説明

フォトレジスト用高分子化合物の製造方法、フォトレジスト用高分子化合物及びフォトレジスト用組成物

【課題】現像時、アルカリ現像液に対して均一に溶解するフォトレジスト用高分子化合物の製造方法、その方法により得られるフォトレジスト用高分子化合物、及びそれを含むフォトレジスト用組成物を提供する。
【解決手段】エチレン性二重結合を有する2種以上の重合性化合物を、ラジカル重合することにより半導体素子製造向けフォトレジスト用高分子化合物を製造する方法において、内部に静的攪拌器を内蔵した管状反応器を用い、有機溶媒中に前記2種以上の重合性化合物を含有する混合溶液を連続的に通して重合することを特徴とするフォトレジスト用高分子化合物の製造方法、その方法で得られるフォトレジスト用高分子化合物、並びにフォトレジスト用高分子化合物を含むフォトレジスト用組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトレジスト用高分子化合物の製造方法、フォトレジスト用高分子化合物及びフォトレジスト用組成物に関し、特に、現像時、アルカリ現像液に対して溶解が均一なフォトレジスト用高分子化合物の製造方法、その方法により得られるフォトレジスト用高分子化合物、及びそれを含むフォトレジスト用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、集積回路素子製造に代表される電子デバイス製造分野においては、デバイスの高集積化に対する要求が高まっており、そのため微細パターン形成のためのフォトリソグラフィー技術が必要とされている(非特許文献1)。微細パターン形成のためのフォトレジスト組成物としては、放射線の照射(以下、「露光」という。)により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」という)と、発生した酸の作用によりアルカリ溶解性が変化する、酸解離性官能基を有する高分子化合物、とを含有する「化学増幅型レジスト」が知られている。
【0003】
パターンのさらなる微細化に向け、リソグラフィにおける最大の課題はラインエッジラフネス(LER)、またはパターン幅揺らぎ(LWR)とよばれるパターン表面上の荒れの大きさである。例えばLWRは最少線幅に対して8%以下に抑える必要があるといわれている(非特許文献2)。今後現在よりもパターン線幅をより狭くするために、LWRの小さなフォトレジストが求められている。
LWRの要因についてはこれまでにも様々指摘されており未だ明確ではないが、アルカリ現像時、現像液にレジストが不均一に溶解するとLWRが大きくなると考えられており、その原因の一つとしてレジスト組成・ポリマー組成の不均一性が挙げられている(非特許文献3)。
【0004】
このような溶解が不均一になる原因としては、以下のような原因が考えられる。
従来、フォトレジスト用高分子化合物の製造は、バッチ反応で、加熱した溶媒中にラジカル重合開始剤溶液、および単量体混合物溶液を別々または同じ導入口から、同時に数時間かけて滴下し、滴下終了後そのまま数時間加熱を続けて重合を追い込むといった滴下重合法で行われている(例えば、特許文献1)。この方法では、例えば、滴下に4時間、追い込みに2時間かかる反応条件の場合、初期に滴下された単量体混合物から得られる高分子化合物は6時間反応器の中で加熱されるが、終期に滴下された単量体混合物から得られる高分子化合物は2時間しか加熱されないこととなり、熱履歴が異なる高分子の集合体が得られる。さらに近年では、重合時の発熱による反応器内部の温度上昇を防ぐために、滴下溶液を希薄条件でゆっくり滴下を行うために重合時間も長くなる傾向にあった。フォトレジスト用高分子化合物はアルカリ現像液に可溶性をもたらす酸解離性基を有しているために、重合加熱中に一部脱離する可能性は否めない。加熱された時間が大きく異なることにより、酸解離性基の一部は不均一に脱離し、その結果、従来の滴下重合法で得られる高分子化合物の組成は不均一、すなわち酸解離性基の含量が異なる高分子の集合体である可能性が有る。特に微細パターンを得るための高感度フォトレジストには、活性エネルギーがより低い酸解離性基を有することが多く、その影響は顕著に表れるものと考えられる。
このように、酸解離性基の含量が異なる高分子の集合体となることから、アルカリ現像液に対して溶解が不均一になると考えられる。
【0005】
【非特許文献1】国際半導体技術ロードマップ(ITRS:Internationl Technology Roadmap of Semiconductors)2007年度版
【非特許文献2】国際半導体技術ロードマップ(ITRS:Internationl Technology Roadmap of Semiconductors)2004年度版
【非特許文献3】最新レジスト材料ハンドブック(情報機構)、p. 201(2005年)
【特許文献1】特開2000−159758
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、現像時、アルカリ現像液に対して均一に溶解するフォトレジスト用高分子化合物の製造方法、その方法により得られるフォトレジスト用高分子化合物、及びそれを含むフォトレジスト用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、内部に静的攪拌器を備えた管状反応器に、連続的にラジカル重合開始剤と重合性化合物の単量体(以下、単に単量体と言うことがある)の混合溶液を通じて重合反応を行うことで、アルカリ現像時、現像液への溶解が均一となるフォトレジスト用高分子化合物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、エチレン性二重結合を有する2種以上の重合性化合物を、ラジカル重合することにより半導体素子製造向けフォトレジスト用高分子化合物を製造する方法において、静的攪拌器を内蔵した管状反応器を用い、有機溶媒中に前記2種以上の重合性化合物を含有する混合溶液を連続的に通して重合することを特徴とするフォトレジスト用高分子化合物の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、その方法で得られるフォトレジスト用高分子化合物、並びにフォトレジスト用高分子化合物を含むフォトレジスト用組成物を提供するものである。
