説明

フィルタ用弁体及びそれを用いたオイルフィルタ

【課題】逆止弁、逃がし弁及びドレン弁を備え、部品点数が少なく簡単な構造を備えるフィルタ用弁体及びそれを用いたオイルフィルタを提供することを課題とする。
【解決手段】本オイルフィルタ1は、フィルタ用弁体2、フィルタエレメント3、仕切部材4、ケーシング5、基部6及びエレメント固定部材7を備える。フィルタ用弁体2は仕切部材の一端面側の開口部42に挿入され且つ弾性変形して開口部の内壁と接触する筒状の圧力逃がし弁部21と、内周側が圧力逃がし弁部と接続され且つドレン口63を覆うように設けられている環状のドレン弁部22と、内周側がドレン弁部と接続され、流入口61を覆うように設けられ、且つ弾性変形によって外周部が湾曲可能な環状の逆止弁部23と、から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、逆止弁、圧力逃がし弁及びドレン弁を備え、部品点数が少なく簡単な構造を備えるフィルタ用弁体及びそれを用いたオイルフィルタに関する。本フィルタ用弁体及びそれを用いたオイルフィルタは、内燃機関、特に自動車等のエンジン用オイルフィルタに適用することができる。
【背景技術】
【0002】
自動車等のエンジン内の潤滑回路等に設けられるオイルフィルタは、エンジン停止時等にオイルが逆流することがあるため、逆止弁が必要である。また、フィルタエレメントに対して異常な高圧力が掛かってフィルタエレメントが破損しないようにするための、圧力逃がし弁が必要である。
更に、フィルタエレメントが交換可能なオイルフィルタにおいては、フィルタエレメントを交換するためにケーシングを取り外す際、オイルがオイルフィルタ外に流出して周囲を汚すことがない構造を備えるのが望まれている。このような構造として各種構造が提案されている(例えば、特許文献1〜4を参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−6575号公報
【特許文献2】特開平11−104410号公報
【特許文献3】特開平11−137917号公報
【特許文献4】特開平2006−82010号公報
【0004】
特許文献1においては、エンジン停止時にフィルタ内オイルの逆流を防ぎ、回路内にオイルを保持する機能を有するチェックバルブと、高圧力発生時にフィルタエレメントを保護する圧力逃がし弁を一体に具備する。しかし、ケーシングを取り外すときのオイル流出については検討されていない。
特許文献2においては、フィルタエレメントを取り外した際にセンターパイプが移動することによってドレン回路が開通し、オイルフィルタ内部に溜まったオイルをエンジンオイルパンに排出する機構を備えている。しかし、フィルタエレメントに長いセンターパイプが設けられるため、分離したフィルタエレメントの取扱いが難しい。
特許文献3においては、フィルタエレメントを取り外した際にフィルタエレメントによって閉塞していた弁体が開放されてドレン回路が開通し、オイルフィルタ内部に溜まったオイルをエンジンオイルパンに排出する機構を備えている。しかし、ドレン回路の弁体がオイルフィルタの基部側に設けられている等、ドレン回路のために部品点数が増え、複雑な構造を備える。
特許文献4においては、エレメントを交換可能なオイルフィルタにおいてエレメント下端面に配置された封止機構を有する突起がエレメントを取り外すときに封止面から離脱し、ドレン回路が開通し、フィルタ内部に溜まったオイルをエンジンオイルパンに排出する機構を備えている。しかし、突起が独立して設けられている等、ドレン回路のために部品点数が増え、複雑な構造を備える。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであって、逆止弁、圧力逃がし弁及びドレン弁を備え、部品点数が少なく簡単な構造を備えるフィルタ用弁体及びそれを用いたオイルフィルタを提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.フィルタエレメントを支持する筒状の支持部材と、基部の底面部との間に挟持されるように設けられるフィルタ用弁体であって、上記基部は、該底面部の周囲に設けられる周壁部、該底面部の中心部に設けられる流出口、該底面部であり且つ該流出口の外周側に設けられているドレン口、及び該底面部であり且つ該ドレン口の外周側に設けられている流入口を具備し、上記フィルタ用弁体は、該支持部材の一端面側の開口部に挿入され且つ弾性変形して該開口部の内壁と接触する筒状の圧力逃がし弁部と、内周側が該圧力逃がし弁部と接続され且つ該ドレン口を覆うように設けられている環状のドレン弁部と、内周側が該ドレン弁部と接続され、該流入口を覆うように設けられ、且つ弾性変形によって外周部が湾曲可能な環状の逆止弁部と、から一体に形成されてなることを特徴とするフィルタ用弁体。
