説明

パネルの接合部構造

【課題】アウタパネルの分割パネル同士の接合端部からの水等の侵入を防ぐとともに、接合強度を高めてアウタパネル全体の剛性の向上を図るとともに、作業性の向上を図ることができるパネルの接合部構造を提供すること。
【解決手段】アウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4B(分割パネル)を接合して成るアウタパネル4の周縁をヘミング加工によってインナパネル5の周縁に結合して構成されるトランクリッド(パネル)の前記アウタパネル4の接合部構造として、前記アウタパネル4のアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの周縁に接合用フランジ6,7とヘミング加工用フランジ8,9を連続的に形成し、アウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの前記接合用フランジ6,7同士を突き合わせて接合するとともに、両接合用フランジ6,7の前記ヘミング加工用フランジ8,9側の端縁同士をも接合する構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分割パネルを接合して成るアウタパネルの周縁をヘミング加工によってインナパネルの周縁に結合して構成されるパネルの前記アウタパネルの接合部構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両のドアやフード、トランクリッド等は、アウタパネルの周縁をヘミング加工によってインナパネルの周縁に結合して中空構造のパネルとして構成されているが、特許文献1には、トランクリッドのアウタパネルの成形性の向上やコストダウンを図るために、アウタパネルを別体のアウタアッパパネルとアウタロアパネルに2分割し、両者をロウ付けによって接合一体化する提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上記構成を採用したトランクリッドのアウタパネル接合部の構造を図6及び図7に示す。
【0004】
即ち、図6はトランクリッドのアウタパネルの接合部構造の従来例を示す部分斜視図(接合部をトランクリッドの内側から見た部分斜視図)、図7は図6の矢視C方向の図であり、アウタパネル104の2分割されたアウタアッパパネル104Aとアウタロアパネル104Bには接合用フランジ106,107がそれぞれ形成されており、両接合用フランジ106,107同士が突き合わされて接合され、その接合部はアウタパネル104の端部まで達している。
【0005】
又、アウタパネル104のアウタアッパパネル104Aとアウタロアパネル104Bの接合用フランジ106,107以外の周縁にはヘミング加工用フランジ108,109が接合用フランジ106,107に連続してそれぞれ形成されており、アウタパネル104の裏面に重ねられたインナパネル105の周縁は、アウタパネル104のアウタアッパパネル104Aとアウタロアパネル104Bにそれぞれ形成された各ヘミング加工用フランジ108,109を折り返すヘミング加工によって挟み込まれてアウタパネル104の周縁に固定され、該インナパネル105とアウタパネル104によって中空構造のトランクリッド102が構成されている。
【0006】
ところで、アウタパネル104のアウタアッパパネル104Aとアウタロアパネル104Bとの接合部の端部(図6及び図7には一方のみ示す)では、接合用フランジ106,107が存在するためにヘミング加工ができず、インナパネル105側に折り返されないで立ち上がった状態のままの立フランジ110,111が不可避的に形成される。つまり、アウタパネル104のアウタアッパパネル104Aとアウタロアパネル104Bの各周縁には、接合用フランジ106,107とヘミング加工用フランジ108,109が立フランジ110,111を介して連続して形成されている。
【0007】
他方、インナパネル105の周縁には、アウタパネル104のアウタアッパパネル104Aとアウタロアパネル104Bにそれぞれ形成された接合用フランジ106,107との干渉を避けるための円弧アーチ状(トンネル状)の逃げ形状(ジョグル)105bが形成されている。
【0008】
尚、特許文献2には、パネル接合部のフランジの一方にジョグル部を設け、他方にこのジョグルに納まる重畳部を設けて面一に接合し、この面一面に他のパネルを重ねてヘムフランジがジョグル部に掛からないようにヘミングして接合組立をする2枚のパネルの接合部を他のパネルのヘムフランジによってヘミングするパネル接合部の構造が開示されている。又、特許文献3には、トランクリッドの視認性の向上を目的として、アウタアッパパネルの下縁とアウタロアパネルの上縁部とを略水平方向に折り曲げて上下に重ね合わせて結合し、インナパネルの車幅方向両端部の上下中間に、車幅方向外側へ突出したフランジを設けるとともに、アウタアッパパネルの下縁部とアウタロアパネルの上縁部の車幅方向両端部同士を重ね合わせ、三者を結合して合わせ部とし、該合わせ部をシールで封止する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実公昭60−002048号公報
【特許文献2】特許第3265742号公報
