説明

パターン投影装置およびレーザ加工装置

【課題】空間光変調素子の劣化を防止することができるパターン投影装置およびレーザ加工装置を提供すること。
【解決手段】本発明にかかるレーザ加工装置100は、レーザ光源41から出射されたレーザ光を複数のミラーによって空間変調する空間光変調素子45と、基板1を照明する照明系36を含む照明光学系と、空間光変調素子45に空間変調された変調光を対象物に投影する結像レンズ38と、空間光変調素子45から出力されたレーザ光の進行方向を結像レンズ38の光軸と一致する方向に偏向させる偏向素子46と、を備え、空間光変調素子45は、空間光変調素子45に入射するレーザ光の進行方向が該空間光変調素子45の基準面の法線とおおよそ平行である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光を使用して対象物にパターンを投影するパターン投影装置およびレーザ光を使用して対象物の加工を行うレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶ディスプレイやPDP(Plasma Display Panel)や有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイや表面電動型電子放出素子ディスプレイなどのFPD(Flat Panel Display)基板、半導体ウェハ、プリント基板など、各種基板の製造では、その歩留りを向上するために、各パターニングプロセス後、欠陥検査装置によって、電極および配線の短絡、接続不良、断線、パターン不良および基板表面に付着したパーティクルやレジストといった異物等である欠陥が存在するか否かが検査される。そして、欠陥検査装置によって欠陥が存在することが確認された場合、レーザ加工装置によるレーザ光を用いた加工処理によって欠陥が修正される。
【0003】
このレーザ加工装置として、加工面と共役な位置に微小ミラーアレイであるDMD(Digital Mirror Device:登録商標)などの空間光変調素子を配置し、このDMDで形成したパターンを加工面にレーザ照射することで、加工面に任意のパターン形状を高速に加工する構成が提案されている(たとえば、特許文献1および特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−128238号公報
【特許文献2】特開平11−320963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来のレーザ加工装置について説明する。図12は、従来のレーザ加工装置の概略構成を示す模式図である。図13は、従来の空間光変調素子の一部の側面図である。図14は、従来の空間光変調素子に入射するレーザ光を説明する側面図である。
【0006】
図12に示すように、従来のレーザ加工装置は、レーザ光源141と、例えばDMDである空間光変調素子145と、結像レンズ138と、対物レンズ131とを備え、加工対象の基板1上の図示しない欠陥をレーザ光により加工する。
【0007】
レーザ光源141は、レーザ光を発振する。発振されたレーザ光は、図示しない光学系により分布が平坦化された後、空間光変調素子145に入射する。この入射角は、図14に示す複数の微小ミラー145bの基準面S10の垂線に対して24.0°である。
【0008】
空間光変調素子145は、基準面S10と基板1の加工面とが平行となるように配置される。空間光変調素子145は、レーザ光源141により発振されて基準面S10に入射するレーザ光を空間変調し、水平な基準面S10に垂直な鉛直下方に出射する。
【0009】
結像レンズ138および対物レンズ131は、空間光変調素子145から鉛直下方に出射された変調光を、基板1の表面上に結像させる。これにより、基板1上の欠陥は、レーザ光により加工される。
【0010】
図13に示すように、空間光変調素子145は、矩形状の変調領域内に2次元的に等ピッチで配列された複数の微小ミラー145bと、支持部145cと、回転軸部145dと、一対のランディングパット145e(一方のみ図示)と、一対のアドレス電極145fと、基板145gとを含む。
【0011】
