説明

フッ素置換ピリジンN−オキサイド系トロンビンモジュレーターおよび窒素含有ヘテロアリールのN−オキサイド化方法

本発明は、哺乳動物におけるトロンビン活性に関連した病気および症状を予防または治療するための式Iで表される化合物またはこれの製薬学的に許容され得る塩を記述するものである。本発明は、また、窒素含有ヘテロアリールの新規なN−オキサイド化方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トロンビン阻害剤として機能する新規な化合物に関し、本発明は、また、窒素含有ヘテロアリールの新規なN−オキサイド化方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
セリンプロテアーゼトロンビンが止血および血栓症で中心的な役割を占めており、そして多因子蛋白質として血小板、内皮細胞、平滑筋細胞、白血球、心臓およびニューロンに対していろいろな効果を誘発する。内因性経路(接触活性化)または外因性経路(血漿が内皮以外の表面に接触するか、血管壁が損傷を受けるか或は組織因子が放出させることによって活性化)のいずれかによって凝血カスケードが活性化すると、トロンビンに集中する一連の生化学的イベントがもたらされる。トロンビンはフィブリノーゲンを開裂させ、それによって最終的に止血血栓(血塊形成)がもたらされ、細胞表面のトロンビン受容体がユニークに蛋白質分解によって開裂を起こすことで血小板が強力に活性化され、そしてフィードバック機構によってそれ自身の産生が自己増加する。このように、トロンビンの機能を阻害する阻害剤は、心臓血管病および心臓血管以外の病気にかかっているヒトを治療する効力を有する。
【0003】
血管内血栓の生体内診断映像化方法が以前に報告された。そのような映像化方法では、検出可能なように放射性もしくは常磁性原子による標識が付けられている化合物が用いられる。例えば、ガンマ放出体であるIn−111による標識が付けられている血小板を血栓検出用映像剤として用いることができる。加うるに、常磁性コントラスト剤(contrasting agent)であるガドリニウムジエチレントリアミンペンタ酢酸を急性心筋梗塞を血栓溶解で治療した患者の磁気共鳴映像化方法で用いることが報告された。
【0004】
現在入手可能なプロテアーゼ阻害剤よりも高い生物学的利用能を示しかつ副作用が少ない効力のある選択的プロテアーゼ阻害剤である非ペプチド系化合物の必要性が継続して存在する。従って、強力な阻害能力を有しかつ哺乳動物に対する毒性が低いことで特徴づけられる新規なプロテアーゼ阻害剤はいろいろな病気に効力のある価値有る治療薬であり、そのような治療には、哺乳動物のいろいろな蛋白分解病症状の治療が含まれる。
【0005】
ピリジンおよび他のN含有ヘテロアリール、例えばピリミジン、キノリン、ピラジン、ベンゾオキサジアゾールおよびピリダジノキノリンなどからそれらのN−オキサイドを生じさせる酸化が薬剤開発プログラムで時には用いられる。そのような変換を実施する目的で数多くの方法が開発されてきた。多くの場合、そのような変換は過酸、例えばメタ−クロロ過安息香酸、モノ過フタル酸マグネシウムまたはインシトゥで生じさせた過酸(例えば30%の過酸化水素水溶液と無水トリフルオロ酢酸もしくは無水酢酸などを用いて生じさせた)を用いて達成され得る。電子が不足しているある種のピリジンの酸化は、触媒量のMTO(MeReO)と30%のHを共酸化剤として用いることでか、或は無水トリフルオロ酢酸と過酸化水素−尿素複合体(非特許文献1)を用いることでか、或はOxone(商標)と硫酸からインシトゥで生じさせたペルオキシ硫酸(非特許文献2)を用いることで実施可能である。この上に示した方法を用いて電子が非常に不足しているピリジンをN−オキサイドに変化させる時に困難さに直面することは通常のことである(例えば非特許文献1を参照)。電子が非常に不足している窒素含有ヘテロアリールからこれらのN−オキサイドを生じさせる実用的な酸化方法の必要性が存在する。
【非特許文献1】Tet.Lett.41:2299、2000
【非特許文献2】J.Org.Chem.42:1869、1977
【発明の開示】
【0006】
発明の要約
本発明は式I(以下)で表される新規な化合物に向けたものである。また、式Iで表される化合物の製造方法も提供する。本発明の新規な化合物はトロンビンの強力な阻害剤である。また、式I
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、
Xは、
【0009】
【化2】

【0010】
であり、そして
Yは、
【0011】
【化3】

【0012】
である]
で表される化合物を有効量で投与することで哺乳動物における血栓症を治療する方法も提供する。
【0013】
本発明は、また、窒素含有ヘテロアリールに酸化を受けさせることでそれらの相当するN−オキサイドを生じさせる一般的方法も包含する。その反応体系は比較的安全な市販の反応体を用いて調製可能である。その上、その反応は中性から酸性条件で起こり、そのような条件は、例えば、酸にいくらか敏感なメチルエステルおよびニトリル基が耐え得る条件である。
【0014】
本発明は、哺乳動物における血小板凝集物の生成を抑制し、フィブリンの生成を抑制し、血栓の形成を抑制しかつ塞栓の形成を抑制する組成物を包含し、これは、製薬学的に許容され得る担体に入っている本発明の化合物を含んで成る。本組成物に場合により抗凝血薬、抗血小板薬および血栓溶解薬を含有させることも可能である。本組成物を必要な阻害を起こさせる目的で血液、血液製剤または哺乳動物の器官に添加してもよい。
【0015】
また、心筋梗塞、不安定狭心症、脳梗塞、再狭窄、深部静脈血栓症、外傷または血液透析の汚染によって引き起こされる播種性血管内凝血障害、冠動脈バイパス術、成人呼吸窮迫症候群、内毒素性ショック、化学療法中の凝固性亢進、アルツハイマー病および眼内フィブリン形成を治療する方法も提供する。本発明の化合物の他の使用は、血液採取、血液循環および血液貯蔵で用いられるデバイス、例えばカテーテル、血液透析機、血液採取用シリンジおよび管、血液ラインおよびステントなどの製造で用いられる材料に埋め込まれているか或は物理的に結合している抗凝血薬としての使用である。
【0016】
本発明は、また、本発明の化合物を哺乳動物のある表面に共有結合または非共有結合のいずれかで結合させることによって前記表面の血栓形成を軽減する方法も包含する。
【0017】
別の面において、本発明は、哺乳動物における生体内血栓映像化で用いるに有用な組成物を包含し、これは、体の外側から検出可能な本発明の化合物を含んで成る。本発明の化合物と検出可能標識、例えば放射性または常磁性原子などを含んで成る組成物が好適である。
【0018】
別の面において、本発明は、哺乳動物における生体内血栓映像化で用いるに有用な診断用組成物を包含し、これは、製薬学的に許容され得る担体および診断的に有効な量の本発明の化合物もしくは組成物を含んで成る。
別の面において、本発明は、哺乳動物における生体内血栓映像化で用いるに有用な方法を包含する。
【0019】
発明の詳細な記述
本発明は、式I
【0020】
【化4】

