バイポーラトランジスタおよびその製造方法
【課題】エミッタメサの加工精度を損ねることなく、HBTの高速性および信頼性が向上できるようにする。
【解決手段】エミッタメサの部分の側面およびレッジ構造部105aの表面には、これらを被覆するように、SiNからなる第1絶縁層108が形成されている。また、第1絶縁層108の周囲には、酸化シリコンからなる第2絶縁層109が形成されている。第2絶縁層の下端部には、レッジ構造部1105aが形成されている領域より外側に延在し、第1絶縁層108およびレッジ構造部105aの側方のベース層104との間に空間を形成する庇部109aが形成されている。
【解決手段】エミッタメサの部分の側面およびレッジ構造部105aの表面には、これらを被覆するように、SiNからなる第1絶縁層108が形成されている。また、第1絶縁層108の周囲には、酸化シリコンからなる第2絶縁層109が形成されている。第2絶縁層の下端部には、レッジ構造部1105aが形成されている領域より外側に延在し、第1絶縁層108およびレッジ構造部105aの側方のベース層104との間に空間を形成する庇部109aが形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
InP系の化合物半導体を用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)は、高速かつ低消費電力動作に優れた半導体素子であり、光通信システム向けの電子回路(IC)への応用が期待されている。このHBTにおいても、他の半導体素子と同様、実用化に最も重要な課題は信頼性の確保である。特に、InP系HBTの場合、長期間の通電による電流利得劣化が問題となっている。この電流利得劣化は、エミッタの領域からこの周囲のベース(外部ベース)層の表面に流れる表面再結合電流が原因である。InP系HBTにおける電流利得劣化の問題は、上述した外部ベース層表面に流れる表面再結合電流の抑制が重要となる。外部ベース層表面の再結合電流を抑制する手段として、外部ベース層の上をInPエミッタ層で被覆する構造(レッジ構造)が提案されている(非特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上述したレッジ構造を備えるHBTについて説明する。このHBTは、図10に示すように、まず、半絶縁性のInPからなる基板1001の上に、InPからなるサブコレクタ層1002,InGaAsからなるコレクタ層1003、p+−InGaAsからなるベース層1004、i−InPからなるエミッタ層1005、およびn+−InGaAsからなるエミッタコンタクト層1006を備える。
【0004】
また、エミッタコンタクト層1006の上には、タングステンからなるW電極1007,金からなるAu電極1008,およびタングステンからなるW電極1009が積層されている。W電極1007,Au電極1008,およびW電極1009によりエミッタ電極が構成されている。また、これらのエミッタ電極およびエミッタコンタクト層1006により、エミッタメサが構成されている。
【0005】
また、コレクタ層1003の周囲のサブコレクタ層1002の上には、コレクタ電極1010が形成され、上述したエミッタメサの周囲のベース層1004の上には、エミッタメサより離間してベース電極1011が形成されている。ここで、ベース層1004の上のエミッタメサ部分とベース電極1011との間の領域である外部ベース層の表面に流れる表面再結合電流を抑制するために、エミッタメサの部分よりエミッタ層1005を延長して、レッジ構造部1005aを形成している。
【0006】
なお、エミッタメサの部分の側面およびレッジ構造部1005aの表面には、これらを被覆するように、SiNからなる絶縁層1012が形成され、素子を埋めるように層間絶縁層1013が形成され、また、層間絶縁層1013の上には、W電極1009に接続する配線1014が形成されている。
【0007】
上述したHBTのエミッタメサ部,レッジ構造部1005a,および各電極などの作製では、例えば、まず、タングステン層,金層,タングステン層を順次に堆積して形成した後、これらを公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングすることで、W電極1007,Au電極1008,およびW電極1009を形成する。この後、W電極1007,Au電極1008,およびW電極1009をマスクとして、既に形成されているn+−InGaAsの層を選択的にエッチングすることで、エミッタコンタクト層1006が形成され、エミッタメサが構成される。
【0008】
次に、SiNを堆積してSiN膜を形成し、この上に、エミッタ層1005およびレッジ構造部1005aを形成するためのマスクパターンを用いた選択的なエッチングにより、SiN膜およびこの下層のi−InPの層をパターニングすることで、エミッタ層1005,レッジ構造部1005a,エミッタメサ,および絶縁層1012の部分が形成される。
【0009】
次に、マスクパターンを除去した後、リフト・オフ法によりベース電極1011を形成し、この後、InGaAsの層およびp+−InGaAsの層をパターニングしてコレクタ層1003,ベース層1004(ベース・コレクタメサ)を形成し、コレクタ電極1010を形成し、層間絶縁層1013を形成する。層間絶縁層1013は、例えば、よく知られた有機樹脂を塗布して形成した塗布膜を、加熱して硬化させることで形成できる。
【0010】
このHBTによれば、エミッタ層1005の空乏化に伴い外部ベースの上のレッジ構造部1005aも空乏化されるため、エミッタメサから外部ベース層表面に流れる再結合電流が抑制される。この結果、電流利得劣化が緩和され、デバイス寿命が増加することが期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】N. Kashio, et al. ,"0.25-μm-Emitter InP HBTs with a Passivation Ledge Structure", Extended Abstracts of the 2009 International Conference on Solid State Devices and Materials, J-4-3, pp.948-949, 2009.
【非特許文献2】Y. MATSUOKA, et al. ,"On the Emitter Resistance of High-Performance GaAs- and InP-Based Heterojunction Bipolar Transistors", Japanese Journal of Applied Physics, Vol.47, No.6, pp.4441-4447, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、HBTの動作速度向上には、素子の薄層化により電子走行時間を短縮するとともに、素子の微細化により、素子薄層化に伴う寄生容量の増加を抑制することが重要となる。例えば、500GHz以上の電流利得遮断周波数の実現には、コレクタ層を75nmに薄層化し、エミッタメサ部の幅(いわゆるエミッタ幅)およびベース電極幅を0.25μmに微細化し、ベース・コレクタ容量を低減する必要がある。
【0013】
ここで、上述したような各層は、例えば、波長365nmの紫外線(i線)を露光の光源としたステッパ(i線ステッパ)を用いたフォトリソグラフィーでマスクパターンを形成し、このマスクパターンを用いたドライエッチングにより形成されている。一般的に、i線ステッパを使用してポジレジストからマスクパターンを形成する場合、残しパターンであれば、露光量の調整により幅0.25μmまでの微細パターンが形成できる。しかしながら、リフトオフ法などに用いられる抜きパターンの場合は、露光量を調整しても0.35μm以下のパターン形成は難しい。
【0014】
図10を用いて説明したHBTでは、エミッタメサ形成において、残しパターンを用いるので、0.25μm幅のパターン形成は可能である。しかしながら、ベース電極は、抜きパターンを用いたリフト・オフ法により形成するため、ベース電極幅を0.35μm以下とすることが容易ではない。このため、上記構造のHBTでは、ベース・コレクタ容量の低減が容易ではなく、高周波特性を向上させることが容易ではない。
【0015】
また、上記HBTでは、レッジ構造部とベース電極との間隔が決めて狭いので、ベース電極形成のためのマスクパターンの形成で露光装置の位置合わせがずれ、レッジ構造部にベース電極が接触して形成される可能性がある。このように、レッジ構造部にベース電極が接して形成されると、エミッタ・ベース間のリーク電流が増大し、電流利得を劣化させ、素子の歩留まりを大きく低下させる恐れがある。
【0016】
また、ベース電極幅については、より微細なパターンの形成に優れた電子ビーム描画により、0.25μm幅のベース電極パターンを形成する方法もある。しかしながら、よく知られているように、描画のために減圧排気を行う必要があるなど電子ビーム描画は描画時間が長く、生産コストの増大を招いてしまう。加えて、電子ビーム描画では、i線ステッパで形成したパターンとの位置合わせ精度が低く、前述同様に、レッジ構造部とベース電極とが接触する恐れがある。
【0017】
