説明

プラズマエッチング方法

【課題】CO含有プラズマの条件によらず、安定してクリーニングプラズマを生成する方法を提供する。
【解決手段】被エッチングウェハ802上に形成された磁性膜を、真空容器801内に導入されたCとOの元素を含むCO含有ガスにソース電力を印加することでCO含有ガスをプラズマ化し、生成したCO含有プラズマを用い加工する際に、該CO含有プラズマにて被エッチングウェハ802上に形成された磁性膜に所定の加工を施した後、ソース電力806を印加したまま、クリーニングガスを導入し、その後CO含有ガスの導入を停止することで、所定のクリーニングガスを用いたクリーニングプラズマを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気抵抗メモリ等に用いられる磁性膜等の被処理体のプラズマエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報量の増加に伴い、電子機器は低消費電力であることが、メモリは高速動作であるとともに不揮発であることが望まれている。現在使われているメモリとしては電荷の蓄積を利用したDRAM(Dynamic Random Access Memory)とフラッシュメモリ等が挙げられる。DRAMはコンピューターのメインメモリとして使用されているが、電源を切ると記憶を失う揮発性メモリである。また、動作中もデータを保持するため一定時間置きに再書き込みが必要であり消費電力が大きくなる。一方、フラッシュメモリは不揮発性メモリであるが、情報の書き込み時間がμ秒オーダと遅い。これらの欠点なく、低消費電力かつ高速に動作する不揮発性メモリとしてMRAM(Magnetic Random Access Memory)の適応が期待されている。
【0003】
MRAMは磁化の向きによる抵抗値の変化を利用したメモリであり、その製造においてはリソグラフィーにより生成したマスクを用い、基板上に形成されたFe・Co・Ni等の元素を含む磁性膜をドライエッチングにより微細加工する技術が必要である。
【0004】
ドライエッチングの方法としては、イオンビームエッチングを用いる方法とプラズマエッチングを用いる方法があるが、特にプラズマエッチングは半導体デバイスの製造で広く用いられており、大口径基板を均一に加工できることから量産性に優れている。
【0005】
プラズマエッチングは、減圧された処理室に処理用のガスを導入し、平板アンテナやコイル状アンテナ等を介して、処理室にソース電源より高周波電力(以下、ソース電力と記載する)を投入することで該ガスをプラズマ化し、これにより発生したイオンやラジカルを基板に照射することにより進行する。プラズマ源には、プラズマを発生させる方式の違いにより、有磁場マイクロ波タイプ、誘導結合(ICP:Inductively Coupled Plasma)タイプ、容量結合(CCP:Capacitively Coupled Plasma)タイプ等、様々な方式が存在している。
【0006】
プラズマエッチングを用いた磁性膜加工法としてはClガスをプラズマ化したClプラズマにより磁性膜の塩化物の生成を利用する方法と、COとNHの混合ガスやCHOHガスといったCOを含有するガスをプラズマ化したCO含有プラズマにより、磁性膜の金属カルボニルの生成を利用する方法がある。特に後者のCO含有プラズマを用いる方法は、Clプラズマを用いた方法と異なり腐食の懸念がないことと、金属カルボニルの飽和蒸気圧が塩化物よりも高くエッチングが進行しやすいと予想できることから、磁性膜の加工法として期待が持てる。
【0007】
しかし、COを含有するガスを用いたエッチング方法ではエッチング中に解離したC系の堆積物が真空容器内壁に付着し、真空容器内の状態がエッチング前後で変動する。そのため、磁性膜をエッチングした後にOガス等を用いて生成したクリーニングプラズマにより、真空容器内壁に付着したCを除去し、真空容器内の状態を元に戻す必要がある。
【0008】
例えば、特許文献1には、プラズマを用いた半導体デバイス製造装置の真空容器の内壁面の不要堆積物を除去する際に、クリーニングウェハをウェハステージに置いてクリーニングを行う技術が開示されている。
【0009】
図7及び図8を用いて、CO含有プラズマを用いて磁性膜をエッチングした後、クリーニングプラズマにより、真空容器内壁の状態を元に戻す従来方法を説明する。ここで、図7はCO含有プラズマとクリーニングプラズマを用いて磁性膜を加工する従来方法のシーケンス図を、図8は誘導結合タイプのプラズマ源を用いたプラズマエッチング装置の代表例の概略図を示している。本工程は概略、下記の十工程からなる。
