説明

パワーモジュール

【課題】制御電源電圧が低下した場合においても、半導体デバイスの熱破壊を防止することが可能なパワーモジュールを提供する。
【解決手段】パワーモジュール100は、半導体デバイス10のIGBT11を駆動する駆動回路20と、IGBT11のコレクタ電流がトリップレベルに達したときにIGBT11の保護動作を行う保護回路30と、駆動回路20に供給される制御電源電圧VDを検出する制御電源電圧検出回路40とを備える。保護回路30は、制御電源電圧VDが所定値よりも低くなると、センス抵抗を抵抗R1から抵抗R1,R2の直列回路に切り替えることで、トリップレベルを下げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力制御用の半導体装置に用いられるパワーモジュールに関し、特に、パワーモジュールが搭載する半導体デバイスの保護回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力制御用の半導体装置に用いられるパワーモジュールとして、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のスイッチング素子である半導体デバイスを過電流や短絡から保護するための保護機能を備えたものが知られている。そのようなパワーモジュールは、半導体デバイスのセンス端子に流れる電流(センス電流)を電圧(センス電圧)に変換する抵抗(センス抵抗)と、そのセンス電圧に基づいて所定の保護動作を行う保護回路とを備えた構成となるのが一般的である(例えば下記の特許文献1,2)。保護回路は、センス電圧が所定の値に達した場合に、半導体デバイスを流れる電流が許容値を超えたと判断して、例えば半導体デバイスの動作を停止させるなどの保護動作を行う。
【0003】
従来の保護機能を備えるパワーモジュールでは、主電流に対するセンス電流の分流比やセンス抵抗の抵抗値などのばらつきにより、保護回路が保護動作を開始する電流値、いわゆる「短絡保護(Short-circuit protection)トリップレベル」(SCトリップレベル)にばらつきが生じ、適切な保護動作が困難になるという問題があった。また、パワーモジュールの使用環境の変化に応じて、半導体デバイスの電流値の上限を変更させる要求が生じることもある。特許文献1,2においては、それらの対策として、保護回路のSCトリップレベルを調整可能にしたパワーモジュールが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−348429号公報
【特許文献2】特開平5−275999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のパワーモジュールにおいては、半導体デバイスを制御するための電源電圧(制御電源電圧)が何らかの原因により低下すると、半導体デバイスの駆動信号の電圧レベルが下がり、当該半導体デバイスが活性領域で動作しやすくなる(以下、半導体デバイスが活性領域で動作することを「活性動作」と称する)。半導体デバイスが活性動作すると、オン電圧の上昇に起因する熱破壊が生じやすくなる。例えば半導体デバイスがIGBTの場合、IGBTが活性動作すると、コレクタ電流が流れるときのオン電圧(コレクタ・エミッタ間電圧)が大きくなるため、IGBTにおける熱損失が大きくなり、熱破壊を起き起こす原因となる。
【0006】
先に述べたように、従来のパワーモジュールにおいては、主電流に対するセンス電流の分流比や、センス抵抗の抵抗値のばらつきに起因して、SCトリップレベルにもばらつきが生じていた。特に、SCトリップレベルが高い方向にずれたパワーモジュールにおいて制御電源電圧が低下した場合には、半導体デバイスを流れる電流がSCトリップレベルに達する前すなわち保護機能が働く前に、半導体デバイスが活性動作し、熱破壊の問題が生じる。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、制御電源電圧が低下した場合においても、半導体デバイスの熱破壊を防止することが可能なパワーモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の局面に係るパワーモジュールは、半導体デバイスと、前記半導体デバイスを駆動する駆動回路と、前記半導体デバイスの主電極間に流れる主電流を検出し、当該主電流がトリップレベルに達したときに前記半導体デバイスの保護動作を行う保護回路と、前記半導体デバイスが活性動作することを検出する活性動作検出手段と、前記半導体デバイスが活性動作することが検出されると、前記トリップレベルを下げるトリップレベル切替回路とを備えるものである。
