説明

パターン形成方法及びパターン形成装置

【課題】基板を加熱しながら基板上に形成されるパターンを目的の位置に精度良く形成す
ることが可能となるパターン形成方法及パターン形成装置を提供する。
【解決手段】ステージ23を0.5μm毎にY矢印方向及び反Y矢印方向に沿って移動可
能とする。また、吐出タイミング信号を加熱によるマザーシート4Mの膨張度合いに基づ
いて補正するようにする。従って、ノズルからの液滴の着弾位置をマザーシート4Mの膨
張度合いに基づいて0.5μm毎に調整されるので、マザーシート4Mが膨張した場合で
あっても、液滴は区画領域の所望の位置に着弾させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン形成方法及びパターン形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、機能性パターンを形成するために、機能性材料をアセトンなどの溶媒に溶解また
は分散させて液状体に加工し、更に微小な液滴(インク)にして基板上に配置してパター
ニングをする、所謂液滴吐出法(インクジェット法)が知られている(例えば、特許文献
1参照)。
【0003】
この種の液滴吐出法(インクジェット法)においては、基板を加熱しながら液滴(イン
ク)を順次吐出することによって、前記基板上に配置された液滴(インク)の乾燥速度を
速めることで、パターニング速度を向上させる技術が提案されている。
【特許文献1】特開2004−306372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特に、溶媒として公知の水系溶媒を使用した場合では、前記溶媒を確実
に蒸発させるために基板温度を46℃程度に加熱させる必要がある。この結果、基板の構
成材料にもよるが、加熱中においては通常は基板が熱膨張をしてしまう。例えば、基板と
してグリーンシートを使用した場合、26℃(常温)から46℃に加熱すると、80μm
程度延びてしまう。
【0005】
この結果、基板を加熱しながらパターンを形成する場合では、膨張した基板上に液滴が
配置されてしまうため、所望の位置にパターンが形成されなくなってしまうという問題が
あった。例えば、予めビアホール等が形成されたグリーンシートに対してパターンをその
ビアホールに接続されるように形成する場合では、グリーンシートの熱膨張によって液滴
の配置位置が大きくずれてしまう。このため、形成されたパターンがビアホールに接続さ
れなくなってしまい、所望の特性の基板が作製されなくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みなされたもので、その目的は、基板を加熱しながら基板
上にパターンを目的の位置に精度良く形成することが可能となるパターン形成方法及パタ
ーン形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパターン形成方法は、吐出ヘッドのノズルから機能材料を含む機能液の液滴を
データによって指定された基板上の複数の領域の各々に対して予め設定された吐出タイミ
ングで吐出して、前記基板上に着弾した前記液滴からなるパターンを形成するパターン形
成方法において、前記基板の表面温度を、前記液滴の吐出時の前記液滴の温度以上であっ
て前記機能材料の沸点以下の温度範囲内に加熱する加熱工程と、前記加熱による前記基板
の変形度合いを算出する算出工程と、前記変形度合いに基づいて、前記液滴が前記データ
によって指定された前記領域に着弾するように、前記吐出タイミングを補正する補正工程
とを備えている。
【0008】
これによれば、基板を加熱することによって基板が変形しても、液滴が所望の領域に着
弾する。この結果、パターンを目的の位置に精度良く形成することが可能となる。また、
基板は加熱されることから、基板上に着弾した液滴は直ちに乾燥される。このため、短時
間でパターンが形成される。
【0009】
このパターン形成方法において、前記補正工程は、前記基板を前記吐出ヘッドに対して
前記液滴の着弾径よりも短いピッチ毎に相対移動させて前記液滴の吐出タイミングを補正
するようにしてもよい。
【0010】
これによれば、基板の移動量は、各液滴の着弾径に比べて細かく制御されることから、
液滴の着弾位置を正確に補正することができる。
このパターン形成方法において、前記吐出タイミングは、前記吐出ヘッドに対する前記
基板の相対位置を検知する位置検出信号を、前記変形度合いに基づいて分周することによ
って生成するようにしてもよい。
【0011】
これによれば、吐出タイミングは位置検出信号に基づいて作成される。
このパターン形成方法において、前記算出工程は、前記基板上に予め配置形成したマー
クを、前記基板を加熱する前と加熱した後とで比較して、その加熱によるずれ度合いを算
出するようにしてもよい。
【0012】
これによれば、基板の加熱による変形度合いが精度良く算出される。
このパターン形成方法において、前記基板は、多孔質性基板であってセラミックス粒子
と樹脂とから構成される低温焼成用シートであり、前記機能液は、前記機能材料として金
属材料を分散させた液状体であってもよい。
【0013】
これによれば、基板上に形成される配線パターンを短時間でかつ目的の位置に精度良く
形成することが可能となる。
このパターン形成方法において、前記基板は、回路素子が実装されるとともにその実装
された前記回路素子に対して電気的に接続された配線が形成される回路基板であってもよ
い。
【0014】
これによれば、回路素子が形成された所望の特性を有した回路基板を短時間で形成する
ことができる。