支持部145cは、複数の微小ミラー145bのそれぞれに設けられ、微小ミラー145bを支持する。回転軸部145dは、その軸方向中心において支持部145cの下端に連結され、微小ミラー145bの揺動運動の回転中心をなす。一対のランディングパット145eは、これらに架け渡された回転軸部145dの両端を支持する。一対のアドレス電極145fは、微小ミラー145bを静電力によりオン状態とオフ状態とに揺動させる。オン状態の微小ミラー145bは、基準面S10の垂線方向に変調光を射出する。なお、複数の微小ミラー145bは、それぞれ独立して各一対のアドレス電極145fによって揺動する。
【0012】
微小ミラー145bは、一対のランディングパット145eのうち一方に突き当たって停止する位置で回転角が決まるが、この微小ミラー145bとランディングパット145eとの物理的接触は、スティッキングと呼ばれる不具合を発生させる原因となる。スティッキングとは、微小ミラー145bがランディングパット145eに貼り付いて動作できなくなる現象である。従来、このスティッキングを防止するために、空間光変調素子145のデバイス全体には潤滑剤145hが塗布されている。
【0013】
しかしながら、図14に示すように、微小ミラー145bが空間光変調素子145に入射するレーザ光L10の入射側とは反対側に傾いているオフ状態となっているときに、YAG第四高調波(波長266nm)のような紫外レーザ光が空間光変調素子145の基準面S10の垂線に対して24.0°の傾斜角で空間光変調素子145に入射すると、紫外レーザ光が到達した領域A10では、ランディングパット145eに塗布された潤滑剤145hがこの紫外レーザ光によって劣化する。このため、従来の構成では、スティッキングが発生しやすくなる。
【0014】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、空間光変調素子の劣化を防止することができるパターン投影装置およびレーザ加工装置及を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかるパターン投影装置は、対象物にパターンを投影するパターン投影装置において、レーザ光を出射する光源と、規則的に配列された複数のミラーを有し、前記複数のミラーによって、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記パターンに対応させて空間変調する空間光変調素子と、前記対象物を照明する照明光学系と、前記空間光変調素子によって空間変調された変調光を前記対象物に投影する投影光学装置と、前記空間光変調素子から出力されたレーザ光の進行方向を、前記投影光学系の光軸方向と一致する方向に偏向させる偏向素子と、を備え、前記空間光変調素子は、該空間光変調素子に入射するレーザ光の進行方向が該空間光変調素子の基準面の法線とおおよそ平行であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明にかかるレーザ加工装置は、上記記載のパターン投影装置と、前記パターン投影装置から出力されたレーザ光を前記対象物に投影して前記対象物を加工する加工部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、空間光変調素子に入射するレーザ光の進行方向が該空間光変調素子の基準面の法線と平行であるため、空間光変調素子のミラー裏面に位置するランディングパット上の潤滑剤へのレーザ光の照射を防止して潤滑剤の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、実施の形態にかかるレーザ加工装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、図1に示すレーザ加工装置の要部の構成を説明する図である。
【図3】図3は、図1に示す空間光変調素子の一部の側面図である。
【図4】図4は、図2に示す空間光変調素子および偏向素子の平面図である。
【図5】図5は、図1に示す偏向素子を説明するための図である。
【図6】図6は、図1に示すレーザ加工装置の要部の他の構成を説明する図である。
【図7】図7は、図1に示すレーザ加工装置の要部の他の構成を説明する図である。
【図8】図8は、図1に示すレーザ加工装置の要部の他の構成を説明する図である。
【図9】図9は、図8に示す透明型回折光学素子を説明する図である。
【図10】図10は、図1に示すレーザ加工装置の要部の他の構成を説明する図である。
