説明

プッシュスイッチおよびこのプッシュスイッチを備えたカード用コネクタ装置

【課題】ハウジングの底面に対する操作体の近接および離反方向における寸法を短縮しやすいプッシュスイッチを提供すること。
【解決手段】ハウジング41には、押圧操作時の操作体46の動作方向を規定する傾斜面43A,43Bが設けられ、前記動作方向は、ハウジング41の底面42に近接する方向(矢印A方向)と、この方向に対する直交方向(矢印B方向)とを成分とし、トーションスプリング51は操作体46とハウジング41の底面42の間で押し潰されたときに、1対の脚部53A,53Bが前記直交方向に平行な方向に広がる姿勢に保持されている。操作体46の押圧操作の前後で、トーションスプリング51を介した導通状態と非導通状態が切り換わるよう固定接点50A,50Bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、末広がりの1対の脚部を有した導電性弾性体が、1対の脚部が広がるように弾性変形したり復元したりすることで、1対の脚部のそれぞれが1対の固定接点のそれぞれに接触した導通状態と、少なくとも1対の脚部の一方が1対の固定接点の一方から離間した非導通状態とを形成するプッシュスイッチ、および、このプッシュスイッチによりケースへのカードの収容を検知するカード用コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプッシュスイッチは、ハウジングと、このハウジングの底面に対して近接および離反する方向に動作可能に支持され押圧操作される操作体と、ケースに設けられた1対の固定接点と、末広がりの1対の脚部を有し、この1対の脚部が操作体側からハウジングの底面に向かって延びた姿勢で操作体とハウジングの底面の間に保持された導電性弾性体とを備えている。
【0003】
導電性弾性体はトーションスプリングからなる。操作体にはハウジングの底面と平行な方向に突起した突起部が設けられている。この突起部にはトーションスプリングのコイル部が挿入されている。トーションスプリングの1対の脚部のそれぞれはハウジングの底面に当接している。
【0004】
このように構成された従来のプッシュスイッチでは、操作体が押圧操作されると、トーションスプリングが操作体とハウジングの間で押し潰されて、1対の脚部が広がる。これにより、トーションスプリングの1対の脚部のそれぞれが1対の固定接点のそれぞれに接触する。つまり、1対の固定接点がトーションスプリングを介して導通した状態となる。
【0005】
操作体に与えられている押圧力が取り除かれると、トーションスプリングが突起部を押圧することで操作体を押し戻しながら復元する。これにより、トーションスプリングの1対の脚部のそれぞれが1対の固定接点のそれぞれから離れ、1対の固定接点がトーションスプリングを介して導通した状態ではなくなる。
【0006】
従来のカード用コネクタ装置は、カードが挿入されるケースと、前述した従来のプッシュスイッチと同様のプッシュスイッチとを備えている。プッシュスイッチは、ケースに挿入されたカードにより操作体が押圧操作されるようにケース内に設けられている。
【0007】
前述した従来のプッシュスイッチは特許文献1で開示されている。前述した従来のカード用コネクタ装置は特許文献2で開示されている。
【特許文献1】特開2005−353545公報
【特許文献2】特開2004−185822公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したプッシュスイッチに対しては、ハウジングの底面に対する操作体の近接および離反方向における寸法の短縮化が要望されている。この要望に応えるために、前記近接および離反方向における操作体の可動範囲を小さくすることが考えられる。しかし、その可動範囲を小さくすると、操作体とハウジングの底面の間で押し潰されたときのトーションスプリングの変形量が小さくなり、すなわち、1対の脚部のそれぞれが1対の固定接点のそれぞれに同時に接触したときの1対の脚部のそれぞれの端部の間の間隔寸法と、少なくとも1対の脚部の一方が1対の固定接点の一方から離間したときの1対の脚部のそれぞれの端部の間の間隔寸法との差が小さくなり、1対の固定接点の導通状態と非導通状態とを形成しにくくなる。つまり、特許文献1,2で開示されたプッシュスイッチは、ハウジングの底面に対する操作体の近接および離反方向における寸法を短縮しにくいものであった。