【特許文献3】特開平7−132857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図6及び図7に示すトランクリッド102のアウタパネル104の接合部構造においては、アウタパネル104のアウタアッパパネル104Aとアウタロアパネル104Bとの接合部は、接合用フランジ106,107の意匠面側の縁部が連続接合され隙間が閉じられている。しかし、接合用フランジ106,107の各立フランジ110,111側の縁部となる接合部の端部では、両接合用フランジ106,107は接合されずに重ね合わせ部(隙間)が露出し、その部分から水が侵入する可能性がある。このため、その部分にシーラーを塗布する防水処理を施している。
【0011】
しかしながら、上記シーラーは、アウタパネル104のアウタアッパパネル104Aとアウタロアパネル104Bの各立フランジ110,111間の隙間を充填するよう車体側方から塗布する必要があるため、作業性が悪く、外部から見える意匠面にシーラーがはみ出して外観性が低下する可能性があり、これを防ぐためには作業の管理が煩雑になるという問題があった。
【0012】
又、アウタパネル104のアウタアッパパネル104Aとアウタロアパネル104Bの各接合用フランジ106,107の高さ(幅)を小さくすると、溶接時の治具のつかみ代が不足して左右端部での溶接不良に繋がるため、従来は接合用フランジ106,107の高さ(幅)を大きくしていた。
【0013】
ところが、上述のように接合用フランジ106,107の高さ(幅)を大きくすると、インナパネル105に形成する逃げ形状(ジョグル)105bの高さを高くしなければならず、シーラーを塗布して防水処理を施す必要があるインナパネル105とアウタアッパパネル104A及びアウタロアパネル104Bとの間の隙間が大きくなってシーラーの充填不良が発生し易いという問題がある。
【0014】
又、図7に示すように、インナパネル105の逃げ形状(ジョグル)105bの高さとアウタパネル104の立フランジ110,111の高さに差が生じる位置が存在するため、両者の間へのシーラーの塗布作業が難しく、両者の間から立フランジ110,111を乗り越えてシーラーがはみ出す可能性がある。このため、インナパネル105の逃げ形状(ジョグル)105bに沿ってヘラ取り等の仕上げ加工を施すことが考えられるが、その加工の作業性が悪いという問題がある。
【0015】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、アウタパネルの分割パネル同士の接合端部からの水等の侵入を防ぐとともに、接合強度を高めてアウタパネル全体の剛性の向上を図るとともに、接合端部へのシーラーの塗布を省略して作業性の向上を図ることができるパネルの接合部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、分割パネルを接合して成るアウタパネルの周縁をヘミング加工によってインナパネルの周縁に結合して構成されるパネルの前記アウタパネルの接合部構造として、前記アウタパネルの各分割パネルの周縁に接合用フランジとヘミング加工用フランジを連続的に形成し、各分割パネルの前記接合用フランジ同士を突き合わせて接合するとともに、両接合用フランジの前記ヘミング加工用フランジ側の端縁同士をも接合する構成を採用したことを特徴とする。
【0017】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記アウタパネルの各分割パネルの周縁に形成された接合用フランジの前記インナパネルの周縁よりも外側に位置する部分の高さをインナパネルの周縁で覆われる部分の高さよりも高くしたことを特徴とする。
【0018】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記インナパネルの周縁の一部に前記アウタパネルの接合用フランジとの干渉を避けるための逃げ形状を形成し、前記アウタパネルの各分割フランジ周縁の前記接合用フランジとヘミング加工用フランジとの間にヘミング加工されない立フランジを形成するとともに、該立フランジの高さを前記逃げ形状の高さと同等としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、アウタパネルの両分割パネルにそれぞれ形成された接合用フランジのヘミング加工用フランジ側の端縁同士をも接合するようにしたため、その部分からアウタパネルとインナパネルとの間の空間への水等の侵入が防がれ、その部分への手間を要するシーラーの塗布が不要となって作業性が大幅に高められる。又、アウタパネルの2分割された分割パネルの接合強度が高められ、アウタパネル全体の剛性も高められる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、アウタパネルの各分割パネルの周縁に形成された接合用フランジのインナパネルの周縁よりも外側に位置する部分(端縁)の高さをインナパネルの周縁で覆われる部分の高さよりも高くしたため、接合用フランジの端縁を大きくすることができ、接合時の治具によるクランプが容易となって接合作業性が高められる。