説明

プラスチック組成物を押し出しするプロセス

本発明は、プラスチック組成物、特に高分子溶融物および高分子溶融物の混合物、とりわけ熱可塑性プラスチックおよびエラストマ、特に好ましくは他の物質、例えば固体、液体、気体或いは他の高分子または改善された光学特性を備える高分子混合物を含んでもよいポリカーボネートおよびポリカーボネート混合物を、特定のスクリュ形状を備える多軸スクリュエクストルーダの助けによって押し出しするプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック組成物、特に高分子溶融物および高分子溶融物の混合物、とりわけ熱可塑性プラスチックおよびエラストマ、特に好ましくは他の物質、例えば固体、液体、気体或いは他の高分子または改善された光学特性を備える高分子混合物を含んでもよいポリカーボネートおよびポロカーボネート混合物を、特定のスクリュ形状を備える多軸スクリュエクストルーダの助けによって押し出しするプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
押し出し(エクストルージョン)は、高分子の製造、合成および処理において公知のプロセスである。押し出しは、これ以降、非特許文献1に総合的に記載されているように、物質または物質の混合物の共回転する2軸または多軸エクストルーダにおける処理の意味に用いられる。
【0003】
スクリュエクストルーダは、これ以降、常にリングエクストルーダを意味する。
【0004】
押し出しの間のプラスチック組成物の処理は、1以上の操作:搬送、溶融、分散混合、液体成分の排出、脱気および圧力形成を含む。
【0005】
高分子製造において、押し出しは、例えば、単量体および残留溶剤のような揮発性成分を高分子から除去し(非特許文献1、192から212頁)、重付加および重縮合反応を行い、選択的に高分子の溶融および変換並びに選択的に高分子に添加物を混合する機能を果たす。
【0006】
高分子の合成の間、押し出しは、添加剤、助剤、補強材および色素を含む上述の全ての高分子の混合物の製造、および、例えば化学組成、分子量または分子構造が異なる別の高分子の混合物を製造するのに使用される(非特許文献1、59から93頁参照)。合成は、従来は溶融され、充填剤および/または補強材、可塑剤、結合剤、スリップ剤、安定剤、色素等を高分子に添加、取り込みおよび混合するプラスチック原料を使用して、最終プラスチックモールド成形組成物(または化合物)に変換することを含む。合成は、しばしば、例えば空気や水のような揮発成分の除去を含む。合成は、また、例えば意図的に分子量を増加または減少させることによる重合、官能基の改変または分子量の改変のような化学反応を含んでもよい。
【0007】
公知であり、例えば非特許文献1の169から190頁に記載されているように、混合は、分配混合と分散混合とに区別してもよい。分配混合は、所定量の様々な要素の均一な分配の意味に使用される。分配混合は、例えば、類似する高分子を混合したときに生じる。分散混合において、固形粒子、液滴または気泡が最初に細分される。細分化は、例えば、高分子と添加物との境界面の表面張力を乗り越えるために、十分に大きな剪断力を加えることをともなう。混合は、以下では常に、分配混合および分散混合を意味するものとする。
【0008】
溶融物搬送および圧力形成は、非特許文献1の73頁以降に記載されている。溶融物搬送領域は、製品を1つの処理領域から次の処理領域に搬送し、そして、充填剤を吸い込む役目を果たす。溶融物搬送領域は、通常、例えば、部分的に1つの処理領域から次の処理領域への製品の搬送の間、脱気の間、および、保持領域中のように、部分的に充填される。
【0009】
高分子処理中に、高分子は、好ましくは、準最終製品、使用可能な製品または部品の形態に変換される。処理は、例えば、射出成型、押し出し成型、ブロー成型、カレンダ加工またはスピニング加工によってもよい。処理は、また、高分子の充填剤および外部物質および添加物との混合、および、例えば加硫のような化学的改質を含んでもよい。
【0010】
当業者は、高分子押し出しは、2本または選択的にそれより多いスクリュを備えるエクストルーダにおいて有利にも行われることに気付く。
【0011】
そのロータが完全に自己払拭する共回転2軸または多軸スクリュエクストルーダは、古くから知られている(例えば、DE862668参照)。自己払拭形状の原則に基づくエクストルーダは、高分子製造および高分子処理において、多くの異なった使用がなされている。そのようなエクストルーダは、良好な混合作用、良好な脱気作用および良好な高分子溶融作用を有する。それらは、それにより製造された製品の品質に有利である。なぜなら、高分子溶融物が表面に付着し、従来の処理温度では時間とともに劣化することが、完全な自己払拭スクリュの自己清掃作用によって防止されるからである。完全自己払拭スクリュの形状を製造するための規範は、非特許文献1の第96−109頁に与えられている。そこには、単行路、2行路および3行路の形状の構成が予め定めた2軸スクリュエクストルーダの第1のスクリュのスクリュ形状が、2軸スクリュエクストルーダの第2のスクリュのスクリュ形状をどのように定めるかがさらに記載されている。2軸スクリュエクストルーダの第2のスクリュのスクリュ形状は、2軸スクリュエクストルーダの第1のスクリュのスクリュ形状(形成スクリュ形状)に従い、このため、形成されたスクリュ形状(被形成スクリュ形状)であると知られている。多軸スクリュエクストルーダの場合、隣接するスクリュは、常に形成スクリュ形状と被形成スクリュ形状とが交互に配置される。
【0012】
スクリュの頂部において、特に大量のエネルギーが溶融物中に放散し、それが製品を局所的に過熱させることが、当業者には知られている。これは、例えば、非特許文献1の160頁以降に説明されている。この局所的な過熱は、匂い、色、化学組成または分子量の変化、或いは、ゲル状プラスチックまたは小片状のような製品の不均一性の形成等、製品に危害をもたらす。大きな頂角は、これについて特に有害である。
【0013】
当業者は、高分子の損傷が起こる反応速度は温度に依存することに気付く。当業者が知っており、例えば、ロバートソン(J. Robertson)、「ポリカーボネートの熱劣化の研究(Thermal Degradation Studies of Polycarbonate)」、バージニア高分子技術協会(Virginia Polytechnic Institute)およびバージニア州立大学ブラックスバーグ校、2001、第3章、および、ヒリサフィス(K. Chrissafis)、「高分子の熱劣化の力学(Kinetics of Thermal Degradation of Polymers)」、熱分析および熱量測定ジャーナル(Journal of Thermal Analysis and Calorimetry)、95巻(2009)1、273−283頁において確認されるように、反応速度定数K(T)は、アレニウスの手法:k(T)=A*exp(−E/(R*T))により表される。この方程式において、kは反応速度定数、Tは絶対温度[K]、Aは頻度係数、Eは反応エネルギー[J/mol]、および、Rは一般気体定数[J/mol/K]である。さらに、たった10Kの温度上昇が反応速度定数を倍にすることが知られている。そのため、プラスチック組成物の押し出しプロセスは、プラスチック組成物の処理および加工の間の平均温度上昇が可能な限り低いように設計されなければならない。特に、プラスチック組成物の押し出しプロセスは、プラスチック組成物の処理および加工の間に、従来のエルドメンガースクリュ形状のスクリュエレメントの頂部領域において生じるような、局所的温度ピークが防止されるように設計されなければならない。
【0014】
昨今の2軸スクリュエクストルーダは、コアシャフトに様々なスクリュエレメントを配設したブロック構成システムを有する。このようにして、当業者は、2軸スクリュエクストルーダを手持ちの特定の目的に適応させてもよい。一般に、単行路スクリュ形状がそれらの大きい頂角のために過剰に高いエネルギー入力を有するので、2行路および3行路のスクリュエレメントが今日使用される。
【0015】
偏芯して配置された円形ディスクを除いて、従来技術から公知のスクリュエレメントは、形状曲線がその断面において、スクリュ頂部と条側腹との間の移行部において生じる少なくとも1つの角を含むことを特徴とする(例えば図1参照)。頂部は、半径=形状の外側直径と、中心点である形状の回転の点とを有する円弧からなる。角は、側腹の形状への移行部におけるスクリュエレメントのエッジを形成する。
【0016】
多軸スクリュエクストルーダにおいて実行される本質的目的の1つは、他者の中に均一の混和できない液相または溶融物の分散、または固体の高分子溶融物への分散である。技術文献(ハン(Chang Dae Han)、「高分子処理における多相流(Multiphase Flow in Polymer Processing)」、アカデミックプレス、ニューヨーク、1981参照)から、困難な分散の目的では、剪断流と延伸流との組み合わせが理想的であることが知られている。
【0017】
そのような流れは、スクリュの流路において優勢であり、そこでは、一方でスクリュの回転により組成物が剪断され、同時に他方でスクリュの流路が頂部に向かって収束することにより組成物が延伸される。しかしながら、スクリュ頂部の領域では、困難な分散の目的においては分散に全く寄与しない純粋な剪断流が優勢である。他方では、入力エネルギーの大部分は、スクリュ頂部とバレルまたは隣接するスクリュとの間の隙間で放散される。このため、この領域は、高分子組成物の加熱に大きく寄与し、それにより、分散目的に寄与することなく熱的ダメージを与え得る。
【0018】
偏芯して配置された円形ディスクは、公知のように、完全に自己払拭するように配置されてもよい。それらは、純粋な剪断流を有する頂部に含まれない。それらは、それらの優れた分散作用を有するが、それらが大きな周囲の領域に亘って非常に狭い隙間を形成するために、大きなエネルギー入力を有すると知られている。さらに、それらの行路数はZ=1に限定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】独国特許発明第862668号明細書
【特許文献2】欧州特許発明第1740638号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】コールグルーバー(Kohlgruber)、「共回転2軸エクストルーダ(Der gleichlaufige Doppelschneckenextruder)」、ハンサー出版、ミュンヘン、2007年
【非特許文献2】ヘッパール(Hepperle, J.)、「高分子の損傷メカニズム(Schadigungsmechanismen bei Polymeren )」、「高分子コンピューティング(Polymeraufbereitung)」、VDI−K、VDI−フェルラーク社(VDI-K, VDI-Verlag GmbH)、2002年
【非特許文献3】ツヴァイフェル(Zweifel, H.)、「高分子材料の安定化(Stabilization of Polymeric Materials)」、シュプリンガー社、ベルリン、1997年
【非特許文献4】シュヴァルツェンバッハ(Schwarzenbach, K.)ら、「抗酸化物質(Antioxidants)」、ツヴァイフェル(Zweifel, H.)編、「プラスチック添加物ハンドブック(Plastics Additives Handbook)」、ハンサー出版、ミュンヘン、2001年
【非特許文献5】チェン(Cheng, H.N.)・シリング(Schilling, F.C.)・ボベイ(Bovey, F.A.)、「ポリエチレン酸化の13C核磁気共鳴観察(13C Nuclear Magnetic Resonance Observation of the Oxidation of Polyethylene)」、「高分子(Macromolecules)9」、1976年、p.363−365
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
このため、課題は、高分子のダメージを避けるために平均および最大温度上昇が低減されたプラスチック組成物の押し出しプロセスを提供することとなった。
【課題を解決するための手段】
【0022】
課題は、驚くべきことに、特定の幾何学形状を有するスクリュエレメントを使用し、密に咬合して共回転する合成または脱気するエクストルーダを使用して達成された。これらは、その形状が全断面に亘って常に微分できる特性曲線により表されるクリュエレメントを含む。多軸スクリュエクストルーダにこれらのスクリュエレメントを使用することで、従来技術と比較して、最低のあり得るエネルギー入力を達成でき、小さい温度上昇をもたらし、それにより平均および最大温度が低い。同時に、従来技術と同程度またはそれより高い非常に良好な圧力形成が達成される。
【0023】
本発明にしたがって使用される搬送エレメントの圧力形成能力は、従来技術によるエルドメンガースクリュ形状を備える搬送エレメントのものよりも大きいことが分かった。本発明にしたがって使用される搬送エレメントにより、例えば短い圧力形成領域において、所望のまたは必要な圧力形成を引き起こすことが可能であり、それによりエクストルーダの構造も短くなるか、一定のエクストルーダ長さにおいて脱気領域または混合領域等の他の処理領域が長くなり、それらのプラスチック組成物への作用が促進される。
【0024】
したがって、本発明は、プラスチック組成物、特に高分子溶融物および高分子溶融物の混合物、とりわけ熱可塑性プラスチックおよびエラストマ、特に好ましくはポリカーボネートおよびポリカーボネート混合物、および、固体、液体、気体または高分子または他の高分子混合物のような他の物質を含むそれらを、対になって共回転し、対になって完全に自己払拭し、2以上のスクリュ行路を有するスクリュを備える多軸エクストルーダ用のスクリュエレメントを用い、共回転して密に咬合し、合成または脱気をするエクストルーダを使用して合成するプロセスであって、形成スクリュ形状および被形成スクリュ形状が、断面全体に亘って常に微分可能な形状曲線により表されることを特徴とするプロセスを提供する。