上述した問題を解決する技術として、エミッタ電極に対して自己整合にベース電極を形成する方法が提案されている(非特許文献2参照)。非特許文献2におけるHBTについて簡単に説明すると、まず、半絶縁性のInPからなる基板1101の上に、InPからなるサブコレクタ層1102,InGaAsからなるコレクタ層1103、p+−InGaAsからなるベース層1104、n−InPからなる第1エミッタ層1105、n+−InPからなる第2エミッタ層1106,およびn+−InGaAsからなるエミッタコンタクト層1107を備える。
【0018】
また、エミッタコンタクト層1107の上には、タングステンからなるW電極1108が形成され、W電極1108の上には、Ti/Pt/Auからなる電極1109および電極1110が積層されている。W電極1108および電極1109によりエミッタ電極が構成されている。また、第2エミッタ層1106,エミッタコンタクト層1107,およびW電極1108によりエミッタメサが構成されている。
【0019】
また、コレクタ層1103の周囲のサブコレクタ層1102の上には、コレクタ電極1111が形成され、上述したエミッタメサの周囲のベース層1104の上には、エミッタメサより離間してベース電極1112が形成されている。ここで、ベース層1104の上のエミッタメサ部分とベース電極1112との間の領域である外部ベース層の表面に流れる表面再結合電流を抑制するために、エミッタメサの部分より第1エミッタ層1105を延長して、レッジ構造部1105aを形成している。なお、エミッタメサの部分の側面およびレッジ構造部1105aの表面には、これらを被覆するように、SiNからなる絶縁層1113が形成されている。
【0020】
このHBTでは、第2エミッタ層1106,エミッタコンタクト層1107,およびW電極1108からなるエミッタメサに対し、電極1109(電極1110)をより大きな面積に形成している。この構造は、電極1109に対し、エミッタメサとなる部分をオーバーエッチングするなどのことによりアンダーカット形状にすることで形成することができる。また、このようなアンダーカット形状にエミッタメサ部を形成することで、第1エミッタ層1105にレッジ構造部1105aが形成できる。
【0021】
また、絶縁層1113を形成した状態の電極1109をマスクとし、電極材料を堆積すれば、電極材料は電極1109および絶縁層1113よりなる庇の部分の下方には堆積されない。第1エミッタ層1105およびレッジ構造部1105aを電極1109と同面積に形成しておけば、絶縁層1113の層厚だけ外側に堆積される電極材料は、レッジ構造部1105aに接触することがない。従って、絶縁層1113を形成した状態の電極1109をマスクとした電極材料の堆積によりベース電極1112を形成すれば、レッジ構造部1105aに接触させることなく、自己整合的にベース電極1112を形成することができる。
【0022】
また、上述したように事項整合的にベース電極1112が形成できるので、露光装置の解像度に制限されることなく、0.25μm幅のベース電極1112を形成することが可能となるので、HBTの高速性と信頼性の両立を実現できる。
【0023】
しかしながら、上記の方法では、ベース電極幅の微細化は可能となるが、エミッタメサ幅の微細化が容易ではないという問題がある。前述したように、エッチングによりアンダーカット形状とすることでエミッタメサを形成している。この場合、一般には、ウエットエッチングによるエッチング量によりエミッタメサの幅を制御することになり、この寸法を0.25μmに制御することは容易ではなく、また、再現性にも問題がある。このように、上記の方法は、0.25μm幅のベース電極は形成できるものの、エミッタメサ形成における加工精度・再現性の劣化などにより高周波特性の劣化を招く等の別の問題が生じてしまう。
【0024】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、エミッタメサの加工精度を損ねることなく、HBTの高速性および信頼性が向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係るバイポーラトランジスタは、半絶縁性の化合物半導体からなる基板と、基板の上に形成された化合物半導体からなるサブコレクタ層と、このサブコレクタ層の上に形成された化合物半導体からなるコレクタ層と、このコレクタ層の上に形成された化合物半導体からなるベース層と、このベース層の上に形成されたベース層とは異なる化合物半導体からなるエミッタ層と、このエミッタ層の上に形成された化合物半導体からなるエミッタコンタクト層と、コレクタ層の周囲のサブコレクタ層の上に形成されたコレクタ電極と、エミッタ層の周囲のベース層の上に形成されたベース電極と、ベース電極とエミッタ層との間に配置されてエミッタ層と一体に形成されたレッジ構造部と、エミッタコンタクト層の側面およびレッジ構造部の表面に接して形成された窒化シリコンからなる第1絶縁層と、エミッタコンタクト層の側部で第1絶縁層の側部に接して形成された酸化シリコンからなる第2絶縁層と、エミッタコンタクト層の上に形成されたエミッタ電極とを少なくとも備え、基板の平面方向において、レッジ構造部の外形は第1絶縁層の外形と同じに形成され、第2絶縁層の外形は第1絶縁層の外形より広く形成され、第2絶縁層は、エミッタコンタクト層および第1絶縁層の側方のベース層との間に空間を形成する庇部を備え、レッジ構造部とベース電極とは、庇部の下の領域で離間している。
【0026】
また、本発明に係るバイポーラトランジスタの製造方法は、半絶縁性の化合物半導体からなる基板の上に、化合物半導体からなるコレクタコンタクト層を形成する工程と、コレクタコンタクト層の上に化合物半導体からなるコレクタ層を形成する工程と、コレクタ層の上に化合物半導体からなるベース層を形成する工程と、ベース層の上にベース層とは異なる化合物半導体からなりエミッタ層となる第1半導体層を形成する工程と、第1半導体層の上に化合物半導体からなりエミッタコンタクト層となる第2半導体層を形成する工程と、第2半導体層をパターニングしてエミッタコンタクト層を形成する工程と、エミッタコンタクト層を含む第1半導体層の上に窒化シリコンからなる第1絶縁層を形成する工程と、第1絶縁層の上に酸化シリコンからなる第2絶縁層を形成する工程と、第1絶縁層および第2絶縁層のエミッタコンタクト層の上部に対応する領域に第1開口領域を形成する工程と、平面の面積が第1開口領域より広い第1マスクパターンを第1開口領域を含む第2絶縁層の上に形成する工程と、第1マスクパターンをマスクとして第2絶縁層を選択的にエッチングして第1マスクパターン以外の領域の第1絶縁層の表面を露出させ、第2絶縁層がエミッタコンタクト層の側部に配置される状態とする工程と、第1マスクパターンをマスクとして第1絶縁層を選択的にエッチングして第1マスクパターン以外の領域の第1半導体層を露出させ、加えて、第1マスクパターンの下部領域の第1マスクパターンの周端部より内側の一部領域の第1半導体層を露出させ、エミッタコンタクト層の側部の第2絶縁層の内側に第1絶縁層が配置された状態とし、第2絶縁層に第1半導体層との間に空間を備える庇部を形成する工程と、第1マスクパターンおよび第1絶縁層をマスクとして第1半導体層を選択的にエッチングし、エミッタコンタクト層の下部に配置されるエミッタ層および第1絶縁層の下部に配置されるレッジ構造部を形成する工程と、第1マスクパターンを除去した後、第2絶縁層の形成領域を含んでこの形成領域より広い第2開口領域を有する第2マスクパターンをベース層の上に形成する工程と、少なくとも第2マスクパターンの第2開口領域の内側領域に金属を堆積することで、第2絶縁層の周囲および第2開口領域の内側のベース層の上に自己整合的にベース電極を形成し、加えて、第2絶縁層および第1開口領域の内側のエミッタコンタクト層の上にエミッタ電極を形成する工程と、第2マスクパターンを除去した後、コレクタコンタクト層に接続するコレクタ電極を形成する工程とを少なくとも備える。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、エミッタコンタクト層の側方に第1絶縁層および庇部を備える第2絶縁層を形成し、第1絶縁層を利用してレッジ構造部を形成し、第2絶縁層を利用して自己整合的にベース電極を形成したので、エミッタメサの加工精度を損ねることなく、HBTの高速性および信頼性が向上できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図10】図10は、レッジ構造を備えるHBTの構成を示す断面図である。
【図11】図11は、レッジ構造を備えて自己整合的にベース電極が形成されたHBTの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの構成を示す断面図である。このバイポーラトランジスタ(HBT)は、まず、Feをドープすることで半絶縁性としたInPからなる基板101と、基板101の上に形成されたInPからなるサブコレクタ層102と、サブコレクタ層102の上に形成されたInGaAsからなるコレクタ層103と、コレクタ層103の上に形成されたp+−InGaAsからなるベース層104と、ベース層104の上に形成されたi−InPからなるエミッタ層105と、エミッタ層105の上に形成されたn+−InGaAsからなるエミッタコンタクト層106とを備える。
【0030】
また、エミッタコンタクト層106の上には、タングステン系の材料からなる第1エミッタ電極107,第2エミッタ電極110,および第3エミッタ電極113が形成されている。な、第1エミッタ電極107およびエミッタコンタクト層106により、エミッタメサが構成されている。エミッタメサは、平面視長方形に形成され、短い辺の断面が図1に示されている。この平面視長方形の短い方の長さが、一般にエミッタメサ幅と呼ばれている。なお、タングステン系の材料より構成する第1エミッタ電極107は、他の電極を構成する金属の拡散を抑制するために用いており、タングステン系の材料に限らず、タンタル系の材料より構成してもよい。また、金属の拡散が問題とならない婆、第1エミッタ電極107は用いなくてもよい。
