説明

フィルム状封止剤及び封止方法

【課題】電子デバイスを低温で緊密に封止するのに有用なフィルム状封止剤、この封止剤を用いた封止方法を提供する。
【解決手段】デバイスの少なくとも一部を、共重合ポリアミド系樹脂を含むフィルム状封止剤で覆い、封止剤を加熱溶融させて冷却し、デバイスを被覆して封止する。共重合ポリアミド系樹脂の融点又は軟化点は75〜160℃であり、結晶性を有していてもよい。共重合ポリアミド系樹脂は、多元共重合体であってもよく、C8−16アルキレン基を有する長鎖成分(C9−17ラクタム及びアミノC9−17アルカンカルボン酸など)に由来する単位を含んでいてもよい。フィルム状封止剤は、デバイスの一方の面を被覆してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装されたプリント基板などのデバイス(又は電子デバイス)を封止するのに適したフィルム状封止剤、このフィルム状封止剤を用いた封止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水分、塵芥などから保護するため、半導体素子、プリント基板、太陽電池セルなどの精密部品(又は電子デバイス)を樹脂で封止することが行われている。この封止方法として、精密部品を金型キャビティ内に配置して流動性樹脂を注入して封止する方法が知られている。この方法では、多くの場合、低粘度で流動性の高い熱硬化性の樹脂が使用されている。
【0003】
しかし、熱硬化性樹脂では、架橋剤などの添加剤が添加されるため、保存期間が短いだけでなく、金型キャビティ内に注入してから硬化までに比較的長時間を要し、生産性を向上できない。また、樹脂の種類によっては成形後に硬化処理が必要となり、生産性を向上させることができない。
【0004】
また、熱可塑性樹脂を射出成形して精密部品を封止することも知られている。しかし、熱可塑性樹脂では比較的高温高圧でモールドする場合が多いため、基板や基板上に実装された電子部品が損傷しやすく信頼性を損なう。特開2000−133665号公報(特許文献1)には、金型キャビティ内に電子部品が実装されたプリント基板を配置し、160〜230℃に加熱溶融したポリアミド樹脂を2.5〜25kg/cmの圧力範囲で前記金型キャビティ内に注入し、電子部品が実装されたプリント基板を封止する方法が開示されている。この文献の実施例では、TRL社(フランス)のポリアミド樹脂・商品番号817を溶融温度190℃、圧力20kg/cmで金型内に注入してプリント基板を封止したことが記載されている。しかし、この方法でも電子部品に比較的高温高圧が作用するため、電子部品が損傷する場合がある。
【0005】
フィルムを用いてデバイスを梱包することも知られている。特開2001−284779号公報(特許文献2)には、電子部品(2,2A)を備えた回路基板(1)を筒状フィルム(3)内に挿入し、上記筒状フィルムの両方の開口部を閉塞して上記回路基板を梱包する方法、前記電子部品が備えられた領域をシート状フィルム(3A,3B)により覆う方法、回路基板(1)の表裏両面を2枚のシート状フィルム(3A,3B)により覆うとともに上記シート状フィルムにより上記回路基板を梱包する方法により、電子回路形成品を製造する方法が開示され、予め加熱して軟化させたフィルムで覆うこと、上記フィルムと上記基板との間を減圧して、上記フィルムを上記部品又は上記基板に追従させることも記載されている。特開平11−259021号公報(特許文献3)には、複数の液晶表示パネル部材からなる液晶表示パネル部材類をフィルムで包み込んでラミネートした液晶表示パネル液晶表示パネル部材が開示され、プラスチックフィルムとしてポリアミドも例示されている。
【0006】
しかし、これらの方法では、電子部品などのデバイスを緊密に接着させて封止できない。特に、これらの方法は、デバイスを包み込む形態で防湿又は防水するため、デバイスの一方の面だけに適用してもデバイスを有効に保護できない。
【0007】
さらに、フィルム状の封止剤を用いてデバイスを封止することも知られている。特開2008−282906号公報(特許文献4)には、基板とフィルムとの間に太陽電池セルが樹脂で封止された太陽電池モジュールの製造方法に関し、前記基板と前記太陽電池セルとの間に前記基板の実質的に全面を覆う第1封止樹脂シートを配置し、前記フィルムと前記太陽電池セルとの間に前記基板の実質的に全面を覆う第2封止樹脂シートを配置して積層体を作製し、該積層体を複数段積み重ねるとともに、最上段の積層体の前記フィルムの外側に当て板を配置し、前記基板と前記フィルムとの間の空気を排出し、加熱して樹脂を溶融させて冷却して封止することが開示され、前記封止樹脂が、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール及びポリウレタンからなる群から選択される一種の樹脂であることも記載されている。
【0008】
特開2009−99417号公報(特許文献5)には、前記基板上に形成された有機電子デバイスを封止するバリアフィルムを含み、前記有機電子デバイスと前記バリアフィルムとの間にホットメルト型部材が配置された有機電子デバイス封止パネルが開示され、前記ホットメルト型部材が水分捕捉剤及びワックスを含むこと、前記ホットメルト型部材の厚みが100μm以下の薄膜状であることが記載されている。また、特開2009−99805号公報(特許文献6)には、水分捕捉剤及びワックスを含む有機薄膜太陽電池用ホットメルト型部材が開示されている。ホットメルト型部材の形状は、薄膜状、板状、不定形状などであってもよいことも記載されている。
【0009】
しかし、フィルム状の封止剤ではデバイスの凹凸部に対する追従性が劣るため、デバイスの細部を緊密に封止することが困難である。さらに、前記ホットメルト型部材はワックスを主要成分とするため、デバイスに対する密着性を高めて封止することが困難である。
【0010】
特開2001−234125号公報(特許文献7)には、塗装過程で高温の火炎に曝されても変色するのを防止するため、熱可塑性樹脂100重量部に対して、ヒンダードフェノール系酸化防止剤およびフォスファイト系酸化防止剤をそれぞれ0.05〜2.0重量部の割合で含み、中位粒子径が50〜300μm、嵩比重が0.30g/ml以上、安息角が35度以下である溶射塗装用粉体塗料が開示されている。この文献には、熱可塑性樹脂として、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ナイロン−11樹脂、ナイロン−12樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、変性ポリエチレン樹脂、変性ポリプロピレン樹脂が例示され、ナイロン(ポリアミド)樹脂(EMS−CHEMIE AG社の商品名“グリルアミド”)を用いた例も記載されている。
【0011】
しかし、上記粉体塗料は高温で溶融して溶射されるため、電子部品の封止に利用すると、電子部品が損傷されやすく、デバイスの信頼性を損なうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−133665号公報(特許請求の範囲、実施例)
【特許文献2】特開2001−284779号公報(特許請求の範囲)
【特許文献3】特開平11−259021号公報(特許請求の範囲、[0022])
【特許文献4】特開2008−282906号公報(特許請求の範囲)
【特許文献5】特開2009−99417号公報(特許請求の範囲、[0024])
【特許文献6】特開2009−99805号公報(特許請求の範囲)
【特許文献7】特開2001−234125号公報(特許請求の範囲、[0008]、実施例6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従って、本発明の目的は、電子デバイスを低温で緊密に封止するのに有用なフィルム状封止剤、この封止剤を用いた封止方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、電子デバイスの一方の面だけであっても高い密着力で緊密に封止できるフィルム状封止剤、この封止剤を用いた封止方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、電子デバイスを、水分、塵芥や衝撃などから有効に保護できるフィルム状封止剤、この封止剤を用いた封止方法を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、電子デバイスの封止性に加えて、耐熱性、耐薬品性を向上できる積層フィルム、この積層フィルムを用いた封止方法を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに別の目的は、前記フィルム状封止剤又は積層フィルムで封止された電子デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、熱可塑性樹脂として共重合ポリアミド系樹脂を含むフィルムを用いると、熱硬化性樹脂に比べて封止・成形サイクルを短縮できること、低温低圧でデバイスの所定部を被覆して封止できること、デバイスの一方の面に適用しても、高い密着性及び封止性でデバイスを保護できることを見いだし、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、本発明の封止剤は、共重合ポリアミド系樹脂を含むフィルム状封止剤であり、デバイスを被覆して(又はモールドして)封止する。