【0025】
本発明は、ここでは、スクリュエレメントをスクリュエレメントとコアシャフトとを備えるスクリュ構成の従来のモジュール構造に限定せず、一体構造のスクリュも含む。このため、「スクリュエレメント」という用語は、一体構造のスクリュをも意味する。
【0026】
断面形状は、これ以降、略して形状またはスクリュ形状と呼ばれ、本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントは、円弧の配置によって曖昧でなく記載されてもよい。
【0027】
本発明にしたがって使用される形成スクリュエレメントおよび被形成スクリュエレメントの形状は、全体がn本の円弧からなり、nは4以上である。前記n本の円弧はそれぞれ、始点と終点とを有する。前記n本の円弧は、本発明によれば、それらの始点および終点において、それらが常に微分できる形状曲線を形成するように互いに接続される。
【0028】
各円弧の位置j(j=1からn)は、2つの異なる点を示すことによって曖昧でなく定義されてもよい。前記円弧の位置は、中心点と始点および終点とを示すことにより都合よく定義できる。個々の前記円弧jの大きさは、半径rおよび中心点周りの始点と終点との間の可角度αによって定義され、半径rは0より大きくスクリュの間の中心線距離より小さく、角度αは0以上で2πより小さいラジアンであり、πは円周率である。
【0029】
本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントは、
形成スクリュ形状および被形成スクリュ形状が1つの平面内に位置し、
前記形成スクリュ形状の回転軸、および、距離a(中心線距離)にある前記被形成スクリュ形状の回転軸は、それぞれ前記スクリュ形状の平面に垂直であり、前記形成スクリュ形状の回転軸と前記平面との交点は、前記形成スクリュ形状の回転点として設計され、前記被形成スクリュ形状の回転軸と前記平面との交点は、前記被形成スクリュ形状の回転点として設計され、
前記形成スクリュ形状全体の円弧の数nは、4以上であり(n>4)、
前記形成スクリュ形状の外側半径raは、0より大きく(ra>0)、前記中心線距離より小さく(ra<a)、
前記形成スクリュ形状のコア半径は、0より大きく(ri>0)、前記外側半径ra以下であり(ri≦ra)、
前記形成スクリュ形状の前記円弧は、互いに接線方向に接続され、
前記円弧は、閉じたスクリュ形状、即ち、全ての前記円弧jの角度αの合計が2πに等しく、πは円周率(π≒3.14459)であり、
前記円弧は、凸型のスクリュ形状を形成し、
前記形成スクリュ形状のそれぞれの前記円弧は、前記外側半径raとコアh半径riとを有する円環の中または範囲内に位置し、その中心点が前記形成スクリュ形状の回転点上に位置し、
前記形成スクリュ形状の前記円弧の少なくとも1つは、点Pにおいて前記形成スクリュ形状の前記外側半径raに当接し、
前記形成スクリュ形状の前記円弧の少なくとも1つは、点Pにおいて前記形成スクリュ形状の前記外側半径raに当接し、
前記被形成スクリュ形状の前記円弧の数n’は、前記形成スクリュ形状の前記円弧の数nに等しく、
前記被形成スクリュ形状の外側半径ra’は、前記中心線距離から前記形成スクリュ形状の前記コア半径を引いた差に等しく(ra’=a−ri)、
前記被形成スクリュ形状のコア半径ri’は、前記中心線距離から前記形成スクリュ形状の前記外側半径を引いた差に等しく(ri’=a−ra)、
前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の角度α’は、前記形成スクリュ形状のj番目の前記円弧の角度αに等しく、前記jおよび前記j’は、それぞれ1から前記円弧の数nまたはn’までの全ての値を取る整数であり、
前記被形成スクリュ形状のj’番目の半径r’と前記形成スクリュ形状のj番目の半径rとの合計は、中心線距離aに等しく、前記jおよび前記j’は、それぞれ1から前記円弧の数nまたはn’までの全ての値を取る整数であり、
前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の中心点は、中心線距離aに等しい前記形成スクリュ形状のj番目の前記円弧の中心点からの距離にあり、前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の中心点は、前記形成スクリュ形状の回転点から前記形成スクリュ形状のj番目の前記円弧の中心点までの距離に等しい、前記被形成スクリュの回転点からの距離にあり、前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の中心点と前記形成スクリュのj番目の前記円弧の中心点との間の接続線は、前記被形成スクリュの回転点と前記形成スクリュの回転点との間の接続線と平行な線であり、前記jおよび前記j’は、それぞれ1から前記円弧の数nまたはn’までの全ての値を取る整数であり、
前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の始点は、前記形成スクリュ形状のj番目の前記円弧の始点が前記形成スクリュのj番目の前記円弧の中心点に対して有する方向と反対向きの、前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の中心点に対する方向に位置し、前記jおよび前記j’は、それぞれ1から前記円弧の数nまたはn’までの全ての値を取る整数である、ことを特徴とする。
【0030】
本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントの形状は、それらが直角定規とコンパスを使用するだけで設計されてもよいことを特徴とする。このために、形成スクリュ形状のj番目の前記円弧と(j+1)番目の前記円弧との間の接線方向の移行は、半径rj+1の円をj番目の前記円弧の終点の周りに描き、この円と中心点およびJ番目の前記円弧の終点により定められる直線との形成スクリュ形状の回転点の近傍に位置する交点が、(j+1)番目の前記円弧の中心点である。実際には、直角定規とコンパスに代えて、コンピュータソフトウェアが使用され、スクリュ形状が設計される。
【0031】
2軸スクリュエクストルーダの第1のスクリュの予め定めたスクリュ形状(「形成」形状)は、曖昧でなく、隣接する第2のスクリュのスクリュ形状(「被形成」形状)を確定する。このため、2軸スクリュエクストルーダの第1のスクリュのスクリュ形状は、形成スクリュ形状と呼ばれ、隣接する第2のスクリュのスクリュ形状は、被形成スクリュ形状と呼ばれる。多軸スクリュエクストルーダの場合は、隣接するスクリュは、常に、形成スクリュ形状と被形成スクリュ形状とが交互に配置される。
【0032】
本発明に係るプロセスに使用されるスクリュエレメントは、非対称でも対称でもよいが、本発明にしたがって使用さえるスクリュエレメントは、好ましくは対称である。対称なスクリュエレメントは、線対称または点対称であり、本発明したがって使用されるスクリュエレメントは好ましくは線対称である。
【0033】
行路数Zの線対称なスクリュ形状は、2Zの対称な部分に分割してもよく、その部分は、対称軸において鏡写しにすることにより互いに対称な部分に変換できる。対称性により、行路数Zの線対称なスクリュエレメントの形状は、形状の対称性の2つの軸の間に位置する360°/(2*Z)の区分の形状部分によって完全に画定される。形状の残りは、回転点で交差し、360°の角度を回転点周りに大きさ360°/(2*Z)の数2*Zの角度に分割するZ本の対称軸において形状部分を鏡写しにすることにより得られる。線対称なスクリュエレメントにおいて、隣接するスクリュの対応するスクリュ形状(形成形状および被形成形状)は、さらに同一または回転することでぴったりと重なる(非特許文献1)。
【0034】
同じことが、点対称なスクリュ形状にも当てはまり、対称な部分がそれぞれ対称中心において点について写し取ることで互いの形状に変換できる。
【0035】
本発明にしたがって使用される1つの際だった実施形態は、スクリュエレメントが線対称であることを特徴とするものが以下に説明される。そのような本発明にしたがって使用される線対称なスクリュエレメント行路の数Zは、好ましくは2から8であり、特に好ましくは2から4である。
【0036】
本発明にしたがって使用される線対称なスクリュエレメントの断面の形状曲線は、形状の対称軸において鏡写しにすることで相互に変換できる2*Z個の形状部分に分割されてもよい。1つの形状部分を形成する前記円弧の数nは、好ましくは2から8であり、特に好ましくは2から4である。
【0037】
行路数Zの本発明にしたがって使用される線対称なスクリュエレメントは、360°/(2*Z)の区分の中の1つの形状部分の中に、スクリュエレメントの外側半径raに対応する回転の点から離れた単一の点Pだけがあることを特徴とする。換言すると、1つの点Pだけが、外側半径raを有する回転点周りの円(外側円)上に位置する形状部分の中にある。
【0038】
従来技術に係るスクリュ形状では、頂角KWの部分の全ての点が狭い隙間を持ってバレルを清掃するのに(例えば図1参照)、本発明にしたがって使用される線対称なスクリュエレメントの形状では、図示した点Pだけが外側半径の上に位置する(例えば図2参照)。
【0039】
実用上の理由により、後の記載は、原点がスクリュエレメントの回転点Dにより形成される直交座標系に基づいてなされる。直交座標系のx軸は、点Pを通り、y軸は、回転点Dにおいてx軸に直交する。図2aは、そのような座標系を示す。
【0040】
異なる大きさのエクストルーダへの転用を簡単にするために、無次元特性値の使用がさらに理にかなっている。長さや半径のような幾何学変数のために適切な基準変数は、その変数がエクストルーダにおいて変更できないので、中心距離である。図には、次の決まりが適用される:座標xおよびyは、1つのスクリュの回転点に原点を有する。全ての角度はラジアンで示される。他の寸法表示は、中心距離で標準化して、大文字で表示する:A=a/a;R=ra/a;RA=ra/a;RI=ri/a等。
【0041】
本発明にしたがって使用される線対称なスクリュエレメントの形状部分は、形状の外側半径の上に位置する点Pと、形状のコア半径の上に位置する点Pとの間が、互いに接線方向に接続された円弧からなり、点Pおよび点Pと回転点Dにおいて交差する直線DPおよびDPが360°/(2*Z)の角度を形成することを特徴とする。
【0042】
1つの特定の実施形態において、本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントの形状部分は、点Pと点Pとの間が丁度2つの円弧からなる。点PFPにおいて、前記円弧は、互いに接続され、本発明により、形状部分全体に亘って常に微分可能な曲線を形成する。点PFPにおいて、前記円弧は、直線FPに接する。直線FPは、中心線距離Aの半分だけ回転点から離れて延伸し、−1/tan(π(2*Z))の傾斜(ラジアン)を有する。点PFPは、点Pにおける外側円の接線と直線FPとの交点の交点からの距離だけ離れており、その距離は交点とPとの間の距離に対応する。点PFPから直線FPに垂直に引いた線は、第1の形状形成円弧1の中点Mにおいて点Pおよび回転点を通る直線DPに交差し、他の形状形成円弧1’の中点M1’において、点Pおよび回転点を通る直線DPと交差する(明確化のため図2a参照)。このため、形状形成円弧1の半径R2Kは、線分Mに対応し、形状形成円弧1’の半径R1’2Kは、線分M1’に対応する。
【0043】
1つの特定のさらなる実施形態において、本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントの形状部分は、点Pと点Pとの間が丁度3つの円弧からなる。さらなる自由度が得られ、形状は、さらにエネルギー放散を低減する小さい半径を選択することによってシリンダ壁を清掃する点Pの部分と同様に形成されてもよい。
【0044】
図2bは、例として、本発明にしたがって使用される、3つの円弧からなる2行路スクリュエレメントの形状部分を示す。点Pに接する円弧1の半径Rは、0<R<R1’2Kの範囲内で自由に選択してもよい。その中点Mは、接続線分D−Pの上に位置する。
【0045】
点Pに接する円弧3の半径は、R=A−Rの半径を有する。その中点Mは、線分D−Pの上に位置する。
【0046】
これらの円弧の間には、常に微分できる半径R=A/2の円弧2が位置する。その中点Mは、点Pから距離A/2−R、且つ、点Mから距離R−A/2に位置する。
【0047】
円弧1は、一方でPにより、他方でPおよびPを通る直線との交点により確定される。
【0048】
円弧3は、一方でPにより、他方でMおよびMを通る直線との交点により確定される。
【0049】
半径R1またはR3の1つについての選択の自由のお陰で、与えられた中心線距離に対して本発明にしたがって使用される多様な完全自己払拭スクリュ形状が設計できる。このため、1つのスクリュで大きさ360°/(2*Z)の区域を別々に構成して、両方のスクリュのスクリュ形状の大きさ360°/(2*Z)の相互に対応する区分におけるスクリュ形状を提供することによって、本発明にしたがって使用される対称なスクリュ形状を設計できる。そのような設計は、分散の目的で搬送されている材料が緩慢な圧縮の後の急速な膨張のような特定の変型を受けるのであれば、可能である。
【0050】
大きさ360°/(2*Z)の形状部分の中のスクリュエレメントは、3つ以上の円弧からなり、同様に本発明により提供される。本発明によれば、前記円弧はそれらの始点および終点で互いに接線方向に接続される。
【0051】
スクリュエレメントの外側半径raの中心間距離に対する比RA=ra/aは、本発明にしたがって使用される2行路スクリュのためには、好ましくは0.54から0.7の間特に好ましくは0.58から0.63の間であり、3行路スクリュのためには、好ましくは0.53から0.57の間、特に好ましくは、0.54から0.56の間であり、4行路スクリュエレメントのためには、好ましくは、好ましくは0.515から0.535の間である。
