説明

パターン形成方法

【課題】固体表面に超微細のグラフトポリマーパターンを容易に形成しうるパターン形成方法を提供すること。
【解決手段】ラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させる工程と、パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる工程と、前記基材上にラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させた後、該ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行い、前記パターン露光時における非露光領域に残存した該光重合開始部位からラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させる工程と、をこの順に行うことを特徴とするパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパターン形成方法に関し、より詳細には、固体表面に解像度に優れたパターンを容易に形成することができるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
固体表面のポリマーによる表面修飾は、固体表面のぬれ性、汚れ性、接着性、表面摩擦、細胞親和性などの性質を変えることができるため、工業的な分野で幅広く研究されている。その中でも、固体表面にポリマーを共有結合により直接結合させてなる表面グラフトポリマーによる表面修飾は、i)表面とグラフトポリマーとの間に強固な結合が形成されるという利点を有すること、ii)グラフトポリマーの物質に対する親和性が一般的な塗布架橋で形成されたポリマーとは大きく異なり、この親和性の相違に起因した特異的な性質を発現しうること、が知られている。
上記のような利点を有する表面グラフトポリマーは、その特異的な性質を利用した種々の応用技術が提案されており、例えば、細胞培養、抗血栓性人工血管、人工関節などの生体分野や、表面に高い親水性を必要とする親水性フィルム及び印刷版の親水性支持体などに用いられている。
【0003】
また、このような表面グラフトポリマーをパターン状に形成することでで、グフトポリマーの有する特異的な性質がパターン状に反映されるため、印刷原板、区画培養、及び色素画像形成などの各分野で用いられている。
【0004】
例えば、非特許文献1には、イニファーターと呼ばれる表面に固定化した重合開始基を用いて親水性グラフトパターンを形成し、それを細胞区画培養材料として用いることが、非特許文献2には、グラフトパターンに染料を吸着(トルイジンブルー染色)させることで可視画像のパターンができることが報告されている。
【0005】
非特許文献3には、表面に固定化したイニファーター重合開始剤を用いて、親水性又は疎水性モノマーをパターン状に重合させたグラフトポリマーパターンを得る技術や、色素構造を有するモノマーをグラフトさせることにより色素ポリマーのパターンを得る技術が報告されている。
非特許文献4には、マイクロコンタクト印刷法を用いて開始剤を金基板の上に画像様に付着させ、その開始剤から原子移動重合(ATRP重合)を起こさせ、HEMA(ヒドロキシエチルメタクリレート)やMMA(メチルメタクリレート)のグラフトポリマーをパターン状に形成し、それをレジストとして応用する技術が報告されている。
更に、非特許文献5には、基板に固定化したシラン化合物からのアニオンラジカル重合や、カチオンラジカル重合によりグラフトのパターンを作製する方法が提案されている。
【0006】
しかしながら、上述したような、従来のイニファーター法や、原子移動重合法を用いて固体表面にグラフトパターンを作製しようとすると、反応時間が長いことから、製造適性が充分ではないという欠点があった。また、アニオンラジカル重合法やカチオンラジカル重合法を用いた場合についても、重合反応に厳密な制御を必要とすることから、製造適性が充分ではないという欠点があった。
【0007】
このように、固体表面をグラフトポリマーにより修飾することで、効果的な表面改質材料や高機能材料を得るためのパターン形成方法が望まれている。
そこで、本願出願人は、特許文献1において、光開裂によりラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させ、その化合物の一部をパターン状に失活させた後、該基材上にラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させて、全面露光を行い、残存した光重合開始部位の光開裂により発生したラジカルを基点としてグラフトポリマーを生成させるパターン形成方法を提案している。
この方法によれば、固体表面に、数μm程度のライン幅及びスペース幅を有するグラフトポリマーパターンを、実用的な製造時間で容易に形成することができ、高解像度のパターン形成については、一定の効果が得られる。
しかしながら、超微細なパターンとして最新のレジストでは、50nm程度のパターンが求められており、上述の方法では、未だ達成できていないのが現状である。
