説明

ブレーキシステムを制御する方法

【課題】制動下で車両の後車軸が持ち上がるのを防止することを目的とした、車両のブレーキシステムを制御する方法を提供する。
【解決手段】より詳細には、本発明は、少なくとも1つの前輪および少なくとも1つの後輪を備える車両のブレーキシステム(19)を制御するための方法であって、後輪が持ち上がる少なくとも1つの状態が存在するかどうかを判定するステップと、そうした状態が存在する場合に、車両のブレーキシステムによって前輪に加えられる制動の作用力を制限および/または低減するステップとを含むことを特徴とする方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキシステムを制御する方法に関する。より詳細には、本発明は、車両の後車軸が制動下で持ち上がるのを防止することを目的とした、車両のブレーキシステムを制御する方法に関する。本発明を自動車両のケースで説明するが、他の分野に適用することができる。本発明による方法は、少なくとも3つの車輪、好ましくは4つ以上の車輪を有する車両に対して特に良好に働く。これは、自動二輪車、主としてモータサイクルが、運転者の姿勢(体重の分配)および剛性(加えられる力)が、モータバイクの前輪または後輪が持ち上がることに影響を有するので、自動車とは完全に異なる形で挙動するからである。さらに、前輪または後輪が持ち上がることは、ライダがモータバイクをスポーティに乗ることを楽しませるものと考えることができる。
【背景技術】
【0002】
ブレーキシステムを制御する方法は、とりわけ米国特許第5386366号、EP0537724、DE102005054557、EP1839978、およびEP1386804に記載されている。
【0003】
いくつかの車両、例えば多用途車タイプの車両は、比較的重い積荷を運ぶように設計される。典型的には、前記積荷を運ぶことが意図された空間は、車両の後部に位置する。したがって、前記車両は、後部に位置する相当な追加の重量に対処するようにバランスがとられる。
【0004】
現在、このタイプの車両は積荷なしで用いられることがある。これが起きるときは、車両の重心は積荷ありの車両に対して前方に移動する。積荷なしで乗り回される多用途車が突然の急制動を体験する場合は、前記車両の後部は前部に対して十分な慣性を有しないことがある。そのとき、これにより車両の後車軸が持ち上がる。このように持ち上がることは車両のユーザに不快であり危険である。さらに、過度な場合は車両が倒れる恐れがある。
【0005】
現在のところ、従来技術では、このような車両の後車軸が持ち上がる現象を抑制する解決策がない。
さらに、非常に多くの現代の車両は、ABS(アンチロックブレーキシステム)タイプのシステムなどのブレーキ支援システムを備える。車両の軌道を修正する横滑り防止装置(ESP)も知られている。
【0006】
ABSシステムは、車輪が制動下でロックアップし横滑りするのを防止するように各車輪の制動力を調節する。ESPシステムは、1つまたは複数の車輪に選択的な制動をかけることによって、車両が追従する進路で不安定性を避けかつ/または修正する。
【0007】
制動および進路の点から車両の挙動形態に影響を及ぼすことを可能にするために、ABSおよびESPシステムは大量の情報を利用する必要がある。こうした情報は車両の特性および挙動の両方に関するものである。
【0008】
こうした情報を得るために、車両は、車輪およびステアリングに分配された様々なセンサ、とりわけ速度センサを装着される。これらのセンサによって伝達された情報に基づいて、ESPシステムおよびABSは、(例えば速度または減速度の)所望の値と測定した実際の値との間に差があるかどうかを判定するために計算を行う。これらの計算に続いて、ESPシステムおよびABSは、ブレーキシステムによって加えられるべき命令を定義する。
【0009】
例えば、1つの車輪が制動下で異常に遅くなる(すなわちロックアップする)場合は、ABSはこの車輪が十分に再加速されるまでこの車輪の制動回路の圧力を解放する。そのシステムは連続するパルスで動作する。
【0010】
ESPシステムはそれ自体、車両がオーバステアを体験していることを検出するときは、この車両の1つまたは複数の外側の車輪に選択的な制動を開始することができる。車両がアンダステアを体験していることを検出するときは、この車両の1つまたは複数の内側の車輪に選択的な制動を開始することができる。
【0011】
これらの装置は、現在の車両の設計に一般に使用されている。したがって、制動下で後車軸が持ち上がるのを避けることが目的であり、ABSおよび/またはESPシステムのいくつかの要素を含むことができる、車両のブレーキシステムを制御するための方法を提供することが有利になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5386366号
【特許文献2】EP0537724
【特許文献3】DE102005054557
【特許文献4】EP1839978
【特許文献5】EP1386804
