説明

ブレーキ制御装置

【課題】ホイールシリンダ圧の過度な上昇を防止することにより、ABSが正常に作動する状態を維持する。
【解決手段】ホイールシリンダ圧を取得するホイールシリンダ圧取得部210と、ホイールシリンダ圧が所定の上限値に達したことを判定する判定部220と、ホイールシリンダ圧を制御する制御部を有するブレーキ制御装置であって、ホイールシリンダ圧が上限値に達したことを判定部220が判定した場合に、制御部230は、ホイールシリンダ圧の上昇を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動力式液圧源が過加圧状態にあることを検出する過加圧検出装置と、ブレーキシリンダの液圧の過加圧を抑制する過加圧抑制装置とを含むブレーキ装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。このブレーキ装置によれば、動力式液圧源が過加圧状態にあると検出された場合に、ブレーキシリンダの液圧の過増圧を抑制することにより、運転者の違和感を抑制することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−29405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ブレーキアクチュエータには、適切な作動油圧範囲が存在する。しかし、ブレーキロータやパッドの組み合わせ、使用状態によっては、ホイールシリンダ圧が作動油圧範囲の上限値に達することがある。この状態では適切なバルブ作動が保証されず、ABS(Antilock Brake System)が正常に作動できない場合があった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的はブレーキアクチュエータの好適な作動状態を維持する技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のブレーキ制御装置は、ホイールシリンダ圧を取得するホイールシリンダ圧取得部と、前記ホイールシリンダ圧が所定の上限値に達したことを判定する判定部と、前記ホイールシリンダ圧を制御する制御部を有するブレーキ制御装置であって、前記ホイールシリンダ圧が前記上限値に達したことを前記判定部が判定した場合に、前記制御部は、前記ホイールシリンダ圧の上昇を抑制する。
【0007】
この態様によると、ホイールシリンダ圧の計測値または予測値が所定の上限値に到達した場合には、タイヤがスリップ等していなくても制御部がホイールシリンダ圧の上昇を抑制することにより、好適なブレーキ作動を保証する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ブレーキアクチュエータの好適な作動状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係るブレーキ制御装置の構成を示す図である。
【図2】実施形態に係るブレーキアクチュエータの制御を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態(以下、実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置10の構成を示す図である。図1に示すブレーキ制御装置10における液圧回路は、左前輪および右後輪用の系統と、右前輪および左後輪用の系統とが独立したダイアゴナル系統として構成される。これにより、一方の系統に何らかの支障をきたしても、他方の系統の機能は確実に維持される。
【0012】
ブレーキ制御装置10は、運転者によるブレーキペダル12の踏み込み量に応じた液圧を発生させるマスタシリンダ14を備える。マスタシリンダ14は、シリンダハウジング96内に、第1ピストン90が摺動自在に収容されている。第1ピストン90の一方の端には、ブレーキペダル12に連結されたピストンロッド89が設けられている。さらに、シリンダハウジング96内には、第2ピストン91が摺動自在に収容されている。このように2つのピストンがシリンダハウジング96に挿入されることにより、第1ピストン90と第2ピストン91との間に第1液室94が形成され、第2ピストン91とシリンダハウジング96の底部との間に第2液室95が形成されている。
【0013】
第1ピストン90と第2ピストン91の間には、所定の取付荷重で第1スプリング92が設けられており、第2ピストン91とシリンダハウジング96の底部との間には、第2スプリング93が設けられている。