【0009】
本発明は、前述の実状を考慮してなされたものであり、その第1目的は、ハウジングの底面に対する操作体の近接および離反方向における寸法を短縮しやすいプッシュスイッチを提供することである。第2目的は、ケースにカードが収容されたことを検知する手段として、第1目的を達成できるプッシュスイッチを備えたカード用コネクタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
〔1〕 前述の第1目的を達成するために、本発明のプッシュスイッチは、ハウジングと、このハウジングの底面に近接および離反する方向に動作可能に支持され押圧操作される操作体と、前記ハウジングに設けられた1対の固定接点と、末広がりの1対の脚部を有し、この1対の脚部が前記ハウジングの底面に向かって延びた姿勢で前記操作体と前記ハウジングの底面の間に保持された導電性弾性体とを備え、前記操作体が前記ハウジングの底面に近接する方向に押圧操作されたことにより前記導電性弾性体が前記操作体と前記ハウジングの間で押し潰されて前記1対の脚部が広がったときと、前記導電性弾性体が復元したときとで、前記1対の固定接点のそれぞれに前記1対の脚部のそれぞれが同時に接触した導通状態と、少なくとも前記1対の脚部の一方が前記固定接点の一方から離間した非導通状態とが切換わる位置に、前記1対の固定接点が配置されたプッシュスイッチであって、前記ハウジングには、押圧操作時の前記操作体の動作方向を規定するガイド部が設けられ、このガイド部により規定された前記操作体の動作方向が、前記ハウジングの底面に近接する方向に対する直交方向を成分として含み、前記操作体と前記ハウジングの間で押し潰されたときに前記1対の脚部が前記直交方向に平行な方向に広がる姿勢に前記導電性弾性体が保持されたことを特徴とする。
【0011】
このように構成された本発明のプッシュスイッチによれば、ガイド部により規定された操作体の動作方向が、ハウジングの底面に近接する方向に対する直交方向を成分として含むこと、並びに、操作体とハウジングの間で導電性弾性体が押し潰されたときに1対の脚部がその直交方向に平行な方向に広がる姿勢で導電性弾性体が操作体とハウジングの間に保持されていることから、操作体とハウジングの間で導電性弾性体が押し潰されたときの変形量、すなわち、1対の脚部が広がる間隔を、押圧操作時の操作体の動作方向がハウジングの底面に近接する方向のみである場合よりも大きくすることができる。これにより、ハウジングの底面に対する近接および離反方向における操作体の可動範囲を小さくやすい、すなわち、その近接および離反方向における寸法を短縮しやすいプッシュスイッチを提供できる。
【0012】
〔2〕 本発明のプッシュスイッチは、「〔1〕」に記載のプッシュスイッチにおいて、前記1対の脚部のうち、前記導電性弾性体が押し潰される前後での移動量の小さい方が、前記1対の固定接点の一方に常時接触し、前記移動量の大きい方が前記1対の固定接点の他方に対して接触したり離間したりするように、前記1対の固定接点が配置されたことを特徴とするものであってもよい。
【0013】
このように構成された本発明のプッシュスイッチによれば、1対の固定接点のそれぞれに対して1対の脚部のそれぞれが接触したり離間したりするものよりも、1対の固定接点の導通状態と非導通状態の切換えの確実性を向上させることができる。
【0014】
〔3〕 本発明のプッシュスイッチは、「〔1〕」または「〔2〕」に記載のプッシュスイッチにおいて、前記導電性弾性体が、トーションスプリングからなることを特徴とするものであってもよい。
【0015】
このように構成された本発明のプッシュスイッチによれば、操作体を復帰させるための付勢力と、導電性弾性体と固定接点の接触圧とを確保しやすい。
【0016】
〔4〕 本発明のプッシュスイッチは、「〔2〕に記載のプッシュスイッチにおいて、前記ハウジングの底面に離間保持部が設けられており、前記一対の脚部の移動量の大きい方が前記一対の固定接点の他方と離間するとき、前記一対の脚部の移動量の大きい方が前記ハウジングの離間保持部に移動して、前記一対の固定接点の他方との離間が保持されることを特徴とするものであってもよい。
【0017】
このように構成された本発明のプッシュスイッチによれば、導電性弾性体の一対の脚部のうちの移動量の大きい方と一対の固定接点の一方との離間を確実に保持することができる。
【0018】