フィルム状の形態を有する本発明の封止剤において、前記共重合ポリアミド系樹脂の融点又は軟化点は75〜160℃程度、例えば、融点90〜140℃程度であってもよい。共重合ポリアミド系樹脂は結晶性を有していてもよい。共重合ポリアミド系樹脂は、多元共重合体、例えば、二元共重合体〜四元共重合体(例えば、二元又は三元共重合体)であってもよい。さらに、共重合ポリアミド系樹脂は、C8−16アルキレン基(例えば、C10−14アルキレン基)を有する長鎖成分、例えば、C9−17ラクタム及びアミノC9−17アルカンカルボン酸から選択された少なくとも一種の成分に由来する単位を含んでいてもよい。例えば、共重合ポリアミド系樹脂は、ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリアミド1010から選択されたアミド形成成分に由来する単位を含んでいてもよく、コポリアミド6/11、コポリアミド6/12、コポリアミド66/11、コポリアミド66/12、コポリアミド610/11、コポリアミド612/11、コポリアミド610/12、コポリアミド612/12、コポリアミド1010/12、コポリアミド6/11/610、コポリアミド6/11/612、コポリアミド6/12/610、及びコポリアミド6/12/612から選択された少なくとも一種であってもよい。また、共重合ポリアミド系樹脂は、ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリアミド1010から選択されたアミド形成成分に由来する単位を必要であればハードセグメントとして含むポリアミドエラストマー(ポリアミドブロック共重合体)であってもよい。さらに、共重合ポリアミド系樹脂は、ラウロラクタム、アミノウンデカン酸及びアミノドデカン酸から選択された少なくとも一種の成分に由来する単位を含んでいてもよい。本発明のフィルム状封止剤は、デバイスの両面を被覆してもよいが、デバイスの一方の面を被覆するのに有用である。
【0020】
本発明は、前記フィルム状封止剤と、このフィルム状封止剤の一方の面に積層され、かつ耐熱性樹脂で形成された保護層とを含む積層フィルムも包含する。この積層フィルムは、例えば、フィルム状封止剤の一方の面に直接保護層が形成された積層フィルムであってもよく、フィルム状封止剤の一方の面に接着層(中間層)を介して保護層が形成された積層フィルムであってもよい。耐熱性樹脂の融点又は軟化点は170℃以上であってもよい。耐熱性樹脂は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びフッ素樹脂から選択された少なくとも一種であってもよい。積層フィルムの全体の厚みは10〜1000μm程度であってもよい。
【0021】
本発明の方法では、デバイスの少なくとも一部を前記フィルム状封止剤で覆い(又はカバーし)、フィルム状封止剤を加熱溶融して冷却することにより、共重合ポリアミド系樹脂で被覆又はモールドされたデバイスを製造できる。本発明の方法では、デバイスの一方の面を被覆してもよい。そのため、本発明は、フィルム状封止剤の熱融着により形成された共重合ポリアミド系樹脂の被膜で、少なくとも一部が被覆又はモールドされたデバイスも包含する。
【0022】
さらに、本発明の方法では、積層フィルムのフィルム状封止剤側をデバイスに向けて、デバイスの少なくとも一部を積層フィルムで被覆してもよい。そのため、本発明は、積層フィルムを構成するフィルム状封止剤の熱融着により形成された共重合ポリアミド系樹脂の被膜で、少なくとも一部が被覆又はモールドされたデバイスも包含する。
【0023】
なお、本明細書において、「共重合ポリアミド系樹脂」とは、それぞれホモポリアミドを形成する複数のアミド形成成分の共重合体(コポリアミド)のみならず、複数のアミド形成成分により形成され、かつ種類の異なる複数の共重合体(コポリアミド)の混合物をも含む意味で用いる。
【発明の効果】
【0024】
本発明では、フィルム状封止剤が共重合ポリアミド系樹脂を含むため、電子デバイスを低温で緊密に封止でき、デバイスの信頼性を損なうことがない。また、デバイスに対してフィルム状封止剤を低温で熱融着できるため、電子デバイスの一方の面だけであっても高い密着力で緊密に封止できる。さらに、電子デバイスを、水分、塵芥や衝撃などから有効に保護できる。上記のフィルム状封止剤の片面に耐熱性樹脂で構成された保護層を積層し、多層化すると、電子デバイスの封止性に加えて、耐熱性、耐薬品性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のフィルム状封止剤(又はシート状封止剤)は、共重合ポリアミド系樹脂を含んでいる。共重合ポリアミド系樹脂には、共重合ポリアミド(熱可塑性共重合ポリアミド)とポリアミドエラストマーとが含まれる。
【0026】
熱可塑性共重合ポリアミドは、脂環族共重合ポリアミドであってもよいが、通常、脂肪族共重合ポリアミドである場合が多い。共重合ポリアミドは、ジアミン成分、ジカルボン酸成分、ラクタム成分、アミノカルボン酸成分を組み合わせて形成できる。なお、ジアミン成分及びジカルボン酸成分の双方の成分は、共重合ポリアミドのアミド結合を形成し、ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分はそれぞれ単独で共重合ポリアミドのアミド結合を形成可能である。このような観点から、共重合ポリアミドは、一対の成分(ジアミン成分とジカルボン酸成分とを組合せた両成分)、ラクタム成分、及びアミノカルボン酸成分から選択された複数のアミド形成成分の共重合により得ることができる。また、共重合ポリアミドは、一対の成分(ジアミン成分とジカルボン酸成分とを組合せた両成分)、ラクタム成分、及びアミノカルボン酸成分から選択された少なくとも一種のアミド形成成分と、このアミド形成成分と異種の(又は同種であって炭素数の異なる)アミド形成成分との共重合により得ることができる。また、ラクタム成分とアミノカルボン酸成分とは、炭素数及び分岐鎖構造が共通していれば等価な成分として取り扱ってもよい。そのため、ジアミン成分とジカルボン酸成分とを組合せた一対の成分を第1のアミド形成成分、ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分を第2のアミド形成成分とすると、例えば、共重合ポリアミドは、第1のアミド形成成分(ジアミン成分及びジカルボン酸成分)による共重合ポリアミドであって、ジアミン成分及びジカルボン酸成分のうち少なくとも一方の成分が炭素数の異なる複数の成分で構成された共重合ポリアミド;第1のアミド形成成分(ジアミン成分及びジカルボン酸成分)と、第2のアミド形成成分(ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分から選択された少なくとも一種の成分)との共重合ポリアミド;第2のアミド形成成分(ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分から選択された少なくとも一種の成分)で形成された共重合ポリアミドであって、ラクタム成分及びアミノカルボン酸成分のうち一方の成分が炭素数の異なる複数の成分で構成された共重合ポリアミド;炭素数が同一又は互いに異なるラクタム成分とアミノカルボン酸成分との共重合ポリアミドなどであってもよい。
【0027】
ジアミン成分としては、脂肪族ジアミン又はアルキレンジアミン成分(例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ドデカンジアミンなどのC4−16アルキレンジアミンなど)などが例示できる。これらのジアミン成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいジアミン成分は、少なくともアルキレンジアミン(好ましくはC6−14アルキレンジアミン、さらに好ましくはC6−12アルキレンジアミン)を含んでいる。
【0028】
なお、必要であれば、ジアミン成分として、脂環族ジアミン成分(ジアミノシクロヘキサンなどのジアミノシクロアルカン(ジアミノC5−10シクロアルカンなど);ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4’−アミノシクロヘキシル)プロパンなどのビス(アミノシクロアルキル)アルカン[ビス(アミノC5−8シクロアルキル)C1−3アルカンなど];水添キシリレンジアミンなど)、芳香族ジアミン成分(メタキシリレンジアミンなど)を併用してもよい。ジアミン成分(例えば、脂環族ジアミン成分)は、アルキル基(メチル基、エチル基などのC1−4アルキル基)などの置換基を有していてもよい。
