プラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置および記憶媒体
【課題】形状性良くかつ高いエッチングレートで被エッチング膜をエッチングして高アスペクト比のホールを形成することができるプラズマエッチング方法を提供すること。
【解決手段】プラズマエッチングによりエッチング対象膜にホールを形成するにあたり、プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして処理容器内にプラズマを生成し、かつ直流電源から負の直流電圧を上部電極に印加する第1条件と、プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ直流電源から負の直流電圧を上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返し、第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、第2条件により負イオンを生成し、直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することによりホール内の正電荷を中和する。
【解決手段】プラズマエッチングによりエッチング対象膜にホールを形成するにあたり、プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして処理容器内にプラズマを生成し、かつ直流電源から負の直流電圧を上部電極に印加する第1条件と、プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ直流電源から負の直流電圧を上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返し、第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、第2条件により負イオンを生成し、直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することによりホール内の正電荷を中和する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等の被処理基板にプラズマエッチングを施すプラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハに形成された所定の層に所定のパターンを形成するために、レジストをマスクとしてプラズマによりエッチングするプラズマエッチング処理が多用されている。
【0003】
このようなプラズマエッチングを行うためのプラズマエッチング装置としては、種々のものが用いられているが、その中でも容量結合型平行平板プラズマエッチング装置が主流である。
【0004】
容量結合型平行平板プラズマエッチング装置は、チャンバ内に一対の平行平板電極(上部および下部電極)を配置し、処理ガスをチャンバ内に導入するとともに、電極の少なくとも一方に高周波電力を印加して電極間に高周波電界を形成し、この高周波電界により処理ガスのプラズマを生成して半導体ウエハの所定の層に対してプラズマエッチングを施す。
【0005】
具体的には、プラズマ形成用の相対的に高い周波数の高周波電力と、イオン引き込み用の相対的に低い周波数の高周波電力を印加することにより、適切なプラズマ状態を形成するプラズマエッチング装置が知られており、これにより、高選択比で再現性の高いエッチング処理が可能である(例えば特許文献1)。そして、この種のエッチングでは、プラズマ中で正イオンが支配的となる処理ガスを用いてエッチングが行われる。
【0006】
ところで、近時、半導体デバイスの微細化が進み、アスペクト比が20以上のHARC(High Aspect Ratio Contact)エッチングが求められている。このようなHARCエッチングにおいては、エッチングマスクであるフォトレジストは負に帯電しており、エッチング初期にはエッチング面において電荷が中和しているが、エッチングが進行してアスペクト比が高くなると、ホールの底に正イオンがたまりエッチング面が正に帯電するようになる。このため、エッチングの促進に大きな役割を持つ正イオンがホール内で反発により曲がってしまい、エッチング形状の曲がりや歪みが生じるようになる。また、正イオンがホール底部に到達し難くなるため、エッチングレートの低下がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−173993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、形状性良くかつ高いエッチングレートで被エッチング膜をエッチングして高アスペクト比のホールを形成することができるプラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置を提供することを目的とする。
また、このようなプラズマエッチング方法を実行させるプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を用いて、エッチング対象膜にホールを形成するプラズマエッチング方法であって、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返し、前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和することを特徴とするプラズマエッチング方法を提供する。
【0010】
上記第1の観点において、前記プラズマエッチング装置は、前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けるようにすることが好ましい。また、この場合において、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の観点では、被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を用いて、エッチング対象膜にホールを形成するプラズマエッチング方法であって、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットから高周波電力を連続的に供給して前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1段階を行い、 その後、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返す第2段階を行い、前記第2段階において、前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和することを特徴とするプラズマエッチング方法を提供する。
【0012】
上記第2の観点において、前記プラズマエッチング装置は、前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、前記第1段階において、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットから連続的に第1の出力でバイアスを印加し、前記第2段階において、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けるようにすることが好ましい。また、このとき、前記第2段階において、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることが好ましい。
【0013】
上記第1および第2の観点において、前記第2条件の1回の時間が10μsec以上、50μsec以下であることが好ましい。また、前記第1の条件と前記第2条件との繰り返しは、パルス状で行うことができる。前記被処理体のエッチング対象膜の典型例としては絶縁膜を挙げることができる。
【0014】
本発明の第3の観点では、被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源と、前記プラズマ生成用の高周波電力印加ユニットを制御する制御部とを具備し、前記制御部は、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返すことを含むように制御し、その際に、前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和させることを特徴とするプラズマエッチング装置を提供する。
【0015】
上記第3の観点において、前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、前記制御部は、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオブにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることが好ましい。また、この場合において、前記制御部は、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることが好ましい。
【0016】
本発明の第4の観点では、被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を制御するための、コンピュータ上で動作するプログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第1の観点または第2の観点のプラズマエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記プラズマエッチング装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして処理容器内にプラズマを生成し、かつ直流電源から負の直流電圧を上部電極に印加する第1条件と、プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返し、第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することによりホール内の正電荷を中和するので、第2条件の際にホール内の正電荷を中和した後に第1の条件でプラズマを生成した際に、正イオンはホール内で曲がることなく進行する。このため、良好なエッチング形状を得ることができ、エッチングが進行してアスペクト比が高くなることによるエッチングレート低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のプラズマエッチング方法を実施することが可能なプラズマエッチング装置を示す概略断面図。
【図2】図1のプラズマエッチング装置において第1の高周波電源に接続された第1の整合器の構造を示す図。
【図3】本発明のプラズマエッチング方法が適用される被処理体である半導体ウエハの構造例を示す断面図。
【図4】エッチング初期の被処理体の状態を模式的に示す断面図。
【図5】エッチングが進行した段階の被処理体の状態を模式的に示す断面図。
【図6】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング方法の第2段階における直流電源、第1の高周波電源、プラズマ発光強度、正イオン、負イオンの状態を示すタイミングチャート。
【図7】第2段階において、プラズマ生成用の第1の高周波電源をオフした際の状態を説明するための模式図。
【図8】第2段階において、プラズマ生成用の第1の高周波電源をオフした後にオンにした状態を説明するための模式図。
【図9】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング方法の第2段階におけるバイアス印加用の第2の高周波電力の好ましい印加形態を示す図。
【図10】プラズマ生成時にバイアス印加用の高周波電力をオン・オフさせる作用を説明するための図。
【図11】プラズマ生成時に高周波バイアスを印加した場合のプラズマ中およびウエハ表面電子エネルギーを示す図。
【図12】プラズマ生成時に高周波バイアスを印加しない場合のプラズマ中およびウエハ表面電子エネルギーを示す図。
【図13】本発明のプラズマエッチング方法を実施することが可能な他のプラズマエッチング装置を示す概略断面図。