【0021】
[式中、
Xは、
【0022】
【化5】

【0023】
であり、そして
Yは、
【0024】
【化6】

【0025】
である]
で表される化合物に向けたものである。
【0026】
本発明の好適な態様は、Xが
【0027】
【化7】

【0028】
である態様であり、本発明の別の好適な態様は、Yが
【0029】
【化8】

【0030】
である態様である。
【0031】
本発明の好適な例は、2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミドおよびこれの製薬学的に許容され得る塩である。
【0032】
本発明の好適な例は、二塩酸2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミドである。
【0033】
本発明の好適な例は、一臭化水素酸2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミドである。
【0034】
本発明の好適な例は、スルホン酸2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミドである。
【0035】
本発明の好適な例は、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミドである。
【0036】
本発明の化合物はまた多形結晶形態も持ち得、あらゆる多形結晶形態物を本発明に包含させる。
【0037】
また、前記式Iで表される化合物は溶媒和、特に水和も起こし得る。水和は本化合物または本化合物を含んで成る組成物を製造している時に起こり得るか、或は水和は本化合物が吸湿性を示すことが理由で経時的に起こる可能性もある。
【0038】
別の面において、本発明は哺乳動物における生体内血栓映像化で用いるに有用な組成物を包含し、これは体の外側から検出可能な本発明の化合物を含んで成る。本発明の化合物と検出可能標識、例えば放射性または常磁性原子などを含んで成る組成物が好適である。
【0039】
別の面において、本発明は、哺乳動物における生体内血栓映像化で用いるに有用な診断用組成物を包含し、これは、製薬学的に許容され得る担体および診断的に有効な量の本発明の化合物もしくは組成物を含んで成る。
【0040】
別の面において、本発明は、哺乳動物における生体内血栓映像化に有用な方法を包含する。
【0041】
好適な面に従い、有用な化合物は、ジフルオロメチレンに隣接して位置するピリジン置換基が検出可能標識、例えば放射性ヨウ素原子、例えばI−125、I−131またはI−123などで置換されている化合物である。そのような検出可能標識はまた放射性もしくは常磁性キレートであってもよく、この場合には、前記ピリジン置換基と適切な配位子(L)を直接にか或は二価の連結基A”を通して結合させておく。適切な配位子は、放射性もしくは常磁性金属イオンとキレートを形成し得る有機部分を意味する。
【0042】
そのような化合物における二価の連結基A”には、ピリジルとキレート手段の両方と共有結合し得る基が含まれる。A”は、例えば−C(=S)−、−C(=O)−、−C(=NH)−(CH−C(=NH)−、−C(=O)−(CH−C(=O)−などであり得る。
【0043】
また、前記式Iで表される化合物におけるキレート配位子Lには、放射性もしくは常磁性いずれかの原子と共有結合もしくは非共有結合し得る基も含まれる。キレート化は、これに放射性もしくは常磁性原子と錯体を形成させる目的で通常用いられるそれらを包含させることを意味する。それらには、メチレンホスホン酸基、メチレンカルボヒドロキサム酸基、カルボキシエチリデン基、または特に窒素原子と結合しているカルボキシメチレン基を3から12、好適には3から8個含有するキレート手段が含まれる。窒素原子と結合している酸基の数が1または2のみの場合、その窒素は場合により置換されていてもよいエチレン基を通してか或は窒素または酸素または硫黄原子で分離されている4個以下の離れて位置するエチレン単位を通して前記基の別の窒素原子と結合している。ジエチレントリイミン−N,N,N’,N”,N”−ペンタ酢酸(DTPA)が完成用手段(completing means)として好適である。DTPAは放射性原子であるインジウム−111(In−111)、テクネチウム−99m(Tc−99m)および常磁性原子であるガドリニウム(Gd)用のキレート手段として本技術分野で良く知られている。Khaw他、Science 209:295(1980);Paik C.H.他、米国特許第4,652,440号(1987);Gries,H.他、米国特許第4,957,939号(1990)。好適なキレート配位子Lは1−(パラ−アミノベンジル)−ジエチレントリアミンペンタ酢酸である。また、スルフヒドリルまたはアミン部分を含有(いずれの組み合わせにおいても全体で少なくとも4である)する化合物もキレート手段として含める。そのようなスルフヒドリルまたはアミン部分は互いに少なくとも原子2個分離れて位置し、そのような原子は炭素、窒素、酸素または硫黄のいずれであってもよい。特に、Tc−99m用キレート手段として本技術分野で良く知られているメタロチオネインがキレート手段Lとして好適である。
【0044】
交換反応を用いて前記式Iで表される化合物に放射性ヨウ素による標識を付けることができる。熱ヨウ素を冷ヨウ素と交換する方法は本技術分野で良く知られている。別法として、放射性ヨウ素標識付き化合物の調製を相当するブロモ化合物を用いてトリブチルスタニル中間体経由で実施することも可能である。米国特許第5,122,361号(引用することによって本明細書に組み入れられる)を参照のこと。
【0045】
本発明は、また、哺乳動物における生体内血栓映像化方法で用いるに有用な組成物も包含し、ここでは、前記組成物を放射性原子と錯体を形成している式Iで表される化合物で構成させ、適切な放射性原子にはCo−57、Cu−67、Ga−67、Ga−68、Ru−97、Tc−99m、In−111、In−113m、Hg−197、Au−198、およびPb−203が含まれる。ある種の放射性原子は放射化学映像化技術で用いるに適した優れた特性を有する。特に、テクネチウム−99m(Tc−99m)はこれの核特性が理由で映像化に理想的な放射性原子である。また、レニウム−186および−188もガンマ放出性を示すことで映像化可能である。好適な組成物は放射性原子であるTc−99mを含有させた組成物である。
【0046】
本技術分野で公知のいろいろな技術の中のいずれかを用いて前記式Iで表される化合物に標識を付けることで本発明の組成物を生じさせることができる。例えば、キレート化剤、例えばジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)またはメタロチオネイン(両方とも前記式Iで表される化合物と共有結合し得る)などを用いて本化合物に標識を付けることができる。
【0047】
テクネチウム−99mを含有する本発明の組成物の調製を一般的にはテクネチウム−99mと還元剤と水溶性配位子の水性混合物を生じさせた後に前記混合物を式Iで表される本発明の化合物と接触させることで実施する。本発明の映像化用化合物の製造では、例えばキレート手段を持たせておいた本発明の化合物とテクネチウム−99m(酸化された症状)を還元剤の存在下で反応させてそれとテクネチウム−99mの間の安定な錯体を還元症状(原子価がIVまたはVの症状)で生じさせることなどで製造を実施する。
【0048】
本発明の組成物の1つの態様の調製では、DTPAキレート手段を持たせておいた式Iで表される化合物にテクネチウム−99mによる標識を付けることで調製を実施する。これは、前以て決めておいた量(5μgから0.5mgとして)の本発明の化合物をクエン酸塩緩衝剤と第一錫還元剤が入っている水溶液と一緒にした後に放射能を前以て決めたレベル(15mCiとして)で含有する過テクネチウム酸ナトリウム(新しく溶離させた)を添加することを通して達成可能である。その混合物を室温でインキュベートした後、その反応混合物を無菌フィルター(0.2−0.22ミクロン)に通して遮蔽されているシリンジの中に充填し、その後必要ならば、注射用の0.9%食塩水の中に分散させる。
【0049】
本発明の組成物の別の態様の調製では、メタロチオネインキレート手段を持たせておいた式Iで表される化合物にテクネチウム−99mによる標識を付けることで調製を実施する。これは、過テクネチウム酸ナトリウム−99m水溶液をグルコヘプトン酸第一錫水溶液と一緒にすることでテクネチウム−99m(還元症状)と2分子のグルコヘプトネート分子の可溶錯体を生じさせた後、この溶液をメタロチオネインを結合させておいた式Iで表される化合物と一緒にすることで達成可能である。その混合物を前記グルコヘプトネート錯体のテクネチウム−99mと式Iで表される化合物のメタロチオネインの交換が起こる条件下でそれが起こる時間インキュベートすることで本発明のテクネチウム標識付き組成物を生じさせる。
【0050】
前記方法で用いるに適した還元剤は、テクネチウム−99mに還元を受けさせてそれの酸化症状から原子価がIVもしくはVの症状にするに適するか或はレニウムに還元をそれの酸化症状から受けさせるに適した生理学的に許容され得る還元剤である。使用可能な還元剤は、塩化第一錫、フッ化第一錫、グルコヘプトン酸第一錫、酒石酸第一錫および亜ジチオン酸ナトリウムである。好適な作用剤は第一錫還元剤、特に塩化第一錫またはグルコヘプトン酸第一錫である。そのような還元剤の量を、テクネチウム−99mが還元を受けてそれの放射性同位元素が還元された症状で式Iで表される化合物のキレート手段と結合するようになるに必要な量にする。例えば、塩化第一錫(SnCl)が還元剤の時には、これを1−1,000μg/mLの範囲で用いてもよい。
【0051】
クエン酸はテクネチウム−99mと迅速に錯体を形成して安定なテクネチウム−99m−クエン酸錯体を形成する。そのクエン酸錯体を式Iで表される化合物と接触させると、それからテクネチウム−99mが式Iで表される化合物のキレート手段に実質的に定量的に転移するが、これは穏やかな条件下で迅速に達成される。クエン酸の量(クエン酸ナトリウムとして)は約0.5mg/mlから当該媒体中に溶解する最大量の範囲であってもよい。クエン酸の好適な量は15から30μg/mlの範囲である。
【0052】
キレート手段を持たせた式Iで表される化合物の量を0.001から約3mg/mL、好適には約0.017から約0.15mg/mLの範囲にしてもよい。最後に、過テクネチウム酸塩の形態のテクネチウム−99mを好適には約1−5mCiの量で用いてもよい。本発明の化合物1mg当たりのmCi量を好適には約30−150にする。
【0053】
式Iで表される化合物と前記金属イオン転移配位子錯体(metal ion−transfer ligand complex)の間の反応を好適には式Iで表される化合物が安定であるpHの水溶液中で実施する。「安定」は、当該化合物が可溶なままでありかつα−トロンビンに対する阻害活性を保持していること意味する。その反応のpHを通常は約5から9にするが、好適なpHは6−8以上である。前記テクネチウム−99m−クエン酸錯体と式Iで表される化合物を好適には約20℃から約60℃、最も好適には約20℃から約37℃の温度で金属イオンが前記クエン酸錯体から前記式Iで表される化合物のキレート手段に転移するに充分な時間インキュベートする。その転移反応をそのような条件下で完了させるには一般に1時間以内で充分である。
【0054】
本発明の代替組成物は、In−111による標識を付けておいた本発明の化合物を含有させた組成物である。
【0055】
本発明は、また、哺乳動物における生体内血栓映像化方法で用いるに有用な本発明の化合物を含有させた組成物も包含し、それを、常磁性原子と錯体を形成している式Iで表される化合物で構成させる。
【0056】
好適な常磁性原子は、原子番号が21から29、42、44および58から70の元素の二価もしくは三価イオンである。適切なイオンには、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、プラセオジム(III)、ネオジム(III)、サマリウム(III)およびイッテルビウム(III)が含まれる。ガドリニウム(III)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)およびエルビウム(III)がこれらの磁気モーメントが非常に強いことから好適である。特にガドリニウム(III)が常磁性原子として好適である。
【0057】
本発明の組成物の調製は、式Iで表される化合物と常磁性原子を一緒にすることを通して実施可能である。例えば、適切な常磁性原子の金属酸化物または金属塩(例えば硝酸塩、塩化物または硫酸塩)を水とアルコール、例えばメチル、エチルもしくはイソプロピルアルコールなどで構成させた溶媒に入れて溶解または懸濁させる。その混合物を同様な水性媒体に入れておいた等モル量の式Iで表される化合物の溶液に加えて撹拌する。その反応混合物を反応が完了するまで穏やかに加熱してもよい。不溶な組成物が生じた場合にはそれを濾過で単離してもよいが、可溶な組成物の場合には溶媒を蒸発させることでそれを単離してもよい。本発明の組成物に入っているキレート手段上に酸基がまだ存在している場合には、均一な組成物の単離または精製が容易になるように、その酸性錯体を中性の錯体に変化させる目的で無機もしくは有機塩基、そしてアミノ酸さえ添加することも可能である。有機塩基もしくは塩基性アミノ酸ばかりでなく無機塩基、例えばナトリウム、カリウムまたはリチウムなどの水酸化物、炭酸塩または重炭酸塩などを中和剤として用いてもよい。
【0058】
本発明は、また、哺乳動物における生体内血栓映像化で用いるに有用な診断用組成物も包含し、この組成物は、製薬学的に許容され得る担体を含有しかつ式Iで表される化合物から生じさせた組成物を診断に有効な量で含んで成る。
【0059】
1回分として必要な本組成物の「診断に有効な量」は、投与経路、治療すべき哺乳動物の種類および考慮下の特定の哺乳動物が示す身体的特徴に依存するであろう。そのような要因およびこれらが前記1回分を決定することに対して示す関係は医学診断技術の技術を持つ実施者に良く知られている。また、最適な効果を達成する目的で前記診断に有効な量および投与方法を注文に合わせることも可能であるが、体重、食事、同時に受けている投薬治療および医学技術分野の技術者が理解するであろう他の要因の如き要因に依存するであろう。映像化用の1回分は、当該血栓部位に存在する映像剤を検出するに充分な量でなければならない。放射線による映像化に必要な1回分は、典型的に、本発明の製薬学的組成物の位置が示す線量が約5から20μCi、好適には約10μCiであるような1回分である。磁気共鳴映像化に必要な1回分は、常磁性原子と錯体を形成している式Iで表される化合物が約0.001から5ミリモル/kg、好適には約0.05から0.5ミリモル/kgの量になるような1回分である。いずれの場合にも、実際の1回分は当該血栓の場所に依存することは本技術分野で公知である。
【0060】
生体内で用いるに適した「製薬学的に許容され得る担体」は製薬学技術で良く知られており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.(A.R.Gennaro編集、1985)などに記述されている。注射投与に適した無菌の溶液もしくは懸濁液を生じさせようとする時には、製薬学的に許容され得る担体を用いて本発明の製薬学的組成物を調製することができる。特に、注射可能物は、液状の溶液もしくは懸濁液、注射前に液体に入れて溶液または懸濁液を生じさせるに適した固体形態、または乳液のいずれかの通常形態で調製可能である。適切な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、塩酸システインなどである。加うるに、必要ならば、注射可能製薬学的組成物に無毒の補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝剤などを少量入れることも可能である。必要ならば、吸収促進用製剤(例えばリポソーム)を用いることも可能である。
【0061】
本発明は、また、貯蔵または投与の目的で調製した診断用組成物も包含する。それらに追加的に防腐剤、安定剤および染料を入れることも可能である。例えば、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸およびパラヒドロキシ安息香酸のエステルなどを防腐剤として添加してもよい(1449年の同文献)。加うるに、抗酸化剤および懸濁剤を用いることも可能である。
【0062】
本発明の生体内映像化方法は、また、血栓の存在、大きさ、退行および増加を検出または監視しようとする時に以前の映像化技術に比べていくつかの利点を示す。特に、本発明は、血栓に関連したトロンビンと密に結合することで結合しなかった映像剤によって生じる循環している放射能または常磁性が理由の「バックグラウンド」の度合が低い化合物、組成物および診断用組成物を提供するものである。その上、本発明の化合物、組成物または診断用組成物を冠動脈内に注入することによる生体内映像化はほとんど瞬時に起こると期待する、と言うのは、本映像剤は直ちに血栓と結合しているトロンビンを飽和症状にすると思われるからである。
【0063】
従って、本発明は、また、哺乳動物における生体内血栓映像化方法も包含し、これは、(1)哺乳動物に本発明の化合物、組成物または診断用組成物を診断的に許容され得る量で投与しそして(2)血管内の血栓を検出する段階を含んで成る。
【0064】
本明細書で用いる如き用語「生体内映像化」は、哺乳動物における血栓を検出する方法ばかりでなく哺乳動物における血栓の大きさ、場所および数に加えて血栓の溶解または成長を監視する方法に関する。
【0065】
そのような方法で本化合物、組成物または診断用組成物を生体内で用いる時の「投与」を全身または局所を標的とした様式のいずれかで非経口的に達成する。本発明の化合物、組成物または診断用組成物を便利かつ接近可能な静脈または動脈に注入することで全身投与を達成する。それには、これらに限定するものでないが、肘正中静脈経由投与が含まれる。本発明の化合物、組成物または診断用組成物を注入する部位の遠位に位置していて血栓が中に存在すると疑われる静脈または動脈の流れの中の近位に注入することを通して、局所を標的とした投与を達成する。それには、これらに限定するものでないが、冠動脈に直接注入して冠動脈の血栓を映像化すること、頸動脈に直接注入して脳血管内の血栓を映像化すること、または足の静脈に直接注入して足の深部静脈血栓を映像化することが含まれる。
【0066】
また、本発明の組成物を血栓部位に送達する様式も用語「投与」の範囲内であると見なす。例えば、キレート手段を結合させておいた式Iで表される化合物を哺乳動物に注入し、しばらく経った後、放射性原子を注入することで、放射性原子と錯体を形成した式Iで表される化合物を含んで成る組成物を血栓部位に生体内で生じさせてもよい。別法として、放射性原子と錯体を形成している式Iで表される化合物を含んで成る組成物を哺乳動物に注入することも可能である。
【0067】
本発明の方法で用いる本化合物、組成物または診断用組成物の「診断的に有効な量」は、この上で述べたように、投与経路、治療すべき哺乳動物の種類および治療下の具体的な哺乳動物が示す身体的特徴に依存するであろう。そのような要因およびこれらが前記1回分を決定することに対して示す関係は医学診断技術の技術を持つ実施者に良く知られている。生体内映像化用の1回分は、当該血栓部位に存在する映像剤を検出するに充分な量でなければならない。放射線による映像化に必要な1回分は、典型的に、本発明の診断用組成物がもたらす線量が約5から20μCi、好適には約10μCiであるような1回分である。磁気共鳴映像化に必要な1回分は、本診断用組成物がもたらす量が常磁性原子と錯体を形成している式Iで表される化合物が約0.001から5ミリモル/kg、好適には約0.05から0.5ミリモル/kgであるような1回分である。いずれの場合にも、実際の1回分は当該血栓の場所に依存することは本技術分野で公知である。