【0052】
本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントは、搬送エレメントまたは混練エレメントまたは混合エレメントとして構成されてもよい。
【0053】
搬送エレメントは、スクリュ形状が軸方向に螺旋状に連続して回転および延伸すること(例えば非特許文献1の227−248頁参照)を特徴とするものとして知られている。搬送エレメントは、右側または左側の行路を有してもよい。搬送エレメントのピッチtは、例えば中心線距離の0.1倍から10倍の値が想定され、ピッチとは、スクリュ形状の完全な1回転のために必要な軸方向の長さを意味する。ピッチtは、好ましくは外径の0.3倍から3倍である。現実的理由で、搬送エレメントの軸長は、好ましくはt/Zの整数倍に構成される。
【0054】
混練エレメントは、スクリュ形状が、軸方向に不連続に延伸する混練ディスクの形態であること(例えば非特許文献1の227−248頁参照)を特徴とするものとして知られている。混練ディスクは、右側または左側或いは中立に配置されてもよい。混練ディスクの軸方向の長さは、好ましくは、中心線距離の0.05倍から10倍の範囲である。2つの隣接する混練ディスクの間の軸方向の距離は、好ましくは、中心距離の0.002倍から0.1倍の範囲である。
【0055】
公知であるように、混合エレメントは、スクリュ頂部に開口を備える搬送エレメントを構成することによって形成される(例えば非特許文献1の227−248頁参照)。混合エレメントは、右側でも左側でもよい。それらのピッチtは、好ましくは、外径の0.1倍から10倍の範囲である。搬送エレメントと同様に、混合エレメントの軸長は、好ましくはt/Zの整数倍に構成される。開口は、好ましくは、U型またはV型の溝の形態をとる。もしも混合エレメントが、積極的搬送エレメントに基づいて形成されるならば、溝は、好ましくは逆搬送または軸方向に平行な方法で配置される。
【0056】
スクリュエレメントを構成する好ましい材料は、鋼、特に窒化鋼、クロム、工具工および特殊鋼、並びに、鉄、ニッケルまたはコバルトであり、粉末冶金により製造される。
【0057】
対になって共回転し、対になって完全に自己払拭するスクリュを備える多軸スクリュエクストルーダにおいて、本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントは、その外周全体に亘って延伸する行路を形成する。この局面によれば、行路は、交互に増大および減少する行路幅を有する。そのような行路は、ここでは、収束発散行路と呼ぶ。そのような収束発散行路では、非常に良好な分散作用を有する剪断流および伸長流が処理の間全長に亘って発生する。エネルギー入力は、従来技術から知られた形状に角を有する従来のスクリュエレメントと比べて低減される。
【0058】
偏芯して配置されたディスクは、同様に収束発散行路を形成する。しかしながら、本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントは、その中に偏芯して配置された円形ディスクよりも非常に小さい隙間がある小さい外周領域を含む。したがって、この方法では、エネルギー入力は、多軸スクリュエクストルーダにおいて本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントを用いて、偏芯して配置された円形ディスクの使用と比べて低減される。
【0059】
直接自己払拭スクリュ形状は、2軸スクリュエクストルーダには直接挿入できず、スクリュエレメントとバレルとの間、および/または、スクリュエレメント同士の間にクリアランスが必要であることが、当業者には知られている。過度に大きいクリアランスは、自己清掃効果を低減し、搬送作用または圧力形成に悪影響を有する。過度に小さいクリアランスは、エネルギー入力を増大し、プラスチック組成物の温度に望まざる上昇をもたらす。本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントのスクリュ形状のためには、スクリュ形状の直径に対して0.001から0.1までの範囲、好ましくは0.002から0.05までの範囲、特に好ましくは0.004から0.02までの範囲のクリアランスが使用される。クリアランスは、当業者に知られているように、スクリュとバレルの間およびスクリュとスクリュの間で、異なる寸法でも同じ寸法でもよい。クリアランスは、一定でも、上述の範囲内で変化してもよい。クリアランスの中でスクリュ形状を移動させることもできる。所定の完全自己払拭スクリュ形状からクリアランスを有するスクリュ形状を導き出す方法は、当業者に知られている。これを達成する公知の方法は、例えば、非特許文献1の28頁以降に記載された、全て当業者に知られた中心線距離拡大、長手方向断面オフセットおよび3次元オフセットの可能性がある。中心線距離拡大の場合、比較的小さい径のスクリュ形状が構成されて、スクリュの間のクリアランスの値によりさらに離される。長手方向断面オフセット法では、長手方向断面形状曲線(それぞれのエレメントの回転に平行)がスクリュ−スクリュ間のクリアランスの半分だけ、形状曲線に直角に内側に、回転軸の方向に移動させられる。3次元オフセット法では、スクリュエレメントが互いに清掃し合う3次元曲線から始まり、スクリュとスクリュの間のクリアランスの半分だけ完全自己払拭形状の面に垂直な方向にスクリュエレメントのサイズを小さくする。長手方向断面オフセット法および3次元オフセット法が好ましく、3次元オフセット法が特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
本発明は、図面を例として参照してより詳細に説明されるが、図は本発明を限定するものではない。
【図1】従来技術による完全自己払拭2行路スクリュエレメントの断面図である。
【図2a】本発明にしたがって使用される線対称なスクリュエレメントの4分の1の断面図である。
【図2b】本発明にしたがって使用される3つの2行路スクリュエレメントの円弧からなる形状部分である。
【図2c】本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントの例である。
【図3】本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントの格別の実施形態である。
【図4a】本発明にしたがって使用される隙間(クリアランス)を有するスクリュエレメントの形状の例である。
【図4b】隙間SがDよりも小さいスクリュエレメントの形状の例である。
【図4c】隙間DがSよりも小さいスクリュエレメントの形状の例である。
【図4d】隙間DがSよりも小さいスクリュエレメントの形状の例である。
【図5a】スクリュ形状の0°方向の移動を示す図である。
【図5b】スクリュ形状の30°方向の移動を示す図である。
【図5c】スクリュ形状の60°方向の移動を示す図である。
【図5d】スクリュ形状の90°方向の移動を示す図である。
【図6a】スクリュの搬送ねじ山を示す図である。
【図6b】混練エレメントの例である。
【図7】従来技術による3行路スクリュエレメントの断面図である。
【図8】本発明にしたがって使用される3行路スクリュエレメントの形状部分である。
【図9a】形状を水平移動して形成した形状である。
【図9b】形状を20°の角度で移動して形成した形状である。
【図9c】形状を40°の角度で移動して形成した形状である。
【図9d】形状を60°の角度で移動して形成した形状である。
【図10a】3行路形状の連続的な搬送ねじ山である。
【図10b】3行路形状の混練ディスクである。
【図11】線対称な4行路スクリュエレメントの形状部分である。
【図12a】4行路形状の連続的な搬送ねじ山である。
【図12b】4行路形状の混練ディスクである。
【図13a】本発明にしたがって使用されるスクリュエレメント対の例の概略断面図である。
【図13b】図13aの前記円弧の座標である。
【図14】クリュエレメントが脱気エクストルーダにおいて使用される好ましい実施形態である。
【図15】クリュエレメントが脱気エクストルーダにおいて使用されるさらなる好ましい実施形態である。
【図16】クリュエレメントが脱気エクストルーダにおいて使用される発泡蒸発器を備える好ましい実施形態である。
【図17a】従来技術によるエルドメンガースクリュ形状を備えるスクリュエレメントのスクリュ形状の4分の1の断面である。
【図17b】搬送エレメントとして構成され、そのスクリュ形状が図17aに基づくスクリュエレメントの対である。
【図17c】図17bに係るスクリュエレメントの対の平面図である。
【図18a】本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントのスクリュ形状の4分の1の断面である。
【図18b】搬送エレメントとして構成され、そのスクリュ形状が図18aに基づくスクリュエレメントの対である。
【図18c】図18bに係るスクリュエレメントの対の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
分かりよく、異なるサイズのエクストルーダに簡単に転用し易くするために、無次元特性値が使用される。例えば長さまたは半径のような幾何学変数のために適当な基準変数は、それがエクストルーダにおいて変更できない変数であるため、中心線距離である。
【0062】
以下の慣例が図に適用される。x座標およびy座標はそれらの原点をスクリュの1つの回転点に有する。全ての角度はラジアンで示される。他の全ての寸法表示は中心線距離で標準化され、大文字で表示される:A=a/a;R=ra/a;RA=ra/a;RI=ri/a;T=t/a等。MxおよびMyは、形状を形成する円弧の中心点のx座標およびy座標であり、Rは、中心線距離aで標準化した半径であり、RV=標準化した実バレル半径、RA=標準化した完全自己払拭形状の外側半径、RF=標準化した製造すべきスクリュの外側半径、S=標準化したスクリュの相互のクリアランス(隙間)、D=標準化したスクリュとバレルのクリアランス、VPR=標準化した形状移動量、VPW=ラジアンでの形状移動角度、VLR=標準化した左側スクリュの移動量、VLW=左側スクリュ移動角度、VRR=標準化した右側スクリュの移動量、VRW=右側スクリュ移動角度である。
【0063】
図1は、互いに距離Aに配置された従来技術による完全自己払拭2行路スクリュエレメントの2つの断面図である。スクリュエレメントは同じ線対称な形状を有する。右側のスクリュエレメントは、左側のスクリュエレメントに対して90°だけ回転されている。1−1が付された点は、スクリュの回転点を示し、そこにスクリュエレメントが配置されている。図示した形状は、複数の対称な形状からなる。形状の移行部には過度がある(角の1つは、1−2が付された矢印で示されている)。頂角KWの部分において、製品は、そのようなスクリュエレメントを備える多軸スクリュエクストルーダの運転の間、引き延ばされることなく高い剪断を受ける。
【0064】
この欠点は、図2に係る形状を示す本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントによって回避される。図2aは、2行路完全自己払拭スクリュエレメント(形成スクリュエレメント)の形状の4分の1の断面を示す。形状は、全体形状が図示した4分の1をx軸およびy軸において鏡写しにすることによって得られるように、x軸およびy軸に対して線対称である。そして、対応する(被形成)スクリュエレメントの形状は、形成スクリュエレメントの形状を90°だけ回転させることによって得られる。この図およびさらなる図において、座標原点は、スクリュの回転点Dを示す。外側半径RAを有する破線の円は、その形状の周りに描かれている。バレル穴は、クリアランスSだけ外側半径に対して拡大した半径RGを有するそれに同心の円により表される(RG=RA+S)。図2aに係るスクリュ形状は、角なしに互いに接続された2つの円弧からなる。円弧の座標は、図2aに記載されている。円弧1の中心点Mは、回転点を通る水平な線上に位置し、円弧1’の中心点M1’は、回転点を通る垂直な線上に位置する(M1y=0;M1’x=0)。円弧1から円弧1’への遷移は、そこで2つの円弧が直線FPに接する点PFPにおいて行われる。
【0065】
図示した形状部分は、以下のステップで設計されてもよい。
− スクリュエレメントの外側半径RAに対応する距離だけスクリュエレメントの回転点Dから離れた位置に点Pを定めるステップ、
− スクリュエレメントの内側半径RIに対応する距離だけスクリュエレメントの回転点Dから離れた位置に点Pを定め、点Pが、点Dを通り、点PおよびDを通る直線DPと360°/(2*Z)の角度を形成する直線DP上に位置するステップ、
− スクリュエレメントの中心線距離Aの半分に対応する距離だけ回転点から離れた位置に、ラジアンで−1/tan(π/(2*Z))の傾斜を有する直線FPを定めるステップ、
− 回転点Dを中心とする半径RAの外側円に対する点Pにおける接線Tと直線FPとの交点を定め、直線FP上に、点Pと同様に交点から離れ、半径RAより小さい距離だけ回転点から離れた位置に点PFPを定めるステップ、
− 点PFPにおける直線FPに対する垂線と直線DPとの交点に位置する中心点Mを定めるステップ、
− 点PFPにおける直線FPに対する垂線と直線DPとの交点に位置する中心点M1’を定めるステップ、
− 点Paと点PFAとの間に中心点Mを中心にして円弧1を形成するステップ、
− 点PIと点PFAとの間に中心点M1’を中心にして円弧1’を形成するステップ。
【0066】