【0014】
マスタシリンダ14のシリンダハウジング96の側面には、第1液室94に連通する第1入力ポート87および第2液室95に連通する第2入力ポート86が形成されている。第1入力ポート87および第2入力ポート86は、外部リザーバとしてのマスタシリンダリザーバ88に連通接続されている。マスタシリンダリザーバ88は、作動液を貯留しており、第1入力ポート87、第2入力ポート86を介して、マスタシリンダ14の第1液室94、第2液室95に作動液を供給する。
【0015】
また、マスタシリンダ14のシリンダハウジング96の側面には、第1液室94に連通する第1出力ポート85および第2液室95に連通する第2出力ポート84が形成されている。第1出力ポート85には、右前輪と左後輪用のブレーキ油圧制御導管16bが接続されている。また、第2出力ポート84は、左前輪と右後輪用のブレーキ油圧制御導管16aが接続されている。
【0016】
上述のように構成されたマスタシリンダ14では、ブレーキペダル12が踏まれて第1ピストン90および第2ピストン91が所定値以上前進すると、第1ピストン90および第2ピストン91にそれぞれ設けられたカップリング(図示せず)により、第1液室94、第2液室95とマスタシリンダリザーバ88との連通が遮断される。これにより、マスタシリンダ14の第1液室94、第2液室95に、ブレーキペダル12の操作量に応じたマスタシリンダ圧が発生し、第1出力ポート85、第2出力ポート84より作動液が送出される。
【0017】
ブレーキペダル12には、ペダル踏み込み時にON状態となるブレーキスイッチ72が設けられている。ブレーキペダル12とマスタシリンダ14との間に、運転者の踏力を増大させて大きな制動力を発生させるためのブレーキブースタ(図示せず)が設けられてもよい。
【0018】
また、ブレーキ制御装置10は、ポンプ22a、22bを有する。ポンプ22aの一方の出力部は、逆止弁23aを介して高圧導管20aに接続されており、他方の出力部は、供給導管28aを介して内部リザーバ30aの第1ポートに接続されている。高圧導管20aは、後述するリニア制御弁32aを介して、ブレーキ油圧制御導管16aに接続されている。内部リザーバ30aの第2ポートは、ブレーキ油圧制御導管16aに接続されている。また、ポンプ22bの一方の出力部は、逆止弁23bを介して高圧導管20bに接続されており、他方の出力部は、供給導管28bを介して内部リザーバ30bの第1ポートに接続されている。高圧導管20bは、後述するリニア制御弁32bを介して、ブレーキ油圧制御導管16bに接続されている。内部リザーバ30bの第2ポートは、ブレーキ油圧制御導管16bに接続されている。
【0019】
ポンプ22aは、内部リザーバ30aから作動液を汲み上げてホイールシリンダ54FL、54RRの液圧を増圧する方向(以下、増圧方向という)と、マスタシリンダ14またはホイールシリンダ54FL、54RRからの作動液を内部リザーバ30aに蓄積する方向(以下、蓄積方向という)の2方向に作動液を吐出可能なポンプである。また、ポンプ22bは、内部リザーバ30bから作動液を汲み上げてホイールシリンダ54FR、54RLの液圧を増圧する方向(以下、増圧方向という)と、マスタシリンダ14またはホイールシリンダ54FR、54RLからの作動液を内部リザーバ30bに蓄積する方向(以下、蓄積方向という)の2方向に作動液を吐出可能なポンプである。このような2方向に吐出可能なポンプとしては、たとえばギヤポンプを例示できる。
【0020】
なお、以下においては、ポンプ22a、22bを総称して、適宜「ポンプ22」と呼び、内部リザーバ30a、30bを総称して、適宜「内部リザーバ30」と呼ぶ。また、高圧導管20a、20bを総称して、適宜「高圧導管20」と呼び、ブレーキ油圧制御導管16a、ブレーキ油圧制御導管16bを総称して、適宜「ブレーキ油圧制御導管16」と呼び、リニア制御弁32a、32bを総称して、適宜「リニア制御弁32」と呼ぶ。また、ホイールシリンダ54FL、54RR、54RL、54FRを総称して、適宜「ホイールシリンダ54」と呼ぶ。
【0021】
ポンプ22は、モータ24により駆動される。モータ24を所定の第1方向に回転させることにより、ポンプ22は、作動液を増圧方向に吐出するように駆動される(このときのポンプ22の回転状態を正回転と呼ぶ)。また、モータ24を第1方向と反対の第2方向に回転させることにより、ポンプ22は、作動液を蓄積方向に吐出するように駆動される(このときのポンプ22の回転状態を逆回転と呼ぶ)。
