしまった時でもハンダ接続部が耐えられる特性も要求されている。その結果、ハンダ接続部の耐落下衝撃特性といった新しい接続信頼性の指標も必要となってきた。
【0003】
ハンダ合金としては、SnとPbを含有する成分系が従来広く用いられてきた。しかし、近年の環境問題やEU(欧州連合)のRoHS指令(Restriction of the Use of Certain Hazardous Substances in Electrical and Electronic Equipment)などにより、Pbを含有しない、いわゆる鉛フリーハンダが広く開発され、実用化されている。鉛フリーハンダ材料として現在有力視されているものの1つにSn-Ag-Cu系ハンダ材料がある(特許文献1)。その中でも、電子部品実装プロセスにおいては、Sn-3.0Ag-0.5Cu、Sn-4.0Ag-0.5Cuなどの鉛フリーハンダ材料が標準的に使用されている。
【0004】
近年、電子部品の高密度実装化に伴い、基板電極パッド面積の縮小が急激に進んでいるため、接合部位のハンダ量は少量化せざるを得ない状況にあり、鉛ハンダも含め前述の鉛フリーハンダのハンダ接合部にかかる負荷はますます増大している。特に、半導体パッケージのアウター接続や、抵抗、コンデンサ、ダイオード等のマザーボード基板に接続される部品におけるハンダ接合部に関しては、上述のように、耐落下衝撃特性といった接続信頼性などの負荷増大がより顕著になってきている。前記問題を解決するために、種々の添加元素により、ハンダ接合部の接続信頼性を向上させる試みが検討されている。
【0005】
特許文献2には、上述した標準的な鉛フリーハンダに比べてAg含有量が低く、特定のAg含有量において耐落下衝撃性に優れた鉛フリーハンダ合金とすることができることが開示されている。すなわち、Ag:1.0〜2.0質量%、Cu:0.3〜1.5質量%を含み、残部Snおよび不可避不純物からなる鉛フリーハンダ合金である。これにより、優れた耐熱疲労特性と耐衝撃性にすることができるとされている。さらに特許文献2では、Ni:0.05〜1.5質量%又は、Fe:0.005〜0.5質量%の範囲で添加することにより、ハンダ合金の強度を向上することができるとしている。
【0006】
特許文献3には、Sn-Ag-Cu系鉛フリーハンダに該ハンダに実質的に溶解しない元素を含む微粒子を含ませた鉛フリーハンダが開示されている。これにより、ハンダ組織が微細化されて、ハンダの機械的強度および耐熱衝撃性の向上が得られるとしている。また、前記微粒子に含まれる溶解しない元素として、B、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zr、Nb、Moが挙げられている。
【0007】
特許文献4には、溶融温度が250℃以上の高温ハンダに対して、Sn-Sb-Ag-Cu系において、接合安定性を改善するために、前記系にSiおよびBを添加することが開示されている。前記元素を添加することで、Sbの結晶の肥大化を抑制し、溶融時に各金属同士が馴染み、金属の凝集が妨げられるので、ボイド発生を抑制できるとしている。
【特許文献1】特開平5-50286号公報
【特許文献2】特開2002-239780号公報
【特許文献3】特開2005-319470号公報
【特許文献4】特開2006-159266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、電子部品の高密度実装化やモバイル電子機器の高性能化にともにない、ハンダ接合部の信頼性、特に耐落下衝撃特性の要求が高くなり、現状のハンダ合金では十分な性能を発揮できないという問題がある。中でも、半導体パッケージのアウター接続や、抵抗、コンデンサ、ダイオードなどの部品が実装されるマザーボード基板との接続に使用されるハンダ合金の性能が不十分である。
【0009】
一般的にフリップチップによる半導体パッケージ内の接続で用いられる一次実装用ハンダ(高温ハンダ)は、周りを封止樹脂で埋められている。一方、二次接続(二次実装)側のハンダ接合部や、抵抗、コンデンサ、ダイオード等をマザーボード基板に接合するハンダ接続部は、必ずしも樹脂で埋められていない。樹脂に埋められていないこれらの接続部においてはハンダ自身により高い接続信頼性が求められることが多い。