図2bは、例として、3つの円弧からなる、本発明にしたがって使用される2行路スクリュエレメントの形状部分を示す。点Dは、スクリュエレメント(形成スクリュエレメント)の回転点を示す。回転点Dから距離Aだけ離れて、対応するスクリュエレメント(被形成スクリュエレメント)の回転点が配置されている。回転点Dを中心に、スクリュエレメントのコア半径RIを有する円(内側円)および外側半径RAを有する円(外側円)が描かれている。内側円および外側円は、円環を形成する。本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントの形状部分および最終的全体形状の全ての点は、この円環上に位置する。点Pは、接続線分D−P上に位置する、半径Rで中心点Mの円弧1の始点を示す。点Pは、外側円の上に位置する。点Pは、半径R=A−Rの円弧3の始点を示す。中心点Mは、線分D−P上に位置する。円弧1と円弧3との間に、常に微分できる半径R=A/2の円弧2が配置されている。その中心点M2は、点Pから距離(A/2)−Rだけ離れて、且つ、点M3から距離R−(A/2)だけ離れて配置されている。図示した形状部分を点およびPAを通る直線において続けて鏡写しにすることによって、本発明にしたがって使用されるスクリュエレメント(形成スクリュエレメント)の全体形状を設計できる。対応するスクリュエレメント(被形成スクリュエレメント)の形状は、単純に、形成スクリュ形状の形状を回転点Dの周りに90°回転させることによって得られる。
【0067】
図2cは、本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントの例を示し、そこでは、破線で示した形状部分が、実線で示した形状部分との鏡写しによる位置合わせにおいて重ね合わせることができない。代わりに、形状は、回転点について点対称である。
【0068】
本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントの格別の実施形態は、図3に例として示されている。それは、バレル穴がスクリュ形状の外側半径より大きい半径に構成され、スクリュ形状がバレル穴の中心点に対して一対で移動させられているが、その回転点(小さい円で図示)がバレル穴の中心に維持されていることを特徴とする。このようにして、驚くべきことに、際だったエネルギー入力の減少が得られる。このため、偏芯して回転するスクリュエレメントは、バレル穴の中でいかなる所望の方法で移動させられてもよい。図3は、2つの形状が平行に同じ量だけ2つの回転点を通る直線に対して、それに垂直な方向に、バレル輪郭に当接するまで移動させられた、特に強調した場合を示す。このように、スクリュが完全に自己払拭するが、それぞれのスクリュの2つのスクリュ頂部の一方が外形を完全に払拭することが保証されている。この配置は、全ての表面の完全な清掃と同時に低減されたエネルギー入力を可能にする。
【0069】
説明は、これ以降、完全自己払拭スクリュ形状のみに関する。しかしながら、工業的に構成された装置においては、清掃の間正確に規定した隙間が維持される範囲で、完全自己払拭幾何学形状から外れる必要がある。これは、金属「腐食」を防止して、製造誤差を補償し、隙間における過剰なエネルギー放散を防止するために必要である。均一な隙間を形成するために採り得る多様な戦略がある。装置を通して長手方向の区分に亘り等距離の隙間の製造が最も広まっている。対応するスクリュ形状の形成方法は、非特許文献1の103頁以降に記載されている。
【0070】
所定の隙間を備えるスクリュ形状の形成の規範は、本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントに適用できる。
【0071】
図4は、本発明にしたがって使用される隙間(クリアランス)を有するスクリュエレメントの形状の例を示す。図4aでは、スクリュの相互の清掃における隙間Sは、バレルの清掃の隙間Dと等しくなるように選択されている。図4bでは、隙間SがDよりも小さく、図4cおよび4dでは、Dが逆にSよりも小さい。
【0072】
図5は、本発明にしたがって使用される偏芯した形状が、隙間を有するスクリュ形状を設計し、そして、隙間を有する形状を移動させることにより取得されてもよいことを示す。図5a−5dの形状は、図4dの形状と同一である。移動は、スクリュエレメントの回転点を通る直線に対して図5aでは0°、図5bでは30°、図5cでは60°、図5dでは90°の方向に行われている。
【0073】
図5は、両方のスクリュが同じ移動ベクトルだけ移動させられた例を示す。原則として、2つのスクリュをクリアランスの中で異なるベクトルだけ移動させることもできる。この場合、スクリュの1回転の中で変化する隙間を有して互いに清掃する形状が得られる。
【0074】
知られているように、形状の対の搬送作用は、軸方向に連続して螺旋回転する形状により生じる。搬送ねじ山は、図6aに例示するように、このようにして得られる。
【0075】
搬送ねじ山に対して分散能力の高い混練エレメントは、自己清掃形状角柱状ディスクを互いにあるオフセット角だけねじれて軸上に配置することによって得られる。図6bは、30°のオフセット角で軸上に配置した7つの混練ディスクを備える混練エレメントの例を示す。
【0076】
図1から6は、専ら2行路スクリュエレメントを取り扱う。しかしながら、同じ原則は、3以上の行路を備えるスクリュエレメントに適用してもよい。図7は、従来技術(例えば非特許文献1の103頁参照)による3行路スクリュエレメントの断面図である。図7の3行路形状は、3つの対称な部分からなる。部分の移行部に角が生じ、形状はスクリュ頂部(7−1dを付した矢印によって例示されている)を形成する。ここで形状は、バレルから短い距離で回転し、上記欠点を有する高分子溶融物の単純剪断を呈する。
【0077】
一方、図8は、本発明にしたがって使用される3行路スクリュエレメントの形状部分を示す。形状が互いに対して60°の角度で配置され、座標原点を通る3つの直線(S1,S2,S3)について線対称であるので、ここでは、1つの60°の形状部分だけを示す。全体形状は、鏡写し線S1,S2およびS3において図示した形状曲線を連続的に鏡写しにすることによって得られる。形状曲線は、直線S1およびS3の間に図示した部分では、2つの円弧で形成されている。スクリュのために、その全体の外周が組成物に剪断流れと延伸流れとの組み合わせを与える収束発散行路を形成する。形状形成円弧1と円弧1’との軸方向の遷移は、その形状が直線FPと接する点において行われる。3行路形状のために、直線FPは、回転点から中心線距離の半分だけ離れて、−1.73の傾斜を有して延伸する。図8に示した設計は、0.5から0.577までの中心線距離に対する外側スクリュ半径の全ての比に同様に適用してもよい。
【0078】
偏芯して回転する3行路形状を設計してもよい。そのようなスクリュ形状は、図9a−dに示されている。手順は2行路形状の手順と同様である。その形状の外側半径は、バレル半径に対してサイズが小さく、形状は、一対で移動させられており、回転点はバレルに対して中心に維持されている。特に興味深いのは、スクリュが互いを完全に清掃し、バレルが3つの頂点の中の1つだけで清掃されるスクリュ形状である。図9aは、右側のスクリュ頂部がバレル輪郭に到達するまで形状を水平右側に移動させることによるそのような形状の形成を示す。この配置により、対称名スクリュ行路が形状とバレルとの間に生じる。3つのスクリュ頂部の1つがバレルを清掃するさらなる配置は、回転点を通る直線に対して20°(図9b)または40°(図9c)の角度で形状を移動することによって得られる。これらの得られたスクリュの形状は、非対称である。移動を増大することによって、より強い剪断を有する部分(図9bおよび9cの頂部)および剪断の弱い部分(図9bおよび9cの底部)が生じる。回転点を通る直線に対して60°の角度で形状が移動されたとき(図9d)、3つの頂部の中の2つがバレルを清掃する配置が行われてもよい。このとき、非対称性は、最も大きくなる。非常に剪断応力が高い2つの部分(9dの頂部)と、剪断応力が低い1つの部分(9dの底部)とが生じる。処理すべき組成物は、分散目的に有用な大きく変化する応力に晒される。
【0079】
形状相互の清掃の間およびバレルの清掃の間の隙間の形成は、2行路形状のための手順が完全に適用されて行われる。
【0080】
3行路形状は、図10aに係る連続的な搬送ねじ山、または、図10bに係る混練ディスクとして本発明にしたがって使用されてもよい。
【0081】
線対称な4行路スクリュ形状は、スクリュ形状の45°部分によって完全に規定される。図11は、本発明にしたがって使用される線対称な4行路スクリュエレメントの形状部分を示し、形状部分は2つの円弧部分からなる。設計は、0.5から0.541までの中心線距離に対する外側スクリュ半径の全ての比に、同様に適用してもよい。
【0082】
偏芯した形状の形成と清掃時の隙間の形成とは、2行路および3項路の形状と同様の方法で行われるので、ここでは説明しない。
【0083】
4行路形状は、図12aに係る連続的な搬送ねじ山、または、図12bに係る混練ディスクとして使用されてもよい。
【0084】
4つより多い行路を有する本発明にしたがって使用される形状が同様に製造されてもよい。同じく、隙間が同様に変化させられて偏芯した形状が形成されてもよい。
【0085】
図13aは、本発明にしたがって使用されるスクリュエレメント対の例の概略断面図である。形成スクリュ形状は、左側のスクリュ形状として図示されている。2つのスクリュ形状は、16本の円弧からなる。形成スクリュ形状および被形成スクリュ形状の円弧は、太い実線で図示され、それぞれ円弧の番号が与えられている。円弧の中心点は、小さい円で図示されている。円弧の中心点は、関連する円弧(画定線)の始点および終点の両方と細い実線で接続されている。外側スクリュ半径は、形成スクリュ形状と被形成スクリュ形状とで同じ大きさである。外側スクリュ半径は、スクリュバレルの部分では細い破線で示され、咬合領域においては細い点線で示されている。多数の円弧およびコンピュータソフトウェアを使用した図の作成の結果として、個々の円弧の番号が画定線に重なり、そのため判読できないかもしれない。時に低い個々の番号の判読性にも拘わらず、形状の構成は、この記載に関する内容と、図13bに与えられた座標とから明らかである。
【0086】
図13aに示した本発明にしたがって使用されるスクリュ形状の対は、線対称ではないが、点対称である。直線FP(点線で図示)は、接線ではない。そのようなスクリュエレメントは、分散作用に重要な頂部の上流部分および下流部分が、直線FPによる幾何学的制限を考慮する必要がなく、正確に目的に合わせられてもよいので、分散作用について特に大きな許容度を可能にする。図13bは、図13aの全ての円弧の中心点のx座標およびy座標(MxおよびMy)、半径Rおよび円弧の角度αを示す。角度は、ラジアンで記載され、他の全ての寸法は、中心線距離で標準化され、そのため無次元である。
【0087】
本発明にしたがって高効率に押し出されてもよく、穏やかな製品の処理が同時に保証されるプラスチック組成物は、例えば、懸濁液、ペースト、ガラス、セラミック組成物、溶融した状態の金属、プラスチック、プラスチック溶融物、高分子溶液、エラストマおよびゴム組成物である。
【0088】
好ましくはプラスチックおよび高分子溶液が、特に好ましくは熱可塑性高分子が使用される。好ましい熱可塑性プラスチックは、好ましくは、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、特にポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート、ポリラクチド、ポリステル、ポリエーテル、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、フッ素重合体、特にポリフッ化ビニリデン、ポリエーテルサルホン、ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリイミド、ポリアクリル樹脂、特にポリ(メチル)メタクリル樹脂、酸化ポリフェニレン、硫化ポリフェニレン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、スチレンポリマー、特にポリスチレン、スチレン共重合体、特にスチレンアクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレンブロック共重合体、塩化ポリビニルの少なくとも1つである。列挙したプラスチックの混合物は、同様に好ましく使用され、当業者には2以上のプラスチックの組み合わせがあると理解される。特に優先されるものとして、ポリカーボネートおよびポリカーボネートを含む混合物が挙げられ、特に、相境界法または溶融エステル交換法を使用して得られるポリカーボネートが好適である。
【0089】
さらに好ましい供給材料は、ゴムである。好ましいゴムは、好ましくは、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ゴム、フロロプレンゴム、酢酸エチレンビニルゴム、ポリウレタンゴム、熱可塑性ポリウレタン、グッタペルカ、アクリルゴム、フッ化ゴム、シリコンゴム、硫化ゴム、クロロスルホニルポリエチレンゴムの少なくとも1つである。上記ゴムの2つ以上の組み合わせ、または、1つ以上のゴムと1以上のプラスチックの組み合わせが、当然に可能である。
【0090】
熱可塑性プラスチックおよびエラストマは、純粋体、或いは、特にグラスファイバのような充填剤および補強材との混合物、異なる高分子との混合物または従来の高分子添加剤との混合物の形態で使用されてもよい。
【0091】
1つの好ましい実施形態において、プラスチック組成物、特に高分子溶融物および高分子溶融物の混合物は、添加剤が混合されている。それらは、エクストルーダの中に固体、液体または溶液で供給されてもよく、高分子または全ての添加剤の少なくともいくらかは、エクストルーダに側部流れを介して供給されてもよい。
【0092】
添加剤は、高分子に多くの異なる特性を与える。それらは、例えば、着色剤、色素、加工助剤、充填剤、抗酸化剤、補強材、紫外線吸収剤および光安定剤、金属不活性剤、過酸化捕集剤、基礎安定剤、核形成剤、安定剤または抗酸化剤として作用するベンゾフランおよびインドリノン、モールド剥離剤、難燃剤、帯電防止剤、ダイ処理剤および溶融安定剤である。これらの例は、カーボンブラック、グラスファイバ、クレイ、マイカ、グラファイトファイバ、酸化チタン、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ、イオン液および天然繊維である。