【0068】
映像化による血栓の検出は、そのような血栓の所に放射性もしくは常磁性原子を局在させて存在させることで可能になる。
【0069】
本発明の組成物および診断用組成物に関連した放射性原子の映像化を、好適には、ガンマ放射線を検出し得る放射線検出手段、例えばガンマカメラなどを用いて実施する。放射線映像化用カメラには、典型的に、変換媒体(高エネルギーのガンマ線を吸収し、電子を追い出し、それが基底症状に戻る時に光子を発する)、空間的検出チャンバの中に配置されている光電検出器(出てきた光子の位置を決定)、および前記チャンバ内で検出された光子を分析しかつ映像をもたらす回路が用いられている。
【0070】
本発明の組成物および診断用組成物に関連した常磁性原子を磁気共鳴映像化(MRI)装置で検出する。そのような装置では、患者の体の中の原子の核スピンベクターを整列させる目的で強力な磁場が用いられている。血栓の所に局在して存在する常磁性原子によって前記磁場が乱され、そして核が平衡配列に戻る時に患者の映像を読み取る。
【0071】
定義
本明細書で用いる如き用語「約」は、これが用いる反応体の量を修飾する場合、±15%を意味することを意図し、例えば「約1ミリモル」は0.85ミリモルから1.15ミリモルの範囲を指す。本明細書で用いる如き用語「約」が温度を指す場合、これは±5℃を意味することを意図し、例えば「約40℃」は35℃から45℃の範囲の温度を指す。
【0072】
用語「アルキル」を本明細書でそれ自身または別の基の一部として用いる場合、これは炭素数が12以下の直鎖および分枝鎖両方の基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4−ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4−トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシルなどを指す。アルキルの炭素原子数は好適には1から6である。
【0073】
用語「アルケニル」を本明細書では炭素原子数が2−20(鎖長をそれに限定するものでないが)の直鎖もしくは分枝鎖基を意味する目的で用い、それには、これらに限定するものでないが、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルなどが含まれる。アルケニル鎖の長さは好適には炭素原子2から10個分、より好適には、長さは炭素原子2から8個分、最も好適には、長さは炭素原子2から4個分である。
【0074】
用語「アルキニル」を本明細書では炭素原子数が2−20(鎖長をそれに限定するものでないが)の直鎖もしくは分枝鎖基を意味する目的で用いるが、それには、鎖中の炭素原子の中の2個の間に三重結合が少なくとも1個存在し、それには、これらに限定するものでないが、アセチレン、1−プロピレン、2−プロピレンなどが含まれる。アルキニル鎖の長さは好適には炭素原子2から10個分、より好適には、長さは炭素原子2から8個分、最も好適には、長さは炭素原子2から4個分である。
【0075】
アルケニルもしくはアルキニル部分が置換基として存在する場合、本明細書におけるあらゆるケースで、不飽和結合、即ちビニレンまたはアセチレン結合は、好適には、窒素部分にも酸素部分にも硫黄部分にも直接には結合していない。
【0076】
用語「電子求引基」は、他の領域からそれ自身の方向に向かうか或は離れる方向に向かう電子密度を持つ置換基を指す。電子求引基の例はフェニル、ヘテロアリール、ハロゲン、−NO、−CN、スルホン、スルホキサイド、エステル、スルホンアミド、カルボキサミド、アルコキシ、アルコキシエーテル、アルケニル、アルキニル、−OH、−C(O)アルキル、−COH、−Oフェニル、−Oヘテロアリールおよび−CFである。
【0077】
本明細書で用いる如き用語「ヘテロアリール」は、環原子を5から14個有し、環状に配列している共有のπ電子を6、10または14個有しかつ炭素原子を含有することに加えて酸素、窒素または硫黄ヘテロ原子を1、2または3個含有する基を指す(ヘテロアリール基の例はチエニル、ベンゾ[b]チエニル、ナフト[2,3−b]チエニル、チアントレニル、フリル、ピラニル、イソベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサチイニル、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリル、インダゾリル、プリニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、4αH−カルバゾリル、カルバゾリル、β−カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ペリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、イソチアゾリル、フェノチアジニル、イソオキサゾリル、フラザニルおよびフェノキサジニル基である)。
【0078】
用語「ヘテロ原子」を本明細書では酸素原子(「O」)、硫黄原子(「S」)または窒素原子(「N」)を意味させる目的で用いる。ヘテロ原子が窒素の場合にはそれがNR部分[ここで、RおよびRは、互いに独立して、水素またはCからCアルキルであるか、或はそれらが結合している窒素と一緒になって5員、6員もしくは7員の飽和もしくは不飽和環を形成している]を形成していてもよいことは理解されるであろう。
【0079】
用語「トリフレート」はアニオンであるトリフルオロメタンスルホネート(CFSO)を指し、OTfの省略形で示す。「トリフレート」の形容詞形態は「トリフリック」である。例えば、トリフリックアンハイドライドは無水トリフルオロメタスルホネート[(CFSOO]を指し、TfOの省略形で示す。
【0080】
製薬学的に許容され得る塩
前記式Iで表される化合物の製薬学的に許容され得る塩(水溶性もしくは油溶性もしくは分散性生成物の形態)には、通常の無毒の塩または第四級アンモニウム塩が含まれ、それらを例えば無機もしくは有機の酸もしくは塩基などから生じさせる。そのような酸付加塩の例には、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロ燐酸塩、半硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、しゅう酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、こはく酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩およびウンデカン酸塩が含まれる。塩基塩には、アンモニウム塩、アルカリ金属塩、例えばナトリウムおよびカリウム塩など、アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウム塩など、有機塩基との塩、例えばジシクロヘキシルアミン塩、N−メチル−D−グルカミン塩など、およびアミノ酸との塩、例えばアルギニン、リシンなどの塩(グアニジル部分との塩を包含)が含まれる。また、塩基性窒素含有基に低級アルキルハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化メチル、エチル、プロピルおよびブチルなど、硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチルおよびジアミルの如き硫酸ジアルキル、長鎖ハロゲン化物、例えば塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルなど、臭化ベンジルおよびフェネチルの如きハロゲン化アラルキルなどの如き作用剤を用いた第四級化を受けさせることも可能である。酸付加塩を生じさせるに好適な酸には、HCl、HBr、硫酸およびナフタレン−1,5−硫酸が含まれる。
【0081】
用途
最終使用用途として、本発明をいろいろな治療目的で用いることができる。本発明はトロンビンを阻害する。従って、本化合物はトロンビン生成または作用のいずれかが関与する異常な静脈もしくは動脈血栓で特徴づけられる症状を治療または予防する目的で用いるに有用である。そのような症状には、これらに限定するものでないが、深部静脈血栓症、肺塞栓、動脈血栓症、通常は心房細動中の心房に由来するか或は貫壁性心筋梗塞後の左室に由来する全身性塞栓症、不安定狭心症、再狭窄、成人呼吸窮迫症候群、内毒素性ショック、化学療法もしくは放射線療法中もしくは後の凝固性亢進、敗血性ショック、ウイルス感染および癌中に起こる播種性血管内凝血障害、心筋梗塞、脳梗塞、冠動脈バイパス術、眼内フィブリン形成、整形外科手術、例えば人工関節置換手術など、および血栓溶解治療または経皮経管冠動脈形成術(PCTA)のいずれかの結果としてもたらされる血栓形成が含まれる。本発明の好適な使用は、深部静脈血栓症の予防または治療である。
【0082】
本発明の化合物は、細菌、多発外傷および中毒を包含するいずれかの機構によって引き起こされる播種性血管内凝血障害の治療および予防に有用であると期待する。
【0083】
本発明の化合物は、凝固性亢進の兆候無しにトロンビンの濃度が高い症状、例えばアルツハイマー病および膵炎などで用いるに有用であると期待する。
【0084】
他の使用には、血液採取、血液循環および血液貯蔵で用いられるデバイス、例えばカテーテル、血液透析機、血液採取用シリンジおよび管および血液ラインなどの製造で用いられる材料に埋め込まれているか或は物理的に結合している抗凝血薬として前記トロンビン阻害剤を用いることを包含する。本発明の化合物はまた体外血液循環路に入れる抗凝血薬としても使用可能である。
【0085】
ステントは再狭窄を軽減することが示されているが、血栓を形成させる。ステントが示す血栓形成性を軽減する方策は、トロンビン阻害剤をステントの表面に被覆するか、埋め込むか、吸着させるか或は共有結合させる方策である。本発明の化合物はそのような目的で使用可能である。本発明の化合物を可溶および/または生分解性重合体(ステント材料として、および後でステント材料の上を覆う)に結合または埋め込んでおいてもよい。そのような重合体には、ポリビニルピロリドン、ポリヒドロキシ−プロピルメタアクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチル−アスパルトアミド−フェノール、またはパルミトイル残基で置換されているポリエチレンオキサイド−ポリリシン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋もしくは両親媒性ブロック共重合体が含まれ得る。ヨーロッパ出願761 251、ヨーロッパ出願604,022、カナダ特許番号第2,164,684号およびPCT公開出願番号WO 96/11668、WO 96/32143およびWO 96/38136を参照のこと。
【0086】
本発明の化合物は、追加的に、平滑筋細胞、内皮細胞および好中球の如き種類の細胞宿主に対してトロンビン効果を有することから、成人呼吸窮迫症候群、炎症反応、創傷治癒、再潅流障害、アテローム性動脈硬化症、および傷害、例えばバルーン血管形成術、アテローム切除術および動脈ステント留置術などの後の再狭窄の治療もしくは予防にも使用可能である。
【0087】
本発明の化合物は神経変性病、例えばアルツハイマー病およびパーキンソン病などの治療で用いるにも有用である。
【0088】
本発明の化合物は、日に1回または2−4回に分割した用量の療法で体重1kg当たり約0.1から約500mg、好適には0.1から10mgの範囲の投薬範囲内の有効量で投与可能である。
【0089】
本発明の化合物を血栓溶解薬、例えば組織プラスミノーゲン活性化因子、ストレプトキナーゼおよびウロキナーゼなどと組み合わせて用いてもよい。加うるに、本発明の化合物を他の抗血栓もしくは抗凝血薬、例えばこれらに限定するものでないが、フィブリノーゲン拮抗薬およびトロンボキサン受容体拮抗薬などと組み合わせて用いることも可能である。
【0090】
また、本発明の化合物を標的可能薬剤担体としての可溶重合体と結合させることも可能である。そのような重合体には、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシ−プロピルメタアクリルアミド−フェノール、ポリヒドロキシエチル−アスパルトアミド−フェノール、またはパルミトイル残基で置換されているポリエチレンオキサイド−ポリリシンが含まれ得る。その上、本発明の化合物を薬剤の徐放の達成に有用な種類の生分解性重合体、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋もしくは両親媒性ブロック共重合体などと結合させることも可能である。
【0091】
本発明の製薬学的組成物は、本発明の化合物の有益な効果を受け得る如何なる動物にも投与可能である。そのような動物の中で最も注目すべき動物はヒトであるが、本発明をそれに限定することを意図するものでない。
【0092】
本発明の製薬学的組成物はこれらの意図した目的を達成する如何なる手段で投与されてもよい。例えば、非経口、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、経皮、口腔または眼経路による投与を行うことができる。別法としてか或は同時に、投与を経口経路で実施することも可能である。投与すべき量は受益者の年齢、健康および体重、同時治療の種類(もしあれば)、治療の頻度および望まれる効果の性質に依存するであろう。
【0093】
この新規な製薬学的製剤に、本薬理学的に有効な化合物に加えて、適切な製薬学的に許容され得る担体を含有させてもよく、そのような担体には、本活性化合物を製薬学的に使用可能な製剤に加工するのを助長する賦形剤および助剤が含まれる。
【0094】
本発明の製薬学的製剤の製造では、例えば通常の混合、顆粒、糖衣錠製造、溶解または凍結乾燥工程などによる様式(これ自身公知である)で製造を実施する。このように、本活性化合物を固体状賦形剤と一緒にし、場合によりその結果として得た混合物を粉砕しそして望まれるか或は必要ならば適切な助剤を添加した後に前記混合物の顆粒を加工することで錠剤または糖衣錠の中心部を得ることを通して、経口用途用の製薬学的製剤を得ることができる。
【0095】
ヒトに投与するに適した本発明の組成物の場合の用語「賦形剤」は、これにこれらに限定するものでないがHandbook of Pharmaceutical Excipients、American Pharmaceutical Association、第2版(1994)(これは引用することによって全体が本明細書に組み入れられる)に記述されている賦形剤を包含させることを意味する。適切な賦形剤は、特に充填材、例えば糖、例えばラクトースまたはスクロース、マンニトールまたはソルビトールなど、セルロース調合物および/または燐酸カルシウム、例えば燐酸トリカルシウムまたは燐酸水素カルシウムなどばかりでなく、結合剤、例えば澱粉ペースト(例えばトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、ジャガイモ澱粉などが用いられている)、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、ヒドロキシ−プロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロースおよび/またはポリビニルピロリドンなどである。必要ならば、崩壊剤、例えばこの上に記述した澱粉およびまたカルボキシメチル−澱粉、架橋ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸もしくはこれの塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどを添加することも可能である。助剤は、とりわけ、流動調節剤および滑剤、例えばシリカ、タルク、ステアリン酸もしくはこれの塩、例えばステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムなど、および/またはポリエチレングリコールなどである。糖衣錠の中心部に適切な被膜、必要ならば胃液に抵抗する被膜を与える。この目的で濃糖溶液を用いてもよく、それに場合によりアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー溶液および適切な有機溶媒もしくは溶媒混合物などを入れてもよい。胃液に抵抗する被膜を生じさせようとする時には、適切なセルロース調合物、例えばフタル酸アセチルセルロースまたはフタル酸ヒドロキシプロピルメチル−セルロースなどの溶液を用いる。活性化合物の識別または用量の組み合わせを特徴付ける目的などで錠剤または糖衣錠の被膜に染料または顔料を添加することも可能である。
【0096】
経口で用いることができる他の製薬学的製剤には、ゼラチンで出来ている押し込み型カプセルばかりでなくゼラチンと可塑剤、例えばグリセロールまたはソルビトールなどで出来ている密封型のソフトカプセルが含まれる。押し込み型カプセルの場合には、これに本活性化合物を顆粒形態で入れてもよく、それを充填材、例えばラクトースなど、結合剤、例えば澱粉などおよび/または滑剤、例えばタルクまたはステアリン酸マグネシウムなどおよび場合により安定剤と混合しておいてもよい。ソフトカプセルの場合には、本活性化合物を好適には適切な液体、例えば脂肪油または液状パラフィンなどに溶解または懸濁させておく。加うるに、安定剤を添加することも可能である。
【0097】
非経口投与に適した製剤には、水溶性形態、例えば水溶性塩の形態の本活性化合物が入っている水溶液、アルカリ溶液およびシクロデキストリン包接錯体が含まれる。特に好適なアルカリ塩は、例えばTris、水酸化コリン、Bis−Trisプロパン、N−メチルグルカミンまたはアルギニンなどを用いて生じさせたアンモニウム塩である。本発明の化合物を安定にしかつそれの水溶性を高める目的で1種以上の修飾もしくは未修飾シクロデキストリンを用いることも可能である。この目的で用いるに有用なシクロデキストリンが米国特許第4,727.064号、4,764,604号および5,024,998号に開示されている。
【0098】
加うるに、本活性化合物の懸濁液を適切な注入用油状懸濁液として投与することも可能である。適切な親油性溶媒もしくは媒体には、脂肪油、例えば胡麻油など、または合成脂肪酸エステル、例えばオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなど、またはポリエチレングリコール−400(この化合物はPEG−400に可溶である)などが含まれる。注入用水性懸濁液の粘度を高める物質、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールおよび/またはデキストランなどを前記懸濁液に入れることも可能である。場合により、前記懸濁液にまた安定剤を入れることも可能である。
【0099】
以下の実施例は本発明の方法および組成物の例示であり、限定するものでない。本分野の技術者に明らかでありかつ通常に見られるいろいろな条件およびパラメーターの他の適切な修飾および適用は本発明の精神および範囲内である。
一般的合成方法
本発明の化合物の合成はスキームIに従って実施可能である。
【0100】
【化9】