そして、接合時に接合用フランジの端縁を容易にクランプすることができるため、その近傍の該接合用フランジのインナパネルの周縁で覆われる部分の高さを低くすることができ、インナパネルの周縁の一部に形成された逃げ形状(ジョグル)を小さくすることができる。この結果、逃げ形状(ジョグル)とアウタパネルとの隙間が小さくなり、その隙間へのシーラーの塗布量が少なくて済み、シーラーの塗布が容易になるとともに、シーラーの充填不良の問題が解消される。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、アウタパネルのヘミング加工されない立フランジの高さをインナパネルに形成された逃げ形状の高さと同等としたため、立フランジと逃げ形状との間にシーラーの充填空間を確保することができるとともに、シーラー塗布後のシーラーの拭き取り等の作業が容易化して作業性が高められる。又、アウタパネルの立フランジによってシーラーのはみ出しが防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車両を後方から見た斜視図である。
【図2】車両後部の左側面図である。
【図3】車両のトランクリッドの斜視図である。
【図4】本発明に係るパネルの接合部構造を示す部分斜視図(図3のA部をトランクリッドの内側から見た部分斜視図)である。
【図5】図4の矢視B方向の図である。
【図6】トランクリッドのアウタパネルの接合部構造の従来例を示す部分斜視図(接合部をトランクリッドの内側から見た部分斜視図)である。
【図7】図6の矢視C方向の図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は車両を後方から見た斜視図、図2は同車両後部の左側面図、図3は車両のトランクリッドの斜視図、図4は本発明に係るパネルの接合部構造を示す部分斜視図(図3のA部をトランクリッドの内側から見た部分斜視図)、図5は図4の矢視B方向の図である。
【0025】
図1及び図2に示す車両(乗用車)1の後部には、後部荷室である不図示のトランクルームを開閉するためのトランクリッド2が左右一対のヒンジアーム3(図2には一方のみ図示)によって上下に回動可能に支持されて設けられており、トランクルームに対して荷物を出し入れする際には該トランクルームがトランクリッド2によって開閉される。ここで、トランクリッド2は、板金のプレス成形品であるアウタパネル4とその内側に配された同じく板金のプレス成形品であるインナパネル5の周縁同士をヘミング加工によって接合することによって中空構造として構成されており、図2に示すように側面視L字状に折曲成形されている。そして、このトランクリッド2は、通常は図1に示すように閉じられ、トランクルームに対して荷物を出し入れする際には図2に示すように上方に回動されて開けられる。
【0026】
上記トランクリッド2のアウタパネル4は、図3に示すように、側面視L字状に屈曲成形されたアウタアッパパネル4Aと該アウタアッパパネル4Aから略垂直下方へと延びるアウタロアパネル4Bとに2分割されており、アウタアッパパネル4Aの略水平な下端縁とアウタロアパネル4Bの略水平な上端縁とが溶接によって接合一体化されることによって該アウタパネル4が構成されている。そして、このアウタパネル4のアウタロアパネル4Bの外面の車幅方向中央にはトランクルーム側(車両前方)に窪んだ凹部4aが形成され、その周囲は意匠面4bを構成しており、凹部4aには不図示のライセンスプレートが取り付けられる。
【0027】
ここで、図4及び図5にアウタパネル4のアウタアッパパネル4Aの下端縁とアウタロアパネル4Bの上端縁との接合部の一側部(左端部(図3のA部))の構造を示すが、アウタアッパパネル4Aの下端縁とアウタロアパネル4Bの上端縁にはトランクリッド2の意匠面(パネル面)に対して略垂直でインナパネル5側に起立するように接合用フランジ6,7がそれぞれ形成されており、両接合用フランジ6,7同士は突き合わされて(重ね合わせて)車幅方向に溶接される。そして、その接合部はアウタパネル4の両端部まで達し、溶接は両端部の側方まで回り込んでなされている(図4には一方(左端部)のみ図示)。
【0028】
そして、アウタパネル4のアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの接合用フランジ6,7以外の周縁にはヘミング加工用フランジ8,9が接合用フランジ6,7に連続してそれぞれ形成されており、アウタパネル4の裏面に重ねられたインナパネル5の周縁は、アウタパネル4のアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bにそれぞれ形成された各ヘミング加工用フランジ8,9を内側に折り返すヘミング加工によって挟み込まれてアウタパネル4の周縁に固定され、該インナパネル5とアウタパネル4によって中空構造のトランクリッド2が構成されている。
【0029】
ところで、アウタパネル4のアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bとの接合部の端部(図4及び図5には左端部のみ示す)では、垂直に起立する接合用フランジ6,7が存在するためにヘミング加工ができず、インナパネル5側に折り返されないで立ち上がった状態(トランクリッド2の意匠面(パネル面)に対して略垂直でインナパネル5側に起立する状態)のままの立フランジ10,11が形成される。つまり、アウタパネル4のアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの各周縁には、接合用フランジ6,7とヘミング加工用フランジ8,9が立フランジ10,11を介して連続して形成されている。本実施の形態では、接合用フランジ6,7と立フランジ10,11の高さを同じ高さとして、生産性を向上させている。