【図14】図13のプラズマエッチング装置において第1の高周波電源に接続された第1の整合器の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図1は、本発明のプラズマエッチング方法を実施することが可能なプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【0020】
このプラズマエッチング装置は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されており、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる略円筒状のチャンバ(処理容器)10を有している。このチャンバ10は保安接地されている。
【0021】
チャンバ10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上に例えばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成し、その上に被処理基板である半導体ウエハWが載置される。
【0022】
サセプタ16の上面には、半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなる電極20を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んだ構造を有するものであり、電極20には直流電源22が電気的に接続されている。そして、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により半導体ウエハWが静電チャック18に吸着保持される。
【0023】
静電チャック18(半導体ウエハW)の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング(補正リング)24が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材26が設けられている。
【0024】
サセプタ支持台14の内部には、例えば円周上に冷媒室28が設けられている。この冷媒室には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管30a,30bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によってサセプタ上の半導体ウエハWの処理温度を制御することができる。
【0025】
さらに、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0026】
下部電極であるサセプタ16の上方には、サセプタ16と対向するように平行に上部電極34が設けられている。そして、上部および下部電極34,16間の空間がプラズマ生成空間となる。上部電極34は、下部電極であるサセプタ16上の半導体ウエハWと対向してプラズマ生成空間と接する面、つまり対向面を形成する。
【0027】
この上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介して、チャンバ10の上部に支持されており、サセプタ16との対向面を構成しかつ多数の吐出孔37を有する電極板36と、この電極板36を着脱自在に支持し、導電性材料、例えばアルミニウムからなる水冷構造の電極支持体38とによって構成されている。電極板36は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体が好ましく、また、後述するようにレジストを強化する観点からはシリコン含有物質が好ましい。このような観点から、電極板36はシリコンやSiCで構成されるのが好ましい。電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられ、このガス拡散室40からはガス吐出孔37に連通する多数のガス通流孔41が下方に延びている。
【0028】
電極支持体38にはガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口62が形成されており、このガス導入口62にはガス供給管64が接続され、ガス供給管64には処理ガス供給源66が接続されている。ガス供給管64には、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)68および開閉バルブ70が設けられている(MFCの代わりにFCSでもよい)。そして、処理ガス供給源66から、エッチングのための処理ガスとして、例えばC4F8ガスのようなフロロカーボンガス(CxFy)がガス供給管64からガス拡散室40に至り、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してシャワー状にプラズマ生成空間に吐出される。すなわち、上部電極34は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0029】
上部電極34には、ローパスフィルタ(LPF)46aを介して可変直流電源50が電気的に接続されている。可変直流電源50は、負極が上部電極34側となるように接続されており、上部電極34にマイナスの電圧を印加するようになっている。可変直流電源50からの給電はオン・オフスイッチ52によりオン・オフが可能となっている。また、可変直流電源50の電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ52のオン・オフはコントローラ51により制御されるようになっている。ローパスフィルタ(LPF)46aは後述する第1および第2の高周波電源からの高周波をトラップするものであり、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成される。
【0030】
チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体10aが設けられている。
【0031】
下部電極であるサセプタ16には、第1の整合器46を介して、第1の高周波電源48が電気的に接続されている。第1の高周波電源48は、27〜100MHzの周波数、例えば40MHzの高周波電力を出力する。第1の整合器46は、第1の高周波電源48の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源48の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0032】
また、下部電極であるサセプタ16には、第2の整合器88を介して第2の高周波電源90も電気的に接続されている。この第2の高周波電源90から下部電極であるサセプタ16に高周波電力が供給されることにより、半導体ウエハWにバイアスが印加され半導体ウエハWにイオンが引き込まれる。第2の高周波電源90は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数、例えば3MHzの高周波電力を出力する。第2の整合器88は第2の高周波電源90の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第2の高周波電源90の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0033】
第1の高周波電源48、第2の高周波電源90、第1の整合器46および第2の整合器88には、RF制御器95が接続されており、これら第1の高周波電源48、第2の高周波電源90、第1の整合器46および第2の整合器88がRF制御器95により制御されるようになっている。具体的には、RF制御器95は、第1の高周波電源48のオン・オフおよび出力の制御が可能となっており、第1の高周波電源48を連続的にオンにしてプラズマを生成する状態、および交互にオン・オフし、例えばパルス状として、プラズマが存在している状態とプラズマが消滅した状態を交互に形成する状態に制御することが可能となっている。また、RF制御器95は、バイアス用の第2の高周波電源90のオン・オフおよび出力の制御が可能となっており、プラズマ処理中に所定の出力で連続的にバイアスを印加する状態、および第2の高周波電源90の出力を第1の高周波電源48のオン・オフに同期して、例えばパルス状に出力を制御することが可能となっている。第2の高周波電源90を第1の高周波電源48のオン・オフに同期させて出力を制御する際に、交互にオン・オフするようにしてもよいし、完全にオフにせずに高出力と低出力とが交互になるようにしてもよい。
【0034】
この第1の整合器46は、図2に示すように、第1の高周波電源46の給電ライン96から分岐して設けられた第1の可変コンデンサ97と、給電ライン96のその分岐点の第1の高周波電源48側に設けられた第2の可変コンデンサ98と、分岐点の反対側に設けられたコイル99とを有している。本実施形態の場合、通常のプラズマエッチングと異なり、第1の高周波電源48は、高周波電力が所定周期でオン・オフされるモードの際に、RF制御器95が、第1の整合器46における整合動作をこのオン・オフに同期させて切り換えるように制御する。
【0035】
この場合に、RF制御器95は、第1の高周波電力供給ユニット48をオン・オフモードで動作させているときに、オフの際には第1の整合器46の動作を行わないように制御し、オンの際には第1の整合器46が第1の高周波電源48の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスとが一致するような動作を行うように制御する。
【0036】
第2の整合器88についても、基本的に第1の整合器46と同様に構成されており、第2の高周波電源90の出力を第1の高周波電源48のオン・オフに同期させて出力制御する際に、RF制御器95が、第2の整合器88における整合動作をこの出力制御に同期させて切り換えるように制御する。
【0037】
この場合に、RF制御器95は、第2の高周波電源90を第1の高周波電源48のオン・オフに同期させて出力制御させているときに第2の整合器88の動作を行わないように制御する。ただし、第2の整合器88の動作が十分に速い場合には、高出力の際に第2の整合器88が第2の高周波電源90の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスとが一致するような動作を行うように制御してもよい。
【0038】
チャンバ10の底部には排気口80が設けられ、この排気口80に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧可能となっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWの搬入出口85が設けられており、この搬入出口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。また、チャンバ10の内壁に沿ってチャンバ10にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するためのデポシールド11が着脱自在に設けられている。すなわち、デポシールド11がチャンバ壁を構成している。また、デポシールド11は、内壁部材26の外周にも設けられている。チャンバ10の底部のチャンバ壁側のデポシールド11と内壁部材26側のデポシールド11との間には排気プレート83が設けられている。デポシールド11および排気プレート83としては、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆したものを好適に用いることができる。
【0039】
デポシールド11のチャンバ内壁を構成する部分のウエハWとほぼ同じ高さの部分には、グランドにDC的に接続された導電性部材(GNDブロック)91が設けられており、これにより異常放電防止効果を発揮する。なお、この導電性部材91は、プラズマ生成領域に設けられていれば、その位置は図1の位置に限られず、例えばサセプタ16の周囲に設ける等、サセプタ16側に設けてもよく、また上部電極34の外側にリング状に設ける等、上部電極近傍に設けてもよい。