【0009】
本発明の第2の局面に係るパワーモジュールは、半導体デバイスと、前記半導体デバイスを駆動する駆動回路と、前記半導体デバイスの主電極間に流れる主電流を検出し、当該主電流がトリップレベルに達したときに前記半導体デバイスの保護動作を行う保護回路と、外部電源からの外部電源電圧を受ける外部電源入力端子と、内部電源電圧を生成する内部電源と、前記外部電源電圧および前記内部電源電圧を、選択的に、制御電源電圧として前記駆動回路に供給する電源選択手段とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1の局面によれば、制御電源電圧が低下して半導体デバイスが活性動作するときトリップレベルが下がるため、半導体デバイスの活性動作に起因する熱破壊を、保護回路が行う保護動作によって防止することができる。
【0011】
本発明の第2の局面によれば、外部電源および内部電源から供給される制御電源電圧の一方が低下しても、他方を駆動回路に供給できるため、半導体デバイスが活性動作することが防止される。よって、半導体デバイスの活性動作に起因する熱破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】IGBTのコレクタ・エミッタ間電圧VCEとコレクタ電流ICとの関係を示すグラフである。
【図2】通常動作時における、IGBTのコレクタ電流ICおよびコレクタ・エミッタ間電圧VCEおよび損失を示す図である。
【図3】活性動作時における、IGBTのコレクタ電流ICおよびコレクタ・エミッタ間電圧VCEおよび損失を示す図である。
【図4】実施の形態1に係るパワーモジュールの構成図である。
【図5】実施の形態1に係るパワーモジュールの保護回路および制御電源電圧検出回路の構成図である。
【図6】実施の形態2に係るパワーモジュールの構成図である。
【図7】実施の形態2に係るパワーモジュールの保護回路およびコレクタ・エミッタ間電圧検出回路の構成図である。
【図8】実施の形態3に係るパワーモジュールの構成図である。
【図9】実施の形態3に係るパワーモジュールの保護回路およびコレクタ・エミッタ間電圧検出回路の構成図である。
【図10】実施の形態4に係るパワーモジュールの構成図である。
【図11】実施の形態4に係るパワーモジュールの電源切替回路の構成図である。
【図12】実施の形態5に係るパワーモジュールの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施の形態1>
まず、半導体デバイスが活性動作したときに生じる熱破壊の問題を、IGBTを例にして説明する。
【0014】
図1は、IGBTのコレクタ・エミッタ間電圧VCEとコレクタ電流ICとの関係を示すグラフである。IGBTは、コレクタ電流ICがコレクタ・エミッタ間電圧VCEに依存する飽和領域と、コレクタ電流ICがゲート・エミッタ間電圧VGEに依存する活性領域(コレクタ・エミッタ間電圧VCEに対してコレクタ電流ICが一定の領域)とを有している。
【0015】
図1から、ゲート・エミッタ間電圧VGEが低いほど、IGBTが活性領域で動作する範囲が広がることが分かる。パワーモジュールにおいて、制御電源電圧の低下により半導体デバイス(IGBT)の駆動信号の電圧レベルが下がると半導体デバイスが活性動作しやすいのはこのためである。
【0016】