【0030】
他方、インナパネル5の周縁の左右のフランジ部5aの一部(アウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bとの接合部に対応する箇所)には、アウタパネル4のアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bにそれぞれ形成された接合用フランジ6,7との干渉を避けるために円弧アーチ状(トンネル状)の逃げ形状(ジョグル)5bが形成されている。このように逃げ形状5bを単純な切欠きではなく、接合用フランジ6,7に沿って長さを有する円弧アーチ状(トンネル状)とすることによってインナパネル5の強度及び剛性の低下を招くことがなく、その開口位置をアウタパネル4の周縁側に設定することができる。このため、その他のヘミング箇所へのシーラー塗布との関係で開口位置を調整することができ、シーラー塗布の作業性を向上させることができる。又、逃げ形状(ジュグル)5bを円弧アーチ状(トンネル状)とすることによって、アウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの接合用フランジ6,7との干渉を容易に避けることができるとともに、円弧アーチ状(トンネル状)の内部空間部分のシーラーの充填によるシール性が高められ、更に、アウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bとの接合部に両パネル4A,4B相互の段差を設ける形状にも容易に対応することができる。
【0031】
そして、本実施の形態では、図5に示すように、アウタパネル4の2分割されたアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの各立フランジ10,11の高さh1,h3をインナパネル5に形成された前記逃げ形状(ジョグル)5bの高さh2,h5と同等としている(h1≒h2,h3≒h5)。
【0032】
而して、前述のようにアウタパネル4の2分割されたアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの各接合用フランジ6,7同士が突き合わされてロウ付等によって各接合用フランジ6,7の基端(意匠面と接合用フランジの境界部分)が接合されるが、本実施の形態では、両接合用フランジ6,7のヘミング加工用フランジ8,9側の端縁同士(アウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの各立フランジ10,11の間の隙間部分)にも回り込んで連続して溶接によって接合する構成を採用している。
【0033】
又、本実施の形態では、図4に示すように、アウタパネル4の2分割されたアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの各接合用フランジ6,7のインナパネル5の周縁よりも外側に位置する部分6a,7aの高さh3をインナパネル5の周縁(円弧アーチ状の逃げ形状5b)で覆われる部分6b,7bの高さh4よりも高くしている(h3>h4)。
【0034】
更に、本実施の形態では、ヘミング加工を確実に行うために、アウタパネル4のアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bにそれぞれ形成されたヘミング加工用フランジ8,9は立フランジ10,11よりも高く(幅広に)形成され、ヘミング加工用フランジ8,9を折り曲げ易くしてヘミング加工を容易に行うために、立フランジ10,11のヘミング加工用フランジ8,9に繋がる部分10a,11aは切欠き状に形成されてその高さが他の部分よりも低く設定されている。更に、この切欠き状に形成されたフランジ10a,11aは、図5に示すように、ヘミング加工用フランジ8,9がヘミング加工された状態で、円弧アーチ状の逃げ形状5bと同様の形状(高さ)になるように形成されている。
【0035】
以上のように、本実施の形態では、アウタパネル4の2分割されたアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bにそれぞれ形成された接合用フランジ6,7のヘミング加工用フランジ8,9側の端縁同士(アウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの各立フランジ10,11の間の隙間部分)も溶接によって接合するようにしたため、その部分からアウタパネル4とインナパネル5との間の空間への水等の侵入が防がれ、その部分への手間を要するシーラーの塗布が不要となって作業性が大幅に高められる。又、アウタパネル4のアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの接合強度が高められ、アウタパネル4全体の剛性も高められる。