【0031】
また、コレクタ層103の周囲のサブコレクタ層102の上には、コレクタ電極112が形成され、上述したエミッタメサの周囲のベース層104の上にはベース電極111が形成されている。ここで、ベース層104の上のエミッタメサ部分とベース電極111との間の領域である外部ベース層の表面に流れる表面再結合電流を抑制するために、エミッタメサの部分よりエミッタ層105を延長して、レッジ構造部105aを形成している。ベース電極111は、レッジ構造部105aと離間している。
【0032】
加えて、エミッタメサの部分の側面およびレッジ構造部105aの表面には、これらを被覆するように、窒化シリコン(SiN)からなる第1絶縁層108が形成されている。また、第1絶縁層108の周囲には、酸化シリコンからなる第2絶縁層109が形成されている。第2絶縁層の下端部には、レッジ構造部1105aが形成されている領域より外側に延在し、第1絶縁層108およびレッジ構造部105aの側方のベース層104との間に空間を形成する庇部109aが形成されている。
【0033】
本実施の形態では、基板101の平面方向において、レッジ構造部105aの外形は第1絶縁層aの外形と同じに形成されている。また、第2絶縁層109の外形は第1絶縁層108の外形より広く形成されて庇部109aを備え、レッジ構造部105aとベース電極111とは、庇部109aの下の領域で離間している。
【0034】
上述した本実施の形態によれば、第1絶縁層108および庇部109aを備える第2絶縁層109を、エミッタメサの側面に形成したので、第2絶縁層109の庇部109aを利用して自己整合的にベース電極111が形成できる。また、後述するように、ベース電極111の自己整合的な形成のための第2絶縁層109とは別に、エミッタコンタクト層106を含むエミッタメサ部が形成できるので、アンダーカット形状に加工する必要がなく、横方向の寸法を0.25μmに制御することが容易となる。また、この寸法が、再現性よく形成できるようになる。
【0035】
以下、本実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法について説明する。
【0036】
まず、図2に示すように、基板101の上に、InPからなるサブコレクタ層102、InGaAs層201、p+−InGaAs層(第1半導体層)202、i−InP層(第2半導体層)203、n+−InGaAs層204を、この順に堆積して形成する。これらは、例えば、よく知られた有機金属気相成長法や分子線エピタキシー法により形成できる。続いて、n+−InGaAs層204の上に、タングステンを主成分とする金属層205を形成する。金属層205は、例えば、スパッタ法もしくは蒸着法により形成することができる。
【0037】
次に、図3に示すように、レジストパターン206を用い、エミッタコンタクト層106および第1エミッタ電極107を形成する。例えば、レジストパターン206をマスクとし、SF6ガスを用いた反応性イオンエッチングにより金属層205を選択的にエッチング除去することで、第1エミッタ電極107が形成できる。また、第1エミッタ電極107を形成した後、レジストパターン206をマスクとし、塩素ガスを用いた反応性イオンエッチングで、層厚方向に8割程度のn+−InGaAs層204を選択的にエッチング除去し、ウエットエッチングにより残りをエッチングすることで、エミッタコンタクト層106が形成できる。
【0038】
上述したエミッタメサ部の形成では、レジストパターン206に対してオーバーエッチングするなどのことによりアンダーカット形状を形成することなく、レジストパターン206の形状(寸法)にほぼ等しい形状にエミッタメサ部を形成している。このため、例えば、レジストパターン206の寸法を、0.25μmとすることで、制御性よくかつ再現性よく、エミッタ幅0.25μmのエミッタメサ形状が形成できる。
【0039】
次に、図4に示すように、エミッタコンタクト層106および第1エミッタ電極107よりなるエミッタメサ部を含むi−InP層203の上に、膜厚100nmのSiN膜(第1絶縁層)207および膜厚50nmの酸化シリコン膜(第2絶縁層)208を形成する。次いで、SiN膜207および酸化シリコン膜208の第1エミッタ電極107の上部に、開口領域(第1開口領域)209を形成し、第1エミッタ電極107の上面を露出させる。例えば、スパッタ法もしくはプラズマCVD法により、SiN膜207および酸化シリコン膜208が形成できる。また、例えば、開口幅が0.35μmの開口部を備えるレジストパターンを用い、SiN膜207および酸化シリコン膜208を反応性イオンエッチングにより選択的にエッチング除去することで、開口領域209が形成できる。なお、上記レジストパターンは、開口領域209を形成した後で除去する。
【0040】
次に、図5に示すように、平面の面積が開口領域209より広いレジストパターン(第1マスクパターン)210を形成する。エミッタメサ幅方向のレジストパターン210の寸法は、エミッタメサ部の側部に形成されている第1絶縁層108および第2絶縁層109の層厚をエミッタメサ部の幅に加えた合計の寸法より大きくする。側部の第1絶縁層108および第2絶縁層109の層厚を加えた寸法より大きくすれば、開口領域209より広い面積のレジストパターン210となる。
【0041】
このように形成したレジストパターン210を用いた選択的なエッチングにより、SiN膜207をパターニングした第1絶縁層108および酸化シリコン膜208をパターニングした第2絶縁層109を形成する。第1絶縁層108は、エミッタコンタクト層106を含むエミッタメサ部の側部の第2絶縁層109の内側に配置された状態とする。また、第2絶縁層109は、i−InP層203との間に空間を形成する庇部109aを備えるように形成する。なお、第1絶縁層108は、エミッタメサ部の側面からi−InP層203の平面上に延在して形成されている。同様に、第2絶縁層109も、エミッタメサ部の側面からi−InP層203の平面上に延在して形成されている。また、庇部109aは、第2絶縁層109のi−InP層203の平面上への延在部に形成される。
【0042】
例えば、まず、レジストパターン210をマスクとし、C2F6ガスを用いた反応性イオンエッチングにより酸化シリコン膜208を選択的にエッチング除去することで、第2絶縁層109が形成できる。このようにして第2絶縁層109を形成した後、SF6ガスを用いた反応性イオンエッチングによりSiN膜207を選択的にエッチング除去することで、第1絶縁層108が形成できる。
【0043】
このSF6ガスを用いた反応性イオンエッチングにおいて、レジストパターン210の形成領域以外のi−InP層203の領域が露出した後も、オーバーエッチングすることで、第1絶縁層108のi−InP層203直上の横方向の寸法を、レジストパターン210より小さくする。SF6ガスによる反応性イオンエッチングでは、酸化シリコンから構成されている第2絶縁層109はエッチングされない。このオーバーエッチングにより、庇部109aが形成できる。
【0044】
なお、レジストパターン210は、この平面形状を基板101の側に投影したときに、レッジ構造部105aを備えるエミッタ層105の形状(領域)より、上述した庇部109aの寸法だけ大きくなるように形成する。レッジ構造部105aの領域および庇部109aとする領域の寸法を考慮し、レジストパターン210の平面形状の寸法を、エミッタメサ部の側部に形成されている第1絶縁層108および第2絶縁層109の層厚をエミッタメサ部の幅に加えた合計の寸法より大きくすればよい。例えば、レッジ構造部105aを含めたエミッタ層105のエミッタ幅方向の長さが0.7μmとなるようにする場合、レジストパターン210の平面形状は、エミッタ幅方向の長さが0.8μmとなるように形成する。この場合、庇部109aの平面方向(エミッタ幅方向)の寸法は、0.05μm程度とすればよい。
【0045】
次に、図6に示すように、レジストパターン210および第1絶縁層108をマスクとして用いることで、エミッタ層105およびレッジ構造部105aを形成する。例えば、塩酸系のエッチャントを用いたウエットエッチングによりi−InP層203をエッチングすることで、エミッタ層105およびレッジ構造部105aが形成できる。
【0046】
次に、レジストパターン210を除去した後、図7に示すように、開口領域211aを備えるレジストパターン211、およびレジストパターン211の上に配置されて開口領域212aを備えるレジストパターン212を形成する。開口領域211aおよび開口領域212aは、層厚方向の中心軸がほぼ一致するように形成する。また、開口領域211aは、開口領域212aより広く形成する。
【0047】
次に、レジストパターン211およびレジストパターン211をマスクパターンとしてPt、Ti、Mo、およびAuをこの順に堆積して金属膜213を形成することで、第2エミッタ電極110およびベース電極111を同時に形成する。ここで、レジストパターン212の開口領域212aおよび庇部109aを含む第2絶縁層109により制限されて、自己整合的にベース電極111が配置されて形成される。このため、庇部109aより内側に形成されているレッジ構造部105aに、ベース電極111が接触することなく形成される。また、ベース電極111は、レジストパターン211に接触することなく形成されるようになる。