このパターン形成方法において、前記データはビットマップデータであってもよい。
【0015】
これによれば、簡単な形式で液滴の吐出制御を行うことができる。
本発明のパターン形成装置は、吐出ヘッドのノズルから機能材料を含む機能液の液滴を
データによって指定された基板上の複数の領域の各々に対して予め設定された吐出タイミ
ングで吐出して、前記基板上に着弾した前記液滴からなるパターンを形成するパターン形
成装置において、前記基板の表面温度を、前記液滴の吐出時の前記液滴の温度以上であっ
て前記機能材料の沸点以下の温度範囲内に加熱する加熱手段と、前記加熱による前記基板
の変形度合いを算出する算出手段と、前記変形度合いに基づいて、前記液滴が前記データ
によって指定された前記領域に着弾するように、前記吐出タイミングを補正する補正手段
とを備えている。
【0016】
これによれば、基板を加熱することによって基板が変形しても、液滴が所望の領域に着
弾する。この結果、パターンを目的の位置に精度良く形成することが可能となる。また、
基板は加熱されることから、基板上に着弾した液滴は直ちに乾燥される。このため、短時
間でパターンが形成される。
【0017】
このパターン形成装置において、さらに、前記基板を一方向に移動可能に支持する基台
と、前記吐出ヘッドに対する前記基板の相対位置を前記液滴の着弾径よりも短いピッチで
検出する位置検出手段とを備え、前記補正手段は、前記位置検出手段からの位置検出信号
を、前記変形度合いに基づいたタイミングで分周することによって前記吐出タイミングを
補正するようにしてもよい。
【0018】
これによれば、液滴吐出タイミング信号が変形度合いに基づいて各液滴の着弾径に比べ
て細かく補正される。
このパターン形成装置において、前記位置検出手段は、エンコーダであってもよい。
【0019】
これによれば、簡単な構成で液滴吐出タイミング信号を制御することができる。
このパターン形成装置において、前記算出手段は、前記基板上に予め配置形成したマー
クを、前記基板を前記温度範囲内の温度に加熱する前と、前記基板を前記温度範囲内の温
度に加熱した後とで比較して、その加熱によるずれ度合いを算出するようにしてもよい。
【0020】
これによれば、基板の加熱による変形度合いが精度良く算出される。
このパターン形成装置において、前記データはビットマップデータであってもよい。
これによれば、簡単な形式で液滴の吐出制御を行うことができる。
【0021】
このパターン形成装置において、前記機能液は、前記基板上に実装される回路素子に対
して電気的に接続された配線を構成する金属材料が分散された液状体であってもよい。
これによれば、回路素子が形成された所望の特性を有した回路基板を短時間で形成する
ことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を具体化したパターン形成方法及びパターン形成装置の一実施形態を図面
に従って説明する。
まず、本発明のパターン形成方法及びパターン形成装置を用いて形成された回路モジュ
ール1について説明する。
【0023】
図1において、回路モジュール1には、板状に形成されたLTCC多層基板2と、その
LTCC多層基板2の上側にワイヤーボンディング接続された半導体チップ3とが備えら
れている。
【0024】
LTCC多層基板2は、シート状に形成された複数の回路基板としてのLTCC基板4
の積層体である。各LTCC基板4は、それぞれガラスセラミックス系材料(例えば、ホ
ウケイ酸アルカリ酸化物などのガラス成分とアルミナなどのセラミックス成分の焼結体)
(多孔質性基板)であって、その厚みが数百μmである。
【0025】
各LTCC基板4には、抵抗素子、容量素子、コイル素子などの各種回路素子5と、各
回路素子5を電気的に接続する内部配線6と、スタックビア構造、サーマルビア構造を呈
する所定の孔径(例えば、直径30μm)を有した複数のビアホール7と、該ビアホール
7に充填されたビア配線8と、が形成されている。
【0026】
各内部配線6は、それぞれ機能材料及び金属材料としての銀(Ag)の微粒子が焼結し
た焼結体であって、その配線パターンはパターン形成装置としての液滴吐出装置(インク
ジェット装置)を使用して形成される。
【0027】
次に、その液滴吐出装置20について図2〜図9に従って説明する。図2は、液滴吐出
装置20を説明する全体斜視図である。
図2において、液滴吐出装置20は、直方体形状に形成された基台21を有している。
基台21の上面には、その長手方向(Y矢印方向)に沿って延びる案内溝22が形成され
、その案内溝22に沿ってY矢印方向及び反Y矢印方向に移動可能とするステージ23が
載置されている。ステージ23の上面には載置部23aが設けられ、マザーシート4Mが
載置されるようになっている。そして、載置部23aは、載置された状態のマザーシート
4Mをステージ23に対して位置決め固定して、マザーシート4MをY矢印方向及び反Y
矢印方向に搬送する。
【0028】
また、基台21に形成した案内溝22の底面22aには、位置検出手段としてのエンコ
ーダE(図9参照)を構成する被検出プレートEaがY矢印方向に沿って配設されている
。被検出プレートEaのY矢印方向に延びる上面には、縞パターンGが形成されている。
この縞パターンGは、光反射部と非光反射部とが交互に形成され、その交互に形成された
光反射部と光反射微が、Y矢印方向に沿って十分に細かいピッチで形成されている。本実
施形態においては、Y矢印方向に沿って0.5μmピッチで構成されている。
【0029】
また、図3に示すように、ステージ23の下面23bには、案内溝22に嵌入するよう
に反Z矢印方向に突出した案内凸部24が設けられている。案内凸部24の先端部24a