【0029】
アルキレンジアミン成分の割合は、ジアミン成分全体に対して、50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%(例えば、70〜97モル%)、さらに好ましくは75〜100モル%(例えば、80〜95モル%)程度であってもよい。
【0030】
ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸又はアルカンジカルボン酸成分(例えば、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸又はその水素添加物などの炭素数4〜36程度のジカルボン酸又はC4−36アルカンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのジカルボン酸成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。好ましいジカルボン酸成分は、C6−36アルカンジカルボン酸(例えば、C6−16アルカンジカルボン酸、好ましくはC8−14アルカンジカルボン酸など)を含んでいる。さらに、必要であれば、脂環族ジカルボン酸成分(シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などのC5−10シクロアルカン−ジカルボン酸など)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸など)を併用してもよい。なお、ジアミン成分及びジカルボン酸成分として、脂環族ジアミン成分及び/又は脂環族ジカルボン酸成分と共に、前記例示の脂肪族ジアミン成分及び/又は脂肪族ジカルボン酸成分を併用して得られた脂環族ポリアミド樹脂は、いわゆる透明ポリアミドとして知られており、透明性が高い。
【0031】
アルカンジカルボン酸成分の割合は、ジカルボン酸成分に対して、50〜100モル%、好ましくは60〜100モル%(例えば、70〜97モル%)、さらに好ましくは75〜100モル%(例えば、80〜95モル%)程度であってもよい。
【0032】
第1のアミド形成成分において、ジアミン成分は、ジカルボン酸成分1モルに対して0.8〜1.2モル、好ましくは0.9〜1.1モル程度の範囲で使用できる。
【0033】
ラクタム成分としては、例えば、δ−バレロラクタム、ε−カプロラクタム、ω−ヘプタラクタム、ω−オクタラクタム、ω−デカンラクタム、ω−ウンデカンラクタム、ω−ラウロラクタム(又はω−ラウリンラクタム)などのC4−20ラクタムなどが例示でき、アミノカルボン酸成分としては、例えば、ω−アミノデカン酸、ω−アミノウンデカン酸、ω−アミノドデカン酸などのC6−20アミノカルボン酸などが例示できる。これらのラクタム成分及びアミノカルボン酸成分も単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0034】
好ましいラクタム成分は、C6−19ラクタム、好ましくはC8−17ラクタム、さらに好ましくはC10−15ラクタム(ラウロラクタムなど)を含んでいる。また、好ましいアミノカルボン酸は、アミノC6−19アルカンカルボン酸、好ましくはアミノC8−17アルカンカルボン酸、さらに好ましくはアミノC10−15アルカンカルボン酸(アミノウンデカン酸、アミノドデカン酸など)を含んでいる。
【0035】
なお、共重合ポリアミドは、少量のポリカルボン酸成分及び/又はポリアミン成分を用い、分岐鎖構造を導入したポリアミドなどの変性ポリアミドであってもよい。
【0036】
第1のアミド形成成分(ジアミン成分とジカルボン酸成分とを組合せた両成分)、第2のアミド形成成分(ラクタム成分、及びアミノカルボン酸成分から選択された少なくとも一種のアミド形成成分)との割合(モル比)は、前者/後者=100/0〜0/100の範囲から選択でき、例えば、90/10〜0/100(例えば、80/20〜5/95)、好ましくは75/25〜10/90(例えば、70/30〜15/85)、さらに好ましくは60/40〜20/80程度であってもよい。
【0037】
さらに、共重合ポリアミドは、長鎖脂肪鎖(長鎖アルキレン基又はアルケニレン基)を有する長鎖成分を構成単位として含む(又は長鎖成分に由来する単位を含む)のが好ましい。このような長鎖成分としては、炭素数8〜36程度の長鎖脂肪鎖又はアルキレン基(好ましくはC8−16アルキレン基、さらに好ましくはC10−14アルキレン基)を有する成分が含まれる。長鎖成分としては、例えば、C8−18アルカンジカルボン酸(好ましくはC10−16アルカンジカルボン酸、さらに好ましくはC10−14アルカンジカルボン酸など)、C9−17ラクタム(好ましくはラウロラクタムなどのC11−15ラクタム)及びアミノC9−17アルカンカルボン酸(好ましくはアミノウンデカン酸、アミノドデカン酸などのアミノC11−15アルカンカルボン酸)から選択された少なくとも一種の成分が例示できる。これらの長鎖成分は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの長鎖成分のうち、ラクタム成分及び/又はアミノアルカンカルボン酸成分、例えば、ラウロラクタム、アミノウンデカン酸及びアミノドデカン酸から選択された少なくとも一種の成分を用いる場合が多い。このような成分由来の単位を含む共重合ポリアミドは、耐水性が高いとともに、電子デバイスに対する密着性、耐摩耗性及び耐衝撃性に優れており、電子デバイスを有効に保護できる。
【0038】
長鎖成分の割合は、共重合ポリアミドを形成する単量体成分全体に対して、10〜100モル%(例えば、25〜95モル%)、好ましくは30〜90モル%(例えば、40〜85モル%)、さらに好ましくは50〜80モル%(例えば、55〜75モル%)程度であってもよい。
【0039】
さらに、共重合ポリアミドは、前記アミド形成成分の多元共重合体、例えば、二元共重合体〜五元共重合体などであってもよいが、通常、二元共重合体〜四元共重合体、特に二元共重合体又は三元共重合体である場合が多い。
【0040】
共重合ポリアミドは、例えば、ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612及びポリアミド1010から選択されたアミド形成成分を構成単位として含む(又は上記アミド形成成分に由来する単位を含む)場合が多い。共重合ポリアミドは、これらの複数のアミド形成成分の共重合体であってもよく、上記1又は複数のアミド形成成分と、他のアミド形成成分(ポリアミド6及びポリアミド66から選択された少なくとも1つのアミド形成成分など)との共重合体であってもよい。具体的には、共重合ポリアミドとしては、例えば、コポリアミド6/11、コポリアミド6/12、コポリアミド66/11、コポリアミド66/12、コポリアミド610/11、コポリアミド612/11、コポリアミド610/12、コポリアミド612/12、コポリアミド1010/12、コポリアミド6/11/610、コポリアミド6/11/612、コポリアミド6/12/610、コポリアミド6/12/612などが挙げられる。なお、これらの共重合ポリアミドにおいて、スラッシュ「/」で分離された成分はアミド形成成分を示している。
【0041】
ポリアミドエラストマー(ポリアミドブロック共重合体)としては、ハードセグメント(又はハードブロック)としてのポリアミドとソフトセグメント(又はソフトブロック)とで構成されたポリアミドブロック共重合体、例えば、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体、ポリアミド−ポリエステルブロック共重合体、ポリアミド−ポリカーボネートブロック共重合体などが挙げられる。
【0042】
ハードセグメントを構成するポリアミドとしては、1又は複数の前記アミド形成成分の単独又は共重合体(ホモポリアミド、コポリアミド)であってもよい。ハードセグメントとしてのホモポリアミドは、前記例示の長鎖成分を構成単位として含んでいてもよく、好ましい長鎖成分は前記と同様である。代表的なホモポリアミドは、ポリアミド11,ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012などが挙げられる。また、ハードセグメントとしてのコポリアミドは、前記例示のコポリアミドと同様である。これらのポリアミドのうち、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、ポリアミド1012などのホモポリアミドが好ましい。
【0043】