【0009】
このように、本発明では、内部に静的攪拌機を備えたプラグフロー性の高い管状反応器を用い、連続的に重合することを特徴としている。プラグフローとは押し出し流れとも呼ばれ、流れ方向には液の混合が生じない流れであり、プラグフロー性が高い管状反応器では、流れ方向に垂直な断面で均一で、水平方向(流れ方向)には、殆ど混合されないために、これを用いて連続的に重合を行った場合、滞留時間分布の狭い、すなわち反応時間分布の狭い高分子化合物を得ることができる。さらにバッチに比べて熱交換性も高いため、重合発熱量が大きくなるような、基質濃度高い反応条件においても、重合温度を容易に一定に保つことが可能であり、結果として重合時間を従来のバッチ式滴下重合法に比べ短くすることができた。その結果、レジストポリマー組成がより均一な、酸解離性基含量が一定である高分子の集合体を得ることができるようになり、アルカリ現像液に対して溶解が均一なフォトレジスト用高分子化合物が得られる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法により得られたフォトレジスト用高分子化合物は、従来に比べて均質性が高く、それを用いたフォトレジスト組成物は、現像液への溶解がより均一である。現像液への溶解が均一になることでLWRの小さい微細パターンを得ることができると考えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明のフォトレジスト用高分子化合物の製造方法は、エチレン性二重結合を有する2種以上の重合性化合物を、ラジカル重合することにより半導体素子製造向けフォトレジスト用高分子化合物を製造する方法において、静的攪拌器を内蔵した管状反応器を用い、有機溶媒中に前記2種以上の重合性化合物を含有する混合溶液を連続的に通して重合する。
【0012】
本発明の製造方法で用いる反応器は、優れたプラグフロー性を有する反応器、即ち内部に静的攪拌機を備えた管状反応器を用いる。管状反応器は、十分に温度調節が可能である設備内にあり、例えば反応管外部にジャケットを備え、熱媒を循環させたものが挙げられる。反応管の内径には特に制限無いが、流通する反応液の性質、流速に対して、十分にプラグフロー性が得られる範囲のせん断速度を得られることが好ましい。反応管の長さについて特に制限はないが、通常0.01〜100m、好ましくは0.05〜50m、より好ましくは0.1〜10mの範囲である。管状反応器に備えられた静的攪拌機は、例えば管内に流入した重合液の流れの分割と流れの方向を変え、分割と合流を繰り返すことにより混合するものがあげられ、具体的にはケニックス式スタティックミキサー、スルザー式SMX型、SMR型ミキサーなどが好ましい。静的攪拌機は反応管内に固定されていても、抜き出せる形でも構わないが、反応管洗浄が簡便になることから抜き出せる形が好ましい。
【0013】
本発明では、温度調節媒体により内部温度が調節された前記反応管に、有機溶媒中に単量体混合物とラジカル重合開始剤を含む混合溶液を導入し、静的攪拌機により常に均一液状態で流通させる。一般的に反応管前半部では加温、反応管後半部では冷却する。反応管前半部で内容液が加熱されることより、ラジカル重合開始剤よりラジカルを発生し、重合が開始される。反応管後半部で反応液が冷却されることで、活性ラジカルは失活し、重合が停止される。反応管前半部及び後半部の温度は、特に限定されないが、反応管前半部の温度は通常0〜200℃、好ましくは50〜150℃、反応管後半部の温度は通常−50〜50℃、好ましくは−20〜20℃である。
また、本発明で用いる反応管は、複数の反応管を連結したものであっても良い。
【0014】
ラジカル重合開始剤および単量体混合物を反応管へ導入にするにあたっては、開始剤、単量体混合物、および溶媒を混合した溶液を反応管に導入する様式でも、開始剤溶液と単量体混合物を反応管導入直前にミキサーにて混合する様式でもかまわない。導入は、1箇所のみからでも良いし、複数箇所からでも構わない。流通方向に沿って複数箇所で開始剤および単量体混合物の混合溶液を反応管へ導入した場合、反応管内の単量体濃度の変化が小さくなり、得られる高分子化合物の中の分子量が一定になる傾向にあり、好ましい。
【0015】
本発明において、ラジカル開始剤および単量体混合物の混合溶液には、必要により連鎖移動剤、および添加剤を含んでも構わない。単量体成分としては、2種以上の単量体(重合性化合物)からなる。本発明において、単量体としては、公知の単量体が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、不飽和ジカルボン酸の無水物、オレフィン、含フッ素単量体、アクリルアミド、塩化ビニル等が含まれる。また、単量体成分としては、ラクトン骨格を有する単量体(1)および、酸解離性基を有する単量体(2)を含むものが好ましく、さらに親水性基を有する単量体(3)を含有するものが好ましい。単量体成分は、非極性脂環式骨格を有する単量体(4)を含有してもよく、他の単量体(5)を含有してもよい。
【0016】
ラクトン骨格を有する単量体(1)は、レジスト膜の基板への密着性を向上させる成分であり、環内にカルボニルオキシ基(−C(O)O−)を含む環状の飽和炭化水素基を有する単量体である。ラクトン骨格を有する単量体(1)の量は、特に制限されるものではないが、レジスト膜の基板への密着性、感度、および解像度の点から、単量体全成分中、10〜95モル%の範囲であることが好ましく、さらに20〜90モル%の範囲であることが好ましい。
ラクトン骨格を有する単量体(1)としては、フォトレジスト用高分子化合物の製造に用いられる公知の単量体が挙げられる。これに限定されるものではないが、例として式(1−1)〜式(1−28)が挙げられる。式(1−1)〜式(1−28)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0017】