には凹部Wが設けられ、該凹部Wには位置検出手段としてのエンコーダE(図9参照)を
構成する移動位置検出センサEbが設けられている。移動位置検出センサEbは、第1及
び第2のホトカプラPC1,PC2とから構成されている。第1及び第2のホトカプラP
C1,PC2は、それぞれ、発光ダイオード及びフォトダイオードで構成され前記縞パタ
ーンGを検知する。そして、第1及び第2のホトカプラPC1,PC2は、ステージ23
のY矢印方向及び反Y矢印方向における移動量と移動方向を検出するためのパルス検出信
号Sa,Sbをそれぞれ出力する(図9参照)。
【0030】
第1及び第2のホトカプラPC1,PC2は、縞パターンGのピッチに対して半ピッチ
(本実施形態では、0.25μm)だけ互いにずらして配置されている。そして、ステー
ジ23がY矢印方向及び反Y矢印方向に往復移動するときに、第1及び第2のホトカプラ
PC1,PC2からの各パルス検出信号Sa,Sbの波形は、一方のパルス検出信号Sa
に対して他方のパルス検出信号Sbが90度位相のずれた波形の信号となる。
【0031】
従って、ステージ23が基台21上をY矢印方向及び反Y矢印方向に沿って移動すると
、第1及び第2のホトカプラPC1,PC2からそれぞれパルス検出信号Sa,Sbが出
力される。そして、この両パルス検出信号Sa,Sbによってステージ23上に載置され
たマザーシート4MのY矢印方向及び反Y矢印方向に対する移動方向とその移動量が、0
.5μm毎に検知されるようになっている。
【0032】
図2に示すステージ23の載置部23aに載置されたマザーシート4Mは、焼成前のL
TCC基板4(以下、グリーンシート4G(図7参照)という)を複数枚切出し可能とし
た1枚の大判の基板である。本実施形態では、説明を簡単にするために、図7に示すよう
に、1枚のマザーシート4Mに対してマトリクス状に10×10個のLTCC基板4を形
成する場合について説明する。
【0033】
つまり、図7に示すように、1枚のマザーシート4Mは、LTCC基板4を形成する領
域(以下、「描画領域」という)Zがマトリクス状に区画形成されるとともに、各描画領
域Z以外にはLTCC基板4を形成しない領域(以下、「非描画領域」という)Qが形成
されている。各描画領域Zは四角形状を成している。非描画領域Qは、各描画領域Zの間
隙に配置されることから、全体として格子形状を成している。以下、説明の便宜上、マザ
ーシート4Mの縦方向をY矢印方向とし、マザーシート4Mの横方向をX矢印方向と定義
する。また、本実施形態においては、マザーシート4Mは、加熱されると縦方向(Y矢印
方向)にのみ膨張し、横方向(X矢印方向)には膨張及び収縮しないものとする。
【0034】
図2において、ステージ23の上面には、加熱手段としてのラバーヒータHが埋設され
ている。載置部23aに載置されたマザーシート4Mは、ラバーヒータHによって加熱さ
れる。従って、載置部23aに載置されたマザーシート4Mは、ラバーヒータHによって
加熱されると、縦方向(Y矢印方向)にのみ膨張し、横方向(X矢印方向)には膨張及び
収縮しない。
【0035】
また、基台21には、その搬送方向と直交する方向(X矢印方向)に跨ぐ門型のガイド
部材25が架設されている。ガイド部材25の上側には、インクタンク26が配設されて
いる。インクタンク26は、機能液としての金属インクFを貯留して、貯留する金属イン
クFを液滴吐出ヘッド30に所定の圧力で供給する。
【0036】
金属インクFは、例えば、粒径が数nmの銀(Ag)の微粒子を水系溶媒に分散させた
水系金属インクである。金属インクFの液滴Fbは、加熱されると溶媒或いは分散媒の一
部が蒸発してその表面の外形を増粘させる。
【0037】
ガイド部材25には、そのX矢印方向略全幅に渡って、X矢印方向に延びる上下一対の
ガイドレール28が形成されている。上下一対のガイドレール28には、キャリッジ29
が取り付けられている。キャリッジ29は、ガイドレール28に案内されてX矢印方向及
び反X矢印方向に移動する。
【0038】
キャリッジ29には、液滴吐出ヘッド(以下、単に「吐出ヘッド」という)30及びカ
メラKが配設されている。
図4及び図5は、それぞれ吐出ヘッド30をマザーシート4M側(下側)から見た図で
ある。
【0039】
図4において、吐出ヘッド30は、X矢印方向に沿って15個の吐出ヘッド対H1,H
2,H3,…,H15を併設している。各吐出ヘッド対H1〜H15は、第1の吐出ヘッ
ドHaと、該第1の吐出ヘッドHaに対してY矢印方向に併設された第2の吐出ヘッドH
bとを備えている。各吐出ヘッドHa,Hbのノズルプレート31は、一対のノズル列N
Lを備えている。図5に示すように、各ノズル列NLには、X矢印方向に沿って複数のノ
ズルNが等ピッチで配列されている。本実施形態では、各ノズル列NLに200個のノズ
ルNが40μmのピッチで配列されている。
【0040】
また、各吐出ヘッドHa,Hbにおいては、一方のノズル列NLの各ノズルNが他方の
ノズル列NLの各ノズルNに対してX矢印方向に沿って半ピッチずれて配列されている。
従って、各吐出ヘッドHa,Hbにおいては、一方のノズル列NLの各ノズルNの中間位
置に他方のノズル列NLの各ノズルNが位置することとなる。つまり、一方のノズル列N
Lの各ノズルNが他方のノズル列NLの各ノズルNの間を補間している。尚、本実施形態
においては、各ノズル列NLでは各ノズルNが40μmのピッチで配列されていることか
ら、各吐出ヘッドHa,Hbでは、ノズルNがX矢印方向に沿って20μmのピッチで配
列されることとなる。従って、各吐出ヘッドHa,Hbでは、X矢印方向に沿って2×2