2.上記フィルタ用弁体は、孔が形成された円板状体であり、該圧力逃がし弁部は該円板状体の一面側へ突出し且つ該孔周辺に位置し、該逆止弁部は該円板状体の他面側に湾曲する上記1.記載のフィルタ用弁体。
3.上記ドレン弁部及び上記逆止弁部の間に該ドレン弁部及び該逆止弁部を区画する突起が周設されている上記1.又は上記2.に記載のフィルタ用弁体。
4.底面部、該底面部の周囲に設けられる周壁部、該底面部の中心部に設けられる流出口、該底面部であり且つ該流出口の外周側に設けられているドレン口、及び該底面部であり且つ該ドレン口の外周側に設けられている流入口を具備する基部と、該周壁部と係合して該底面部を覆うケーシングと、該ドレン口及び該ケーシング内に格納されるフィルタエレメントと、該フィルタエレメントの支持部材と、該支持部材及び該底面部の間に挟持されるフィルタ用弁体とを備え、
上記フィルタ用弁体は、孔が形成された円板状体であり、該支持部材の一端面側の開口部に挿入され且つ弾性変形して該開口部の内壁と接触する筒状の圧力逃がし弁部と、
内周側が該圧力逃がし弁部と接続され且つ該ドレン口を覆うように設けられている環状のドレン弁部と、
内周側が該ドレン弁部と接続され、該流入口を覆うように設けられ、且つ弾性変形によって外周部が湾曲可能な環状の逆止弁部と、から一体に形成されてなることを特徴とするオイルフィルタ。
5.上記基部は、流入口及びドレン口間に段差又は突起を有する上記4.記載のオイルフィルタ。
6.上記ドレン弁部及び上記逆止弁部の間に該ドレン弁部及び該逆止弁部を区画する突起が周設されている上記4.又は5に記載のフィルタ用弁体。
7.上記支持部材は、上記ドレン弁部を介して上記ドレン口を全周にわたって押圧可能なつば部が設けられている上記4.乃至上記6.のいずれかに記載のフィルタ用弁体。
【発明の効果】
【0007】
本フィルタ用弁体によれば、逆止弁部、圧力逃がし弁部及びドレン弁部とから構成されるため、弁体の部品点数を少なくすることができる。また、このフィルタ用弁体を用いたオイルフィルタの製造工程を簡略化することができるため、扱いやすく且つ安価なオイルフィルタを製造することができる。
孔が形成された円板状体であり、圧力逃がし弁部が一面側へ突出し、逆止弁部が他端面側に湾曲する場合は、支持部材に容易に挿着することができるため、取り扱いを容易にすることができる。
ドレン弁部が、支持部材の一端面を覆うように接して設けられている場合は、該一端面及び基部の間にドレン弁部を挟持することができ、ドレン口をより強固に閉塞することができるため、通常使用時におけるドレン口を介したオイル漏れを抑制することができる。
ドレン弁部及び逆止弁部の間に区画する突起が周設されている場合は、該突起が基部に押圧されることによってドレン弁部及び逆止弁部間がよりオイル漏れが起きにくいように区画することができる。
支持部材につば部が設けられている場合は、つば部と基部の間にドレン弁部を挟持することでドレン口を押圧して、より確実に閉塞することができるため、通常使用時におけるドレン口を介したオイル漏れを抑制することができる。
【0008】
本発明のオイルフィルタによれば、ケーシングを基部から取り外す途中でドレン弁部がドレン口から離れてドレン回路が開通し、オイルがドレン回路を介してオイルフィルタ外に排出されるため、ドレンから確実に排出することができる。また、ケーシングと基部との間から漏れることなく、ドレン口から排出することができる。更に、フィルタ用弁体の部品点数を少なくすることができ、オイルフィルタの製造工程を簡略化することができるため、扱いやすく且つ安価なオイルフィルタを製造することができる。
ドレン弁部が、一端面及び基部の間に挟持されている場合は、ドレン弁部をより強固に閉塞することができるため、通常使用時におけるドレン口を介したオイル漏れを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明のフィルタ用弁体及びそれを用いたオイルフィルタを詳細に説明する。