【0093】
方法が多様な高分子に使用されるときに達成される利点は、押し出しプロセスの種類とプラスチック組成物の種類とによって変化する。
【0094】
ポリエチレンおよびポリエチレン共重合体を押し出しするとき、過剰に高い温度が分子量の増加、分岐および架橋をもたらす。ポリエチレンおよびポリエチレン共重合体は、さらに、当業者には知られた自動酸化サイクルにおいて周囲の酸素と反応し(非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)、強い臭気、並びに、例えばケトン、アルデヒド、カルボン酸およびアルコールのような分裂した低分子成分を形成する。
【0095】
ポリエチレンおよび酢酸ビニルベースの共重合体の押し出しの際、過剰な高温は、さらに、強い匂いと腐食性酢酸とをもたらす。
【0096】
ポリプロピレンおよびポリプロピレン共重合体の押し出しの際、高温は、分子量の減少をもたらす。ポリプロピレンおよびポリプロピレン共重合体は、さらに、自動酸化サイクルにおいて周囲の酸素と反応し、強い匂いと、例えば、ケトン、アルデヒド、カルボン酸およびアルコールのような分裂した低分子成分を形成する。
【0097】
ポリ塩化ビニルの押し出しの際、過剰に高い温度は、ポリ塩化ビニルの変色、および、塩酸がさらなる塩酸の除去を触媒する腐食性塩酸ガスの除去をもたらす。
【0098】
ポリスチレンの押し出しの際、過剰に高い温度は、分子量が減少した、機械的特性において機能しない有害なスチレン並びに二量体および三量体スチレンの形成をもたらす。
【0099】
ポリスチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN)の押し出しの際、製品は、熱的ストレスに晒されて黄色味を帯びた色に変わり、透明性が減少し、分子量が減少し、機械的特性において機能しない発ガン性のある単量体アクリロニトリルおよびスチレンの形成をもたらす。
【0100】
芳香族ポリカーボネートの押し出しの際、製品は、過剰な熱的ストレスに晒されて、特に、酸素の作用により、透明性の減少をもたらす黄色味を帯びた色に変わり、特に水の作用により、分子量の減少を呈する。例えばビスフェノールAのような単分子体は、高温に晒されることによっても分離する。
【0101】
例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリラクチドのようなポリエステルの押し出しの際、過剰に高い温度および水の作用は、分子量の減少および分子の末端基の置換をもたらす。これは、ポリエチレンテレフタレートのリサイクルの際に、特に問題である。ポリエチレンテレフタレートは、高温において、例えば飲料ボトルの中身の香りを変化させるかもしれないアセトアルデヒドを排出する。
【0102】
ジエンゴム、特にブタジエンゴムによる耐衝撃性改質熱可塑性プラスチック、特にポリスチレンの耐衝撃性改質品(HIPS)および耐衝撃性改質SAN(アクロニトリルブタジレンスチレン、ABS)の押し出しの際、過剰に高い温度は、発ガン性ブタジエンおよび有毒なビニルシクロヘキセンの分離をもたらす。さらに、ジエンゴムの架橋は、製品の機械的特性の低下をもたらす。
【0103】
ポリオキシメチレンの押し出しの際、過剰に高い温度は、有毒なホルムアルデヒドの分離をもたらす。
【0104】
ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド4,6、ポリアミド11およびポリアミド12のようなポリアミドの押し出しの際、過剰に高い温度は、製品の脱色および分子量減少をもたらし、単量体および二量体の変成をもたらし、特に、水の存在下で機械的特性の低下をもたらす。
【0105】
ポリウレタン熱可塑性プラスチックの押し出しに際し、過剰に高い温度は、トランスウレタン化による分子構造の変化、および、水の存在下における分子量の減少をもたらす。これらの両方は、熱可塑性ポリウレタンの特性に悪影響を与える。
【0106】
ポリメチルメタクリレートの押し出しに際し、リメチルメタクリレートは、過剰な熱的ストレスに晒されて、分離され、分子量が減少し、不快な匂いおよび機械的特性の低下をもたらす。
【0107】
硫化ポリフェニレンの押し出しに際し、過剰に高い温度は、不快な匂いをもたらし、押し出しダイの腐食をもたらすかもしれない含硫有機物および無機化合物の分離をもたらす。低分子量オリゴマーおよび単量体も形成されて分子量が減少し、硫化ポリフェニレンの機械的特性を低下させる。
【0108】
ポリフェニルサルホンの押し出しに際し、過剰に高い温度は、特に水の存在下における有機化合物の分離をもたらす。分離量も減少し、機械的特性が低下する。
【0109】
ポリフェニレンエーテルの押し出しにおいて、過剰に高い温度は、低分子有機化合物の分離をもたらし、分子量が減少する。これは、製品の機械的特性の低下をもたらす。
【0110】
例えば、ポリブタジエン(BR)天然ゴム(NR)および、合成ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)クロロブチルゴム(CIIR)、ブロモブチルゴム(BIIR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリクロロプレン(CR)、ブタジエンアクリロニトリルゴム(NBR)部分水素化アクリロニトリルゴム(HNBR)およびエチレンプロピレンジエン共重合体(EPDM)のようなジエンゴムの押し出しに際し、過剰に高い温度は、架橋によるゲル化をもたらし、それにより製造された部品の機械的特性を低下させる。クロモブチルゴムおよびブロモブチルゴムの場合、高い温度は、塩酸または臭化水素酸腐食性ガスをもたらして、高分子のさらなる分解を触媒するかもしれない。
【0111】
硫黄または過酸化物のような加硫剤を含むゴム化合物の押し出しに際し、過剰に高い温度は、早すぎる硫化をもたらす。これは、それらのゴム化合物からそれ以上何も製造できないという結果をもたらす。
【0112】
1以上の高分子の混合物の過剰に高い温度での押し出しに際し、個々の高分子の押し出しの欠点がそれぞれの場合に生じる。
【0113】
製造中の高分子脱気の副プロセスは、「脱気エクストルーダ」において行われる。脱気エクストルーダは、原則的に当業者に知られており、例えば非特許文献1に記載されている。「脱気ドーム」が、脱気エクストルーダの特徴である。発生した蒸気がそこを通して逃げ出し得る開口を備えるバレルがある。知られているように、もしも、製品の流れが脱気ドームの間で制限され、異なる圧力の間のシールを形成するのであれば、異なる脱気ドームが、異なる圧力で運転されてもよい。
【0114】
本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントは、好ましくは、部分的に充填された領域において、特に好ましくは脱気領域において使用される。
【0115】
本発明にしたがって使用される脱気エクストルーダは、想定される高分子の形態に応じた様々な製品が供給されてもよい。好ましい変形において、高分子に加えて、溶剤および選択的に残留単量体を含んだままの液体が供給される。高分子が反応および選択的に予備蒸発して得られる高分子の形態は、当業者には公知である。例えば、
− 残留スチレンおよび場合によりエチルベンゼン、トルエン、キシレン、ブタノンまたは他の溶剤を含むポリスチレン、
− 残留スチレン、残留アクリロニトリルおよび場合によりエチルベンゼン、トルエン、キシレン、ブタノンまたは他の溶剤を含むスチレン共重合体およびアクリロニトリル共重合体、
− ヘキサン、テクニカルヘキサン、プロパン、イソブタン、および、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1のような単量体溶剤を含む鎖状低密度ポリエチレンまたは鎖状高密度ポリエチレン、分岐ポリエチレン(懸濁を含むプロセスは、三井化学CXプロセス(ヘキサン)、バゼルのホスタレンプロセス(ヘキサン)、米国シェブロンフィリップス(イソブタン)、ベルギーボレアリスのボルスター(Borstar)プロセス(プロパン)、および、溶剤プロセス中で使用するヘキサンのDSMであり、これに関する詳細は、「多様なポリエチレン製造技術の比較分析」「化学と石油工学(Chem. & Petroleum Eng.)」、44巻、7−8号、2008年に記載されている)、
− クロロベンゼンおよび塩化メチレンの等の溶剤を含むポリカーボネート、
− 単量体、つまり、メタクリル酸メチルを含むポリメチルメタクリル樹脂、である。
【0116】
好ましい変形において、製品は、「後方」脱気を有する液体供給脱気エクストルーダに供給される。この場合、選択的に予熱した高分子溶液がそれを発泡させる2軸エクストルーダの中に導入される。そして、気体は、2軸スクリュエクストルーダの行路を通して脱気ドームに後向きに排出される。そのような後方脱気は、概ね公知技術であり、例えば非特許文献1の193−195頁に記載されている。この場合、エクストルーダへの入力における溶液中のポリカーボネートの濃度は、好ましくは55質量%から95質量%の間、特に好ましくは65質量%から90質量%の間である。
【0117】
液体供給脱気エクストルーダへの製品供給のさらに好ましい変形は、エクストルーダ入口におけるフラッシュ蒸発を含む。フラッシングは、好ましくは、部分的に脱記された溶融物が直接スクリュ上に落下するように、エクストルーダ上で直接行われる。フラッシングにより生じる蒸気は、好ましくは、同様にエクストルーダ上に配置された分離容器から1以上の蒸気ラインによって引き抜かれる。高分子溶液の温度は、好ましくは180℃から300℃の範囲、特に好ましくは200℃から250℃の範囲である。フラッシングは、好ましくは、0.3barabsから6barabsの範囲、特に好ましくは0.5barabsから5barabsの範囲の圧力で行われる。
【0118】
液体供給脱気エクストルーダへの製品供給のさらに好ましい変形は、エクストルーダ入口にシェル&チューブ熱交換器を含み、熱交換器は、チューブから出てくる部分的に脱気された高分子溶融物が直接スクリュの上に落下できるように、エクストルーダのスクリュの上に配置される。その中で蒸気と高分子溶液とが互いに分離され、少なくとも1つの蒸気出口を有する分離容器が、シェル&チューブ熱交換器とエクストルーダのスクリュとの間にさらに配置される。高分子溶液は、落下チューブ蒸発器の上端の入口開口を通して導入され、分配プレートを介して外部から加熱された複数のチューブに供給される。加熱は、好ましくは凝縮蒸気、濃縮有機熱媒体または液状有機熱媒体によって提供される。溶剤を蒸発させる熱エネルギーは、ポリカーボネート溶融物中にチューブの内面を介して導入される。結果的に溶剤の留分は、蒸発して2相性気体−気体混合物の形成をもたらす。このため、高分子溶融物の加熱は、意図的に回避される。蒸気への溶剤の逃げは、高分子溶融物の完全な混合と表面再生とをもたらし、それらのより効果的な濃縮を確実にする。このようにして、極めて高い濃度のポリカーボネート溶融物が液化エクストルーダに供給される。ポリカーボネート溶融物の同じかそれより高い残留ガスの脱気が、低いエネルギー入力だけでなく短いポリカーボネートのエクストルーダ滞留時間で達成されてもよい。シェル&チューブ熱交換器への投入に際し、高分子溶液の濃度は、好ましくは50から80重量%である。チューブ加熱温度は、240℃から360℃、好ましくは250℃から340℃、さらに特に好ましくは260℃から300℃である。エクストルーダへの投入時の高分子濃度は、80から99重量%の間、好ましくは90から99重量%の間である。分離容器内の圧力は、好ましくは、0.3barabsから6barabsの間、特に好ましくは0.5barabsから2barabsの間である。
【0119】
さらに好ましい液体供給脱気エクストルーダへの製品供給方法は、例えばEP1740638にポリカーボネートについて記載されているように、発泡蒸発器を含む。発泡蒸発器は、例えば、シェル&チューブアセンブリまたはダイプレートからなる。ポリマー溶融物は、発泡蒸発器のオリフィスから出る際に発泡し、残留溶剤は除去されて低い残留率になる。
【0120】
発泡蒸発器は、好ましくは、チューブから出てくる高分子溶液が直接スクリュの上に落下できるように、エクストルーダの上に配置される。その中で蒸気と高分子溶液とが互いに分離され、少なくとも1つの蒸気出口を有する分離容器が、シェル&チューブ熱交換器の出口とエクストルーダのスクリュとの間にさらに配置される。
【0121】
好ましくはポリカーボネート溶液が、高分子溶液として使用される。
【0122】
この場合、発泡蒸発器に投入する際のポリカーボネート溶液の濃度は、90重量%から99.95重量%である。例えば窒素やCOのような発泡剤が選択的にポリカーボネート溶液に添加される。残留溶剤と合わせた発泡剤の蒸気圧は、0.1から100bar、好ましくは0.5から60bar、特に好ましくは1から40barである。分離器における圧力は、発泡蒸発器のオリフィスを通して0.1から20mbarの間の支流に分割される値である。高分子溶液の温度は、250℃から340℃の間である。分離容器内の圧力は、好ましくは0.1から20mbarの間である。
【0123】
図14は、スクリュエレメントが脱気エクストルーダにおいて使用される好ましい実施形態を示す。領域Aにおいて、ポリカーボネート溶液が、フラッシュ蒸発チューブ1を通してエクストルーダに導入される。脱気容器2において、蒸気がポリカーボネート溶液から分離される。領域C,E,G,JおよびLは、脱気領域である。それらに関する蒸気は、脱気ドーム3に引き抜かれる。領域B,D,FおよびHは、流れ制限エレメントが隣接する領域と異なる圧力を達成可能にする製品の栓を創りだす制限流れ領域である。連行剤が、さらに領域Kにおいて添加されて領域Lにおける脱気をより効果的にする。領域Mにおいて、高分子は、添加剤を含んだ側流と混合され、エクストルーダに続く濾過およびダイのために圧力が形成される。