【0048】
次に、レジストパターン211およびレジストパターン212を除去する。これらのレジストパターンの除去により、金属膜213も同時に除去される。この後、レジストパターン(不図示)を用いた選択的なエッチングによりInGaAs層201およびp+−InGaAs層202をパターニングすることで、図8に示すように、コレクタ層103およびベース層104を形成してベース・コレクタメサとし、素子間が分離された状態とする。また、公知のリフトオフ法により、コレクタ電極112および第3エミッタ電極113を形成する。
【0049】
この後、ベンゾシクロブテンなどの絶縁性および耐熱性を有する有機樹脂を塗布して塗布膜を形成し、これを加熱して硬化し、この後、例えば反応性イオンエッチングによりエッチバックすることで第3エミッタ電極113の上面が露出するように、層間絶縁層114を形成する。また、層間絶縁層114の上に、第3エミッタ電極113に接続する配線115を形成する。
【0050】
上述した本実施の形態によれば、エミッタメサ部を、アンダーカット形状にすることなくドライエッチングにより加工できるため、再現性よく0.25μm幅のエミッタメサ部が形成できる。また、エミッタメサ部とは独立してレッジ構造部105aが形成でき、また、レッジ構造部105aに接触することなく、自己整合的に0.25μm程度の幅としたベース電極111を形成することができる。
【0051】
さらに、第1絶縁層108(SiN膜207)の厚さ制御により、ベース電極111の厚さが調整できる。前述したように、第2エミッタ電極110およびベース電極111は、金属膜213の堆積により同時に形成する。このため、ベース電極111を厚く形成すると、エミッタ電極110の周端下部と、ベース電極111の上端部とが接触する場合も発生する。ここで、第1絶縁層108を厚く形成すれば、エミッタ電極110の周端下部とベース電極111の上端部との層厚方向の距離をより大きくすることができる。言い換えると、第1絶縁層108を厚くすることで、エミッタ電極110と接触することなく、ベース電極111をより厚く形成することができるようになる。
【0052】
また、第1絶縁層108は、SF6を用いた反応性イオンエッチングにより形成するため、この上の第2絶縁層109に庇部109aを形成するためのアンダーカット量(サイドエッチング量、オーバーエッチング量)の制御性・再現性は非常に高い。このように、本実施の形態によれば、HBT集積回路への応用が十分に期待できる。
【0053】
また、上述した実施の形態では、第1エミッタ電極107の上に、Pt/Ti/Mo/Auの積層構造からなる第2エミッタ電極110が形成されるが、タングステン系の金属層とPtの層との接触抵抗は十分小さく、エミッタ抵抗の増大を招くことがなく、高周波特性を劣化させることはない。
【0054】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、第1エミッタ電極107はなくてもよく、この場合、図2を用いて説明した工程で金属層205を形成せず、この後の工程で第1エミッタ電極107を備えない状態とすればよい。この場合、第1絶縁層108および第2絶縁層109は、エミッタコンタクト層106の側部に配置されることになる。
【0055】
また、例えば、基板、サブコレクタ層、コレクタ層、ベース層、エミッタ層、エミッタコンタクト層を、各々、InP、InGaAs、InGaAs、InP、InGaAsから構成したが、これに限るものではなく、他の化合物半導体から構成してもよい。例えば、コレクタ層にInGaAsよりもバンドギャップの大きいInPを用い、ダブルヘテロ接合構造のバイポーラトランジスタであっても同様である。また、エミッタ層にInAlAsを用いる構造のHBT、またはベース層にGaAsSbやInGaAsSbを用いる構造のHBTであっても、前述同様に本発明が適用できる。
【符号の説明】
【0056】
101…基板、102…サブコレクタ層、103…コレクタ層、104…ベース層、105…エミッタ層、105a…レッジ構造部、106…エミッタコンタクト層、107…第1エミッタ電極、108…第1絶縁層、109…第2絶縁層、109a…庇部、110…第2エミッタ電極、111…ベース電極、112…コレクタ電極、113…第3エミッタ電極。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘテロ接合バイポーラトランジスタおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
InP系の化合物半導体を用いたヘテロ接合バイポーラトランジスタ(HBT)は、高速かつ低消費電力動作に優れた半導体素子であり、光通信システム向けの電子回路(IC)への応用が期待されている。このHBTにおいても、他の半導体素子と同様、実用化に最も重要な課題は信頼性の確保である。特に、InP系HBTの場合、長期間の通電による電流利得劣化が問題となっている。この電流利得劣化は、エミッタの領域からこの周囲のベース(外部ベース)層の表面に流れる表面再結合電流が原因である。InP系HBTにおける電流利得劣化の問題は、上述した外部ベース層表面に流れる表面再結合電流の抑制が重要となる。外部ベース層表面の再結合電流を抑制する手段として、外部ベース層の上をInPエミッタ層で被覆する構造(レッジ構造)が提案されている(非特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上述したレッジ構造を備えるHBTについて説明する。このHBTは、図10に示すように、まず、半絶縁性のInPからなる基板1001の上に、InPからなるサブコレクタ層1002,InGaAsからなるコレクタ層1003、p+−InGaAsからなるベース層1004、i−InPからなるエミッタ層1005、およびn+−InGaAsからなるエミッタコンタクト層1006を備える。
【0004】
また、エミッタコンタクト層1006の上には、タングステンからなるW電極1007,金からなるAu電極1008,およびタングステンからなるW電極1009が積層されている。W電極1007,Au電極1008,およびW電極1009によりエミッタ電極が構成されている。また、これらのエミッタ電極およびエミッタコンタクト層1006により、エミッタメサが構成されている。
【0005】
また、コレクタ層1003の周囲のサブコレクタ層1002の上には、コレクタ電極1010が形成され、上述したエミッタメサの周囲のベース層1004の上には、エミッタメサより離間してベース電極1011が形成されている。ここで、ベース層1004の上のエミッタメサ部分とベース電極1011との間の領域である外部ベース層の表面に流れる表面再結合電流を抑制するために、エミッタメサの部分よりエミッタ層1005を延長して、レッジ構造部1005aを形成している。
【0006】
なお、エミッタメサの部分の側面およびレッジ構造部1005aの表面には、これらを被覆するように、SiNからなる絶縁層1012が形成され、素子を埋めるように層間絶縁層1013が形成され、また、層間絶縁層1013の上には、W電極1009に接続する配線1014が形成されている。
【0007】
上述したHBTのエミッタメサ部,レッジ構造部1005a,および各電極などの作製では、例えば、まず、タングステン層,金層,タングステン層を順次に堆積して形成した後、これらを公知のリソグラフィー技術およびエッチング技術によりパターニングすることで、W電極1007,Au電極1008,およびW電極1009を形成する。この後、W電極1007,Au電極1008,およびW電極1009をマスクとして、既に形成されているn+−InGaAsの層を選択的にエッチングすることで、エミッタコンタクト層1006が形成され、エミッタメサが構成される。
【0008】
次に、SiNを堆積してSiN膜を形成し、この上に、エミッタ層1005およびレッジ構造部1005aを形成するためのマスクパターンを用いた選択的なエッチングにより、SiN膜およびこの下層のi−InPの層をパターニングすることで、エミッタ層1005,レッジ構造部1005a,エミッタメサ,および絶縁層1012の部分が形成される。
【0009】
次に、マスクパターンを除去した後、リフト・オフ法によりベース電極1011を形成し、この後、InGaAsの層およびp+−InGaAsの層をパターニングしてコレクタ層1003,ベース層1004(ベース・コレクタメサ)を形成し、コレクタ電極1010を形成し、層間絶縁層1013を形成する。層間絶縁層1013は、例えば、よく知られた有機樹脂を塗布して形成した塗布膜を、加熱して硬化させることで形成できる。
【0010】
このHBTによれば、エミッタ層1005の空乏化に伴い外部ベースの上のレッジ構造部1005aも空乏化されるため、エミッタメサから外部ベース層表面に流れる再結合電流が抑制される。この結果、電流利得劣化が緩和され、デバイス寿命が増加することが期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】N. Kashio, et al. ,"0.25-μm-Emitter InP HBTs with a Passivation Ledge Structure", Extended Abstracts of the 2009 International Conference on Solid State Devices and Materials, J-4-3, pp.948-949, 2009.