【特許文献1】特開2005−275171号公報
【非特許文献1】松田ら著、「Journal of biomedical materials research」、2000年、第53巻、第584頁
【非特許文献2】松田ら著、「Langumuir」、1999年、第15巻、第5560頁
【非特許文献3】Metters,A,Tら著、「Macromolecules」、2003年、第36巻、第6739頁
【非特許文献4】C.J.Hawkerら著、「Macromolecules」、2000年、第33巻、第597頁
【非特許文献5】Ingallら著、「J.Am.Chem.Soc」、1999年、第121巻、第3607頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の前記従来における問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
即ち、本発明の目的は、固体表面に超微細なグラフトポリマーパターンを容易に形成しうるパターン形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
即ち、本発明のパターン形成方法は、ラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させる工程と、パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる工程と、前記基材上にラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させた後、該ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行い、前記パターン露光時における非露光領域に残存した該光重合開始部位からラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させる工程と、をこの順に行うことを特徴とする。
なお、前記ラジカル重合を開始しうる光重合開始部位としては、光開裂によりラジカル重合を開始しうる光重合開始部位であることが好ましい。
【0010】
本発明のパターン形成方法において、グラフトポリマーを生成させるために行う全面露光は、320〜700nmの範囲の波長の光のみで行われることが好ましく、320〜400nmの範囲の波長の光のみで行われることがより好ましい。
また、本発明にパターン形成方法は、好ましくは1μm以下の線幅のグラフトポリマーの生成領域を形成することが好ましい態様である。
これらの結果、ラインアンドスペースの幅がそれぞれ1μm以下のグラフトポリマーパターンを得ることができる。
【0011】
本発明における詳細なメカニズムは未だ明確ではないが、本発明におけるラジカル重合反応は、フリーラジカル重合を用いた重合反応であるため重合速度が速く、また重合反応には厳密な制御を必要としないため、固体表面に容易にグラフトポリマーパターンを形成することが可能になったものと考えられる。
また、本発明では、グラフトポリマーが生成される際に行う全面露光において、ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみを用いることを必須としている。そのため、不飽和化合物間の重合による所望されないホモポリマーが発生し難くなる。グラフトポリマーの生成の際に所望されないホモポリマーが生じると、そのホモポリマーは基材からの除去が困難であるため、現像性の低下の一因となり、超微細なパターン形成を阻害していたが、本発明のように、ホモポリマーの生成が少なくなると、基材表面を洗浄することでその除去が容易になり、その結果、超微細のグラフトポリマーパターンを高精度で形成することができるものと推測される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のパターン形成方法によれば、固体表面に超微細なグラフトポリマーパターンを容易に形成することができる。
この方法により、固体表面に50nm程度の超微細なグラフトポリマーパターンを形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のパターン形成方法は、ラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させる工程と、パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる工程と、前記基材上にラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させた後、該ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行い、前記パターン露光時における非露光領域に残存した該光重合開始部位からラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させる工程と、をこの順に行うことを特徴とする。
【0014】