【0010】
図7において、ステップS701の第一の工程は所定の処理条件でコンディションを整えた真空容器801内に、磁性膜が成膜された被エッチングウェハ802を搬入する工程である。この際、被エッチングウェハ802はウェハステージ803上に設置される。
【0011】
ステップS702の第二の工程はCOとNHの混合ガスやCHOH等のCO含有ガスをガス導入孔804から真空容器801内に所定の流量だけ供給し、排気口805からの排気速度を調節することで真空容器801内を所定の圧力に設定した後、ソース電力806をアンテナ807に印加することで真空容器801内に導入されたCO含有ガスをプラズマ化する工程である。この際にガスをプラズマ化しやすくするため、真空容器801上方に設けられたファラデーシールド808に高周波のファラデーシールド電圧809を印加する。
【0012】
ステップS703の第三の工程は第二の工程で生成したCO含有プラズマを用いて被エッチングウェハをエッチングする工程である。この際にガス導入孔804から真空容器801内に導入されるガス流量と、排気孔805から排気されるガスの排気速度を調節することで真空容器801内の圧力および、ソース電力806とファラデーシールド電圧809を所定の値に設定する。また、被エッチングウェハ802に積極的にプラズマ中のイオンを引き込むため、ウェハバイアス電力810を印加する。
【0013】
ステップS704の第四の工程はソース電力806とファラデーシールド電圧809とウェハバイアス電力810をOFFにした後、ガス導入孔804から導入されるCO含有ガスを停止し、CO含有プラズマを消失させる工程である。
ステップS705の第五の工程は、真空容器801から被エッチングウェハ802を搬出する工程である。
ステップS706の第六の工程は真空容器801内に、真空容器801内をクリーニングするためのクリーニングウェハ811を搬入する工程である。この際、クリーニングウェハ811はウェハステージ803上に設置される。
【0014】
ステップS707の第七の工程は、クリーニングに用いるクリーニングガスをガス導入孔804から真空容器801内に所定の流量だけ供給し、排気口805からの排気速度を調節することで真空容器801内を所定の圧力に設定した後、ソース電力806をアンテナ807に印加することで真空容器801内に導入されたクリーニングガスをプラズマ化する工程である。この際にガスをプラズマ化しやすくするため、真空容器801上方に設けられたファラデーシールド808に高周波のファラデーシールド電圧809を印加する。
【0015】
ステップS708の第八の工程は、第七の工程で生成したクリーニングプラズマを用いて真空容器801内をクリーニングする工程である。この際にガス導入孔804から真空容器801内に導入されるガス流量と、排気口805から排気されるガスの排気速度を調節することで真空容器801内の圧力および、ソース電力806とファラデーシールド電圧809を所定の値に設定する。
【0016】
ステップS709の第九の工程はソース電力806とファラデーシールド電圧809をOFFにした後、ガス導入孔804から導入されるクリーニングガスを停止し、クリーニングプラズマを消失させる工程である。
【0017】
そして、ステップS710の第十の工程は、真空容器801内からクリーニングするために搬入したクリーニングウェハ811を真空容器801から搬出する工程である。
【0018】
かかるシーケンスを行うことで、CO含有プラズマにて被エッチングウェハ802を加工することができ、被エッチングウェハ802を加工する際に真空容器801内壁にCが付着しても、その後のクリーニングプラズマで除去することができる。これにより、真空容器801のコンディションをCO含有ガスがプラズマ化する前の状態に戻すことができ、引き続きCO含有プラズマを用いて別の被エッチングウェハ802を同条件で加工することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平10−12593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかし、CO含有プラズマを用いて図7および図8で説明したシーケンスを行ったところ、被エッチングウェハ802上の磁性膜は所望の形状に加工することができたが、第七の工程に示したクリーニングガスのプラズマ化が難しく、条件によってはクリーニングプラズマによる真空容器801内のクリーニングが困難になることがわかった。