代表的なポリアミドエラストマーは、ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体である。ポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体において、ポリエーテル(ポリエーテルブロック)としては、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリC2−6アルキレングリコール、好ましくはポリC2−4アルキレングリコール)などが挙げられる。
【0044】
このようなポリアミド−ポリエーテルブロック共重合体としては、例えば、反応性末端基を有するポリアミドブロックと反応性末端基を有するポリエーテルブロックとの共重縮合により得られるブロック共重合体、例えば、ポリエーテルアミド[例えば、ジアミン末端を有するポリアミドブロックとジカルボキシル末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体、ジカルボキシル末端を有するポリアミドブロックとジアミン末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体など]、ポリエーテルエステルアミド[ジカルボキシル末端を有するポリアミドブロックとジヒドロキシ末端を有するポリアルキレングリコールブロック(又はポリオキシアルキレンブロック)とのブロック共重合体など]などが挙げられる。なお、ポリアミドエラストマーは、エステル結合を有していてもよいが、耐酸性を向上させるため、エステル結合を有していなくてもよい。また、市販のポリアミドエラストマーは、通常、アミノ基をほとんど有していない場合が多い。
【0045】
ポリアミドエラストマー(ポリアミドブロック共重合体)において、ソフトセグメント(ポリエーテルブロック、ポリエステルブロック、ポリカーボネートブロックなど)の数平均分子量は、例えば、100〜10000程度の範囲から選択でき、好ましくは300〜6000(例えば、300〜5000)、さらに好ましくは500〜4000(例えば、500〜3000)、特に1000〜2000程度であってもよい。
【0046】
また、ポリアミドエラストマー(ポリアミドブロック共重合体)において、ポリアミドブロック(ポリアミドセグメント)と、ソフトセグメントブロックとの割合(重量比)は、例えば、前者/後者=75/25〜10/90、好ましくは70/30〜15/85、さらに好ましくは60/40〜20/80(例えば、50/50〜25/75)程度であってもよい。
【0047】
これらの共重合ポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの共重合ポリアミド系樹脂のうち、電子デバイスの封止性の点から、共重合ポリアミド(非ポリアミドエラストマー又はポリアミドランダム共重合体)が好ましく、特に、ポリアミド12に由来するアミド形成成分を構成単位として含む共重合ポリアミドが好ましい。
【0048】
共重合ポリアミド系樹脂のアミノ基濃度は、特に制限されず、例えば、10〜300mmol/kg、好ましくは15〜280mmol/kg、さらに好ましくは20〜250mmol/kg程度であってもよい。共重合ポリアミド系樹脂のアミノ基濃度が高いと、フィルム状封止剤に他の層(後述の保護層など)を積層するとき、接着性を向上でき、有利である。
【0049】
共重合ポリアミド系樹脂のカルボキシル基濃度は、特に制限されず、例えば、10〜300mmol/kg、好ましくは15〜280mmol/kg、さらに好ましくは20〜250mmol/kg程度であってもよい。共重合ポリアミド系樹脂の末端カルボキシル基濃度が高いと、熱安定性が高く、長期安定性(連続加工性)の点で有利である。
【0050】
共重合ポリアミド系樹脂の数平均分子量は、例えば、5000〜200000程度の範囲から選択でき、例えば、6000〜100000、好ましくは7000〜70000(例えば、7000〜15000)、さらに好ましくは8000〜40000(例えば、8000〜12000)程度であってもよく、通常、8000〜30000程度である。共重合ポリアミド系樹脂の分子量は、HFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)を溶媒とし、ゲルパーミエーションクロマトグラフィにより、ポリメタクリル酸メチル換算で測定できる。
【0051】
共重合ポリアミド系樹脂のアミド結合含有量は、共重合ポリアミド系樹脂当たり、例えば、100ユニット以下の範囲から選択でき、デバイスの封止性の点から、30〜90ユニット、好ましくは40〜80ユニット、さらに好ましくは50〜70ユニット(例えば、55〜60ユニット)程度であってもよい。なお、アミド結合含有量は、例えば、数平均分子量を繰り返し単位(1ユニット)の分子量で除することにより、算出できる。
【0052】
共重合ポリアミド系樹脂は、非晶性であってもよく、結晶性を有していてもよい。共重合ポリアミド系樹脂の結晶化度は、例えば、20%以下、好ましくは10%以下であってもよい。なお、結晶化度は、慣用の方法、例えば、密度や融解熱に基づく測定法、X線回折法、赤外吸収法などにより、測定できる。
【0053】
なお、非晶性共重合ポリアミド系樹脂の熱溶融性は、示差走査熱量計により軟化温度として測定でき、結晶性の共重合ポリアミド系樹脂の融点は、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0054】
共重合ポリアミド系樹脂(又は共重合ポリアミド又はポリアミドエラストマー)の融点又は軟化点は、75〜160℃(例えば、80〜150℃)、好ましくは90〜140℃(例えば、95〜135℃)、さらに好ましくは100〜130℃程度であってもよく、通常、90〜160℃(例えば、100〜150℃)程度である。共重合ポリアミド系樹脂が低い融点又は軟化点を有するため、溶融してデバイス表面の凹凸部(段差のコーナー部など)などの表面形状に追従させるのに有用である。なお、共重合ポリアミド系樹脂の融点は、各成分が相溶し、DSCで単一のピークが生じる場合、単一のピークに対応する温度を意味し、各成分が非相溶であり、DSCで複数のピークが生じる場合、複数のピークのうち高温側のピークに対応する温度を意味する。
【0055】
共重合ポリアミド系樹脂は、デバイス表面の凹凸部などの表面形状に追従するとともに、隙間などに流動又は侵入可能とするため、高い溶融流動性を有するのが好ましい。共重合ポリアミド系樹脂のメルトフローレート(MFR)は、温度160℃及び荷重2.16kgにおいて、1〜350g/10分、好ましくは3〜300g/10分、さらに好ましくは5〜250g/10分程度であってもよい。
【0056】
共重合ポリアミド系樹脂には、密着性などの特性を損なわない範囲で、ホモポリアミド(例えば、前記共重合ポリアミドを形成する成分によるホモポリアミドなど)を添加してもよい。ホモポリアミドの割合は、共重合ポリアミド系樹脂100重量部に対して、30重量部以下(例えば、1〜25重量部)、好ましくは2〜20重量部、さらに好ましくは3〜15重量部程度であってもよい。なお、混合物の形態の共重合ポリアミド系樹脂において、各ポリアミドは互いに相溶性を有していてもよい。
【0057】
フィルム状封止剤(又はシート状封止剤)は共重合ポリアミド系樹脂を含んでいればよく、必要であれば、他の熱可塑性樹脂、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体などを含んでいてもよい。他の樹脂の割合は、例えば、共重合ポリアミド系樹脂100重量部に対して、100重量部以下(例えば、1〜80重量部程度)、好ましくは2〜70重量部、さらに好ましくは2〜50重量部、特に30重量部以下(例えば、3〜20重量部程度)であってもよい。
【0058】
共重合ポリアミド系樹脂は、必要により、種々の添加剤、例えば、フィラー、安定剤(耐熱安定剤、耐候安定剤など)、着色剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、熱伝導剤などを含んでいてもよい。添加剤は、単独で又は2種以上組み合わせてもよい。これらの添加剤のうち、安定剤、熱伝導剤などが汎用される。
【0059】
上記のように、本発明のフィルム状封止剤は、共重合ポリアミド系樹脂、複数の共重合ポリアミド系樹脂の混合物、又は共重合ポリアミド系樹脂と他の成分(ホモポリアミド、添加剤など)とを含む混合物(共重合ポリアミド系樹脂組成物)で形成されたフィルムであってもよい。
【0060】
フィルム状封止剤(又はシート状封止剤)は、未延伸フィルム又は延伸フィルム(一軸又は二軸延伸フィルム)であってもよく、延伸又は配向により熱収縮性が付与されていてもよい。フィルムの延伸倍率は、例えば、1つの方向について、1.2〜10倍(好ましくは1.5〜7倍、さらに好ましくは2〜5倍)程度であってもよい。