【0010】
特許文献1は、従来からハンダ接合部に主に求められてきた熱疲労特性を改善したハンダであり、モバイル用途向けの耐落下衝撃特性は考慮されていない。
【0011】
特許文献2は、Ag含有量を低くして特定の範囲内にすることで、ハンダに延性を持たせ、耐落下衝撃特性を向上させている。しかし、当該ハンダでは、ハンダと基板電極間の界面強度が十分ではないため、狭ピッチ化し、ハンダ接合部の面積、体積が減少した際に、2次接続側のハンダ接合として必ずしも高い耐落下衝撃特性は得られていない。
【0012】
特許文献3は、非溶解元素の微粒子に起因してハンダ接合部の組織が微細化するので、き裂進展が抑制され、耐熱衝撃性を向上させることができるとしている。しかし、モバイル用途向けの耐落下衝撃特性に関しては記載も示唆もされていない。落下衝撃時においては、主にハンダと基板電極間の界面強度が問題となるが、特許文献3にはハンダと基板電極間に形成される金属間化合物の厚みが薄くなって接続信頼性が向上すると記載されているのみであり、金属間化合物の厚みだけでは、耐落下衝撃特性の良否は決まらないと考えられる。
【0013】
特許文献4には、微量のSiとBを添加して接合安定性を向上させたハンダ合金が開示されているが、一般にフリップチップによる半導体パッケージの一次実装に用いられる溶融温度が250℃以上のハンダであり、二次実装やマザーボード基板等との接続には適用できない。また、半導体パッケージ内部の一次実装では樹脂で封止して用いられるため、耐落下衝撃特性を考慮する必要性は低く、特許文献4ではモバイル用途向けの耐落下衝撃特性に関しては記載も示唆もされていない。
【0014】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、マザーボード基板等との接続に使用され、モバイル機器等で要求される高い耐落下衝撃特性を有する、250℃未満の溶融温度を有するハンダボール及びハンダバンプを有する電子部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、マザーボード基板等との接続に使用される、250℃未満の溶融温度を有するハンダボールに関し、耐落下衝撃特性の向上の手段として、ハンダと電極との界面に形成する金属間化合物の特性に着目した。これは、従来ハンダでは、落下衝撃のような負荷に対して一般的にこの電極界面で脆性的に破断し、耐落下衝撃特性が十分ではなかったためである。そこで、ハンダに種々の添加元素による耐落下衝撃特性および電極界面の金属間化合物の特性を調査した結果、マザーボード基板等との接続に用いられるハンダと電極との界面にホウ素が濃化していることで、電極界面の破断強度が向上し、従来ハンダに比べて劇的に耐落下衝撃特性が向上することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明の要旨とするところは以下のとおりである。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項1に係るハンダボールは、実質的にSnを40質量%以上含有し、その溶融温度が250℃未満であり、ホウ素を含有するホウ素含有層で表面が被覆されていることを特徴とする。
【0017】
また、請求項2に係るハンダボールは、請求項1において、前記ホウ素含有層は、ハンダボール全体に対しホウ素を質量で0.1ppm以上200ppm以下含有することを特徴とする。
【0018】
また、請求項3に係るハンダボールは、請求項1または2において、Ag及びCuを含有し、Agの含有量が0.1質量%以上5質量%以下で、Cuの含有量が0.01質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とする。
【0019】
また、請求項4に係るハンダボールは、請求項1〜3のいずれか1項において、球径1mm以下であることを特徴とする。
【0020】
