説明

ヒドロシリル化反応物およびその製造方法、該ヒドロシリル化反応物を含有する転写材料用硬化性組成物、ならびに該ヒドロシリル化反応物または該転写材料用硬化性組成物を用いた転写層の製造方法

【課題】高いスループットで微細パターンを形成することができるナノインプリント法に適用でき、しかもフッ素系ガスと酸素ガスとのエッチング速度の選択性が高い微細パターンを形成することができるヒドロシリル化反応物または該ヒドロシリル化反応物を含有する転写材料用硬化性組成物を提供する。また、ナノインプリントに用いられる射出成型樹脂スタンパーおよびフィルムスタンパーの微細なムラやパターン以外の微小な凹凸などの転写を抑えることができるヒドロシリル化反応物または該ヒドロシリル化反応物を含有する転写材料用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本発明のヒドロシリル化反応物は、Si−H結合含有基を有する特定の篭状シルセスキオキサン化合物(A)と、硬化性官能基及び該硬化性官能基以外の炭素−炭素不飽和結合含有基を有する化合物(B)と、炭素−炭素不飽和結合含有基を有する特定の篭状シルセスキオキサン化合物(C)とを反応させて得られることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒドロシリル化反応物およびその製造方法、該ヒドロシリル化反応物を含有する転写材料用硬化性組成物、ならびに該ヒドロシリル化反応物または該転写材料用硬化性組成物を用いた転写層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスやパターンドメディア等の磁気記録媒体製造プロセス等における微細パターン形成方法としてナノインプリント技術が注目されており、ナノインプリント技術に用いるための優れた転写材料が求められている。
【0003】
ナノインプリント用転写材料として、ポリメチルメタクリレートなどの熱可塑性樹脂を用いる場合がある。熱可塑性樹脂を転写材料として用いる場合、塗布した転写材料をガラス転移点以上に加熱し、型押しをして、冷却した後に型を外すというパターン形成方法が一般的である。しかしながら、このようなパターン形成方法は非常に時間がかかり、スループットが悪いという問題がある。
【0004】
これに対して特許文献1には、シロキサン化合物の一つである水素化シルセスキオキサンと、溶剤とを含有する溶液を基板上に塗布した後、該塗布面を室温で型押しをして、溶剤を除去し、加水分解硬化をすることにより、微細なパターンを形成する方法が開示されている。また特許文献2には、カテコール誘導体からなる化合物とレゾルシノール誘導体からなる化合物とを含有する組成物による塗布膜を基板上に形成後、室温で型押しをすることにより、微細なパターンを形成する方法が開示されている。
【0005】
これらの方法は室温インプリント法と呼ばれ、加熱および冷却の工程を省くことができる。しかしながら、型押しに必要な時間が長く、充分なスループットが得られていない。また、高圧で押すためにスタンパー(型)の寿命が短く、量産化する場合にはさらなる改善が必要であった。
【0006】
そこで、紫外線で硬化する光硬化性樹脂を用いたUVナノインプリント法と呼ばれる技術が提案されている。UVナノインプリント法とは、光硬化性樹脂を塗布した後に、スタンパーで型押しをしながら紫外線を照射し、樹脂を硬化させ、その後にスタンパーを外すことにより、微細パターンを形成させる方法である。UVナノインプリント法は、加熱および冷却の工程がなく、紫外線による硬化は非常に短時間で可能であり、型押しは低圧で行うことができるため、上記の種々の問題を解決できる可能性が高い。
【0007】
しかしながら、UVナノインプリント法において、通常用いられる樹脂はアクリル系の有機系樹脂であり、エッチング速度の選択性が低い点で問題があった。形成した微細パターンをレジストとして用いる場合、ドライエッチングのガスの種類によるエッチング速度の選択性が重要である。ここで、エッチング速度の選択性とは、エッチングのガスの種類によりエッチング速度が異なることをいう。そして、エッチング速度が大きく異なることをエッチング速度の選択性が高いという。
【0008】
微細パターンは、レジストとして機能するために、エッチングのガスの種類によりエッチング速度の選択性が高いことが必要である。エッチング用ガスとしては、フッ素系ガスと酸素ガスとがよく用いられる。一般的にアクリル系の有機系樹脂の場合は、フッ素系ガ
スと酸素ガスとでエッチング速度に大きな差はなく、エッチング速度の選択性が低い。
【0009】
フッ素系ガスと酸素ガスとでエッチング速度の選択性が高い材料として通常ケイ素化合物が用いられる。上記の水素化シルセスキオキサンなどはその一例であり、フッ素系ガスにおけるエッチング速度は大きいのに対し、酸素ガスにおけるエッチング速度は非常に遅いという特徴がある。しかしながら、水素化シルセスキオキサンには光硬化性がないためUVナノインプリント法に用いることができないという問題がある。
【0010】
このような問題を解決する方法として、特許文献3ではゾルゲル法で合成された官能基を持つケイ素化合物を用いるパターン形成方法が提案されている。しかし、この方法ではゾルゲル過程でケイ素化合物の分子量を高くすると、ゲル化して溶媒に不溶不融の化合物が生成するために、分子量を上げることが出来ず、インプリント成形時及び成形後の微細パターンの強度と柔軟性とのバランスを取りにくいという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2003−100609号公報
【特許文献2】特開2005−277280号公報
【特許文献3】特開2007−72374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、高いスループットで、フッ素系ガスと酸素ガスとの間でのエッチング速度の選択性が高い微細パターンを形成することができるヒドロシリル化反応物およびその製造方法、該ヒドロシリル化反応物を含有する転写材料用硬化性組成物、ならびに該ヒドロシリル化反応物または該転写材料用硬化性組成物を用いた転写層の製造方法を提供することを目的とする。また、UVナノインプリントに用いられる射出成型樹脂スタンパーおよびフィルムスタンパーの微細なムラやパターン以外の微小な凹凸の転写を抑えることができるヒドロシリル化反応物およびその製造方法、該ヒドロシリル化反応物を含有する転写材料用硬化性組成物、ならびに該ヒドロシリル化反応物または該転写材料用硬化性組成物を用いた転写層の製造方法を提供することを目的とする。さらに、UVナノインプリント法に適用でき、また場合によっては熱ナノインプリント法にも適用できるヒドロシリル化反応物または該ヒドロシリル化反応物を含有する転写材料用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、特定のヒドロシリル化反応物または該ヒドロシリル化反応物を含有する転写材料用硬化性組成物を用いることにより上記の課題を解決できることを見出した。
【0014】
すなわち、本発明はたとえば以下[1]〜[20]に関する。
【0015】
[1]
以下の式(1)で表されるSi−H結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(A)と、
硬化性官能基及び該硬化性官能基以外の炭素−炭素不飽和結合含有基を有する化合物(B)と、
以下の式(2)で表される炭素−炭素不飽和結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(C)とを反応させて得られることを特徴とするヒドロシリル化反応物。
【0016】
【化1】

【0017】
(式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基
または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、Yは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、8つのYのうち、少なくとも1つは、水素原子である。)
【0018】
【化2】

【0019】
(式(2)中、それぞれ独立にR1は、-OSiR23Z、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2を示し、8つのR1のうち、少なくとも1つは、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2であり、Zは、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水
素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。)
[2]
以下の(x)に示す篭状シルセスキオキサン骨格部分の割合が、15〜45質量%の範囲にあることを特徴とする[1]に記載のヒドロシリル化反応物。
【0020】
【化3】

【0021】
[3]
前記化合物(B)が有する硬化性官能基が、活性エネルギー線硬化性官能基である[1]または[2]に記載のヒドロシリル化反応物。
【0022】
[4]
前記活性エネルギー線硬化性官能基が、(メタ)アクリロイルオキシ基またはエポキシ基である[3]に記載のヒドロシリル化反応物。
【0023】
[5]
前記化合物(B)が、以下に示す化合物(a)、化合物(b)および化合物(c)からなる群より選ばれる少なくとも1種である[1]または[2]に記載のヒドロシリル化反応物;
【0024】
【化4】

【0025】
(上記化合物(a)〜(c)において、R4−は下記(i)〜(iv)式のいずれかで表される基であり、R5は水素原子またはメチル基である。)
【0026】
【化5】

【0027】
(上記(i)式中、R6は水素原子またはメチル基であり、上記(ii)式中、R7は水素原
子またはメチル基であり、上記(iii)式中、R8は水素原子またはメチル基であり、R9
は炭素原子数が2〜8のアルキレン基である)。
【0028】
[6]
[1]〜[5]のいずれか一に記載のヒドロシリル化反応物と、重合開始剤または硬化剤とを含む転写材料用硬化性組成物。
【0029】
[7]
[1]〜[5]のいずれか一に記載のヒドロシリル化反応物が有する硬化性官能基がエポキシ基であり、前記硬化剤が酸無水物である[6]に記載の転写材料用硬化性組成物。
【0030】
[8]
さらにポリチオール化合物を含み、[1]〜[5]のいずれか一に記載のヒドロシリル化反応物が有する硬化性官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基である[6]に記載の転写材料用硬化性組成物。
【0031】
[9]
さらにビニルエーテル基を有する化合物を含み、[1]〜[5]のいずれか一に記載のヒドロシリル化反応物が有する硬化性官能基がエポキシ基である[6]に記載の転写材料用硬化性組成物。
【0032】
[10]
[1]に記載のヒドロシリル化反応物の製造方法であって、
以下の式(1)で表されるSi−H結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(A)と、
硬化性官能基及び該硬化性官能基以外の炭素−炭素不飽和結合含有基を有する化合物(B)と、
以下の式(2)で表される炭素−炭素不飽和結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(C)とを混合して、ヒドロシリル化反応させる工程を含むことを特徴とするヒドロシリル化反応物の製造方法。
【0033】
【化6】