00=400個のノズルNが20μmの等ピッチで配列されている。
【0041】
また、第1の吐出ヘッドHaの各ノズル列NLは、第2の吐出ヘッドHbの各ノズル列
NLとX矢印方向に沿って半ピッチずれて配列されている。従って、第1の吐出ヘッドH
aに配置形成される各ノズルNの中間位置に第2の吐出ヘッドHbに配置形成されるノズ
ルNが位置することとなる。つまり、第1の吐出ヘッドHaの各ノズル列NLの各ノズル
Nが第2の吐出ヘッドHbのノズル列NLの各ノズルNの間を補間している。尚、本実施
形態においては、各吐出ヘッドHa,HbのノズルNは20μmのピッチで配列されてい
ることから、各吐出ヘッド対H1〜H15では、ノズルNがX矢印方向に沿って10μm
のピッチで配列されることとなる。従って、各吐出ヘッド対H1〜H15では、X矢印方
向に沿って2×400=800個のノズルNが10μmの等ピッチで配列されている。
【0042】
そして、図3に示すように、各ノズルNがX矢印方向に沿って等間隔に連続して配置さ
れるように各吐出ヘッド対H1〜H15はその一部が互いに重なり合って階段状に連結さ
れている。従って、前記のように吐出ヘッド対H1〜H15を配置することによって、全
体として、15×800=1.2×10個のノズルNがX矢印方向に沿って10μmの
等ピッチで配列されている。
【0043】
図6は、吐出ヘッド30の第1の吐出ヘッドHaの内部構成を説明するための要部断面
図である。尚、第2の吐出ヘッドHbについては、第1の吐出ヘッドHaと同じ構成であ
ることから、その詳細な説明を省略する。
【0044】
図6において、各吐出ヘッドHaは、その上側に供給チューブ30Tが連結されている
。供給チューブ30Tは、Z矢印方向に延びるように配設されて、インクタンク26から
の金属インクFを吐出ヘッド30に供給する。
【0045】
ノズルNの上側には、供給チューブ30Tに連通するキャビティ32が形成されている
。キャビティ32は、供給チューブ30Tからの金属インクFを収容して、対応するノズ
ルNに金属インクFを供給する。キャビティ32の上側には、上下方向に振動してキャビ
ティ32内の容積を拡大及び縮小する振動板33が貼り付けられている。振動板33の上
側には、ノズルNに対応する圧電素子PZが配設されている。圧電素子PZは、上下方向
に収縮及び伸張して振動板33を上下方向に振動させる。上下方向に振動する振動板33
は、金属インクFを所定のサイズの液滴Fbに形成し、対応するノズルNから吐出させる
。吐出された液滴Fbは、対応するノズルNの反Z矢印方向に飛行して、マザーシート4
Mの描画平面(パターン形成面4Ma)上に配置形成された前記各描画領域Z内に着弾す
る。
【0046】
そして、各描画領域Z内に着弾した液滴Fb(金属インクF)は、前述したように、ラ
バーヒータHによって加熱されたマザーシート4Mの描画平面(パターン形成面4Ma)
上に着弾することによって、溶媒或いは分散媒の一部が蒸発する。そして、その表面の外
形が増粘し、マザーシート4Mの面方向に沿う自身の濡れ広がりが停止して局在する。そ
して、各描画領域Z内に着弾して局在した液滴Fb(金属インクF)は、複数連なって繋
がるようにして配置されることで、例えば、図7に示すような、3本のライン状の内部配
線6の配線パターンを形成する。
【0047】
図2に示すように、カメラKは、キャリッジ29上であって前記吐出ヘッド30に隣接
した位置に設けられている。カメラKは、載置部23aに載置されたマザーシート4Mの
パターン形成面4Maを撮影可能となるように設けられている。詳述すると、図8に示す
ように、焼成前のマザーシート4Mには、その左上隅(マザーシート4MのY矢印方向側
の端部側の左隅)にある非描画領域Q内にマークMが形成されている。このマークMは、
常温(26℃)時の焼成前のマザーシート4Mに対して密着して形成されたものである。
カメラKは、そのマークMの様子を撮影し、その撮影されたマークMの画像データを後記
する制御装置50に出力する。
【0048】
次に、前記液滴吐出装置20の電気的構成について図9に従って説明する。
図9に示すように、液滴吐出装置20は、制御装置50を備えている。制御装置50に
は、各種操作スイッチとディスプレイを有した入出力装置51が接続されている。入出力
装置51は、液滴吐出装置20が実行する各種処理の処理状況を表示したり、内部配線6
を形成するためのデータとしてのビットマップデータBDを制御装置50に入力したりす
る。
【0049】
ビットマップデータBDは、各ビットの値(「0」(Lレベル)或いは「1」(Hレベ
ル))に応じた各圧電素子PZのオン或いはオフを規定したデータである。詳しくは、本
実施形態のマザーシート4Mのパターン形成面4Maは、Y矢印方向に沿って1.2×1
、X矢印方向に沿って1.2×10にそれぞれ等分されることで、(1.2×10
)×(1.2×10)個の微小な四角形状の区画領域R(図8参照)に予め仮想的に
規定されている。この区画領域Rは、一辺の長さがノズルNのピッチと等しい正方形形状
を成している。本実施形態では、区画領域Rの一辺の長さは10μmである。ビットマッ
プデータBDは、吐出ヘッド30(各ノズルN)が通過するマザーシート4M上の対応す
る各区画領域Rに対してそれぞれ液滴Fbを吐出するか否かを規定したデータである。
【0050】
つまり、前記吐出ヘッド対H1〜H15は、前記したように、全体として15×800
=1.2×10個のノズルNがX矢印方向に沿って配置されている。そして、ビットマ
ップデータBDは、マザーシート4Mが常温(26℃)であるとき、各領域Rに対して各
圧電素子PZのオン或いはオフさせるためのデータであり、(1.2×10)×(1.