【図11】図11は、図2に示す空間光変調素子の他の構成を示す図である。
【図12】図12は、従来のレーザ加工装置の概略構成を示す模式図である。
【図13】図13は、従来の空間光変調素子の一部の側面図である。
【図14】図14は、従来の空間光変調素子に入射するレーザ光を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明にかかる実施の形態として、たとえば、ガラス基板、半導体ウェハなどの基板をレーザ加工することによって、パターン不良や欠陥を修正するレーザ加工装置を例として説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。
【0020】
(実施の形態)
実施の形態について説明する。図1は、実施の形態にかかるレーザ加工装置の概略構成を示すブロック図である。図2は、図1に示すレーザ加工装置の要部の構成を説明する図である。なお、図2では、図1に示すレーザ加工装置のうち後述するミラー44等の図示を省略して、ミラー44の位置にレーザ光源41を図示している。
【0021】
図1および図2に示すように、実施の形態にかかるレーザ加工装置100は、加工対象の基板1を載置するとともに図面に鉛直な平面上で基板1を移動させるステージ2と、ステージ2上に載置された基板1を上方から観察する顕微鏡部3と、基板1に照射する欠陥修復加工用のレーザ光の光束断面形状(以下、レーザ断面形状という)を所望の形状に整形するレーザ照射部4と、各種プログラムおよびパラメータを実行してレーザ加工装置100の各構成要素を制御する制御部5と、レーザ加工装置100に対する各種操作や設定を指示する指示情報が入力される入力部6と、顕微鏡部3で取得された画像や各種情報を表示する表示部7と、各種プログラムおよび配線、電極の各種標本パターン画像を記憶する記憶部8とを備える。ステージ2、顕微鏡部3、レーザ照射部4、入力部6、表示部7および記憶部8は、制御部5に接続し、制御部5の制御によって動作する。レーザ加工装置100は、加工情報にしたがって加工対象の欠陥等を撮像し、撮像した欠陥画像と所定の標本パターン画像とのマッチングによって、欠陥の抽出と、電極パターンまたは配線パターンをレーザ加工領域から除外するためにレーザ光の非照射領域を設定するマスク設定とを行ってから、レーザ光を照射することで基板上の欠陥を加工する。欠陥には、電極および配線の短絡、接続不良、断線、パターン不良および基板表面に付着したパーティクルやレジスト等の異物が含まれる。
【0022】
加工対象である基板1は、たとえばFPD用のガラス基板や半導体基板やプリント基板などである。ステージ2の載置面には、複数の穴が設けられている。これらの穴に不図示のポンプから気体が供給されることによって基板1を浮上させた状態とすることができ、この状態において、不図示の固定部材によって基板1がステージ2上で保持される。または、この複数の穴を、不図示のバキュームポンプに連結し、この複数の穴からの吸気によって、ステージ2上に載置された基板1をステージ2に対して吸着して固定することも可能である。また、上記のような、ステージ2上で基板1を保持する保持手段として、上記以外にも支持ピンやクランプ機構など、機械的な手段を用いる構成としてもよい。ステージ2は、後述する対物レンズ31の光軸に直交した平面内で自在に移動され、対物レンズ31に対する基板1の当該平面上での位置を変化させる。
【0023】
顕微鏡部3は、対物レンズ31、レボルバ32、焦準機構33、撮像部34、結像部35、照明系36、ハーフミラー37a、ハーフミラー37bおよびレーザ光用の結像レンズ38を有し、基板1の一部を拡大した画像を取得する撮像部として機能する。
【0024】
対物レンズ31は、ステージ2に載置された基板1の上部に位置するようにレボルバ32により保持される。対物レンズ31は、レボルバ32に対して着脱自在に取り付けられており、レボルバ32の回転またはスライド動作に応じてステージ2上に配置される。対物レンズ31とレーザ光用の結像レンズ38とは、両側テレセントリックとなるように配置される。
【0025】
レボルバ32は、焦準機構33によって昇降移動することが可能である。焦準機構33は、レボルバ32を昇降させることによって、対物レンズ31の基板1に対する焦点合わせを行い、焦点位置の最適化を行う。
【0026】