【0022】
ポンプ22は、正回転するとき、内部リザーバ30に蓄積された作動液を汲み上げ、高圧導管20に吐出供給する。また、ポンプ22は、逆回転するとき、マスタシリンダ14またはホイールシリンダ54からの作動液を内部リザーバ30に蓄積する。
【0023】
左前輪と右後輪用のブレーキ油圧制御導管16aと高圧導管20aとの間には、リニア制御弁32aおよび逆止弁33aが設けられている。リニア制御弁32aは、非通電時は開いた状態にあり、必要に応じて開度を調整可能な常開型の電磁流量制御弁である。リニア制御弁32aの開度を調整することにより、ブレーキ油圧制御導管16aの油圧と高圧導管20aの油圧との間、すなわち、リニア制御弁32aの前後に差圧を作り出すことができる。
【0024】
同様に、右前輪と左後輪用のブレーキ油圧制御導管16bと高圧導管20bとの間には、リニア制御弁32bおよび逆止弁33bが設けられている。リニア制御弁32bは、非通電時は開いた状態にあり、必要に応じて開度を調整可能な常開型の電磁流量制御弁である。リニア制御弁32bの開度を調整することにより、ブレーキ油圧制御導管16bの油圧と高圧導管20bの油圧との間、リニア制御弁32bの前後に差圧を作り出すことができる。
【0025】
左前輪と右後輪用の供給導管28aには、左前輪と右後輪用のリターン導管44aが接続されており、リターン導管44aと高圧導管20aとの間には、左前輪用の接続導管46FLおよび右後輪用の接続導管46RRが接続されている。接続導管46FLには、常開型のソレノイド弁である増圧弁48FLおよび常閉型のソレノイド弁である減圧弁50FLが設けられており、接続導管46RRには、常開型のソレノイド弁である増圧弁48RRおよび常閉型のソレノイド弁である減圧弁50RRが設けられている。
【0026】
増圧弁48FLと減圧弁50FLとの間の接続導管46FLは、接続導管52FLにより左前輪のホイールシリンダ54FLに接続されており、接続導管52FLと高圧導管20aとの間には、ホイールシリンダ54FLより高圧導管20aへ向かう作動液の流れのみを許す逆止弁56FLが設けられている。
【0027】
同様に、増圧弁48RRと減圧弁50RRとの間の接続導管46RRは、接続導管52RRにより右後輪のホイールシリンダ54RRに接続されており、接続導管52RRと高圧導管20aとの間には、ホイールシリンダ54RRより高圧導管20aへ向かう作動液の流れのみを許す逆止弁56RRが設けられている。
【0028】
左前輪および右後輪側と同様、右前輪と左後輪用の内部リザーバ30bには、右前輪と左後輪用のリターン導管44bが接続されており、リターン導管44bと高圧導管20bとの間には、左後輪用の接続導管46RLおよび右前輪用の接続導管46FRが接続されている。接続導管46RLには、常開型のソレノイド弁である増圧弁48RLおよび常閉型のソレノイド弁である減圧弁50RLが設けられており、接続導管46FRには、常開型のソレノイド弁である増圧弁48FRおよび常閉型のソレノイド弁である減圧弁50FRが設けられている。
【0029】
増圧弁48RLと減圧弁50RLとの間の接続導管46RLは、接続導管52RLにより左後輪のホイールシリンダ54RLに接続されており、接続導管52RLと高圧導管20bとの間には、ホイールシリンダ54RLより高圧導管20bへ向かう作動液の流れのみを許す逆止弁56RLが設けられている。同様に、増圧弁48FRと減圧弁50FRとの間の接続導管46FRは、接続導管52FRにより右後輪のホイールシリンダ54FRに接続されており、接続導管52FRと高圧導管20bとの間には、ホイールシリンダ54FRより高圧導管20bへ向かう作動液の流れのみを許す逆止弁56FRが設けられている。
【0030】
なお、以下においては、増圧弁48FL、48RR、48RL、48FRを総称して、「増圧弁48」と呼び、減圧弁50FL、50RR、50RL、50FRを総称して、「減圧弁50」呼ぶ。また、リターン導管44a、44bを総称して、「リターン導管44」と呼び、接続導管52FL、52RR、52RL、52FRを総称して、「接続導管52」と呼ぶ。
【0031】
車両の各車輪に対しては、ディスクブレーキユニットが設けられており、各ディスクブレーキユニットは、ホイールシリンダ54の作用によってブレーキパッドをディスクに押し付けることで制動力を発生するようになっている。