【0124】
図15は、スクリュエレメントが脱気エクストルーダにおいて使用されるさらなる好ましい実施形態を示す。領域Aにおいて、ポリカーボネート溶液が、垂直予熱器1を通してエクストルーダに導入される。脱気容器2において、蒸気がポリカーボネート溶液から分離される。領域C,E,G,JおよびLは、脱気領域である。それらに関する蒸気は、脱気ドーム3に引き抜かれる。領域B,D,FおよびHは、流れ制限エレメントが隣接する領域と異なる圧力を達成可能にする製品の栓を創りだす制限流れ領域である。連行剤が、さらに領域Kにおいて添加されて領域Lにおける脱気をより効果的にする。領域Mにおいて、高分子は、添加剤を含んだ側流と混合され、エクストルーダに続く濾過およびダイのために圧力が形成される。
【0125】
図16は、スクリュエレメントが脱気エクストルーダにおいて使用される入口に発泡蒸発器を備えるさらなる好ましい実施形態を示す。領域Aにおいて、ポリカーボネート溶液が、発泡蒸発器1を通してエクストルーダに導入される。分離器2において、蒸気がポリカーボネート溶液から分離される。領域B,D,FおよびHにおいて、それぞれ、連行剤が導入されて分散される。領域C,E,F,GおよびJにおいて、揮発性成分が高分子から分離される。領域Kにおいて、高分子は、添加剤を含んだ側流と混合され、エクストルーダに続く濾過およびダイのために圧力が形成される。
【0126】
スクリュエレメントが適合した2軸または多軸スクリュエクストルーダには、高分子製造の間に粒子が供給されてもよい。この場合、本発明に係るエクストルーダは、とりわけ、溶融、変換、および添加剤との混合の役目を果たす。高分子が反応の後に、選択的に蒸発または沈殿の前に得られる形態が当業者には知られている。例は、
− 高分子が最終反応後に粉末形態で得られるポロプロピレン、
− 気相プロセスまたはスラリープロセスからの高密度ポリスチレン、
− 沈殿および選択的に乾燥後のアクリロニトリルブタジエンスチレンのようなエマルジョン高分子、である。
【0127】
合成の間、本発明による2軸または多軸スクリュエクストルーダは、特に脱気を含む役割に適する。顕著な利点は、ボトル材料からの再生ポリエチレンテレフタレートの直接合成の間に達せられる熱的ストレスに晒されることが最低限度の脱気を含む。
【0128】
本発明によるプロセスは、特に好ましくは、ポリカーボネートの製造および合成に使用される。それは、とりわけ、無色のポリカーボネートにおいて、黄色度(YI)によって測定されるポリカーボネートの色に関する利点を有する。本発明によるスクリュエレメントは、特に、脱気領域に用いられることが特に好ましい。
【0129】
ポリカーボネートの製造のための本発明に係るプロセスに好ましいジフェニルは、しばしば従来技術に記載されている。
【0130】
好ましいジフェニルは、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノール、ジヒドロキシジフェニル、ビス−(ヒドロキシフェニル)アルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)シクロアルカン、ビス−(ヒドロキシフェニル)硫化物、ビス−(ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス−(ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス−(ヒドロキシフェニル)スルホキシド、α,α’−ビス−(ヒドロキシフェニル)ジイソプロピルベンゼンおよびそれらのアルキル化物、環状アルキル化物および環状ハロゲン化物である。
【0131】
好ましいジフェノールは、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルエタン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス[2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン(ビスフェノールM)、2,2−ビス−(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロパン、ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−メタン、2,2−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、2,4−ビス−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、1,3−ビス−[2−(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−プロピル]−ベンゼン、および、1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0132】
特に好ましジフェノールは、4,4’−ヒドロキシフェニル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、および、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(ビスフェノールTMC)である。
【0133】
コポリカーボネートの場合は2以上のジフェノールが使用されるのに、ホモポリカーボネートの場合は1つのジフェノールだけが使用される。合成に加えられる他の化学品および助剤の全てのように使用されるジフェノールは、明らかに、それらの合成、輸送および保管に由来する不純物が混入してもよいが、最も清浄な原材料を使用することが好ましい。
【0134】
例えば、フェノールまたはアルキルフェノール、特に、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、イソ-オクチルフェノール、クミルフェノール、それらのクロロギ酸エステル、モノカルボン酸の酸塩化物、または、それら連鎖停止剤の混合物のような、分子量の制御に必要な単官能基連鎖停止剤は、いずれも、合成の間の所望の時間に、ホスゲンまたはクロロギ酸末端基を提供する1または複数のビスフェノラートと反応させられ、或いは加えられ、連鎖停止剤としてクロロ酸塩およびクロロギ酸エステルが反応混合物中に存在するようにし、形成されている高分子が十分なフェノール末端基を利用できるようにする。しかしながら、好ましくは、連鎖停止剤は、ホスゲン化の後、ホスゲンがもはや存在しないが、触媒が未だ分散されていない場所および時間に加えられる。代案として、それらは、触媒の前、触媒と共に、または、平行して分散されてもよい。
【0135】
分岐剤または分岐剤混合物は、選択的に、同じ方法で合成に加えられる。しかしながら、従来、分岐剤は、連鎖停止剤の前に加えられる。トリスフェノール、クオターフェノール或いはトリまたはテトラカルボン酸の酸塩化物或いはポリへノースまたは酸塩化物の混合物が使用される。分岐剤として好ましい3以上のフェノール性水酸基を有する化合物のいくつかは、例えば、フロログルシノール、1,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン−2、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)ヘプテン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゼン、1,1,1−トリ(4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−フェニルメタン、2,2−(4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシル)プロパン、2,4−ビス−(4−ヒドロキシフェニル−イソプロピル)−フェノール、テトラ−(4−ヒドロキシフェニル)メタンである。
【0136】
他のいくつかの三官能基化合物は、2,4−ジヒドロキシ安息香酸、トリメシン酸、塩化シアヌル、および、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−2,3−ジヒドロインドールである。
【0137】
好ましい分岐剤は、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−2−オキソ−ジヒドロインドールおよび1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)エタンである。
【0138】
ポリカーボネートの相界面合成に好適に使用される触媒は、三級アミン、特に、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、N−エチルピペリジン、N−メチルピペリジン、N−i/n−プロピルピペリジン、テトラブチルアンモニウム、トリブチルベンジルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム水酸化物、塩化物、臭化物、硫酸水素化物、テトラフルオロホウ酸塩のような第四アンモニウム塩、および、アンモニウム化合物に対応するホスホニウム化合物である。典型的な相界面触媒として文献に記載されているこれらの化合物は、市場入手可能であり、当業者にはなじみ深いものである。触媒は、合成に、別に、合物として、或いは、平行してまたは連続して、選択的には、ホスゲン化の前にも、加えられてもよいが、それらは、好ましくはホスゲン化の後には分散され、オニウム化合物またはオニウム化合物の混合物が触媒として使用される。この場合、添加は、ホスゲンが分散される前に行うことが好ましい。1または複数の触媒は、溶剤なしに、不活性溶剤中に、好ましくは、ポリカーボネート合成溶剤中に分散してもよく、また、酸、好ましくは鉱酸、典型的には塩酸とそれらのアンモニウム塩であるtert−アミンの場合は、水溶液として分散してもよい。複数の触媒を使用するとき、または、触媒の総量が比例して分配されるとき、当然に、異なる場所または異なる時間で分散の異なる方法が使用されてもよい。触媒の総量は、導入されたビスフェノールのモル数に対して0.001から10モル%、好ましくは0.1から8モル%、特に好ましくは0.05から5モル%の量で使用される。
【0139】
ポリカーボネート合成は、連続的または不連続に行われてもよい。このため、反応は、撹拌タンク反応器、チューブ反応器、ポンプ循環反応器、または、撹拌タンク反応器の連続、或いは、それらの組み合わせにおいて進行する。ここで、上記混合エレメントの使用により、合成混合物が完全に反応するまで、含水性且つ有機性の相が可能なかぎり分離しないこと、つまり、ホスゲンまたはクロロギ酸エステルのけん化性塩素を含まないことを確実にしなければならない。
【0140】
ホスゲンを導入した後、選択的に分岐剤を加える前に、もし、分岐剤がビスフェノラート、連鎖停止剤および触媒と一緒に分散されなければ、しばらくの間じっくりと有機相と水相とを混合することが有利であるかもしれない。そのような反応後時間は、核分散の後に有効であるかもしれない。これらの反応後時間は、10秒から60分、好ましくは30秒から40分、特に好ましくは1分から15分である。
【0141】
有機相は、1つの溶剤または複数の溶剤の混合物からなってもよい。好ましい溶剤は、塩素化炭化水素(脂肪族および/または芳香族)、好ましくは、ジクロロメタン、トリクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタンおよびクロロベンゼンおよびそれらの混合物である。しかし、ベンゼン、トルエン、m/p/o−キシレンまたはアニソールのような芳香族エーテルなどの芳香族塩素化炭化水素は、単独で、塩素化炭化水素との混合物で、または、塩素化炭化水素に添加しても使用できる。ポリカーボネートを溶解しない溶剤を使用する合成の他の実施形態は、むしろそれを増大させるだけである。このため、溶剤と組み合わせてポリカーボネートに対する非溶剤をしようすることもできる。溶剤パートナーが第2の有機相を形成するのであれば、水相に溶解可能なテトラヒドラフラン、1,3/1,4−ジオキサンまたは1,3−ジオキソランのような溶剤を溶剤としてここで使用してもよい。
【0142】
完全に反応してもせいぜい微量(<2ppm)ではあるがクロロギ酸エステルを含んでいる少なくとも二層性反応混合物が、相分離したままになる。水性アルカリ相は、全体的または部分的に水相としてポリカーボネート合成に戻すことができ、或いは、溶剤および少量の触媒を分離および再循環する排水処理に送ってもよい。他の変形例において、一度有機性不純物、特に溶剤および高分子残留物が分離され、選択的に、例えば水酸化ナトリウムを加えることにより特定のpH値に調整した後、水相が必要であれば合成に戻される一方、例えば塩素アルカリ電気分解に送られ得る塩類が分離される。
【0143】
ポリカーボネートを含む有機相は、アルカリ、イオンまたは触媒の混入物が取り除かれてもよい。1以上の沈殿処理の後も、有機相は、ある割合の微細な水滴の水性アルカリ相および触媒、通常はtert−アミンを依然として含む。沈殿処理は、必要であれば沈殿タンク、撹拌タンク反応器、コアレッサーまたは分離器或いはそれらの組み合わせを通過する有機相によって補助してもよく、それぞれまたは個別の分離行程において能動的または受動的混合エレメントを使用する所定の状況で水を分散してもよい。
【0144】
このアルカリ、水相のコア分離の後、有機相は、1回以上希酸、鉱酸、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸および/またはスルホン酸で洗浄される。水性鉱酸が好ましく、特に塩酸、亜リン酸およびリン酸、または、それらの混合物が好ましい。これらの酸の濃度は、0.001から50重量%でなければならず、好ましくは0.01から5重量%である。
【0145】