【0061】
フィルム状封止剤の厚みは、例えば、1〜1000μm程度の範囲から選択でき、通常、5〜500μm(例えば、5〜300μm)、好ましくは10〜250μm(例えば、25〜200μm)、さらに好ましくは50〜200μm(例えば、75〜150μm)程度であってもよい。厚みが小さすぎると、角部などを十分に被覆できなくなる場合が多く、厚みか大きすぎると、デバイスの表面の凹凸に沿いにくくなる。
【0062】
フィルム状封止剤の水蒸気透過度(40℃、90%RH)は、厚み1mm換算で、例えば、100g/m/day以下、好ましくは50g/m/day以下(例えば、0.01〜30g/m/day程度)であってもよい。特に、共重合ポリアミドを含むフィルム状封止剤は水蒸気バリア性に優れ、上記の水蒸気透過度は、厚み1mm換算で、例えば、0.01〜2g/m/day、好ましくは0.05〜1.5g/m/day、さらに好ましくは0.1〜1g/m/day程度である。なお、水蒸気透過度は、慣用の方法、例えば、JIS Z0208のカップ法により、測定できる。
【0063】
フィルム状封止剤は、慣用のフィルム成膜法、例えば、流延法、押出成形法、ブロー成形法などを利用して製造できる。また、必要であれば、一軸又は二軸延伸機を用いて所定の倍率で延伸してもよい。
【0064】
なお、フィルム状封止剤は、1枚のシート状であってもよく、デバイスを挟み込み可能な折り曲がったシート状、デバイスを収容可能な袋状などの形態であってもよい。
【0065】
また、フィルム状封止剤は、積層フィルム(積層シート)又は多層フィルム(多層シート)を構成(形成)してもよい。積層フィルムは、少なくともフィルム状封止剤(共重合ポリアミド系樹脂で形成された封止剤層)を備えている限り、特に制限されず、例えば、フィルム状封止剤と、このフィルム状封止剤の一方の面(デバイスの接着面と反対の面)に積層され、かつ耐熱性樹脂(又は疎水性樹脂)で形成された保護層(耐熱性樹脂層又は疎水性樹脂層)とを備えている。なお、フィルム状封止剤の一方の面には、複数の保護層が積層されていてもよい。保護層は、熱、湿気などの外的悪因子からデバイスを保護するために利用され、例えば、耐熱性樹脂層は加熱溶融に伴うフィルムの破れを防止でき、疎水性樹脂層は湿気によるデバイスの腐食を防止でき、デバイスの耐久性を向上できる。
【0066】
耐熱性樹脂としては、フィルム状封止剤の加熱溶融温度に耐えうる程度の耐熱性を有している限り、特に制限されず、例えば、フッ素樹脂、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂を含む)、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂(ポリアミドイミド、ポリエーテルイミドなど)、ポリアセタール系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエーテルケトン系樹脂(例えば、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)など)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、セルロース誘導体、芳香族エポキシ樹脂などが例示できる。
【0067】
代表的な耐熱性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリアルキレンアリレート系樹脂[ホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリC2−4アルキレンアリレート)、コポリエステル(例えば、C2−4アルキレンアリレート単位を主成分として含むコポリエステルなど)など]、ポリアリレート系樹脂、液晶ポリエステルなどが例示できる。
【0068】
ポリエステル系樹脂は、ポリエステルエラストマーも包含する。ポリエステルエラストマー(ポリエステルブロック共重合体)としては、ハードセグメント(又はハードブロック)としての芳香族ポリエステルとソフトセグメント(又はソフトブロック)とで構成されたポリエステルブロック共重合体、例えば、芳香族ポリエステル−ポリエーテルブロック共重合体、芳香族ポリエステル−脂肪族ポリエステルブロック共重合体などが挙げられる。
【0069】
ハードセグメントを構成する芳香族ポリエステルとしては、前記ポリアルキレンアリレート系樹脂(例えば、ポリブチレンテレフタレートなどのポリC2−4アルキレンテレフタレート)などが例示できる。ソフトセグメントを構成するポリエーテル(ポリエーテルブロック)としては、前記ポリアミドエラストマーで例示したポリエーテル(例えば、ポリテトラメチレングリコールなどのポリC2−6アルキレングリコール)などが例示できる。
【0070】
ポリエステルエラストマーにおいて、芳香族ポリエステルブロック(ハードセグメント)の割合は、全セグメントに対して、例えば、25〜95重量%、好ましくは30〜90重量%(例えば、50〜85重量%)程度であってもよい。
【0071】
ポリアミド系樹脂としては、前記ホモポリアミド(例えば、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012など)、フィルム状封止剤に含有される共重合ポリアミド系樹脂とは異種の共重合ポリアミド系樹脂(ポリアミドエラストマーなど)などが例示できる。ポリアミド系樹脂は、通常、共重合ポリアミド以外のポリアミド系樹脂である。
【0072】
フッ素樹脂としては、例えば、ポリビニルフルオライド(PVF)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリトリフルオロエチレン(PTrFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの単独重合体、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、エチレン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−パ−フルオロプロピルビニルエーテル共重合体などが例示できる。
【0073】
なお、耐熱性樹脂は、疎水性の高い樹脂、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、フッ素樹脂などであってもよい。
【0074】
これらの耐熱性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせてもよい。これらの耐熱性樹脂のうち、ポリエステル系樹脂(芳香族ポリエステルなど)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂(芳香族ポリアミドなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリイミド系樹脂などが好ましい。特に、耐熱性樹脂としては、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びフッ素樹脂から選択された少なくとも一種が汎用される。
【0075】
耐熱性樹脂の融点又は軟化点は、例えば、160℃以上(例えば、165〜250℃)、好ましくは170℃以上(例えば、175〜220℃程度)であってもよい。なお、融点又は軟化点は、慣用の方法、例えば、示差走査熱量計(DSC)により測定できる。
【0076】
耐熱性樹脂の熱変形温度は、ISO75−1に準拠して、高荷重(1.82MPa)の条件で、例えば、160℃以下の範囲から選択でき、40〜155℃、好ましくは50〜150℃程度であってもよい。
【0077】
保護層の厚み(複数の保護層が形成されている場合、各保護層の厚みの合計)は、積層フィルムがデバイスを表面の凹凸に沿って緊密に封止できる限り、特に限定されず、例えば、1〜800μm(例えば、5〜700μm)、好ましくは10〜600μm(例えば、20〜500μm)、さらに好ましくは30〜400μm(例えば、50〜300μm)程度であってもよい。保護層の厚みが小さすぎると、破断し易く保護層としての機能が低下する。なお、複数の保護層が形成されているとき、各保護層の厚みは、例えば、1〜100μm、好ましくは5〜50μm程度であってもよい。
【0078】
フィルム状封止剤と保護層との間、複数層形成された保護層同士の間には、それぞれ、中間層(接着層)を介在させてもよい。接着層は、慣用の接着剤又は粘着剤、例えば、塩化ビニル系接着剤、酢酸ビニル系接着剤、オレフィン系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤などで構成されていてもよい。
【0079】
接着層の厚みは、特に制限されず、例えば、1〜50μm、好ましくは5〜30μm程度であってもよい。
【0080】