〔5〕 前述の第2目的を達成するために、前記カードを収容するケースと、このケースに収容されたカードにより操作されることで、前記ケースに前記カードが収容されたことを検知するプッシュスイッチとを備えたカード用コネクタ装置であって、前記プッシュスイッチが、「〔1〕」〜「〔4〕」のいずれか1項に記載のプッシュスイッチからなることを特徴とするものであってもよい。
【0019】
このように構成された本発明のカード用コネクタ装置では、ケースにカードが収容されたとき、そのカードがプッシュスイッチの操作体を押圧操作する。このとき、1対の固定接点が導通状態から非導通状態、または、非導通状態から導通状態に切り換わる。これにより、カード収容部にカードが収容されたことを検知することができる。
【0020】
〔6〕 本発明のカード用コネクタ装置は、「〔5〕」に記載のカード用コネクタ装置において、前記プッシュスイッチの前記ハウジングと前記ケースが一体に形成されたことを特徴とするものであってもよい。
【0021】
このように構成された本発明によれば、プッシュスイッチを備えることに伴うカード用コネクタ装置の部品点数の増加を低減できる。
【0022】
〔7〕 本発明のカード用コネクタ装置は、「〔5〕」または「〔6〕」に記載のカード用コネクタ装置において、前記ケースが、前記カードがその厚さ方向に移動させられて嵌め込まれる凹部が設けられたケース本体と、前記凹部を開閉することができるよう前記ケース本体に回動可能に取付けられた開閉カバーとを備え、前記プッシュスイッチの前記操作体が前記凹部内に突出し、前記操作体が前記ハウジングの底面に近接する方向が、前記凹部に対する前記カードの嵌め込み方向に設定されたことを特徴とするものであってもよい。
【0023】
〔8〕 本発明のカード用コネクタ装置は、「〔5〕」または「〔6〕」に記載のカード用コネクタ装置において、前記ケースが、前記カードがその厚さ方向に直交する方向に移動させられて挿入される空洞を形成し、前記プッシュスイッチの前記操作体が前記空洞内に突出し、前記操作体が前記ハウジングに近接する方向が、前記空洞に対する前記カードの挿入方向に設定されたことを特徴とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のプッシュスイッチによれば、ガイド部により規定された操作体の動作方向が、ハウジングの底面に近接する方向に対する直交方向を成分とすること、並びに、操作体とハウジングの間で導電性弾性体が押し潰されたときに1対の脚部がその直交方向に平行な方向に広がる姿勢で導電性弾性体が操作体とハウジングの間に支持されていることから、ハウジングの底面に対する操作体の近接および離反方向における寸法を短縮しやすいプッシュスイッチを提供できる。
【0025】
本発明のカード用コネクタ装置によれば、ハウジングの底面に対する操作体の近接および離反方向における寸法を短縮しやすいプッシュスイッチを、ケースへのカードの収容を検知する手段として備えているから、ケースへのカードの収容を検知する機能を有するカード用コネクタ装置の小型化や薄型化に貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明のプッシュスイッチおよびカード用コネクタ装置の一実施形態について図1〜図10を用いて説明する。
【0027】
図1は本発明のカード用コネクタ装置の一実施形態の斜視図である。図2は図1に示したカード用コネクタ装置の実施形態の分解斜視図である。図3は本発明のプッシュスイッチの一実施形態を示す部分断面図である。図4は操作体が押圧操作されたときのプッシュスイッチの状態を示す部分断面図である。図5は図2に示した操作体とトーションスプリングの組立体を示す斜視図である。図6は図5に示したトーションスプリングが組み込まれた操作体の側面の裏面を示す斜視図である。図7は図1に示した開閉カバーを開いた状態を示す斜視図である。図8は図7に示したケース本体の凹部にカードが嵌め込まれた状態を示す斜視図である。図9は図8に示した開閉カバーを閉じた状態を示す斜視図である。図10は図9に示した開閉カバーをロックした状態を示す斜視図である。
【0028】
本発明のカード用コネクタ装置の一実施形態は、図1,2に示すカード用コネクタ装置1である。このカード用コネクタ装置1は、カード30(図7参照)を収容するケース2と、このケース2へのカード30の収容を検知する手段としてのプッシュスイッチ40(図7参照)とを備えている。