図9にその代表例としてCO含有プラズマとしてCOとNHの混合ガスを用いたプラズマを、クリーニングプラズマとしてOガスを用いたプラズマを生成し、CO含有ガスのプラズマ化を行う第二の工程とCO含有プラズマのエッチングを行う第三の工程においてCOとNHのガス比を変更し、クリーニングプラズマの生成率を計測した結果を示す。ここで、生成率とは図7の第一から第五の工程を行った後、第六の工程であるクリーニングガスのプラズマ化工程をクリーニングガスがプラズマ化するまで同じ条件で繰り返し、その繰り返した回数から下記の式を用いて計算した。
【0021】
クリーニングプラズマの生成率(%)=1/クリーニングガスのプラズマ化を繰返した回数×100
尚、図9に記載した生成率は同様のシーケンスを3回おこない、その生成率の平均値を記載している。また、本計測では図8に概略図を示した誘導結合タイプのプラズマ源を用いており、真空容器801の材質にアルミナを用い、下記に示す条件で試験をおこなった。
【0022】
[CO含有ガスのプラズマ化条件]
COとNH3の総ガス流量:60sccm(standard cc per minutes) 真空容器内の圧力:2.0Pa
ソース電力:1200W ファラデーシールド電圧:600V ウェハバイアス電力:0W
[CO含有プラズマによるエッチング条件]
COとNH3の総ガス流量:60sccm 真空容器内の圧力:0.3Pa ソース電力:1200W
ファラデーシールド電圧:100V ウェハバイアス電力:100W
[CO含有プラズマの消失条件]
COとNH3の総ガス流量:0sccm 真空容器内の圧力:0.001Pa ソース電力:0W
ファラデーシールド電圧:0V ウェハバイアス電力:0W
[クリーニングガスのプラズマ化条件]
O2ガス流量:60sccm 真空容器内の圧力:2.0Pa ソース電力:1200W
ファラデーシールド電圧:600V ウェハバイアス電力:0W
[クリーニング条件]
O2ガス流量:60sccm 真空容器内の圧力:1.0Pa ソース電力:1200W
ファラデーシールド電圧:600V ウェハバイアス電力:0W
[クリーニングプラズマの消失条件]
O2ガス流量:0sccm 真空容器内の圧力:0.001Pa ソース電力:0W
ファラデーシールド電圧:0V ウェハバイアス電力:0W
【0023】
図9に示すとおり、CO比が増加するほど、クリーニングプラズマが生成する割合が低下し、クリーニングを行うためのプラズマ生成が困難になる。これはCO含有プラズマによりエッチングを行っている際に、真空容器801内壁に付着したC系の堆積物がプラズマの生成を阻害するためである。
【0024】
放電を開始するために必要な電圧を規定したパッシェンの法則によると、放電開始電圧は下記の式で定義される。
【数1】

【0025】
ここで、Vsは放電開始電圧を示し、安定してプラズマを生成するためにはこの放電開始電圧以上の電圧を印加する必要がある。本実験では真空容器801内壁に放電開始電圧以上の電圧を安定して印加するため、CO含有ガスとクリーニングガスをプラズマ化する際にファラデーシールド808に600Vの電圧を印加している。また、AとBはガス固有の定数、pは真空容器801内壁の圧力、dは真空容器801の形状による定数を示しており、真空容器801内に導入するガス種と圧力と真空容器801内の形状が同じ場合は、同じ値になる。一方、γは2次電子放出係数を示し、真空容器801内壁の状態に依存するものであり、この値が低い程放電開始電圧が高くなる。
【0026】
つまり、CO含有プラズマによりエッチングを行っている際に、真空容器801の内壁に付着したC系の堆積物によりγの値が低くなり、クリーニングプラズマを生成する際の放電開始電圧が増加することでプラズマが安定して生成できなくなった。
【0027】
実際に図9と同条件を用い、「CO含有ガスのプラズマ化」と「CO含有プラズマによるエッチング」と「CO含有プラズマの消失」を行った後のCO/NH流量比による真空容器801内壁に堆積したC系堆積物の膜厚の変化を計測した値を図10に示す。本図より、CO流量比が増加するほど、C系の堆積物の膜厚が増加しており、図9と図10の傾向に相関があることがわかる。尚、図10で計測した堆積物の主成分がCであることはXPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)を用いた表面組成分析で確認している。