【0101】
実施例1iで調製する如き(6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル)−酢酸4−ニトロ−フェニルエステルを溶媒、例えばCHClなどに入れることで生じさせた−40℃から150℃の温度、好適には室温の混合物に空気下でHN−CH−Yを溶媒、例えばDCMまたはCHCNなどに入れることで生じさせた溶液を加えることで化合物IIIを生じさせる。式HN−CH−Yで表される化合物は商業的に入手可能であるか或は公知方法に従って合成可能である:Org.Process Res.Dev.、8巻、192頁、2004およびJ.Med.Chem.、46巻、461頁、2003を参照。次に、化合物IIIとX−NHと塩基、例えばジイソプロピルエチルアミン(DIEA)などと溶媒、例えばDMSOなどの混合物を空気下室温から150℃、好適には100℃の温度で撹拌することで化合物Iを生じさせる。式X−NHで表される化合物の製造は公知方法を用いて実施可能である;Org.Process Res.Dev.、8巻、192頁、2004、J.Org.Chem.、68巻、8838頁、2003、WO 9911267、WO 2004091613、J.Med.Chem.、46:461、2003およびChem.Pharm.Bull.48:982、2000を参照。
【0102】
本出願は、また、本発明の新規な化合物を製造する実用的な方法ばかりでなくまた非常に電子が不足しているピリジンおよび他のN含有ヘテロアリール化合物からこれらのN−オキサイドを生じさせる酸化に幅広く一般的に適用可能な方法も提供する。好適なN含有ヘテロアリールは、ピリジン、ピリミジン、ピラジンおよびキノリンである。その反応を酸に敏感な特定の官能基が耐える中性から酸性の条件下で行う。その反応をCHCNまたはCHCNとDCM(ジクロロメタン)の混合物中で進行させる。この反応は、また、電子が不足しているピリミジンおよび電子が不足しているキノリンにも適用可能である。一般的反応条件をスキーム2に示す。
【0103】
【化10】