【0034】
(式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基
または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、Yは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、8つのYのうち、少なくとも1つは、水素原子である。)
【0035】
【化7】

【0036】
((式(2)中、それぞれ独立にR1は、-OSiR23Z、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2を示し、8つのR1のうち、少なくとも1つは、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2であり、Zは、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化
水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。)
[11]
前記化合物(A)が有するSi−H結合の平均モル数をAとし、前記化合物(B)および前記化合物(C)が有する炭素−炭素不飽和結合の平均モル数を順にBおよびCとした場合、
A/(B+C)が1/1〜1/10の範囲にあり、かつB/Cが1〜79の範囲にある[10]に記載のヒドロシリル化反応物の製造方法。
【0037】
[12]
凹凸パターンを有する転写層の製造方法であって、
[1]〜[5]のいずれか一に記載のヒドロシリル化反応物または請求項6〜9のいずれか一に記載の転写材料用硬化性組成物を基板上に塗布して転写材料用硬化性組成物層を形成する工程と、
該転写材料用硬化性組成物層の表面に、凹凸パターンを有する型を押し付ける工程と、
前記型を押し付けた状態で転写材料用硬化性組成物層を硬化させて、転写層を形成する工程とを含むことを特徴とする転写層の製造方法。
【0038】
[13]
前記転写材料用硬化性組成物層を硬化する工程を、転写材料用硬化性組成物層に対する加熱および/または活性エネルギー線照射により行うことを特徴とする[12]に記載の
転写層の製造方法。
【0039】
[14]
前記活性エネルギー線照射を、前記型の側から前記転写材料用硬化性組成物層に向かって行うことを特徴とする[13]に記載の転写層の製造方法。
【0040】
[15]
前記基板が透明基板であり、前記活性エネルギー線照射を、前記透明基板の側から前記転写材料用硬化性組成物層に向かって行うことを特徴とする[13]に記載の転写層の製造方法。
【0041】
[16]
前記基板が基体上に磁性膜を備えた基板であることを特徴とする[12]〜[15]のいずれか一に記載の転写層の製造方法。
【0042】
[17]
基体上に磁性膜を備えた基板上に、[16]に記載の転写層の製造方法により、凹凸パターンを有する転写層を形成する工程と、
前記転写層に形成された凹凸の凹部をエッチングして、前記磁性膜表面の一部を露出させる工程と、
前記転写層をマスクとして用いて、前記磁性膜の露出部を除去または前記磁性膜の露出部を非磁性化する工程とを、この順序で含むことを特徴とするインプリント方法。
【0043】
[18]
前記凹凸パターンにおいて、1つの凹部の線幅と1つの凸部の線幅との合計が10μm以下である[17]に記載のインプリント方法。
【0044】
[19]
[18]に記載のインプリント方法で得られる磁気記録媒体。
【0045】
[20]
[19]に記載の磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置。
【発明の効果】
【0046】
本発明のヒドロシリル化反応物または転写材料用硬化性組成物を用いれば、高いスループットで、フッ素系ガスと酸素ガスとのエッチング速度の選択性が高い微細パターンを形成することができる。また、UVナノインプリントに用いられる射出成型樹脂スタンパーおよびフィルムスタンパーの微細なムラやパターン以外の微小な凹凸の転写を抑えること
ができる。
【0047】
前記ヒドロシリル化反応物または前記転写材料用硬化性組成物を用いる本発明の転写層の製造方法は、インプリント時の転写性能が良好である。インプリント後の磁性層露出のための底抜きや当該反応物または当該組成物から形成された硬化膜の剥離の際には、フッ素系ガスを用いて反応性イオンエッチングを行うことにより、容易に硬化膜を除去できる。一方媒体を加工する際の酸素エッチング、Arミリング等のエッチングにおいてはレジストとしての良好な耐性を示す。
【0048】
さらに、本発明の転写層の製造方法を用いることにより、半導体または磁気記録媒体製造プロセス等における微細パターンを良好に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】図1は、本発明の転写材料用硬化性組成物を用いた10μm以下の微細パターンを有する転写層の製造方法の工程を示す図である。
【図2】図2(A)は、実施例2の凹凸形状が半径方向に沿ってパターニングされた石英ガラス製の円板を示す図である。図2(B)は、該円板の囲み部分における拡大図(断面図(下)および平面図(上))である。凹部の幅(L)は半径方向に80nmであり、凸部の幅(S)は半径方向に120nmである。
【図3】図3は実施例2の、薄膜にパターン形状が転写されたガラス基板の断面の電界放射型電子顕微鏡像を示す。
【図4】図4は磁気記録媒体の磁性膜の加工における底抜き工程を示す。
【図5】図5は磁気記録媒体の磁性膜の一部除去加工、もしくは非磁性化の概略を示す。
【図6】図6は実施例2の、薄膜にパターン形状が転写されたガラス基板をOptical Surface Analyzer(OSA)で測定した表面画像を示す。
【図7】図7は参考例1の、薄膜にパターン形状が転写されたガラス基板をOptical Surface Analyzer(OSA)で測定した表面画像を示す。
【図8】図8は実施例4の、薄膜にパターン形状が転写されたガラス基板の断面の電界放射型電子顕微鏡像を示す。
【図9】図9は実施例4の、薄膜にパターン形状が転写されたガラス基板をOptical Surface Analyzer(OSA)で測定した表面画像を示す。
【図10】図10は参考例2の、薄膜にパターン形状が転写されたガラス基板をOptical Surface Analyzer(OSA)で測定した表面画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明のヒドロシリル化反応物およびその製造方法、該ヒドロシリル化反応物を含有する転写材料用硬化性組成物、ならびに該ヒドロシリル化反応物または該転写材料用硬化性組成物を用いた転写層の製造方法を詳細に説明する。
【0051】
[ヒドロシリル化反応物]
本発明のヒドロシリル化反応物は、以下の式(1)で表されるSi−H結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(A)(以下、単に「化合物(A)」ともいう)と、硬化性官能基及び該硬化性官能基以外の炭素−炭素不飽和結合含有基を有する化合物(B)(以下、単に「化合物(B)」ともいう)と、以下の式(2)で表される炭素−炭素不飽和結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(C)(以下、単に「化合物(C)」ともいう)とを反応させて得られることを特徴としている。
【0052】
【化8】

【0053】
(式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基
または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、Yは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、8つのYのうち、少なくとも1つは、水素原子である。)
【0054】
【化9】

【0055】
(式(2)中、それぞれ独立にR1は、-OSiR23Z、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2を示し、8つのR1のうち、少なくとも1つは、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2であり、Zは、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水
素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。)
上記式(1)中、8つのYのうち、少なくとも1つは、水素原子であるので、化合物(A)は、少なくとも1つのSi−H結合を含有する。
【0056】
化合物(A)としては、例えば、以下の式(1)’で表されるSi−H結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物が挙げられる。
【0057】
【化10】

【0058】
(式(1)’中、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素
基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。)
前記ヒドロシリル化反応物は、前記化合物(A)〜(C)をヒドロシリル化反応させることにより製造することができる。詳細には、前記化合物(A)が有するSi−H結合と、前記化合物(B)および(C)が有する炭素−炭素不飽和結合とをヒドロシリル化反応させることにより製造することができる。
【0059】
例えば、前記化合物(A)が上記式(1)’で表されるSi−H結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物である場合、当該化合物(A)の有する8つのSi−H基のうちm個は、前記化合物(B)が有する炭素−炭素不飽和結合含有基と反応し、n個は、前記化合物(C)が有する炭素−炭素不飽和結合含有基と反応する。ここでmおよびnは1〜7の整数であり、かつm+n≦8である。前記ヒドロシリル化反応により、通常、mおよびnが異なる複数種のヒドロシリル化反応物を含有する混合物が得られる。本発明のヒドロシリル化反応物は、通常、このような混合物を意味する。
【0060】
また、前記ヒドロシリル化反応物において、以下の(x)に示す篭状シルセスキオキサン骨格部分の割合は、15〜45質量%の範囲にあることが好ましく、20〜35質量%の範囲にあることがより好ましく、22〜30質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0061】
【化11】

【0062】
当該ヒドロシリル化反応の条件については、ヒドロシリル化反応物の製造方法の段落において詳述する。
【0063】
<化合物(A)>
化合物(A)としては、以下の式(1)で表される同一分子中に少なくとも1つのSi−H結合含有基を有する化合物が挙げられる。
【0064】
【化12】

【0065】
上記式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、Yは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、8つのYのうち、少なくとも1つは、水素原子である。
【0066】
上記式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基または6〜14の芳香族炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基またはフェニル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0067】
また、上記式(1)中、Yは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜5の脂肪族炭化水素基または6〜14の芳香族炭化水素基であることが好ましく、水素原子またはメチル基であることがより好ましく、水素であることがさらに好ましい。
【0068】
化合物(A)の具体例としては、オクタキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン、オクタキス(メチルフェニルシリルオキシ)シルセスキオキサン、オクタキス(ジメチルフェニルシリルオキシ)シルセスキオキサン、ユニ(トリメチルシリルオキシ)ヘプタキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン、ビス(トリメチルシリルオキシ)ヘキサキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン、トリス(トリメチルシリルオキシ)ペンタキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン、テトラキス(トリメチルシリルオキシ)テトラキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン、ペンタキス(トリメチルシリルオキシ)トリス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン、ヘキサキス(トリメチルシリルオキシ)ビス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン、ヘプタキス(トリメチルシリルオキシ)ユニ(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン等が挙げられる。好ましくはオクタキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサンである。
【0069】
これらの化合物のうち、例えばオクタキス(置換シリルオキシ)シルセスキオキサンは、J. Organomat. Chem.,441, 373(1992).に開示の方法を用
いて、Si8208-のテトラメチルアンモニウム塩とジメチルクロロシラン、メチルフェ
ニルクロロシラン、ジフェニルクロロシラン、トリメチルクロロシランのような塩素化アルキル置換ケイ素化合物とを反応させること等により合成することが出来る。
【0070】
上記化合物(A)は、一種単独で用いてもよく、二種以上混合して用いてもよい。
【0071】
<化合物(B)>
化合物(B)は、硬化性官能基及び該硬化性官能基以外の炭素−炭素不飽和結合含有基を有する。化合物(B)が有する炭素−炭素不飽和結合含有基は、前記化合物(A)が有するSi−H基とヒドロシリル化反応を行う部分である。化合物(B)が有する炭素−炭
素不飽和結合含有基としては、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
【0072】
また、化合物(B)が有する硬化性官能基は、活性エネルギー線または熱により反応する硬化性官能基である。該硬化性官能基は、上述した炭素−炭素不飽和結合含有基よりも反応性が極めて高く、優先的に反応する。
【0073】
化合物(B)が有する硬化性官能基は、活性エネルギー線により反応する硬化性官能基(以下「活性エネルギー線硬化性官能基」ともいう。)であることが好ましい。中でも活性エネルギー線により反応する(メタ)アクリロイルオキシ基またはエポキシ基が好ましい。ここで本願明細書におけるエポキシ基とは、通常の意味で用いられる、直接結合した2つの炭素原子が酸素原子によって橋かけされている三角形の構造を持つ基のほかに、直接または他の原子(おもに炭素原子)を介して結合している二つの炭素原子が酸素原子によって橋かけされている構造を持つ基を意味し、グリシジル基、オキセタニル基、シクロヘキセンオキサイド基などを含む。
【0074】
分子内にこれらの両方の官能基を有する化合物、すなわち硬化性官能基及び該硬化性官能基以外の炭素−炭素不飽和結合含有基を有する化合物(化合物(B))としては、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサン、3,4−エポキシシクロヘキサンカルボン酸アリル等のエポキシ基とアリル基を有する化合物、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノアリルエーテル、(メタ)アクリル酸ジプロピレングリコールモノアリルエーテル等の(メタ)アクリロイルオキシ基とアリル基とを含む化合物等の化合物が挙げられる。
【0075】
また、化合物(B)のその他の具体例としては、以下に示す化合物(a)、化合物(b)および化合物(c)からなる群より選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0076】
【化13】

【0077】
上記化合物(a)〜(c)において、R4−は以下の(i)〜(iv)式に示すいずれかの構造であり、R5は水素原子またはメチル基である。
【0078】
【化14】

【0079】
上記(i)式中、R6は水素原子またはメチル基であり、上記(ii)式中、R7は水素原
子またはメチル基であり、上記(iii)式中、R8は水素原子またはメチル基であり、R9
は炭素原子数が2〜8のアルキレン基である。
【0080】
化合物(B)として、好ましくはメタクリル酸アリルが挙げられる。
【0081】
上記化合物(B)は、一種単独で用いてもよく、二種以上混合して用いてもよい。
【0082】
<化合物(C)>
化合物(C)は、炭素−炭素不飽和結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物であり、以下の式(2)で表される。
【0083】
【化15】

【0084】
式(2)中、それぞれ独立にR1は、-OSiR23Z、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2を示し、8つのR1のうち、少なくとも1つは、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2であり、Zは、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水
素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。
【0085】
上記式(2)中、8つのR1のうち、少なくとも1つは、-OSiR23CH=CH2
たは-CH=CH2であるので、化合物(C)は、少なくとも1つの炭素−炭素不飽和結合を含有する。
【0086】
上記式(2)中、R1は、それぞれ独立に-OSi(CH33、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2であることが好ましい。前記R2およびR3は、それぞれ独立に炭素
原子数1〜5の脂肪族炭化水素基または6〜14の芳香族炭化水素基であることが好ましく、メチル基、エチル基またはフェニル基であることがより好ましく、メチル基であることがさらに好ましい。
【0087】
化合物(C)の具体例としては、オクタビニルシルセスキオキサン、オクタキス(ジメチルビニルシリルオキシ)シルセスキオキサン、オクタキス(メチルフェニルビニルシリルオキシ)シルセスキオキサン、ユニ(トリメチルシリルオキシ)ヘプタキス(ジメチルビニルシリルオキシ)シルセスキオキサン、ビス(トリメチルシリルオキシ)ヘキサキス(ジメチルビニルシリルオキシ)シルセスキオキサン、トリス(トリメチルシリルオキシ)ペンタキス(ジメチルビニルシリルオキシ)シルセスキオキサン、テトラキス(トリメチルシリルオキシ)テトラキス(ジメチルビニルシリルオキシ)シルセスキオキサン、ペンタキス(トリメチルシリルオキシ)トリス(ジメチルビニルシリルオキシ)シルセスキオキサン、ヘキサキス(トリメチルシリルオキシ)ビス(ジメチルビニルシリルオキシ)シルセスキオキサン、ヘプタキス(トリメチルシリルオキシ)ユニ(ジメチルビニルシリルオキシ)シルセスキオキサン等が挙げられる。好ましくはオクタビニルシルセスキオキサンである。
【0088】
上記化合物(C)は、一種単独で用いてもよく、二種以上混合して用いてもよい。
【0089】
<ヒドロシリル化反応物の製造方法>
本発明のヒドロシリル化反応物の製造方法は、上述したヒドロシリル化反応物の製造方
法であって、以下の式(1)で表されるSi−H結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(A)と、硬化性官能基及び該硬化性官能基以外の炭素−炭素不飽和結合含有基を有する化合物(B)と、以下の式(2)で表される炭素−炭素不飽和結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(C)とを混合して、ヒドロシリル化反応させる工程を含むことを特徴としている。
【0090】
【化16】

【0091】
(式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基
または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、Yは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、8つのYのうち、少なくとも1つは、水素原子である。)
【0092】
【化17】

【0093】
(式(2)中、それぞれ独立にR1は、-OSiR23Z、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2を示し、8つのR1のうち、少なくとも1つは、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2であり、Zは、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水
素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。)
該工程により得られるヒドロシリル化反応物は、硬化性官能基を有するシルセスキオキサン骨格含有化合物である。
【0094】
一般的なヒドロシリル化反応を以下に示す。
【0095】
【化18】

【0096】
上記反応式において、Rは炭素−炭素不飽和結合を有する化合物の炭素−炭素不飽和結合に結合する残基を示す。
【0097】
上記の通り本発明における硬化性官能基を有するシルセスキオキサン骨格含有化合物は、化合物(A)〜(C)を反応させて製造することができる。後の硬化反応に影響を及ぼさない範囲で、Si−H結合と反応可能な炭素−炭素二重結合のみを持つ化合物を、化合物(B)の代わりに一部使用することが出来る。このような化合物としては、アリルアルコール、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、スチレン、ビニルトルエン等が挙げられる。
【0098】
また、ヒドロシリル化反応物の硬化物のエッチング速度の選択性が損なわれない範囲で、化合物(A)以外のSi−H結合含有基を有する化合物を併用することが出来る。このような化合物としては例えば、フェニルシランのようなモノアルキルシラン、ジフェニルシラン、メチルフェニルシランのようなジアルキルシラン等のケイ素原子に2個以上の水素原子が結合されたもの、または以下の一般式群で表されるポリハイドロジェンシロキサン化合物を原料として合成したものが挙げられる。
【0099】
【化19】