【非特許文献2】Y. MATSUOKA, et al. ,"On the Emitter Resistance of High-Performance GaAs- and InP-Based Heterojunction Bipolar Transistors", Japanese Journal of Applied Physics, Vol.47, No.6, pp.4441-4447, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、HBTの動作速度向上には、素子の薄層化により電子走行時間を短縮するとともに、素子の微細化により、素子薄層化に伴う寄生容量の増加を抑制することが重要となる。例えば、500GHz以上の電流利得遮断周波数の実現には、コレクタ層を75nmに薄層化し、エミッタメサ部の幅(いわゆるエミッタ幅)およびベース電極幅を0.25μmに微細化し、ベース・コレクタ容量を低減する必要がある。
【0013】
ここで、上述したような各層は、例えば、波長365nmの紫外線(i線)を露光の光源としたステッパ(i線ステッパ)を用いたフォトリソグラフィーでマスクパターンを形成し、このマスクパターンを用いたドライエッチングにより形成されている。一般的に、i線ステッパを使用してポジレジストからマスクパターンを形成する場合、残しパターンであれば、露光量の調整により幅0.25μmまでの微細パターンが形成できる。しかしながら、リフトオフ法などに用いられる抜きパターンの場合は、露光量を調整しても0.35μm以下のパターン形成は難しい。
【0014】
図10を用いて説明したHBTでは、エミッタメサ形成において、残しパターンを用いるので、0.25μm幅のパターン形成は可能である。しかしながら、ベース電極は、抜きパターンを用いたリフト・オフ法により形成するため、ベース電極幅を0.35μm以下とすることが容易ではない。このため、上記構造のHBTでは、ベース・コレクタ容量の低減が容易ではなく、高周波特性を向上させることが容易ではない。
【0015】
また、上記HBTでは、レッジ構造部とベース電極との間隔が決めて狭いので、ベース電極形成のためのマスクパターンの形成で露光装置の位置合わせがずれ、レッジ構造部にベース電極が接触して形成される可能性がある。このように、レッジ構造部にベース電極が接して形成されると、エミッタ・ベース間のリーク電流が増大し、電流利得を劣化させ、素子の歩留まりを大きく低下させる恐れがある。
【0016】
また、ベース電極幅については、より微細なパターンの形成に優れた電子ビーム描画により、0.25μm幅のベース電極パターンを形成する方法もある。しかしながら、よく知られているように、描画のために減圧排気を行う必要があるなど電子ビーム描画は描画時間が長く、生産コストの増大を招いてしまう。加えて、電子ビーム描画では、i線ステッパで形成したパターンとの位置合わせ精度が低く、前述同様に、レッジ構造部とベース電極とが接触する恐れがある。
【0017】
上述した問題を解決する技術として、エミッタ電極に対して自己整合にベース電極を形成する方法が提案されている(非特許文献2参照)。非特許文献2におけるHBTについて簡単に説明すると、まず、半絶縁性のInPからなる基板1101の上に、InPからなるサブコレクタ層1102,InGaAsからなるコレクタ層1103、p+−InGaAsからなるベース層1104、n−InPからなる第1エミッタ層1105、n+−InPからなる第2エミッタ層1106,およびn+−InGaAsからなるエミッタコンタクト層1107を備える。
【0018】
また、エミッタコンタクト層1107の上には、タングステンからなるW電極1108が形成され、W電極1108の上には、Ti/Pt/Auからなる電極1109および電極1110が積層されている。W電極1108および電極1109によりエミッタ電極が構成されている。また、第2エミッタ層1106,エミッタコンタクト層1107,およびW電極1108によりエミッタメサが構成されている。
【0019】
また、コレクタ層1103の周囲のサブコレクタ層1102の上には、コレクタ電極1111が形成され、上述したエミッタメサの周囲のベース層1104の上には、エミッタメサより離間してベース電極1112が形成されている。ここで、ベース層1104の上のエミッタメサ部分とベース電極1112との間の領域である外部ベース層の表面に流れる表面再結合電流を抑制するために、エミッタメサの部分より第1エミッタ層1105を延長して、レッジ構造部1105aを形成している。なお、エミッタメサの部分の側面およびレッジ構造部1105aの表面には、これらを被覆するように、SiNからなる絶縁層1113が形成されている。
【0020】
このHBTでは、第2エミッタ層1106,エミッタコンタクト層1107,およびW電極1108からなるエミッタメサに対し、電極1109(電極1110)をより大きな面積に形成している。この構造は、電極1109に対し、エミッタメサとなる部分をオーバーエッチングするなどのことによりアンダーカット形状にすることで形成することができる。また、このようなアンダーカット形状にエミッタメサ部を形成することで、第1エミッタ層1105にレッジ構造部1105aが形成できる。
【0021】
また、絶縁層1113を形成した状態の電極1109をマスクとし、電極材料を堆積すれば、電極材料は電極1109および絶縁層1113よりなる庇の部分の下方には堆積されない。第1エミッタ層1105およびレッジ構造部1105aを電極1109と同面積に形成しておけば、絶縁層1113の層厚だけ外側に堆積される電極材料は、レッジ構造部1105aに接触することがない。従って、絶縁層1113を形成した状態の電極1109をマスクとした電極材料の堆積によりベース電極1112を形成すれば、レッジ構造部1105aに接触させることなく、自己整合的にベース電極1112を形成することができる。
【0022】
また、上述したように事項整合的にベース電極1112が形成できるので、露光装置の解像度に制限されることなく、0.25μm幅のベース電極1112を形成することが可能となるので、HBTの高速性と信頼性の両立を実現できる。
【0023】
しかしながら、上記の方法では、ベース電極幅の微細化は可能となるが、エミッタメサ幅の微細化が容易ではないという問題がある。前述したように、エッチングによりアンダーカット形状とすることでエミッタメサを形成している。この場合、一般には、ウエットエッチングによるエッチング量によりエミッタメサの幅を制御することになり、この寸法を0.25μmに制御することは容易ではなく、また、再現性にも問題がある。このように、上記の方法は、0.25μm幅のベース電極は形成できるものの、エミッタメサ形成における加工精度・再現性の劣化などにより高周波特性の劣化を招く等の別の問題が生じてしまう。
【0024】
本発明は、以上のような問題点を解消するためになされたものであり、エミッタメサの加工精度を損ねることなく、HBTの高速性および信頼性が向上できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明に係るバイポーラトランジスタは、半絶縁性の化合物半導体からなる基板と、基板の上に形成された化合物半導体からなるサブコレクタ層と、このサブコレクタ層の上に形成された化合物半導体からなるコレクタ層と、このコレクタ層の上に形成された化合物半導体からなるベース層と、このベース層の上に形成されたベース層とは異なる化合物半導体からなるエミッタ層と、このエミッタ層の上に形成された化合物半導体からなるエミッタコンタクト層と、コレクタ層の周囲のサブコレクタ層の上に形成されたコレクタ電極と、エミッタ層の周囲のベース層の上に形成されたベース電極と、ベース電極とエミッタ層との間に配置されてエミッタ層と一体に形成されたレッジ構造部と、エミッタコンタクト層の側面およびレッジ構造部の表面に接して形成された窒化シリコンからなる第1絶縁層と、エミッタコンタクト層の側部で第1絶縁層の側部に接して形成された酸化シリコンからなる第2絶縁層と、エミッタコンタクト層の上に形成されたエミッタ電極とを少なくとも備え、基板の平面方向において、レッジ構造部の外形は第1絶縁層の外形と同じに形成され、第2絶縁層の外形は第1絶縁層の外形より広く形成され、第2絶縁層は、エミッタコンタクト層および第1絶縁層の側方のベース層との間に空間を形成する庇部を備え、レッジ構造部とベース電極とは、庇部の下の領域で離間している。
【0026】
