説明

フォトマスク、金属層の製造方法

【課題】 必要な部分のみに金属層を析出させることができる金属層の製造方法に好適に用いられるフォトマスクを提供する。
【解決手段】 フォトマスク100は、所定波長の紫外光に対して透過性を有する基板102と、前記基板の上方に所定のパターンで形成され、かつ、前記所定波長の紫外光を透過しない、有機系物質からなる遮光層104と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスクおよびこれを用いた金属層の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばフレキシブル基板に配線を形成する方法として、サブトラクティブ法やアディティブ法が知られている。サブトラクティブ法では、フレキシブル基板の全面に金属層を形成し、金属層上にフォトレジストをパターニングして形成し、フォトレジストをマスクとして金属層をエッチングする。アディティブ法では、フレキシブル基板上にフォトレジストをパターニングして形成し、フォトレジストからの開口部にめっき処理によって金属層を析出させる。
【0003】
これらの方法によれば、フォトレジストを最終的に除去する点、さらにサブトラクティブ法では金属層の一部を除去する点において、資源および材料の消費が課題となっていた。また、フォトレジストの形成及び除去工程が必要となるので、製造工程数が多いことが課題となっていた。
【特許文献1】特開平10−65315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、必要な部分のみに金属層を析出させることができる金属層の製造方法、およびかかる製造方法に好適に用いられるフォトマスクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明にかかるフォトマスクは、
所定波長の紫外光に対して透過性を有する基板と、
前記基板の上方に所定のパターンで形成され、かつ、前記所定波長の紫外光を透過しない、有機系物質からなる遮光層と、
を含む。
【0006】
本発明のフォトマスクによれば、所定波長の紫外光に対して精度の高い露光を行うことができる。
【0007】
本発明のフォトマスクにおいて、
前記遮光層は、フォトレジストからなることができる。
【0008】
本発明のフォトマスクにおいて、
前記所定波長の紫外光は、150nmないし230nmの波長を有することができる。
【0009】
本発明にかかる金属層の製造方法は、
基体の表面に界面活性剤層を形成する工程と、
前記基体と光源との間に、本発明にかかるフォトマスクを配置する工程と、
前記光源から前記フォトマスクを介して前記基体の前記界面活性剤層に所定波長の紫外光を照射することによって、前記界面活性剤層をパターニングする工程と、
前記基体に残された界面活性剤層に、触媒を吸着させて触媒層を形成する工程と、
前記触媒層に無電解めっきによって金属を析出させることによって、金属層を形成する工程と、
を含む。
【0010】
本発明の製造方法によれば、パターン精度の高い本発明のフォトマスクを用いて界面活性剤層をパターニングすることができ、縮小投影露光装置などの高価な装置を用いなくとも簡単なプロセスで、低コストかつ高精度に金属層を形成することができる。
【0011】
本発明の製造方法において、
前記界面活性剤層は、カチオン性界面活性剤層からなることができる。
【0012】
本発明の製造方法において、
前記所定波長の紫外光は、150nmないし230nmの波長を有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
1.フォトマスク
図1は、本発明の実施形態にかかるフォトマスク100を模式的に示す断面図である。
【0015】
フォトマスク100は、基板102と、基板102上に形成された遮光層104とを有する。基板102は、所定波長の紫外光に対して透過性を有する。遮光層104は、所定のパターンを有し、かつ、所定波長の紫外光を透過しない。遮光層104は、有機系物質から構成される。かかる有機系物質としては、例えばフォトリソグラフィー技術においてマスクとして用いられるレジスト材料からなることができる。レジスト材料としては、公知のレジスト材料、例えばネガ型、ポジ型のレジスト材料を用いることができる。基板102としては、高純度石英ガラス(例えば真空紫外放射(VUV;vacuum ultraviolet radiation)での透過率が80%以上のもの)を用いることができる。
【0016】
フォトマスク100は、後述するように、紫外光の照射による界面活性剤層のパターニングに用いられる。このパターニングでは、150nmないし230nmの波長を有する紫外光を用いることができる。
【0017】