【化1】

【0018】
酸解離性基を有する単量体(2)は、光酸発生剤から発生する酸により開裂する結合を有する基であり、該結合の開裂により酸解離性基の一部または全部が重合体の主鎖から解離する基である。酸解離性基を有する単量体(2)の量は、特に制限されるものではないが。レジスト膜の感度、解像度、および基板への密着性の点から、単量体全成分中、10〜80モル%の範囲であることが好ましく、さらに20〜70モル%の範囲であることが好ましい。
酸解離性基を有する単量体(2)としては、フォトレジスト用高分子化合物の製造に用いられる公知の単量体が挙げられる。これに限定されるものではないが、例として式(2−1)〜式(2−46)が挙げられる。式(2−1)〜式(2−46)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、R’、R’’はそれぞれ独立に炭素数1〜10の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基を表す。
【0019】
【化2】

【0020】
親水性基を有する単量体(3)は、レジストパターンの矩形性を向上させる成分である。親水性基は、−C(CF32−OH、ヒドロキシ基、シアノ基、メトキシ基、カルボキシ基およびアミノ基からなる群から選択される少なくとも1種である。親水性基を有する単量体(3)の量は、特に制限されるものではないが、レジストパターンの矩形性、基板密着性、感度の点から、単量体全成分中、0〜50モル%の範囲であることが好ましく、さらに0〜30モル%の範囲であることが好ましい。
親水性基を有する単量体(3)としては、フォトレジスト用高分子化合物の製造に用いられる公知の単量体が挙げられる。これに限定されるものではないが、例として式(3−1)〜式(3−10)が挙げられる。式(3−1)〜式(3−10)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0021】
【化3】

【0022】
非極性脂環式骨格を有する単量体(4)は、レジストパターンのドライエッチング耐性を向上させる成分である。非極性脂環式骨格を有する単量体(4)の量は、特に制限されるものではないが、単量体全成分中、20モル%以下であることが好ましい。
非極性脂環式骨格を有する単量体(4)としては、フォトレジスト用高分子化合物の製造に用いられる公知の単量体が挙げられる。これに限定されるものではないが、例として式(4−1)〜式(4−5)が挙げられる。式(4−1)〜式(4−5)中、Rは水素原子またはメチル基を表す。
【0023】
【化4】

【0024】
他の単量体(5)としては、これに限定されるものではないが、例として(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸n−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸iso−プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸iso−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸tert−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシ−n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸1−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロ−n−プロピル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−n−プロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸メチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸エチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸2−エチルヘキシル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−プロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸iso−プロピル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸iso−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸tert−ブチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸メトキシメチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸エトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−プロポキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸iso−プロポキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸n−ブトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸iso−ブトキシエチル、α−(トリ)フルオロメチルアクリル酸tert−ブトキシエチル等の直鎖もしくは分岐構造を持つ(メタ)アクリル酸エステル;
2−メチル−2,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチルエーテル、1,4−ブタンジオールジ(1−(メタ)アクリロイルオキシ)メチルエーテル、(メタ)アクリロイルオキシエチレングリコールダイマー(1−(メタ)アクリロイルオキシ)エチルエーテル、(メタ)アクリロイルオキシエチレングリコールダイマー(1−(メタ)アクリロイルオキシ)メチルエーテル等の酸分解性基を有する多官能(メタ)アクリル酸エステル;
スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−ヒドロキシスチレン、p−tert−ブトキシカルボニルヒドロキシスチレン、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシスチレン、3,5−ジメチル−4−ヒドロキシスチレン、p−tert−ぺルフルオロブチルスチレン、p−(2−ヒドロキシ−iso−プロピル)スチレン等の芳香族アルケニル化合物;
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸およびカルボン酸無水物;
エチレン、プロピレン、ノルボルネン、テトラフルオロエチレン、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、塩化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ビニルピロリドン;等が挙げられる。
【0025】
有機溶媒については、重合反応を阻害しなければ特に制限はなく、例えばプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテル;乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソピロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ジエチルエーテル、ジソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;トルエン、o−キシレンなどの炭化水素;ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロベンゼンなどのハロゲンが挙げられる。有機溶媒は、単独で使用しても良いし、2種類以上を混合して使用してよい。有機溶媒としては、金属含有量が厳密に管理された電子材料グレードのものが好ましい。
【0026】
本発明で用いるラジカル重合開始剤については特に制限はなく、通常使用される公知のラジカル重合開始剤の中から、原料の単量体や重合溶媒の種類に応じ適宜選択して用いることができる。このようなラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物、ジスルフィド化合物、レドックス系開始剤、過硫酸などが挙げられる。有機過酸化物の例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルアセトアセトートパーオキサイド、アセチルアセテートパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド、 などのパーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)2−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどのパーオキシケタール類、P−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類としては、具体的には、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−パーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類、イソブチリルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、サクシン酸パーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3,−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシマレイン酸、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアセテートなどのパーオキシエステル類、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類などが挙げられる。アゾ系開始剤として、 2、2‘−アゾイソブチロニトリル、ジメチル―2,2’−アゾイソブチレート、2, 2‘−アゾビス(2, 4−ジメチルバレロニトリル)などが挙げられる。これらラジカル重合開始剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上混合して使用してもよい。ラジカル重合開始剤の使用量は、用いる原料の単量体やラジカル重合開始剤の種類、得られる重合体の所望分子量などに応じて適宜選定されるが、通常単量体全成分合計1モル部に対して0.0001〜0.5モル部の範囲であり、0.001〜0.3モル部の範囲で選定されるのが好ましい。
【0027】
本発明においては、必要に応じて連鎖移動剤を使うことができる。連鎖移動剤としては、例えばドデカンチオール、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種類以上を併用しても良い。連鎖移動剤を使用する場合、その使用量は、単量体全成分合計1モルに対して、通常0.005〜0.2モルの範囲であり、0.01〜0.15モルの範囲であるのが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法において、重合温度、反応液の流通させる速度については、特に制限はないが、重合熱を十分に除熱し、反応温度を一定に保つことのできる流量・重合温度で反応を行うのが好ましい。
以上の方法で得られた高分子化合物(6)は、再沈殿などの通常の操作により単離可能である。単離した高分子化合物(6)は真空乾燥などで乾燥することができる。