【0100】
上記式において、R11は、それぞれ独立に炭素原子数が1〜5のアルキル基を示し、そ
れぞれ独立にR12〜R15は炭素原子数1〜8のアルキル基、またはフェニル基を示し、(HSiO3/2nは篭状および梯子状シルセスキオキサンを示し、m1〜m3およびn1〜n5はそれぞれ独立に1〜500までの整数である。
【0101】
また、前記ヒドロシリル化反応において、前記化合物(A)が有するSi−H結合の平均モル数をAとし、前記化合物(B)および前記化合物(C)が有する炭素−炭素不飽和結合の平均モル数を順にBおよびCとした場合、A/(B+C)は、1/1〜1/10の範囲にあることが好ましく、1/8〜1/9の範囲にあることがさらに好ましい。また、B/Cは1〜79の範囲にあることが好ましい。反応方法としては、化合物(A)〜(C)を混合させた反応フラスコに、触媒をゆっくり滴下して反応させる方法が好ましい。なお、一部未反応の化合物(B)をヒドロシリル化反応物中に残存させた状態で、該ヒドロシリル化反応物を後述するパターン転写工程に用いても差し支えない。
【0102】
前記ヒドロシリル化反応を行う際には触媒を用いることが好ましい。このような触媒としては、白金触媒、ロジウム触媒、パラジウム触媒、ルテニウム触媒などが挙げられるが、白金触媒がより好ましい。白金触媒としては、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン化合物との反応物、塩化白金酸とビニル基含有シロキサンとの反応物、白金オレフィン錯体、白金ビニル基含有シロキサン錯体、白金カルボニル錯体等などを例示することができ、それらはアルコール等の溶媒に溶解または分散させて使用することが好ましい。具体的には、2%ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体キシレン溶液(GELEST INC.製)等を使用することが好ましい。
【0103】
前記触媒の使用量は特に制限はなく、反応に有効な量であればよい。具体的にはヒドロシリル化反応を行う原料、つまり前記化合物(A)(場合によってはそれらに化合物(A)以外のSi−H結合含有基を有する化合物を含む)、(B)(場合によってはそれらに化合物(B)以外のSi−H結合と反応可能な炭素−炭素二重結合のみを持つ化合物を含む)および化合物(C)の合計量に対して、白金等の金属元素分として、質量基準で0.01〜10000ppm、好ましくは0.1〜1000ppmとなる量である。
【0104】
前記ヒドロシリル化反応の反応温度は、通常0〜250℃である。前記シルセスキオキサン骨格含有化合物の硬化性官能基となる官能基の重合反応を防止する意味では、0〜100℃が好ましい。前記ヒドロシリル化反応の反応時間は、通常0.1〜5時間であり、0.1〜3時間であることが好ましい。また、原料系によっては反応速度が遅い場合があるので、このような場合には40℃以上に加熱することが望ましいが、加熱する場合には硬化性官能基に応じて、重合禁止剤を反応系に添加しておくことが望ましい。また、水分によって前記反応が不安定になる場合があるので、必要に応じ、アルゴンや窒素の雰囲気下で反応を実施することもできる。
【0105】
前記ヒドロシリル化反応は発熱が激しいので、必要に応じて反応溶媒を使用することが出来る。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶媒、イソプロパノールプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなどのアルコール系溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができる。また、アセトニトリル等のシアノ基含有化合物を反応溶媒として使用することもできる。これらの中で芳香族炭化水素系溶媒又は脂肪族炭化水素系溶媒がより好ましい。
【0106】
<転写材料用硬化性組成物>
本発明の転写材料用硬化性組成物(以下、単に「硬化性組成物」とも記す。)は、前記ヒドロシリル化反応物、すなわち硬化性官能基を有するシルセスキオキサン骨格含有化合物と、重合開始剤または硬化剤とを含んでいる。また、本発明の転写材料用硬化性組成物は、さらに、ポリチオール化合物、前記硬化性官能基と反応する官能基を持った化合物等を含んでいてもよい。
【0107】
前記シルセスキオキサン骨格含有化合物における硬化性官能基は、化合物(B)が有する硬化性官能基に由来し、上述のとおり(メタ)アクリロイルオキシ基またはエポキシ基などが挙げられる。
【0108】
前記シルセスキオキサン骨格含有化合物が有する硬化性官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基の場合には、前記シルセスキオキサン骨格含有化合物単独もしくは(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持った化合物の共存下でのラジカル重合、またはポリチオール化合物の共存下でポリチオールとの重付加を併用したラジカル重合を行うことが出来る。(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持った化合物の共存下でラジカル重合を行うことにより、本発明の転写材料用硬化性組成物の硬化速度、粘度等を調整することが可能である。
【0109】
このような(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持った化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、スチリル基、ビニル基、アリル基、マレイル基、フマル基等を持つ化合物が挙げられる。この中でも(メタ)アクリロイルオキシ基を持つ化合物が特に好ましく、たとえば、(メタ)アクリル酸エステルの構造を1つ以上有するモノマーまたはオリゴマーが好適である。
【0110】
前記(メタ)アクリル酸エステルの構造を1つ以上有するモノマーまたはオリゴマーとしては、単官能もしくは多官能の(メタ)アクリレートが使用でき、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシフェニルエチル、エチレングリコールジ(メタ)クリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−アクリロイルモルフォリン等である。
【0111】
また(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物として、さらには、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂
に(メタ)アクリル酸を付加させたいわゆるエポキシアクリレートも用いることが出来る。
【0112】
さらに(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物の他の例として、以下の化合物を挙げることができる。
【0113】
ポリイソシアネート化合物、たとえば、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、m−またはp−キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4'−ジイソシアネートまたはその変性物や重合物、ヘキサメチ
レンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートなど;
活性水素含有(メタ)アクリレート系モノマーとして、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールメタクリレートアクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどと反応させたウレタンアクリレートなども用いることが出来る。
【0114】
スチレン及びその誘導体も(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物として用いることができる。具体的には、スチレン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2,6−ジメチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,5−ジメチルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、2,4,5−トリメチルスチレン、ペンタメチルスチレン、o−エチルスチレン、m−エチルスチレン、p−エチルスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、2−ビニルビフェニル、3−ビニルビフェニル、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、4−ビニル−p−ターフェニル、1−ビニルアントラセン、α−メチルスチレン、o−イソプロペニルトルエン、m−イソプロペニルトルエン、p−イソプロペニルトルエン、2,4−ジメチル−α−メチルスチレン、2,3−ジメチル−α−メチルスチレン、3,5−ジメチル−α−メチルスチレン、p−イソプロピル−α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−クロロスチレン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロピルベンゼン等である。
【0115】
(メタ)アクリロニトリル及びその誘導体も(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物として用いることができる。例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
【0116】
有機カルボン酸のビニルエステル及びその誘導体も(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物として用いることができる。例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、アジピン酸ジビニル等が挙げられる。
【0117】
有機カルボン酸のアリルエステル及びその誘導体も(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物として用いることができる。例えば、酢酸アリル、安息香酸アリル、アジピン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、フタル酸ジアリル等が挙げられる。
【0118】
フマル酸のジアルキルエステル及びその誘導体も(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物として用いることができる。例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジイソプロピル、フマル酸ジ−sec−ブチル、フマル酸ジイソブチル、フマル酸ジ−n−ブチル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、フマル酸ジベンジル等が挙げられる。
【0119】
マレイン酸のジアルキルエステル及びその誘導体も(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物として用いることができる。例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジイソプロピル、マレイン酸ジ−sec−ブチル、マレイン酸ジイソブチル、マレイン酸ジ−n−ブチル、マレイン酸ジ−2−エチルヘキシル、マレイン酸ジベンジル等が挙げられる。
【0120】
イタコン酸のジアルキルエステル及びその誘導体も(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物として用いることができる。例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジイソプロピル、イタコン酸ジ−sec−ブチル、イタコン酸ジイソブチル、イタコン酸ジ−n−ブチル、イタコン酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸ジベンジル等が挙げられる。
【0121】
有機カルボン酸のN−ビニルアミド誘導体も(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物として用いることができる。例えば、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等が挙げられる。
【0122】
マレイミド及びその誘導体も(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持つ化合物として用いることができる。例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0123】
前記シルセスキオキサン骨格含有化合物が有する硬化性官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基の場合、(メタ)アクリロイルオキシ基と反応する官能基を持った化合物の共存下でのラジカル重合と、ポリチオールとの重付加とを併用することが出来る。
【0124】
前記ポリチオール化合物としては、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパン−トリス−(β−チオプロピネート)、トリス−2−ヒドロキシエチル−イソシアヌレート・トリス−β−メルカプトプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(β−チオプロピオネート)、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼンなどがあげられる。
【0125】
一方、前記硬化性官能基がエポキシ基の場合には、前記シルセスキオキサン骨格含有化合物単独あるいはビニルエーテル基のようなエポキシ基と反応する官能基を有する化合物との共存下でカチオン重合を行ったり、酸無水物を硬化剤として用いた重付加等の重合を行うことが出来る。前記硬化性官能基がエポキシ基の場合に、エポキシ基と反応する官能基を持った化合物を共存させてカチオン重合を行うことにより、本発明の転写材料用硬化性組成物の硬化速度、粘度等を調整することが可能である。
【0126】
このようなエポキシ基と反応する官能基を持った化合物としては、ビニルエーテル基を有する化合物を用いることが出来る。ビニルエーテル基を有する化合物としては、例えば
、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、シクロヘキサン−1,4−ジメチロールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、ポリエステルジビニルエーテル、ポリウレタンポリビニルエーテル等が挙げられる。
【0127】
またエポキシ基と反応する官能基を持った化合物として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、N−グリシジル型エポキシ樹脂、ビスフェノールAのノボラック型エポキシ樹脂、キレート型エポキシ樹脂、グリオキザール型エポキシ樹脂、アミノ基含有エポキシ樹脂、ゴム変性エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンフェノリック型エポキシ樹脂、シリコーン変性エポキシ樹脂、ε−カプロラクトン変性エポキシ樹脂などの、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が挙げられる。
【0128】
具体的には、以下のものも挙げることができる。
【0129】
ジャパンエポキシレジン(株)製の商品名エピコート828、1002、1004等のビスフェノールA型エポキシ樹脂;
ジャパンエポキシレジン(株)製の商品名エピコート806、807、4005P、東都化成(株)製の商品名YDF−170等のビスフェノールF型エポキシ樹脂;
ジャパンエポキシレジン(株)製の商品名エピコート152、154、日本化薬(株)製の商品名EPPN−201等のフェノールノボラック型エポキシ樹脂;
日本化薬(株)製の商品名EOCN−125S、103S、104S等のo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;
ジャパンエポキシレジン(株)製の商品名エピコートYX−4000,YL−6640等のビフェニル型エポキシ樹脂;
ジャパンエポキシレジン(株)製の商品名エピコート1031S、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名アラルダイト0163、ナガセ化成(株)製の商品名デナコールEX−611、EX−614、EX−614B、EX−622、EX−512、EX−521、EX−421、E−411、EX−321等の多官能エポキシ樹脂;
ジャパンエポキシレジン(株)製の商品名エピコート604、東都化成(株)製の商品名YH−434、三菱ガス化学(株)製の商品名TETRAD−X、TETRAD−C、日本化薬(株)製の商品名GAN、住友化学(株)製の商品名ELM−120等のアミン型エポキシ樹脂;
チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の商品名アラルダイトPT810等の複素環含有エポキシ樹脂;
ダイセル化学工業(株)製のEHPE3150、EHPE3150CE、セロキサイド2000、セロキサイド2021、セロキサイド2081,エポリードPB3600エポリードGT401等の脂環式エポキシ樹脂;
ダイセル化学工業(株)製のエポリードPB3600等のエポキシ化ポリブタジエン。これらは1種単独で又は2種類以上組み合わせて使用することができる。
【0130】
また、エポキシ基と反応する官能基を持った化合物として、オキセタニル基を有する化合物も用いることが出来る。オキセタニル基を有する化合物としては、1,3−ビス〔(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル〕プロパン、エチレングリコールビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、トリメチロールプロパントリス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル、2−エチル−2−ヒドロキシメチルオキセタ
ン等が挙げられる。
【0131】
前記硬化性官能基がエポキシ基、特にグリシジル基である場合、酸無水物を硬化剤として使用し、重付加により硬化性組成物を硬化することができる。酸無水物としては、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類、無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸等の環状脂肪酸無水物が挙げられる。
【0132】
これらの酸無水物の使用量は、エポキシ基に対し、0.7〜1.2当量、好ましくは0.8〜1.1当量である。また硬化促進剤としてイミダゾール類、三級アミン類、有機ホスフィン化合物を用いることができる。
【0133】
本発明のヒドロシリル化反応物または硬化性組成物を硬化する方法は、活性エネルギー線硬化と熱硬化との二つの方法がある。これらの方法で、前述のラジカル重合またはカチオン重合を行う場合には、重合様式に応じてそれぞれ最適な重合開始剤を用いる。
【0134】
前記硬化性官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基である場合、または前記硬化性官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基であり、硬化性組成物が前記ポリチオール化合物を含有する場合には、ラジカル重合開始剤を用いるのが好ましい。
【0135】