【0040】
プラズマ処理装置の各構成部、例えば電源系やガス供給系、駆動系、さらにはRF制御器95等は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を含む制御部(全体制御装置)100に接続されて制御される構成となっている。また、制御部100には、オペレータがプラズマ処理装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース101が接続されている。
【0041】
さらに、制御部100には、プラズマ処理装置で実行される各種処理を制御部100の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部102が接続されている。処理レシピは記憶部102の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0042】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース101からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部102から呼び出して制御部100に実行させることで、制御部100の制御下で、プラズマ処理装置での所望の処理が行われる。なお、本発明の実施の形態で述べるプラズマ処理装置(プラズマエッチング装置)は、この制御部100を含むものとする。
【0043】
次に、このように構成されるプラズマ処理装置において、本発明に係る高アスペクト比のコンタクトホールのエッチング(HARCエッチング)について説明する。
【0044】
ここでは、例えば、図3に示すように、Si基板120上に絶縁膜121が形成され、その上のフォトリソグラフィによりパターン化されたフォトレジスト膜122がエッチングマスクとして形成された構造の半導体ウエハWを準備し、絶縁膜121にHARCエッチングを施す。
【0045】
まず、ゲートバルブ86を開状態とし、搬入出口85を介して上記構成の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入し、サセプタ16上に載置する。そして、排気装置84によりチャンバ10内を排気しながら、処理ガス供給源66から処理ガスを所定の流量でガス拡散室40へ供給し、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してチャンバ10内へ供給しつつ、その中の圧力を例えば0.1〜150Paの範囲内の設定値とする。この状態で、下部電極であるサセプタ16に第1の高周波電源48から27〜100MHzの周波数、例えば40MHzの比較的高い周波数のプラズマ生成用の高周波電力を印加し、かつ第2の高周波電源90から400kHz〜13.56MHzの周波数、例えば3MHzのプラズマ生成用の高周波電力よりも低い周波数のイオン引き込み用の高周波電力を連続的に印加し、さらに上部電極34に可変直流電源50から所定の直流電圧を連続的に印加して、半導体ウエハWに対して第1段階のエッチングを行う。このとき、半導体ウエハWは、直流電源22から静電チャック18の電極20に直流電圧を印加することにより静電チャック18に固定されている。
【0046】
ここで、処理ガスとしては、従来用いられている種々のものを採用することができ、例えばC4F8ガスのようなフロロカーボンガス(CxFy)に代表されるハロゲン元素を含有するガスを好適に用いることができる。さらに、ArガスやO2ガス等の他のガスが含まれていてもよい。
【0047】
上部電極34の電極板36に形成されたガス吐出孔37から吐出された処理ガスは、高周波電力により生じた上部電極34と下部電極であるサセプタ16間のグロー放電中でプラズマ化し、このプラズマで生成される正イオンやラジカルによって半導体ウエハWの絶縁膜121がエッチングされる。
【0048】
このとき、下部電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加することで、ウエハにより近いところでプラズマを生成することができ、またプラズマが広い領域に拡散せず処理ガスの解離を抑えることができるので、チャンバ10内の圧力が高くプラズマ密度が低いような条件であっても、エッチングレートを上昇させることができる。また、プラズマ形成用の高周波電力の周波数が高い場合でも、比較的大きなイオンエネルギーを確保することができるので高効率である。また、本実施形態のように下部電極にプラズマ形成用の高周波電力とイオン引き込み用の高周波電力を別々に印加することで、プラズマエッチングに必要なプラズマ形成の機能とイオン引き込みの機能とを独立に制御することが可能となる。したがって、高い微細加工性が要求されるエッチングの条件を満たすことが可能となる。さらに、プラズマ生成用に27MHz以上の高い周波数領域の高周波電力を供給しているので、プラズマを好ましい状態で高密度化することができ、より低圧の条件下でも高密度プラズマを生成することができる。さらにまた、このようにプラズマが形成される際に、コントローラ51により可変直流電源50から上部電極34に負の直流電圧を印加するので、プラズマ中の正イオンが上部電極34に衝突してその近傍に二次電子を生成させ、その二次電子を鉛直方向下方へ加速させて被処理体である半導体ウエハWに供給することができる。
【0049】
ところで、このようなエッチングは、プラズマ中の正イオンが支配的になって進行するが、エッチング初期では、エッチングにより形成されたコンタクトホール123は浅く、図4に示すように、フォトレジスト膜122がプラズマ中の電子により負に帯電しており、電子がエッチング面に到達するため、正イオンがエッチング面に供給されても電荷が中和する。したがって、エッチングが正常に進行する。
【0050】
しかしながら、エッチングが進行して行き、図5に示すように、コンタクトホール123のアスペクト比が高くなってくると、電子はコンタクトホール123内に到達し難くなり、コンタクトホール123内には正イオンがたまって、エッチング面は正に帯電した状態となる。
【0051】
この状態のままエッチングを進行させると、エッチングのためにコンタクトホール123内に進入した正イオンが、コンタクトホール123内の正の電荷との間の反発により曲がり、エッチング形状の曲がりや歪みが生じるようになる。また、正イオンがホール底部に到達し難くなるため、エッチングレートの低下がもたらされる。
【0052】
そこで、ある程度エッチングが進行した後、可変直流電源50から連続的に直流電圧を印加した状態のまま、プラズマ生成用の第1の高周波電源48を交互にオン・オフしてプラズマが生成した状態(プラズマオン)とプラズマが消失した状態(プラズマオフ)を交互に繰り返す第2の段階に切り替える。
【0053】
第2段階における直流電源50、第1の高周波電源48、プラズマ発光強度、正イオン、負イオンの状態を図6に示す。この図に示すように、第2の段階では、第1の高周波電源48をオフにするとプラズマ発光強度が低下しプラズマが消失する。このプラズマ発光強度の低下にともなって正イオンが減少し、残った電子により負イオンが増加して行く。上部電極34には負の直流電圧が印加されているため、図7に示すように、電極間の処理空間に存在する負イオンが直流電圧によりコンタクトホール123内に押し込まれてその中の正の電荷を中和する。そして、次に第1の高周波電源48をオンにした際には、コンタクトホール123内の正電荷が減少しているので、図8に示すように、正イオンはコンタクトホール123内を直進することが可能となる。したがって、このように、上部電極34に負の直流電圧を印加しつつ、第1の高周波電源48を交互にオン・オフして、プラズマオンの正イオンが支配的になるレジームと、プラズマオフの負イオンが支配的になるレジームとを交互に形成することにより、コンタクトホール123内での正イオンの曲がりが抑制され、エッチング形状を良好なものとすることができ、エッチングレートも高くすることができる。
【0054】
この場合に、プラズマ生成用の第1の高周波電源48をオフにしている時間は10μsec以上、50μsec以下が好ましい。10μsec以上とすることにより、正イオンが少なく負イオンが多い状態を形成することができるが、50μsecを超えるとエッチングに寄与していない時間が長くなって効率が低下してしまう。
【0055】
この第2段階においては、第1の高周波電源48のオン・オフに同期して、バイアス印加用の第2の高周波電源90の出力を変化させることが好ましい。具体的には、(1)第1の高周波電源48をオフにしてプラズマが消滅している間に、第2の高周波電源90をオフにするかまたは出力を低下させる期間を設ける。また、(2)これに加えて、第1の高周波電源48をオンにしてプラズマが生成している間に第2の高周波電源90をオフにするかまたは出力を低下させる期間を設ける。(1)および(2)の両方を行うシーケンス例としては、図9の(a)に示すように、プラズマ生成用の第1の高周波電源48をオフにしてプラズマが消滅している間には、第2の高周波電源90をオフまたは第1段階よりも低い出力とし、第1の高周波電源48をオンにしてプラズマを生成している間には、バイアス印加用の第2の高周波電源90の出力を、第1段階と同じ第1の出力と、オフ(出力0)または第1段階よりも低い出力である第2の出力とを交互に繰り返すようにするシーケンス、図9の(b)に示すように、第1の出力と第2の出力の切り替え周期を第1の高周波電源48のオン・オフ周期と合わせて、そのタイミングをずらすシーケンスを挙げることができる。上記(1)のみのシーケンス例としては、図9の(c)に示すように、第2の高周波電源の第1の出力と第2の出力の切り替えタイミングと、第1の高周波電源のオン・オフタイミングを完全に一致させるシーケンスを挙げることができる。
【0056】
上記(1)は、第1の高周波電源48をオフにしてプラズマが消滅している間に、第2の高周波電源90が第1の出力であると、下部電極であるサセプタ16上にかなりの厚さのプラズマシースが残存しておりこれが負イオンの障壁となるため、プラズマが消滅している間に第2の高周波電源90をオフまたは第2の出力にして、プラズマシースを0または極めて小さいものとし、そのような障壁が実質的にない状態とする。このため、上記第1の高周波電源48をオン・オフする効果をより高めることができる。
【0057】
一方、上記(2)については、以下の通りである。
第1の高周波電源48をオンにしてプラズマを生成している際には、上部電極34に負の直流電圧を印加することにより、プラズマ中の正イオンが上部電極34に衝突して二次電子を生成し、その二次電子が鉛直方向下方に加速されるが、バイアス印加用の第2の高周波電源90の出力が第1の出力の場合には、図10の(a)に示すように、下部電極であるサセプタ16上に厚いプラズマシースSが形成されているため、このプラズマシースSが二次電子の障壁となってコンタクトホール123内にほとんど到達しない。これに対し、バイアス印加用の第2の高周波電源90の出力が0またはより低い第2の出力の場合には、図10の(b)に示すように、プラズマシースSを薄くすることができ、二次電子の障壁が小さいので、上部電極34に印加された直流電圧によって鉛直方向下方に加速された二次電子をコンタクトホール123内に有効に到達させることができ、コンタクトホール123内の正の電荷を中和することができる。したがって、これによっても上記第1の高周波電源48をオン・オフする効果をより高めることができる。
【0058】
図11は2MHzの高周波バイアス(Vpp=1000V)を印加した場合のプラズマ中(ウエハより15mm上方)およびウエハ表面の電子エネルギーを示す図であり、(a)がプラズマ中、(b)がウエハ表面である。一方、図12は高周波バイアスを印加しなかった場合のプラズマ中(ウエハより15mm上方)およびウエハ表面の電子エネルギーを示す図であり、(a)がプラズマ中、(b)がウエハ表面である。これらの図から、高周波バイアスをオフにすることにより、DC印加によって上部電極34から放出され、加速されたエネルギーを持った二次電子に対する障壁を低減する効果を確認することができる。
【0059】