【0029】
ケース2は、カード30がその厚さ方向に移動させられて嵌め込まれる凹部4が設けられた、平面視形状がほぼ矩形に形成されたケース本体3と、凹部4を開閉することができるようケース本体3に回動可能に取付けられた開閉カバー18とを備えている。
【0030】
カード30の裏面(図8に示す面は表面)には、カード30の幅方向に並列した複数のカード端子(図示しない)が設けられている。ケース本体3の凹部4の寸法および形状は、カード30の寸法および形状とほぼ同じに設定されている(図8参照)。凹部4の底面5には、複数のカード端子に対応する複数のコンタクト端子7が設けられている。
【0031】
ケース本体3の幅方向における一方の側壁8Aには、長溝9が設けられている。この長溝9は、ケース本体3の長手方向における側壁8Aの一方の端部に位置していて、ケース本体3の幅方向においてケース本体3の外部から内部に向かう方向に凹み、ケース本体3の長手方向に延びている。他方の側壁8Bにも、長溝9と同様の長溝(図示しない)が設けられている。つまり、ケース本体3には、1対の長溝が設けられている。
【0032】
一方の側壁8Aには、ケース本体3の幅方向においてケース本体3の外部から内部に向かう方向に切欠かれた切欠き11A,12A,13Aと、これらの切欠き11A,12A,13Aと連続し、ケース本体3の長手方向に延びた切欠き14Aとが設けられている。他方の側壁8Bにも切欠き11B,12B,13B,14Bが設けられている。
【0033】
開閉カバー18は、ケース本体3に重なって配置されるほぼ矩形の平板部19と、この平板部19の幅方向の両側縁に設けられ、ケース本体3の両側壁8A,8Bのそれぞれの外側面に沿って配置されるリブ21A,21Bを有する。
【0034】
ケース本体3の一方の側壁8Aに対向して配置される平板部19の部分には、側壁8Aに向かって傾斜する片持ちバネ20Aが設けられている。ケース本体3の他方の側壁8Bに対向して配置される平板部19の部分にも、側壁8Bに向かって傾斜する片持ちバネ20Bが設けられている。
【0035】
リブ21Aには、ケース本体3の側壁8Aに設けられた長溝9に挿入される回動軸22Aが設けられている。リブ21Bにも、図示しない長溝に挿入される回動軸22Bが設けられている。
【0036】
リブ21Aには、リブ21Bの方向に突出した舌状部23A,24A,25Aが設けられている。これら舌状部23A,24A,25Aはこの順番で回動軸22A側から並んでいる。舌状部23A,25Aは平板部19と平行な方向に広がっていて、舌状部24Aは平板部19に直交する方向に広がっている。リブ21Bにも舌状部23B,24B,25Cが設けられている。
【0037】
図2,3に示すように、プッシュスイッチ40は、ケース本体3の側部、例えば側壁8Bと一体に形成されたハウジング41と、このハウジング41の底面42に対して近接および離反可能に支持され押圧操作される操作体46と、ハウジング41に設けられた1対の固定接点50A,50Bと、末広がりの1対の脚部を有し、この1対の脚部がハウジング41の底面42に向かって延びた姿勢で操作体46とケース本体3の間に保持された導電性弾性体、例えばトーションスプリング51とを備えている。ハウジング41の底面42は、ケース本体3の凹部4の底面5が広がる方向と平行な方向に広がっている。
【0038】
図5に示すように、操作体46にはハウジング41の底面42と平行な方向に突起した突起部47が設けられていて、この突起部47にはトーションスプリング51のコイル部52が挿入されている。トーションスプリング51の1対の脚部53A,53Bのそれぞれは、ハウジング41の底面42に当接している。
【0039】
ハウジング41には、操作体46の動作方向を規定するガイド部、例えばハウジング41の底面42に対して傾斜した傾斜面43A,43Bが設けられている。これらの傾斜面43A,43Bは互いに平行であり、ハウジング41の底面42に対して例えば45°傾いている。操作体26には傾斜面49A,49Bが設けられていて、これらの傾斜面49A,49Bはそれぞれ傾斜面43A,43Bに対向している。傾斜面43A,43Bにより規定された操作体46の動作方向は、ハウジング41の底面42に近接する方向(矢印A方向←矢印Aが図に無いようです。)と、この方向に対する直交方向(矢印B方向←矢印Bが図に無いようです。)とを成分としている。
【0040】