【0028】
安定にクリーニングを行うためにはクリーニングプラズマの生成率が100%になる条件のみをCO含有ガスのプラズマ化とエッチング条件に用いる必要があるが、これでは処理可能なプロセスウィンドウを限定することになる。
【0029】
同様のことはCO含有プラズマにCHOHを用いた場合も発生し、ソース電力806や圧力によっては生成率が100%より低くなり、クリーニングプラズマの生成率の低下はCO含有プラズマ特有の問題であることがわかった。また、本実験は誘導結合型のプラズマ源を用いて行ったが、他のプラズマ源を用いても、原理的に同様のことが発生すると考える。
【0030】
本発明の目的はCO含有プラズマの条件によらず、安定してクリーニングプラズマを生成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記の課題を解決するため、本発明のプラズマエッチング方法においては、次のような技術的手段を講じた。
【0032】
すなわち、本発明のプラズマエッチング方法は、被エッチング材のエッチング時に真空容器内にカーボン堆積物を生じるプラズマエッチング方法において、前記被エッチング材のエッチング後は、プラズマ状態を維持したまま、前記被エッチング材をエッチングするエッチングガスと前記カーボン堆積物を除去するクリーニングガスとを切り替え、前記真空容器内に堆積したカーボンを除去することを特徴とする。
【0033】
本発明のプラズマエッチング方法は、更に、前記エッチングガスにより被エッチングウェハ上に形成された磁性膜をエッチングすることを特徴とする。
【0034】
本発明のプラズマエッチング方法は、更に、前記エッチングガスに可燃性ガスを用いた場合には、前記クリーニングガスとして可燃性ガスまたは不活性ガスを選択し、前記エッチングガスに不活性ガスを用いた場合には、前記クリーニングガスとして可燃性ガス、支燃性ガスまたは不活性ガスを選択することを特徴とする。
【0035】
本発明のプラズマエッチング方法は、更に、前記エッチングガスと前記クリーニングガスとの切り替えは、被エッチング材のエッチング後、ソース電力を印加したまま、前記エッチングガスを供給しながら前記クリーニングガスの導入を開始して、その後、前記エッチングガスの導入を停止し、ウェハバイアス電力は前記クリーニングガスの導入と同時に印加を停止して、前記プラズマ状態を維持して行われることを特徴とする。
【0036】
本発明のプラズマエッチング方法は、更に、前記被エッチングウェハ上に形成された磁性膜を、前記真空容器内に導入されたCとOの元素を含むCO含有ガスにソース電力を印加することでCO含有ガスをプラズマ化し、生成したCO含有プラズマを用いてエッチング加工し、該CO含有プラズマにて被エッチングウェハ上に形成された磁性膜を加工した後、ソース電力を印加したまま、クリーニングガスを導入し、その後CO含有ガスの導入を停止することで、該O元素またはH元素を含有したクリーニングガスを用いたクリーニングプラズマを生成することを特徴とする。
【0037】
また、本発明のプラズマエッチング方法は、前記被エッチング材のエッチング後は、プラズマ状態を維持したまま、前記被エッチング材をエッチングするエッチングガスと希ガスとを切り替え、次いで、プラズマ状態を維持したまま、前記希ガスと前記カーボン堆積物を除去するクリーニングガスとを切り替えることを特徴とする。
【0038】
また、本発明のプラズマエッチング方法は、更に、前記エッチングガスと前記希ガスと前記クリーニングガスとの切り替えは、前記被エッチング材のエッチング後は、ソース電力を印加したまま、前記エッチングガスを供給しながら前記希ガスの導入を開始し、その後、前記エッチングガスの導入を停止し、ソース電力を印加したまま、前記希ガスを供給しながら前記クリーニングガスの導入を開始し、その後、前記エッチングガスの導入を停止し、ウェハバイアス電力は、前記クリーニングガスの導入と同時に印加を停止して、前記プラズマ状態を維持して行われることを特徴とする。
【0039】