【0032】
左前輪用、右後輪用、左後輪用および右前輪用のホイールシリンダ54FL〜54FR付近には、ホイールシリンダ圧を検出するホイールシリンダ圧センサ51FL、51RR、51RLおよび51FRが設けられている。以下、適宜、ホイールシリンダ圧センサ51FL〜51FRを総称して「ホイールシリンダ圧センサ51」と呼ぶ。
【0033】
また、左前輪、右後輪、左後輪および右前輪には、それぞれの車輪の車輪速を検出する車輪速センサ18FL、18RR、18RLおよび18FRが設けられている。以下、適宜、車輪速センサ18FL、18RR、18RLおよび18FRを総称して「車輪速センサ18」と呼ぶ。
【0034】
上述のリニア制御弁32、増圧弁48、減圧弁50、ポンプ22等は、ブレーキ制御装置10の液圧アクチュエータ80を構成する。そして、かかる液圧アクチュエータ80は、電子制御ユニット(以下「ECU」という)200によって制御される。
【0035】
ECU200は、各種演算処理を実行するCPU、各種制御プログラムを格納するROM、データ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、エンジン停止時にも記憶内容を保持できるバックアップRAM等の不揮発性メモリ、入出力インターフェース、各種センサ等から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換して取り込むためのA/Dコンバータ、計時用のタイマ等を備えるものである。
【0036】
ECU200は、ホイールシリンダ圧取得部210、判定部220、制御部230を備える。ホイールシリンダ圧取得部210は、ホイールシリンダ圧センサ51を用いて計測されたホイールシリンダ圧を取得する。判定部220は、ホイールシリンダ圧が所定の上限値に到達したかどうかを判定する。制御部230は、減圧弁50の制御を行う。
【0037】
また、ECU200には、上述のリニア制御弁32、増圧弁48、減圧弁50、モータ24等の液圧アクチュエータ80を含む各種アクチュエータ類が電気的に接続されている。
【0038】
また、ECU200には、制御に用いるための信号を出力する各種センサ・スイッチ類が電気的に接続されている。すなわち、ECU200には、ホイールシリンダ圧センサ51から、ホイールシリンダ54におけるホイールシリンダ圧を示す信号が入力される。
【0039】
また、ECU200には、車輪速センサ18から各車輪の車輪速度を示す信号が入力され、ヨーレートセンサからヨーレートを示す信号が入力され、操舵角センサからステアリングホイールの操舵角を示す信号が入力され、車速センサから車両の走行速度を示す信号が入力されたりしている。
【0040】
また、ECU200には、マスタシリンダ圧センサ13からマスタシリンダ圧を示す信号が入力され、ブレーキスイッチ72より該スイッチがオン状態にあるか否かを示す信号が入力される。また、ECU200には、図示していない高圧導管圧を検出するセンサからの信号が入力され、マスタシリンダ圧と高圧導管圧とからリニア制御弁32前後の差圧Pを算出する。
【0041】
このように構成されるブレーキ制御装置10では、通常の走行状態にある場合には、リニア制御弁32が開弁、増圧弁48が開弁、減圧弁50が閉弁された状態にあり、運転者がブレーキペダル12を踏み込んだことにより生じたマスタシリンダ圧と同じ油圧がホイールシリンダ圧に生じ、制動力を発生するようになっている。
【0042】
たとえば、乗車数が定員いっぱいで車重が増加すると、運転者がブレーキペダル12を踏み込んだことにより生じたマスタシリンダ圧だけでは、ホイールシリンダ圧が不足する場合がある。これを防止するため、本発明の実施形態に係るブレーキ制御装置10においては、ポンプ22による作動液の吐出も併用することによって、ホイールシリンダ圧を高めることができ、これにより、ブレーキの制動力を十分確保することが可能となる。
【0043】
しかしながら、ポンプ22を併用して加圧することにより、ホイールシリンダ圧が過度に上昇する可能性が生じる。ブレーキ制御装置10を搭載している場合、ホイールシリンダ圧が過度に上昇すると、通常であれば車輪がロックするため、減圧弁50を開弁してホイールシリンダ圧を低減する制御が行われる。しかしながら、車重が大きい場合は、ホイールシリンダ圧が過度に上昇しても車輪がロックしにくくなる。このときABSは作動しないため、ホイールシリンダ圧は上昇し続ける。ホイールシリンダ圧が所定の上限値を超えると、適切に減圧弁50が作動できない状態となり、液圧アクチュエータ80が正常に機能しないことがある。