図3,4を比較して分かるように、トーションスプリング51の姿勢は、操作体46がハウジング41の底面42に近接する方向(矢印A方向)に押圧操作されたことにより操作体46とハウジング41の底面42の間でトーションスプリング51が押し潰されたときに1対の脚部53A,53Bが前記直交方向(矢印B方向)に平行な方向に広がる姿勢に保持されている。
【0041】
1対の固定接点50A,50Bの配置は、操作体46がハウジング41の底面42に近接する方向(矢印A方向)に押圧操作されたことによりトーションスプリング51が操作体46とハウジング41の底面42の間で押し潰されて1対の脚部53A,53Bが広がったときに、一方の脚部53Aが一方の固定接点50Aに接触し、かつ、他方の脚部53Bが他方の固定接点50Bから離間した非導通状態(図4に示す状態)となり、トーションスプリング51が復元したときに、1対の固定接点50A,50Bのそれぞれに1対の脚部53A,53Bのそれぞれが同時に接触した導通状態(図3に示す状態)となるように、設定されている。ハウジング41の底面42から連続して傾斜面を含んで形成される離間保持部42aが設けられている。非導通状態(図4に示す状態)に移行するとき、他方の脚部53Bが他方の固定接点部50Bに接触した状態から離間保持部42aに移動して、他方の固定接点部50Bから離間するものになっている。つまり、他方の脚部53Bが離間保持部42aに移動することで他方の脚部53Bが他方の固定接点50Bから離間した状態を確実に保持できるようになっている。さらに、1対の脚部53A,53Bのうち、トーションスプリング51が押し潰される前後での移動量の小さい方、すなわち脚部53Aが、一方の固定接点50Aに常時接触し、前記移動量が大きい方である脚部53Bが他方の固定接点50Bに対して接触したり離間したりするように、設定されている。
【0042】
ケース本体3の凹部4側に位置するハウジング41の側壁44には開口部45が設けられている。操作体46には、開口部45から凹部4内に突出する操作部48が設けられている。ハウジング41の底面42は凹部4の底面5よりも深い位置にある。開口部45に面した凹部4の底面5の縁部には、切欠き6が設けられていて、操作体46がハウジング41の底面42に近接するときの、操作部48の移動が許容されるようになっている。
【0043】
このように構成されたカード用コネクタ装置1のケース2に対して、次の「(1)」〜「(5)」の手順でカード30を収容する。
【0044】
(1) 1対の長溝9等のそれぞれの一端側の内壁面10等(図2,10等参照)のそれぞれを、1対の回動軸22A,22Bのそれぞれの軸受として、開閉カバー18を1対の回動軸22A,22B周りに回動させ、図7に示すように開く。
【0045】
(2) 図8に示すようにケース本体3の凹部4にカード30を嵌め込む。
【0046】
(3) 1対の長溝9等のそれぞれの一端側の内壁面10等のそれぞれを、1対の回動軸22A,22Bのそれぞれの軸受として、開閉カバー18を1対の回動軸22A,22B周りに回動させ、図9に示すように閉じる。これに伴い、舌状部23A,25Aが切欠き部11A,13Aを通過して切欠き14A内に配置され、舌状部24Aが切欠き12A内に配置される。同様に、舌状部23B,25Bが切欠き11B,13Bを通過して切欠き14B内に配置され、舌状部24Bが切欠き14B内に配置される。
【0047】
(4) 開閉カバー18を片持ちバネ20A,20Bの弾性力に抗してケース本体3に押し付けながら、1対の回動軸22A,22Bのそれぞれが1対の長溝9等の内壁面10等のそれぞれから離れる方向に、舌状部24A,24Bのそれぞれが、切欠き部12A,13A間の突起部16Aおよび切欠き部12B,13B間の突起部16Aのそれぞれに当接するまでスライドさせる。
【0048】
(5) 開閉カバー18をケース本体3に押し付けるのをやめる。これに伴い、開閉カバー18が片持ちバネ20A,20Bから開く方向の押圧力を受けて、舌状部23Aが切欠き11A,12A間の突起部15Aに引っ掛かり、舌状部25Aが側壁8Aの他端部の突起部17Aに引っ掛かる。同様に舌状部23Bが突起部15Bに引っ掛かり、舌状部25Bが突起部17Bに引っ掛かる。これらの結果、図10に示すように開閉カバー18が閉じた状態でロックされ、カード30の複数のカード端子のそれぞれが複数のコンタクト端子7のそれぞれに接触した状態に保持される。