また、本発明のプラズマエッチング方法は、前記被エッチングウェハ上に形成された磁性膜を、前記真空容器内に導入されたCとOの元素を含む可燃性のCO含有ガスにソース電力を印加することでCO含有ガスをプラズマ化し、生成したCO含有プラズマを用いてエッチング加工し、該可燃性ガスを含有したCO含有プラズマにて被エッチングウェハ上に形成された磁性膜を加工した後、ソース電力を印加したまま、真空容器内に希ガス及びNガスを導入して、その後可燃性ガスを含有したCO含有ガスの導入を停止し、さらに支燃性ガスを含有したクリーニングガスを導入した後、希ガス及びNガスの導入を停止することで、該支燃性ガスを含有したクリーニングガスを用いたクリーニングプラズマを生成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、CO含有ガスを用いて被エッチングウェハ上に形成された磁性膜を加工する場合、エッチング中に生成されたC系の堆積物が真空容器内壁に付着することでクリーニングガスのプラズマ化が阻害され、真空容器内のクリーニングを行うことができない場合があるが、CO含有プラズマで被エッチングウェハを加工した後、プラズマを維持したままクリーニングガスを導入することで、クリーニングガスをプラズマ化するステップがなくても、クリーニングプラズマを生成することができ、CO含有プラズマの条件によらず安定して真空容器内壁のクリーニングを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】図1は本発明の第一の実施例である、CO含有プラズマとクリーニングプラズマを用いて磁性膜を加工する方法のシーケンス図である。
【図2】図2は本発明の第一の実施例を行う際のCO含有ガスとクリーニングガスとソース電力806とウェハバイアス電力810のタイムチャート図である。
【図3】図3はCO含有プラズマとしてCOとNHの混合ガスを用いたプラズマを、クリーニングプラズマとしてOガスを用いたプラズマを用い、第一の実施例を用いてCOとNHの混合比を替えクリーニングプラズマの生成率を計測した値を示す図である。
【図4】図4はエッチングガス及びクリーニングガスで用いるガス種の分類表である。
【図5】図5は本発明の第二の実施例である、可燃性ガスを含有するCO含有プラズマと支燃性ガスを含有するクリーニングプラズマを用いて磁性膜を加工する方法のシーケンス図である。
【図6】図6は本発明の第二の実施例を行う際のCO含有ガスとクリーニングガスと希ガス及びNガスとソース電力806のタイムチャートである。
【図7】図7は従来例のCO含有プラズマとクリーニングプラズマを用いて磁性膜を加工する方法のシーケンス図である。
【図8】図8は本実験で用いた実験装置の概略図である。
【図9】図9はCO含有プラズマとしてCOとNHの混合ガスを用いたプラズマを、クリーニングプラズマとしてOガスを用いたプラズマを用い、従来例の方法でCOとNHの混合比を替えクリーニングプラズマの生成率を計測した値を示す図である。
【図10】図10はCO/NH流量比による真空容器801内壁に堆積したC系堆積物の膜厚の変化を計測した値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0043】
本発明を実施するための第一の実施例を図1および図2を用いて説明する。図1はCO含有プラズマとクリーニングプラズマを用いて磁性膜を加工する方法のシーケンス図であり、図2は図1のシーケンスを行う際のCO含有ガスとクリーニングガスとソース電力806のタイムチャートを表している。本シーケンスは概略下記の七工程よりなる。
【0044】
図1において、ステップS101の第一の工程は所定の処理条件でコンディションを整えた真空容器801内に、FeやCoやNi等の元素を含む磁性膜が成膜された被エッチングウェハ802を搬入する工程である。本工程における所定の処理条件とは、エッチング中に真空容器801の温度変動を抑制するために予め真空容器801の温度が飽和するまで処理を行うエージング工程や、真空容器801内壁の状態を一定に保つために真空容器801内壁に膜を堆積させるシーズニング工程や、真空容器801内壁に堆積した膜を除去するクリーニング工程のことを指し、その際に用いる処理条件や使用するウェハの種類や使用するウェハの枚数は特に限定しない。
【0045】
ステップS102の第二の工程は、CO含有ガスの真空容器801内への供給を開始し、真空容器801内を所定の圧力に設定した後、ソース電力806とウェハバイアス電力810をONにすることで、CO含有ガスをプラズマ化する工程である。CO含有ガスとはCOやCOやCOSやCHOHやCOHやCHOCHやCHCOCH等のCとOの元素を含む単ガスや、COとNHの混合ガスやCOとHの混合ガスやCOとHOの混合ガスやCOとNの混合ガスやCOとHの混合ガスやCOと希ガスの混合ガス等のCとOの元素を含むガスとその他のガスとの混合ガスのことを示し、ガス中にCとOの元素を含んでいればそのガス種は特に限定しない。尚、図1のタイムチャートではソース電力806とウェハバイアス電力810を同時にONにしているが、ソース電力806をONした後にウェハバイアス電力810をONにしても、ウェハバイアス電力810をONにした後にソース電力806をONにしても構わない。