熱重合の場合には、熱ラジカル開始剤としてメチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセテートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパー
オキシ)ブタン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,1−ビ
ス(t−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキ
シ)シクロドデカン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−シクロヘキサン、1,
1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2
−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチ
ルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、α,α'−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキ
シ)ヘキシン−3、イソブチリルパーオキサイド、3,3,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシン酸パーオキサイド、
【0136】
m−トルオイルベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−S−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、α,α'−ビス(ネオデ
カノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、t−ブチルパーオキシネオデカノエート
、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパー
オキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキ
シルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエー
ト、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート
、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオ
キシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−m−トルイルベンゾエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシアセテート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソ
フタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルトリメチ
ルシリルパーオキサイド、
【0137】
3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,3
−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンなどの、有機過酸化物、または、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン−
1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレ
ロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−フェニル
アゾ−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチ
ルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2−アゾビス(2−メチル−N−フェニルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[N−(4−クロロフェ
ニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[N−
(4−ヒドロフェニル)−2−メチルプロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2'
−アゾビス[2−メチル−N−(2−プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[N−(2−ヒドロキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジ
ン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(フェニルメチル)プロ
ピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2
−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−
2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(5−メチル−2−
イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス{2−[1
−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン}ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(4,5,6,7−テトラヒドロ−1H−1,3−ジアゼ
ピン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(3,4,5
,6−テトラヒドロピリミジンー2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−ア
ゾビス[2−(5−ヒドロキシ−3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミド)、
【0138】
2,2'−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、
2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒド
ロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−
ビス(ヒドロキシメチル)エチル]プロピオンアミド}、2,2'−アゾビス(2−メチ
ルプロパン)、2,2'−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、ジメチル2,
2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2'−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]などの、アゾ
化合物などが挙げられる。
【0139】
前記硬化性官能基がエポキシ基である場合の重合開始剤としては、メラミン、イミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタシルイミダゾ
ール、2−エチル−4−エチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4−ジアミノ−6−〔2'−メチルイ
ミダゾリル−(1')〕−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノー6−〔2'−ウンデシルイミダゾリル−(1')〕−エチル−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−〔
2'−エチル−4'−イミダゾリル−(1')〕−エチル−S−トリアジン、2,4−ジア
ミノ−6−〔2'−メチルイミダゾリル−(1')〕−エチル−S−トリアジン イソシアヌル酸付加物、2−フェニルイミダゾール イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾール イソシアヌル酸付加物、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2,3−ジヒドロ−1H−ピロロ〔1,2−a〕ベンズイミダゾール、4,4'−メチレンビス(2−エチル
−5−メチルイミダゾール)、1−ドデシル−2−メチル−3−ベンジルイミダゾリウムクロライドなどの、イミダゾール類や、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7、及びそのフェノール塩、オクチル塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、オルソフタル酸塩、またはフェノールノボラック樹脂塩、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5、及びそのフェノールノボラック樹脂塩などの、有機強塩基類及びその塩、4級ホスホニウムブロマイド、芳香族ジメチルウレア、脂肪族ジメチルウレアなどの、ウレア類などのアニオン系開始剤、トリフェニルシラノールなどのシラノール系のカチオン触媒や、アルミニウムトリス(アセチルアセトン)などのアルミキレート系触媒などを挙げることができる。
【0140】
また、前記活性エネルギー線は、前記シルセスキオキサン骨格含有化合物の硬化性官能基に作用して、前記シルセスキオキサン骨格含有化合物または硬化性組成物を硬化させるものであれば特に限定されない。例えば、紫外線、X線等の放射線、電子線を挙げることができる。これらの中では紫外線や電子線を好適に使用できる。例えば、活性エネルギー線として電子線を用い、前記硬化性官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基である場合、重合開始剤が無くても前記シルセスキオキサン骨格含有化合物を硬化させることができる。前記シルセスキオキサン骨格含有化合物を硬化させる場合、前記活性エネルギー線と前記硬化性官能基との組み合わせによって、必要に応じて重合開始剤を添加することが望ましい。
【0141】
前記硬化性官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基である場合、あるいは前記硬化性官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基であり、ポリチオール化合物を硬化性組成物に含有させる場合、ラジカル重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−トリクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−シクロヘキシルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−フェニル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などの、アセトフェノン系光ラジカル重合開始剤や、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルメチルケタールなどの、ベンゾイン系光ラジカル重合開始剤や、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン
、アクリル化ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド、
3,3'−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、4,4'−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどの、ベンゾフェノン系光ラジカル重合開始剤や、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントンなどの、チオキサントン系光ラジカル重合開始剤、α−アシロキシムエステル、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、ジベンゾスベロン、2−エチルアントラキノン、4´,4´´−ジエチルイソフタロフェノンなどの、ケトン系光ラジカル重合開始剤や、2,2´−ビス(2−クロロフェニル)−4,4´,5,5´−テトラフェニル−1,2´−イミダゾールなどの、イミダゾール系光ラジカル重合開始剤や、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドなどのアシルホスフィンオキサイド系光ラジカル重合開始剤や、カルバゾール系光ラジカル重合開始剤や、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート、トリフェニルホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、p−(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、4−クロルフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、(2,4−シクロペンタジエン−1−イル)[(1−メチルエチル)ベンゼン]−鉄−ヘキサフルオロホスフェートなどの、ルイス酸のオニウム塩などの光ラジカル重合開始剤が挙げられる。
【0142】
前記硬化性官能基がエポキシ基である場合や、硬化性官能基がエポキシ基であり、かつビニルエーテル基を有する化合物を硬化性組成物に含有させる場合には、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のスルホニウム塩系、またはヨードニウム塩系、ジアゾニウム塩系、アレン−イオン錯体系などの、光カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0143】
これらの重合開始剤は1種単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いることができ、ヒドロシリル化反応物100質量部に対し、0.01〜10質量部で用いることが好ましい。
【0144】
本発明の硬化性組成物においては、前記ヒドロシリル化反応物、前記重合開始剤、前記硬化剤の他に粘度調整剤、分散剤、表面調整剤などの添加剤を加えることができる。その場合には、その合計がヒドロシリル化反応物100質量部に対して、30質量部以下となるようにすることが好ましい。添加剤の量が多すぎると、本発明のヒドロシリル化反応物または硬化性組成物を用いて得られる微細パターンのエッチング性能が劣ってしまうおそれがある。
【0145】
また本発明のヒドロシリル化反応物または硬化性組成物には、塗布性向上のため必要に応じて溶媒等を添加することができる。希釈溶媒としては、前記ヒドロシリル化反応時に用いた溶媒をそのまま使用することも出来るし、反応溶媒を減圧下に留去した後、違う溶媒で希釈することも出来る。
【0146】
このような溶媒としては、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、トルエンおよびキシレンなどの芳香族炭化水素溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどのエステル系溶媒、2−プロパノール、ブタノールおよびヘキサノールプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール系溶媒等を挙げることができる。
【0147】
[転写層の製造方法]
本発明の転写層の製造方法は、凹凸パターンを有する転写層の製造方法であって、上述したヒドロシリル化反応物または硬化性組成物を基板上に塗布してヒドロシリル化反応物または転写材料用硬化性組成物の層(以下「転写材料用硬化性組成物層」とも記す。)を形成する工程(塗布工程)と、該転写材料用硬化性組成物層の表面に、凹凸パターンを有する型を押し付ける工程(転写工程)と、前記型を押し付けた状態で転写材料用硬化性組成物層を硬化させて、転写層を形成する工程(硬化工程)とを含むことを特徴としている。
【0148】
以下、各工程について説明する。
【0149】
<塗布工程>
上述したヒドロシリル化反応物または転写材料用硬化性組成物を基板上に塗布する方法に特に制限はなく、例えば、スピンコートやディップコートなどの方法を用いることができる。基板上の転写材料用硬化性組成物層の厚さが均一になる方法を用いることが好ましい。図1(a)は基板上にヒドロシリル化反応物または転写材料用硬化性組成物が塗布さ
れた状態を示している。なお「基板」とは、ガラス板などの基体上に、磁性膜を備えた基板である。前記基体上には、磁性膜に限らず、レジストを介してパターンが形成されるべき層が設けられている。
【0150】
<転写工程および硬化工程>
凹凸パターンは、転写材料用硬化性組成物層の表面に、凹凸パターンを有する型を押し付けること(転写)で形成することができる。転写材料用硬化性組成物層の表面に型を押し付けた状態で、該転写材料用硬化性組成物層を硬化させる。硬化方法としては、転写材料用硬化性組成物層に対する加熱または活性エネルギー線照射により行う方法が挙げられる。また、加熱および活性エネルギー線照射による両硬化方法を組み合わせ、加熱下で活性エネルギー線を照射することもできる。図1(b)および(c)は、基板上に塗布された上記転写材料用硬化性組成物層の表面に型を押し当て、活性エネルギー線照射および/または熱により該転写材料用硬化性組成物層を硬化させる工程の一例を示している。
【0151】
前記型の素材については特に制限はないが、活性エネルギー線が透過する樹脂、ガラスまたは石英製の型を使用することが好ましい。このような型を使用すると、紫外線等の活性エネルギー線が透過しない基板を使用した場合でも、前記活性エネルギー線照射を、前記型の側から前記転写材料用硬化性組成物層に向かって行うことにより、ヒドロシリル化反応物または硬化性組成物を硬化させることができる。基板が活性エネルギー線を透過させる透明基板などである場合には、前記活性エネルギー線照射を、前記透明基板の側から前記転写材料用硬化性組成物層に向かって行うことにより、ヒドロシリル化反応物または硬化性組成物を硬化することができる。
【0152】
また、前記型を押し付ける際、あるいはその後の加熱もしくは活性エネルギー線照射をする際の雰囲気に特に制限はないが、硬化した転写層中に気泡が残ることを防ぐために真空とすることが好ましい。また硬化性官能基が、(メタ)アクリロイルオキシ基、アリル基、ビニル基などの炭素−炭素二重結合である場合には、酸素による重合阻害を防ぐため、型の押し付けおよびその後の加熱もしくは活性エネルギー線照射を真空中で行うことが好ましい。
【0153】
<離型工程>
前記転写材料用硬化性組成物層を硬化させて、転写層を形成した後に、前記型を前記転写層から外す。前記型を外した後、パターンの耐熱性や物理強度を向上させるために加熱
することもできる。このとき、加熱の方法に特に制限はないが、形成したパターンが崩れないように前記転写層のガラス転移点以下の温度を保って徐々に昇温する。加熱の上限は、前記転写層の熱分解を防ぐため、250℃とすることが好ましい。
【0154】
上記工程により形成された凹凸パターンを有する転写層は、上述したヒドロシリル化反応物または転写材料用硬化性組成物を硬化させた凹凸パターンを有する転写層であるので、フッ素系ガスと酸素ガスとのエッチング速度の選択性が高い。そのため、該凹凸パターンを有する転写層は、エッチングに用いる酸素ガスに対して耐性が高いのでエッチングの度合いを容易に制御することができ、除去する際に用いられるフッ素系ガスに対しては耐性が低いので容易に除去される。従って、該凹凸パターンを有する転写層は、優れたレジストとなり、半導体や磁気記録媒体をはじめとした幅広い用途に適用可能である。