また、請求項5に係る電子部材は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のハンダボールを用いて形成したハンダバンプを有することを特徴とする。
【0021】
また、請求項6に係る電子部材は、実質的にSnを40質量%以上含有し、その溶融温度が250℃未満であるハンダバンプを有し、前記ハンダバンプは、電極との界面の少なくとも5μmの領域に、ホウ素が濃化していることを特徴とする。
【0022】
また、請求項7に係る電子部材は、請求項6において、ホウ素は、前記領域に質量で0.5ppm以上濃化していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、マザーボード基板等との接続に使用される、250℃未満の溶融温度を有するハンダボールにおいて、ハンダ接合部における耐落下衝撃特性、特にモバイル機器で要求される耐落下衝撃特性を格段に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、実質的にSnを40質量%以上含有し、その溶融温度が250℃未満であるハンダボールにより形成したハンダバンプと、マザーボード基板等に形成された電極との界面を中心として両側の少なくとも上下5μmの領域にホウ素が濃化していることにより、接合部に形成される金属間化合物の界面破断強度を大幅に向上させ、耐落下衝撃特性を格段に向上させることを見出した。ここで、溶融温度とは、純金属、共晶合金、化合物の場合はその融点であり、2相以上の合金の場合はその液相線温度を指すものとする。以下、ハンダボールによりハンダバンプと電極との界面の少なくとも上下5μmの領域にホウ素が濃化していることにより、耐落下衝撃特性が大幅に改善するに至った経緯について詳述する。
【0025】
前述したように、ハンダ接合部のハンダ量が減少するなかで、これまでの接合信頼性に加えて、耐落下衝撃特性といった接合信頼性の向上が求められている。近年では、アメリカ電子工業会(EIA)の分会である電子機器技術評議会(JEDEC)で決められた規格であるJESD22−B111が、耐落下衝撃特性の評価手法として業界で標準的に用いられるようになってきた。そこで、これまで広く使われており、実質的に鉛フリーハンダの標準成分として用いられているSn-3Ag-0.5Cuを用いて耐落下衝撃特性を評価すると、主に、電極とハンダとの間に形成される金属間化合物層で脆性的な破断が起こり、これが原因で耐落下衝撃特性が非常に低くなっていることが判明した。そこで、本発明者らは、金属間化合物の破断強度に着目し、この破断強度を改善する合金成分の探索を行ったところ、電極とハンダとの界面を含む近傍の領域にホウ素が濃化することで、この金属間化合物層の破断強度を大幅に向上することを見出した。その結果、ハンダ接合部の耐落下衝撃特性を飛躍的に改善するに至った。当該機能発現の詳細なメカニズムは検討中であるが、次のように考えている。NiAl金属間化合物の多結晶体において、ホウ素は、原子半径が小さいので粒界に偏析し、Ni−Ni原子間の結合力を高めるため、NiAl金属間化合物の破壊靭性を劇的に向上させることが知られている。一方、ハンダと電極との間においても、プリント基板として多く使われているCu電極にNiめっきとAuめっきを処したCu/Ni/Auの表面処理電極を有する基板では、Ni−Sn系金属間化合物が形成される。NiAl金属間化合物と同様に、Ni−Sn系の金属間化合物においても、ホウ素は粒界に偏析しやすいと考えられ、偏析したホウ素は原子の結合力を向上させ、その結果、Ni−Sn系の金属間化合物層の破断強度が大きくなったものと考えられる。さらに、NiおよびAuめっきのないCu電極からなる基板(Cu電極に有機保護膜を処した基板を含む)においても、CuSn金属間化合物の粒界にホウ素は偏析し、同様の作用で界面強度を向上していると考えられる。このように、ホウ素は、ハンダと電極との界面に形成される金属間化合物に偏析することで、界面層となる金属間化合物の破断強度を高めることになる。また、電極とハンダとの界面を含む近傍の領域に濃化したホウ素は、溶融温度が高くなると選択的な酸化や蒸発によって前記ホウ素の効果が得られないが、溶融温度が250℃未満のハンダ合金が使用される温度域では有効である。