この方法を用いることで、基材上に超微細のグラフトポリマーパターンを形成することができる。ここで、「超微細」とは、少なくともグラフトポリマーの生成領域の幅が1000nm程度以下のものを指し、好ましくは、ラインアンドスペースの幅がそれぞれ10〜1000nmの範囲のものであり、ラインアンドスペースの幅がそれぞれ10〜500nmの範囲であることがより好ましい。
本発明における「超微細パターン」については、原子間顕微鏡(AFM)や電子顕微鏡(SEM)にて観察することにより確認することができる。
【0015】
本発明において、「ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない」とは、具体的には、ラジカル重合可能な不飽和化合物を、溶媒(水、アセトン、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等の、ラジカル重合可能な不飽和化合物を溶解しうる溶媒)に溶解した溶液における吸光係数が10以下であることを意味する。ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長は、ラジカル重合可能な不飽和化合物の種類によって異なるが、(メタ)アクリレート系の化合物、(メタ)アクリルアミド系の化合物、ビニル系の化合物であれば、通常、320nm以上である。
具体的には、アクリルアミドの水溶液における、320nmの光の吸光係数は0.005であり、アクリル酸の水溶液における、320nmの光の吸光係数は0.18である。
以上のことから、グラフトポリマー生成工程における全面露光は、320nm以上の波長の光のみで行われることが好ましい。
また、上記の吸光係数は、市販の紫外可視吸収スペクトロメーターにより測定することができる。
【0016】
本発明において、グラフトポリマーを生成させる基材は、ラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物が結合しているものであることを要する。この化合物において、ラジカル重合を開始しうる光重合開始部位は、露光によりラジカルが発生する構造を有していれば、如何なるものであってもよい。
このラジカル重合を開始しうる光重合開始部位としては、具体的には、アセトフェノン系開始剤などの光開裂型開始部位,ベンゾフェノンなどの水素引き抜き型開始部位などが挙げられる。
本発明においては、基板に固定化したグラフトポリマーを生成するという点から、光開裂型の光重合開始部位を有する化合物を用いることが好ましい。
【0017】
以下、本発明のパターン形成方法について、光開裂型の光重合開始部位を有する化合物を用いた場合を一例として、説明する。
この場合、本発明のパターン形成方法は、以下の各工程を順次行うことが好ましい。
即ち、光開裂によりラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させる工程(以下、適宜、「光開裂化合物結合工程」と称する。)と、パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる工程(以下、適宜、「重合開始能失活工程」と称する。)と、前記基材上にラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させた後、該ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行い、前記パターン露光時における非露光領域に残存した該光重合開始部位に光開裂を生起させ、ラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させる工程(以下、適宜、「グラフトポリマー生成工程」と称する。)と、である。
【0018】
まず、本発明のパターン形成方法の概略について、図1を用いて説明する。ここで、図1は本発明のパターン形成方法における各工程の概略を示す概念図である。
図1(a)に示されるように、基材表面には当初より官能基(図中、Zで表される)が存在する。ここに、基材結合部位(Q)と、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)を付与し、基材表面に接触させる。これにより、図1(b)に示されるように、基材表面に存在する官能基(Z)と、基材結合部位(Q)と、が結合して、基材表面に化合物(Q−Y)が導入される〔光開裂化合物結合工程〕。その後、この化合物(Q−Y)が導入された面に、図1(b)の矢印のようにパターン露光を行う。これにより、重合開始部位(Y)は、露光エネルギーにより光開裂する。その結果、図1(c)に示されるように、化合物(Q−Y)の露光部は、重合開始部位(Y)が失活して、重合開始能失活部位(S)となる〔重合開始能失活工程〕。
その後、図1(d)に示されるように、モノマー等の公知のグラフトポリマー原料を接触させた状態で、図1(d)の矢印のように、ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行う。これにより、図1(e)に示されるように、重合開始部位(Y)が残存している領域において、化合物(Q−Y)の重合開始部位(Y)を起点としてグラフトポリマーが生成する〔グラフトポリマー生成工程〕。