【0036】
又、本実施の形態では、アウタパネル4のアウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの各周縁に形成された接合用フランジ6,7のインナパネル5の周縁よりも外側に位置する部分(端縁)6a,7aの高さh3をインナパネル5の周縁で覆われる部分6b,7bの高さh4よりも高くしたため(h3>h4)、接合用フランジ6,7の端縁(インナパネル5の周縁よりも外側に位置する部分(端縁)6a,7a)を大きくすることができ、溶接時にその部分を治具によって容易にクランプすることができて溶接作業性が高められる。そして、接合用フランジ6,7の端縁を容易にクランプすることができるため、その近傍の該接合用フランジ6,7のインナパネル5の周縁で覆われる部分6b,7bの高さh4を低くすることができ、インナパネル5の周縁の一部に形成された逃げ形状(ジョグル)5bを小さくすることができ(図5に示す最高高さh5を低く抑えることができ)、該逃げ形状(ジョグル)5bとアウタパネル2との隙間が小さくなり、その隙間へのシーラーの塗布量が少なくて済み、シーラーの塗布が容易になるとともに、シーラーの充填不良の問題が解消される。
【0037】
更に、アウタアッパパネル4Aとアウタロアパネル4Bの各接合用フランジ6,7のインナパネル5の周縁で覆われる部分6b,7bの高さh4を低く抑えることができる結果、逃げ形状(ジョグル)5bの最高高さh5を低く抑えることができてインナパネル5の成形性が高められるとともに、剛性の低下が抑えられる。
【0038】
そして、本実施の形態では、アウタパネル4のヘミング加工されない立フランジ10,11の高さh1をインナパネル5に形成された逃げ形状(ジョグル)5bの高さh2と同等(h1≒h2)としたため、立フランジ10,11と逃げ形状(ジョグル)5bとの間にシーラーの充填空間を確保することができるとともに、このシーラーの充填空間が逃げ形状(ジョグル)5bと立フランジ10,11に両側を囲まれた空間となるためにシーラー塗布後のシーラーの拭き取り等の作業が容易化して作業性が高められる。又、アウタパネル2の立フランジ10,11によってシーラーのはみ出しが防がれるという効果が得られる。
【0039】
尚、以上の実施の形態では、本発明を車両のトランクリッドに対して適用した形態について説明したが、本発明は、車両のドアやフードの他、分割パネルを接合して成るアウタパネルの周縁をヘミング加工によってインナパネルの周縁に結合して構成されるパネル全般に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0040】
1 車両
2 トランクリッド(パネル)
3 ヒンジアーム
4 アウタパネル
4A アウタアッパパネル(分割パネル)
4B アウタロアパネル(分割パネル)
4a アウタパネルの凹部
4b アウタパネルの意匠面
5 インナパネル
5a インナパネルのフランジ部
5b インナパネルの逃げ形状(ジョグル)
6,7 接合用フランジ
6a,7a 接合用フランジのインナパネル周縁よりも外側に位置する部分
6b,7b 接合用フランジのインナパネル周縁で覆われる部分
8,9 ヘミング加工用フランジ
10,11 立フランジ
10a,11a 立フランジのヘミング加工用フランジに繋がる部分
h1 立フランジの高さ
h2 逃げ形状(ジョグル)の高さ
h3 接合用フランジのインナパネル周縁よりも外側に位置する部分の高さ
h4 接合用フランジのインナパネル周縁で覆われる部分の高さ
h5 逃げ形状(ジョグル)の最高高さ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割パネルを接合して成るアウタパネルの周縁をヘミング加工によってインナパネルの周縁に結合して構成されるパネルの前記アウタパネルの接合部構造であって、
前記アウタパネルの各分割パネルの周縁に接合用フランジとヘミング加工用フランジを連続的に形成し、各分割パネルの前記接合用フランジ同士を突き合わせて接合するとともに、両接合用フランジの前記ヘミング加工用フランジ側の端縁同士をも接合したことを特徴とするパネルの接合部構造。
【請求項2】
前記アウタパネルの各分割パネルの周縁に形成された接合用フランジの前記インナパネルの周縁よりも外側に位置する部分の高さをインナパネルの周縁で覆われる部分の高さよりも高くしたことを特徴とする請求項1記載のパネルの接合部構造。
【請求項3】
前記インナパネルの周縁の一部に前記アウタパネルの接合用フランジとの干渉を避けるための逃げ形状を形成し、前記アウタパネルの各分割フランジ周縁の前記接合用フランジとヘミング加工用フランジとの間にヘミング加工されない立フランジを形成するとともに、該立フランジの高さを前記逃げ形状の高さと同等としたことを特徴とする請求項1又は2記載のパネルの接合構造。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2011−68230(P2011−68230A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−220013(P2009−220013)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】