【0029】
上記再沈殿の操作で用いる溶媒としては、例えばペンタン、ヘキサンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、キシレンなどの芳香族炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;ニトロメタンなどのニトロ化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン;酢酸などのカルボン酸;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネートなどのカーボネート;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール; 水が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。溶媒の使用量は、高分子化合物の種類、溶媒の種類によっても異なるが、通常高分子化合物1質量部に対して0.5〜100質量部の範囲であるのが好ましく、経済的な観点からは、1〜50質量部の範囲であるのがより好ましい。
【0030】
上記方法により得られる高分子化合物(6)の具体例としては、例えば下記式(6−1)から(6−56)に示す化学構造式で示される高分子化合物(式中、a、b、c、dおよびeは、それぞれの繰り返し単位のモル比を表し、a+b=1、およびc+d+e=1である。)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
本発明の製造方法により得られる高分子化合物(6)の重量平均分子量(Mw)は特に制限は無いが、通常500〜50000の範囲、好ましくは1000〜30000の範囲であると、後述するフォトレジスト組成物の成分として有用である。本発明ではかかるMwおよび数平均分子量(Mn)の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー法(GPC法)により、TSK−gel supermultipore HZ−M(商品名:東ソー株式会社製、4.6mm×150mm)3本を直列につないだものを使用し、カラム温度40℃、示差屈折率計温度40℃、テトラヒドロフランを溶媒とし、溶離液の流速0.35mL/分の条件で測定した。標準ポリスチレンで作成した検量線を元にして算出できる。また、重量平均分子量(Mw)を数平均分子量(Mn)で除することにより分散度(Mw/Mn)を求められ、分散度に特に制限は無いが、通常1.0〜5.0の範囲、好ましくは1.0〜2.5の範囲であると、後述するフォトレジスト組成物の成分として有用である。
【0034】
上記の方法により得られる高分子化合物(6)と、後述の溶剤および光酸発生剤、並びに必要に応じて塩基性化合物、界面活性剤および他の添加物を配合することにより、フォトレジスト組成物を調製することができる。以下、高分子化合物(6)を配合したフォトレジスト組成物(以下、フォトレジスト組成物(7)と称する。)について説明する。
【0035】
フォトレジスト組成物(7)に配合する溶剤としては、例えばプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1, 4−ジオキサンなどのエーテルなどが挙げられる。溶剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
溶剤の配合量は、高分子化合物(6)1質量部に対して、通常、1〜50質量部の範囲であり、2〜25質量部の範囲であるのが好ましい。
【0036】
光酸発生剤としては、従来から、化学増幅型レジストに通常用いられる光酸発生剤を用いることができ、例えばp−トルエンスルホン酸2−ニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,6−ジニトロベンジル、p−トルエンスルホン酸2,4−ジニトロベンジルなどのニトロベンジル誘導体;1,2,3−トリス(メタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(トリフルオロメタンスルホニルオキシ)ベンゼン、1,2,3−トリス(p−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンなどのスルホン酸エステル;ビス(ベンゼンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(p−トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4−ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1−ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(n−ブチルスルホニル)ジアゾメタンなどのジアゾメタン誘導体;トリフルオロメタンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸(p−tert−ブトキシフェニル)ジフェニルスルホニウム、p−トルエンスルホン酸トリス(p−tert−ブトキシフェニル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸トリナフチルスルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸シクロヘキシルメチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、トリフルオロメタンスルホン酸(2−ノルボルニル)メチル(2−オキソシクロヘキシル)スルホニウム、1,2'−ナフチルカルボニルメチルテトラヒドロチオフェニウムトリフレートなどのオニウム塩;ビス−O−(p−トルエンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシム、ビス−O−(n−ブタンスルホニル)−α−ジメチルグリオキシムなどのグリオキシム誘導体;N−ヒドロキシスクシンイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミドトリフルオロメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシスクシンイミド1−プロパンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシイミドp−トルエンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドメタンスルホン酸エステル、N−ヒドロキシナフタルイミドベンゼンスルホン酸エステルなどのN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体;2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(5−メチル−2−フリル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−[2−(3,5−ジメトキシフェニル)エテニル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジンなどのハロゲン含有トリアジン化合物などが挙げられる。これらの光酸発生剤は単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
光酸発生剤の使用量は、フォトレジスト組成物(7)の感度および現像性を確保する観点から、前記高分子化合物(6)100質量部に対して、通常、0.1〜30質量部の範囲であるのが好ましく、0.5〜10質量部の範囲であるのがより好ましい。
【0037】
フォトレジスト組成物(7)には、フォトレジスト膜中における酸の拡散速度を抑制して解像度を向上するために、必要に応じて塩基性化合物を、フォトレジスト組成物(7)の特性が阻害されない範囲の量で配合することができる。
かかる塩基性化合物としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−(1−アダマンチル)アセトアミド、ベンズアミド、N−アセチルエタノールアミン、1−アセチル−3−メチルピペリジン、ピロリドン、N−メチルピロリドン、ε−カプロラクタム、δ−バレロラクタム、2−ピロリジノン、アクリルアミド、メタクリルアミド、t−ブチルアクリルアミド、メチレンビスアクリルアミド、メチレンビスメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メトキシアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどのアミド;ピリジン、2−メチルピリジン、4−メチルピリジン、ニコチン、キノリン、アクリジン、イミダゾール、4−メチルイミダゾール、ベンズイミダゾール、ピラジン、ピラゾール、ピロリジン、ピペリジン、テトラゾール、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピペラジン、1, 4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリエタノールアミン等のアミンを挙げることができる。これらは単独で使用することも、2種類以上を混合して使用することも可能である。塩基性化合物を使用する場合、その使用量は使用する塩基性化合物の種類により異なるが、光酸発生剤1モルに対して、通常、0.01〜10モルの範囲で使用し、0.05〜1モルの範囲で使用することがより好ましい。
【0038】
フォトレジスト組成物(7)には、塗布性を向上させるため、所望により、さらに界面活性剤をフォトレジスト組成物(7)の特性が阻害されない範囲の量で配合することができる。
かかる界面活性剤としては、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテルなどが挙げられる。
界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。界面活性剤を使用する場合、その使用量は、高分子化合物(6)100質量部に対して、通常2質量部以下である。
【0039】
さらに、フォトレジスト組成物(7)には、その他の添加剤として、増感剤、ハレーション防止剤、形状改良剤、保存安定剤、消泡剤などを、フォトレジスト組成物(7)の特性が阻害されない範囲の量で配合することができる。
【0040】
フォトレジスト組成物(7)は、基板に塗布し、通常、70〜160℃で1〜10分間プリベークし、所定のマスクを介して放射線を照射(露光)後、70〜160℃で1〜5分間ポストエクスポージャーベークして潜像パターンを形成し、次いで現像液を用いて現像することにより、所定のレジストパターンを形成することができる。
【0041】
現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア水などの無機塩基;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩などを溶解したアルカリ性水溶液などが挙げられる。これらの中でも、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの第四級アンモニウム塩を溶解したアルカリ性水溶液を使用するのが好ましい。現像液の濃度は通常、0.1〜20質量%の範囲であり、0.1〜10質量%の範囲であるのがより好ましい。
【0042】
露光には、種々の波長の放射線、例えば、紫外線、X線などが利用でき、半導体レジスト用では、通常、g線、i線、XeCl、KrF、KrCl、ArF、ArClなどのエキシマレーザーおよびEUV光が使用されるが、中でも微細加工の観点から、ArFエキシマレーザーを使用するのが好ましい。露光量は、0.1〜1000mJ/cm2の範囲であるのが好ましく、1〜500mJ/cm2の範囲であるのがより好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はかかる実施例により何ら限定されない。