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の1つの対象は、少なくとも1つの前輪および少なくとも1つの後輪を備える車両のブレーキシステムを制御するための方法であって、
後輪が持ち上がる少なくとも1つの状態が存在するか否かを判定するステップと、
少なくとも1つのこうした状態が存在すると判定された場合に、車両のブレーキシステムによって前輪に加えられる制動の作用力を制限および/または低減するステップと
を含むことを特徴とする方法である。
【0014】
本発明の好ましい実施形態によれば、車両の減速度が所定の値を超えるときに、後輪が持ち上がる状態が存在すると判定される。
本発明の好ましい実施形態によれば、後輪の減速度が所定の値を超えるときに、後輪が持ち上がる状態が存在すると判定される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、前輪の速度と後輪の速度の比が所定の値を超えるときに、後輪が持ち上がる状態が存在すると判定される。
本発明の好ましい実施形態によれば、後輪の減速度と前輪の減速度の比が所定の値を超えるときに、後輪が持ち上がる状態が存在すると判定される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの車輪の滑り速度が所定の値を超えるときに、後輪が持ち上がる状態が存在すると判定される。
本発明の他の対象は、少なくとも1つの前輪および少なくとも1つの後輪を備える車両のブレーキシステムを制御するための装置であって、本明細書に上記で説明した方法を実施する手段を備えることを特徴とする装置である。
【0017】
本発明の他の対象は、特許請求の範囲で特許請求される全ての方法、装置および車両である。
本発明の他の対象は、こうした装置が装着された車両である。
【0018】
本発明は、以下の説明を読み添付の図を検討することからより良く理解されるであろう。これらの図は、単に本発明の非限定的な表示によって与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明による方法を実施する手段を装着できる車両。
【図2】本発明による方法を実施する手段を備える装置の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で以下に列挙する参照番号は、本発明による方法、およびこの方法を実施する装置の様々な要素に対応する。
図1に、本発明による方法を実施する手段を装着できる車両の斜視図を示す。これは多用途車タイプの車両1である。これはとりわけ2つの後輪3が装着された後車軸2を備える。車両1はまた、2つの前輪5が装着された前車軸4も有する。従来は、前輪5および後輪3は、ブレーキシステムによって制御されるブレーキを備える。
【0021】
車両1はまた、2つの部分に分けられた車室6も備える。前部7は、車両1の運転者を収容することが意図される。後部8は、輸送すべき対象を収容することが意図される。典型的には、その部分8は、かなりの量の対象を収容することができる。例えば、その容量はファミリーカーの荷物室の容量よりずっと大きい。
【0022】
車両1が後部8に相当な積荷のある状態で乗り回されるのは珍しくない。したがって、その設計により、車両1は、後部8に位置する相当な追加の重量に対処するようにバランスがとられている。
【0023】
しかし、車両1は、後部8に積荷がない状態で運転されることがある。これが起きるときは、車両1の重心は、車両1が積荷を載せたときより前部7に近い。
後部8に積荷がない状態で乗り回す車両1が突然の急制動を体験する場合に、前記部分8は前部7に対して十分な慣性を有しないことがある。そのとき、車両の後車軸2は前車軸4に対して上昇する。このように上昇することにより、後輪3が地面との接触を失うことさえある。このように持ち上がることは車両1のユーザに不快であり危険である。さらに、過度な場合は車両1が倒れる恐れがある。
【0024】
したがって、車両1がブレーキシステムを制御するための方法を実施する手段を備えることが有利であり、この方法の目的は、後輪3が突然の急制動の下で地面から離れるのを防止することである。こうした方法の背景にあるこの理論は、ABSを支配する理論と似ている。これは、運転者が緊急に制動する状態で車両に対する制御を維持するのを助けることを含む。
【0025】
本発明による方法は、とりわけ、以下のステップを含む。
車両1の要素の速度および/または加速度/減速度を測定するステップ。これは、車両1の移動速度、前輪5および/または後輪3の回転速度、前輪5の速度と後輪3の速度の比、あるいは前輪および/または後輪が地面に沿って滑るときの速度でよい。
【0026】
1つまたは複数の所定の値に対して1つまたは複数のこれらの測定値を比較するステップ。例えば、少なくとも1つの測定値が所定の値を超える場合に、後輪が持ち上がる可能性がある状態に到達すると考えられる。
【0027】
後輪が持ち上がる可能性がある状態に到達する場合に、車両のブレーキシステムによって前輪に加えられる制動の作動力を制限および/または低減するステップ。