IGBTが通常動作する場合(駆動信号の電圧レベルが充分に高く、飽和領域で動作する場合)における、IGBTのコレクタ電流ICおよびコレクタ・エミッタ間電圧VCEの波形と、IGBTで生じる損失の変化を図2に示す。図2のように、IGBTの通常動作時には、IGBTがオンしてコレクタ電流ICが流れるとき、コレクタ・エミッタ間電圧VCE(オン電圧)は充分小さくなる。IGBTの損失は、スイッチング損失L1と飽和電圧損失L2(定常損失)との和となるが、オン電圧が小さいため飽和電圧損失L2が小さく抑えられる。
【0017】
一方、図3に、IGBTが活性動作する場合における、コレクタ電流ICおよびコレクタ・エミッタ間電圧VCEの波形と、そのときIGBTで生じる損失の変化を示す。IGBTの活性動作時には、IGBTがオンしてコレクタ電流ICが流れてもコレクタ・エミッタ間電圧VCE(オン電圧)が高く維持されるため、飽和電圧損失L2が大きくなる。この飽和電圧損失L2の増大が、IGBTの熱破壊を引き起こす原因となる。
【0018】
図4は、実施の形態1に係るパワーモジュール100の構成図である。当該パワーモジュール100は、半導体デバイス10、駆動回路20、保護回路30、制御電源電圧検出回路(VD検出回路)40および抵抗R1,R2を備えている。
【0019】
半導体デバイス10は、コレクタおよびエミッタ(主電極)がそれぞれP端子とN端子に接続したIGBT11と、当該IGBT11に逆並列接続したダイオード(逆並列ダイオード)12とを備えている。IGBT11は、コレクタ電流(主電極間に流れる主電流)に比例したセンス電流が出力されるセンス端子を有しており、センス端子とN端子(IGBT11のエミッタ)との間には、コレクタ電流検出用のセンス抵抗として用いられる抵抗R1,R2が直列に接続されている。
【0020】
駆動回路20は、外部から入力される制御信号である入力信号VCINに基づいて、IGBT11のゲートに入力する駆動信号を生成する。駆動回路20には、半導体デバイス10の外部電源入力端子に接続された外部電源101から、制御電源電圧VDが供給されており、IGBT11の駆動信号の電圧レベルは制御電源電圧VDにより規定される。なお、ここでは外部電源101を用いた例を示したが、パワーモジュール100が、制御電源電圧VDを生成する電源(内部電源)を内蔵していてもよい。
【0021】
保護回路30は、センス抵抗(抵抗R1,R2)に生じるセンス電圧に基づいてIGBT11のコレクタ電流を検出し、コレクタ電流がSCトリップレベルに達した場合に、駆動回路20に対し、IGBT11の保護動作を行わせる保護信号SPを出力する。駆動回路20は、保護回路30からの保護信号SPを受けると、IGBT11の動作を停止させるなど、所定の保護動作を行う。
【0022】
制御電源電圧検出回路(VD検出回路)40は、制御電源電圧VDのレベルを検出し、そのレベルが所定の電圧レベルよりも低下した場合に、それを通知する信号を保護回路30に出力する。
【0023】
図5は、実施の形態1のパワーモジュール100が備える保護回路30および制御電源電圧検出回路40の構成図である。保護回路30は、過電流検出回路31、切替制御回路32および切替器33により構成され、制御電源電圧検出回路40は、コンパレータ41により構成されている。
【0024】
過電流検出回路31は、センス抵抗(抵抗R1,R2)に生じるセンス電圧を受け、当該センス電圧が所定値に達した場合に、IGBT11のコレクタ電流がSCトリップレベルに達した(つまりIGBT11に過電流が流れた)と判断して保護信号SPを生成するものである。過電流検出回路31は、従来のパワーモジュールが備える過電流検出回路と同じものでよい。
【0025】
但し、過電流検出回路31に入力されるセンス電圧は、切替器33によって切り替えられる。上記したように、パワーモジュール100はセンス抵抗として、抵抗R1,R2の直列回路を有している。切替器33は、過電流検出回路31を、抵抗R1の両端に接続させるか、抵抗R1,R2の直列回路の両端に接続させるかを切り替える。つまり切替器33は、過電流検出回路31に入力するセンス電圧を、抵抗R1に生じる電圧にするか、抵抗R1,R2の直列回路の全体に生じる電圧にするかを切り替える。切替器33の動作は、切替制御回路32によって、制御電源電圧検出回路40のコンパレータ41の出力に基づき制御される。