また、本発明に係るバイポーラトランジスタの製造方法は、半絶縁性の化合物半導体からなる基板の上に、化合物半導体からなるコレクタコンタクト層を形成する工程と、コレクタコンタクト層の上に化合物半導体からなるコレクタ層を形成する工程と、コレクタ層の上に化合物半導体からなるベース層を形成する工程と、ベース層の上にベース層とは異なる化合物半導体からなりエミッタ層となる第1半導体層を形成する工程と、第1半導体層の上に化合物半導体からなりエミッタコンタクト層となる第2半導体層を形成する工程と、第2半導体層をパターニングしてエミッタコンタクト層を形成する工程と、エミッタコンタクト層を含む第1半導体層の上に窒化シリコンからなる第1絶縁層を形成する工程と、第1絶縁層の上に酸化シリコンからなる第2絶縁層を形成する工程と、第1絶縁層および第2絶縁層のエミッタコンタクト層の上部に対応する領域に第1開口領域を形成する工程と、平面の面積が第1開口領域より広い第1マスクパターンを第1開口領域を含む第2絶縁層の上に形成する工程と、第1マスクパターンをマスクとして第2絶縁層を選択的にエッチングして第1マスクパターン以外の領域の第1絶縁層の表面を露出させ、第2絶縁層がエミッタコンタクト層の側部に配置される状態とする工程と、第1マスクパターンをマスクとして第1絶縁層を選択的にエッチングして第1マスクパターン以外の領域の第1半導体層を露出させ、加えて、第1マスクパターンの下部領域の第1マスクパターンの周端部より内側の一部領域の第1半導体層を露出させ、エミッタコンタクト層の側部の第2絶縁層の内側に第1絶縁層が配置された状態とし、第2絶縁層に第1半導体層との間に空間を備える庇部を形成する工程と、第1マスクパターンおよび第1絶縁層をマスクとして第1半導体層を選択的にエッチングし、エミッタコンタクト層の下部に配置されるエミッタ層および第1絶縁層の下部に配置されるレッジ構造部を形成する工程と、第1マスクパターンを除去した後、第2絶縁層の形成領域を含んでこの形成領域より広い第2開口領域を有する第2マスクパターンをベース層の上に形成する工程と、少なくとも第2マスクパターンの第2開口領域の内側領域に金属を堆積することで、第2絶縁層の周囲および第2開口領域の内側のベース層の上に自己整合的にベース電極を形成し、加えて、第2絶縁層および第1開口領域の内側のエミッタコンタクト層の上にエミッタ電極を形成する工程と、第2マスクパターンを除去した後、コレクタコンタクト層に接続するコレクタ電極を形成する工程とを少なくとも備える。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように、本発明によれば、エミッタコンタクト層の側方に第1絶縁層および庇部を備える第2絶縁層を形成し、第1絶縁層を利用してレッジ構造部を形成し、第2絶縁層を利用して自己整合的にベース電極を形成したので、エミッタメサの加工精度を損ねることなく、HBTの高速性および信頼性が向上できるようになるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの構成を示す構成図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図9】図9は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法を説明するための製造工程における断面を示す断面図である。
【図10】図10は、レッジ構造を備えるHBTの構成を示す断面図である。
【図11】図11は、レッジ構造を備えて自己整合的にベース電極が形成されたHBTの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1は、本発明の実施の形態におけるバイポーラトランジスタの構成を示す断面図である。このバイポーラトランジスタ(HBT)は、まず、Feをドープすることで半絶縁性としたInPからなる基板101と、基板101の上に形成されたInPからなるサブコレクタ層102と、サブコレクタ層102の上に形成されたInGaAsからなるコレクタ層103と、コレクタ層103の上に形成されたp+−InGaAsからなるベース層104と、ベース層104の上に形成されたi−InPからなるエミッタ層105と、エミッタ層105の上に形成されたn+−InGaAsからなるエミッタコンタクト層106とを備える。
【0030】
また、エミッタコンタクト層106の上には、タングステン系の材料からなる第1エミッタ電極107,第2エミッタ電極110,および第3エミッタ電極113が形成されている。な、第1エミッタ電極107およびエミッタコンタクト層106により、エミッタメサが構成されている。エミッタメサは、平面視長方形に形成され、短い辺の断面が図1に示されている。この平面視長方形の短い方の長さが、一般にエミッタメサ幅と呼ばれている。なお、タングステン系の材料より構成する第1エミッタ電極107は、他の電極を構成する金属の拡散を抑制するために用いており、タングステン系の材料に限らず、タンタル系の材料より構成してもよい。また、金属の拡散が問題とならない婆、第1エミッタ電極107は用いなくてもよい。
【0031】
また、コレクタ層103の周囲のサブコレクタ層102の上には、コレクタ電極112が形成され、上述したエミッタメサの周囲のベース層104の上にはベース電極111が形成されている。ここで、ベース層104の上のエミッタメサ部分とベース電極111との間の領域である外部ベース層の表面に流れる表面再結合電流を抑制するために、エミッタメサの部分よりエミッタ層105を延長して、レッジ構造部105aを形成している。ベース電極111は、レッジ構造部105aと離間している。
【0032】
加えて、エミッタメサの部分の側面およびレッジ構造部105aの表面には、これらを被覆するように、窒化シリコン(SiN)からなる第1絶縁層108が形成されている。また、第1絶縁層108の周囲には、酸化シリコンからなる第2絶縁層109が形成されている。第2絶縁層の下端部には、レッジ構造部1105aが形成されている領域より外側に延在し、第1絶縁層108およびレッジ構造部105aの側方のベース層104との間に空間を形成する庇部109aが形成されている。
【0033】
本実施の形態では、基板101の平面方向において、レッジ構造部105aの外形は第1絶縁層aの外形と同じに形成されている。また、第2絶縁層109の外形は第1絶縁層108の外形より広く形成されて庇部109aを備え、レッジ構造部105aとベース電極111とは、庇部109aの下の領域で離間している。
【0034】
上述した本実施の形態によれば、第1絶縁層108および庇部109aを備える第2絶縁層109を、エミッタメサの側面に形成したので、第2絶縁層109の庇部109aを利用して自己整合的にベース電極111が形成できる。また、後述するように、ベース電極111の自己整合的な形成のための第2絶縁層109とは別に、エミッタコンタクト層106を含むエミッタメサ部が形成できるので、アンダーカット形状に加工する必要がなく、横方向の寸法を0.25μmに制御することが容易となる。また、この寸法が、再現性よく形成できるようになる。
【0035】
以下、本実施の形態におけるバイポーラトランジスタの製造方法について説明する。
【0036】
まず、図2に示すように、基板101の上に、InPからなるサブコレクタ層102、InGaAs層201、p+−InGaAs層(第1半導体層)202、i−InP層(第2半導体層)203、n+−InGaAs層204を、この順に堆積して形成する。これらは、例えば、よく知られた有機金属気相成長法や分子線エピタキシー法により形成できる。続いて、n+−InGaAs層204の上に、タングステンを主成分とする金属層205を形成する。金属層205は、例えば、スパッタ法もしくは蒸着法により形成することができる。
【0037】
次に、図3に示すように、レジストパターン206を用い、エミッタコンタクト層106および第1エミッタ電極107を形成する。例えば、レジストパターン206をマスクとし、SF6ガスを用いた反応性イオンエッチングにより金属層205を選択的にエッチング除去することで、第1エミッタ電極107が形成できる。また、第1エミッタ電極107を形成した後、レジストパターン206をマスクとし、塩素ガスを用いた反応性イオンエッチングで、層厚方向に8割程度のn+−InGaAs層204を選択的にエッチング除去し、ウエットエッチングにより残りをエッチングすることで、エミッタコンタクト層106が形成できる。
【0038】
上述したエミッタメサ部の形成では、レジストパターン206に対してオーバーエッチングするなどのことによりアンダーカット形状を形成することなく、レジストパターン206の形状(寸法)にほぼ等しい形状にエミッタメサ部を形成している。このため、例えば、レジストパターン206の寸法を、0.25μmとすることで、制御性よくかつ再現性よく、エミッタ幅0.25μmのエミッタメサ形状が形成できる。
【0039】
次に、図4に示すように、エミッタコンタクト層106および第1エミッタ電極107よりなるエミッタメサ部を含むi−InP層203の上に、膜厚100nmのSiN膜(第1絶縁層)207および膜厚50nmの酸化シリコン膜(第2絶縁層)208を形成する。次いで、SiN膜207および酸化シリコン膜208の第1エミッタ電極107の上部に、開口領域(第1開口領域)209を形成し、第1エミッタ電極107の上面を露出させる。例えば、スパッタ法もしくはプラズマCVD法により、SiN膜207および酸化シリコン膜208が形成できる。また、例えば、開口幅が0.35μmの開口部を備えるレジストパターンを用い、SiN膜207および酸化シリコン膜208を反応性イオンエッチングにより選択的にエッチング除去することで、開口領域209が形成できる。なお、上記レジストパターンは、開口領域209を形成した後で除去する。
【0040】