さらに、鉛ハンダ、鉛フリーハンダに関わらず、溶融温度が250℃未満でSnをベースとしたハンダであればいずれの場合にも、電極とハンダとの界面を含む近傍の領域に濃化したホウ素が、ハンダと電極との界面に形成される金属間化合物の破断強度に対して効果的に作用することから、耐落下衝撃特性が求められるマザーボード基板等との接続に使用されるハンダ接合部に対して有効である。本実装部において、鉛ハンダに比べて耐落下衝撃特性に劣る鉛フリーハンダに関して、ホウ素含有層による効果が著しい。以下、好ましい範囲、限定理由等について述べる。
【0026】
上述したように、電極とハンダとの界面を含む近傍の領域に濃化したホウ素による本発明の効果は、ハンダと電極との間に形成される金属間化合物層の破断強度の向上によるため、本発明の対象は、Snを40質量%以上含有するハンダボールであり、上述の理由により、溶融温度が250℃未満のハンダボールにおいて本発明の効果が得られ、主に半導体パッケージや抵抗、コンデンサなどの部品を接続するプリント基板に搭載するための実装で使用されるハンダに有効である。特に、溶融温度が240℃以下で更に顕著な効果が得られる。具体的に本発明の実施可能な成分系を例示すると、SnAgCu系、SnAg系、SnCu系、SnZn系、SnBi系、SnZn系、SnIn系、SnPb系等、一般的に使用されているハンダ成分系に対して有効である。
【0027】
ハンダバンプと、電極との界面を中心として両側の少なくとも上下5μmの領域におけるホウ素の濃度は、質量で0.5ppm以上であることが好ましい。0.5ppm未満であると、金属間化合物の粒界に偏析する量が少ないために破断強度の向上は認められなくなる。
【0028】
ハンダバンプと、電極との界面を中心として両側の少なくとも上下5μmの領域にホウ素を質量で0.5ppm以上とするには、ハンダボールに対するホウ素の含有量が、0.1ppm以上、200ppm以下であることが好ましい。0.1ppm未満であると、金属間化合物の粒界に偏析する量が少ないために破断強度の向上は認められなくなる。また、200ppmより多いと、金属間化合物の粒界に偏析するクラスターのサイズが大きくなりすぎて界面の結合力増加に悪影響を及ぼすため、上限を200ppmとした。また、より好ましくは、0.1ppm以上100ppm以下、さらに好ましくは、0.1ppm以上50ppm以下である。
【0029】
ハンダ中のホウ素の分析方法は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)分析法やグロー放電質量分析(GD-MS)法によって行うことができ、ホウ素の含有量を決めることができる。
【0030】
鉛フリーハンダとして標準的に用いられているSnAgCu系に対しては、Agの含有量が0.1質量%以上5質量%以下、Cuの含有量が0.01質量%以上1.5質量%以下において、上記電極とハンダとの界面を含む近傍の領域に濃化したホウ素による耐落下衝撃特性の向上が顕著になるとともに、ハンダの熱疲労特性やハンダのぬれ性等に関するその他の接合信頼性もより優れる。Agの含有量が0.1質量%未満であると、ハンダの熱疲労特性の低下により好ましくない場合がある。Agの含有量が5質量%超では、ハンダ内に粗大なAgSnが形成され、接合信頼性を低下させる場合がある。さらに好ましくは、Agの含有量が0.8質量%以上1.5質量%以下である。Cuの含有量は0.01質量%未満であるとハンダのぬれ性が悪くなる場合がある。また、1.5質量%超であるとハンダが硬くなり、接合信頼性が低下する場合がある。さらに好ましくは、0.05質量%以上1.0質量%以下であることが望ましい。
【0031】
一般的に上述した元素の組成は、例えば、ICP分析法やGD-MS法等により測定して決めることができる。
【0032】
本発明のハンダボールは、特に、狭ピッチのパッケージ接続に用いられる球形1mm以下において、効果的である。したがって、これらのハンダボールを用いて形成されたハンダバンプを有する電子部材は、金属間化合物の破断強度を向上させることができるため、耐落下衝撃特性に優れた電子部材を提供する。