有機相は、さらに、脱イオン蒸留水で繰り返し洗浄される。必要であれば水相が分散された有機相の分離は、個々の洗浄行程の後で、沈殿タンク、撹拌タンク反応器、コアレッサーまたは分離器、或いはそれらの組み合わせによって進行し、洗浄水が洗浄行程の間に必要に応じて能動的または受動的混合エレメントを使用して分散される。
【0146】
これらの洗浄行程の間、或いは、洗浄後にも、必要に応じて、酸が、好ましくは高分子溶液の基礎となる溶剤に溶解したものが加えられる。ここでは、必要に応じて混合物としても使用される塩化水素ガスおよびリン酸または亜リン酸が、好ましくは使用される。
【0147】
本発明によるプロセスによって得られたプラスチック組成物は、従来の添加剤および添加物(例えば、助剤および補強材)で改質してもよい。助剤および補強材の目的は、耐用寿命(例えば、加水分解および安定剤の低下)を延長、色安定性(例えば、熱および紫外線安定性)の改善、プロセスの簡素化(例えば、モールド剥離剤、流れ助剤)、利用特性の改善(例えば、帯電防止剤)、難燃性の改善、外観への影響(例えば、有機色素、顔料)、または、特定の応力への高分子の特性の適応(衝撃改質剤、微細ミネラル、繊維質材料、シリカ微粉、硝子繊維、および、炭素繊維)である。
することである。
【0148】
以下の例は、本発明を示す役目を果たすが、例示であって限定と見なしてはならない。
【0149】
従来技術による2行路エルドメンガースクリュ形状を備えるスクリュエレメント、および、新規なスクリュ形状を備える本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントの圧力形成能力、所用動力および最大温度上昇は、流れシミュレーションの補助により計算された。
【0150】
当業者には知られており、非特許文献1の129から146頁に見られるように、搬送エレメント、混練エレメントおよび混合エレメントのようなスクリュエレメントの運転挙動は、圧力差−処理量特性および動力−処理量特性によって記述してもよい。異なるエクストルーダサイズへの転用を簡単にするために、圧力差、動力および処理量の変数は、しばしば、無次元数が使用される。ニュートン流動するプラスチック組成物の場合、圧力差と処理量との間および動力と処理量との間の両方に線形の相関がある。圧力差−処理量特性において、軸との交点には、A1およびA2が付されている(非特許文献1、133頁)。運転点A1は、スクリュエレメント定格処理量を示す。運転点A2は、処理量がないときの圧力形成能力を示す。動力−処理量特性において、軸との交点には、B1およびB2が付されている(非特許文献1、136頁)。点B1は、タービン点と呼ばれる。処理量がB1より多いとき、動力はスクリュに依存する。運転点B2は処理量がないときに必要な動力を示す。
【0151】
圧力形成領域において、与えられた動力の一部は、流れの力に変換されてもよい。与えられた動力の残りは散逸する。流れの力は、処理量と圧力差との積で算出される。当業者であれば気付くように、軸との交点A1およびA2における流れの力は、圧力差が0に等しい(A1)か、処理量が0に等しい(A2)ので、それぞれ0に等しい。A1とA2との間の領域において、圧力差および出力の両方は、0より大きく、正の流れの力をもたらす。処理量により与えられる運転点の流れの力を、この運転点におけるスクリュによる出力で割れば、この運転点における圧力形成効率が得られる。処理量について効率を微分し、0になる点を見つけることにより、スクリュエレメントの最大効率が見つけられる。
【0152】
スクリュエレメントの対の内側の流れは、圧力形成能力と所用動力とについて市販ソフトウェア「フルーエント(Fluent)」バージョン6.3.26を使用して計算され、最大温度上昇についてオープンソースソフトウェアツールキット「オープンフォーム(Open FOAM)」バージョン1.5を使用して計算された。2軸スクリュエクストルーダの流れシミュレーションの導入は、例えば、非特許文献1の147−168頁に見られる。
【0153】
流れシミュレーションは、いずれの場合にも、長さがピッチの半分に等しいスクリュエレメントを使用する解析によって行われた。流れシミュレーションの間、それらのスクリュエレメントは、得られる流れの状態を流体力学的に計算するために、軸方向の始点と軸方向の終点に周期的な制約が設けられた。
【0154】
ニュートン流動する流体は、プラスチック組成物に使用される。使用した材料データは、例えば、文献「高分子合成(Polymeraufbereitung)」、VDI−K、VDI−フェルラーク社(VDI-K, VDI-Verlag)、2002年の159頁から得られるような、典型的な値である。プラスチック組成物の密度は1000kg/mである。プラスチック組成物の粘度は、1000Pa*sである。プラスチック組成物の熱伝導率は、0.2W/m/Kである。プラスチック組成物の熱容量は、2000Jkg/Kである。
【実施例】
【0155】
[比較例1]
従来技術による搬送エレメントの幾何学形状は、図17aから17cから推察される。
【0156】
図17aは、従来技術によるエルドメンガースクリュ形状を備えるスクリュエレメントのスクリュ形状の4分の1の断面を示す。図の中央に、xy座標系が配置されており、その原点は、スクリュ形状の回転点に位置する。スクリュ形状の円弧は、それぞれの円弧の番号が付された太い実線で図示されている。円弧の中心点は、小さい円で図示されている。円弧の中心点は、関連する円弧の始点および終点と細い実線で接続されている。直線FPが細い点線で図示されている。無次元外側スクリュ半径は、細い破線で示されており、その数値は、有効数字4桁で図の右下に示されている。図の右隣に、半径R、角度αおよび円弧中点のx座標およびy座標MxおよびMyが、それぞれの円弧について有効数字4桁で記載されている。これらの詳細は、スクリュ形状を曖昧でなく規定する。スクリュ形状は、x軸およびy軸について鏡写しであり、そのスクリュ形状全体は、図示した4分の1をx軸およびy軸について鏡写しにすることによって得られる。
【0157】
そのスクリュ形状の4分の1が合計n本の円弧からなるスクリュ形状は、n円弧スクリュ形状と記載される。
【0158】
図17aにおいて、n円弧スクリュ形状の円弧は、先のn/2本の円弧が1からn/2までの連続する昇順の番号が付けられ、後のn/2本の円弧が(n/2)’から1’までの連続する降順の番号が付けられるように、番号が付けられている。円弧n/2および円弧(n/2)’は、それぞれ直線FPに接する。スクリュ形状の円弧iは、スクリュ形状の円弧i’に対応する。円弧i’の半径は、中心線距離から円弧1の半径を引いた差で計算され、よって、R_i’=A−R_iである。円弧1’の角度は、円弧iの角度と等しく、よって、α_i’=α_iである。これは、円弧jを有する頂部領域が円弧j’を有する溝領域と等しいことを意味する。これは、さらに、円弧jを有する溝領域は円弧j’を有する頂部領域と等しいことを意味する。
【0159】
図17aは、従来技術による2行路エルドメンガースクリュ形状の4本の円弧からなる4分の1を示す。エルドメンガースクリュ形状の特徴は、半径R_1=RA、半径R_2=0、半径R_2’=A=1および半径R1’=A−RA=RIであることである。角度α_1,α_2,α_2’およびα_1’は、外側スクリュ半径および中心線距離に依存する。角度α_1は、2行路エルドメンガースクリュ形状の頂角の半分に等しい。エルドメンガースクリュ形状は、半径R_2の位置に角を有する。角の大きさは、角度α_2によって定められる、つまり、円弧1から円弧2’への移行は、角度α_2の回転によってもたらされる。
【0160】
図17aにおいて、無次元外側半径RAは、0.6069である。頂角は、α_1=0.1829である。
【0161】
図17bは、搬送エレメントとして構成され、そのスクリュ形状が図17aに基づくスクリュエレメントの対を示す。2つの搬送エレメントの中心線距離は、寸法的にはa=26.2mm、無次元ではA=a/a=1である。2つの搬送エレメントの間のクリアランスは、寸法的にはs=0.2mm、無次元ではS=s/a=0.0076である。搬送エレメントとバレルとの間のクリアランスは、寸法的にはd=0.1mm、無次元ではS=d/a=0.0038である。搬送エレメントのピッチは、寸法的にはt=28mm、無次元ではT=t/a=1.0687である。搬送エレメントの長さは、寸法的にはl=14mm、無次元ではL=l/a=0.5344であり、角度πだけのスクリュ形状の回転に対応する。バレルは、細い実線で2つの搬送エレメントの左右に図示されている。バレル直径は、寸法的にはdg=31.8mm、無次元ではDG=dg/a=2*RA=1.2137である。利用できるコンピュータグリッドが2つの搬送エレメントの表面にさらに示されており、そのグリッドは、2軸および多軸スクリュエクストルーダにおける流れの計算に使用されてもよい。グリッドの数は、円周方向180、軸方向に90である。
【0162】
図17cは、図17bに係るスクリュエレメントの対の平面図を示す。搬送エレメントとバレルとの間の自由空間容積は、2軸および多軸スクリュエクストルーダにおける流れの計算に使用されてもよい利用できるコンピュータグリッドが付けられている。グリッドの数は、円周方向180、径方向に10である。2つのスクリュエレメントの回転軸は小さい円で示されている。
【0163】
図17bおよび17cに示されたコンピュータグリッドを比較すると、圧力差−処理量特性および動力−処理量特性が、円周方向に320のグリッド、軸方向に160のグリッドおよび径方向に12のグリッドを含むコンピュータグリッドを使用して計算される。圧力差−処理量特性の切片は、次のように算出された:A1=0.263およびA2=4250。動力−処理量特性の切片は、次のように算出された:B1=1.033およびB2=4390。圧力形成の間の最大効率は、7.32%と算定された。
【0164】
図17bおよび17cに係るコンピュータグリッドは、最大温度上昇を算出するために使用された。速度領域および圧力領域は、ゼロベクトルで初期化された。回転軸に沿った圧力勾配は、定格処理量A1を処理量として達成するように、0に設定された。温度領域は、300℃で初期化された。バレル壁と2つの搬送エレメントの表面との両方は、断熱性であると仮定した。温度領域の形成は、エクストルーダの2つの回転において測定された。刻み幅は、0.000925926sであった。2軸スクリュエクストルーダの回転速度は、360rpmであった。
【0165】
計算範囲での最大温度には、2回転後に到達した。最大温度は、2つの搬送エレメントの表面において、特に、バレルをまさに清掃している頂部領域において実質的に同じレベルである。計算によれば、最大温度は約400℃である。
【0166】
[例2]
本発明にしたがって使用される搬送エレメントの幾何学形状は、図18aから18cより推察される。
【0167】
図18aは、本発明にしたがって使用されるスクリュエレメントのスクリュ形状の4分の1の断面を示す。図の構造は、先に詳細に説明した図17aと同様である。図18aにおいて、スクリュ形状の4分の1は、2本の円弧からなる。このスクリュ形状のさらなる特徴は、スクリュ形状が角を有しないこと、および、外側スクリュ半径上に位置する頂部領域の頂角が0に等しいことである。無次元外側スクリュ半径は、RA=0.6069である。
【0168】
図18bは、搬送エレメントとして構成され、そのスクリュ形状が図18aに基づくスクリュエレメントの対を示す。2つの搬送エレメントの中心線距離は、寸法的にはa=26.2mm、無次元ではA=a/a=1である。2つの搬送エレメントの間のクリアランスは、寸法的にはs=0.2mm、無次元ではS=s/a=0.0076である。搬送エレメントとバレルとの間のクリアランスは、寸法的にはd=0.1mm、無次元ではS=d/a=0.0038である。搬送エレメントのピッチは、寸法的にはt=28mm、無次元ではT=t/a=1.0687である。搬送エレメントの長さは、寸法的にはl=14mm、無次元ではL=l/a=0.5344であり、角度πだけのスクリュ形状の回転に対応する。バレルは、細い実線で2つの搬送エレメントの左右に図示されている。バレル直径は、寸法的にはdg=31.8mm、無次元ではDG=dg/a=2*RA=1.2137である。利用できるコンピュータグリッドが2つの搬送エレメントの表面にさらに示されており、そのグリッドは、2軸および多軸スクリュエクストルーダにおける流れの計算に使用されてもよい。グリッドの数は、円周方向180、軸方向に90である。
【0169】
図18cは、図18bに係るスクリュエレメントの対の平面図を示す。搬送エレメントとバレルとの間の自由空間容積は、2軸および多軸スクリュエクストルーダにおける流れの計算に使用されてもよい利用できるコンピュータグリッドが付けられている。グリッドの数は、円周方向180、径方向に10である。2つのスクリュエレメントの回転軸は小さい円で示されている。
【0170】
図18bおよび18cに示されたコンピュータグリッドを比較すると、圧力差−処理量特性および動力−処理量特性が、円周方向に320のグリッド、軸方向に160のグリッドおよび径方向に12のグリッドを含むコンピュータグリッドを使用して計算される。圧力差−処理量特性の切片は、次のように算出された:A1=0.245およびA2=4530。動力−処理量特性の切片は、次のように算出された:B1=0.803およびB2=3640。圧力形成の間の最大効率は、9.05%と算定された。
【0171】
驚くべきことに、単に3次元で線形な最小化した頂部領域にも拘わらず、本発明にしたがって使用される搬送エレメントの圧力形成能力は、例1の従来技術による2行路エルドメンガースクリュ形状を有する搬送エレメントの場合よりも約6.6%だけ大きいだけである。本発明にしたがって使用される搬送エレメントにより、所望のまたは必要な圧力形成をより短い圧力形成領域において達成することができ、それによりエクストルーダの構造が短くなり、或いは、一定のエクストルーダの長さにおいて、例えば脱気領域または混合領域のような他の処理領域が長くなり、プラスチック合成におけるそれらの作用を増大できる。
【0172】