次に、図5に示すように、平面の面積が開口領域209より広いレジストパターン(第1マスクパターン)210を形成する。エミッタメサ幅方向のレジストパターン210の寸法は、エミッタメサ部の側部に形成されている第1絶縁層108および第2絶縁層109の層厚をエミッタメサ部の幅に加えた合計の寸法より大きくする。側部の第1絶縁層108および第2絶縁層109の層厚を加えた寸法より大きくすれば、開口領域209より広い面積のレジストパターン210となる。
【0041】
このように形成したレジストパターン210を用いた選択的なエッチングにより、SiN膜207をパターニングした第1絶縁層108および酸化シリコン膜208をパターニングした第2絶縁層109を形成する。第1絶縁層108は、エミッタコンタクト層106を含むエミッタメサ部の側部の第2絶縁層109の内側に配置された状態とする。また、第2絶縁層109は、i−InP層203との間に空間を形成する庇部109aを備えるように形成する。なお、第1絶縁層108は、エミッタメサ部の側面からi−InP層203の平面上に延在して形成されている。同様に、第2絶縁層109も、エミッタメサ部の側面からi−InP層203の平面上に延在して形成されている。また、庇部109aは、第2絶縁層109のi−InP層203の平面上への延在部に形成される。
【0042】
例えば、まず、レジストパターン210をマスクとし、C2F6ガスを用いた反応性イオンエッチングにより酸化シリコン膜208を選択的にエッチング除去することで、第2絶縁層109が形成できる。このようにして第2絶縁層109を形成した後、SF6ガスを用いた反応性イオンエッチングによりSiN膜207を選択的にエッチング除去することで、第1絶縁層108が形成できる。
【0043】
このSF6ガスを用いた反応性イオンエッチングにおいて、レジストパターン210の形成領域以外のi−InP層203の領域が露出した後も、オーバーエッチングすることで、第1絶縁層108のi−InP層203直上の横方向の寸法を、レジストパターン210より小さくする。SF6ガスによる反応性イオンエッチングでは、酸化シリコンから構成されている第2絶縁層109はエッチングされない。このオーバーエッチングにより、庇部109aが形成できる。
【0044】
なお、レジストパターン210は、この平面形状を基板101の側に投影したときに、レッジ構造部105aを備えるエミッタ層105の形状(領域)より、上述した庇部109aの寸法だけ大きくなるように形成する。レッジ構造部105aの領域および庇部109aとする領域の寸法を考慮し、レジストパターン210の平面形状の寸法を、エミッタメサ部の側部に形成されている第1絶縁層108および第2絶縁層109の層厚をエミッタメサ部の幅に加えた合計の寸法より大きくすればよい。例えば、レッジ構造部105aを含めたエミッタ層105のエミッタ幅方向の長さが0.7μmとなるようにする場合、レジストパターン210の平面形状は、エミッタ幅方向の長さが0.8μmとなるように形成する。この場合、庇部109aの平面方向(エミッタ幅方向)の寸法は、0.05μm程度とすればよい。
【0045】
次に、図6に示すように、レジストパターン210および第1絶縁層108をマスクとして用いることで、エミッタ層105およびレッジ構造部105aを形成する。例えば、塩酸系のエッチャントを用いたウエットエッチングによりi−InP層203をエッチングすることで、エミッタ層105およびレッジ構造部105aが形成できる。
【0046】
次に、レジストパターン210を除去した後、図7に示すように、開口領域211aを備えるレジストパターン211、およびレジストパターン211の上に配置されて開口領域212aを備えるレジストパターン212を形成する。開口領域211aおよび開口領域212aは、層厚方向の中心軸がほぼ一致するように形成する。また、開口領域211aは、開口領域212aより広く形成する。
【0047】
次に、レジストパターン211およびレジストパターン211をマスクパターンとしてPt、Ti、Mo、およびAuをこの順に堆積して金属膜213を形成することで、第2エミッタ電極110およびベース電極111を同時に形成する。ここで、レジストパターン212の開口領域212aおよび庇部109aを含む第2絶縁層109により制限されて、自己整合的にベース電極111が配置されて形成される。このため、庇部109aより内側に形成されているレッジ構造部105aに、ベース電極111が接触することなく形成される。また、ベース電極111は、レジストパターン211に接触することなく形成されるようになる。
【0048】
次に、レジストパターン211およびレジストパターン212を除去する。これらのレジストパターンの除去により、金属膜213も同時に除去される。この後、レジストパターン(不図示)を用いた選択的なエッチングによりInGaAs層201およびp+−InGaAs層202をパターニングすることで、図8に示すように、コレクタ層103およびベース層104を形成してベース・コレクタメサとし、素子間が分離された状態とする。また、公知のリフトオフ法により、コレクタ電極112および第3エミッタ電極113を形成する。
【0049】
この後、ベンゾシクロブテンなどの絶縁性および耐熱性を有する有機樹脂を塗布して塗布膜を形成し、これを加熱して硬化し、この後、例えば反応性イオンエッチングによりエッチバックすることで第3エミッタ電極113の上面が露出するように、層間絶縁層114を形成する。また、層間絶縁層114の上に、第3エミッタ電極113に接続する配線115を形成する。
【0050】
上述した本実施の形態によれば、エミッタメサ部を、アンダーカット形状にすることなくドライエッチングにより加工できるため、再現性よく0.25μm幅のエミッタメサ部が形成できる。また、エミッタメサ部とは独立してレッジ構造部105aが形成でき、また、レッジ構造部105aに接触することなく、自己整合的に0.25μm程度の幅としたベース電極111を形成することができる。
【0051】
さらに、第1絶縁層108(SiN膜207)の厚さ制御により、ベース電極111の厚さが調整できる。前述したように、第2エミッタ電極110およびベース電極111は、金属膜213の堆積により同時に形成する。このため、ベース電極111を厚く形成すると、エミッタ電極110の周端下部と、ベース電極111の上端部とが接触する場合も発生する。ここで、第1絶縁層108を厚く形成すれば、エミッタ電極110の周端下部とベース電極111の上端部との層厚方向の距離をより大きくすることができる。言い換えると、第1絶縁層108を厚くすることで、エミッタ電極110と接触することなく、ベース電極111をより厚く形成することができるようになる。
【0052】
また、第1絶縁層108は、SF6を用いた反応性イオンエッチングにより形成するため、この上の第2絶縁層109に庇部109aを形成するためのアンダーカット量(サイドエッチング量、オーバーエッチング量)の制御性・再現性は非常に高い。このように、本実施の形態によれば、HBT集積回路への応用が十分に期待できる。
【0053】
また、上述した実施の形態では、第1エミッタ電極107の上に、Pt/Ti/Mo/Auの積層構造からなる第2エミッタ電極110が形成されるが、タングステン系の金属層とPtの層との接触抵抗は十分小さく、エミッタ抵抗の増大を招くことがなく、高周波特性を劣化させることはない。
【0054】
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形が実施可能であることは明白である。例えば、第1エミッタ電極107はなくてもよく、この場合、図2を用いて説明した工程で金属層205を形成せず、この後の工程で第1エミッタ電極107を備えない状態とすればよい。この場合、第1絶縁層108および第2絶縁層109は、エミッタコンタクト層106の側部に配置されることになる。
【0055】
また、例えば、基板、サブコレクタ層、コレクタ層、ベース層、エミッタ層、エミッタコンタクト層を、各々、InP、InGaAs、InGaAs、InP、InGaAsから構成したが、これに限るものではなく、他の化合物半導体から構成してもよい。例えば、コレクタ層にInGaAsよりもバンドギャップの大きいInPを用い、ダブルヘテロ接合構造のバイポーラトランジスタであっても同様である。また、エミッタ層にInAlAsを用いる構造のHBT、またはベース層にGaAsSbやInGaAsSbを用いる構造のHBTであっても、前述同様に本発明が適用できる。
【符号の説明】
【0056】
101…基板、102…サブコレクタ層、103…コレクタ層、104…ベース層、105…エミッタ層、105a…レッジ構造部、106…エミッタコンタクト層、107…第1エミッタ電極、108…第1絶縁層、109…第2絶縁層、109a…庇部、110…第2エミッタ電極、111…ベース電極、112…コレクタ電極、113…第3エミッタ電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半絶縁性の化合物半導体からなる基板の上に、化合物半導体からなるコレクタコンタクト層を形成する工程と、
前記コレクタコンタクト層の上に化合物半導体からなるコレクタ層を形成する工程と、
前記コレクタ層の上に化合物半導体からなるベース層を形成する工程と、