フォトマスク100は、以下のようにして形成することができる。すなわち、基板102上にレジスト材料をスピン塗布などの方法によって塗布し、塗膜を乾燥させる。その後、公知のリソグラフィー技術、すなわち、塗膜の露光、現像処理を行って所定パターンの遮光層(レジスト層)104を得ることができる。遮光層104の膜厚は、上記紫外光の遮光性を考慮すると、50nmないし200nm程度とすることができる。
【0018】
フォトマスク100において、基板102は、所定波長の紫外光、例えば150nmないし230nmの波長の紫外光を透過し、遮光層104は当該紫外光を透過しない。紫外光の波長がこの範囲にあるできる点で望ましい。
【0019】
このフォトマスク100によれば、所定波長の紫外光に対して精度の高い露光を行うことができる。すなわち、遮光層104として、レジスト層などの有機系物質を用いることにより、例えばクロムなどの金属からなる遮光層に比べて高精度のパターンを有することができる。クロムなどの金属からなる遮光層を用いた場合には、所定波長の紫外光に対して充分に高い遮光性を確保するためには、その膜厚を例えば300nm程度にする必要がある。この金属層をエッチングによってパターニングする際に、金属層の側面がテーパー状になるなど、精度の高いパターニングが難しい。これに対し、本実施形態では、遮光層104としてレジスト層を用いるので、金属層に比べて精度の高いパターニングが可能である。
【0020】
本実施形態のフォトマスク100は、縮小投影露光を行わず、パターニングされる膜に対して等寸のパターニングを行うことができる。
【0021】
2.金属層の製造方法
図2〜図9は、本実施形態に係る金属層の製造方法を模式的に示す図である。図2〜図4は無電解めっきの各工程を説明する図であり、図5〜図9は無電解めっきの各工程における基体を模式的に示す図である。
【0022】
本実施形態にかかる金属層の製造方法は、以下の工程(A)ないし(E)を含むことができる。
(A) 基体の表面に界面活性剤層を形成する工程と、
(B) 基体と光源の間に、本実施形態のフォトマスクを配置する工程と、
(C) 光源からフォトマスクを介して基体上の界面活性剤層に所定波長の紫外光を照射することによって、界面活性剤層をパターニングする工程と、
(D) 基体に残された界面活性剤層に、触媒を吸着させて触媒層を形成する工程と、
(E) 触媒層に無電解めっきによって金属を析出させることによって、金属層を形成する工程。
【0023】
以下、各工程について詳細に説明する。
【0024】
(A) 図2および図5に示す、金属層が形成される基体(シート)10は、特に限定されないが、有機系材料(例えば樹脂)で形成されることができる。基体10として、ポリイミド基体またはポリエステル基体を使用してもよい。基体10は、フレキシブル基体であってもよい。フレキシブル基体としては、FPC(Flexible Printed Circuit)用基材やCOF(Chip On Film)用基材またはTAB(Tape Automated Bonding)用基材を使用してもよい。
【0025】
基体10としては、その表面電位(液中表面電位)が負電位であるものを使用することができる。有機系材料の場合、基体10の表面電位は負電位であることが多い。
【0026】
必要に応じて、基体10をアルカリ洗浄してもよい。こうすることによって、基体10の表面電位のムラを負電位に均一化することができる。具体的には、基体10をアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウムの1重量%〜10重量%溶液)に、室温下において10分〜60分程度浸漬し、その後水洗してもよい。また、このアルカリ洗浄によって、基体10のクリーニングおよび表面粗化処理を同時に行うことができる。これによれば、金属層の基体への密着性の向上を図ることができる。
【0027】
ついで、図6に示すように、基体10の表面(図6では上面のみ図示する)に、界面活性剤層18を設ける。本実施形態では、界面活性剤層18は陽イオン化する性質を有する。すなわち、界面活性剤層18としては、カチオン性界面活性剤(カチオン界面活性剤およびそれと同等の性質を有するもの)を使用することができる。本実施形態では、基体10の表面電位は負電位であるので、界面活性剤層18としてカチオン性界面活性剤を使用すると、基体10の負電位を中和または正電位に反転させることができる。また、界面活性剤を使用することによって、基体10の性質に依存することなく自由に表面電位の調整を行うことができ、また、表面電位を均一にして安定した電位面を形成することができる。
【0028】