【0155】
[インプリント方法]
本発明のインプリント方法は、基体上に磁性膜を備えた基板上に、上述した転写層の製造方法により、凹凸パターンを有する転写層を形成する工程と、前記転写層に形成された凹凸の凹部をエッチングして、前記磁性膜表面を露出させる工程と、前記転写層をマスクとして用いて、前記磁性膜の一部を除去または前記磁性膜の一部を非磁性化する工程を含むことを特徴としている。
【0156】
前記凹凸パターンにおいて、型に刻み込んだ凹凸の線幅寸法(ピッチ)が10μm以下である、すなわち1つの凹部の線幅と1つの凸部の線幅との合計が10μm以下であることが好ましい。
【0157】
凹凸パターンを有する転写層を形成する工程については、上述したとおりである。その後の工程について以下に説明する。
【0158】
<底抜き>
前記転写層における凹凸の凹部分を、反応性イオンエッチング(RIE、イオンミリングともいう)によりエッチングし、磁性膜表面の一部を露出させる。図4に、この工程の概略を示す。
【0159】
<磁性膜の露出部除去加工もしくは非磁性化>
反応性イオンエッチングにより露出した磁性膜部分を、アルゴン等を用いてイオンミリングにより除去する、またはイオンビーム照射により非磁性化する。このとき、前記転写層は、イオンミリングおよびイオンビームに耐性を持たなければならない。図5に、この工程の概略を示す。なお、露出した磁性膜部分を非磁性化する方法としては、たとえば特開2007-273067号公報に記載されているような、磁性膜部分に、イオンビーム法などによ
りケイ素、ホウ素、フッ素、リン、タングステン、炭素、インジウム、ゲルマニウム、ビスマス、クリプトン、アルゴンなどの原子を注入し、磁性膜部分を非晶質化する方法が挙げられる。
【0160】
本発明のインプリント方法は、磁気記録媒体に適用することができる。より詳しくは、磁気記録媒体の磁性膜の露出部除去加工、もしくは非磁性化する方法(イオンビーム法)に適用することができる。上述した磁性膜の露出部除去加工もしくは非磁性化の後、前記転写層を除去することにより、磁気記録媒体が得られる。
【0161】
以上の方法により製造した磁気記録媒体を磁気記録再生装置に組み込むことにより、従来と同等以上の記録再生特性を確保しつつ、記録密度を大幅に増加した磁気記録再生装置を製造することができる。
【実施例】
【0162】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0163】
[実施例1]
温度計と冷却管とを取り付けた3口フラスコに、オクタキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン(東亞合成製:Q−2)3.0g(2.94mmol)、メタクリル酸アリル2.86g(22.7mmol)、オクタビニルシルセスキオキサン(アルドリッチ製:PSS−Octavinyl Substitued)0.5597g(0.88mmol)、およびトルエン40mlを加えて、Ar気流下、室温で撹拌した。2%ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体キシレン溶液(GELEST INC.製)0.0223g(白金金属の重量は原料仕込みの1000ppm)を少しずつ添加した。2時間室温で撹拌した後、未反応のメタクリル酸アリルと溶媒とを減圧で留去し、目的物を得た。原料の合計質量と得られた目的物の質量との差から3割のメタクリル酸アリルが未反応であることがわかった。得られた目的物中の篭状シルセスキオキサン骨格部分の割合は28.7質量%であった。
【0164】
得られた目的物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに、目的物濃度10質量%になるように溶解した。
【0165】
得られた溶液に光ラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(Darocure 1173 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(
株)社製)を目的物100質量部に対し、3質量部添加し溶解した後、0.2μmのフィ
ルターでろ過し、得られた硬化性組成物0.5mlをスピンコーター内にセットしたガラス基板上に滴下した。ガラス基板を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間回転させ、さらに5000rpmで20秒間回転させることによりガラス基板上に薄膜を形成した。窒素気流下、硬化性組成物を塗布したガラス基板に紫外線を照射した。得られた硬化薄膜のCF4ガスと酸素ガスとによる反応性イオンエッチング速度を、
以下に示す方法により測定した。当該測定結果を表1に示す。
【0166】
(エッチング速度測定方法)
硬化した薄膜上にガラス小片を貼り付け、以下の条件の反応性イオンエッチング装置でエッチング処理を実施した。ガラス小片を取り外し、ガラス小片に保護された薄膜部分とエッチングされた薄膜部分との段差を測定し、以下の式によりエッチング速度を算出した。
【0167】
エッチング速度(nm/sec)=段差(nm)÷処理時間(sec)
反応性イオンエッチングの条件
(フッ素系ガス)
エッチングガス : 四フッ化炭素
圧力 : 0.5Pa
ガス流量 : 40sccm
プラズマ電圧 : 200W
バイアス電圧 : 20W
処理時間 : 30sec
(酸素ガス)
エッチングガス : 酸素
圧力 : 0.5Pa
ガス流量 : 40sccm
プラズマ電圧 : 200W
バイアス電圧 : 20W
処理時間 : 600sec。
【0168】
[実施例2]
温度計と冷却管とを取り付けた3口フラスコに、オクタキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン(東亞合成製:Q−2)3.0g(2.94mmol)、メタクリル酸アリル2.86g(22.7mmol)、オクタビニルシルセスキオキサン(アルドリッチ製:PSS−Octavinyl Substitued)0.5597g(0.88mmol)、およびトルエン40mlを加えて、Ar気流下、室温で撹拌した。2%ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体キシレン溶液(GELEST INC.製)0.0223g(白金金属の重量は原料仕込みの1000ppm)を少しずつ添加した。2時間室温で撹拌した後、未反応のメタクリル酸アリルと溶媒とを減圧で留去し、目的物を得た。原料の合計質量と得られた目的物の質量との差から3割のメタクリル酸アリルが未反応であることがわかった。得られた目的物中の篭状シルセスキオキサン骨格部分の割合は28.7質量%であった。
【0169】
得られた目的物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに、目的物濃度5%になるように溶解した。
【0170】
得られた溶液に光ラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパンー1−オン(Darocure 1173 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(
株)社製)を目的物100質量部に対し、3質量部添加し溶解させた後、0.2μmのフ
ィルターでろ過し、得られた硬化性組成物0.5mlをスピンコーター内にセットしたガラス基板上に滴下した。ガラス基板を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間回転させ、さらに5000rpmで20秒間回転させることによりガラス基板上に薄膜を形成した。
【0171】
次に、前記硬化性組成物膜が形成されたガラス基板(円盤形状である)の硬化性組成物を塗布した面に、図2に示すような、半径方向に沿って凹凸形状がパターニングされた型(石英ガラス製の円板)を、パターニングされた面を下にして載せた。型の載った基板を、UVナノインプリントプレス装置ST200(東芝機械(株)社製)にセットしてプレスした。次に型の載った基板に波長365nm、強度6.5mWの紫外光を照射した。型の載った基板をプレス装置から取り出し、型をはずしてガラス基板上の被膜を観察したところ、パターンの抜けや塗膜のムラなどの塗膜の状態不良は見られなかった。パターンが転写された基板の断面SEM測定結果を図3に示す。また、ガラス基板上の被膜の表面の様子を、Optical Surface Analyzer(OSA)で観察した。結果を図6に示す。
【0172】
[参考例1]
温度計と冷却管とを取り付けた3口フラスコに、オクタキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン(東亞合成製:Q−2)1.0g(0.98mmol)、メタクリル酸アリル1.98g(15.7mmol)、およびトルエン30mlを加えて、Ar気流下、室温で撹拌した。2%ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体キシレン溶液(GELEST INC.製)0.093g(白金金属の重量は原料仕込みの1000ppm)を少しずつ添加した。2時間室温で撹拌した後、未反応のメタクリル酸アリルと溶媒とを減圧で留去し、生成物を得た。得られた生成物中の篭状シルセスキオキサン骨格部分の割合は、20.6質量%であった。
【0173】
得られた生成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに、生成物濃度10質量%になるように溶解した。
【0174】
得られた溶液に光ラジカル重合開始剤2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(Darocure 1173 チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(
株)社製)を生成物100質量部に対し、3質量部添加し溶解させた後、0.2μmのフ
ィルターでろ過し、得られた硬化性組成物0.5mlをスピンコーター内にセットしたガラス基板上に滴下した。ガラス基板を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間回転させ、さらに5000rpmで20秒間回転させることによりガラス基板上に薄膜を形成した。窒素気流下、硬化性組成物を塗布したガラス基板に紫外線を照射した。得られた硬化薄膜のCF4ガスと酸素ガスとによる反応性イオンエッチング速度を
実施例1同様にして測定した。当該測定結果を表1に示す。また、実施例2と同様にして、ガラス基板上の被膜の表面の様子を、Optical Surface Analyzer(OSA)で観察した。結果を図7に示す。
【0175】
[実施例1〜2と、参考例1との対比]
実施例1および参考例1における硬化性組成物は共に、酸素ガスによるエッチング速度が遅く、酸素エッチング耐性が高いことがわかった。また、実施例1および参考例1における硬化性組成物は共に、CF4ガスによるエッチング速度が速く、容易にCF4ガスによるエッチングで剥離できることがわかった。特に、加工において重要である酸素エッチング耐性に関して、実施例1における硬化性組成物の方が、参考例1における硬化性組成物に比べて、顕著に酸素エッチング耐性を有していることがわかった。以上より、実施例1における硬化性組成物は、レジスト材料として非常に好適に用いることができることがわかった。
【0176】
また、ガラス基板上の被膜の表面の様子を、Optical Surface Analyzer(OSA)で観察したところ、参考例1における硬化性組成物ではUVナノインプリントに用いられる射出成型樹脂スタンパーおよびフィルムスタンパーの微細なムラやパターン以外の微小な凹凸などを転写してしまい、平滑ではなかった(図7参照)。これに対して実施例2における硬化性組成物では射出成型樹脂スタンパーおよびフィルムスタンパーの微細なムラやパターン以外の微小な凹凸などは見られなかった(図6参照)。つまり、実施例2における硬化性組成物を用いることで、UVナノインプリントに用いられる射出成型樹脂スタンパーおよびフィルムスタンパーの微細なムラやパターン以外の微小な凹凸などの転写を抑えることができることが示唆された。
【0177】
[実施例3]
温度計と冷却管とを取り付けた3口フラスコに、オクタキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン(東亞合成製:Q−2)1.0g(0.98mmol)、アリルグリシジルエーテル0.86g(7.56mmol)、オクタビニルシルセスキオキサン(アルドリッチ製:PSS−Octavinyl Substitued)0.19g(0.29mmol)、およびトルエン10mlを加えて、Ar気流下、室温で撹拌した。2%ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体キシレン溶液(GELEST INC.製)0.011g(白金金属の重量:2.2×10-4g)を少しずつ添加した。2時間室温で撹拌した後、未反応のアリルグリシジルエーテルと溶媒とを減圧で留去し、目的物を得た。原料の合計質量と得られた目的物の質量との差から3割のアリルグリシジルエーテルが未反応であることがわかった。得られた目的物中の篭状シルセスキオキサン骨格部分の割合は26.0質量%であった。
【0178】
得られた目的物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに、目的物濃度10質量%になるように溶解した。
【0179】
得られた溶液に光カチオン重合開始剤ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スル
ホニウムヘキサフルオロアンチモネート(CPI−101A サンアアプロ(株)社製)を目的物100質量部に対し、3質量部添加し溶解した後、0.2μmのフィルターでろ過し、得られた硬化性組成物0.5mlをスピンコーター内にセットしたガラス基板上に滴下した。ガラス基板を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間回転させ、さらに5000rpmで20秒間回転させることによりガラス基板上に薄膜を形成した。窒素気流下、硬化性組成物を塗布したガラス基板に紫外線を照射した。得られた硬化薄膜のCF4ガスと酸素ガスとによる反応性イオンエッチング速度を、以下に示す
方法により測定した。当該測定結果を表1に示す。
【0180】
(エッチング速度測定方法)
硬化した薄膜上にガラス小片を貼り付け、以下の条件の反応性イオンエッチング装置でエッチング処理を実施した。ガラス小片を取り外し、ガラス小片に保護された薄膜部分とエッチングされた薄膜部分との段差を測定し、以下の式によりエッチング速度を算出した。
【0181】
エッチング速度(nm/sec)=段差(nm)÷処理時間(sec)
反応性イオンエッチングの条件
(フッ素系ガス)
エッチングガス : 四フッ化炭素
圧力 : 0.5Pa
ガス流量 : 40sccm
プラズマ電圧 : 200W
バイアス電圧 : 20W
処理時間 : 30sec
(酸素ガス)
エッチングガス : 酸素
圧力 : 0.5Pa
ガス流量 : 40sccm
プラズマ電圧 : 200W
バイアス電圧 : 20W
処理時間 : 600sec。
【0182】
[実施例4]
温度計と冷却管とを取り付けた3口フラスコに、オクタキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン(東亞合成製:Q−2)1.0g(0.98mmol)、アリルグリシジルエーテル0.86g(7.56mmol)、オクタビニルシルセスキオキサン(アルドリッチ製:PSS−Octavinyl Substitued)0.19g(0.29mmol)、およびトルエン10mlを加えて、Ar気流下、室温で撹拌した。2%ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体キシレン溶液(GELEST INC.製)0.011g(白金金属の重量:2.2×10-4g)を少しずつ添加した。2時間室温で撹拌した後、未反応のアリルグリシジルエーテルと溶媒とを減圧で留去し、目的物を得た。原料の合計質量と得られた目的物の質量との差から3割のアリルグリシジルエーテルが未反応であることがわかった。得られた目的物中の篭状シルセスキオキサン骨格部分の割合は26.0質量%であった。
【0183】
得られた目的物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに、目的物濃度5%になるように溶解した。
【0184】
得られた溶液に光カチオン重合開始剤ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(CPI−101A サンアアプロ(株)社製)
を目的物100質量部に対し、3質量部添加し溶解させた後、0.2μmのフィルターでろ過し、得られた硬化性組成物0.5mlをスピンコーター内にセットしたガラス基板上に滴下した。ガラス基板を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間回転させ、さらに5000rpmで20秒間回転させることによりガラス基板上に薄膜を形成した。
【0185】
次に、前記硬化性組成物膜が形成されたガラス基板(円盤形状である)の硬化性組成物を塗布した面に、図2に示すような、半径方向に沿って凹凸形状がパターニングされた型(石英ガラス製の円板)を、パターニングされた面を下にして載せた。型の載った基板を、UVナノインプリントプレス装置ST200(東芝機械(株)社製)にセットしてプレスした。次に型の載った基板に波長365nm、強度6.5mWの紫外光を照射した。型の載った基板をプレス装置から取り出し、型をはずしてガラス基板上の被膜を観察したところ、パターンの抜けや塗膜のムラなどの塗膜の状態不良は見られなかった。パターンが転写された基板の断面SEM測定結果を図8に示す。また、ガラス基板上の被膜の表面の様子を、Optical Surface Analyzer(OSA)で観察した。結果を図9に示す。
【0186】
[参考例2]
温度計と冷却管とを取り付けた3口フラスコに、オクタキス(ジメチルシリルオキシ)シルセスキオキサン(東亞合成製:Q−2)1.0g(0.98mmol)、アリルグリシジルエーテル1.79g(15.7mmol)、およびトルエン10mlを加えて、Ar気流下、室温で撹拌した。2%ジビニルテトラメチルジシロキサン白金錯体キシレン溶液(GELEST INC.製)0.011g(白金金属の重量:2.2×10-4)を少しずつ添加した。2時間室温で撹拌した後、未反応のアリルグリシジルエーテルと溶媒とを減圧で留去し、生成物を得た。得られた生成物中の篭状シルセスキオキサン骨格部分の割合は、21.6質量%であった。
【0187】
得られた生成物をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートに、生成物濃度10質量%になるように溶解した。
【0188】
得られた溶液に光カチオン重合開始剤ジフェニル[4−(フェニルチオ)フェニル]スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート(CPI−101A サンアアプロ(株) 社
製)を生成物100質量部に対し、3質量部添加し溶解させた後、0.2μmのフィルターでろ過し、得られた硬化性組成物0.5mlをスピンコーター内にセットしたガラス基板上に滴下した。ガラス基板を500rpmで5秒間回転させ、次いで3000rpmで2秒間回転させ、さらに5000rpmで20秒間回転させることによりガラス基板上に薄膜を形成した。窒素気流下、硬化性組成物を塗布したガラス基板に紫外線を照射した。得られた硬化薄膜のCF4ガスと酸素ガスとによる反応性イオンエッチング速度を実施例
3同様にして測定した。当該測定結果を表1に示す。
【0189】
また、実施例4と同様にしてガラス基板上の被膜の表面の様子を、Optical Surface Analyzer(OSA)で観察した。結果を図10に示す。
【0190】
【表1】