【0104】
ここで、EWGは電子求引基、好適にはハロゲン、−CF、エステルまたは−CNであり、そして
nは1、2、3、4または5である。本分野の技術者は、そのようなヘテロアリールには電子求引基1種または2種以上に加えてアルキル基も存在することを認識するであろう。好適な例をスキーム3に示し、そして特に好適な例はEWGが−COアルキルである例である。
【0105】
【化11】

【0106】
この反応の最も重要な面は、過炭酸ナトリウムと無水トリフルオロメタンスルホン酸を組み合わせる点にある。本分野の技術者は、反応を3.5時間または16時間後のいずれかで停止させたが約30分から1週間に及ぶいずれかの時間を用いて反応を成功裏に実施することができることを認識するであろう。TLCを用いて出発材料の消失に関して反応を検査することが反応終点の最も信頼できる決定である。また、0℃から室温の範囲以外の温度を用いることも可能であることも認識するであろう。我々は、温度を−50℃から40℃の範囲にすると反応が成功裏に起こり得ると期待する。本分野の技術者は、また、アセトニトリル以外の溶媒、特にアセトニトリルと塩化メチレンの混合物などの如き溶媒混合物を用いることも可能であることも認識するであろう(注:我々は、安全の理由でエーテル溶媒を強酸化剤の存在下で用いることを推奨しない)。最後に、反応を消滅させる段階(反応物を砕氷と重炭酸ナトリウムの混合物の中に注ぎ込む段階)、塩化メチレンを用いた抽出段階、余分な過酸化水素をメタ重亜硫ナトリウムで分解させる段階、そしてISOLUTE(商標)シリカカートリッジを用いて生成物を単離する段階は本発明の決定的な面ではないことと本分野の技術を持つ如何なる人も代替方法を用いて前記反応を消滅させて生成物を単離することができることを認識するであろう。
【0107】
一般的手順:
オーブンで乾燥させておいた4ドラムの瓶にピリジン(1.0ミリモル)、過炭酸ナトリウム(157mg、1.0当量)および無水CHCN(5.0mL)を加える。その懸濁液を氷水浴で冷却しながらこれに無水トリフルオロメタンスルホン酸(339μL、2.0当量)を滴下する。無水トリフルオロメタンスルホン酸を滴下している時に泡が発生する。その混合物の撹拌を0℃で3.5時間継続する。3時間後に大部分の過炭酸ナトリウム固体が消失する。出発材料の消費を監視する目的で処理した一定分量のTLC(またはNMRスペクトル)を用いて反応を監視してもよく、そしてそのTLCまたはNMRスペクトルがさらなる反応が起こらないことを示した時点で反応を消滅させてもよい。次に、その反応混合物を砕氷(10g)と飽和重炭酸ナトリウム(40mL)の混合物の上に注ぐ。撹拌を30分間実施した後の混合物にDCM(3x20mL)を用いた抽出を受けさせる。そのDCM溶液を一緒にして食塩水(20mL)で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させる。その水溶液を10%のNa溶液で処理する。そのDCM溶液を濃縮した後に20gのISOLUTE(商標)シリカカートリッジの上に充填して、ヘキサン/EtOAcで溶離させる。表1に、電子不足ピリジンの代表的酸化を示す。
【0108】
【表1】

【0109】
別法として、過炭酸ナトリウムの代わりに過酸化水素尿素を用いて、電子不足ピリジン、ピリミジン、キノリンまたはピリダジンの好適な酸化を達成することも可能である。好適な反応条件をスキーム4に示す。
【0110】
【化12】

【0111】
ここで、EWGは電子求引基、好適にはハロゲン、−CF、エステルまたは−CNであり、そして
nは1、2、3、4または5である。この反応の最も重要な面は、過酸化水素尿素と無水トリフルオロメタンスルホン酸を組み合わせることにある。
【実施例1】
【0112】
二塩酸2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミド
【0113】
【化13】

【0114】
a. 2,5,6−トリフルオロ−ニコチノニトリル
【0115】
【化14】

【0116】
2,6−ジクロロ−5−フルオロ−ニコチノニトリル(25.67g、134ミリモル)と噴霧乾燥KF(23.6g、406ミリモル)(Aldrich)[両方とも塊を除去する目的で空気下で新しく粉末状にしておいた]を一緒に振とうすることで完全な混合を確保した後、無水DMSO(30mL)を加えた。その混合物をアルゴン下室温で1−2分間効率良く撹拌した後、100℃のオイルバスの中に置いて5分間撹拌した。次に、温度を10分かけて130℃にまで上昇させた後、その混合物をその温度で40分間撹拌した。反応物の一定分量が示したNMRスペクトルにより、130℃で10分後の変換率は86%で40分後の変換率は>95%であることが分かった。次に、その紫色の濃密な混合物を室温に冷却し、氷浴上でDCM(30mL)と一緒に振とうした後、DCMで前以て平衡症状にしておいたフラッシュシリカカラム(1.0kgのシリカゲル;120mmx6”)の上に直接充填した。DCMによる溶離(140mLの画分;10−19画分を一緒にした)で明黄褐色の透明な油を20.65g得た。NMRスペクトルにより、表題の化合物:DMSOが1:0.58のモル比であることが分かった(表題の化合物が16.0g;76%)。
H−NMR(300MHz、CDCl)δ7.99(m、1H)。LC/MS(ESI):計算した質量:158.0、測定値:159.5(MH)
b. 6−t−ブトキシ−2,5−ジフルオロ−ニコチノニトリル
【0117】
【化15】

【0118】
この上に示した段階で調製したままの2,5,6−トリフルオロ−ニコチノニトリル(16.0g、101ミリモル)[追加的に4.6gのDMSOが混入している]をt−BuOH(80mL)とTHF(15mL;凍結を防止するための)に入れることで生じさせた溶液を0℃で撹拌しながらこれにTHF(20mL)を前以て混合しておいたt−BuOH中1.04MのKOtBu溶液(110mL、114ミリモル)を15分かけて滴下した。その結果として生じた赤色がかった黄褐色の均一な溶液を0℃で更に5分間撹拌した後、氷浴を取り外して、その溶液を室温で更に20分間撹拌した。次に、5MのNHCl(100mL)を用いて反応を消滅させた後、エーテル(2x100mL)を用いた抽出を実施した。その有機層を一緒にして水(1x100mL)、1MのNaCl(1x150mL)そして4MのNaCl(1x100mL)で洗浄し、紫色の透明な有機層を乾燥(NaSO)させ、減圧下で濃縮し、エーテル(50mL)で取り上げた後、ケイソウ土の詰め物に通して濾過した。その濾過ケーキをエーテル(3x50mL)で洗浄した後、その濾液を一緒にして減圧下50−60℃で濃縮することで紫色の透明な油を20.89g得た。NMRにより、表題の化合物と2,6−ジ−t−ブトキシ−5−フルオロ−ニコチノニトリルが89:11のモル比であることが分かった(表題の化合物が18.22g;85%)。H−NMR(300MHz、CDCl)δ7.60(dd、1H)、1.67(s、9H)。
c. マロン酸t−ブチルエステルメチルエステルのナトリウム塩
【0119】
【化16】