撮像部34は、CCDセンサやCMOSセンサなどの撮像素子を含む。結像部35は、結像レンズ35aとミラー35bとによって構成される。結像部35は、対物レンズ31と協働して、基板1の観察像を結像させる。
【0027】
照明系36から出力された照明光は、レンズ36aで集光されてからハーフミラー37bで反射された後、観察光学系の基板1に対する観察光軸と同軸の光として対物レンズ31を介して基板1を照明する。撮像部34の視野領域内は、照明系36からの照明光によって上方から略均一に照明される。照明系36、レンズ36aおよびハーフミラー37bは、照明光学系として機能する。
【0028】
照明された基板1の像は、基板1の加工面と垂直である光軸A5に沿って配置された対物レンズ31、ハーフミラー37a、ミラー35bおよび結像レンズ35aを含む観察光学系によって、撮像部34の受光面に、たとえば数倍〜数十倍に拡大されて結像される。撮像部34で取得された画像データは、制御部5に出力され、各種画像処理が施された後、表示部7に出力される。
【0029】
レーザ照射部4は、レーザ光源41と、レーザ光源41から出射されたレーザ光を導光する光ファイバ42と、光ファイバ42から出射されたレーザ光を後述する空間光変調素子45に投影するための投影レンズ43a,43bと、投影レンズ43bからのレーザ光を空間光変調素子45に対して反射するミラー44と、レーザ光源41からのレーザ光のレーザ断面形状を所望の形状に整形する空間光変調素子45と、および、空間光変調素子45から出力されたレーザ光を偏向させる偏向素子46を有する。レーザ照射部4は、顕微鏡部3の撮像部34が取得した画像に基づいて、基板1に欠陥修復加工用に空間変調したレーザ光を照射する。
【0030】
レーザ光源41は、基板1に照射されるレーザ光を出射する。レーザ光源41は、たとえば、YAGレーザによって構成される。レーザ光源41は、制御部5に電気的に接続され、制御部5からの制御信号に応じてレーザ光のオン・オフ、波長、光出力、発振パルス幅などが制御される。レーザ光源41から出射されたレーザ光は、光ファイバ42から出射される。
【0031】
投影レンズ43a,43bは、光ファイバ42からの出射光を、一定の投影倍率で大きさを持った像として空間光変調素子45に投影する機能を有する。投影レンズ43a,43bは、両側テレセントリックとなるように配置される。光ファイバ42から出射したレーザ光は、投影レンズ43aによって平行光束となり、投影レンズ43bによって収束されて、光ファイバ42の像として集光される。ミラー44は、レーザ光の光路上に配置されることで、レーザ光の光軸A1を空間光変調素子45の基準面の法線と一致する光軸A2の方向に反射させている。
【0032】
空間光変調素子45は、たとえば微小デバイスの1つである微小ミラーが2次元アレイ状に配列された構成を備え、複数のミラーによってレーザ光源41から出射されたレーザ光を加工形状に対応させて空間変調する。空間光変調素子45は、入射光に対してたとえば24.0°の角度でレーザ光を出力する。各微小ミラーの反射角は、制御部5からの制御のもと、少なくともオン角度とオフ角度とに切り替え可能である。オン角度とは、この状態にある微小ミラーで反射されたレーザ光がステージ2上の基板1に投射される角度であり、オフ角度とは、この状態にある微小ミラーで反射されたレーザ光が不必要な光として光路外に設けられる不図示の遮光部材や吸収部材などのレーザダンパーに照射される角度である。したがって、2次元アレイ状に配列された微小ミラーそれぞれの反射角をオン角度とオフ角度とに切り替えることで、基板1に投射されるレーザ光の断面形状を制御することが可能である。
【0033】
これによって、レーザ光源41からのレーザ光の断面形状を加工パターンの形状に調整して基板1に照射することが可能となる。この加工パターンは、正常な配線パターン以外にレーザ光を照射する加工パターンであり、たとえばパターン除去不良などの欠陥を修復する場合には、ショット領域中の正常な配線等の領域に対応する微小ミラーをオフ角度とし、それ以外の領域に対応する微小ミラーをオン角度としたパターンとなる。空間光変調素子45には、例えばDMDを用いればよい。空間光変調素子45は、制御部5の制御のもと、レーザ照射部4が出力する欠陥修復用のレーザ光の光束断面形状(レーザ光の光軸と垂直な断面の形状)を調整する。なお、加工パターンの設定は、上記のように正常な配線パターンに応じて設定する以外に、欠陥形状に合わせて設定するようにしても構わない。この場合、レーザ光の断面形状を欠陥形状に合わせて、欠陥領域に対応する微小ミラーをオン角度とし、欠陥領域以外の領域に対応する微小ミラーをオフ角度とすればよい。