なお、重量平均分子量(Mw)および分散度(Mw/Mn)は、検出器として示差屈折率計を用い、溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)を用いたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、標準ポリスチレンで作成した検量線による換算値として求めた。
GPC測定:カラムとして、TSK−gel supermultipore HZ−M(商品名:東ソー株式会社製、4.6mm×150mm)3本を直列につないだものを使用し、カラム温度40℃、示差屈折率計温度40℃、溶離液の流速0.35mL/分の条件で測定した。
【0044】
実施例1
(1)管状反応器の準備
内部にノリタケ社製スタティックミキサーを備えた、内径5mmφ、長さ2mの反応管1(商品名:SUS316製)、同じく内径8mmφ、長さ4mの反応管2、および内径5mmφ、長さ33cmの反応管3を直列につなぎ、管状反応器を準備した。
(2)フォトレジスト用高分子化合物の製造
有機溶媒として1−メトキシ−2−プロパノール480mlに対し、単量体として2−メタクリロイルオキシ−2−メチルアダマンタン(MAdM)74.8g、1−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシアダマンタン(HAdM)32.6g、およびα−メタクリロイルオキシ−γ−ブチロラクトン(GBLM)45.7gを溶解したものに、窒素バブリングを10分以上行い単量体混合物溶液とした。これにラジカル重合開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート13.3gを混合したものを反応混合液とし、プランジャーポンプを用い流速5ml/minで前記反応管に導入した。反応管1および2は95℃の恒温槽に浸し、反応管3は0℃の恒温槽に浸し、出口にて反応混合液を回収した。得られた反応混合液を、反応混合液に対して10倍量のメタノールに、攪拌しながら35℃で滴下し生成した沈殿物をろ取した。得られた沈殿物を上記と同重量のメタノールで洗浄した後、該沈殿物を、減圧下、50℃で10時間乾燥し、フォトレジスト用高分子化合物(A−1)87.1gを得た。得られた高分子化合物のMw、分散度(Mw/Mn)を表1に示す。
【0045】
実施例2
実施例1において、単量体としてMAdM 93.5g、HAdM 24.4g、GBLM 40.0gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(A−2)のMw、分散度を表1に示す。
【0046】
実施例3
実施例1において、単量体として2−アクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン(EAdA)94.0g、1−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシアダマンタン(HAdA)23.0g、5−メタクリロイルオキシ−2,6−ノルボルナンカルボラクトン(NLAM)51.0gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(A−3)のMw、分散度を表1に示す。
【0047】
実施例4
実施例1において、単量体として1−メタクリロイルオキシ−1−メチルシクロヘキサン(MCHM)59.7g、HAdA 30.7g、NLAM 56.6gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(A−4)のMw、分散度を表1に示す。
【0048】
実施例5
実施例1において、単量体として1−メタクリロイルオキシ−1−エチルシクロオクタン(ECOM)73.5g、HAdA 30.7g、NLAM 56.6gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(A−5)のMw、分散度を表1に示す。
【0049】
実施例6
実施例1において、単量体として2−メタクリロイルオキシ−2−エチルアダマンタン(EAdM)111.8g、3−メタクリロイルオキシ−3−メチル−5−ペンタノリド(MLMA)56.8gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(A−6)のMw、分散度を表1に示す。
【0050】
実施例7
実施例1において、単量体として4−メタクリロイルオキシ−4−メチルピラン(MPMA)60.3g、HAdA 30.7g、NLAM 56.6gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(A−7)のMw、分散度を表1に示す。
【0051】
実施例8
実施例1において、単量体として1−(テトラヒドロピラン−5−オン−2−イル)シクロへキシリデン=メタクリラート(CBMA)80.5g、HAdA 30.7g、NLAM 56.6gを用いた以外は、実施例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(A−8)のMw、分散度を表1に示す。
【0052】
比較例1
攪拌器、温度計、還流冷却管、モノマー溶液滴下口、及び窒素導入管を備えた内容積200mlの丸底フラスコに、窒素雰囲気下、メチルエチルケトン25g導入し、75℃に昇温後、単量体としてMAdM 19.3g、HAdM 8.8g、GBLM 13.0g、アゾジイソブチロニトリル(AIBN)1.1g、およびメチルエチルケトン70.5gの混合溶液を4時間かけてモノマー溶液滴下口から滴下した。滴下後、同温度で2時間熟成した。得られた反応混合液を、反応混合液に対して10倍量のメタノールに、攪拌しながら35℃で滴下し生成した沈殿物をろ取した。得られた沈殿物を上記と同重量のメタノールで洗浄した後、該沈殿物を、減圧下、50℃で10時間乾燥し、フォトレジスト用高分子化合物(B−1)35.3gを得た。得られた高分子化合物のMw、分散度を表1に示す。