なお、プラズマオフによる負イオンを増加させる効果は、プラズマがほぼ完全に消失しなければ有効に発揮されないため、第1の高周波電源48をオフにした際にも印加されている直流電圧は、実質的にプラズマの生成に寄与しない大きさであることが必要である。また、シーケンスによっては、第1の高周波電源48をオフした際に、第2の高周波電源90からの高周波電力が印加されている場合もあるが、この際にもこの高周波電力は実質的にプラズマに寄与しない出力である必要がある。また、バイアス印加用の第2の高周波電源90の第2の出力は、プラズマシースの厚さが、二次電子が透過する程度の厚さになるような出力であれば必ずしも0(オフ)でなくてもよいが、0(オフ)にすることが好ましい。
【0060】
次に、本発明の方法を実施可能な他のプラズマエッチング装置について説明する。図13は、本発明のプラズマエッチング方法を実施可能な他のプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【0061】
このプラズマエッチング装置は、プラズマ生成用の高周波電力が上部電極に印加されるようになっている点が図1の装置とは異なっているが、他の構成については基本的に第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置と同様であるから、図13において、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施形態においては、プラズマを生成するための第1の高周波電源48′が第1の整合器46′および給電棒44を介して上部電極34に接続されている。第1の高周波電源48′は、第1の実施形態の第1の高周波電源48と同様の機能を有しており、その周波数は27〜100MHzの範囲が好ましい。第1の整合器46′は、第1の高周波電源48′の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源48′の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。第1の整合器46の出力端子は給電棒44の上端に接続されている。また、可変直流電源50も上記第1の整合器46′および給電棒44を介して上部電極34に接続されている。
【0063】
第1の整合器46′は、図14に示すように、第1の高周波電源48′の給電ライン49から分岐して設けられた第1の可変コンデンサ54と、給電ライン49のその分岐点の下流側に設けられた第2の可変コンデンサ56を有しており、これらにより上記機能を発揮する。また、第1の整合器46′には、直流電圧電流(以下、単に直流電圧という)が上部電極34に有効に供給可能なように、第1の高周波電源48′からの高周波電力(例えば40MHz)および第2の高周波電源90からの高周波電力(例えば3MHz)をトラップするフィルタ58が設けられている。すなわち、可変直流電源50からの直流電流がフィルタ58を介して給電ライン49に流れる。このフィルタ58はコイル59とコンデンサ60とで構成されており、これらにより第1の高周波電源48′からの高周波電力および第2の高周波電源90からの高周波電力がトラップされる。また、円筒状接地導体10aの天壁部分と給電棒44との間には筒状の絶縁部材44aが設けられており、これにより給電棒44と接地導体10aとが電気的に絶縁されている。
【0064】
上部電極34には、第1の高周波電源48′からの高周波電力(例えば40MHz)は通さずに第2の高周波電源90からの高周波電力(例えば3MHz)をグランドへ通すためのローパスフィルタ(LPF)92が電気的に接続されている。このローパスフィルタ(LPF)92は、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成されるが、1本の導線だけでも第1の高周波電源48からの高周波電力(60MHz)に対しては十分大きなリアクタンスを与えることができるので、それで済ますこともできる。一方、下部電極であるサセプタ16には、第1の高周波電源48′からの高周波電力(例えば40MHz)をグランドに通すためのハイパスフィルタ(HPF)94が電気的に接続されている。
【0065】
図13のプラズマエッチング装置においても、上部電極34に直流電圧を印加しつつ、プラズマ生成用の第1の高周波電源48′をオン・オフすることにより、プラズマオフの際にコンタクトホール内の正の電荷を負イオンで中和し、プラズマオンの際に正イオンを直進させることができる。また、バイアス印加用の第2の高周波電源90の出力を変化させることによって二次電子によるコンタクトホール中の正電荷の中和効果も得ることができる。
【0066】
この図13の装置では、上部電極34にプラズマ形成用の第1の高周波電力を供給し、下部電極であるサセプタ16にイオン引き込み用の第2の高周波電力を供給するので、プラズマの制御マージンを広くすることができ、また、上部電極34に27MHz以上の高い周波数領域の高周波電力を供給しているので、プラズマを好ましい状態で高密度化することができ、より低圧の条件下でも高密度プラズマを生成することができる。
【0067】
ただし、このように上部電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加する場合には、上部電極近傍にプラズマが生成されるので、チャンバ10内の圧力が高くプラズマ密度が低いような条件では、ウエハに対するエッチングレートを上昇させることが比較的困難である。
【0068】
なお、上記いずれの実施形態においても、上記第1の高周波電力および第2の高周波電力の採り得る周波数を例示すると、第1の高周波電力としては、27MHz、40MHz、60MHz、80MHz、100MHzを挙げることができ、第2の高周波電力としては、400kHz、800kHz、1MHz、2MHz、3MHz、13MHz、13.6MHzを挙げることができ、プロセスに応じて適宜の組み合わせで用いることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、プラズマエッチングに際し、上部電極34に直流電圧を印加しつつプラズマ生成用の高周波電力を連続して印加する第1段階と、上部電極34に直流電圧を印加しつつプラズマ生成用高周波電力をオン・オフする第2段階とを行うようにしたが、第2段階のみを行うようにしてもよい。また、本発明が適用される被処理体としては、図3に示すものに限らず、例えばフォトレジストとエッチング対象膜との間に反射防止膜やハードマスクが介在されたものであったものであってもよい。エッチング対象膜は典型的には絶縁膜であるが、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0070】
10…チャンバ(処理容器)
16…サセプタ(下部電極)
34…上部電極
46、46′…第1の整合器
48、48′…第1の高周波電源
50…可変直流電源
66…処理ガス供給源
84…排気装置
88…第2の整合器
90…第2の高周波電源
95…RF制御器
100…制御部
102…記憶部
W…半導体ウエハ(被処理基板)
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板等の被処理基板にプラズマエッチングを施すプラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置および記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体デバイスの製造プロセスにおいては、被処理基板である半導体ウエハに形成された所定の層に所定のパターンを形成するために、レジストをマスクとしてプラズマによりエッチングするプラズマエッチング処理が多用されている。
【0003】
このようなプラズマエッチングを行うためのプラズマエッチング装置としては、種々のものが用いられているが、その中でも容量結合型平行平板プラズマエッチング装置が主流である。
【0004】
容量結合型平行平板プラズマエッチング装置は、チャンバ内に一対の平行平板電極(上部および下部電極)を配置し、処理ガスをチャンバ内に導入するとともに、電極の少なくとも一方に高周波電力を印加して電極間に高周波電界を形成し、この高周波電界により処理ガスのプラズマを生成して半導体ウエハの所定の層に対してプラズマエッチングを施す。
【0005】
具体的には、プラズマ形成用の相対的に高い周波数の高周波電力と、イオン引き込み用の相対的に低い周波数の高周波電力を印加することにより、適切なプラズマ状態を形成するプラズマエッチング装置が知られており、これにより、高選択比で再現性の高いエッチング処理が可能である(例えば特許文献1)。そして、この種のエッチングでは、プラズマ中で正イオンが支配的となる処理ガスを用いてエッチングが行われる。
【0006】
ところで、近時、半導体デバイスの微細化が進み、アスペクト比が20以上のHARC(High Aspect Ratio Contact)エッチングが求められている。このようなHARCエッチングにおいては、エッチングマスクであるフォトレジストは負に帯電しており、エッチング初期にはエッチング面において電荷が中和しているが、エッチングが進行してアスペクト比が高くなると、ホールの底に正イオンがたまりエッチング面が正に帯電するようになる。このため、エッチングの促進に大きな役割を持つ正イオンがホール内で反発により曲がってしまい、エッチング形状の曲がりや歪みが生じるようになる。また、正イオンがホール底部に到達し難くなるため、エッチングレートの低下がもたらされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−173993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、形状性良くかつ高いエッチングレートで被エッチング膜をエッチングして高アスペクト比のホールを形成することができるプラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置を提供することを目的とする。
また、このようなプラズマエッチング方法を実行させるプログラムが記憶された記憶媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点では、被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を用いて、エッチング対象膜にホールを形成するプラズマエッチング方法であって、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返し、前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和することを特徴とするプラズマエッチング方法を提供する。
【0010】
上記第1の観点において、前記プラズマエッチング装置は、前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けるようにすることが好ましい。また、この場合において、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることが好ましい。
【0011】
本発明の第2の観点では、被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を用いて、エッチング対象膜にホールを形成するプラズマエッチング方法であって、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットから高周波電力を連続的に供給して前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1段階を行い、 その後、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返す第2段階を行い、前記第2段階において、前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和することを特徴とするプラズマエッチング方法を提供する。
【0012】