【0044】
そこで、本実施の形態に係るブレーキ制御装置10は、液圧アクチュエータ80を常に正常に作動させるための制御機構を有する。本実施の形態に係るブレーキ制御装置によれば、ホイールシリンダ圧の測定値が所定の上限値を超えた場合に、減圧弁50を作動させることより、ホイールシリンダ圧が過度に上昇するのを防止する。
【0045】
これにより、ホイールシリンダ圧を許容範囲内に抑え、液圧アクチュエータ80を安定して機能させることができる。また、ホイールシリンダ圧を許容範囲内に抑えることにより、ABSを常に正常に作動させることもできる。
【0046】
図2は、実施形態に係るブレーキアクチュエータの制御を説明するためのフローチャートである。まず、ホイールシリンダ圧センサ51がホイールシリンダ圧を計測する(S10)。このホイールシリンダ圧の計測値を、ECU200内のホイールシリンダ圧取得部210が取得する(S12)。次に、判定部220がホイールシリンダ圧の計測値が所定の上限値に到達しているか判定する(S14)。ホイールシリンダ圧の計測値が所定の上限値に到達した場合(S14のY)、制御部230の指示により、常閉型のソレノイド弁である減圧弁50を開状態にする。この減圧弁50の調節により、ホイールシリンダ圧の上昇を防止する。一方、ホイールシリンダ圧の計測値が所定の上限値に到達していない場合(S14のN)、引き続きホイールシリンダ圧を計測する(S10)。ホイールシリンダ圧の所定の上限値は車種によって異なるため、実験によって定めてもよい。
【0047】
図2に示すブレーキアクチュエータの制御を行えば、ホイールシリンダ圧を所定の上限値以下に抑えることができるため、たとえばABSを車両に搭載している場合、ABSを常に正常に機能させることができる。また、ドライバに対してはABSが作動しているものと認識させることにより、ホイールシリンダ圧が上限に近づいていることを認知させることができる。
【0048】
また、ホイールシリンダ圧の計測値が所定の上限値に到達した場合、たとえば減圧パルスを数回、所定の間隔をおいて生成し、減圧弁50の開状態と閉状態とを周期的に実現することで、段階的にホイールシリンダ圧を減圧してもよい。周期的に減圧することで、ドライバは、ABSの作動とは異なる減圧が行われていることを認知でき、フェードなどの異常が生じていることを認識することが可能となる。
【0049】
なお、ホイールシリンダ圧センサ51を有しない場合、ホイールシリンダ圧は、マスタシリンダ圧および各輪に設けられたバルブの作動時間等から予測されるように、ブレーキ制御装置10が構成されてもよい。
【0050】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能であり、同様な効果を得ることができる。
【0051】
10 ブレーキ制御装置、 12 ブレーキペダル、 14 マスタシリンダ、 20 高圧導管、 22 ポンプ、 24 モータ、 30 内部リザーバ、 32 リニア制御弁、 48 増圧弁、 50 減圧弁、 54 ホイールシリンダ、 72 ブレーキスイッチ、 80 液圧アクチュエータ、 88 マスタシリンダリザーバ、 94 第1液室、 95 第2液室、 200 ECU、 210 ホイールシリンダ圧取得部、 220 判定部、 230 制御部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールシリンダ圧を取得するホイールシリンダ圧取得部と、
前記ホイールシリンダ圧が所定の上限値に達したことを判定する判定部と、
前記ホイールシリンダ圧を制御する制御部を有するブレーキ制御装置であって、
前記ホイールシリンダ圧が前記上限値に達したことを前記判定部が判定した場合に、前記制御部は、前記ホイールシリンダ圧の上昇を抑制することを特徴とするブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−221761(P2010−221761A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69001(P2009−69001)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】