【0053】
比較例2
比較例1において、単量体としてEAdA 24.1g、HAdA 6.2g、NLAM 11.4gを用いた以外は、比較例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(B−2)のMw、分散度を表1に示す。
【0054】
比較例3
比較例1において、単量体としてMCHM 15.0g、HAdA 8.3g、NLAM 13.0gを用いた以外は、比較例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(B−3)のMw、分散度を表1に示す。
【0055】
比較例4
比較例1において、単量体としてECOM 18.0g、HAdA 8.3g、NLAM 13.3gを用いた以外は、比較例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(B−4)のMw、分散度を表1に示す。
【0056】
比較例5
比較例1において、単量体としてMPMA 15.2g、HAdA 8.3g、NLAM 13.0gを用いた以外は、比較例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(B−5)のMw、分散度を表1に示す。
【0057】
比較例6
比較例1において、単量体としてCBMA 20.8g、HAdA 8.3g、NLAM 13.0gを用いた以外は、比較例1と同様に実施した。得られた高分子化合物(B−6)のMw、分散度を表1に示す。
【0058】
実施例1〜8及び比較例1〜6の評価
(1)膜抜け感度の測定
実施例1〜8および比較例1〜6で得られた高分子化合物A−1〜8、B−1〜6を100質量部と、光酸発生剤としてTPS−109(製品名、みどり化学株式会社製)を3質量部と、溶媒として、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート/乳酸エチル=1/1の混合溶媒を用いて、それぞれを混合し、高分子化合物の濃度が12質量%のフォトレジスト組成物14種類を調製した。これらのフォトレジスト組成物を、フィルター[四フッ化エチレン樹脂(PTFE)製、孔径0.2μm]を用いてろ過した。クレゾールノボラック樹脂(群栄化学製PS−6937)6質量%濃度のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート溶液をスピンコーティング法により塗布して、ホットプレート上で200℃で90秒間焼成することにより、膜厚約100nmの反射防止膜(下地膜)を形成させた直径10cmのシリコンウエハー上に、該ろ液をそれぞれスピンコーティング法により塗布し、ホットプレート上で130℃、90秒間プリベークして膜厚約300nmのレジスト膜を形成させた。このレジスト膜に、1mm×5mmのスリットを通して、波長193nmのArFエキシマーレーザー光を、段階的に露光量を変化させながら露光した。露光後は、ホットプレート上、130℃で90秒間ポストエクスポージャーベークした後、2.38質量%−テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて60秒間現像処理した。現像後のウェハーを目視観察して、レジストが膜抜けする最少露光量(膜抜け感度Eth)を求めた。その結果を表1に示す。
【0059】
(2)溶解均一性の評価
実施例1〜8および比較例1〜6で得られた高分子化合物を用いて、それぞれ(1)と同様の方法でシリコンウェハー上にレジスト膜を形成した。このレジスト膜に1mm×5mmのスリットを通して、ArFエキシマーレーザー光を、各々(1)で得られた膜抜け感度Ethで全20スポット続けて露光した。露光後は、ホットプレート上、130℃で90秒間ポストエクスポージャーベークした後、2.38質量%−テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液にて60秒間現像処理した。現像後のウェハー上の20スポットについて、目視で確認し、とけ残りあるスポット数が全くないものを○、10未満のものを△、10以上あるものを×として溶解均一性の評価とした。その結果を表1に示す。
【0060】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性二重結合を有する2種以上の重合性化合物を、ラジカル重合することにより半導体素子製造向けフォトレジスト用高分子化合物を製造する方法において、静的攪拌器を内蔵した管状反応器を用い、有機溶媒中に前記2種以上の重合性化合物を含有する混合溶液を連続的に通して重合することを特徴とするフォトレジスト用高分子化合物の製造方法。
【請求項2】
前記混合溶液がラジカル重合開始剤を含有する請求項1に記載のフォトレジスト用高分子化合物の製造方法。
【請求項3】
前記2種以上の重合性化合物が、少なくともラクトン骨格を有する重合性化合物および酸解離性基を有する重合性化合物を含む請求項1に記載のフォトレジスト用高分子化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られるフォトレジスト用高分子化合物。
【請求項5】
重量平均分子量が1000〜30000の範囲である請求項4に記載のフォトレジスト用高分子化合物。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の方法で得られるフォトレジスト用高分子化合物を含むフォトレジスト用組成物。

【公開番号】特開2010−138250(P2010−138250A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314772(P2008−314772)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】