【0034】
空間光変調素子45には、前述したミラー44によって、図2のように、空間光変調素子45の基準面の法線とおおよそ平行である光軸A2でレーザ光L2が入射する。言い換えると、空間光変調素子45は、その基準面に対して垂直にレーザ光L2(光軸A2)が入射するように配置されている。すなわち、空間光変調素子45は、空間光変調素子45に入射するレーザ光の進行方向と空間光変調素子45の基準面の法線とが平行となるように配置される。
【0035】
偏向素子46は、たとえば、一次元の回折光学素子である。偏向素子46は、空間光変調素子45から出力されたレーザ光の進行方向を、顕微鏡部3における観察光学系の光軸A5と一致する方向に偏向させる。言い換えると、偏向素子46は、顕微鏡部3における観察光学系の光軸A5と、空間光変調素子45から出力されたレーザ光の光軸A3とが一致するように、観察光学系の光軸A5と一致する光軸A4に、空間光変調素子45から出力されたレーザ光L3を偏向させる。なお、空間光変調素子45および偏向素子46は、レーザ光用の結像レンズ38の焦点位置に対応して配置される。
【0036】
空間光変調素子45から照射されて偏向素子46によって偏向されたレーザ光L4は、レーザ光用の結像レンズ38において平行光となり、ハーフミラー37aおよびハーフミラー37bを経由し、軸上から軸外までのレーザ光が漏れなく対物レンズ31の瞳面に取り込まれ、基板1の加工面に投射される。この結果、基板1の加工対象である欠陥が加工される。結像レンズ38は、空間光変調素子45に空間変調された変調光を加工対象物である基板1の加工面に投影する機能を有する。偏向素子46は、この結像レンズ38の光軸方向と一致する方向に、空間光変調素子45から出力されたレーザ光の進行方向を偏向させる。対物レンズ31は、結像レンズ38から出力されたレーザ光を所定のエネルギー密度まで高めて基板1に投影して基板1の欠陥を加工する機能を有する。
【0037】
制御部5は、顕微鏡制御部51およびレーザ加工制御部52を有する。顕微鏡制御部51は、ステージ2および顕微鏡部3の各構成要素の動作処理を制御する。レーザ加工制御部52は、レーザ照射部4のレーザ光源41に対してレーザ光の出力波長を指示するとともに、レーザ光源41の出力を制御する。
【0038】
入力部6は、キーボード、マウス等を用いて構成されており、使用者からの各種設定パラメータ等の入力指示を、表示部7に表示されるGUI(Graphical User Interface)と連携して取得する。表示部7は、液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、観察画像、設定情報等を表示する。記憶部8は、ハードディスク、ROM、RAMおよび携帯型記憶媒体等を用いて構成されており、レーザ加工装置100の各種動作を制御するための制御プログラムや制御条件を予め記憶する。また、記憶部8は、基板1の工程・品種に応じた、電極(または配線)パターンの標本パターン画像を記憶する。また、レーザ加工装置100は、図示しない通信インターフェース等を有し、ネットワークを介して外部装置との間で通信する。
【0039】
次に、図1および図2に示す空間光変調素子45の構成について説明する。図3は、図1に示す空間光変調素子45の一部の側面図である。図3に示すように、空間光変調素子45は、微小ミラー45bと、支持部45cと、回転軸部45dと、回転角規制部材としての一対のランディングパット45e(一方のみ図示)と、一対のアドレス電極45fと、基板45gとを含む。
【0040】
支持部45cは、複数の微小ミラー45bのそれぞれに設けられ、微小ミラー45bの裏面中央を支持する。回転軸部45dは、その軸方向中心において支持部45cの下端に連結され、微小ミラー45bの揺動運動の回転中心となる。
【0041】
一対のランディングパット45eは、これらに架け渡された回転軸部45dの両端を支持すると共に、微小ミラー45bに接触することで微小ミラー45bの回転角を規制する。
【0042】