前記ベース層の上に前記ベース層とは異なる化合物半導体からなりエミッタ層となる第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層の上に化合物半導体からなりエミッタコンタクト層となる第2半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層をパターニングしてエミッタコンタクト層を形成する工程と、
前記エミッタコンタクト層を含む前記第1半導体層の上に窒化シリコンからなる第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層の上に酸化シリコンからなる第2絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層の前記エミッタコンタクト層の上部に対応する領域に第1開口領域を形成する工程と、
平面の面積が前記第1開口領域より広い第1マスクパターンを前記第1開口領域を含む前記第2絶縁層の上に形成する工程と、
前記第1マスクパターンをマスクとして前記第2絶縁層を選択的にエッチングして前記第1マスクパターン以外の領域の前記第1絶縁層の表面を露出させ、前記第2絶縁層が前記エミッタコンタクト層の側部に配置される状態とする工程と、
前記第1マスクパターンをマスクとして前記第1絶縁層を選択的にエッチングして前記第1マスクパターン以外の領域の前記第1半導体層を露出させ、加えて、前記第1マスクパターンの下部領域の前記第1マスクパターンの周端部より内側の一部領域の前記第1半導体層を露出させ、前記エミッタコンタクト層の側部の前記第2絶縁層の内側に前記第1絶縁層が配置された状態とし、前記第2絶縁層に前記第1半導体層との間に空間を備える庇部を形成する工程と、
前記第1マスクパターンおよび前記第1絶縁層をマスクとして前記第1半導体層を選択的にエッチングし、前記エミッタコンタクト層の下部に配置されるエミッタ層および前記第1絶縁層の下部に配置されるレッジ構造部を形成する工程と、
前記第1マスクパターンを除去した後、前記第2絶縁層の形成領域を含んでこの形成領域より広い第2開口領域を有する第2マスクパターンを前記ベース層の上に形成する工程と、
少なくとも前記第2マスクパターンの第2開口領域の内側領域に金属を堆積することで、前記第2絶縁層の周囲および前記第2開口領域の内側の前記ベース層の上に自己整合的にベース電極を形成し、加えて、前記第2絶縁層および前記第1開口領域の内側の前記エミッタコンタクト層の上にエミッタ電極を形成する工程と、
前記第2マスクパターンを除去した後、前記コレクタコンタクト層に接続するコレクタ電極を形成する工程と
を少なくとも備えることを特徴とするバイポーラトランジスタの製造方法。
【請求項2】
半絶縁性の化合物半導体からなる基板と、
前記基板の上に形成された化合物半導体からなるサブコレクタ層と、
このサブコレクタ層の上に形成された化合物半導体からなるコレクタ層と、
このコレクタ層の上に形成された化合物半導体からなるベース層と、
このベース層の上に形成された前記ベース層とは異なる化合物半導体からなるエミッタ層と、
このエミッタ層の上に形成された化合物半導体からなるエミッタコンタクト層と、
前記コレクタ層の周囲の前記サブコレクタ層の上に形成されたコレクタ電極と、
前記エミッタ層の周囲の前記ベース層の上に形成されたベース電極と、
前記ベース電極と前記エミッタ層との間に配置されて前記エミッタ層と一体に形成されたレッジ構造部と、
前記エミッタコンタクト層の側面および前記レッジ構造部の表面に接して形成された窒化シリコンからなる第1絶縁層と、
前記エミッタコンタクト層の側部で前記第1絶縁層の側部に接して形成された酸化シリコンからなる第2絶縁層と、
前記エミッタコンタクト層の上に形成されたエミッタ電極と
を少なくとも備え、
前記基板の平面方向において、前記レッジ構造部の外形は前記第1絶縁層の外形と同じに形成され、
前記第2絶縁層の外形は前記第1絶縁層の外形より広く形成され、前記第2絶縁層は、前記エミッタコンタクト層および前記第1絶縁層の側方の前記ベース層との間に空間を形成する庇部を備え、
前記レッジ構造部と前記ベース電極とは、前記庇部の下の領域で離間している
ことを特徴とするバイポーラトランジスタ。
【請求項1】
半絶縁性の化合物半導体からなる基板の上に、化合物半導体からなるコレクタコンタクト層を形成する工程と、
前記コレクタコンタクト層の上に化合物半導体からなるコレクタ層を形成する工程と、
前記コレクタ層の上に化合物半導体からなるベース層を形成する工程と、
前記ベース層の上に前記ベース層とは異なる化合物半導体からなりエミッタ層となる第1半導体層を形成する工程と、
前記第1半導体層の上に化合物半導体からなりエミッタコンタクト層となる第2半導体層を形成する工程と、
前記第2半導体層をパターニングしてエミッタコンタクト層を形成する工程と、
前記エミッタコンタクト層を含む前記第1半導体層の上に窒化シリコンからなる第1絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層の上に酸化シリコンからなる第2絶縁層を形成する工程と、
前記第1絶縁層および前記第2絶縁層の前記エミッタコンタクト層の上部に対応する領域に第1開口領域を形成する工程と、
平面の面積が前記第1開口領域より広い第1マスクパターンを前記第1開口領域を含む前記第2絶縁層の上に形成する工程と、
前記第1マスクパターンをマスクとして前記第2絶縁層を選択的にエッチングして前記第1マスクパターン以外の領域の前記第1絶縁層の表面を露出させ、前記第2絶縁層が前記エミッタコンタクト層の側部に配置される状態とする工程と、
前記第1マスクパターンをマスクとして前記第1絶縁層を選択的にエッチングして前記第1マスクパターン以外の領域の前記第1半導体層を露出させ、加えて、前記第1マスクパターンの下部領域の前記第1マスクパターンの周端部より内側の一部領域の前記第1半導体層を露出させ、前記エミッタコンタクト層の側部の前記第2絶縁層の内側に前記第1絶縁層が配置された状態とし、前記第2絶縁層に前記第1半導体層との間に空間を備える庇部を形成する工程と、
前記第1マスクパターンおよび前記第1絶縁層をマスクとして前記第1半導体層を選択的にエッチングし、前記エミッタコンタクト層の下部に配置されるエミッタ層および前記第1絶縁層の下部に配置されるレッジ構造部を形成する工程と、
前記第1マスクパターンを除去した後、前記第2絶縁層の形成領域を含んでこの形成領域より広い第2開口領域を有する第2マスクパターンを前記ベース層の上に形成する工程と、
少なくとも前記第2マスクパターンの第2開口領域の内側領域に金属を堆積することで、前記第2絶縁層の周囲および前記第2開口領域の内側の前記ベース層の上に自己整合的にベース電極を形成し、加えて、前記第2絶縁層および前記第1開口領域の内側の前記エミッタコンタクト層の上にエミッタ電極を形成する工程と、
前記第2マスクパターンを除去した後、前記コレクタコンタクト層に接続するコレクタ電極を形成する工程と
を少なくとも備えることを特徴とするバイポーラトランジスタの製造方法。
【請求項2】
半絶縁性の化合物半導体からなる基板と、
前記基板の上に形成された化合物半導体からなるサブコレクタ層と、
このサブコレクタ層の上に形成された化合物半導体からなるコレクタ層と、
このコレクタ層の上に形成された化合物半導体からなるベース層と、
このベース層の上に形成された前記ベース層とは異なる化合物半導体からなるエミッタ層と、
このエミッタ層の上に形成された化合物半導体からなるエミッタコンタクト層と、
前記コレクタ層の周囲の前記サブコレクタ層の上に形成されたコレクタ電極と、
前記エミッタ層の周囲の前記ベース層の上に形成されたベース電極と、
前記ベース電極と前記エミッタ層との間に配置されて前記エミッタ層と一体に形成されたレッジ構造部と、
前記エミッタコンタクト層の側面および前記レッジ構造部の表面に接して形成された窒化シリコンからなる第1絶縁層と、
前記エミッタコンタクト層の側部で前記第1絶縁層の側部に接して形成された酸化シリコンからなる第2絶縁層と、
前記エミッタコンタクト層の上に形成されたエミッタ電極と
を少なくとも備え、
前記基板の平面方向において、前記レッジ構造部の外形は前記第1絶縁層の外形と同じに形成され、
前記第2絶縁層の外形は前記第1絶縁層の外形より広く形成され、前記第2絶縁層は、前記エミッタコンタクト層および前記第1絶縁層の側方の前記ベース層との間に空間を形成する庇部を備え、
前記レッジ構造部と前記ベース電極とは、前記庇部の下の領域で離間している
ことを特徴とするバイポーラトランジスタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−176171(P2011−176171A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39752(P2010−39752)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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