フィルム状封止剤をAで示し、保護層をB又はB(nは1以上の整数であり、B、B、…Bは第1、第2、…第n番目の保護層である)で示し、接着層をCで示し、積層形態(例えば、AとBの積層形態)を文字列(例えば、AB)により簡略化するとき、1つの保護層を有する代表的な積層フィルムとしては、AB、ACBなどが挙げられ、複数の保護層を有する代表的な積層フィルムとしては、AB[(C)B](但し、mは0又は1であり、rは1以上の整数である)などが挙げられる。なお、後者の積層フィルムには、例えば、AB(m=0、r=1)などの3層フィルム、ABCB(m=1、r=1)、AB(m=0、r=2)などの4層フィルムなどが含まれる。また、各保護層Bを形成する耐熱性樹脂は、通常、異種であり、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びフッ素樹脂から選択された少なくとも一種であってもよい。なお、保護層をポリアミド系樹脂で形成する場合、ポリアミド系樹脂の末端アミノ基は層間接着性を向上でき、末端カルボキシル基は熱安定性が高く、長期安定性(連続加工性)を向上できる。
【0081】
積層フィルムの全体の厚みは、例えば、10〜1000μm、好ましくは30〜800μm、さらに好ましくは50〜500μm程度であってもよい。
【0082】
フィルム状封止剤と保護層(複数の保護層及び/又は接着層を有する場合、各層の厚みの合計)との厚み比は、前者/後者=95/5〜5/95(例えば、90/10〜10/90)程度の範囲から選択でき、例えば、10/90〜90/10(例えば、10/90〜80/20)、好ましくは15/85〜70/30(例えば、15/85〜60/40)、さらに好ましくは20/80〜50/50(例えば、20/80〜40/60)程度であってもよい。
【0083】
積層フィルムは、単層フィルムに比べて、耐熱性、耐薬品性を向上できる。例えば、積層フィルムの熱変形温度(最高使用温度)は、例えば、160〜300℃、好ましくは170〜280℃、さらに好ましくは180〜250℃程度である。また、単層フィルムの熱変形温度を100とするとき、積層フィルムの熱変形温度は、例えば、120〜200、好ましくは125〜180、さらに好ましくは130〜160程度である。なお、熱変形温度とは、15秒間の熱処理でフィルムが変形する最小の温度を意味する。
【0084】
また、積層フィルムは、有機成分(例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、ケトン類など)及び無機成分(例えば、塩酸などの無機酸)のいずれに対しても、耐薬品性を向上でき、特に、メタノールなどのアルコール類に対する耐薬品性を向上できる。
【0085】
積層フィルムは、慣用の方法により、フィルム状封止剤と保護層とを積層することにより調製できる。なお、積層方法としては、慣用の方法、例えば、ラミネーション(ヒートラミネーション、ドライラミネーションなど)、汎用のフィードブロック付きダイやマルチマニホールドダイなどを使用して共押出する方法、コーティングなどが例示できる。
【0086】
フィルム状封止剤(又はシート状封止剤)を用いると、熱硬化性樹脂に比べて封止・成形サイクルを短縮できる。また、射出成形(特に低圧射出成形)やホットメルト樹脂を用いた成形では、金型との関係で、デバイス又は基板のサイズに制約があり、せいぜい10×10cm程度のサイズのデバイス又は基板しか封止できないのに対して、フィルム状の封止剤ではデバイスのサイズに制約されることなく封止できるとともに、前記射出成形やホットメルト樹脂を用いた成形と異なり、フィルム状の封止剤では薄膜を形成してモールドでき、軽量でコンパクト化できる。また、所定の部位だけであっても、高い密着性及び封止性でデバイスを被覆してモールドできる。さらに、フィルム状の封止剤に耐熱性樹脂で形成された保護層が積層された積層フィルムを用いると、加熱溶融に伴うフィルムの破れを防止し、デバイスの密封性を向上できる。そのため、電子デバイスなどに熱融着させて、デバイスを被覆(又はモールド)し、電子デバイスを防水・防湿でき、塵芥の付着による汚染などが保護できる。特に、フィルム状封止剤が共重合ポリアミド系樹脂を含むため、デバイスの一部の部位であってもデバイスに対する密着性を向上でき、高い耐衝撃性及び耐摩耗性をデバイスに付与でき、デバイスに対する保護効果を高めることができる。そのため、本発明のフィルム状封止剤は、デバイスの両面を被覆又はカバーしてもよいが、デバイスの少なくとも一方の面の所定部又はデバイスの一方の面を被覆又はカバーしても高い密着力でデバイスを保護できる。
【0087】
本発明の方法ではデバイスの少なくとも一部を前記フィルム状封止剤で覆う工程(カバー工程)と、フィルム状封止剤を加熱溶融する工程と、冷却する工程とを経ることにより、共重合ポリアミド系樹脂で被覆又はモールドされたデバイスを製造できる。
【0088】
前記デバイスとしては、モールド又は封止が必要な種々の有機又は無機デバイス、例えば、半導体素子、エレクトロルミネッセンス(EL)素子、発光ダイオード、太陽電池セルなどの精密部品、各種電子部品又は電子素子などの部品を搭載した配線回路基板(プリント基板)などの電子部品(特に、精密電子部品又は電子デバイスなど)が例示できる。
【0089】
被覆(又はカバー)工程では、デバイスの少なくとも一部をフィルム状封止剤(又はシート状封止剤)で覆えばよく、デバイス全体を覆って(又は包み込んで)もよく、デバイスの一方の面全体、デバイスの少なくとも一方の面の一部又は所定部(電子部品の搭載領域、配線領域など)を覆ってもよい。デバイスの一方の面(搭載部を含めて)をフィルム状封止剤で覆い、加熱溶融すると、デバイスの一方の面を共重合ポリアミド系樹脂で全体に亘り緊密に被覆又はモールドでき、デバイスを有効に保護できる。さらに、フィルムを加熱軟化させてデバイスを覆ってもよい。さらには、デバイスをフィルム状封止剤(例えば、加熱軟化したフィルム状封止剤)で覆った後、減圧下でデバイスとフィルムとの間の気体を排出して密着させてもよい。
【0090】
加熱工程では、デバイスの耐熱性に応じて封止剤を加熱して溶融することにより前記共重合ポリアミド系樹脂をデバイスに溶着できる。加熱温度は、共重合ポリアミド系樹脂の融点や軟化点に応じて、例えば、75〜200℃、好ましくは80〜180℃、さらに好ましくは100〜175℃(例えば、110〜150℃)程度であってもよい。なお、積層フィルムでは、加熱温度は、共重合ポリアミド系樹脂の融点以上(例えば、融点+5℃以上、好ましくは融点+10℃以上)であり、かつ保護層を形成する耐熱性樹脂の融点+10℃以下(例えば、融点+5℃以下、好ましくは融点未満)であるのが好ましい。また、加熱温度は、通常、保護層を形成する耐熱性樹脂のガラス転移温度以上(好ましくは熱変形温度以上)である。加熱は、空気中、不活性ガス雰囲気中で行うことができる。加熱はオーブン中で行うことができ、必要であれば、超音波加熱、高周波加熱(電磁誘導加熱)を利用してもよい。加熱溶融工程は、常圧、加圧下又は減圧条件下で行ってもよい。なお、熱収縮性フィルムを封止剤として用いる場合、デバイス全体を緊密に結束した状態で融着させて緊密に封止できる。
【0091】
さらに、必要であれば、前記被覆(又はカバー)工程と加熱工程とを繰り返してもよい。また、上記のようにしてデバイスの一方の面(例えば、上面)に共重合ポリアミド系樹脂被膜を形成した後、デバイスの他方の面(例えば、底面)をフィルム状封止剤で覆って加熱融着させ、デバイスの端面も含めて両面を共重合ポリアミド系樹脂被膜でモールドして封止してもよい。なお、デバイスの一方の面に本発明のフィルム状封止剤を適用する場合、デバイスの他方の面には、他の樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、フッ素含有樹脂などの吸水性の小さな樹脂;芳香族エポキシ樹脂、芳香族ポリエステル、ポリイミドなどの耐熱性の高い樹脂などで封止してもよい。これらの他の樹脂の形態は、液状、粉粒状、フィルム状などであってもよい。
【0092】
冷却工程では、融着した共重合ポリアミド系樹脂を自然冷却してもよく、段階的又は連続的に冷却したり、急冷してもよい。
【0093】
このような工程を経ることにより、フィルム状封止剤が熱融着して形成された共重合ポリアミド系樹脂の被膜で、少なくとも一部が被覆又はモールドされたデバイスを得ることができる。デバイスのモールド部位は、通常、損傷しやすい部位、例えば、電子素子の搭載部位、配線部位である場合が多い。
【0094】
本発明では、比較的低温でフィルム状封止剤を融着できるため、デバイスに熱的損傷を与えることが少なく、デバイスの信頼性を向上できる。また、射出成形などと異なり、高い圧力がデバイスに作用しないため、圧力によりデバイスが損傷することがない。そのため、高い信頼性でデバイスをモールド及び封止することができる。しかも、短時間内に加熱・冷却できるため、モールド又は封止デバイスの生産性を大きく向上できる。