一対のアドレス電極45fは、微小ミラー45bを静電力によりオン角度で傾斜させるオン状態と、オフ角度で傾斜させるオフ状態とに揺動させる。オン角度およびオフ角度は、同角度である。したがって、微小ミラー45bのオン状態およびオフ状態の位置関係は、回転軸部45dを通る空間光変調素子45の基準面の法線を含む一つの平面に対して対称である。なお、複数の微小ミラー45bは、それぞれ独立して各一対のアドレス電極45fによって揺動する。
【0043】
空間光変調素子45のデバイス全体には、一対のランディングパット45eの一方の表面と微小ミラー45bの裏面とが貼り付いて動作できなくなる現象であるスティッキングを防止するために、潤滑剤45hが塗布されている。図3においてはランディングパット45e上のみに潤滑剤45hを図示する。
【0044】
一対のランディングパット45eは、レーザ光L2(光軸A2)が照射されない非照射領域A1に配置されている。この非照射領域A1は、微小ミラー45bの裏面側で、かつ、微小ミラー45bの回転位置によらず(微小ミラー45bが図3に実線で示すオフ状態にあるときも二点鎖線で示すオン状態33b−1にあるときも)レーザ光が照射されない領域である。
【0045】
前述したように、空間光変調素子45は、基準面S1に対してほぼ垂直にレーザ光L2(光軸A2)が入射するように配置されている。このため、レーザ光L2(たとえばYAG第四高調波(波長266nm)のような紫外レーザ光など)は、オン状態およびオフ状態のいずれの状態においても、微小ミラー45bで反射し、微小ミラー45bの裏面に位置する空間光変調素子45のランディングパット45eにレーザ光が照射されることはない。
【0046】
したがって、実施の形態においては、潤滑剤の劣化を防止するための部材などを別に設けずとも、ランディングパット45eに塗布された潤滑剤45hにレーザ光が照射されることを低減することができる。この結果、実施の形態によれば、ランディングパット45eに塗布された潤滑剤45hが劣化するのを防ぐことができ、スティッキングの発生を低減することが可能になる。
【0047】
次に、図1および図2に示す偏向素子46について説明する。図4は、図2に示す空間光変調素子45および偏向素子46の平面図である。図4に示すように、空間光変調素子45には、空間光変調素子45の基準面の法線と一致する光軸で点P1にレーザ光L2が入射する。空間光変調素子45における点P1に位置する微小ミラー45bがオン状態である場合には、入射したレーザ光は、空間光変調素子45を上方(図4の表面側)から見た場合に45°方向にレーザ光L3として出射する。
【0048】
図4に示すように、偏向素子46は、この45°方向に対して直交する溝が空間光変調素子45側の面に配置されている。図5に示すように、偏向素子46は、一次元の回折光学素子であり、空間光変調素子45のミラーピッチと同ピッチで溝が形成されている。また、偏向素子46の溝は、空間光変調素子45の微小ミラー45bのオン角度と同角度の角度で傾斜した傾斜面を有する。たとえば、使用するレーザ光の波長は266nmである。また、空間光変調素子45は、微小ミラー45bの画素面傾き角度(オン角度、オフ角度)が12.0°であり、ミラーピッチが11.1μmである。この場合、偏向素子46の溝ピッチは、ミラーピッチと同じ11.1μmであり、傾斜面の傾斜角度は、画素面傾き角度と同じ12.0°に設定される。
【0049】
実施の形態においては、入射光に対して所定角度でレーザ光を出力する空間光変調素子45と結像レンズ11との間に、偏向素子46を配置させて、空間光変調素子45から出力されたレーザ光L3を観察光学系の光軸A5と同軸の光軸A4のレーザ光L4に補正している。このように、実施の形態においては、空間光変調素子45から出力されたレーザ光L3を観察光学系の光軸A5と同軸に補正しているため、観察光学系の光軸A5を基板1の加工面に対して垂直に設定することができ、顕微鏡部3の観察光学系にレーザ照射部4を無理なく組み込むことができる。そして、本実施の形態においては、空間光変調素子45の基準面S1と、基板1の加工面とを平行に配置できるため、観察光学系の光学系以外の他の各光学系の組みつけも容易になる。
【0050】
なお、実施の形態では、図5に示すように、偏向素子46が偏向するレーザ光の進行方向を顕微鏡部3における光軸A5に対して0.037°傾けて、偏向素子46が最も強い強度でレーザ光を回折できるように厳密に位置調整してもよい。
【0051】