2×10)のデータ数を有している。
【0051】
また、制御装置50は、エンコーダEを構成する第1及び第2のホトカプラPC1,P
C2(移動位置検出センサEb)が接続されている。制御装置50には、前記第1及び第
2のホトカプラPC1,PC2からのパルス検出信号Sa,Sbが入力される。さらに、
制御装置50は、カメラKが接続されている。制御装置50はカメラKが撮影した画像デ
ータが入力される。
【0052】
制御装置50は、算出手段及び補正手段としてのCPU50A、ROM50B及びRA
M50Cを備えている。ROM50Bには、各種駆動制御プログラム、算出プログラム、
ステージ制御プログラム、タイミング信号生成プログラム及び補正プログラムが格納され
ている。
【0053】
駆動制御プログラムは、キャリッジ29の往復動処理、カメラKの駆動制御処理及び圧
電素子PZの駆動制御処理等を実行させるためのプログラムを含んでいる。
また、駆動制御プログラムは、ラバーヒータHの加熱制御処理を実行させるための加熱
制御プログラムを含んでいる。この加熱制御プログラムは、マザーシート4Mの温度を、
吐出ヘッド30から吐出される時の金属インクFの温度以上であって、かつ金属インクF
に含まれる機能性材料の沸点未満(液体組成中の最も沸点の低い温度未満)の温度範囲の
温度(設定温度)となるようにラバーヒータHを加熱・冷却制御するためのプログラムで
ある。本実施形態では、例えばマザーシート4Mの表面温度を46℃に設定する制御信号
を生成するためのプログラムである。
【0054】
算出プログラムは、マザーシート4Mに印刷されたマークMのカメラKからの画像デー
タに基づいて、マザーシート4Mの加熱による変形度合い(膨張度合い)を算出するため
のプログラムである。
【0055】
ステージ制御プログラムは、第1及び第2のホトカプラPC1,PC2からのパルス検
出信号Sa,Sbに基づいて、ステージ23上に載置されたマザーシート4MのY矢印方
向及び反Y矢印方向に対する移動量を、0.5μm毎に制御するためのプログラムである
。詳しくは、ステージ制御プログラムは、第1及び第2のホトカプラPC1,PC2から
のパルス検出信号Sa,Sbに基づいて位置検出信号としてのパルス信号QSを作成する
(図11参照)。このパルス信号QSは、縞パターンGに対応したものである。従って、
パルス信号QSのカウント値から吐出ヘッド30に対するマザーシート4Mの相対位置が
認識されることとなる。
【0056】
つまり、本実施形態では、前記したように、各区画領域Rの一辺の長さは、常温(26
℃)時においては、10μmである。従って、常温(26℃)時においては、10μm/
0.5μm=20回のパルス信号QSがカウントされるとマザーシート4Mが1つの区画
領域R分だけ移動したことが認識されることとなる。例えば、常温(26℃)時において
は、パルス信号QSのカウント値が11回目であるとき、吐出ヘッド30のノズルNが各
区画領域Rの中心に正対することとなる。
【0057】
タイミング信号生成プログラムは、パルス信号QSを分周してノズルNから液滴Fbを
吐出させる吐出タイミング信号LToを生成するためのプログラムである。本実施形態で
は、常温(26℃)時においては、パルス信号QSのカウント値が11回目であるときを
分周して吐出タイミング信号LToを作成する(図11参照)。
【0058】
補正プログラムは、タイミング信号生成プログラムに従って生成された吐出タイミング
信号LTを、マザーシート4Mの膨張度合いに基づいて、各区画領域Rの中心に液滴Fb
が着弾するように補正するプログラムである。常温(26℃)時においては、11番目の
パルス信号QSの立ち上がり時に吐出タイミング信号LToが生成されるが、マザーシー
ト4Mは、加熱されるとY矢印方向及び反Y矢印方向に沿って膨張することから、その膨
張に伴って各区画領域RもY矢印方向及び反Y矢印方向に沿って伸長することとなる。補
正プログラムは、この吐出タイミング信号LToを、前述のようにY矢印方向及び反Y矢
印方向に沿って伸長した分(膨張度合い)に応じてパルス信号QS毎にずらした吐出タイ
ミング信号LT(図11参照)にするためのプログラムである。
【0059】
CPU50Aは、ROM50Bに格納された各種プログラムに従ってキャリッジ29の
往復動処理、ラバーヒータHの加熱制御処理、カメラKの駆動制御処理及び圧電素子PZ
の駆動制御処理等を実行する。
【0060】
また、CPU50Aは、加熱された後の、マザーシート4Mに印刷されたマークMの画
像データを入力する。そして、CPU50Aは、算出プログラムに従って、その画像デー
タと、常温(26℃)のときのマークMの画像データとを比較して、常温(26℃)のマ
ークMからのずれ量(変形度合い(膨張度合い))を算出する。
【0061】
さらに、CPU50Aは、補正プログラムに従って、前記ずれ量(膨張度合い)に基づ
いて吐出タイミング信号LToの出力タイミングをパルス信号QS毎にずらして補正され
た吐出タイミング信号LTを作成する。そして、その吐出タイミング信号LTをヘッド駆
動回路54へ出力する。
【0062】
また、制御装置50には、X軸モータ駆動回路52が接続されている。制御装置50は
、駆動制御信号をX軸モータ駆動回路52に出力する。X軸モータ駆動回路52は、制御
装置50からの駆動制御信号に応答して、キャリッジ29を移動させるためのX軸モータ
MXを正転又は逆転させる。
【0063】
さらに、制御装置50には、Y軸モータ駆動回路53が接続されている。制御装置50
は、駆動制御信号をY軸モータ駆動回路53に出力する。Y軸モータ駆動回路53は、制
御装置50からの駆動制御信号に応答して、ステージ23を0.5μm毎にずらしながら
Y矢印方向及び反Y矢印方向に移動させるようにY軸モータMYを正転又は逆転させる。
【0064】
さらにまた、制御装置50には、ヘッド駆動回路54が接続されている。制御装置50
は、各圧電素子PZを駆動させるための駆動信号COMをヘッド駆動回路54に出力する
。制御装置50は、ビットマップデータBDを利用して所定の周波数に同期した吐出制御
信号SIを生成し、吐出制御信号SIをヘッド駆動回路54にシリアル転送する。ヘッド
駆動回路54は、制御装置50の吐出制御信号SIを各圧電素子PZに対応させて順次シ