【0191】
[実施例3〜4と、参考例2との対比]
実施例3および参考例2における硬化性組成物は共に、酸素ガスによるエッチング速度が遅く、酸素エッチング耐性が高いことがわかった。また、実施例3および参考例2における硬化性組成物は共に、CF4ガスによるエッチング速度が速く、容易にCF4ガスによるエッチングで剥離できることがわかった。特に、加工において重要である酸素エッチング耐性に関して、実施例3における硬化性組成物の方が、参考例2における硬化性組成物に比べて、顕著に酸素エッチング耐性を有していることがわかった。以上より、実施例3における硬化性組成物は、レジスト材料として非常に好適に用いることができることがわかった。
【0192】
また、ガラス基板上の被膜の表面の様子を、Optical Surface Analyzer(OSA)で観察したところ、参考例2における硬化性組成物ではUVナノインプリントに用いられる射出成型樹脂スタンパーおよびフィルムスタンパーの微細なムラやパターン以外の微小な凹凸などを転写してしまい、平滑ではなかった(図10参照)。これに対して実施例4における硬化性組成物では射出成型樹脂スタンパーおよびフィルムスタンパーの微細なムラやパターン以外の微小な凹凸などは見られなかった(図9参照)。つまり、実施例4における硬化性組成物を用いることで、UVナノインプリントに用いられる射出成型樹脂スタンパーおよびフィルムスタンパーの微細なムラやパターン以外の微小な凹凸などの転写を抑えることができることが示唆された。
【符号の説明】
【0193】
12 型
14 本発明の転写材料用硬化性組成物からなる塗膜
16 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表されるSi−H結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(A)と、
硬化性官能基及び該硬化性官能基以外の炭素−炭素不飽和結合含有基を有する化合物(B)と、
以下の式(2)で表される炭素−炭素不飽和結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(C)とを反応させて得られることを特徴とするヒドロシリル化反応物。
【化1】