また、実施の形態においては、図6に示すように、二次元の回折光学素子である偏向素子46aを用いてもよい。この場合も、偏向素子46aは、空間光変調素子45のミラーピッチと同ピッチで格子が形成されており、各格子面は、空間光変調素子45の微小ミラー45bのオン角度と同角度の角度で傾斜する。たとえば、使用するレーザ光の波長が266nmであり、空間光変調素子45の微小ミラー45bの画素面傾き角度(オン角度、オフ角度)が12.0°であり、ミラーピッチが11.1μmである場合、偏向素子46aの格子ピッチは、ミラーピッチと同じ11.1μmであり、格子面の傾斜角度は、画素面傾き角度と同じ12.0°に設定される。
【0052】
また、実施の形態においては、図7に示すように、空間光変調素子45と同じ構成を有する微小ミラーアレイ46bを用いてもよい。この場合、全微小ミラーをオン状態とすることによって、空間光変調素子45から出力されたレーザ光L3を観察光学系の光軸A5と同軸のレーザ光に補正することができる。
【0053】
また、実施の形態においては、図8に示すように、偏向素子46に代えて、透明材料にて形成される透明型回折光学素子46cを用いてもよい。なお、図8においては、図1に示す投影レンズ43a,43b等の図示を省略している。
【0054】
図8に示すように、空間光変調素子45から出力されたレーザ光L3が透明型回折光学素子46cの裏面に垂直に入射するように、透明型回折光学素子46cは、空間光変調素子45と結像レンズ38との間に配置される。このとき、空間光変調素子45が入射光に対して角度βでレーザ光を出力するのに対応させて、透明型回折光学素子46cの裏面は、光軸A3の直交面に対して角度βで傾斜するように配置される。この角度βは、たとえば24.02°である。
【0055】
透明型回折光学素子46cは、図9に示すように、表面に複数の溝が所定ピッチで形成された構造を有し、裏面から入射したレーザ光L3を、表面において光軸A5の方向と一致する方向に偏向させ、レーザ光L4として出力する。
【0056】
透明型回折光学素子46の表面の溝の傾斜角度であるブレーズ角θは、透明型回折光学素子46cの構成材料の屈折率n、回折次数m、1mmあたりの溝本数N、入射光の波長λを用いて、以下の(1)式のように表される。
【0057】
【数1】

【0058】
たとえば、屈折率が1.5であり、回折次数が15であり、1mmあたりの溝本数が102本である透明型回折光学素子46cを用いる場合、266nmの紫外レーザ光を加工用に使用するときには、透明型回折光学素子46cのブレーズ角θを34.75°に設定すればよい。
【0059】
また、空間光変調素子45の製造誤差によって回折効率が設定値から変動した場合、空間光変調素子45へのレーザ光の入射条件も変動してしまう場合がある。そこで、実施の形態では、図10のように、空間光変調素子45に入射するレーザ光の入射角を調整する入射角調整機構47、および、空間光変調素子45を傾斜させて偏向素子46に対する空間光変調素子45の傾斜角度を調整する角度調整機構48をさらに設けてもよい。この場合、制御部250におけるレーザ加工制御部252が入射角調整機構47および角度調整機構48を制御して、回折効率が設定値を満たすように、空間光変調素子45に入射するレーザ光の入射角度を調整する。
【0060】
たとえば、空間光変調素子45のミラーピッチが11.1μmであり、微小ミラー45bのオン角度が設定値である12.0°ではなく11.9°である場合を例に説明する。この場合、入射角調整機構47は、空間光変調素子45に入射するレーザ光の入射角度を、空間光変調素子45の基準面の垂線に対して3.0°傾くように設定し、角度調整機構48は、偏向素子46に対する空間光変調素子45の傾斜角度を3.2°に設定する。この場合、一次元の回折光学素子である偏向素子46の溝ピッチは、ミラーピッチと同じ11.1μmであり、傾斜面の傾斜角度は、画素面傾き角度の設定値と同じ12.0°のままでよい。また、図10の構成においても、偏向素子として二次元の回折光学素子である偏向素子46aを用いることももちろん可能であり、この場合には、偏向素子46aの格子ピッチは、ミラーピッチと同じ11.1μmであり、格子面の傾斜角度は、画素面傾き角度の設定値と同じ12.0°のままでよい。もちろん、図10の構成においても、偏向素子として微小ミラーアレイ46bを用いることもできる。
【0061】