上記第2の観点において、前記プラズマエッチング装置は、前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、前記第1段階において、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットから連続的に第1の出力でバイアスを印加し、前記第2段階において、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けるようにすることが好ましい。また、このとき、前記第2段階において、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることが好ましい。
【0013】
上記第1および第2の観点において、前記第2条件の1回の時間が10μsec以上、50μsec以下であることが好ましい。また、前記第1の条件と前記第2条件との繰り返しは、パルス状で行うことができる。前記被処理体のエッチング対象膜の典型例としては絶縁膜を挙げることができる。
【0014】
本発明の第3の観点では、被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源と、前記プラズマ生成用の高周波電力印加ユニットを制御する制御部とを具備し、前記制御部は、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返すことを含むように制御し、その際に、前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和させることを特徴とするプラズマエッチング装置を提供する。
【0015】
上記第3の観点において、前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、前記制御部は、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオブにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることが好ましい。また、この場合において、前記制御部は、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることが好ましい。
【0016】
本発明の第4の観点では、被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を制御するための、コンピュータ上で動作するプログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、前記プログラムは、実行時に、上記第1の観点または第2の観点のプラズマエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記プラズマエッチング装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして処理容器内にプラズマを生成し、かつ直流電源から負の直流電圧を上部電極に印加する第1条件と、プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返し、第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することによりホール内の正電荷を中和するので、第2条件の際にホール内の正電荷を中和した後に第1の条件でプラズマを生成した際に、正イオンはホール内で曲がることなく進行する。このため、良好なエッチング形状を得ることができ、エッチングが進行してアスペクト比が高くなることによるエッチングレート低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のプラズマエッチング方法を実施することが可能なプラズマエッチング装置を示す概略断面図。
【図2】図1のプラズマエッチング装置において第1の高周波電源に接続された第1の整合器の構造を示す図。
【図3】本発明のプラズマエッチング方法が適用される被処理体である半導体ウエハの構造例を示す断面図。
【図4】エッチング初期の被処理体の状態を模式的に示す断面図。
【図5】エッチングが進行した段階の被処理体の状態を模式的に示す断面図。
【図6】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング方法の第2段階における直流電源、第1の高周波電源、プラズマ発光強度、正イオン、負イオンの状態を示すタイミングチャート。
【図7】第2段階において、プラズマ生成用の第1の高周波電源をオフした際の状態を説明するための模式図。
【図8】第2段階において、プラズマ生成用の第1の高周波電源をオフした後にオンにした状態を説明するための模式図。
【図9】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング方法の第2段階におけるバイアス印加用の第2の高周波電力の好ましい印加形態を示す図。
【図10】プラズマ生成時にバイアス印加用の高周波電力をオン・オフさせる作用を説明するための図。
【図11】プラズマ生成時に高周波バイアスを印加した場合のプラズマ中およびウエハ表面電子エネルギーを示す図。
【図12】プラズマ生成時に高周波バイアスを印加しない場合のプラズマ中およびウエハ表面電子エネルギーを示す図。
【図13】本発明のプラズマエッチング方法を実施することが可能な他のプラズマエッチング装置を示す概略断面図。
【図14】図13のプラズマエッチング装置において第1の高周波電源に接続された第1の整合器の構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について具体的に説明する。
図1は、本発明のプラズマエッチング方法を実施することが可能なプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【0020】
このプラズマエッチング装置は、容量結合型平行平板プラズマエッチング装置として構成されており、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなる略円筒状のチャンバ(処理容器)10を有している。このチャンバ10は保安接地されている。
【0021】
チャンバ10の底部には、セラミックス等からなる絶縁板12を介して円柱状のサセプタ支持台14が配置され、このサセプタ支持台14の上に例えばアルミニウムからなるサセプタ16が設けられている。サセプタ16は下部電極を構成し、その上に被処理基板である半導体ウエハWが載置される。
【0022】
サセプタ16の上面には、半導体ウエハWを静電力で吸着保持する静電チャック18が設けられている。この静電チャック18は、導電膜からなる電極20を一対の絶縁層または絶縁シートで挟んだ構造を有するものであり、電極20には直流電源22が電気的に接続されている。そして、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により半導体ウエハWが静電チャック18に吸着保持される。
【0023】
静電チャック18(半導体ウエハW)の周囲でサセプタ16の上面には、エッチングの均一性を向上させるための、例えばシリコンからなる導電性のフォーカスリング(補正リング)24が配置されている。サセプタ16およびサセプタ支持台14の側面には、例えば石英からなる円筒状の内壁部材26が設けられている。
【0024】
サセプタ支持台14の内部には、例えば円周上に冷媒室28が設けられている。この冷媒室には、外部に設けられた図示しないチラーユニットより配管30a,30bを介して所定温度の冷媒、例えば冷却水が循環供給され、冷媒の温度によってサセプタ上の半導体ウエハWの処理温度を制御することができる。
【0025】
さらに、図示しない伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスがガス供給ライン32を介して静電チャック18の上面と半導体ウエハWの裏面との間に供給される。
【0026】
下部電極であるサセプタ16の上方には、サセプタ16と対向するように平行に上部電極34が設けられている。そして、上部および下部電極34,16間の空間がプラズマ生成空間となる。上部電極34は、下部電極であるサセプタ16上の半導体ウエハWと対向してプラズマ生成空間と接する面、つまり対向面を形成する。
【0027】
この上部電極34は、絶縁性遮蔽部材42を介して、チャンバ10の上部に支持されており、サセプタ16との対向面を構成しかつ多数の吐出孔37を有する電極板36と、この電極板36を着脱自在に支持し、導電性材料、例えばアルミニウムからなる水冷構造の電極支持体38とによって構成されている。電極板36は、ジュール熱の少ない低抵抗の導電体または半導体が好ましく、また、後述するようにレジストを強化する観点からはシリコン含有物質が好ましい。このような観点から、電極板36はシリコンやSiCで構成されるのが好ましい。電極支持体38の内部には、ガス拡散室40が設けられ、このガス拡散室40からはガス吐出孔37に連通する多数のガス通流孔41が下方に延びている。
【0028】
電極支持体38にはガス拡散室40へ処理ガスを導くガス導入口62が形成されており、このガス導入口62にはガス供給管64が接続され、ガス供給管64には処理ガス供給源66が接続されている。ガス供給管64には、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)68および開閉バルブ70が設けられている(MFCの代わりにFCSでもよい)。そして、処理ガス供給源66から、エッチングのための処理ガスとして、例えばC4F8ガスのようなフロロカーボンガス(CxFy)がガス供給管64からガス拡散室40に至り、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してシャワー状にプラズマ生成空間に吐出される。すなわち、上部電極34は処理ガスを供給するためのシャワーヘッドとして機能する。
【0029】
上部電極34には、ローパスフィルタ(LPF)46aを介して可変直流電源50が電気的に接続されている。可変直流電源50は、負極が上部電極34側となるように接続されており、上部電極34にマイナスの電圧を印加するようになっている。可変直流電源50からの給電はオン・オフスイッチ52によりオン・オフが可能となっている。また、可変直流電源50の電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ52のオン・オフはコントローラ51により制御されるようになっている。ローパスフィルタ(LPF)46aは後述する第1および第2の高周波電源からの高周波をトラップするものであり、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成される。
【0030】
チャンバ10の側壁から上部電極34の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体10aが設けられている。
【0031】
下部電極であるサセプタ16には、第1の整合器46を介して、第1の高周波電源48が電気的に接続されている。第1の高周波電源48は、27〜100MHzの周波数、例えば40MHzの高周波電力を出力する。第1の整合器46は、第1の高周波電源48の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源48の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0032】
また、下部電極であるサセプタ16には、第2の整合器88を介して第2の高周波電源90も電気的に接続されている。この第2の高周波電源90から下部電極であるサセプタ16に高周波電力が供給されることにより、半導体ウエハWにバイアスが印加され半導体ウエハWにイオンが引き込まれる。第2の高周波電源90は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数、例えば3MHzの高周波電力を出力する。第2の整合器88は第2の高周波電源90の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるためのもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第2の高周波電源90の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。