【0026】
コンパレータ41は、制御電源電圧VDと所定の基準電圧VREF1とを比較する。基準電圧VREF1は、制御電源電圧VDの正常な値よりも低く設定される。コンパレータ41の出力は、制御電源電圧VDが基準電圧VREF1よりも高い正常な状態はH(High)レベルであるが、制御電源電圧VDが基準電圧VREF1よりも低下するとL(Low)レベルになる。切替制御回路32は、切替器33を制御し、コンパレータ41の出力がHレベルのときは過電流検出回路31を抵抗R1の両端に接続させ、コンパレータ41の出力がLレベルのときは過電流検出回路31を抵抗R1,R2の直列回路の両端に接続させる。
【0027】
従って、本実施の形態に係るパワーモジュール100においては、制御電源電圧VDが正常な値をとっている間は、抵抗R1に生じる電圧が、センス電圧として過電流検出回路31に入力されるが、制御電源電圧VDが低下したときには、抵抗R1,R2の直列回路の全体に生じる電圧が、センス電圧として過電流検出回路31に入力される。そのため、コレクタ電流が一定であっても、制御電源電圧VDが低下すると過電流検出回路31に入力されるセンス電圧が大きくなる。
【0028】
よって、制御電源電圧VDが低下している間は、制御電源電圧VDが正常な場合に比べて、コレクタ電流が小さくても過電流検出回路31が保護信号SPを出力するようになる。つまり、本実施の形態に係るパワーモジュール100においては、制御電源電圧VDが低下したとき、SCトリップレベルが下がることになる。
【0029】
このように、制御電源電圧検出回路40は、制御電源電圧VDが低下したことを検出することによって、IGBT11の活性動作を検出する活性動作検出手段として機能する。そして切替制御回路32および切替器33は、制御電源電圧VDが所定値よりも低い場合にSCトリップレベルを下げるトリップレベル切替回路として機能する。
【0030】
先に述べたように、制御電源電圧VDが低下すると、駆動回路20が出力する駆動信号の電圧レベルが下がり、IGBT11が活性動作してそのオン電圧が高くなるため、コレクタ電流が通常のSCトリップレベルに達する前に、IGBT11の熱破壊が生じる恐れがある。本実施の形態のパワーモジュール100では、制御電源電圧VDが低下したときにSCトリップレベルが下げられるので、比較的小さいコレクタ電流が流れても、保護回路30から保護信号SPが出力されることになる。その結果、IGBT11の熱破壊を防止することができる。
【0031】
<実施の形態2>
図6は、実施の形態2に係るパワーモジュール100の構成図である。当該パワーモジュール100は、半導体デバイス10、駆動回路20、保護回路30、コレクタ・エミッタ間電圧検出回路(VCE検出回路)50および抵抗R1,R2を備えている。
【0032】
半導体デバイス10、駆動回路20および抵抗R1,R2は、図4に示したものと同様であるので説明は省略する。また本実施の形態においても、駆動回路20には外部電源101から制御電源電圧VDが供給されているが、パワーモジュール100が、制御電源電圧VDを生成する電源(内部電源)を内蔵していてもよい。
【0033】
保護回路30も図4に示したものとほぼ同様の構成であるが、コレクタ・エミッタ間電圧検出回路50の出力によってその動作が制御される点で異なっている。
【0034】
コレクタ・エミッタ間電圧検出回路(VCE検出回路)50は、IGBT11のコレクタ・エミッタ間電圧(主電極間にかかる主電圧)を検出し、それが所定の値よりも大きいかどうかを示す信号を、保護回路30に出力する。
【0035】
図7は、実施の形態2のパワーモジュール100が備える保護回路30およびコレクタ・エミッタ間電圧検出回路50の構成図である。保護回路30は、過電流検出回路31、切替制御回路32および切替器33により構成され、コレクタ・エミッタ間電圧検出回路50は、コンパレータ51により構成されている。
【0036】
保護回路30の構成は実施の形態1(図5)と同様であるが、実施の形態2では、切替器33を制御する切替制御回路32の動作が、コレクタ・エミッタ間電圧検出回路50のコンパレータ51の出力に基づき制御される。