【0019】
以下、このようなパターン形成方法について具体的に説明する。
図1においてZで表示される基は、基材表面に存在する官能基であり、具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などが挙げられる。これらの官能基はシリコン基板、ガラス基板における基材の材質に起因して基材表面にもともと存在しているものでもよく、基材表面にコロナ処理などの表面処理を施すことにより表面に存在させたものであってもよい。
【0020】
次に、光開裂によりラジカル重合を開始しうる重合開始部位(以下、単に、重合開始部位と称する。)と基材結合部位とを有する化合物の構造について具体的に説明する。この化合物について、図1の概念図における、基材結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)のモデルを用いて詳細に説明すれば、一般に、重合開始部位(Y)は、光により開裂しうる単結合を含む構造である。
この光により開裂する単結合としては、カルボニルのα開裂、β開裂反応、光フリー転位反応、フェナシルエステルの開裂反応、スルホンイミド開裂反応、スルホニルエステル開裂反応、N−ヒドロキシスルホニルエステル開裂反応、ベンジルイミド開裂反応、活性ハロゲン化合物の開裂反応などを利用して開裂が可能な単結合が挙げられる。これらの反応により、光により開裂しうる単結合が切断される。この開裂しうる単結合としては、C−C結合、C−N結合、C−O結合、C−Cl結合、N−O結合、及びS−N結合等が挙げられる。
【0021】
また、これらの光により開裂しうる単結合を含む重合開始部位(Y)は、グラフトポリマー生成工程におけるグラフト重合の起点となることから、光により開裂しうる単結合が開裂すると、その開裂反応によりラジカルを発生させる機能を有する。このように、光により開裂しうる単結合を有し、かつ、ラジカルを発生可能な重合開始部位(Y)の構造としては、芳香族ケトン基、フェナシルエステル基、スルホンイミド基、スルホニルエステル基、N−ヒドロキシスルホニルエステル基、ベンジルイミド基、トリクロロメチル基、ベンジルクロライド基などの基を含む構造が挙げられる。
【0022】
これらの中でも、グラフトポリマー生成工程において、ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光(好ましくは、320nm以上、より好ましくは320〜700nmの範囲の波長の光)のみで全面露光した際に、容易に光開裂し、かつ、ラジカルを発生する点から、重合開始部位(Y)はトリクロロメチル基を含む構造であることがより好ましい。
【0023】
このような重合開始部位(Y)は、露光により開裂してラジカルを発生するため、そのラジカル周辺に重合可能な化合物が存在する場合には、このラジカルがグラフト重合反応の起点として機能し、所望のグラフトポリマーを生成することができる(グラフトポリマー生成領域)。
一方、重合開始部位(Y)が露光により開裂してラジカルが発生しても、ラジカルの周辺に重合可能な化合物が存在しない場合には、そのラジカルは使用されず失活してしまい、その結果、重合開始能自体が失活することとなる。その結果、このような領域はグラフトポリマー非生成領域となる。
【0024】
一方、基材結合部位(Q)としては、基材表面に存在する官能基(Z)と反応して結合しうる反応性基で構成され、その反応性基としては、具体的には、以下に示すような基が挙げられる。
【0025】
【化1】

【0026】
また、重合開始部位(Y)と、基材結合部位(Q)と、は直接結合していてもよいし、連結基を介して結合していてもよい。この連結基としては、炭素、窒素、酸素、及び硫黄からなる群より選択される原子を含む連結基が挙げられ、具体的には、例えば、飽和炭素基、芳香族基、エステル基、アミド基、ウレイド基、エーテル基、アミノ基、スルホンアミド基等が挙げられる。なお、この連結基は更に置換基を有していてもよく、その導入可能な置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0027】
基材結合部位(Q)と、重合開始部位(Y)と、を有する化合物(Q−Y)の具体例〔例示化合物1〜例示化合物17〕を、開裂部と共に以下に示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0028】
【化2】

【0029】
【化3】

【0030】
【化4】

【0031】
本発明における光開裂化合物結合工程は、このような化合物(Q−Y)を基材に結合させる工程である。
例示された如き化合物(Q−Y)を基材表面に存在する官能基Zに結合させる方法としては、化合物(Q−Y)を、トルエン、ヘキサン、アセトンなどの適切な溶媒に溶解又は分散し、その溶液又は分散液を基材表面に塗布する方法、又は、溶液又は分散液中に基材を浸漬する方法などを適用すればよい。このとき、溶液中又は分散液の化合物(Q−Y)の濃度としては、0.01質量%〜30質量%が好ましく、特に0.1質量%〜15質量%であることが好ましい。接触させる場合の液温としては、0℃〜100℃が好ましい。接触時間としては、1秒〜50時間が好ましく、10秒〜10時間がより好ましい。