したがって、車両の後車軸が持ち上がるときに、本発明による方法は、前車軸4への制動の作用力を低減するように命令する。それにより車両1の前部7の減速度は低下される。これにより、前部7の速度と後部8の速度との間の平衡状態が再確立されるが、その前の不均衡状態は前記部分7および8の慣性に差があるからである。したがって、後車軸2は持ち上がるのを止め、後輪3は元に戻って地面と接触する。
【0028】
車両1の要素の速度および/または加速度/減速度を測定することは、車両1に様々なセンサ9を取り付けることを必要とする。これらのセンサは、とりわけ、前車軸4および後車軸2上に位置する。車両1がさらに備えている可能性があるABSおよび/またはESPシステムの一部を形成するセンサを用いることが可能である。
【0029】
図2に、本発明による方法を実施する手段を備える装置を示す。この装置は、例えば車両1などの車両に取り付けられることが意図される。この装置10は1つまたは複数のセンサ9を備える。これらのセンサは、車両1の様々な点に、とりわけ前車軸4および/または後車軸2上に位置する。これらのセンサ9は、速度および/または加速度/減速度を測定することができる。これらのセンサ9は、車両1が備えるABSおよび/またはESPシステムの一部を形成することもできる。
【0030】
1つまたは複数のセンサ9は、車両1のブレーキシステムを制御するための装置11に結合される。1つのセンサ9が、例えば、バス12を介して装置11に接続される。装置11は、マイクロプロセッサ13を備えることができ、そのマイクロプロセッサ13は、バス14によって、プログラム記憶装置15と、データ記憶装置16と、1つまたは複数のセンサ9と連絡するためのインターフェース17と、車両1のブレーキシステム19と連絡するためのインターフェース18とに接続される。
【0031】
そのために、記憶装置15はソフトウェア20を格納する。このソフトウェア20は、センサ9によって伝達されるデータを、データ記憶装置16に格納された値と比較し、インターフェース18を介してブレーキシステム19に適切な応答を送るように処理することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、ソフトウェア20は、車両1の移動中の減速度を考慮し、その減速度を記憶装置16に格納された所定の値と比較する。その場合、車両1の減速が突然すぎることは、後輪3が持ち上がる状態であると考えることができる。
【0033】
本発明の他の実施形態によれば、ソフトウェア20は、前輪5の回転速度の減速度を考慮し、その減速度を記憶装置16に格納された所定の値と比較する。その場合、前輪5の回転速度の減速度が急過ぎることは、後輪3が持ち上がる状態であると考えることができる。
【0034】
本発明の他の実施形態によれば、ソフトウェア20は、前輪5の回転速度および後輪3の回転速度の両方を考慮する。車両1が制動下であるときに、ブレーキシステムは典型的に前輪5および後輪3に作用する。しかし、前輪5は地面に接触している。したがって、前輪5は駆動しそれらの回転速度はすぐにゼロに降下することはない。ゼロに降下する場合は、車両は横滑りすることになる。ABSの目的は、具体的には、車両が横滑りするのを防止するために車輪がロックするのを防止することである。
【0035】
後車軸2が持ち上がり、後輪3が地面との接触を失う場合は、それらは前輪5と同じようには駆動しない。ブレーキシステムが作用するので回転速度は急速に降下する。したがって、前輪5の回転速度と後輪3の回転速度の比が大きすぎることは、後輪3が持ち上がる状態であると考えることができる。前記速度間の差、すなわち一方の速度をもう一方の速度で割るのではなく一方の速度からもう一方の速度を引いた結果が大きすぎると考えることも可能である。
【0036】
車輪の速度ではなく車輪の減速度を比較することも可能である。この場合は、後輪3の減速度と前輪5の減速度の比が大きすぎることは、後輪3が持ち上がる状態であると考えることができる。
【0037】
本発明の他の実施形態によれば、ソフトウェア20は、前輪5および/または後輪3の地面に沿った滑り速度を考慮する。この滑り速度は、例えば、車輪3または5の回転速度と車両1の移動速度とを比較することによって獲得することができる。
【0038】
後輪3が持ち上げられ地面から離れたときは、前記車輪3が実際に滑ることがない。しかし、上記の速度を比較することによって値を獲得することができる。
本発明のこの実施形態によれば、特定の閾値を超えて車輪が滑ることは、突然の急な制動に相当すると考えることができ、この制動は後輪3が持ち上がる状態である可能性がある。
【0039】