【0049】
このようにカード30がケース2に収容された状態では、操作体46は、操作部48がカード30で押圧されることによって操作された状態であり、図4に示すようにハウジング41の底面42に近接している。つまり、操作体46とハウジング41の底面42との間でトーションスプリング51が押し潰されて1対の脚部53A,53Bが広がり、脚部53Bが固定接点50Bから離間した状態、すなわち非導通状態となっている。
【0050】
そして、前述の「(1)」〜「(5)」の逆の手順でカード30を取り除くと、操作部48に対する押圧力が取り除かれる。このとき、トーションスプリング51は操作体46の突起部47を押圧することで操作体46を押し戻しながら復元する。トーションスプリング51の復元が完了した状態では、図3に示すように、1対の脚部53A,53Bのそれぞれが1対の固定接点50A,50Bのそれぞれに接触した状態、すなわち1対の固定接点50A,50Bが導通状態となる。
【0051】
プッシュスイッチ40によれば次の効果を得られる。
【0052】
プッシュスイッチ40によれば、ハウジング41に設けられた傾斜面43A,43Bにより規定された操作体の動作方向が、ハウジング41の底面42に近接する方向(矢印A方向)に直交方向(矢印B方向)を成分として含むこと、並びに、操作体46とハウジング41の底面42の間でトーションスプリング51が押し潰されたときに1対の脚部53A,53Bがその直交方向(矢印B方向)に平行な方向に広がる姿勢でトーションスプリング51が操作体46とハウジング41の間に保持されていることから、操作体46とハウジング41の底面42の間でトーションスプリング51が押し潰されたときの変形量、すなわち、1対の脚部53A,53Bが広がる間隔を、押圧操作時の操作体46の動作方向がハウジング41の底面42に近接する方向のみである場合よりも大きくすることができる。これにより、ハウジング41の底面42に対する近接および離反方向における操作体46の可動範囲を小さくやすい、すなわち、その近接および離反方向における寸法を短縮しやすいプッシュスイッチを提供できる。
【0053】
プッシュスイッチ40によれば、1対の固定接点50A,50Bの導通状態と非導通状態とが脚部53Bの動作のみで切り換えられること、かつ、脚部53Bはトーションスプリング51が押し潰される前後での移動量の大きい方であることから、1対の固定接点50A,50Bのそれぞれに対して1対の脚部53A,53Bのそれぞれが接触および離間するようになっているものよりも、1対の固定接点50A,50Bの導通状態と非導通状態の切換えの確実性を向上させることができる。
【0054】
プッシュスイッチ40によれば、導電性弾性体がトーションスプリング51からなるので、操作体46を復帰させるための付勢力と、導電性弾性体と1対の固定接点50A,50Bの接触圧とを確保しやすい。なお、前記付勢力や前記接触圧が十分に確保できるのであれば、トーションスプリング51ではなく、金属板等を屈曲させて形成したものでもよい。
【0055】
プッシュスイッチ40によれば、ハウジング41の底面42に離間保持部42aが設けられており、一対の脚部53A,53Bのうちの移動量の大きい方(脚部53B)が一対の固定接点50A,50Bの他方(固定接点50B)と離間するとき、脚部53Bがハウジング41の底面42の離間保持部42aに移動することによって他方の固定接点50Bと離間するから、移動量の大きい方の脚部53Bと他方の固定接点50Bとの離間を確実に保持することができる。
【0056】
カード用コネクタ装置1によれば次の効果を得られる。
【0057】
カード用コネクタ装置1によれば、ハウジング41の底面42に対する操作体46の近接および離反方向における寸法を短縮しやすいプッシュスイッチ40を、ケース2へのカード30の収容を検知する手段として備えているから、ケース2へのカード30の収容を検知する機能を有するカード用コネクタ装置の小型化や薄型化に貢献できる。
【0058】
カード用コネクタ装置1によれば、プッシュスイッチ40のハウジング41とケース本体3が一体に形成されているから、プッシュスイッチ40を備えることに伴うカード用コネクタ装置の部品点数の増加を低減できる。
【0059】