【0032】
本発明において用いられる基材には、特に制限はなく、基材表面に、水酸基、カルボキシル基、アミノ基などの官能基(Z)を有する基材、或いは、コロナ処理、グロー処理、プラズマ処理などの表面処理により、水酸基、カルボキシル基などを発生させた基材などを適用できる。
また、一般的には、平板状の基材が用いられるが、必ずしも平板状の基材に限定されず、円筒形などの任意の形状の基材表面にも同様にグラフトポリマーを導入することができる。
【0033】
本発明に好適な基材として、具体的には、ガラス、石英、ITO、シリコン等の表面水酸基を有する各種基材、コロナ処理、グロー処理、プラズマ処理などの表面処理により、表面に水酸基やカルボキシル基などを発生させたPET、ポリプロピレン、ポリイミド、エポキシ、アクリル、ウレタンなどのプラスチック基材等が挙げられる。
基材の厚みは、使用目的に応じて選択され、特に限定はないが、一般的には、10μm〜10cm程度である。
【0034】
その後、重合開始能失活工程において、グラフトポリマーを生成させたくない領域に沿ってパターン露光を行い、基材表面に結合している化合物(Q−Y)を光開裂させ、重合開始能を失活させる。
【0035】
そして、このようにして、重合開始可能領域と、重合開始能失活領域と、が形成された後、グラフトポリマー生成工程が行なわれる。
このグラフトポリマー生成工程では、重合開始可能領域と重合開始能失活領域とを有する基材を、所望とするグラフトポリマーの材料となる、ラジカル重合可能な不飽和化合物(例えば、親水性モノマーなど)を接触させた後、全面露光を行い、重合開始可能領域の重合開始基を活性化させてラジカルを発生させ、そのラジカルを起点として、ラジカル重合可能な不飽和化合物との間で、グラフト化反応を生起、進行させる。その結果、重合開始可能領域にのみ、グラフトポリマーが生成する。
【0036】
なお、ラジカル重合可能な不飽和化合物を基材表面に接触させる方法としては、ラジカル重合可能な不飽和化合物が溶解された溶液又は分散された分散液を塗布する方法、溶液又は分散液に基材を浸漬する方法などがある。
【0037】
グラフトポリマー生成工程において用いられるラジカル重合可能な不飽和化合物としては、ラジカル重合性基を有する化合物であれば、如何なるものも用いることができるが、例えば、親水性モノマー、疎水性モノマー、マクロマー、オリゴマー、重合性不飽和基を有するポリマーなどが挙げられる。本発明においては、極性基である親水性基を有する、親水性ポリマー、親水性マクロマー、親水性モノマーなどが好ましい。
以下に、グラフトポリマー生成工程において好適に用いられる、ラジカル重合可能な不飽和化合物について具体的に例示する。
【0038】
−重合性不飽和基を有する親水性ポリマー−
重合性不飽和基を有する親水性ポリマーとは、分子内に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基が導入されたラジカル重合性基含有親水性ポリマーを指す。このラジカル重合性基含有親水性ポリマーは、重合性基を主鎖末端及び/又は側鎖に有することを要し、その双方に重合性基を有することが好ましい。以下、重合性基を(主鎖末端及び/又は側鎖に)有する親水性ポリマーを、ラジカル重合性基含有親水性ポリマーと称する。
【0039】
このようなラジカル重合性基含有親水性ポリマーは以下のようにして合成することができる。
合成方法としては、(a)親水性モノマーとエチレン付加重合性不飽和基を有するモノマーとを共重合する方法、(b)親水性モノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、(c)親水性ポリマーの官能基とエチレン付加重合性不飽和基を有するモノマーとを反応させる方法、が挙げられる。これらの中でも、特に好ましいのは、合成適性の観点から、(c)親水性ポリマーの官能基とエチレン付加重合性不飽和基を有するモノマーとを反応させる方法である。
【0040】
上記(a)や(b)の方法において、ラジカル重合性基含有親水性ポリマーの合成に用いられる親水性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基、アミド基及びエーテル基などの親水性基を有するモノマーが挙げられる。
また、(c)の方法で用いられる親水性ポリマーとしては、これらの親水性モノマーから選ばれる少なくとも一種を用いて得られる親水性ホモポリマー若しくはコポリマーが用いられる。
【0041】
(a)の方法でラジカル重合性基含有親水性ポリマーを合成する際、親水性モノマーと共重合するエチレン付加重合性不飽和基を有するモノマーとしては、例えば、アリル基含有モノマーがあり、具体的には、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0042】