本実施形態では、界面活性剤層18は、例えば基体10を界面活性剤溶液に浸漬させることで形成できる。具体的には、基体10を、アルキルアンモニウム系のカチオン性界面活性剤溶液(例えば、セチルトリメチルアンモニウムクロリド等)に室温下で1分〜10分ほど浸漬させた後、純水で水洗する。その後、基体10を窒素雰囲気下において乾燥させる。カチオン性界面活性剤としては、上記以外のアミノシラン系成分を含む水溶性界面活性剤(テクニックジャパン(株)製FPDコンディショナー)を例示できる。
【0029】
(B) 図2に示すように、基体10と光源24との間に、本実施形態にかかるフォトマスク100を配置する。フォトマスク100は、図2では基体10の上方に間隔をあけて配置されているが、実際にはフォトマスク100は基体10に接触させて配置する。光源24、フォトマスク100および基体10は、窒素雰囲気中に配置することができる。窒素雰囲気中であれば、紫外光22は減衰することなく、10mm程度の距離まで照射される。基体10自体が持つ弾性力および反りによって、基体10とフォトマスク100が均一に接触しない場合には、フォトマスク100の外周をホルダによって押さえ、かつ、基体10の裏面をフォトマスク100と同じサイズ分の面積でフォトマスク100側に押し付けてもよい。光源24は、可能な限り基体10に接近させる(例えば10mm以下)。
【0030】
(C) 図2に示すように、光源24からフォトマスク100を介して基体10上の界面活性剤層18に所定波長の紫外光22を照射することによって、界面活性剤層18をパターニングする。詳しくは、フォトマスク100を介して紫外光22を基体10に照射すると、紫外光22は、フォトマスク100の遮光層104によって遮蔽され、それ以外の領域を透過する。紫外光22が照射されると、基体10上の界面活性剤層が紫外光によって化学的に分解される。その結果、図7に示すように、フォトマスク100の遮光層104に対応する第1の領域12に界面活性剤層18が残され、遮光層104以外の領域に対応する第2の領域14の界面活性剤層18は除去され、界面活性剤層18のパターニングが行われる。
【0031】
紫外光22の波長は、界面活性剤層18の界面活性剤を分解することを考慮すると、150nmないし230nmであることができる。光源24としては、Xeガスが封入されたエキシマランプを使用することができる。ランプを使用すれば、レーザ生成のための集光レンズおよびレーザによるスキャン時間が不要となるので、製造プロセスの簡略化を図ることができる。
【0032】
光源24としては、例えば、エキシマVUV/03洗浄装置(メーカー名;ウシオ電機株式会社、型番;UER20−172A/B、ランプ仕様;Xeガスを封入した誘電体バリア放電エキシマランプ)を使用することができる。基体10の材料がポリイミドからなる場合、出力を10mW程度として10分間程度の照射を行う。本実施形態では、基体10の一方の面に紫外光22を照射するが、基体10の両面に所定パターンの金属層を形成する場合には、基体10の各面に順次または同時に紫外光22を照射すればよい。
【0033】
紫外光22の照射後、基体10に対して洗浄(例えば湿式洗浄)を行う。すなわち、洗浄によって、第2の領域14上に残された分解後の界面活性剤層18を除去する。洗浄の方式としては、基体10を洗浄液に浸漬させてもよいし、基体10にシャワーを噴射してもよい。洗浄液として、アルカリ溶液(強アルカリ溶液または弱アルカリ溶液)や純水を使用してもよい。シャワー方式としては、純水シャワー洗浄や高圧ジェット純水洗浄を適用してもよい。洗浄時に超音波振動を加えてもよい。洗浄を行うことによって、第1の領域12では界面活性剤層18が残り、第2の領域14では界面活性剤層18が除去されて基体10の表面が露出する。
【0034】
(D) 図3および図8に示すように、第1の領域12に残された界面活性剤層18上に、触媒層(めっき触媒層)30を設ける。触媒層30は、無電解めっき液において金属層(めっき層)の析出を誘発するものであり、例えばパラジウムであってもよい。触媒が負の電荷を有する場合には、カチオン性界面活性剤層18上に触媒が吸着され、触媒層30が形成される。第2の領域は負に帯電しているか、もしくは第1の領域12に対して相対的に負側であるので、触媒層30は第2の領域14には形成されない。
【0035】
図3に示す例では、基体10を、錫−パラジウムを含む触媒液32に浸漬させる。具体的には、基体10をpH1付近の錫−パラジウムコロイド触媒液に室温で30秒〜3分浸漬させ、充分に水洗する。錫−パラジウムコロイド粒子は、負の電荷を持ち、界面活性剤層(カチオン性界面活性剤)18に吸着される。その後、触媒活性化のために、基体10をホウフッ化酸を含む溶液に室温で30秒〜3分浸漬した後、水洗する。こうすることで、図8に示すように、錫コロイド粒子を除去して、パラジウムのみを界面活性剤層18上に析出させることができる。
【0036】