【0120】
NaH(1.50g、59.4ミリモル)をエーテル(50mL)に入れることで生じさせた室温の混合物を−70℃の浴の中に置いた後、直ちに約2mLずつのマロン酸t−ブチルエステルメチルエステル(10.33g、59.4ミリモル)を用いた5回の処理を空気下で間欠的に渦巻き撹拌しながら処理した。発泡も発熱も起こらなかった。前記マロン酸エステルの添加が終了した後直ちにフラスコに緩くキャップをして0℃の浴の中で1−2分間渦巻き撹拌(発泡無し)した後、ヒートガンで間欠的に温めながら室温で注意深く10分間撹拌した。穏やかな発泡が始まった後の反応物を時折渦巻き撹拌しながら室温に1時間放置し、その時点で濃密なペーストが生じた。次に、ロータリーエバポレーターを用いて揮発物を40℃で除去した後、高真空下40℃で除去することで、表題の化合物を取り扱いが容易な本質的に非吸湿性の白色粉末として得た(11.37g、98%)。
d. 2−(6−t−ブトキシ−3−シアノ−5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−マロン酸t−ブチルエステルメチルエステル
【0121】
【化17】

【0122】
実施例1bで調製したままの6−t−ブトキシ−2,5−ジフルオロ−ニコチノニトリル(18.22g、85.9ミリモル)とこの上に示した段階で調製したままのマロン酸t−ブチルエステルメチルエステルのナトリウム塩(34.49g、176ミリモル)とジオキサン(110mL)の濃密な混合物をアルゴン下95℃(オイルバス)で14時間撹拌した。その結果として生じた暗黄褐色の均一な溶液を室温に冷却し、エーテル(150mL)で希釈した後、2.0Mのクエン酸(40mL)を入れておいた1.0MのNaHPO溶液(200mL)で洗浄した。その水層にエーテル(1x100mL)を用いた逆抽出を受けさせ、その有機層を一緒にし、4MのNaCl(1x100mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させた後、減圧下で濃縮した。その残留物からマロン酸t−ブチルエステルメチルエステルの大部分を高真空下95℃で1時間かけて除去することで表題の化合物を粘性のある暗褐色の透明な油として得た(32.37g、約100%の粗収率)。H−NMR(300MHz、CDCl)δ7.48(d、1H)、5.06(s、1H)、3.80(s、3H)、1.62(s、9H)、1.47(s、9H)。
e. (3−シアノ−5−フルオロ−6−ヒドロキシ−ピリジン−2−イル)−酢酸メチルエステル
【0123】
【化18】

【0124】
この上に示した段階で調製したままの2−(6−t−ブトキシ−3−シアノ−5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−マロン酸t−ブチルエステルメチルエステル(31.87g、87ミリモル)にアニソール(6mL、55ミリモル)およびTFA(58mL、750ミリモル)を加えた後、その均一な溶液を40℃で1.5時間撹拌した。次に、ロータリーエバポレーターを用いて反応物に濃縮を40℃で受けさせ、TFAを再び加え(130mL、1.74モル)た後、その反応物を室温で一晩撹拌した。再びロータリーエバポレーターを用いて前記反応物に濃縮を≦40℃で受けさせた後、その結果として生じた濃密な油をCHCl(100mL)に溶解させた。次に、0℃で撹拌を行いながら2.0MのKCO(100mL)を5−10分かけて5−10mLずつ加えることで、最終的に水層のpHを9にした。撹拌を0℃で行いながら2.0Mのクエン酸(30mL)を分割して加えることでpHを4にした後、CHCl(100mL)および水(100mL)を加えた。その水層にCHCl(2x100mL)を用いた抽出を受けさせ、その有機層を一緒にし、乾燥(NaSO)させた後、濃縮することで粘性のある暗色の油を得た(16.6g)。その残留物をシリカフラッシュクロマトグラフィー(9:1→7:3のDCM/アセトン)にかけることで表題の化合物を黄色の固体として得た(9.10g、51%)。H−NMR(300MHz、CDCl)δ12.73(br s、1H)、7.30(d、1H)、3.92(s、2H)、3.82(s、3H)。
f. (6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−酢酸メチルエステル
【0125】
【化19】

【0126】
この上に示した段階で調製したままの(3−シアノ−5−フルオロ−6−ヒドロキシ−ピリジン−2−イル)−酢酸メチルエステル(9.10g、43.3ミリモル)とPOCl(40mL、433ミリモル)の混合物を90℃で7時間撹拌した。次に、その褐色の均一な溶液に濃縮を減圧下で受けさせ、その残留物を氷浴の上に置き、エーテル(200mL)で希釈した後、氷水(100mL)と一緒にして振とうした。その水層にエーテル(1x100mL)を用いた抽出を受けさせ、その有機層を一緒にし、乾燥(NaSO)させた後、減圧下40℃で濃縮することで表題の化合物を暗黄褐色の透明な油として得た(9.45g、96%)。H−NMR(300MHz、CDCl)δ7.75(d、1H)、4.06(s、2H)、3.77(s、3H)。
g. (6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−酢酸
【0127】
【化20】

【0128】
この上に示した段階で調製したままの(6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−酢酸メチルエステル(9.36g、40.9ミリモル)と4.0MのHCl(水溶液)(256mL)とジオキサン(51mL)の混合物を65℃で2時間激しく撹拌した。次に、その黄褐色の均一な溶液を室温に冷却し、DCM(3x100mL)で抽出し、乾燥(NaSO)させた後、減圧下45℃で濃縮することで表題の化合物を暗黄褐色の透明な油として得た(7.40g、84%)。H−NMR(300MHz、CDCl)δ7.75(d、1H)、4.11(s、2H)。
h. (6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−酢酸4−ニトロ−フェニルエステル
【0129】
【化21】

【0130】
この上に示した段階で調製したままの(6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−酢酸(2.37g、11.0ミリモル)と4−ニトロフェノール(1.84g、13.2ミリモル)とDCM(11mL)から生じさせた褐色の均一な溶液をアルゴン下0℃で撹拌しながら1,3−ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(1.90mL、12.1ミリモル)を撹拌を伴わせて3分かけて滴下した。そのDICの滴下が終了した後直ちに氷浴を取り外した後、黄色がかった沈澱物が入っている褐色の混合物を室温で1時間40分撹拌した。次に、その粗反応物をフラッシュシリカカラムの上に直接充填した後、96:4のトルエン/CHCNで溶離させることで表題の化合物を淡黄色の半透明油として得た(3.11g、84%)。H−NMR(300MHz、CDCl)δ8.29(m、2H)、7.80(d、1H)、7.35(m、2H)、4.35(d、0.7Hz、2H)。
i. (6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル)−酢酸4−ニトロ−フェニルエステル
【0131】
【化22】

【0132】
手順A
[注:以下に記述する反応は事故無しに進行したが、これを大型のプレキシグラス遮蔽の後方で実施した]。この上に示した段階で調製したままの(6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−酢酸4−ニトロ−フェニルエステル(4.85g、14.5ミリモル)をCHCN(110mL)に入れることで生じさせた淡黄色の溶液を空気下0℃で撹拌しながらこれに過炭酸ナトリウム固体[4.54g、(Hを〜25重量%(〜43ミリモル)含有)、Aldrich)から得た]を一度に添加した。次に、過炭酸ナトリウムの添加後直ちに無水トリフルオロメタンスルホン酸(7.58g、26.9ミリモル)を撹拌を0℃で行いながら11分かけて滴下した後、その結果として生じた黄色の半透明溶液を0℃で3時間撹拌した。次に、その反応物を氷冷DCM(150mL)で希釈し、氷冷1MのNaHCO(150mL)で反応を消滅させた後、その2層を0℃で7分間撹拌した。次に、その有機層を集め、その水層にDCM(2x100mL)を用いた抽出を受けさせ、その有機層を一緒にして乾燥(2xNaSO)させ、濾過した後、減圧下室温で濃縮することで表題の粗化合物を4.89g得た(NMRは表題の化合物が68モル%で出発材料が25モル%でニトロフェノールが7モル%であることを示している)。その材料を無水エーテルと一緒にして室温で5分間撹拌することで磨り潰した(1x50mL;1x25mL)。NMRにより、表題の化合物が84モル%で出発材料が16モル%でありそしてニトロフェノールが完全に除去されたことが分かった。撹拌を室温で実施することによる20分間の磨り潰しを更に4回(1x50mLのエーテル、1x55mLの10:1エーテル/DCM、1x50mLの1:1エーテル/DCMそして1x50mLのDCM)実施して、各磨り潰し後に透明な上澄み液を除去することで、表題の化合物をオフホワイトの固体として得た(2.96g、58%)。NMRにより、表題の化合物が96モル%で出発材料が4モル%であることが分かった。H−NMR(300MHz、CDCl)δ8.29(m、2H)、7.46(d、1H)、7.36(m、2H)、4.37(d、0.7Hz、2H)。
【0133】
手順B
(6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−ピリジン−2−イル)−酢酸4−ニトロ−フェニルエステル(35.90g、106.95ミリモル)をアセトニトリル(179.50mL)に溶解させた後、氷/水浴を用いて0℃に冷却した。この混合物に過酸化水素尿素(23.14g、245.98ミリモル)を加えて5分間撹拌した。次に、この反応混合物に0℃で無水トリフルオロメタンスルホン酸(66.38g、235.28ミリモル)を温度を3.5℃未満に維持しながら2.25時間かけて滴下した。滴下後の混合物の撹拌を同じ温度で2時間継続した。その混合物に追加的過酸化水素尿素(2.3g、24.4ミリモル)、無水トリフルオロメタンスルホン酸(4mL、23.8ミリモル)を加えた後、その混合物を0℃で30分間撹拌した。その混合物に別の分量の過酸化水素尿素(2.3g、24.4ミリモル)および無水トリフルオロメタンスルホン酸(4mL、23.8ミリモル)を加えた。その混合物を0℃で15分間撹拌すると、HPLCにより、反応が96%完了したことが分かった。その混合物の温度を10℃未満に維持しながらこれに重亜硫酸ナトリウム溶液(5%、1000mL)を注意深く加えた。その反応混合物を氷/水浴の中に置いて0℃で5分間撹拌した後、冷蔵庫の中に一晩貯蔵した。そのスラリーを濾過した後、水(2x100mLそして50mL)で洗浄した。その固体を真空下60℃で6時間乾燥させることで褐色の固体を得た(31.7g、84%)。H−NMR(400MHz、d3−アセトニトリル):8.32(m、2H)、7.75(m、1H)、7.37(m、2H)、4.32(s、2H)。19F−NMR(376MHz、d3−アセトニトリル):−115ppm。C14ClFとして計算した元素分析値:C 47.81、H 2.00、N 11.95、F 5.40、Cl 10.08。測定値:C 47.66、H 1.70、N 11.82、F 5.84、Cl 10.16。融点=171.9−173.6℃。
j. (3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−メチルアミン
【0134】
【化23】