さらに、本発明にしたがって使用される搬送エレメントの動力パラメータB2は、例1の従来技術による2行路エルドメンガースクリュ形状を有する搬送エレメントよりも約17%低い。低いエネルギー入力は温度上昇、および結果的な望まざる高分子の損傷を低減する。
【0173】
図18bおよび18cに係るコンピュータグリッドは、最大温度上昇を算出するために使用された。速度領域および圧力領域は、ゼロベクトルで初期化された。回転軸に沿った圧力勾配は、定格処理量A1を処理量として達成するように、0に設定された。温度領域は、300℃で初期化された。バレル壁と2つの搬送エレメントの表面との両方は、断熱性であると仮定した。温度領域の形成は、エクストルーダの2つの回転において測定された。刻み幅は、0.000925926sであった。2軸スクリュエクストルーダの回転速度は、360rpmであった。
【0174】
計算範囲で最大温度には、2回転後に到達した。最大温度は、2つの搬送エレメントの表面において、特に、丁度咬合領域に位置し、2つのバレル穴貫通し合う最小化した頂部領域に隣接する表面において、実質的に同じレベルである。計算によれば、まさにバレルを清掃している最小化した頂部の最大温度は約340℃である。
【0175】
例1の従来技術による搬送エレメントと比較して、本発明にしたがって使用される例2の搬送エレメントによって約35℃低いピーク温度が達成された。頂部領域に関して、60℃にもなる温度差が確認された。頂部領域に関して、約60℃にもなる温度差が確認された。高分子損傷反応の損傷速度定数が温度上昇10℃毎に倍になるとの前提に基づくと、例1に係る搬送エレメントのスクリュ頂部の領域では、高分子の損傷が、例2に係る搬送エレメントのスクリュ頂部の領域におけるよりも約50倍早く発生する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対になって共回転し、対になって完全に自己払拭し、2以上のスクリュ行路を有するスクリュを備える多軸スクリュエクストルーダ用のスクリュエレメントを使用してプラスチック組成物を押し出しするプロセスであって、スクリュ形状は、それぞれ、断面全体に亘って常に微分可能な形状曲線により表されることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
断面全体に亘る前記スクリュ形状は、4本以上の円弧からなり、前記円弧は、それらの始点および終点において接線方向に互いに接続されていることを特徴とする請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
形成スクリュ形状および被形成スクリュ形状は、互いの中心線距離aを有し、
前記形成スクリュ形状の前記円弧の数は、nであり、
前記形成スクリュ形状の外側半径raは、0より大きく(ra>0)、前記中心線距離より小さく(ra<a)、
前記形成スクリュ形状のコア半径は、0より大きく(ri>0)、前記外側半径ra以下であり(ri≦ra)、
前記形成スクリュ形状の全ての前記円弧は、互いに接線方向に接続され、
前記円弧は、閉じたスクリュ形状、即ち、全ての前記円弧jの角度αの合計が2πに等しく、πは円周率(π≒3.14459)であり、
前記円弧は、凸型のスクリュ形状を形成し、
前記形成スクリュ形状のそれぞれの前記円弧は、前記外側半径raとコアh半径riとを有する円環の中または範囲内に位置し、その中心点が前記形成スクリュ形状の回転点上に位置し、
前記形成スクリュ形状の前記円弧の少なくとも1つは、点Pにおいて前記形成スクリュ形状の前記外側半径raに当接し、
前記形成スクリュ形状の前記円弧の少なくとも1つは、点Pにおいて前記形成スクリュ形状の前記外側半径raに当接し、
前記被形成スクリュ形状の前記円弧の数n’は、前記形成スクリュ形状の前記円弧の数nに等しく、
前記被形成スクリュ形状の外側半径ra’は、前記中心線距離から前記形成スクリュ形状の前記コア半径を引いた差に等しく(ra’=a−ri)、
前記被形成スクリュ形状のコア半径ri’は、前記中心線距離から前記形成スクリュ形状の前記外側半径を引いた差に等しく(ri’=a−ra)、
前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の角度α’は、前記形成スクリュ形状のj番目の前記円弧の角度αに等しく、前記jおよび前記j’は、それぞれ1から前記円弧の数nまたはn’までの全ての値を取る整数であり、
前記被形成スクリュ形状のj’番目の半径r’と前記形成スクリュ形状のj番目の半径rとの合計は、前記中心線距離aに等しく、前記jおよび前記j’は、それぞれ1から前記円弧の数nまたはn’までの全ての値を取る整数であり、
前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の中心点は、中心線距離aに等しい前記形成スクリュ形状のj番目の前記円弧の中心点からの距離にあり、前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の中心点は、前記形成スクリュ形状の回転点から前記形成スクリュ形状のj番目の前記円弧の中心点までの距離に等しい、前記被形成スクリュの回転点からの距離にあり、前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の中心点と前記形成スクリュのj番目の前記円弧の中心点との間の接続線は、前記被形成スクリュの回転点と前記形成スクリュの回転点との間の接続線と平行な線であり、前記jおよび前記j’は、それぞれ1から前記円弧の数nまたはn’までの全ての値を取る整数であり、
前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の始点は、前記形成スクリュ形状のj番目の前記円弧の始点が前記形成スクリュのj番目の前記円弧の中心点に対して有する方向と反対向きの、前記被形成スクリュ形状のj’番目の前記円弧の中心点に対する方向に位置し、前記jおよび前記j’は、それぞれ1から前記円弧の数nまたはn’までの全ての値を取る整数である、ことを特徴とする請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記スクリュエレメントは、360°/(2*Z)の1区分において点対称であり、前記形状曲線は、少なくとも2つの円弧で構成され、Zは、スクリュ形状の行路の数であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
前記スクリュエレメントは、360°/(2*Z)の1区分において線対称であり、前記形状曲線は、少なくとも2つの円弧で構成され、Zは、スクリュ形状の行路の数であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項6】
前記区分における前記形状曲線は、2つの円弧からなり、点PFPにおいて前記円弧は、常に微分可能に互いに接続され、前記点PFPは、該点PFPおける垂線が2つの前記円弧の中心点を通過する直線FPの上に位置することを特徴とする請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
回転点D、スクリュエレメントの外側半径raを有する回転点周りの円上に位置する点P、前記スクリュエレメントの内側半径riを有する回転点周りの円上に位置する点P、点PおよびDを通る直線DPA、および、点PおよびDを通る直線DPを備えるスクリュエレメントは、点Dを原点に、点Pをx軸上に置く直交座標系を使用するとき、前記垂線は、1つの前記円弧の中心において前記直線DPと交差し、他の前記円弧の中心において前記直線DPと交差すること、および、前記直線FPは、前記回転点から前記中心線距離の半分に相当する距離にあり、ラジアンで−1/tan(π(2*Z))の傾斜を有することを特徴とする請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記スクリュエレメントは、混合エレメントまたは搬送エレメントとして構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のプロセス。
【請求項9】
前記スクリュエレメントは、混練エレメントとして構成されていることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
前記スクリュエレメントは、脱気領域または搬送領域において使用されることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のプロセス。
【請求項11】
スクリュ形状の直径に対して0.1から0.001の範囲のクリアランスが、前記スクリュエレメントとバレルとの間、および/または、隣接するスクリュエレメントの間に存在することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載のプロセス。
【請求項12】
前記プラスチック組成物は、熱可塑性プラスチックまたはエラストマであることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
使用される熱可塑性プラスチックは、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、特にポリブチレンテレフタレートおよびポリエチレンテレフタレート、ポリエーテル、熱可塑性ポリウレタン、ポリアセタール、フッ素重合体、特にフッ化ポリビニリデン、ポリエーテルスルフォン、ポリオレフィン、特にポリエチレンおよびポリプロピレン、ポリイミド、ポリアクリル、特にポリ(メチル)メタアクリル、酸化ポリフェニレン、硫化ポリフェニレン、ポリエーテルケトン、ポリアリールエーテルケトン、スチレンポリマー、特にポリスチレン、スチレン共重合体、特にスチレンアクリロニトリル共重合体、アクリロニトリルブタジエンスチレンブロック共重合体、塩化ポリビニル、または、上記熱可塑性プラスチックの少なくとも2つの混合物であることを特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
ポリカーボネートまたはポリカーボネートと他の高分子との混合物が前記熱可塑性プラスチックとして使用されることを特徴とする請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ポリカーボネートは、相界面プロセスまたはエステル交換プロセスによって製造されたことを特徴とする請求項14に記載のプロセス。
【請求項16】
使用される前記エラストマは、スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブタジエンアクリロニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴム、酢酸エチレンビニルゴム、ポリウレタンゴム、熱可塑性ポリウレタン、グッタペルカ、アクリルゴム、フッ化ゴム、シリコンゴム、硫化ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、或いは、上記エラストマの少なくとも2つの組み合わせであることを特徴とする請求項12に記載のプロセス。
【請求項17】
充填剤または補強材または高分子添加剤または有機色素または無機色素、或いは、それらの混合物が、前記高分子に添加されていることを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載のプロセス。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図4c】
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【図4d】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図6a】
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【図6b】
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【図7】
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【図8】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図9d】
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【図10a】
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【図10b】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17a】
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【図17b】
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【図17c】
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【図18a】
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【図18b】
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【図18c】
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【公表番号】特表2011−524283(P2011−524283A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513932(P2011−513932)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004248
【国際公開番号】WO2009/153000
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】