【実施例】
【0095】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例における各評価項目の評価方法は以下の通りである。
【0096】
[密封性]
フラットな基板面での密封性、及びフラットな基板面から直角に立ち上がる側面(高さ:2mm又は10mm)を有する凸部での密封性を、それぞれ以下の基準で評価した。
5:完全に被覆されている
4:ほぼ完全に被覆されているが、一部空気の進入が見られる
3:半分が浮いている
2:一部被塗物と接着しているが、殆どが浮いている
1:塗膜が完全に浮いている。
【0097】
[剥離試験]
実施例及び比較例のフィルムが形成されたガラスエポキシ製基板を用いて、碁盤目剥離試験により接着性を評価した。
【0098】
[耐水試験]
実施例及び比較例のフィルムが形成されたガラスエポキシ製基板を、23℃の恒温層に100時間浸漬した後、碁盤目剥離試験により耐水性を評価した。
【0099】
[水蒸気透過度]
実施例及び比較例のフィルムについて、水蒸気透過度(40℃、90%RH、厚み1mm換算)をJIS Z0208のカップ法に準拠して測定した。
【0100】
[耐薬品性]
耐薬品性は、実施例及び参考例のフィルムの上面に、各薬品を塗布し、1時間放置後、碁盤目剥離試験を行い、その接着強度により評価した。また、目視により塗膜の状態を、以下の基準により評価した。
【0101】
○…変化なし
△…一部変化が認められる
×…明らかな変化が認められる。
【0102】
[耐熱性]
耐熱性は、実施例及び参考例のフィルムを各温度のオーブンに15秒入れ、塗膜が変形する温度(最高使用温度)により評価した。
(1)単層フィルム
実施例1
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1038p1、C10−14アルキレン基を含有、融点125℃(DSC)、エボニック社製)で形成されたフィルム(厚み100μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0103】
実施例2
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1051、C10−14アルキレン基を含有、融点130℃(DSC)、エボニック社製)で形成されたフィルム(厚み100μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0104】
実施例3
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1333p1、C10−14アルキレン基を含有、融点105℃(DSC)、エボニック社製)で形成されたフィルム(厚み100μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0105】
実施例4
共重合ポリアミド(VESTAMELT 4680、C10−14アルキレン基を含有、融点105℃(DSC)、エボニック社製)で形成されたフィルム(厚み100μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0106】
実施例5
共重合ポリアミド(VESTAMELT X7079、C10−14アルキレン基を含有、融点130℃(DSC)、エボニック社製)で形成されたフィルム(厚み100μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0107】
実施例6
二軸押出基でコンパウンドされたZ1038/Z2131=1/1の共重合ポリアミド(ダイアミドZ1117、C10−14アルキレン基を含有、融点130℃(DSC)、ダイセル・エボニック社製)で形成されたフィルム(厚み100μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0108】
実施例7
電子部品(高さ20mm)が実装されたガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)を170℃で2分間加熱した後、その上に共重合ポリアミド(VESTAMELT X1038p1、C10−14アルキレン基を含有、融点125℃(DSC)、エボニック社製)のフィルムをのせ、温度170℃の雰囲気中で2分間加熱し、電子部品も含め、透明な樹脂でコーティングされた実装基板を得た。
【0109】
比較例1
ポリアミド12(ダイアミド L1840、融点178℃(DSC)、ダイセル・エボニック社製)で形成されたフィルム(厚み100μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度220℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0110】
比較例2
ポリエチレン(ノバテックHD、融点132℃(DSC)、三菱化学(株)製)で形成されたフィルム(厚み100μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度160℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0111】
比較例3
ポリエステルエラストマー(ハイトレル5557、融点208℃(DSC)、東レ・デュポン社製)で形成されたフィルム(厚み100μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度230℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0112】
比較例4
電子部品(高さ20mm)が実装されたガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)を170℃で2分間加熱した後、その上にポリアミド12(ダイアミド L1840、融点178℃(DSC)、ダイセル・エボニック社製)のフィルムをのせ、温度220℃の雰囲気中で2分間加熱したが、均一なコーティング膜を形成できなかった。
【0113】
実施例及び比較例の封止剤に関し、密封性、剥離性、及び耐水性を評価した。結果を表1に示す。なお、表中、剥離試験及び耐水試験における各数値は、碁盤目剥離試験において100個の碁盤目のうち剥離した碁盤目の数を示す。
【0114】
【表1】

【0115】
表1から明らかなように、比較例に比べ、実施例では、平坦部及び凸部における高い密封性を示し、密着性及び耐水性に優れ、水蒸気バリア性にも優れている。
(2)積層フィルム
実施例8
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1038、C10−14アルキレン基を含有、融点125℃(DSC)、エボニック社製)で形成された第一層(厚み100μm)の一方の面に、ポリアミド12(ダイアミド L1940、融点178℃(DSC)、ダイセル・エボニック社製)で形成された第二層(厚み200μm)が積層された積層フィルム(サイズ200mm×200mm)の第一層側をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0116】
実施例9
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1051、C10−14アルキレン基を含有、融点130℃(DSC)、エボニック社製)で形成された第一層(厚み100μm)の一方の面に、ポリアミド12(ダイアミド L1940)で形成された第二層(厚み200μm)が積層された積層フィルム(サイズ200mm×200mm)の第一層側をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0117】
実施例10
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1331、C10−14アルキレン基を含有、融点105℃(DSC)、エボニック社製)で形成された第一層(厚み100μm)の一方の面に、ポリアミド12(ダイアミド L1940)で形成された第二層(厚み200μm)が積層された積層フィルム(サイズ200mm×200mm)の第一層側をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0118】
実施例11
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1051)で形成された第一層(厚み100μm)の一方の面に、ポリアミド610(VESTAMID Tera DS16、融点225℃、エボニック社製)で形成された第二層(厚み200μm)が積層された積層フィルム(サイズ200mm×200mm)の第一層側をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度1210℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0119】