【0037】
コンパレータ51は、IGBT11のコレクタ・エミッタ間電圧(又はそれを所定比で分圧した電圧)と所定の基準電圧VREF2とを比較する。基準電圧VREF2は、IGBT11の通常動作時のオン電圧(又はそれを分圧した電圧)よりも高く設定される。IGBT11が通常動作でオンした場合、コレクタ・エミッタ間電圧は低くなるため、コンパレータ51の出力はLレベルとなる。しかしIGBT11が活性動作でオンした場合は、コレクタ電流が流れてもコレクタ・エミッタ間電圧が下がらないので(図3参照)、コンパレータ51の出力はHレベルに維持される。
【0038】
切替制御回路32は、切替器33を制御し、コンパレータ51の出力がLレベルのときは過電流検出回路31を抵抗R1の両端に接続させ、コンパレータ51の出力がHレベルのときは過電流検出回路31を抵抗R1,R2の直列回路の両端に接続させる。
【0039】
従って、本実施の形態に係るパワーモジュール100においては、IGBT11が通常動作でオンしたときには、抵抗R1に生じる電圧がセンス電圧として過電流検出回路31に入力されるが、IGBT11が活性動作でオンしたときおよびIGBT11がオフ状態のときには、抵抗R1,R2の直列回路の全体に生じる電圧がセンス電圧として過電流検出回路31に入力される。よって、コレクタ電流が一定であっても、IGBT11が活性動作でオンした場合には、通常動作でオンした場合よりも、過電流検出回路31に入力されるセンス電圧が大きくなる。
【0040】
従って、IGBT11が活性動作でオンした場合は、通常動作でオンした場合に比べて、コレクタ電流が小さくても過電流検出回路31が保護信号SPを出力するようになる。つまり、本実施の形態に係るパワーモジュール100においては、IGBT11が活性動作でオンしたとき、SCトリップレベルが下がることになる。
【0041】
このように、コレクタ・エミッタ間電圧検出回路50は、コレクタ・エミッタ間電圧VCE(主電圧)が所定値よりも高いことを検出することによって、IGBT11の活性動作を検出する活性動作検出手段として機能する。そして切替制御回路32および切替器33は、コレクタ・エミッタ間電圧VCEが所定値よりも高い場合にSCトリップレベルを下げるトリップレベル切替回路として機能する。
【0042】
本実施の形態のパワーモジュール100では、制御電源電圧VDが低下してIGBT11が活性動作すると、SCトリップレベルが下がるので、比較的小さいコレクタ電流が流れても、保護回路30から保護信号SPが出力されることになる。その結果、IGBT11が熱破壊を起こす前に、駆動回路20が所定の保護動作を行うことができ、IGBT11の熱破壊を防止することができる。
【0043】
また、実施の形態1では制御電源電圧VDの低下からIGBT11の活性動作を予測していたが、本実施の形態ではIGBT11が実際に活性動作したことを検出して、SCトリップレベルを下げるため、IGBT11の動作が不要に停止されることを防止できるという利点もある。
【0044】
<実施の形態3>
図8は、実施の形態3に係るパワーモジュール100の構成図であり、図9は、そのパワーモジュール100が備える保護回路30およびコレクタ・エミッタ間電圧検出回路50の構成図である。
【0045】
実施の形態3に係るパワーモジュール100の構成は、入力信号VCINが駆動回路20だけでなく保護回路30の切替制御回路32にも入力される点を除き、実施の形態2(図6、図7)と同様である。ここで、駆動回路20は、入力信号VCINがHレベルのときIGBT11をオンにし、入力信号VCINがLレベルのときIGBT11をオフにするように動作するもの仮定する。
【0046】
実施の形態2と同様に、コンパレータ51は、IGBT11のコレクタ・エミッタ間電圧(又はそれを所定比で分圧した電圧)と所定の基準電圧VREF2とを比較する。IGBT11が通常動作でオンした場合、コレクタ・エミッタ間電圧は低くなるため、コンパレータ51の出力はLレベルとなる。しかしIGBT11が活性動作でオンした場合は、コレクタ電流が流れてもコレクタ・エミッタ間電圧が下がらないので(図3参照)、コンパレータ51の出力はHレベルに維持される。