また、実施の形態においては、空間光変調素子45に代えて、図11に示す空間光変調素子345を用いてもよい。空間光変調素子345は、基板45g上のうち、オン状態およびオフ状態のいずれかの状態においてレーザ光L2が入射する微小ミラー45b間の領域に反射防止材345iが形成される。この反射防止材345iによって、基板45gに到達したレーザ光L2が微小ミラー45bの裏面側に反射することを抑制することができる。したがって、潤滑剤45hに対するレーザ光L2の基板45gからのはね返りもなくなるため、潤滑剤45hの劣化をさらに防止することができ、スティッキングの発生も低減できる。また、反射防止材に変えて、溝などを設けるなどレーザ光をトラップする構造を設けることも有効である。
【0062】
また、本実施の形態では、レーザ光を用いて基板1の加工面の欠陥等を修正するレーザ加工装置を例に説明したが、もちろん、これに限らず、レーザ光源から出射されたレーザ光を空間変調して対象物にパターンを投影する露光装置などのパターン投影装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0063】
1 基板
2 ステージ
3 顕微鏡部
4 レーザ照射部
5 制御部
6 入力部
7 表示部
8 記憶部
31 対物レンズ
32 レボルバ
33 焦準機構
34 撮像部
35 結像部
35a 結像レンズ
35b,44 ミラー
36 照明系
36a レンズ
37a,37b ハーフミラー
38 結像レンズ
41 レーザ光源
42 光ファイバ
43a,43b 投影レンズ
45 空間光変調素子
45b 微小ミラー
45c 支持部
45d 回転軸部
45e ランディングパット
45f アドレス電極
45g 基板
45h 潤滑剤
46,46a 偏向素子
46b 微小ミラーアレイ
47 入射角調整機構
48 角度調整機構
51 顕微鏡制御部
52 レーザ加工制御部
100 レーザ加工装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物にパターンを投影するパターン投影装置において、
レーザ光を出射する光源と、
規則的に配列された複数のミラーを有し、前記複数のミラーによって、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記パターンに対応させて空間変調する空間光変調素子と、
前記対象物を照明する照明光学系と、
前記空間光変調素子によって空間変調された変調光を前記対象物に投影する投影光学装置と、
前記空間光変調素子から出力されたレーザ光の進行方向を、前記投影光学系の光軸方向と一致する方向に偏向させる偏向素子と、
を備え、
前記空間光変調素子は、該空間光変調素子に入射するレーザ光の進行方向が該空間光変調素子の基準面の法線とおおよそ平行であることを特徴とするパターン投影装置。
【請求項2】
前記空調光変調素子は、前記ミラーの反射角がオン角度で傾斜するオン状態とオフ角度で傾斜するオフ状態とを切り替え可能であり、
前記オン状態と前記オフ状態との間の位置関係は、前記ミラーの回転軸を通る前記法線が含まれる一つの平面に対して対称であることを特徴とする請求項1に記載のパターン投影装置。
【請求項3】
前記偏向素子は、一次元の回折光学素子、二次元の回折光学素子、二次元に配列する複数のミラーを有する回折光学素子または透明型回折光学素子であることを特徴とする請求項1に記載のパターン投影装置。
【請求項4】
前記空間光変調素子は、表面に前記複数のミラーを配列させる基板と、前記基板の表面のうち前記レーザ光が入射する領域に形成される前記レーザ光の反射を防止する反射防止材とをさらに有することを特徴とする請求項1に記載のパターン投影装置。
【請求項5】
レーザ光を使用して対象物の加工を行うレーザ加工装置において、
請求項1〜4のいずれか一つに記載のパターン投影装置と、
前記パターン投影光学装置から出力されたレーザ光を前記対象物に投影して前記対象物を加工する加工部と、
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−118375(P2012−118375A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269196(P2010−269196)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】