リアル/パラレル変換する。また、ヘッド駆動回路54は、シリアル/パラレル変換した
吐出制御信号SIをラッチし、制御装置50のCPU50Aにて作成された前記補正され
た吐出タイミング信号LTを受けるたびに吐出制御信号SIによって選択される圧電素子
PZにそれぞれ駆動信号COMを供給する。従って、液滴吐出ヘッド30からは、補正さ
れた吐出タイミング信号LTのタイミング(吐出タイミング信号LTがHレベルに立ち上
がるタイミング)でノズルNから液滴Fbを吐出する。
【0065】
また、制御装置50は、ラバーヒータ駆動回路55が接続されている。制御装置50は
、加熱制御プログラムに従って生成された制御信号をラバーヒータ駆動回路55に出力す
る。ラバーヒータ駆動回路55は、制御装置50からの制御信号に応答して、ラバーヒー
タHを駆動してステージ23に載置されたマザーシート4Mを加熱する。
【0066】
さらに、制御装置50には、カメラ駆動回路56が接続されている。制御装置50は、
カメラ駆動回路56に駆動制御信号を出力する。詳しくは、制御装置50は、マザーシー
ト4Mが加熱された時に、載置部23a上に載置されたマザーシート4M上に配置形成さ
れたマークMを撮影する旨の駆動信号を出力する。すると、カメラKは、このタイミング
で駆動することによってマークMを撮影し、その画像データを制御装置50へ出力する。
【0067】
次に、前記液滴吐出装置20を使用してマザーシート4Mに内部配線6を形成する方法
について図2、図10及び図11に従って説明する。
まず、図2に示すように、パターン形成面4MaがZ矢印方向側を向くようにマザーシ
ート4Mをステージ23に載置する。このとき、ステージ23は、マザーシート4Mをキ
ャリッジ29よりも反Y矢印方向側に配置する。尚、このマザーシート4Mは、焼成前の
ものであって、予めビアホール7及びビア配線8が形成されている。
【0068】
この状態から、ビットマップデータBDが入出力装置51から制御装置50に入力され
る。つまり、このときに入力されるビットマップデータBDは、マザーシート4Mが常温
時(26℃時)であると想定した場合における液滴Fbの吐出を規定するデータである。
そして、ビットマップデータBDはRAM50Cに格納される。
【0069】
その後、制御装置50は、ラバーヒータ駆動回路55を介してステージ23に設けたラ
バーヒータHを加熱制御プログラムに従って駆動させる。この結果、ステージ23に載置
されたマザーシート4Mの表面温度は設定温度(46℃)になる(加熱工程)。
【0070】
すると、マザーシート4MはY矢印方向及び反Y矢印方向に沿って膨張した状態となる
。この状態で、制御装置50は、カメラ駆動回路56を介してカメラKを駆動させてマザ
ーシート4Mの左上隅に配置形成された前記マークMの様子を撮影する。すると、制御装
置50には、設定温度(46℃)に加熱された後のマークMの画像データが入力される。
続いて、制御装置50のCPU50Aは、その画像データと、常温(26℃)のときのマ
ークMの画像データとを比較して、常温(26℃)のマークMからのずれ量(変形度合い
(膨張度合い))を算出する(算出工程)。
【0071】
図10は、加熱後のマークMのマザーシート4MのマークMの様子を示すものである。
図10に示すように、加熱された状態でのマークMは、その膨張に伴って、常温(26℃
)のときのマークMに比べてY矢印方向側に伸長して配置される。本実施形態では、例え
ば、Y矢印方向側に0.5μm×8=4.0μmだけ伸長する。従って、マークMの付近
(マザーシート4MのY矢印方向側の端部)にある区画領域RのY矢印方向の長さは、1
0μm+4.0μm=14.0μmとなる。
【0072】
ここで、マザーシート4Mの中心をマザーシート4Mの膨張の中心とすると、マザーシ
ート4Mは、Y矢印方向側だけでなく反Y矢印方向側にも延びる。従って、CPU50A
は、Y矢印方向及び反Y矢印方向については、4.0μm×2=8.0μmだけ膨張した
と認識する。
【0073】
次に、CPU50Aは、タイミング信号生成プログラムに従って生成された吐出タイミ
ング信号LToを補正プログラムに従って補正する。つまり、CPU50Aは、吐出タイ
ミング信号LToを、前記ずれ量(膨張度合い)に対応したパルス信号QS毎にずらした
吐出タイミング信号LTを作成する。本実施形態では、たとえば、マザーシート4MのY
矢印方向側の端部側の左隅においては、Y矢印方向側に4.0μmだけ膨張していること
から、吐出タイミング信号LToをパルス信号QSの8つ分だけ早いタイミングでHレベ
ルになる吐出タイミング信号LTに補正(補正工程)。言い換えると、図11に示すよう
に、パルス信号QSのカウント値が3回目になるタイミングでHレベルになる吐出タイミ
ング信号LTを作成する。
【0074】
従って、吐出タイミング信号LTがHレベルになったタイミングで、即ち、常温(26
℃)時に比べてY矢印方向側に4.0μmだけ早くノズルNから液滴Fbが吐出する。こ
の結果、液滴Fbは区画領域Rの中心に着弾する。
【0075】
また、このとき、マザーシート4Mは加熱されていることからマザーシート4M上に着
弾した液滴Fbは加熱される。その結果、液滴Fb中の溶媒成分が蒸発して直ちに金属粒
子が凝集して内部配線6の配線パターンが形成される。
【0076】
以降、ステージ23を0.5μm毎にY矢印方向に搬送させ、前記ずれ量(膨張度合い
)に基づいた吐出タイミング信号LTのタイミングで選択されたノズルNから液滴Fbが
吐出する動作を繰り返す。これによって、マザーシート4M上には、着弾した液滴Fbに
よる内部配線6の配線パターンが形成の配線パターンが形成される。
【0077】
上記したように、本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)本実施形態によれば、ステージ23を0.5μm毎にY矢印方向及び反Y矢印方
向に沿って移動可能とした。また、吐出タイミング信号LToを加熱によるマザーシート
4Mの膨張度合いに基づいて補正するようにした。従って、ノズルNからの液滴Fbの着
弾位置をマザーシート4Mの膨張度合いに基づいて0.5μm毎に調整することができる
。この結果、マザーシート4Mを加熱することでマザーシート4Mが膨張した場合であっ