【0046】
ステップS103の第三の工程は、第二の工程で生成したCO含有プラズマを用いて被エッチングウェハ802上に形成されたFe・Co・Ni等の元素を含む磁性膜に所定のエッチングを施す工程である。必要であれば第二の工程と第三の工程で、真空容器801内の圧力とソース電力806とウェハバイアス電力810の値は変更しても構わないが、ソース電力806をOFFにしてはならない。また、必要であれば第二の工程と第三の工程で、CO含有ガスのガス比やガスの種類やガス流量を変更しても構わない。
【0047】
ステップS104の第四の工程は、クリーニングガスの真空容器801内への供給を開始した後、CO含有ガスの真空容器801内への導入を停止し、放電を維持しながら真空容器801内のガスをCO含有ガスからクリーニングガスに変更する工程である。必要であれば第三の工程と第四の工程で真空容器801内の圧力とソース電力806は変更しても構わないが、放電を維持するために第三の工程と第四の工程でソース電力806をOFFにしてはならない。第四の工程で導入するクリーニングガスは第二と第三の工程で真空容器801内壁に堆積したC系の膜を除去するために用いるものであり、OガスやOと希ガスを混合したガス等のO元素を含有したガスを用いることが望ましい。但し、C系の膜はH元素との反応でも除去できることが知られており、HガスやHOガスやHと希ガスを混合したガスやHOと希ガスを混合したガス等の、H元素を含有したガスをクリーニングガスに用いても構わない。
【0048】
また、図2では第四の工程でクリーニングガスの供給を開始してから、T1だけ時間が経過した後に、CO含有ガスの導入を停止しているが、真空容器801内のガスの滞在時間が数十ms〜数百msであることから、クリーニングガスの供給を開始すると同時にCO含有ガスの導入を停止しても、真空容器801内にガスが滞在し、プラズマは消失しない。しかし、CO含有ガスの導入を停止した後に、クリーニングガスの供給を開始した場合、真空容器801内にプラズマを生成するためのガスがなくなり、プラズマが消失する。よってプラズマの消失を防止するためには、T1の時間は0秒以上であることが望ましい。また、真空容器801内にCO含有ガスとクリーニングガスの両者を導入している間は、真空容器801内の十分なクリーニングを行えないため、T1の時間は短い方がよく、可能な限り5秒以内に設定することが望ましい。そのため、T1の値は0秒以上5秒以下であることが望ましい。
【0049】
第四の工程において、クリーニングガス中のイオンがウェハに入射することで、被エッチングウェハ802にダメージが入るのを抑制するため、ウェハバイアス電力810はクリーニングガスの導入と同時にOFFにすることが望ましい。しかし、被エッチングウェハ802上の膜も積極的にクリーニングしたい場合はONにしたままでも構わない。この際に必要であれば第三の工程と第四の工程でウェハバイアス電力810の値を変更しても構わない。
【0050】
ステップS105の第五の工程は、クリーニングガスを用いて生成したクリーニングプラズマにより真空容器801内壁に堆積したC系の膜を除去する工程である。必要であれば第四の工程と第五の工程で真空容器801内の圧力とソース電力806は変更しても構わない。また、クリーニングガス中のイオンがウェハに入射することで、被エッチングウェハ802にダメージが入るのを抑制するため、ウェハバイアス電力810はOFFにすることが望ましいが、被エッチングウェハ802上の膜も積極的にクリーニングしたい場合はONにし、所定の値の電力を供給しても構わない。
【0051】