(E) 図4および図9に示すように、触媒層30に金属層34を析出させる。触媒層30は界面活性剤層18上に設けられ、界面活性剤層18は第1の領域12に沿って形成されているので、金属層34を第1の領域12に沿ったパターンで形成することができる。金属層34は1層から形成してもよいし、複数層から形成してもよい。金属層34の材料は限定されないが、例えば、Ni、Au、Ni+Au、Cu、Ni+Cu、Ni+Au+Cuのいずれかであってもよい。析出させる金属層34の材料に応じて触媒を選択すればよい。
【0037】
例えば、硫酸ニッケル六水和物が主体のめっき液36(温度80℃)に基体10を1分〜3分程度浸漬し、0.1〜0.2μm程度の厚みのニッケル層を形成することができる。あるいは、塩化ニッケル六水和物が主体のめっき液(温度60℃)に基体10を3分〜10分程度浸漬し、0.1〜0.2μm程度の厚みのニッケル層を形成してもよい。
【0038】
本実施形態によれば、触媒層30が界面活性剤層18上に形成されるので、金属層34を基体10の第1の領域12に沿って選択的に形成することができる。
【0039】
本実施形態によれば、パターン精度の高いフォトマスク100を用いて界面活性剤層18を紫外光22の照射によってパターニングし、触媒層30を界面活性剤層18上に設ける。これによって、所定のパターン形状に沿って必要な部分のみに、金属層34を析出させることができる。そのため、縮小投影露光装置などの高価な装置を用いなくとも簡単なプロセスで、低コストかつ高精度に金属層を形成することができる。
【0040】
上述した例では、界面活性剤層18上に触媒層30を形成したが、界面活性剤層18より基体10の露出部に対して親和性の高い触媒を用いることにより、第2の領域に触媒層および金属層を形成することもできる。
【0041】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(たとえば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】実施形態にかかるフォトマスクを示す図。
【図2】実施形態にかかる金属層の製造方法の工程を示す図。
【図3】実施形態にかかる金属層の製造方法の工程を示す図。
【図4】実施形態にかかる金属層の製造方法の工程を示す図。
【図5】実施形態にかかる金属層の製造方法の工程を示す図。
【図6】実施形態にかかる金属層の製造方法の工程を示す図。
【図7】実施形態にかかる金属層の製造方法の工程を示す図。
【図8】実施形態にかかる金属層の製造方法の工程を示す図。
【図9】実施形態にかかる金属層の製造方法の工程を示す図。
【符号の説明】
【0043】
10…基体、12…第1の領域、14…第2の領域、18…界面活性剤層、22…紫外光、24…光源、30…触媒層、34…金属層、100…フォトマスク、102…基板、104…遮光層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定波長の紫外光に対して透過性を有する基板と、
前記基板の上方に所定のパターンで形成され、かつ、前記所定波長の紫外光を透過しない、有機系物質からなる遮光層と、
を含む、フォトマスク。
【請求項2】
請求項1において、
前記遮光層は、フォトレジストからなる、フォトマスク。
【請求項3】
請求項1および2のいずれかにおいて、
前記所定波長の紫外光は、150nmないし230nmの波長を有する、フォトマスク。
【請求項4】
基体の表面に界面活性剤層を形成する工程と、
前記基体と光源との間に、請求項1ないし3のいずれかに記載のフォトマスクを配置する工程と、
前記光源から前記フォトマスクを介して前記基体の前記界面活性剤層に所定波長の紫外光を照射することによって、前記界面活性剤層をパターニングする工程と、
前記基体に残された界面活性剤層に、触媒を吸着させて触媒層を形成する工程と、
前記触媒層に無電解めっきによって金属を析出させることによって、金属層を形成する工程と、
を含む金属層の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記界面活性剤層は、カチオン性界面活性剤層からなる、金属層の製造方法。
【請求項6】
請求項4および5のいずれかにおいて、
前記所定波長の紫外光は、150nmないし230nmの波長を有する、金属層の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−57749(P2007−57749A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−242192(P2005−242192)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】