【0033】
第1の高周波電源48、第2の高周波電源90、第1の整合器46および第2の整合器88には、RF制御器95が接続されており、これら第1の高周波電源48、第2の高周波電源90、第1の整合器46および第2の整合器88がRF制御器95により制御されるようになっている。具体的には、RF制御器95は、第1の高周波電源48のオン・オフおよび出力の制御が可能となっており、第1の高周波電源48を連続的にオンにしてプラズマを生成する状態、および交互にオン・オフし、例えばパルス状として、プラズマが存在している状態とプラズマが消滅した状態を交互に形成する状態に制御することが可能となっている。また、RF制御器95は、バイアス用の第2の高周波電源90のオン・オフおよび出力の制御が可能となっており、プラズマ処理中に所定の出力で連続的にバイアスを印加する状態、および第2の高周波電源90の出力を第1の高周波電源48のオン・オフに同期して、例えばパルス状に出力を制御することが可能となっている。第2の高周波電源90を第1の高周波電源48のオン・オフに同期させて出力を制御する際に、交互にオン・オフするようにしてもよいし、完全にオフにせずに高出力と低出力とが交互になるようにしてもよい。
【0034】
この第1の整合器46は、図2に示すように、第1の高周波電源46の給電ライン96から分岐して設けられた第1の可変コンデンサ97と、給電ライン96のその分岐点の第1の高周波電源48側に設けられた第2の可変コンデンサ98と、分岐点の反対側に設けられたコイル99とを有している。本実施形態の場合、通常のプラズマエッチングと異なり、第1の高周波電源48は、高周波電力が所定周期でオン・オフされるモードの際に、RF制御器95が、第1の整合器46における整合動作をこのオン・オフに同期させて切り換えるように制御する。
【0035】
この場合に、RF制御器95は、第1の高周波電力供給ユニット48をオン・オフモードで動作させているときに、オフの際には第1の整合器46の動作を行わないように制御し、オンの際には第1の整合器46が第1の高周波電源48の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスとが一致するような動作を行うように制御する。
【0036】
第2の整合器88についても、基本的に第1の整合器46と同様に構成されており、第2の高周波電源90の出力を第1の高周波電源48のオン・オフに同期させて出力制御する際に、RF制御器95が、第2の整合器88における整合動作をこの出力制御に同期させて切り換えるように制御する。
【0037】
この場合に、RF制御器95は、第2の高周波電源90を第1の高周波電源48のオン・オフに同期させて出力制御させているときに第2の整合器88の動作を行わないように制御する。ただし、第2の整合器88の動作が十分に速い場合には、高出力の際に第2の整合器88が第2の高周波電源90の内部インピーダンスとチャンバ10内のプラズマを含めた負荷インピーダンスとが一致するような動作を行うように制御してもよい。
【0038】
チャンバ10の底部には排気口80が設けられ、この排気口80に排気管82を介して排気装置84が接続されている。排気装置84は、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ10内を所望の真空度まで減圧可能となっている。また、チャンバ10の側壁には半導体ウエハWの搬入出口85が設けられており、この搬入出口85はゲートバルブ86により開閉可能となっている。また、チャンバ10の内壁に沿ってチャンバ10にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するためのデポシールド11が着脱自在に設けられている。すなわち、デポシールド11がチャンバ壁を構成している。また、デポシールド11は、内壁部材26の外周にも設けられている。チャンバ10の底部のチャンバ壁側のデポシールド11と内壁部材26側のデポシールド11との間には排気プレート83が設けられている。デポシールド11および排気プレート83としては、アルミニウム材にY2O3等のセラミックスを被覆したものを好適に用いることができる。
【0039】
デポシールド11のチャンバ内壁を構成する部分のウエハWとほぼ同じ高さの部分には、グランドにDC的に接続された導電性部材(GNDブロック)91が設けられており、これにより異常放電防止効果を発揮する。なお、この導電性部材91は、プラズマ生成領域に設けられていれば、その位置は図1の位置に限られず、例えばサセプタ16の周囲に設ける等、サセプタ16側に設けてもよく、また上部電極34の外側にリング状に設ける等、上部電極近傍に設けてもよい。
【0040】
プラズマ処理装置の各構成部、例えば電源系やガス供給系、駆動系、さらにはRF制御器95等は、マイクロプロセッサ(コンピュータ)を含む制御部(全体制御装置)100に接続されて制御される構成となっている。また、制御部100には、オペレータがプラズマ処理装置を管理するためにコマンドの入力操作等を行うキーボードや、プラズマ処理装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等からなるユーザーインターフェース101が接続されている。
【0041】
さらに、制御部100には、プラズマ処理装置で実行される各種処理を制御部100の制御にて実現するための制御プログラムや、処理条件に応じてプラズマ処理装置の各構成部に処理を実行させるためのプログラムすなわち処理レシピが格納された記憶部102が接続されている。処理レシピは記憶部102の中の記憶媒体に記憶されている。記憶媒体は、ハードディスクや半導体メモリであってもよいし、CDROM、DVD、フラッシュメモリ等の可搬性のものであってもよい。また、他の装置から、例えば専用回線を介してレシピを適宜伝送させるようにしてもよい。
【0042】
そして、必要に応じて、ユーザーインターフェース101からの指示等にて任意の処理レシピを記憶部102から呼び出して制御部100に実行させることで、制御部100の制御下で、プラズマ処理装置での所望の処理が行われる。なお、本発明の実施の形態で述べるプラズマ処理装置(プラズマエッチング装置)は、この制御部100を含むものとする。
【0043】
次に、このように構成されるプラズマ処理装置において、本発明に係る高アスペクト比のコンタクトホールのエッチング(HARCエッチング)について説明する。
【0044】
ここでは、例えば、図3に示すように、Si基板120上に絶縁膜121が形成され、その上のフォトリソグラフィによりパターン化されたフォトレジスト膜122がエッチングマスクとして形成された構造の半導体ウエハWを準備し、絶縁膜121にHARCエッチングを施す。
【0045】
まず、ゲートバルブ86を開状態とし、搬入出口85を介して上記構成の半導体ウエハWをチャンバ10内に搬入し、サセプタ16上に載置する。そして、排気装置84によりチャンバ10内を排気しながら、処理ガス供給源66から処理ガスを所定の流量でガス拡散室40へ供給し、ガス通流孔41およびガス吐出孔37を介してチャンバ10内へ供給しつつ、その中の圧力を例えば0.1〜150Paの範囲内の設定値とする。この状態で、下部電極であるサセプタ16に第1の高周波電源48から27〜100MHzの周波数、例えば40MHzの比較的高い周波数のプラズマ生成用の高周波電力を印加し、かつ第2の高周波電源90から400kHz〜13.56MHzの周波数、例えば3MHzのプラズマ生成用の高周波電力よりも低い周波数のイオン引き込み用の高周波電力を連続的に印加し、さらに上部電極34に可変直流電源50から所定の直流電圧を連続的に印加して、半導体ウエハWに対して第1段階のエッチングを行う。このとき、半導体ウエハWは、直流電源22から静電チャック18の電極20に直流電圧を印加することにより静電チャック18に固定されている。
【0046】
ここで、処理ガスとしては、従来用いられている種々のものを採用することができ、例えばC4F8ガスのようなフロロカーボンガス(CxFy)に代表されるハロゲン元素を含有するガスを好適に用いることができる。さらに、ArガスやO2ガス等の他のガスが含まれていてもよい。
【0047】
上部電極34の電極板36に形成されたガス吐出孔37から吐出された処理ガスは、高周波電力により生じた上部電極34と下部電極であるサセプタ16間のグロー放電中でプラズマ化し、このプラズマで生成される正イオンやラジカルによって半導体ウエハWの絶縁膜121がエッチングされる。
【0048】
このとき、下部電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加することで、ウエハにより近いところでプラズマを生成することができ、またプラズマが広い領域に拡散せず処理ガスの解離を抑えることができるので、チャンバ10内の圧力が高くプラズマ密度が低いような条件であっても、エッチングレートを上昇させることができる。また、プラズマ形成用の高周波電力の周波数が高い場合でも、比較的大きなイオンエネルギーを確保することができるので高効率である。また、本実施形態のように下部電極にプラズマ形成用の高周波電力とイオン引き込み用の高周波電力を別々に印加することで、プラズマエッチングに必要なプラズマ形成の機能とイオン引き込みの機能とを独立に制御することが可能となる。したがって、高い微細加工性が要求されるエッチングの条件を満たすことが可能となる。さらに、プラズマ生成用に27MHz以上の高い周波数領域の高周波電力を供給しているので、プラズマを好ましい状態で高密度化することができ、より低圧の条件下でも高密度プラズマを生成することができる。さらにまた、このようにプラズマが形成される際に、コントローラ51により可変直流電源50から上部電極34に負の直流電圧を印加するので、プラズマ中の正イオンが上部電極34に衝突してその近傍に二次電子を生成させ、その二次電子を鉛直方向下方へ加速させて被処理体である半導体ウエハWに供給することができる。
【0049】
ところで、このようなエッチングは、プラズマ中の正イオンが支配的になって進行するが、エッチング初期では、エッチングにより形成されたコンタクトホール123は浅く、図4に示すように、フォトレジスト膜122がプラズマ中の電子により負に帯電しており、電子がエッチング面に到達するため、正イオンがエッチング面に供給されても電荷が中和する。したがって、エッチングが正常に進行する。
【0050】
しかしながら、エッチングが進行して行き、図5に示すように、コンタクトホール123のアスペクト比が高くなってくると、電子はコンタクトホール123内に到達し難くなり、コンタクトホール123内には正イオンがたまって、エッチング面は正に帯電した状態となる。
【0051】
この状態のままエッチングを進行させると、エッチングのためにコンタクトホール123内に進入した正イオンが、コンタクトホール123内の正の電荷との間の反発により曲がり、エッチング形状の曲がりや歪みが生じるようになる。また、正イオンがホール底部に到達し難くなるため、エッチングレートの低下がもたらされる。
【0052】
そこで、ある程度エッチングが進行した後、可変直流電源50から連続的に直流電圧を印加した状態のまま、プラズマ生成用の第1の高周波電源48を交互にオン・オフしてプラズマが生成した状態(プラズマオン)とプラズマが消失した状態(プラズマオフ)を交互に繰り返す第2の段階に切り替える。
【0053】
第2段階における直流電源50、第1の高周波電源48、プラズマ発光強度、正イオン、負イオンの状態を図6に示す。この図に示すように、第2の段階では、第1の高周波電源48をオフにするとプラズマ発光強度が低下しプラズマが消失する。このプラズマ発光強度の低下にともなって正イオンが減少し、残った電子により負イオンが増加して行く。上部電極34には負の直流電圧が印加されているため、図7に示すように、電極間の処理空間に存在する負イオンが直流電圧によりコンタクトホール123内に押し込まれてその中の正の電荷を中和する。そして、次に第1の高周波電源48をオンにした際には、コンタクトホール123内の正電荷が減少しているので、図8に示すように、正イオンはコンタクトホール123内を直進することが可能となる。したがって、このように、上部電極34に負の直流電圧を印加しつつ、第1の高周波電源48を交互にオン・オフして、プラズマオンの正イオンが支配的になるレジームと、プラズマオフの負イオンが支配的になるレジームとを交互に形成することにより、コンタクトホール123内での正イオンの曲がりが抑制され、エッチング形状を良好なものとすることができ、エッチングレートも高くすることができる。