前述のプッシュスイッチ40では、操作体46が押圧操作されたことによりトーションスプリング51が操作体46とハウジング41の底面42の間で押し潰されて1対の脚部53A,53Bが広がったときに、一方の脚部53Aが一方の固定接点50Aに接触し、かつ、他方の脚部53Bが他方の固定接点50Bから離間した非導通状態となり、トーションスプリング51が復元したときに、1対の固定接点50A,50Bのそれぞれに1対の脚部53A,53Bのそれぞれが同時に接触した導通状態となるように1対の固定接点50A,50Bが配置されているが、本発明における1対の固定接点50A,50Bの配置はこれに限定されるものではない。
【0060】
この他の1対の固定接点50A,50Bの配置としては、操作体46が押圧操作されたことによりトーションスプリング51が操作体46とハウジング41の間で押し潰されて1対の脚部53A,53Bが広がったときに、1対の固定接点50A,50Bのそれぞれに1対の脚部53A,53Bのそれぞれが同時に接触した導通状態となり、トーションスプリング51が復元したときに、一方の脚部53Aが一方の固定接点50Aに接触し、かつ、他方の脚部53Bが他方の固定接点50Bから離間した非導通状態となる配置であってもよい。また、1対の脚部53A,53Bのそれぞれが1対の固定接点のそれぞれから離間した非導通状態が形成されるように、1対の固定接点50A,50Bが配置されていてもよい。
【0061】
前述のカード用コネクタ装置1では、ケース2が、カード30がその厚さ方向に移動させられて嵌め込まれる凹部4が設けられたケース本体3と、凹部4を開閉することができるようケース本体3に回動可能に取付けられた開閉カバー18とを備え、プッシュスイッチ40の操作体46が凹部4内に突出し、操作体46がハウジング41の底面42に近接する方向が、凹部4に対するカード30の嵌め込み方向に設定されたものであるが、本発明におけるカード用コネクタ装置はそれに限定されるものではない。ケースが、カードがその厚さ方向に直交する方向に移動させられて挿入される空洞を形成し、プッシュスイッチの操作体が前記空洞内に突出し、操作体がハウジングの底面に近接する方向が、前記空洞に対するカードの挿入方向に設定されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明のカード用コネクタ装置の一実施形態の斜視図である。
【図2】図1に示したカード用コネクタ装置の実施形態の分解斜視図である。
【図3】本発明のプッシュスイッチの一実施形態を示す部分断面図である。
【図4】操作体が押圧操作されたときのプッシュスイッチの状態を示す部分断面図である。
【図5】図2に示した操作体とトーションスプリングの組立体を示す斜視図である。
【図6】図5に示したトーションスプリングが組み込まれた操作体の側面の裏面を示す斜視図である。
【図7】図1に示した開閉カバーを開いた状態を示す斜視図である。
【図8】図7に示したケース本体の凹部にカードが嵌め込まれた状態を示す斜視図である。
【図9】図8に示した開閉カバーを閉じた状態を示す斜視図である。
【図10】図9に示した開閉カバーをロックした状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0063】
1 カード用コネクタ装置
2 ケース
3 ケース本体
4 凹部
5 底面
6 切欠き
7 コンタクト端子
8A,8B 側壁
9 長溝
10 内壁面
11A,11B 切欠き
12A,12B 切欠き
13A,13B 切欠き
14A,14B 切欠き
15A,15B 突起部
16A,16B 突起部
17A,17B 突起部
18 開閉カバー
19 平板部
20A,20B 片持ちバネ
21A,21B リブ
22A,22B 回動軸
23A,23B 舌状部
24A,24B 舌状部
25A,25B 舌状部
30 カード
40 プッシュスイッチ
41 ハウジング
42 底面
43A,43B 傾斜面(ガイド部)
44 側壁
45 開口部
46 操作体
47 突起部
48 操作部
49A,49B 傾斜面
50A,50B 固定接点
51 トーションスプリング(導電性弾性体)
52 コイル部
53A,53B 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、このハウジングの底面に近接および離反する方向に動作可能に支持され押圧操作される操作体と、前記ハウジングに設けられた1対の固定接点と、末広がりの1対の脚部を有し、この1対の脚部が前記ハウジングの底面に向かって延びた姿勢で前記操作体と前記ハウジングの底面の間に保持された導電性弾性体とを備え、