本オイルフィルタ1は、例えば図1に例示するように、底面部に流入口61、流出口62及びドレン口63を具備する基部6と、基部6に嵌合され且つ流入口61、流出口62及びドレン口63を覆うように設けられるケーシング5と、ケーシング5内に設けられる筒状のフィルタエレメント3と、フィルタエレメント3の内周側に嵌着され、且つその一端面に設けられた開口部42を流入口61に被せるように配置される筒状の支持部材4と、支持部材4及び基部6間に挟持されるフィルタ用弁体2と、支持部材4を基部6側へ押圧するエレメント固定部材7と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記「基部6」は、通常樹脂又は金属等で形成され、エンジン等の本体に固定される。
上記「流入口61」、上記「流出口62」及び上記「ドレン口63」は、基部6の同一面に設けられる開口部である。尚、該「同一面」は段差の有無は問わず、平面及び曲面のいずれであってもよい。
流入口61は、オイルがオイルフィルタ1内に流入するための開口部であり、オイルポンプ等のオイル供給源からのオイル経路に接続される。また、流入口61は、基部6の外周側に任意の数だけ基部6の中心部を中心として周設される。
流出口62は、オイルがオイルフィルタ1内から流出するための開口部であり、オイル供給先へのオイル経路に接続される。また、流出口62は、基部6の中心部に任意の数だけ設けられる。更に、ハウジング内に突出するように筒部を形成してもよい。
ドレン口63は、ケーシング5を基部6から外してフィルタエレメント3を脱着する際に、オイルフィルタ1内からオイルを排出するための開口部であり、エンジンのオイルパン等のオイル排出先への排出路に接続される。また、ドレン口63は、基部6の中心部に位置する流出口62と、外周に位置する流入口61との間に位置するように設けられる。
また、流入口61及びドレン口63間の基部6は、図1に例示するように段差64を形成してもよい。段差64を形成した場合は、オイルの流入に伴って逆止弁部23が弾性変形してもドレン弁部22に応力が伝わりにくくなるため、ドレン弁部22が弾性変形してドレン口63が開口することを抑制することができる。更に、流入口61及びドレン口63間の基部6に、図9に例示するように突起65を形成してもよい。突起65によって段差64と同様に逆止弁部23が弾性変形してもドレン弁部22に応力が伝わりにくくなるため、ドレン弁部22が弾性変形してドレン口63が開口することを抑制することができる。
【0011】
上記「ケーシング5」は、通常樹脂又は金属等で形成されており、基部6の内周に設けられた雌ねじに螺合される雄ねじを有し、両者を螺合することでと組み合わせることによってフィルタ用弁体2、フィルタエレメント3、支持部材4及びエレメント固定部材7を納める。
上記「フィルタエレメント3」は、外周側から中心軸部へオイルを通過させることによって濾過するための部材であり、材質及び構造を特に限定しない。また、フィルタエレメント3は筒状体であるが、外周側と内周側の形状が相似であってもよいし異なっていてもよい。また、中心軸部の一端面が開口していればよく、他端面は開口してもよいし、閉じていてもよい。
【0012】
上記「支持部材4」は、フィルタエレメント3を支持するための部材であり、材質を特に限定しない。支持部材4は、フィルタエレメント3の中心軸部に挿入可能な形状である。また、フィルタエレメント3と接触する面は、複数の孔が設けられることによってフィルタエレメント3を通過したオイルが支持部材4の内周側に流入する構造を備える。更に、支持部材4の圧力逃がし弁部21を挿着する一端側には逃がし孔43を備え、流入口61から高圧のオイルが流入したときに圧力逃がし弁部21を介して流出口62へ排出することができる。
上記「エレメント固定部材7」は、バネ及び多孔質体等からなる弾性体であり、一端が支持部材4に取り付けられ、他端がケーシング5に取り付けられることによって、支持部材4を基部6側に押圧し、フィルタ用弁体2、支持部材4及び基部6間の液密性を維持するための部材である。また、エレメント固定部材7は支持部材4の他端面(図1を参照。)の他、支持部材4の任意の位置に設けることができる。更に、エレメント固定部材7は支持部材4と一体に形成されていてもよい。
【0013】
本フィルタ用弁体2は、例えば図1〜3に示すように環状であり、中心側から圧力逃がし弁部21と、ドレン弁部22と、逆止弁部23とが環状に一体に形成されてなることを特徴とする。