また、(b)の方法でラジカル重合性基含有親水性ポリマーを合成する際、親水性モノマーと共重合する二重結合前駆体を有するモノマーとしては、2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜が挙げられる。
【0043】
更に、(c)の方法でラジカル重合性基含有親水性ポリマーを合成する際、親水性ポリマー中のカルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩と、水酸基及びエポキシ基などの官能基と、の反応を利用して不飽和基を導入することが好ましい。このために用いられる付加重合性不飽和基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなど挙げられる。
【0044】
−親水性マクロモノマー−
本発明において用い得るマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
本発明で用い得る親水性マクロモノマーで特に有用なものとしては、アクリル酸、メタクリル酸などのカルホキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルステレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレー卜、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。また、ポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。
これらの親水性マクロモノマーのうち有用なものの分子量は、250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
【0045】
−親水性モノマー−
親水性モノマーとしては、アンモニウム、ホスホニウムなどの正の荷電を有するモノマー、若しくは、スルホン酸基、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基などの負の荷電を有するか負の荷電に解離しうる酸性基を有するモノマーが挙げられるが、その他にも、例えば、水酸基、アミド基、スルホンアミド基、アルコキシ基、シアノ基などの非イオン性の基を有する親水性モノマーを用いることもできる。
【0046】
本発明において用いうる親水性モノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。
例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそれらの塩、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライドなどを使用することができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなども有用である。
【0047】
−溶媒−
上述のラジカル重合可能な不飽和化合物を溶解、分散するための溶媒としては、該化合物や必要に応じて添加される添加剤が溶解可能ならば特に制限はない。
例えば、親水性モノマー等の親水性の化合物が適用される場合であれば、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加したものなどが好ましい。水溶性溶剤は、水と任意の割合で混和しうる溶剤を言い、そのような水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリンの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトンの如きケトン系溶剤、ホルムアミドの如きアミド系溶剤などが挙げられる。
また、疎水性モノマー等の疎水性の化合物が適用される場合であれば、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノールの如きアルコール系の溶剤、メチルエチルケトンの如きケトン系の溶剤、トルエンの如き芳香族炭化水素系の溶剤などが好ましい。
【0048】
本発明のパターン形成方法の重合開始能失活工程におけるパターン露光、及びグラフトポリマー生成工程におけるラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光による全面露光に用いうる露光方法には特に制限はなく、前記重合開始部位(Y)において開裂を生じさせるエネルギーを付与できる露光であれば、紫外線による露光でも、可視光による露光でもよい。また、重合開始能失活工程におけるパターン露光、及び、グラフトポリマー生成工程における全面露光は、同じ露光条件で行なわれてもよいし、異なる露光条件で行なわれてもよい。
露光に用いられる光源としては、紫外光、深紫外光、可視光、レーザー光等が挙げられ、具体的には、紫外光、i線、g線、KrF、ArFなどのエキシマレーザーが用いられる。中でも、好ましくは、i線、g線、エキシマレーザーである。
【0049】
本発明により形成されるパターンの解像度は、パターン露光における露光条件に左右される。