【0047】
切替制御回路32は、入力信号VCINおよびコンパレータ51に基づいて、入力信号VCINがHレベルになってIGBT11がオンする期間(オン期間)になってもコレクタ・エミッタ間電圧が下がらない状態を検出し、その状態が検出された場合に、IGBT11が活性動作したものと判断してSCトリップレベルを下げる。具体的には、切替制御回路32は、切替器33を制御して、入力信号VCINとコンパレータ51の出力の両方がHレベルになった場合に、過電流検出回路31を抵抗R1,R2の直列回路の両端に接続させ、それ以外の場合は過電流検出回路31を抵抗R1の両端に接続させる。
【0048】
実施の形態2では、IGBT11が通常動作でオンしてコレクタ・エミッタ間電圧が低下したときにのみSCトリップレベルが高くなり、それ以外の場合(IGBT11が活性動作でオンしたときと、IGBT11がオフ状態のとき)にはSCトリップレベルが低くなる。
【0049】
それに対し、実施の形態3では、IGBT11が活性動作でオンしたときのみにSCトリップレベルが低くなり、それ以外の場合(IGBT11が通常動作でオンしたときと、IGBT11がオフ状態のとき)には、SCトリップレベルが高く維持される。よって本実施の形態では、不要にSCトリップレベルが低く設定されることがないため、実施の形態2よりもさらにIGBT11の活性動作を精度よく検知でき、IGBT11の動作が不要に停止されることを防止できる。
【0050】
<実施の形態4>
図10は、実施の形態4に係るパワーモジュール100の構成図である。当該パワーモジュール100は、半導体デバイス10、駆動回路20、保護回路30、電源切替回路60、センス抵抗である抵抗R、および内部電源102を備えている。半導体デバイス10および駆動回路20は、図4に示したものと同様であるので説明は省略する。
【0051】
実施の形態4の保護回路30は、従来のパワーモジュールが備える過電流検出回路と同じものでよい(例えば、実施の形態1〜3で示した過電流検出回路31と同じでよい)。当該保護回路30は、抵抗Rに生じるセンス電圧が所定値に達した場合に、IGBT11のコレクタ電流がSCトリップレベルに達したと判断し、駆動回路20に保護信号SPを生成する。
【0052】
また、実施の形態4のパワーモジュール100は、当該パワーモジュール100の外部電源入力端子に接続された外部電源101から制御電源電圧VD1が供給されると共に、内部に制御電源電圧VD2を生成する内部電源102を有している。以下、外部電源101から供給される制御電源電圧VD1を「外部電源電圧」と称し、内部電源102が生成する制御電源電圧VD2を「内部電源電圧」と称する。外部電源電圧VD1および内部電源電圧VD2は、電源切替回路60に入力される。
【0053】
電源切替回路60は、外部電源電圧VD1と内部電源電圧VD2のうちの片方を選択し、それを制御電源電圧VDとして駆動回路20に供給する。具体的には、通常は外部電源電圧VD1を駆動回路20に供給するが、外部電源電圧VD1が低下したときには、それを内部電源電圧VD2に切り替えて駆動回路20に供給する。
【0054】
図11は、実施の形態4のパワーモジュール100が備える電源切替回路60の構成図である。電源切替回路60は、コンパレータ61、切替制御回路62および切替器63により構成されている。
【0055】
切替器63は、駆動回路20に制御電源電圧VDとして、外部電源電圧VD1を供給するか、内部電源電圧VD2を供給するかを切り替える。切替器63の動作は、切替制御回路62によって、コンパレータ61の出力に基づき制御される。
【0056】
コンパレータ61は、外部電源電圧VD1と所定の基準電圧VREF3とを比較する。基準電圧VREF3は、外部電源電圧VD1の正常な値よりも低く設定される。コンパレータ61の出力は、外部電源電圧VD1が基準電圧VREF3よりも高い正常な状態ではHレベルであるが、外部電源電圧VD1が基準電圧VREF3よりも低下するとLレベルとなる。切替制御回路62は、切替器63を制御し、コンパレータ61の出力がHレベルのときは外部電源電圧VD1を駆動回路20に供給し、コンパレータ61の出力がLレベルのときは内部電源電圧VD2を駆動回路20に供給する。