【0135】
二塩酸(3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−メチルアミン(1.313g、6.60ミリモル)(WO 00/75134 Al;Chem.Pharm.Bull.33:565、1985)をエーテル(6mL)と2.5MのNaOH(5mL;12.5ミリモル)の間で分離させた。その水層(pH約8)にDCM(4x20mL)を用いた抽出を受けさせた。次に、その水層を2.5MのNaOHでpH〜12にし、DCM(2x20mL)で抽出し、そのDCM層とエーテル層を一緒にし、乾燥(2xNaSO)させた後、ロータリーエバポレーターを用いて<30℃で濃縮することで表題の化合物の遊離塩基を暗褐色の透明な油として得た(780mg、94%)。H−NMR(300MHz、CDCl)δ8.38(dt、1H)、7.39−7.32(m、1H)、7.24−7.17(m、1H)、4.06(d、2H)、1.83(br s、2H)。
k. 2−(6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル)−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミド
【0136】
【化24】

【0137】
実施例1iで調製したままの(6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル)−酢酸4−ニトロ−フェニルエステル(1.801g、5.12ミリモル)をCHCl(10mL)に入れることで生じさせた室温の混合物に空気下でこの上に示した段階で生じさせたままの(3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−メチルアミン(698mg、5.53ミリモル)をDCM(35mL)とCHCN(5mL)に入れることで生じさせた均一な溶液を加えた。次に、そのフラスコにキャップをした後、その混合物を室温で10時間撹拌したが、この時点でそれは黄褐色の半透明な溶液になった。[NMRは、表題の化合物が85%変化したことに加えて(3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−メチルアミンが全く残存しないことを示していた]。反応を10時間実施した後、追加的(3−フルオロ−ピリジン−2−イル)−メチルアミン(68mg、0.53ミリモル)を加え、その反応物を更に12時間撹拌した後、ロータリーエバポレーターを用いて濃縮することで黄褐色の半透明な溶液(〜15mL)を生じさせたが、これはEtOAcで前以て平衡症状にしておいたシリカフラッシュカラムの上に直接充填するに適していた。EtOAcで溶離させることで表題の化合物をオフホワイトの固体として得た(1.29g、74%)。H−NMR(300MHz、CDCl)δ8.36(dt、1H)、7.55(br s、1H)、7.44−7.36(m、1H)、7.41(d、1H)、7.30−7.23(m、1H)、4.66(dd、2H)、4.20(s、2H)。
l. 2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミド
【0138】
【化25】

【0139】
この上に示した段階で生じさせたままの2−(6−クロロ−3−シアノ−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル)−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミド(1.156g、3.42ミリモル)と2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミン(651mg、4.12ミリモル)(J.Med.Chem.46:461、2003;Chem.Pharm.Bull.48:982、2000)とDIPEA(622μL、3.76ミリモル)とDMSO−d6(2.8mL)の混合物を空気下100℃で2時間撹拌した。この時点の粗反応物のNMRは変換率が〜95%であることを示していた。次に、その粗反応物を4:1のEtOAc/アセトンで前以て平衡症状にしておいたシリカフラッシュカラム(600mLの無水シリカゲル)の上に充填した後、4:1→3:1のEtOAc/アセトンで溶離させることで表題の化合物をベージュ色の固体として得た(935mg、59%)。H−NMR(300MHz、CDCl)δ8.65(m、1H)、8.31(dt、1H)、8.31(dt、1H)、7.99(m、2H)、7.83(td、1H)、7.67(m、1H)、7.42(m、1H)、7.36(m、1H)、7.31−7.20(m、2H)、4.63(dd、2H)、4.55(dt、2H)、4.15(s、2H)。
m. 二塩酸2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミド
【0140】
【化26】

【0141】
手順A
この上に示した段階で生じさせたままの2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミド(920mg、2.00ミリモル)を無水CHCN(42mL)に入れて穏やかに撹拌することで溶解させた。その温かい均一な溶液を渦巻き撹拌しながらこれに空気下で0.202MのHCl/CHCN溶液(21mL;4.24ミリモルのHCl)を一度に加えた。[風袋を計っておいたメスシリンダーに無水CHCNを47.7mLの最終体積になるまで入れて、それに無水HClガスを短時間吹き込むことで、前記0.202MのHCl/CHCN溶液を生じさせた)。その均一な溶液にキャップをして、室温に一晩放置すると30分以内に結晶が生じ始めた。結晶の生成が完了した後、黄褐色の上澄み液を傾斜法で除去し、その結晶を無水CHCN(20mL)と一緒に渦巻き撹拌し、溶媒を傾斜法で除去した後、結晶をフラスコからCHCN(20mL)の存在下でかき落として、濾過した。次に、その結晶を真空下で短時間乾燥させ、乳鉢と乳棒を用いて粉末にした後、真空下で一晩乾燥させることによる1回の収穫で表題の化合物を一水化物として明ピンク色の結晶性固体として得た(612.3mg、57%)。H−NMR(300MHz、CDOD)δ8.82(d、1H)、8.65(m、1H)、8.51(dt、1H)、8.10−8.00(m、2H)、7.80(d、1H)、7.77(td、1H)、7.60(m、1H)、4.89(d、2H)、4.57(dt、2H)、4.15(s、2H)。LC/MS(ESI):遊離塩基として計算した質量:460.1、測定値461.1(MH)。遊離塩基・2.04HCl・1.07HO・0.045CHCNとして計算した元素分析値:C 45.57、H 3.68、N 15.23、Cl 13.02。測定値:C 45.47、H 3.40、N 15.1、Cl 13.02。カールフィッシャーによる水%:3.46。
【0142】
手順B
400mgの2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミドを8.0mLのアセトニトリルに入れることで生じさせた懸濁液を撹拌しながらオイルバスで75℃に加熱した。固体が72℃で溶解し始めて75℃で完全に溶解することで黄色の溶液が生じた。この混合物を前記オイルバスの中でゆっくり冷却して約53℃にした。その反応混合物を撹拌しながらこれに0.2mLの塩酸(37%、ACS試薬、約9.8M)を0.3mLのアセトニトリルに入れることで生じさせた溶液を滴下した。ほとんど直ちに沈澱物が生じた。その混合物を激しく撹拌しながら室温になるまで冷却した。その混合物を室温に冷却した。次に、その混合物を冷凍庫に一晩入れた。その結果として生じたスラリーを濾過した後、最少量の冷アセトニトリルで濯いだ。得た固体を乳鉢と乳棒で粉砕した後、真空下25℃で一晩乾燥させることで白色の結晶性固体を得た(0.45g、94%)。H−NMR(400MHz、CDOD)δ8.78(dd、J=1.14、5.77Hz、1H)、8.60(dm、J=4.18Hz、1H)、8.46(dt、J=1.16、8.70Hz、1H)、8.02(m、1H)、7.97(dt、J=1.68、7.81Hz、1H)、7.77(d、J=11.98Hz、1H)、7.71(td、J=7.95、0.99Hz、1H)、7.53(dd、J=4.91、7.59Hz、1H)、4.86(d、J=4.94Hz、2H)、4.54(t、J=13.90Hz、2H)、4.12(s、2H)。LC/MS(APCI):遊離塩基として計算した質量:460.1、測定値460.9(MH)。遊離塩基・2HCl・HOとして計算した元素分析値:C 45.75、H 3.66、N 15.24、Cl 12.86;HO 3.27。測定値:C 45.63、H 3.34、N 15.11、Cl 13.06。カールフィッシャーによる水%:3.15。
n. 一臭化水素酸2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミド
【0143】
【化27】