前記操作体が前記ハウジングの底面に近接する方向に押圧操作されたことにより前記導電性弾性体が前記操作体と前記ハウジングの間で押し潰されて前記1対の脚部が広がったときと、前記導電性弾性体が復元したときとで、前記1対の固定接点のそれぞれに前記1対の脚部のそれぞれが同時に接触した導通状態と、少なくとも前記1対の脚部の一方が前記固定接点の一方から離間した非導通状態とが切換わる位置に、前記1対の固定接点が配置されたプッシュスイッチであって、
前記ハウジングには、押圧操作時の前記操作体の動作方向を規定するガイド部が設けられ、このガイド部により規定された前記操作体の動作方向が、前記ハウジングの底面に近接する方向に対する直交方向を成分として含み、
前記操作体と前記ハウジングの間で押し潰されたときに前記1対の脚部が前記直交方向に平行な方向に広がる姿勢に前記導電性弾性体が保持されたことを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
請求項1に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記1対の脚部のうち、前記導電性弾性体が押し潰される前後での移動量の小さい方が、前記1対の固定接点の一方に常時接触し、前記移動量の大きい方が前記1対の固定接点の他方に対して接触したり離間したりするように、前記1対の固定接点が配置されたことを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプッシュスイッチにおいて、
前記導電性弾性体が、トーションスプリングからなることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項4】
請求項2記載のプッシュスイッチにおいて、
前記ハウジングの底面に離間保持部が設けられており、
前記一対の脚部の移動量の大きい方が前記一対の固定接点の他方と離間するとき、前記一対の脚部の移動量の大きい方が前記ハウジングの離間保持部に移動して、前記一対の固定接点の他方との離間が保持されることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項5】
前記カードを収容するケースと、このケースに収容されたカードにより操作されることで、前記ケースに前記カードが収容されたことを検知するプッシュスイッチとを備えたカード用コネクタ装置であって、
前記プッシュスイッチが、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプッシュスイッチからなることを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項6】
請求項5に記載のカード用コネクタ装置において、
前記プッシュスイッチの前記ハウジングと前記ケースが一体に形成されたことを特徴とするカード用コネクタ装置用装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載のカード用コネクタ装置において、
前記ケースが、前記カードがその厚さ方向に移動させられて嵌め込まれる凹部が設けられたケース本体と、前記凹部を開閉することができるよう前記ケース本体に回動可能に取付けられた開閉カバーとを備え、
前記プッシュスイッチの前記操作体が前記凹部内に突出し、前記操作体が前記ハウジングの底面に近接する方向が、前記凹部に対する前記カードの嵌め込み方向に設定されたことを特徴とするカード用コネクタ装置。
【請求項8】
請求項4または請求項6に記載のカード用コネクタ装置において、
前記ケースが、前記カードがその厚さ方向に直交する方向に移動させられて挿入される空洞を形成し、
前記プッシュスイッチの前記操作体が前記空洞内に突出し、前記操作体が前記ハウジングに近接する方向が、前記空洞に対する前記カードの挿入方向に設定されたことを特徴とするカード用コネクタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2008−210689(P2008−210689A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−47281(P2007−47281)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】