【0057】
従って、本実施の形態に係るパワーモジュール100においては、通常は外部電源電圧VD1が制御電源電圧VDとして用いられるが、外部電源電圧VD1が低下した場合には、その代わりに内部電源電圧VD2が制御電源電圧VDとして用いられることになる。よって、駆動回路20に供給される制御電源電圧VDが低下してIGBT11が活性動作すること自体を防止でき、IGBT11の熱破壊を防止することができる。
【0058】
<実施の形態5>
図12は、実施の形態5に係るパワーモジュール100の構成図である。当該パワーモジュール100は、半導体デバイス10、駆動回路20、保護回路30、センス抵抗である抵抗R、一方向性素子であるダイオード71,72および内部電源102を備えている。
【0059】
実施の形態5に係るパワーモジュール100の構成は、電源切替回路60がダイオード71,72に置き換えられていることを除いて、実施の形態4の構成(図10、図11)と同様である。
【0060】
駆動回路20に制御電源電圧VDを入力するための電源入力端子には、外部電源101がダイオード71を介して接続されると共に、内部電源102がダイオード72を介して接続される。ダイオード71,72は、カソード側が駆動回路20の電源入力端子に接続される。
【0061】
従って、駆動回路20には、外部電源電圧VD1および内部電源電圧VD2のいずれか高い方が、制御電源電圧VDとして供給されることになる。つまり本実施の形態では、外部電源電圧VD1が低下したときには内部電源電圧VD2が制御電源電圧VDとして用いられ、内部電源電圧VD2が低下したときには外部電源電圧VD1が制御電源電圧VDとして用いられる。
【0062】
よって、実施の形態4と同様に、駆動回路20に供給される制御電源電圧VDが低下してIGBT11が活性動作すること自体を防止でき、IGBT11の熱破壊を防止することができる。また実施の形態4(図10、図11)と比較して、パワーモジュール100の構成が簡単であるため、パワーモジュール100の低コスト化を図ることができる。
【0063】
<変更例>
以上の各実施の形態では、IGBT11とそれに接続した逆並列ダイオード12とから成る半導体デバイス10を示したが、半導体デバイス10の構成はこれに限られない。例えば、スイッチング素子として、IGBT11に代えてMOSFETやバイポーラトランジスタを用いてもよい。また半導体デバイス10として、逆並列ダイオードを内蔵するRC−IGBT(Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor )を用いてもよい。
【0064】
半導体デバイス10のスイッチング素子(RC−IGBTを含む)およびダイオードは、シリコン(Si)により形成されたものでもよいが、炭化シリコン(SiC)をはじめとするワイドバンドギャップ半導体により形成されたものでもよい。ワイドバンドギャップ半導体としては、SiCの他、例えば窒化ガリウム(GaN)系材料、ダイヤモンドなどがある。
【0065】
ワイドバンドギャップ半導体を用いて形成した半導体デバイス10は高耐圧であり、電流密度の許容値を大きくできるため、半導体デバイス10の小型化を図ることができる。よって、パワーモジュール100の小型化に寄与できる。その場合、スイッチング素子およびダイオードの両方をワイドバンドギャップ半導体素子としてもよいし、その片方のみをワイドバンドギャップ半導体素子としてもよい。
【0066】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【符号の説明】
【0067】
10 半導体デバイス、11 IGBT、12 逆並列ダイオード、20 駆動回路、30 保護回路、31 過電流検出回路、32,62 切替制御回路、33,63 切替器、40 制御電源電圧検出回路、41,51,61 コンパレータ、50 コレクタ・エミッタ間電圧検出回路、60 電源切替回路、71,72 ダイオード、R1,R2,R 抵抗、100 パワーモジュール、101 外部電源、102 内部電源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスと、