本発明のパターン形成方法を用いれば、超微細なグラフトポリマーパターンの形成が可能であり、高精細のパターン露光を施すことにより、露光に応じた高精細なグラフトポリマーパターンが形成される。高精細なグラフトポリマーパターン形成のための露光方法としては、光学系を用いた光ビーム走査露光、マスクを用いた露光などが挙げられ、所望のパターンの解像度に応じた露光方法をとればよい。
特に、ラインアンドスペースの線幅が1000nm以下の超微細なグラフトポリマーパターンを形成する際のパターン露光としては、具体的には、i線ステッパー、g線ステッパー、KrFステッパー、ArFステッパーのようなステッパー露光や、二光束干渉露光機による露光などが挙げられる。
【0050】
また、本発明におけるグラフトポリマー生成工程では、ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光が行われることを必須とする。ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収する波長の光を用いると、所望されないホモポリマーの生成が見られ、超微細のパターンが形成できなくなることから、本発明においては、ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみによる全面露光を行う。
本発明において、所望されないホモポリマーの生成を抑制し、且つ、前記重合開始部位(Y)において開裂を効率的に生じさせる点から、グラフトポリマー生成工程の全面露光は、320〜700nmの範囲の波長の光のみで行われることが好ましく、320〜400nmの範囲の波長の光のみで行われることがより好ましい。このような範囲の波長の露光には、例えば、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプなどを適用することができる。
【0051】
上記のような全面露光には、ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみを発する光源を用いる方法や、ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみを透過させる、つまり、光吸収してしまう波長の光をカットするカットフィルターを用いて露光を行う方法が用いられる。具体的には、例えば、320nm未満の波長の光をカットするカットフィルターを用いて露光を行う方法が用いられる。また、好ましい態様として、露光の際には、320〜700nm(好ましくは320〜400nm)の範囲に発光波長(放射スペクトル)を有する光源を用いることが好ましい。
また、この全面露光は、酸素の影響を低減させるため、窒素などの不活性雰囲気下や真空下で行われるか、基材上にラジカル重合可能な不飽和化合物を含む溶液や分散液を接触させた後、グラフト重合反応を生起させるための光、即ち、本発明においては、例えば、320nm以上の波長の光が透過する材質、例えば、ガラス、石英、透明プラスチック製の板やフィルム等で、当該溶液や分散液を覆ってもよい。これら、溶液や分散液を覆う部材は、上記の320nm未満の波長の光をカットするカットフィルターとして機能してもよい。
更に、解像度を上げるために、基材と対物レンズとの間に水等の液浸液を介在させた、いわゆる、液浸露光法を用いることもできる。
また、露光エネルギーとしては、100mJ/cm以上であることが好ましく、500mJ/cm以上であることがより好ましい。
【0052】
このように、本発明のパターン形成方法により、表面にグラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるパターンが形成された基材は、露光後、溶剤浸漬や溶剤洗浄などの処理を行って、残存するホモポリマーを除去して、精製する。具体的には、水やアセトンによる洗浄、乾燥などが挙げられる。ホモポリマーの除去性の観点からは、超音波などの手段を採ることが好ましい。精製後の基材は、その表面に残存するホモポリマーが完全に除去され、基材と強固に結合したパターン状のグラフトポリマーのみが存在することになる。
【0053】
これらのことから、本発明のパターン形成方法によれば、露光の解像度に応じた微細なパターンが容易に形成されることから、その応用範囲は広い。
本発明の方法により得られたパターンは、例えば、微細加工用レジスト等に適用することができる。
【0054】
なお、本発明のパターン形成方法について、光開裂型の光重合開始部位を有する化合物が結合した基材を用いた場合を一例として説明したが、本発明はこれに限定されず、他の光重合開始部位を有する化合物が結合した基材を用いた場合も、前述の重合開始能失活工程、及びグラフトポリマー生成工程を適用することで、超微細のグラフトポリマーパターンを形成することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
〔実施例1〕
(光開裂化合物結合工程)
片面研磨された4インチのシリコンウエハをUVオゾンクリーナー(UV42、日本レーザー電子社製)を用いて、5分間UVオゾン処理を行うことで表面洗浄を行った。