【0033】
ハンダバンプと、電極との界面の少なくとも上下5μmの領域にホウ素を濃化させるには、ホウ素を含有するホウ素含有層で表面が被覆されたハンダボールを用いる方法と、電極表面にホウ素含有層を形成する方法とが考えられる。
【0034】
ホウ素を含有するホウ素含有層で表面が被覆されたハンダボールは、めっきや塗装により形成することができる。めっきによる場合は、ホウ素を含むめっき液中にハンダボールを浸漬し、表面にホウ素含有層を形成することができる。塗装による場合は、ホウ素を含む化合物を有機溶媒中に溶解した溶液中にハンダボールを浸漬し、表面にホウ素含有層を形成することができる。
【0035】
また、電極表面にホウ素含有層を形成するには、ホウ素を含むめっき液中に電極を形成したマザーボード等を浸漬し、電極表面にホウ素含有層を形成することができる。
【0036】
尚、ハンダ基合金としては、例えば、SnAgCu系、SnAg系、SnCu系、SnZn系、SnBi系、SnZn系、SnIn系、SnPb系等のハンダ基合金が使用できる。
【0037】
また、前記ハンダ合金からのハンダボールの作製方法としては、溶解したハンダ合金インゴットを線引きし、ワイヤー状にした後、一定長さに切断し、油中で溶融させることで表面張力を利用して球状化するワイヤーカット法や、溶融したハンダを微細なオリフィスから振動と共に噴出し、真空中やガス雰囲気中で振動による波で溶融ハンダを切断し、表面張力で球状化する気中造粒法等、いずれの手法で作製しても良い。
【0038】
本発明によるハンダバンプを作製する方法は、ハンダボールによる方法がある。ハンダボールによる方法では、フラックスを塗布した電極上にハンダボールを並べて、リフローすることでハンダバンプを形成することができる。
【0039】
以下、実施例に基づき、より具体的に本発明効果を説明する。
【実施例】
【0040】
(実施例1)
まず、めっきによりハンダボール表面にホウ素含有層を形成した場合の実施例について説明する。
【0041】
表1に示す各成分となるように、各純金属を秤量し、アルミナ坩堝を使用して高周波溶解法によりハンダ合金を作製した。作製したハンダ合金の組成分析は、ICP分析およびGD-MS法で行った。作製した各ハンダ合金を伸線してワイヤーを作製し、更に、ワイヤーカット法で直径300μmのハンダボールを作製した。
【0042】
ここで、ホウ素含有層は、ホウ素を含むNiを無電解めっき法により、ハンダボール表面に被覆した。無電解Niめっきは、ジメチルアミンボランを還元剤とした市販のめっき液を用いて、めっき浴温度65℃で、めっき速度=8μm/時間となるように建浴した。また、めっき厚は、表1において、ホウ素濃度で示した。すなわち、めっき厚は、ホウ素濃度が、表1のホウ素濃度とほぼ同じとなるように設定した。これにより、前記ハンダボール表面にホウ素を含むホウ素含有層を被覆させた場合の影響を調べた。
【0043】
ハンダボールを実装するサンプルとして、部品側は、0.5mmピッチで、パッド数84ピンの6mm角チップスケールパッケージ(CSP)を用いた。このCSPの電極表面処理はCu電極にNiおよびAuめっきを処したCu/Ni/Auである。また、マザーボード側基板として、132x77x1(mm)サイズ、電極表面処理がCu/Ni/Auである基板を用いた。最初に、CSP上にボールを搭載してリフローし、バンプを形成した後、CSPをプリント基板上に実装した。フラックスには水溶性の物を用いた。また、リフロー温度は、溶融温度+30℃の条件とし、ホウ素を含有している組成の物については、ホウ素を含有していない同じ組成と同様の温度プロファイルとした。耐落下衝撃特性の試験の評価は、JEDEC規格のJESD 22-B111に準拠した方法で行い、落下毎に部品の抵抗値をモニターしながら、抵抗値が初期値の2倍になった時点の落下回数を破断と定義した。また、耐落下衝撃特性は、ホウ素含有層で表面を被覆していないハンダボール(同一組成)に比べて、それ未満のものを×、同程度のものを○、20%以上特性が向上したものについて◎、40%以上特性が向上したものを◎○とし、その結果を表1に併記した。
【0044】