また、圧力逃がし弁部21は筒状であり、支持部材4の一端面側41の筒部である開口部42に挿入され且つ弾性変形によって該開口部42の内壁と接触する。ドレン弁部22は、内周側が圧力逃がし弁部21と接続され且つ基部6のドレン口63を覆うように設けられている。逆止弁部23は、内周側がドレン弁部22と接続され、流入口21を覆うように設けられている。
本フィルタ用弁体は、弾性変形によって外周部が湾曲可能な樹脂又はエラストマー等の弾性体からなる。また、フィルタ用弁体は、例えば図2に示すように、中央部の圧力逃がし弁部21の周りに、ドレン弁部22及び逆止弁部23がこの順に周設された形状を備え、一体成形により作製される。また、フィルタ用弁体は、板状体、特に圧力逃がし弁部21が突出し、孔が形成された円板状体であることが好ましい。
【0014】
上記「圧力逃がし弁部21」は、目詰まり等の理由によってオイルフィルタを通過する流量が減少し、エンジンの破損等をもたらさないようにしたり、フィルタエレメントが目詰まり等を起こして、所望のオイルの通過が困難となり、フィルタハウジング内のオイルが所定の圧力を超えるとき、圧力を緩和するためにバイパスしてオイルを通過させたりするために設けられている。また、濾過するオイルの圧力がフィルタエレメント等のオイルフィルタの構成部品を著しく変形したりする恐れがある所定圧力を超えないようにするために設けられる弁である。例えば図6に示すように、流入口61から流入するオイルの圧力が所定圧力を超える場合、オイルの圧力によって支持部材4に設けられた口部を通過して逃がし弁部を中心側に弾性変形することによって、圧力逃がし弁部21及び支持部材4の間に隙間を形成し、その隙間を介してオイルを低圧側の流出口62へ流出させることによってフィルタハウジング内部の圧力が高まらないようにすることができる。
また、例えば図5に示すように、圧力逃がし弁部21が支持部材4の開口部42の内壁と接触するように配設されるため、フィルタ用弁体2は、圧力逃がし弁部21及び開口部42の内壁間の摩擦によって支持部材4と共に基部6から脱着することができる。
【0015】
上記「ドレン弁部22」は、オイルフィルタを使用している間は基部6に設けられるドレン口63を覆うことによってドレン口63へのオイルの侵入を阻止する。また、フィルタエレメント3を基部6から取り外すときに、フィルタ用弁体2は支持部材4と共にドレン口63から離れるため、オイルフィルタ中のオイルはドレン口63から所定の外部に排出され、オイルがオイルフィルタから意図しない流出を起こすことを抑制することができる。
【0016】
上記「逆止弁部23」は、基部6の流入口61からオイルの流入がないときに、オイルフィルタ内のオイルが流入口61から流出しないように設けられている弁である。また、逆止弁部23は外周側が薄くなるように形成された環状の弾性体であるため、例えば図4に例示するように外周側が弾性変形してフィルタハウジング内に湾曲し、オイルフィルタ内にオイルが流入するために必要な隙間を形成することができる。
更に、流入口61からオイルが流入しない場合は、逆止弁部23自体の弾性及びオイルフィルタ内のオイルの圧力によって、流入口61の周縁に押しつけられるようにすることで流入口61を塞ぎ、オイルが逆流することを抑制することができる。
【0017】
尚、ドレン弁部22は、圧力逃がし弁部21及び逆止弁部23の間に設けられており、圧力逃がし弁部21及び逆止弁部23と干渉してオイル漏れを起こす恐れがある位置であるが、圧力逃がし弁部21とは弁の開口方向が異なり、且つ支持部材4が介在するため互いに影響を及ぼすことがない。また、逆止弁部23とは、(1)支持部材4の一端面41によって押圧する(例えば図1及び7を参照。)、(2)ドレン弁部22及び逆止弁部23間に各弁部を区画する区画突起24をフィルタ用弁体2に設ける(例えば図8を参照。)、(3)ドレン弁部22及び逆止弁部23間に各弁部を区画する区画突起65を基部6に設ける(例えば図9を参照。)、(4)基部6の流入口61及びドレン口63間に流入口61が低位置となる段差64を設ける(例えば図1を参照。)等を1種又は2種以上組み合わせて行うことによって、互いに影響を及ぼすことがない構成とすることができる。
【実施例】
【0018】
以下、図面を用いて実施例により本発明のフィルタ用弁体及びそれを用いたオイルフィルタを具体的に説明する。
1.フィルタ用弁体及びそれを用いたオイルフィルタの構成