【0054】
この場合に、プラズマ生成用の第1の高周波電源48をオフにしている時間は10μsec以上、50μsec以下が好ましい。10μsec以上とすることにより、正イオンが少なく負イオンが多い状態を形成することができるが、50μsecを超えるとエッチングに寄与していない時間が長くなって効率が低下してしまう。
【0055】
この第2段階においては、第1の高周波電源48のオン・オフに同期して、バイアス印加用の第2の高周波電源90の出力を変化させることが好ましい。具体的には、(1)第1の高周波電源48をオフにしてプラズマが消滅している間に、第2の高周波電源90をオフにするかまたは出力を低下させる期間を設ける。また、(2)これに加えて、第1の高周波電源48をオンにしてプラズマが生成している間に第2の高周波電源90をオフにするかまたは出力を低下させる期間を設ける。(1)および(2)の両方を行うシーケンス例としては、図9の(a)に示すように、プラズマ生成用の第1の高周波電源48をオフにしてプラズマが消滅している間には、第2の高周波電源90をオフまたは第1段階よりも低い出力とし、第1の高周波電源48をオンにしてプラズマを生成している間には、バイアス印加用の第2の高周波電源90の出力を、第1段階と同じ第1の出力と、オフ(出力0)または第1段階よりも低い出力である第2の出力とを交互に繰り返すようにするシーケンス、図9の(b)に示すように、第1の出力と第2の出力の切り替え周期を第1の高周波電源48のオン・オフ周期と合わせて、そのタイミングをずらすシーケンスを挙げることができる。上記(1)のみのシーケンス例としては、図9の(c)に示すように、第2の高周波電源の第1の出力と第2の出力の切り替えタイミングと、第1の高周波電源のオン・オフタイミングを完全に一致させるシーケンスを挙げることができる。
【0056】
上記(1)は、第1の高周波電源48をオフにしてプラズマが消滅している間に、第2の高周波電源90が第1の出力であると、下部電極であるサセプタ16上にかなりの厚さのプラズマシースが残存しておりこれが負イオンの障壁となるため、プラズマが消滅している間に第2の高周波電源90をオフまたは第2の出力にして、プラズマシースを0または極めて小さいものとし、そのような障壁が実質的にない状態とする。このため、上記第1の高周波電源48をオン・オフする効果をより高めることができる。
【0057】
一方、上記(2)については、以下の通りである。
第1の高周波電源48をオンにしてプラズマを生成している際には、上部電極34に負の直流電圧を印加することにより、プラズマ中の正イオンが上部電極34に衝突して二次電子を生成し、その二次電子が鉛直方向下方に加速されるが、バイアス印加用の第2の高周波電源90の出力が第1の出力の場合には、図10の(a)に示すように、下部電極であるサセプタ16上に厚いプラズマシースSが形成されているため、このプラズマシースSが二次電子の障壁となってコンタクトホール123内にほとんど到達しない。これに対し、バイアス印加用の第2の高周波電源90の出力が0またはより低い第2の出力の場合には、図10の(b)に示すように、プラズマシースSを薄くすることができ、二次電子の障壁が小さいので、上部電極34に印加された直流電圧によって鉛直方向下方に加速された二次電子をコンタクトホール123内に有効に到達させることができ、コンタクトホール123内の正の電荷を中和することができる。したがって、これによっても上記第1の高周波電源48をオン・オフする効果をより高めることができる。
【0058】
図11は2MHzの高周波バイアス(Vpp=1000V)を印加した場合のプラズマ中(ウエハより15mm上方)およびウエハ表面の電子エネルギーを示す図であり、(a)がプラズマ中、(b)がウエハ表面である。一方、図12は高周波バイアスを印加しなかった場合のプラズマ中(ウエハより15mm上方)およびウエハ表面の電子エネルギーを示す図であり、(a)がプラズマ中、(b)がウエハ表面である。これらの図から、高周波バイアスをオフにすることにより、DC印加によって上部電極34から放出され、加速されたエネルギーを持った二次電子に対する障壁を低減する効果を確認することができる。
【0059】
なお、プラズマオフによる負イオンを増加させる効果は、プラズマがほぼ完全に消失しなければ有効に発揮されないため、第1の高周波電源48をオフにした際にも印加されている直流電圧は、実質的にプラズマの生成に寄与しない大きさであることが必要である。また、シーケンスによっては、第1の高周波電源48をオフした際に、第2の高周波電源90からの高周波電力が印加されている場合もあるが、この際にもこの高周波電力は実質的にプラズマに寄与しない出力である必要がある。また、バイアス印加用の第2の高周波電源90の第2の出力は、プラズマシースの厚さが、二次電子が透過する程度の厚さになるような出力であれば必ずしも0(オフ)でなくてもよいが、0(オフ)にすることが好ましい。
【0060】
次に、本発明の方法を実施可能な他のプラズマエッチング装置について説明する。図13は、本発明のプラズマエッチング方法を実施可能な他のプラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【0061】
このプラズマエッチング装置は、プラズマ生成用の高周波電力が上部電極に印加されるようになっている点が図1の装置とは異なっているが、他の構成については基本的に第1の実施形態に係るプラズマエッチング装置と同様であるから、図13において、図1と同じものには同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施形態においては、プラズマを生成するための第1の高周波電源48′が第1の整合器46′および給電棒44を介して上部電極34に接続されている。第1の高周波電源48′は、第1の実施形態の第1の高周波電源48と同様の機能を有しており、その周波数は27〜100MHzの範囲が好ましい。第1の整合器46′は、第1の高周波電源48′の内部(または出力)インピーダンスに負荷インピーダンスを整合させるもので、チャンバ10内にプラズマが生成されている時に第1の高周波電源48′の出力インピーダンスと負荷インピーダンスが見かけ上一致するように機能する。第1の整合器46の出力端子は給電棒44の上端に接続されている。また、可変直流電源50も上記第1の整合器46′および給電棒44を介して上部電極34に接続されている。
【0063】
第1の整合器46′は、図14に示すように、第1の高周波電源48′の給電ライン49から分岐して設けられた第1の可変コンデンサ54と、給電ライン49のその分岐点の下流側に設けられた第2の可変コンデンサ56を有しており、これらにより上記機能を発揮する。また、第1の整合器46′には、直流電圧電流(以下、単に直流電圧という)が上部電極34に有効に供給可能なように、第1の高周波電源48′からの高周波電力(例えば40MHz)および第2の高周波電源90からの高周波電力(例えば3MHz)をトラップするフィルタ58が設けられている。すなわち、可変直流電源50からの直流電流がフィルタ58を介して給電ライン49に流れる。このフィルタ58はコイル59とコンデンサ60とで構成されており、これらにより第1の高周波電源48′からの高周波電力および第2の高周波電源90からの高周波電力がトラップされる。また、円筒状接地導体10aの天壁部分と給電棒44との間には筒状の絶縁部材44aが設けられており、これにより給電棒44と接地導体10aとが電気的に絶縁されている。
【0064】
上部電極34には、第1の高周波電源48′からの高周波電力(例えば40MHz)は通さずに第2の高周波電源90からの高周波電力(例えば3MHz)をグランドへ通すためのローパスフィルタ(LPF)92が電気的に接続されている。このローパスフィルタ(LPF)92は、好適にはLRフィルタまたはLCフィルタで構成されるが、1本の導線だけでも第1の高周波電源48からの高周波電力(60MHz)に対しては十分大きなリアクタンスを与えることができるので、それで済ますこともできる。一方、下部電極であるサセプタ16には、第1の高周波電源48′からの高周波電力(例えば40MHz)をグランドに通すためのハイパスフィルタ(HPF)94が電気的に接続されている。
【0065】
図13のプラズマエッチング装置においても、上部電極34に直流電圧を印加しつつ、プラズマ生成用の第1の高周波電源48′をオン・オフすることにより、プラズマオフの際にコンタクトホール内の正の電荷を負イオンで中和し、プラズマオンの際に正イオンを直進させることができる。また、バイアス印加用の第2の高周波電源90の出力を変化させることによって二次電子によるコンタクトホール中の正電荷の中和効果も得ることができる。
【0066】
この図13の装置では、上部電極34にプラズマ形成用の第1の高周波電力を供給し、下部電極であるサセプタ16にイオン引き込み用の第2の高周波電力を供給するので、プラズマの制御マージンを広くすることができ、また、上部電極34に27MHz以上の高い周波数領域の高周波電力を供給しているので、プラズマを好ましい状態で高密度化することができ、より低圧の条件下でも高密度プラズマを生成することができる。
【0067】
ただし、このように上部電極にプラズマ形成用の高周波電力を印加する場合には、上部電極近傍にプラズマが生成されるので、チャンバ10内の圧力が高くプラズマ密度が低いような条件では、ウエハに対するエッチングレートを上昇させることが比較的困難である。
【0068】
なお、上記いずれの実施形態においても、上記第1の高周波電力および第2の高周波電力の採り得る周波数を例示すると、第1の高周波電力としては、27MHz、40MHz、60MHz、80MHz、100MHzを挙げることができ、第2の高周波電力としては、400kHz、800kHz、1MHz、2MHz、3MHz、13MHz、13.6MHzを挙げることができ、プロセスに応じて適宜の組み合わせで用いることができる。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、プラズマエッチングに際し、上部電極34に直流電圧を印加しつつプラズマ生成用の高周波電力を連続して印加する第1段階と、上部電極34に直流電圧を印加しつつプラズマ生成用高周波電力をオン・オフする第2段階とを行うようにしたが、第2段階のみを行うようにしてもよい。また、本発明が適用される被処理体としては、図3に示すものに限らず、例えばフォトレジストとエッチング対象膜との間に反射防止膜やハードマスクが介在されたものであったものであってもよい。エッチング対象膜は典型的には絶縁膜であるが、これに限るものではない。
【符号の説明】
【0070】
10…チャンバ(処理容器)
16…サセプタ(下部電極)
34…上部電極
46、46′…第1の整合器
48、48′…第1の高周波電源
50…可変直流電源
66…処理ガス供給源
84…排気装置
88…第2の整合器
90…第2の高周波電源
95…RF制御器
100…制御部
102…記憶部
W…半導体ウエハ(被処理基板)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を用いて、エッチング対象膜にホールを形成するプラズマエッチング方法であって、
前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返し、
前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和することを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記プラズマエッチング装置は、前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、