表1より、ホウ素を含む物質を被覆させた場合の方が、高い耐落下衝撃特性を示した。
【0045】
【表1】

(実施例2)
次に、塗装によりハンダボール表面にホウ素含有層を形成した場合の実施例について説明する。本実施例では、ハンダボール表面に、ジメチルアミンボランを被覆した。ジメチルアミンボランをアセトンに溶解した溶液に前記ハンダボールを浸漬し、マグネットスターラーにより攪拌した。前記溶液濃度と浸漬時間は、ジメチルアミンボラン被覆後のボールのホウ素濃度を、ICP発光分析およびGD-MS分析法により分析し、表2の対応するハンダボールとほぼ同一の濃度となるように設定した。尚、その他の条件及び評価方法は、上記実施例1と同様である。その結果を表2に示す。
【0046】
表2より、ホウ素を含む物質を被覆させた場合の方が、高い耐落下衝撃特性を示した。
【0047】
【表2】

(実施例3)
次に、電極表面にホウ素含有層を形成した場合の実施例について説明する。本実施例では、ホウ素含有層を被覆していないハンダボールを用い、接合対象となる電極の際表面をホウ素を含む無電解Niめっき層としたものである。めっき浴組成、及び、浴温度は前記と同一であり、めっき厚は5μmとした。尚、その他の条件は、上記実施例1と同様である。その結果を表3に示す。また、耐落下衝撃特性は、ホウ素含有層で表面を被覆していない電極(同一組成)に比べて、それ未満のものを×、同程度のものを○、20%以上特性が向上したものについて◎、40%以上特性が向上したものを◎○とし、その結果を表3に併記した。尚、ハンダバンプと、電極との界面を中心として両側の少なくとも上下5μmの領域におけるホウ素の濃度は、質量で0.5ppm以上であった。
【0048】
表3より、ホウ素を含むホウ素含有層を電極表面に形成した場合でも、ホウ素を含むホウ素含有層をハンダボールまたは電極表面に被覆しない場合より、高い耐落下衝撃特性を示した。
【0049】
以上より、ホウ素を含むホウ素含有層は、ハンダボール表面および電極表面のいずれに形成されても、高い体落下衝撃特性を得ることができる。
【0050】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的にSnを40質量%以上含有し、その溶融温度が250℃未満であり、ホウ素を含有するホウ素含有層で表面が被覆されていることを特徴とするハンダボール。
【請求項2】
前記ホウ素含有層は、ハンダボール全体に対しホウ素を質量で0.1ppm以上200ppm以下含有することを特徴とする請求項1記載のハンダボール。
【請求項3】
Ag及びCuを含有し、Agの含有量が0.1質量%以上5質量%以下で、Cuの含有量が0.01質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とする請求項1または2記載のハンダボール。
【請求項4】
球径1mm以下であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のハンダボール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のハンダボールを用いて形成したハンダバンプを有することを特徴とする電子部材。
【請求項6】
実質的にSnを40質量%以上含有し、その溶融温度が250℃未満であるハンダバンプを有し、前記ハンダバンプと電極との界面を中心として両側の少なくとも5μmの領域に、ホウ素が濃化していることを特徴とする電子部材。
【請求項7】
ホウ素は、前記領域に質量で0.5ppm以上濃化していることを特徴とする請求項6記載の電子部材。

【公開番号】特開2010−109103(P2010−109103A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278877(P2008−278877)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(306032316)新日鉄マテリアルズ株式会社 (196)
【出願人】(595179228)株式会社日鉄マイクロメタル (38)
【Fターム(参考)】