ても、液滴Fbは区画領域Rの所望の位置に着弾させることができることから、内部配線
6の配線パターンを目的の位置に精度良く形成することができる。
【0078】
(2)本実施形態によれば、内部配線6の配線パターンを目的の位置に精度良く形成す
ることができることから、所望の特性を有した回路モジュール1を形成することが可能と
なる。また、所望の特性を有したグリーンシート4Gの形成が可能となることから、グリ
ーンシート4Gの歩留まりを向上させることができる。
【0079】
(3)本実施形態によれば、基台21に第1及び第2のホトカプラPC1,PC2から
なる移動位置検出センサEbを具備した。そして、基台21上に載置されたステージ23
を液滴Fbの着弾径よりも短いピッチで移動可能とした。従って、液滴Fbの着弾径より
も短いピッチで液滴Fbの着弾位置を制御することができる。この結果、液滴Fbの着弾
位置を正確に補正することができる。
【0080】
(6)本実施形態によれば、焼成前のマザーシート4Mの左上隅にマークMを配置形成
した。そして、加熱されたマザーシート4MのマークMをカメラKにて撮影し、その画像
データと、常温(26℃)でのマークMの画像データとを比較することによって、吐出タ
イミング信号LToの出力タイミングを補正するようにした。従って、マザーシート4M
の膨張度合いを精度良く検出することができることから、所望の特性を有したグリーンシ
ート4Gを確実に形成することができる。
【0081】
(7)本実施形態によれば、ステージ23に載置されたマザーシート4Mを、吐出ヘッ
ド30から吐出される時の金属インクFの温度以上かつ金属インクFに含まれる機能性材
料の沸点未満(液体組成中の最も沸点の低い温度未満)の温度となるように加熱制御する
ようにした。従って、グリーンシート4G上に着弾した液滴Fbは加熱され、液滴Fb中
の溶媒成分が蒸発して直ちに金属粒子が凝集する。この結果、内部配線6を短時間で形成
することができる。
【0082】
尚、この発明は、以下のように変更して具体化することもできる。
・上記実施形態では、X矢印方向に沿ってノズルNを配置形成し、X矢印方向と直交する
Y矢印方向に沿ってマザーシート4MをノズルNに対して相対移動させるようにしたが、
本発明はこれに限定されない。ノズルNがX矢印方向に対して傾いていてもよいし、また
、マザーシート4MがY矢印方向に対して傾いて移動するような構成であってもよい。
・上記実施形態では、マザーシート4MにマークMを形成し、そのマークMのずれ量から
マザーシート4Mの熱変形度合い(膨張度合い)を算出するようにしたが、本発明はこれ
に限定されない。たとえば、マザーシート4Mに予め形成された複数のビアホール7の中
から特定のビアホール7を選択しその形成位置の偏倚量からグリーンシート4Gの熱変形
度合いを算出するようにしてもよい。このようにすることによって、変形度合いを算出す
るための特別なマーク(目印)を形成する必要が無いことから、簡単にグリーンシート4
Gの熱変形度合いを算出することができる。
・上記実施形態では、マークMをマザーシート4Mの左上隅に配置形成したが、本発明は
これに限定されるものではなく、マザーシート4M上であって、描画領域Z以外の領域で
あれば、どこに配置形成してもよい。
・上記実施形態では、位置検出手段としてエンコーダEに具体化したが、本発明はこれに
限定されるものではなく、例えば、Y軸モータMYの回転数をカウントするカウンタに具
体化してもよい。要は、基台21に対するステージ23のY矢印方向及び反Y矢印方向の
移動量を測定することができればどんなものであってもよい。
・上記実施形態では、加熱手段としてラバーヒータHを使用したが、本発明はこれに限定
されない。例えば、誘導加熱であってもよい。この場合、誘導加熱を構成する高周波発振
用コイルをステージ23に埋設するようにしてもよい。このようにすることでも上記実施
形態と同様な効果を得ることができる。
・上記実施形態では、内部配線6を構成する機能性材料として銀(Ag)の微粒子に具体
化したが、本発明はこれに限定されない。銀(Ag)以外に、例えば、金(Au)、白金
(Pt)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、
ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、
コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タンタル(T
a)、タングステン(W)、インジウム(In)のいずれか1つが利用されていてもよい
し、または、いずれか2以上が組み合わされた合金が利用されていてもよい。但し、銀で
あれば比較的低温で還元されるため、扱いが容易であり、この点で、液滴吐出装置を利用
する場合には、銀(Ag)を含有する機能液を利用することが好ましい。
【0083】
また、金属に代えて、有機化合物を含んでいてもよい。ここでいう有機化合物は、加熱
による分解によって金属が析出するような化合物である。このような有機化合物としては
、クロロトリエチルホスフィン金、クロロトリメチルホスフィン金、クロロトリフェニル
フォスフィン金、銀2,4−ペンタンヂオナン錯体、銅ヘキサフルオロペンタンジオナシ
クロオクタジエン錯体、等がある。
【0084】
さらに、機能液に含まれる金属の形態は、ナノ粒子に代表される粒子の形態でもよいし
、有機化合物のような化合物の形態であってもよい。
さらにまた、機能液は。金属に代えて、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレ
ンビニレン、ポリ(3,4エチレンジオキシトオフェン)(PEDOT)等の導電性高分
子の可溶性材料を含んでいてもよい。
・上記実施形態では、基板としてグリーンシート4Gに具体化したが本発明の基板はこれ
に限定されるものではなく、エポキシ基板、ガラスエポキシ基板、セラミック基板、また
はシリコン基板などが利用されてよい。このようにした場合であっても、上記実施形態で
は説明した効果と同様な効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】回路モジュールの側断面図。
【図2】液滴吐出装置の全体斜視図。
【図3】基台とステージとの連結部の概略断面拡大図。