【0144】
2.0gの2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミドを40mLのアセトニトリルに入れることで生じさせた懸濁液を撹拌しながらオイルバスで75℃に加熱した。固体が72℃で溶解し始めて75℃で完全に溶解することで黄色の溶液が生じた。この混合物を前記オイルバスの中でゆっくり冷却して約53℃にした。その混合物を撹拌しながらこれに0.59mLの臭化水素酸(48%、ACS試薬、約8.84M)を2mLのアセトニトリルに入れることで生じさせた溶液を滴下した。ほとんど直ちに沈澱物が生じた。その混合物を激しく撹拌しながら室温になるまで冷却した。次に、その混合物を冷凍庫に一晩入れた。その結果として得た混合物を濾過した後、最少量の冷アセトニトリルで濯いだ。得た固体を乳鉢と乳棒で粉砕した後、真空下78℃で2時間乾燥させることで淡黄色の結晶性固体を得た(2.11g、86%)。H−NMR(400MHz、CDOD)δ8.76(dd、J=1.12、5.71Hz、1H)、8.60(dm、J=4.73Hz、1H)、8.42(dt、J=1.11、8.72Hz、1H)、8.00(m、1H)、7.96(dt、J=1.64、7.79Hz、1H)、7.77(d、J=11.97Hz、1H)、7.70(td、J=7.93、0.87Hz、1H)、7.52(dd、J=4.98、7.45Hz、1H)、4.85(s、2H)、4.54(t、J=14.05Hz、2H)、4.12(s、2H)。LC/MS(APCI):遊離塩基として計算した質量:460.1、測定値461.0(MH)。遊離塩基・1.2HBr・0.6HOとして計算した元素分析値:C 44.38、H 3.26、N 14.79、Br 16.87;HO 1.90。測定値:C 44.48、H 3.08、N 14.71、Br、17.21。カールフィッシャーによる水%:1.99。
【実施例2】
【0145】
錠剤製造
活性化合物である二塩酸2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミドをそれぞれ25.0、50.0および100.0mg含有する錠剤の調製を以下に示す如く実施する:
1回分の活性化合物含有量が25−100mgの錠剤
前記活性化合物とセルロースとコーンスターチの一部(コーンスターチが10%のペーストが生じる量)の全部を混合した後、顆粒状にする。その結果として得た顆粒をふるい分けし、乾燥させた後、コーンスターチの残りおよびステアリン酸マグネシウムと混合する。次に、その結果として得た顆粒を圧縮することで有効成分が錠剤1個当たりにそれぞれ25.0、50.0および100.0mg入っている錠剤を生じさせる。
【実施例3】
【0146】
静脈内用溶液の調製
この上に示した実施例1の活性化合物の静脈内投薬形態物の調製を下記の如く実施する:
活性化合物 0.5−10.0mg
クエン酸ナトリウム 5−50mg
クエン酸 1−15mg
塩化ナトリウム 1−8mg
注射用水(USP) 1mlにするに必要な量
【0147】
この上に示した量を用いて、塩化ナトリウムとクエン酸とクエン酸ナトリウムを注射用水[USP、United States Pharmacopeial Convention,Inc.(Rockville、Maryland)(1994)出版のUnited States Pharmacopeia/National Formulary for 1995の1636頁を参照]に入れることで前以て生じさせておいた室温の溶液に前記活性化合物を溶解させる。
【実施例4】
【0148】
精製酵素のインビトロ阻害
試薬:あらゆる緩衝剤塩をSigma Chemical Company(St.Louis、MO)から入手したが、これらは入手可能な最も高い純度のものであった。
【0149】
ヒトα−トロンビンをEnzyme Research Laboratories(South Bend、Indiana)から入手した。
【0150】
発色基質を用いた速度解析
化合物にトロンビンに対する阻害活性に関する評価をパラ−ニトロアニリン発色基質を用いた速度解析を405nmで監視することを通して受けさせた。用いた検定用緩衝液はHEPES(pH7.5)が50mMでNaClが200mMで新鮮なn−オクチルβ−d−グルコピラノシドが0.05%であった。前記基質および阻害性化合物のストック溶液に由来するDMSOの最終濃度は4%であった。低結合性の96穴ポリスチレン製プレートの中で280uLの基質を検定用緩衝液に10μLの試験化合物[最終的な試験化合物濃度(Kiを括弧の中に示す)が得られるようにDMSOに入れておいた]と一緒に入れて37℃で15分間前以てインキュベートしておいた。プロテアーゼを10μL添加して反応を開始させ、そして基質が蛋白質分解によって開裂することで起こる吸光度の上昇をMolecular Devices Spectramax 340プレート読み機を405nmで用いて37℃で速度的に監視した。反応の最初の直線部分を解析することで初期の速度を決定した。阻害剤濃度と対比させたv/vのプロット(ここで、v=阻害無しの時の速度、そしてv=抑制された速度)を線形回帰線に適合させ、その傾きの逆数からIC50を決定した。この検定に特異的なKi係数をKi=IC50xKi係数またはKi=IC50x(1/(1+[S]/Km))[ここで、Sは、この検定における基質の濃度であり、そしてKmは、基質のミカエリス定数[Cheng YおよびPrusoff WH(1973)、Biochem Pharmacol 22:3099−3108]として用いてKiをIC50から計算した。
【0151】
このトロンビン検定に組み込んだ基質はSucAAPRpNA(Bachem L−1720、最終的[S]=100uM、Km=320μM、Ki係数=0.76)。DMSO中の基質(10.7mM)を検定用緩衝液で100倍に希釈して最終の100μMにした。ヒトα−トロンビン(Enzyme Research Laboratories HT1002a)を検定用緩衝液で1500倍に希釈して最終的検定濃度である1.1nMにした。
【0152】
その結果は、実施例1の化合物がヒトトロンビンに関して示したKi値は9.8から11nMの範囲であることを示している。
【0153】
ここに本発明を詳細に記述してきたが、本分野の通常の技術者は、本発明の範囲にも本発明の如何なる態様にも影響を与えない限り幅広い相当する範囲の条件、配合および他のパラメーターの範囲内で本発明を実施することができることを理解するであろう。本明細書に引用した特許および出版物は全部引用することによって全体が本明細書に詳細に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

[式中、
Xは、
【化2】

であり、そして
Yは、
【化3】

である]
で表される化合物およびこれの製薬学的に許容され得る塩。
【請求項2】
請求項1記載の化合物および製薬学的に許容され得る担体を含んで成る製薬学的組成物。
【請求項3】
更に抗凝血薬、抗血小板薬または血栓溶解薬の中の少なくとも1種も含んで成る請求項2記載の製薬学的組成物。
【請求項4】
化合物が約0.1から約500mgの範囲の量で存在する請求項2記載の製薬学的組成物。
【請求項5】
深部静脈血栓症、播種性血管内凝血障害、眼内フィブリン形成、心筋梗塞、脳梗塞、または血栓溶解治療または経皮経管冠動脈形成術のいずれかの結果としてもたらされる血栓形成の予防または治療を必要としている哺乳動物におけるそれを予防または治療する方法であって、前記哺乳動物に請求項1記載の化合物を有効量で投与することを含んで成る方法。
【請求項6】
下記の手術:冠動脈血管形成術、冠動脈バイパス術および人工関節置換手術を受ける前または後のヒトを治療する方法。
【請求項7】
哺乳動物におけるトロンビン生成または作用のいずれかが関与する異常な静脈もしくは動脈血栓で特徴づけられる症状を治療または予防する方法であって、前記哺乳動物に請求項2記載の組成物を投与することを含んで成る方法。
【請求項8】
哺乳動物における血小板凝集物の生成を抑制するか、フィブリンの生成を抑制するか、血栓の形成を抑制するか或は塞栓の形成を抑制する方法であって、前記哺乳動物に請求項2記載の組成物を有効量で投与することを含んで成る方法。
【請求項9】
血液採取、血液貯蔵または血液循環で用いるに適した医学デバイスであって、請求項1記載の化合物が埋め込まれているか或は物理的に結合している医学デバイス。
【請求項10】
カテーテル、ステント、血液透析機、血液採取用シリンジまたは管または血液ラインである医学デバイスであって、請求項1記載の化合物が埋め込まれているか或は物理的に結合している医学デバイス。
【請求項11】
哺乳動物における不安定狭心症、再狭窄、成人呼吸窮迫症候群、内毒素性ショックまたは化学療法中の凝固性亢進を治療する方法であって、前記哺乳動物に請求項2記載の組成物を有効量で投与することを含んで成る方法。
【請求項12】
ヒトにおけるパーキンソン病またはアルツハイマー病を治療する方法であって、前記ヒトに請求項2記載の組成物を有効量で投与することを含んで成る方法。
【請求項13】
酵素がトロンビンである請求項12記載の方法。
【請求項14】
哺乳動物における生体内血栓映像化方法であって、式Iで表される化合物を放射線同位体と連結させて用いることを含んで成る方法。
【請求項15】
ピリジンN−オキサイドを合成する方法であって、ピリジンと過炭酸ナトリウムと無水トリフルオロメタンスルホン酸を各々が約半当量から各々が約10当量の量で温度が約−50℃から約40℃の溶媒中で反応させることを含んで成る方法。
【請求項16】
温度を−10℃から10℃の範囲にする請求項15記載の方法。
【請求項17】
ピリミジンのN−オキサイドを合成する方法であって、ピリミジンと過炭酸ナトリウムと無水トリフルオロメタンスルホン酸を各々が約半当量から各々が約10当量の量で温度が約−50℃から約40℃の溶媒中で反応させることを含んで成る方法。
【請求項18】
キノリンN−オキサイドを合成する方法であって、キノリンと過炭酸ナトリウムと無水トリフルオロメタンスルホン酸を各々が約半当量から各々が約10当量の量で温度が約−50℃から約40℃の溶媒中で反応させることを含んで成る方法。
【請求項19】
ピラジンN−オキサイドを合成する方法であって、ピラジンと過炭酸ナトリウムと無水トリフルオロメタンスルホン酸を各々が約半当量から各々が約10当量の量で温度が約−50℃から約40℃の溶媒中で反応させることを含んで成る方法。
【請求項20】
出発ピラジン材料の2位が電子求引基で置換されておりかつ5位がメチル基で置換されている請求項19記載の方法。
【請求項21】
電子求引基が−CONHである請求項20記載の方法。
【請求項22】
ピリジンと過酸化水素尿素と無水トリフルオロメタンスルホン酸を各々が約半当量から各々が約10当量の量で温度が約−50℃から約40℃の溶媒中で反応させることを含んで成るピリジンN−オキサイドの合成方法。
【請求項23】
温度を−10℃から10℃の範囲にする請求項22記載の方法。
【請求項24】
ピリミジンと過酸化水素尿素と無水トリフルオロメタンスルホン酸を各々が約半当量から各々が約10当量の量で温度が約−50℃から約40℃の溶媒中で反応させることを含んで成るピリミジンN−オキサイドの合成方法。
【請求項25】
キノリンと過酸化水素尿素と無水トリフルオロメタンスルホン酸を各々が約半当量から各々が約10当量の量で温度が約−50℃から約40℃の溶媒中で反応させることを含んで成るキノリンN−オキサイドの合成方法。
【請求項26】
ピラジンと過酸化水素尿素と無水トリフルオロメタンスルホン酸を各々が約半当量から各々が約10当量の量で温度が約−50℃から約40℃の溶媒中で反応させることを含んで成るピラジンN−オキサイドの合成方法。
【請求項27】
出発ピラジン材料の2位が電子求引基で置換されておりかつ5位がメチル基で置換されている請求項26記載の方法。
【請求項28】
電子求引基が−CONHである請求項27記載の方法。
【請求項29】
2−[3−シアノ−6−(2,2−ジフルオロ−2−ピリジン−2−イル−エチルアミノ)−5−フルオロ−1−オキシ−ピリジン−2−イル]−N−(3−フルオロ−ピリジン−2−イルメチル)−アセトアミドである化合物およびこれの製薬学的に許容され得る塩。

【公表番号】特表2008−536918(P2008−536918A)
【公表日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−507677(P2008−507677)
【出願日】平成18年3月21日(2006.3.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/010581
【国際公開番号】WO2006/115652
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】