本オイルフィルタ1は略円柱形状であり、図1に示すように、フィルタ用弁体2、フィルタエレメント3、支持部材4、ケーシング5、基部6及びエレメント固定部材7を備える。
フィルタ用弁体2は図2及び3に示すように、ゴム製の中心に孔が形成された円板形状であり、該孔周辺に位置する筒状の圧力逃がし弁部21、外周部に位置する環状の逆止弁部23、並びに圧力逃がし弁部21及び逆止弁部23の間に位置する環状のドレン弁部22を備える。また、フィルタ用弁体2は逆止弁部23が内周側に配置されるように支持部材4の一端側開口部に挿着され、基部の流出口に突設された筒部の外周に配置される。
フィルタエレメント3は、図1に示すように、円筒形状であり中心に支持部材4が挿入固定される。また、フィルタエレメント3の側面と、支持部材4の接触面との間にはシール部材が設けられている(図示せず)。
支持部材4は円筒形状であり、外周面にフィルタエレメント3が設けられ、一端面41のつば部44及び開口部42にフィルタ用弁体2が設けられ、他端面に係合部81及びエレメント固定部材7が設けられる。
【0019】
ケーシング5はフィルタ用弁体2、フィルタエレメント3、支持部材4及びエレメント固定部材7を収納可能な大きさの、上壁部を具備する円筒形状であって、基部6にねじ込まれて固定される。また、天井には支持部材4の係合部81と係合する係合部82が設けられている。この係合部81、82は、ケーシング5が基部6に固定されているときは、係合が解かれ、エレメント固定部材7によって支持部材4を基部6に押し付けることができるが、ケーシング5を基部6から取り外すときは、エレメント固定部材7によって互いに係合する。
基部6は、他端をエンジン等に固定され(図示せず)、一端側に流入口61、流出口62、ドレン口63を具備する底面部を備える。また、底面部は周縁部66を備えケーシング5をはめ込んで固定することができる。
エレメント固定部材7は、金属のコイルバネからなり、一端をケーシング5に固定され、他端を支持部材4の他端面に固定される。
【0020】
2.未使用時のオイルフィルタ
オイルフィルタ1へオイルが供給されない場合は、図1に示すように、逆止弁部23によってオイルの逆流が防止される。このため、次回のエンジン始動時に即座にオイルが供給されず、潤滑不良を起こす恐れはない。更に、ドレン弁部22が、つば部44で押圧されるドレン口63により確実に閉塞され、ドレン口63からオイルが排出されることがない。
【0021】
3.オイルの通常の流通
本オイルフィルタ1は、通常図4に示すように、流入口61から流入するオイルが逆止弁部23を弾性変形により湾曲になって生じた隙間からオイルフィルタ1内に流入し、次いでフィルタエレメント3及び支持部材4を通過して支持部材4内に流入し、その後流出口62から流出する経路で使用される。また、ドレン弁部22が、つば部44で押圧されるドレン口63により確実に閉塞され、ドレン口63からオイルが排出されることがない。
【0022】
4.フィルタエレメント3の脱着
本オイルフィルタ1のフィルタエレメント3を脱着する際は、ケーシング5をわずかに外した状態にする。このとき、ケーシング5の端部は、基部6の周縁部66と接触しているため、ケーシング5及び基部6の境界からオイルが漏れ出ることがない。また、エレメント固定部材7に設けられた係合部81がケーシング5の係合部82と係合して、エレメント固定部材7が支持部材4及びフィルタ用弁体2を伴って動くため、フィルタ用弁体2及び基部6間に隙間が生じ、ドレン弁部22によって塞がれていたドレン口63が開口するため、オイルフィルタ1内のオイルはドレン口63から排出される。
このため、オイルフィルタ1内のオイルがドレン口63から排出し終わってから、ケーシング5を基部6から取り外すことによって、オイルが流出することがない。
【0023】
5.高圧オイルの流入
フィルタエレメントの目詰まり等により、フィルタエレメントを通過するオイルの量が減少し、ハウジング内のオイル圧力が高くなった場合、その圧力によって圧力逃がし弁部21が中心側へ弾性変形し、逃がし孔43からオイルが流入し、流出口62から流出することができる。このため、オイルフィルタ1を通過する流量が増加して、オイルの圧力が低下するためエンジンの破損等を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施例のオイルフィルタの構成を説明するための模式断面図である。