前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を用いて、エッチング対象膜にホールを形成するプラズマエッチング方法であって、
前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットから高周波電力を連続的に供給して前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1段階を行い、
その後、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返す第2段階を行い、
前記第2段階において、前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和することを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記プラズマエッチング装置は、前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、
前記第1段階において、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットから連続的に第1の出力でバイアスを印加し、
前記第2段階において、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項4に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項6】
前記第2段階において、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項5に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項7】
前記第2条件の1回の時間が10μsec以上、50μsec以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項8】
前記第1の条件と前記第2条件との繰り返しは、パルス状で行われることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項9】
前記被処理体のエッチング対象膜が絶縁膜であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項10】
被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、
前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、
前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、
前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、
前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源と、
前記プラズマ生成用の高周波電力印加ユニットを制御する制御部と
を具備し、
前記制御部は、
前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返すことを含むように制御し、
その際に、前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和させることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項11】
前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、
前記制御部は、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項10に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項11に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項13】
被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を制御するための、コンピュータ上で動作するプログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記プラズマエッチング装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【請求項1】
被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を用いて、エッチング対象膜にホールを形成するプラズマエッチング方法であって、
前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返し、
前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和することを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記プラズマエッチング装置は、前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、
前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を用いて、エッチング対象膜にホールを形成するプラズマエッチング方法であって、
前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットから高周波電力を連続的に供給して前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1段階を行い、
その後、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返す第2段階を行い、
前記第2段階において、前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和することを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記プラズマエッチング装置は、前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、
前記第1段階において、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットから連続的に第1の出力でバイアスを印加し、
前記第2段階において、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項4に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項6】
前記第2段階において、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項5に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項7】
前記第2条件の1回の時間が10μsec以上、50μsec以下であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項8】
前記第1の条件と前記第2条件との繰り返しは、パルス状で行われることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項9】
前記被処理体のエッチング対象膜が絶縁膜であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項10】
被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、
前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、
前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、
前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、
前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、
前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源と、
前記プラズマ生成用の高周波電力印加ユニットを制御する制御部と
を具備し、
前記制御部は、
前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにして前記処理容器内にプラズマを生成し、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第1条件と、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにして前記処理容器内のプラズマを消滅させ、かつ前記直流電源から負の直流電圧を前記上部電極に印加する第2条件とを交互に繰り返すことを含むように制御し、
その際に、前記第1条件によりプラズマ中の正イオンによりエッチングを進行させ、前記第2条件により負イオンを生成し、前記直流電圧により負イオンを前記ホール内に供給することにより前記ホール内の正電荷を中和させることを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項11】
前記下部電極にバイアス印加用の高周波電力を印加するバイアス印加用高周波電力供給ユニットをさらに具備し、
前記制御部は、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットのオン・オフに同期して前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットの出力を変化させ、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオフにしてプラズマが消滅している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項10に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記プラズマ生成用高周波電力印加ユニットをオンにしてプラズマが生成している間に、前記バイアス印加用高周波電力供給ユニットをオフまたは第1の出力よりも低い出力である第2の出力にする期間を設けることを特徴とする請求項11に記載のプラズマエッチング装置。
【請求項13】
被処理体が収容され、内部が真空排気可能な処理容器と、前記処理容器内に配置され、被処理体の載置台として機能する下部電極と、前記下部電極に対向するように前記処理容器内に配置された上部電極と、前記処理容器内に処理ガスを供給する処理ガス供給ユニットと、前記上部電極または下部電極の少なくとも一方にプラズマ生成用の高周波電力を印加するプラズマ生成用高周波電力印加ユニットと、前記上部電極に負の直流電圧を印加する直流電源とを具備するプラズマエッチング装置を制御するための、コンピュータ上で動作するプログラムが記憶されたコンピュータ読取可能な記憶媒体であって、
前記プログラムは、実行時に、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法が行われるように、コンピュータに前記プラズマエッチング装置を制御させることを特徴とするコンピュータ読取可能な記憶媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2010−171320(P2010−171320A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14254(P2009−14254)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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