【図4】液滴吐出ヘッドの底面図。
【図5】液滴吐出ヘッドの構成を説明するための図。
【図6】液滴吐出ヘッドの要部側断面図。
【図7】パターンが形成された後のマザーシートの上面図。
【図8】パターンが形成される前のマザーシートの上面図。
【図9】液滴吐出装置の電気的構成を説明するためのブロック図。
【図10】本発明のパターン形成方法の作用を説明するための図。
【図11】同じく、本発明のパターン形成方法の作用を説明するための図。
【符号の説明】
【0086】
BD…データとしてのビットマップデータ、E…エンコーダ、F…機能液及び液状体と
しての金属インク、Fb…液滴、H…加熱手段としてのラバーヒータ、K…カメラ、4G
…多孔質性基板、低温焼成用シート、基板及び回路基板としてのグリーンシート、5…回
路素子、7…ビアホール、7a…ビアホール、20…パターン形成装置としての液滴吐出
装置、50A…算出手段及び補正手段としてのCPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ヘッドのノズルから機能材料を含む機能液の液滴をデータによって指定された基板上
の複数の領域の各々に対して予め設定された吐出タイミングで吐出して、前記基板上に着
弾した前記液滴からなるパターンを形成するパターン形成方法において、
前記基板の表面温度を、前記液滴の吐出時の前記液滴の温度以上であって前記機能材料
の沸点以下の温度範囲内に加熱する加熱工程と、
前記加熱による前記基板の変形度合いを算出する算出工程と、
前記変形度合いに基づいて、前記液滴が前記データによって指定された前記領域に着弾
するように、前記吐出タイミングを補正する補正工程と
を備えたことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパターン形成方法において、
前記補正工程は、前記基板を前記吐出ヘッドに対して前記液滴の着弾径よりも短いピッ
チ毎に相対移動させて前記液滴の吐出タイミングを補正するようにしたことを特徴とする
パターン形成方法。
【請求項3】
請求項2に記載のパターン形成方法において、
前記吐出タイミングは、前記吐出ヘッドに対する前記基板の相対位置を検知する位置検
出信号を、前記変形度合いに基づいて分周することによって生成するようにしたことを特
徴とするパターン形成方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一つに記載のパターン形成方法において、
前記算出工程は、前記基板上に予め配置形成したマークを、前記基板を加熱する前と加
熱した後とで比較して、その加熱によるずれ度合いを算出するようにしたことを特徴とす
るパターン形成方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一つに記載のパターン形成方法において、
前記基板は、多孔質性基板であってセラミックス粒子と樹脂とから構成される低温焼成
用シートであり、
前記機能液は、前記機能材料として金属材料を分散させた液状体であることを特徴とす
るパターン形成方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一つに記載のパターン形成方法において、
前記基板は、回路素子が実装されるとともにその実装された前記回路素子に対して電気
的に接続された配線が形成される回路基板であることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一つに記載のパターン形成方法において、
前記データはビットマップデータであることを特徴とするパターン形成方法。
【請求項8】
吐出ヘッドのノズルから機能材料を含む機能液の液滴をデータによって指定された基板上
の複数の領域の各々に対して予め設定された吐出タイミングで吐出して、前記基板上に着
弾した前記液滴からなるパターンを形成するパターン形成装置において、
前記基板の表面温度を、前記液滴の吐出時の前記液滴の温度以上であって前記機能材料
の沸点以下の温度範囲内に加熱する加熱手段と、
前記加熱による前記基板の変形度合いを算出する算出手段と、
前記変形度合いに基づいて、前記液滴が前記データによって指定された前記領域に着弾
するように、前記吐出タイミングを補正する補正手段と
を備えたことを特徴とするパターン形成装置。
【請求項9】
請求項8に記載のパターン形成装置において、
さらに、前記基板を一方向に移動可能に支持する基台と、前記吐出ヘッドに対する前記
基板の相対位置を前記液滴の着弾径よりも短いピッチで検出する位置検出手段とを備え、
前記補正手段は、前記位置検出手段からの位置検出信号を、前記変形度合いに基づいた
タイミングで分周することによって前記吐出タイミングを補正することを特徴とするパタ
ーン形成装置。
【請求項10】
請求項9に記載のパターン形成装置において、
前記位置検出手段は、エンコーダであることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか一つに記載のパターン形成装置において、
前記算出手段は、
前記基板上に予め配置形成したマークを、前記基板を前記温度範囲内の温度に加熱する
前と、前記基板を前記温度範囲内の温度に加熱した後とで比較して、その加熱によるずれ
度合いを算出することを特徴とするパターン形成装置。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか一つに記載のパターン形成装置において、
前記データはビットマップデータであることを特徴とするパターン形成装置。
【請求項13】
請求項8〜12のいずれか一つに記載のパターン形成装置において、
前記機能液は、前記基板上に実装される回路素子に対して電気的に接続された配線を構
成する金属材料が分散された液状体であることを特徴とするパターン形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−132452(P2008−132452A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321267(P2006−321267)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】