【図2】本実施例のフィルタ用弁体の構成を説明するための模式斜視図である。
【図3】本実施例のフィルタ用弁体の構成を説明するための模式断面図である。
【図4】本実施例のオイルフィルタの使用形態を説明するための模式断面図である。
【図5】本実施例のオイルフィルタにおいて、フィルタエレメントの脱着を行う状態を説明するための模式断面図である。
【図6】本実施例のオイルフィルタにおいて、内部が高圧になった状態を説明するための模式断面図である。
【図7】他の態様のオイルフィルタを説明するための模式断面図である。
【図8】他の態様のオイルフィルタを説明するための模式断面図である。
【図9】他の態様のオイルフィルタを説明するための模式断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1;オイルフィルタ、2;フィルタ用弁体、21;圧力逃がし弁部、22;ドレン弁部、23;逆止弁部、24、65;区画突起、
3;フィルタエレメント、4;支持部材、41;一端面、42;開口部、43;逃がし孔、44;つば部、5;ケーシング、6;基部、61;流入口、62;流出口、63;ドレン口、64;段差、7;エレメント固定部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタエレメントを支持する筒状の支持部材と、基部の底面部との間に挟持されるように設けられるフィルタ用弁体であって、
上記基部は、該底面部の周囲に設けられる周壁部、該底面部の中心部に設けられる流出口、該底面部であり且つ該流出口の外周側に設けられているドレン口、及び該底面部であり且つ該ドレン口の外周側に設けられている流入口を具備し、
上記フィルタ用弁体は、該支持部材の一端面側の開口部に挿入され且つ弾性変形して該開口部の内壁と接触する筒状の圧力逃がし弁部と、
内周側が該圧力逃がし弁部と接続され且つ該ドレン口を覆うように設けられている環状のドレン弁部と、
内周側が該ドレン弁部と接続され、該流入口を覆うように設けられ、且つ弾性変形によって外周部が湾曲可能な環状の逆止弁部と、から一体に形成されてなることを特徴とするフィルタ用弁体。
【請求項2】
上記フィルタ用弁体は、孔が形成された円板状体であり、該圧力逃がし弁部は該円板状体の一面側へ突出し且つ該孔周辺に位置し、該逆止弁部は該円板状体の他面側に湾曲する請求項1記載のフィルタ用弁体。
【請求項3】
上記ドレン弁部及び上記逆止弁部の間に該ドレン弁部及び該逆止弁部を区画する突起が周設されている請求項1又は2に記載のフィルタ用弁体。
【請求項4】
底面部、該底面部の周囲に設けられる周壁部、該底面部の中心部に設けられる流出口、該底面部であり且つ該流出口の外周側に設けられているドレン口、及び該底面部であり且つ該ドレン口の外周側に設けられている流入口を具備する基部と、該周壁部と係合して該底面部を覆うケーシングと、該ドレン口及び該ケーシング内に格納されるフィルタエレメントと、該フィルタエレメントの支持部材と、該支持部材及び該底面部の間に挟持されるフィルタ用弁体とを備え、
上記フィルタ用弁体は、孔が形成された円板状体であり、該支持部材の一端面側の開口部に挿入され且つ弾性変形して該開口部の内壁と接触する筒状の圧力逃がし弁部と、
内周側が該圧力逃がし弁部と接続され且つ該ドレン口を覆うように設けられている環状のドレン弁部と、
内周側が該ドレン弁部と接続され、該流入口を覆うように設けられ、且つ弾性変形によって外周部が湾曲可能な環状の逆止弁部と、から一体に形成されてなることを特徴とするオイルフィルタ。
【請求項5】
上記基部は、流入口及びドレン口間に段差又は突起を有する請求項4記載のオイルフィルタ。
【請求項6】
上記ドレン弁部及び上記逆止弁部の間に該ドレン弁部及び該逆止弁部を区画する突起が周設されている請求項4又は5に記載のフィルタ用弁体。
【請求項7】
上記支持部材は、上記ドレン弁部を介して上記ドレン口を全周にわたって押圧可能なつば部が設けられている請求項4乃至6のいずれか1項に記載のフィルタ用弁体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−223736(P2008−223736A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67464(P2007−67464)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】