本発明によれば、後輪が持ち上がる場合にシステムが全く起動しないかまたは遅れて起動する可能性(偽陰性率(false−negative rate))を低減するために、あるいは一方で、停止距離および/または車両を減速させるためにかかる時間を長くして起動の割合をほぼ100%まで上昇させるために、本発明によるシステムが起動する閾値を調節することができる。しかし、車輪が持ち上がる状態に入る見込みが低い場合に、システムの起動を決定し、有利には介入の強さを低減する1つまたは複数の基準の選択が精密であり妥当であることは、少なくとも1つの面で、好ましくは両方の面(偽陰性率/停止距離)で、結果を改善できることを意味する。これらの基準は、有利には、一方で車両の接地システムの機械的な挙動に応じて、またもう一方で運転者による推定される取り扱い方のタイプに応じて選択される。例えば、スポーツ車両に関して、スポーティな運転のために、停止距離の低減が選択される。対照的に、ファミリーカーさらには多用途車では、システムが起動しないかまたは遅れて起動するリスクを低減することが有利であることが分かる。重心の高さと、前車軸と重心を通る横断面との間の距離の比が小さい場合は、車両は良好な接地システムを有すると考えられる。有利には、本発明によるシステムは、車輪が持ち上がる場合に起動しないことまたは遅れて起動することを避けるように(ごくわずかな偽陰性率)、その比が1.2超である車両のために設定される。車両減速度7m/s未満に対応する起動基準が、車両の動的挙動に対して全体的に有害な影響を有すること、すなわち、どんな場合でもほぼ100%である検出率の点ではあまり改善せずに停止距離が長くなることが分かっている。有利には、本発明によるシステムの介入の起動のための基準は、7m/s以上であり、この基準は、重心の高さと、前車軸と重心を通る横断面との間の距離の比が高い(ミニバン、軽自動車、SUV)車両の停止距離と偽陰性率との間の良好なバランスに対応する。有利には、起動基準は、普通の運転者によって運転される大部分の車両に関して9m/s以上の車両の減速度に対応する。駆動輪が3つ以上のスポーティな挙動の車両、典型的には4×4として知られた車両、および/または運転スタイルがスポーティであり例外的な(偽陰性率が非常に低いが完全には無視できない)状態下で後輪が持ち上がる場合に車両を制御できる運転者を対象とした車両に関しては、9.2m/sと10.3m/sの間、好ましくは9.3m/sと10m/sの間であり、例えば9.5m/sまたは9.7m/sに等しい車両の減速度に対応する起動基準を使用する。
【0040】
さらに、本発明の特に有利な実施形態では、基準(停止距離/偽陰性率)の一方またはもう一方(あるいは両方)に関して、それらの基準を「AND」論理関数を用いて第2の基準と組み合わせることによって、さらに結果を改善することが可能である。本発明の第1の有利な変形形態では、ABSの作用の対象である車両の後輪に関して、第2の基準は後輪の滑りに対応する。好ましくは、ABSがオンの状態での滑りは、1%超、好ましくは1.9%と5%の間であり、例えば1.9%、2%、2.2%または3%に等しい。有利には、より厳密な起動基準が、スポーツ車両および/または駆動輪が3つ以上の車両(4×4など)に関して使用される(より高い偽陰性率を受け入れる)。
【0041】
本発明の他の変形形態では、第1の基準(車両減速度)は、「AND」論理関数を用いて(制動下の)車輪の(正の)接線加速度に関する第3の基準と組み合わされる。好ましくは、第3の基準の車輪の正の接線加速度は、2.5m/sと7m/sの間、好ましくは3m/sと6m/sの間、さらに好ましくは3.5m/sと5.5m/sの間であり、例えば3.5m/s、4m/sまたは5m/sに等しい。有利には、より厳密な起動基準が、スポーツ車両および/または駆動輪が3つ以上の車両(4×4など)に関して使用される(より高い偽陰性率を受け入れる)。
【0042】
好ましい実施形態では、「AND」関数を使用して、第1、第2および第3の基準を組み合わせる。言い換えると、車両の減速度が閾値より高く、例えば8m/sに等しく、(同時に)後輪の滑りが閾値より大きく、例えば2%に等しく、(同時に)後輪の正の接線加速度が閾値より大きく、例えば5m/sに等しいときに、ブレーキ低減システムを起動するか、またはその強さを上昇させる。
【0043】
2つの、さらに良好には3つの起動基準を組み合わせることによって、以下のことが可能になる。
a)後輪が持ち上がる残りの率を低減すること。
b)それを備える車両に合った第1、第2または第3の起動基準あるいはそれらの組合せの個々の閾値を増大し、したがって、緊急に制動する状態下で停止距離または車両を減速するためにかかる時間が短縮されること。
【0044】
前述の特性a)および/またはb)の組合せを獲得するために、車両の製造者の仕様書に応じてトレードオフをもたらすことも可能である。
後輪3が持ち上がる状態が存在すると考えられるときに、ソフトウェア20はインターフェース18を介してブレーキシステム19に命令を送る。この命令の目的は、前輪5の制動を低減または制限することである。例えば、制動力を特定の割合だけ低減することができ、前記割合は、センサ9によって測定した値と記憶装置16に格納された値との間の差に関連する。前記差および前記割合に関係するルックアップ表を、記憶装置16に格納することができる。有利には、その表は所与の車両に関して設定される。しかし、複数の表を学習および/または格納することによって変更できる表(例えば、静かな運転スタイルに適した表、通常の運転スタイルに適した表、およびスポーティな運転スタイルに適した表)は、本発明の範囲から逸脱しない。車両のコンピュータが、運転者が取り入れる運転スタイルのタイプを特定し、特定されたスタイルに最も良く合う表を選択する。