次に、下記に示す重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物P1を脱水トルエンに溶解して1.0質量%溶液を調製し、これを上記のシリコンウエハ上にスピンコートした。スピンコートは、まず、300rpmで5秒回転させ、次に1000rpmで20秒間回転させた。スピンコート後、100℃で60秒間加熱し、表面をトルエンおよびアセトンで洗浄した。このようにして得られた化合物P1が結合したシリコンウエハを基材A1とする。
【0057】
【化5】

【0058】
(重合開始能失活工程)
基材A1の片面に、二光束干渉露光機(ニコン社製、LEIES193−1、193nm、pawer15mW)を用いて、50nmのパターン露光を行った。このように処理を施した基材を基材B1とする。
【0059】
(グラフトポリマー生成工程)
基材B1上に、アクリル酸水溶液(10質量%)を塗布し、その上に、320nm以上の光のみを透過するガラス板(青色ガラス、松並ガラス社製)をかぶせ、基材B1とガラス板とでアクリル酸水溶液を挟み込んだ。なお、アクリル酸水溶液の膜厚は1〜3mm程度である。
次に、ガラス板上から、露光機(UVX−02516S1LP01、ウシオ電機社製、63mW/cm、主たる発光波長:254nm、365nm)を用いて、5分間全面露光を行った。その後、ガラス板を取り除き、露光面を純水で充分洗浄した。続いて、露光面を超音波洗浄器にて15分間洗浄した。
ここで、アクリル酸の水溶液における、320nmの光の吸光係数は0.18であり、365nmの光の吸光係数は0であった。
以上のようにして、パターンC1を形成した。
【0060】
〔比較例1〕
実施例1におけるグラフトポリマー生成工程において、320nm以上の光のみを透過するガラス板に代えて、240nm以上の光を通過する石英板を用いて全面露光を行い、更に、露光面に対し超音波洗浄器にて1時間の洗浄を行った以外は、実施例1と同様の方法で、パターンC2を形成した。
なお、超音波洗浄を1時間としたのは、露光後、石英板を取り除いたところ、基板表面にアクリル酸ポリマー(ホモポリマー)がゲル状になって付着していたためである。
ここで、アクリル酸を水に20質量%で溶解した溶液における、254nmの光の吸光度は4以上であり、アクリル酸の水溶液における、254nmの光の吸光係数は20以上であった。
【0061】
<パターンの確認及び評価>
実施例1及び比較例1により得られたパターンC1及びC2を、原子間顕微鏡AFM(ナノピクス1000,セイコーインスツルメンツ社製、DFMカンチレバー使用)で観察した。
その結果、本発明のパターン形成方法によりパターン形成を行った実施例1では、パターンC1には、ラインアンドスペースの線幅が50nm程度の超微細なグラフトポリマーパターンが形成されていたことが確認された。
一方、比較例1の方法で得られたパターンC2には、ホモポリマーの残存が見られ、グラフトポリマーの非生成領域が不明瞭となっており、50nm程度の超微細なグラフトポリマーパターンは確認できなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のパターン形成方法における各工程の概略を示す概念図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジカル重合を開始しうる光重合開始部位と基材結合部位とを有する化合物を基材に結合させる工程と、
パターン露光を行い、露光領域の該光重合開始部位を失活させる工程と、
前記基材上にラジカル重合可能な不飽和化合物を接触させた後、該ラジカル重合可能な不飽和化合物が光吸収しない波長の光のみで全面露光を行い、前記パターン露光時における非露光領域に残存した該光重合開始部位からラジカル重合を開始させることでグラフトポリマーを生成させる工程と、
をこの順に行うことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項2】
前記全面露光が320〜700nmの範囲の波長の光のみで行われることを特徴とする請求項1に記載のパターン形成方法。
【請求項3】
前記全面露光が320〜400nmの範囲の波長の光のみで行われることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のパターン形成方法。
【請求項4】
1μm以下の線幅のグラフトポリマーの生成領域を形成する請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のパターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−3160(P2008−3160A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−170491(P2006−170491)
【出願日】平成18年6月20日(2006.6.20)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】