前記半導体デバイスを駆動する駆動回路と、
前記半導体デバイスの主電極間に流れる主電流を検出し、当該主電流がトリップレベルに達したときに前記半導体デバイスの保護動作を行う保護回路と、
前記半導体デバイスが活性動作することを検出する活性動作検出手段と、
前記半導体デバイスが活性動作することが検出されると、前記トリップレベルを下げるトリップレベル切替回路とを備える
ことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】
前記活性動作検出手段は、前記駆動回路に供給される制御電源電圧が所定値よりも低下したことを検出する制御電源電圧検出回路であり、
前記トリップレベル切替回路は、前記制御電源電圧が所定値よりも低い場合に、前記トリップレベルを下げる
請求項1記載のパワーモジュール。
【請求項3】
前記活性動作検出手段は、前記半導体デバイスの前記主電極間にかかる主電圧が所定値よりも高いことを検出する主電圧検出回路であり、
前記トリップレベル切替回路は、前記主電圧が所定値よりも高い場合に、前記トリップレベルを下げる
請求項1記載のパワーモジュール。
【請求項4】
トリップレベル切替回路は、前記駆動回路の制御信号に基づいて前記半導体デバイスのオン期間を検出し、前記半導体デバイスのオン期間であり且つ前記主電圧が所定値よりも高い場合に、前記トリップレベルを下げる
請求項3記載のパワーモジュール。
【請求項5】
半導体デバイスと、
前記半導体デバイスを駆動する駆動回路と、
前記半導体デバイスの主電極間に流れる主電流を検出し、当該主電流がトリップレベルに達したときに前記半導体デバイスの保護動作を行う保護回路と、
外部電源からの外部電源電圧を受ける外部電源入力端子と、
内部電源電圧を生成する内部電源と、
前記外部電源電圧および前記内部電源電圧を、選択的に、制御電源電圧として前記駆動回路に供給する電源選択手段とを備える
ことを特徴とするパワーモジュール。
【請求項6】
前記電源選択手段は、前記外部電源電圧および前記内部電源電圧を切り替えて、制御電源電圧として前記駆動回路に供給する電源切替回路であり、
前記電源切替回路は、前記外部電源電圧が所定値よりも低下した場合に、前記内部電源電圧を前記駆動回路に供給する
請求項5記載のパワーモジュール。
【請求項7】
前記電源選択手段においては、前記外部電源電圧および前記内部電源電圧のうち高い方が、制御電源電圧として前記駆動回路に供給される
請求項5記載のパワーモジュール。
【請求項8】
前記電源選択手段は、
前記外部電源電圧を前記駆動回路に供給する第1の一方向性素子と、
前記内部電源電圧を前記駆動回路に供給する第2の一方向性素子とを含む
請求項7記載のパワーモジュール。
【請求項9】
前記半導体デバイスは、IGBT、RC−IGBT、MOSFET、バイポーラトランジスタのいずれかを含む
請求項1から請求項8のいずれか一項記載のパワーモジュール。
【請求項10】
前記半導体デバイスは、ワイドバンドギャップ半導体により形成されたスイッチング素子を含む
請求項1から請求項8のいずれか一項記載のパワーモジュール。
【請求項11】
前記半導体デバイスは、スイッチング素子とそれに逆並列に接続したダイオードを含んでおり、
前記スイッチング素子およびダイオードの少なくとも片方がワイドバンドギャップ半導体により形成されている
請求項1から請求項8のいずれか一項記載のパワーモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−62730(P2013−62730A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200710(P2011−200710)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】