実施例12
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1051)で形成された第一層(厚み100μm)の一方の面に、ポリアミド612(ダイアミド D1840、融点215℃(DSC)、ダイセル・エボニック社製)で形成された第二層(厚み200μm)が積層された積層フィルム(サイズ200mm×200mm)の第一層側をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度200℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0120】
実施例13
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1051)で形成された第一層(厚み100μm)の一方の面に、ポリアミドエラストマー(ダイアミド X4442、エステル結合含有、融点175℃(DSC)、ダイセル・エボニック社製)で形成された第二層(厚み200μm)が積層された積層フィルム(サイズ200mm×200mm)の第一層側をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度175℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0121】
実施例14
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1051)で形成された第一層(厚み100μm)の一方の面に、ポリアミドエラストマー(VESTAMID BS0910、エステル結合非含有、融点166℃(DSC)、エボニック社製)で形成された第二層(厚み200μm)が積層された積層フィルム(サイズ200mm×200mm)の第一層側をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度165℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0122】
実施例15
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1038)で形成された第一層(厚み100μm)の一方の面に、ETFE(EP7000、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ダイキン社製)で形成された第二層(厚み200μm)が積層された積層フィルム(サイズ200mm×200mm)の第一層側をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0123】
実施例16
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1038)で形成された第一層(厚み100μm)の一方の面に、熱可塑性ポリエステルエラストマー(ハイトレル5557、融点208℃(DSC)、東レ・デュポン社製)で形成された第二層(厚み200μm)が積層された積層フィルム(サイズ200mm×200mm)の第一層側をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0124】
実施例17
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1038)で形成された第一層(厚み100μm)の一方の面に、熱可塑性ポリエステルエラストマー(ハイトレル5557)で形成された第二層(厚み200μm)を介して、ETFE(EP7000)で形成された第三層(厚み100μm)が積層された積層フィルム(サイズ200mm×200mm)の第一層側をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0125】
参考例1
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1038)で形成されたフィルム(厚み300μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0126】
参考例2
共重合ポリアミド(VESTAMELT X1051)で形成されたフィルム(厚み300μm、サイズ200mm×200mm)をガラスエポキシ樹脂製電子基板(200mm×200mm)上に置き、温度170℃の雰囲気中で加熱し、透明な樹脂でコーティングされた基板を得た。
【0127】
【表2】

【0128】
表2から明らかなように、実施例の積層フィルムは、参考例の単層フィルムに比べて、耐熱性に優れ、最高使用温度を40〜90℃も向上できる。また、実施例の積層フィルムは、参考例の単層フィルムに比べて、耐薬品性(例えば、耐メタノール性、耐アセトン性、耐10%塩酸性、特に、耐メタノール性)も向上できる。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、半導体素子、EL素子、太陽電池セルなどの電子素子又は電子部品、各種電子部品又は電子素子を搭載したプリント基板などを低温でモールド又は封止するのに有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスを被覆して封止するための封止剤であって、共重合ポリアミド系樹脂を含むフィルム状封止剤。
【請求項2】
共重合ポリアミド系樹脂の融点又は軟化点が75〜160℃である請求項1記載のフィルム状封止剤。
【請求項3】
共重合ポリアミド系樹脂が結晶性を有する請求項1又は2記載のフィルム状封止剤。
【請求項4】
共重合ポリアミド系樹脂が結晶性を有するとともに、融点90〜160℃を有する請求項1〜3のいずれかに記載のフィルム状封止剤。
【請求項5】
共重合ポリアミド系樹脂が二元共重合体〜四元共重合体である請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム状封止剤。
【請求項6】
共重合ポリアミド系樹脂が、C8−16アルキレン基を有する長鎖成分に由来する単位を含む請求項1〜5のいずれかに記載のフィルム状封止剤。
【請求項7】
共重合ポリアミド系樹脂が、C9−17ラクタム及びアミノC9−17アルカンカルボン酸から選択された少なくとも一種の成分に由来する単位を含む請求項1〜6のいずれかに記載のフィルム状封止剤。
【請求項8】
共重合ポリアミド系樹脂が、ラウロラクタム、アミノウンデカン酸及びアミノドデカン酸から選択された少なくとも一種の成分に由来する単位を含む請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム状封止剤。
【請求項9】
デバイスの一方の面を被覆するための封止剤である請求項1〜8のいずれかに記載のフィルム状封止剤。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のフィルム状封止剤と、このフィルム状封止剤の一方の面に積層され、かつ耐熱性樹脂で形成された保護層とを含む積層フィルム。
【請求項11】
耐熱性樹脂の融点又は軟化点が、170℃以上である請求項10記載の積層フィルム。
【請求項12】
耐熱性樹脂が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びフッ素樹脂から選択された少なくとも一種である請求項10又は11記載の積層フィルム。
【請求項13】
全体の厚みが10〜1000μmである請求項10〜12のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項14】
デバイスの少なくとも一部を請求項1〜9のいずれかに記載のフィルム状封止剤で覆い、フィルム状封止剤を加熱溶融して冷却し、共重合ポリアミド系樹脂で被覆されたデバイスを製造する方法。
【請求項15】
デバイスの一方の面を請求項1〜9のいずれかに記載のフィルム状封止剤で覆い、一方の面が共重合ポリアミド系樹脂で被覆されたデバイスを製造する請求項14記載の方法。
【請求項16】
請求項1〜9のいずれかに記載のフィルム状封止剤が熱融着して形成された共重合ポリアミド系樹脂の被膜で、少なくとも一部が被覆されたデバイス。

【公開番号】特開2012−87292(P2012−87292A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199852(P2011−199852)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000108982)ダイセル・エボニック株式会社 (31)
【Fターム(参考)】