(式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基
または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、Yは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、8つのYのうち、少なくとも1つは、水素原子である。)
【化2】

(式(2)中、それぞれ独立にR1は、-OSiR23Z、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2を示し、8つのR1のうち、少なくとも1つは、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2であり、Zは、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水
素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。)
【請求項2】
以下の(x)に示す篭状シルセスキオキサン骨格部分の割合が、15〜45質量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のヒドロシリル化反応物。
【化3】

【請求項3】
前記化合物(B)が有する硬化性官能基が、活性エネルギー線硬化性官能基である請求
項1または2に記載のヒドロシリル化反応物。
【請求項4】
前記活性エネルギー線硬化性官能基が、(メタ)アクリロイルオキシ基またはエポキシ基である請求項3に記載のヒドロシリル化反応物。
【請求項5】
前記化合物(B)が、以下に示す化合物(a)、化合物(b)および化合物(c)からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のヒドロシリル化反応物;
【化4】

(上記化合物(a)〜(c)において、R4−は下記(i)〜(iv)式のいずれかで表される基であり、R5は水素原子またはメチル基である。)
【化5】

(上記(i)式中、R6は水素原子またはメチル基であり、上記(ii)式中、R7は水素原
子またはメチル基であり、上記(iii)式中、R8は水素原子またはメチル基であり、R9
は炭素原子数が2〜8のアルキレン基である)。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一に記載のヒドロシリル化反応物と、重合開始剤または硬化剤とを含む転写材料用硬化性組成物。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一に記載のヒドロシリル化反応物が有する硬化性官能基がエポキシ基であり、前記硬化剤が酸無水物である請求項6に記載の転写材料用硬化性組成物。
【請求項8】
さらにポリチオール化合物を含み、請求項1〜5のいずれか一に記載のヒドロシリル化反応物が有する硬化性官能基が(メタ)アクリロイルオキシ基である請求項6に記載の転写材料用硬化性組成物。
【請求項9】
さらにビニルエーテル基を有する化合物を含み、請求項1〜5のいずれか一に記載のヒドロシリル化反応物が有する硬化性官能基がエポキシ基である請求項6に記載の転写材料用硬化性組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のヒドロシリル化反応物の製造方法であって、
以下の式(1)で表されるSi−H結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(A)と、
硬化性官能基及び該硬化性官能基以外の炭素−炭素不飽和結合含有基を有する化合物(B)と、
以下の式(2)で表される炭素−炭素不飽和結合含有基を有する篭状シルセスキオキサン化合物(C)とを混合して、ヒドロシリル化反応させる工程を含むことを特徴とするヒドロシリル化反応物の製造方法。
【化6】

(式(1)中、R2およびR3は、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基
または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、Yは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、8つのYのうち、少なくとも1つは、水素原子である。)
【化7】

(式(2)中、それぞれ独立にR1は、-OSiR23Z、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2を示し、8つのR1のうち、少なくとも1つは、-OSiR23CH=CH2または-CH=CH2であり、Zは、それぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水
素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表し、R2およびR3はそれぞれ独立に炭素原子数1〜10の脂肪族炭化水素基または炭素原子数6〜14の芳香族炭化水素基を表す。)
【請求項11】
前記化合物(A)が有するSi−H結合の平均モル数をAとし、前記化合物(B)および前記化合物(C)が有する炭素−炭素不飽和結合の平均モル数を順にBおよびCとした場合、
A/(B+C)が1/1〜1/10の範囲にあり、かつB/Cが1〜79の範囲にある請求項10に記載のヒドロシリル化反応物の製造方法。
【請求項12】
凹凸パターンを有する転写層の製造方法であって、
請求項1〜5のいずれか一に記載のヒドロシリル化反応物または請求項6〜9のいずれか一に記載の転写材料用硬化性組成物を基板上に塗布して転写材料用硬化性組成物層を形成する工程と、
該転写材料用硬化性組成物層の表面に、凹凸パターンを有する型を押し付ける工程と、
前記型を押し付けた状態で転写材料用硬化性組成物層を硬化させて、転写層を形成する工程とを含むことを特徴とする転写層の製造方法。
【請求項13】
前記転写材料用硬化性組成物層を硬化する工程を、転写材料用硬化性組成物層に対する加熱および/または活性エネルギー線照射により行うことを特徴とする請求項12に記載
の転写層の製造方法。
【請求項14】
基体上に磁性膜を備えた基板上に、請求項12または13に記載の転写層の製造方法に
より、凹凸パターンを有する転写層を形成する工程と、
前記転写層に形成された凹凸の凹部をエッチングして、前記磁性膜表面の一部を露出させる工程と、
前記転写層をマスクとして用いて、前記磁性膜の露出部を除去または前記磁性膜の露出部を非磁性化する工程とを、この順序で含むことを特徴とするインプリント方法。
【請求項15】
請求項14に記載のインプリント方法で得られる磁気記録媒体。
【請求項16】
請求項15に記載の磁気記録媒体を備えた磁気記録再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−31254(P2010−31254A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−147800(P2009−147800)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】