【0045】
制動力に最大の閾値を課すことも可能であり、この閾値は、センサ9によって測定された値と記憶装置16に格納された値との間の差と関係する。前記の差および前記閾値に関するルックアップ表を記憶装置16に格納することができる。
【0046】
ソフトウェア20によって送られるコマンドに続いて、車両1のブレーキシステム19は、前輪5の制動を低減または制限する。油圧ブレーキシステムの場合は、油圧ブレーキユニットの前輪5での圧力を低減する。前輪5の減速度を低減することにより、後輪3が地面と接触を回復することが可能になる。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、図2に示すような装置は、車両1がさらにすでに備えることができるABS装置またはESP装置中に組み込まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 車両
2 後車軸
3 後輪
4 前車軸
5 前輪
6 車室
7 車両1の前部
8 車両1の後部
9 センサ
10 本発明による方法を実施する装置
11 ブレーキシステムを制御するための装置
12 バス
13 マイクロプロセッサ
14 バス
15 プログラム記憶装置
16 データ記憶装置
17 センサ9と連絡するためのインターフェース
18 ブレーキシステム19と連絡するためのインターフェース
19 車両1のブレーキシステム
20 ソフトウェア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの前輪(5)および少なくとも1つの後輪(3)を備える車両(1)のブレーキシステム(19)を制御するための方法であって、
前記後輪(3)が持ち上がる少なくとも1つの状態が存在するか否かを判定するステップと、
前記少なくとも1つの状態が存在すると判定された場合に、前記車両のブレーキシステム(19)によって前記前輪(5)に加えられる制動の作用力を制限および/または低減するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記車両(1)の減速度が所定の値を超えるときに、前記後輪が持ち上がる状態が存在すると判定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両の減速度の所定の値が、7m/sと10.3m/sの間、好ましくは8m/sと9.7m/sの間であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記後輪(3)の正の加速度が所定の値を超えるときに、前記後輪(3)が持ち上がる状態が存在すると判定されることを特徴とする、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記後輪(3)の正の加速度の所定の値が、2.5m/sと7m/sの間、好ましくは3.5m/sと5.5m/sの間であることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記前輪(5)の速度と前記後輪(3)の速度の比が所定の値を超えるときに、前記後輪(3)が持ち上がる状態が存在すると判定されることを特徴とする、請求項1から5のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記後輪(3)の減速度と前記前輪(5)の減速度の比が所定の値を超えるときに、前記後輪(3)が持ち上がる状態が存在すると判定されることを特徴とする、請求項1から6のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記車輪のうち少なくとも1つの滑り速度が所定の値を超えるときに、前記後輪(3)が持ち上がる状態が存在すると判定されることを特徴とする、請求項1から7のうちいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記後輪(3)の滑りの前記値が、1%と5%の間、好ましくは1.9%と3%の間であることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの前輪および少なくとも1つの後輪を備える車両のブレーキシステムを制御するための装置であって、
請求項1から6のいずれか一項に記載の方法を実施する手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置を備える車両。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−285147(P2010−285147A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−132880(P2010−132880)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】