ステップS106の第六の工程は、ソース電力806とウェハバイアス電力810をOFFにした後で真空容器801内に導入しているクリーニングガスの導入を停止し、その後真空容器801内のクリーニングガスを排気することで、クリーニングプラズマを消失させる工程である。図2では第六の工程でソース電力806をOFFにしてから、T2だけ時間が経過した後に、クリーニングガスの導入を停止しているが、真空容器801内のガスの滞在時間が数十ms〜数百msであることから、ソース電力806をOFFにすると同時にクリーニングガスの供給を停止しても、真空容器801内にガスが滞在し、プラズマは消失しない。しかし、クリーニングガスの供給を停止した後に、ソース電力806をOFFにした場合、真空容器801内にプラズマを生成するためのガスがない状態でソース電力806を印加することになり、ソース電力806を供給する電源に負荷がかかり、電源が故障する可能性がある。そのため、T2の時間は0秒以上であることが望ましい。
【0052】
ステップS107の第七の工程は、所定の処理が完了した被エッチングウェハ802を真空容器801内から搬出する工程である。
【0053】
実際に被エッチングウェハ802にSi基板上に磁性膜(CoFeB)を成膜したウェハを用い、図8に概略図を示したエッチング装置を用い、下記に示す条件で実験を行ったところ、磁性膜を所定の形状に加工することができ、図3に示したようにガス比によらず着火率100%でクリーニングプラズマを生成できることを確認した。尚、CO含有プラズマを生成するために用いたCOとNHは可燃性ガスであり、クリーニングプラズマを生成するために用いたOは支燃性ガスであるため、混合すると排気側で爆発する危険性がある。そのため、処理中は常に排気口805に10000sccm以上のNを流すことで排気ガスを爆発限界以下になるまで希釈し、実験をおこなった。
【0054】
[CO含有ガスのプラズマ化条件]
COとNH3の総ガス流量:60sccm(standard cc per minutes) 真空容器内の圧力:2.0Pa
ソース電力:1200W ファラデーシールド電圧:600V ウェハバイアス電力:0W
[CO含有プラズマによるエッチング条件]
COとNH3の総ガス流量:60sccm 真空容器内の圧力:0.3Pa ソース電力:1200W
ファラデーシールド電圧:100V ウェハバイアス電力:100W
[CO含有ガスとクリーニングガスの入れ替え条件]
COとNH3の総ガス流量:60sccm O2ガス流量:60sccm 真空容器内の圧力:1.0Pa
ソース電力:1200W ファラデーシールド電圧:100V ウェハバイアス電力:0W
[クリーニング条件]
O2ガス流量:60sccm 真空容器内の圧力:1.0Pa ソース電力:1200W
ファラデーシールド電圧:600V ウェハバイアス電力:0W
[クリーニングプラズマの消失条件]
O2ガス流量:0sccm 真空容器内の圧力:0.001Pa ソース電力:0W
ファラデーシールド電圧:0V ウェハバイアス電力:0W
【0055】
以上のことより、CO含有ガスを用いて被エッチングウェハ802上に形成されたFeやCoやNi等の元素を含む磁性膜を加工する場合、エッチング中に生成されたC系の堆積物が真空容器801内壁に付着することでクリーニングガスのプラズマ化が阻害され、クリーニングプラズマを生成できず、真空容器801内のクリーニングを行うことができない場合があるが、図1と図2に示した七つの工程を行うことにより、CO含有プラズマで被エッチングウェハ802上に形成され磁性膜を加工した後、プラズマを維持したままクリーニングガスを導入することが可能となり、クリーニングガスをプラズマ化するステップがなくてもクリーニングプラズマを生成することで、CO含有プラズマの条件によらず、安定してクリーニングプラズマを生成することができる。
【0056】
ステップS104の第四の工程からステップS106の第六の工程において、真空容器801内壁に付着したC系の堆積物を除去する際のクリーニングプラズマの処理時間に特に規定はないが、O元素を含有したガスやH元素を含有したガスを用いて生成したクリーニングプラズマにより、真空容器801内壁に付着したC系の堆積物を十分にクリーニングするためには第四の工程から第六の工程までの合計の処理時間を3秒以上にすることが望ましい。また、O元素を含有したガスやH元素を含有したガスを用いて生成したクリーニングプラズマに被エッチングウェハ802を長時間晒した場合、プラズマにより被エッチングウェハ802上に成膜された膜にダメージが入る可能性があるため、第四の工程から第六の工程までの合計の処理時間を120秒以下にすることが望ましい。
【0057】
また、図3に示した実施例では、CO含有プラズマを生成するために可燃性ガスであるCOとNHを、クリーニングプラズマを生成するために支燃性ガスであるOを用いたが、可燃性ガスと支燃性ガスを混合して流した場合、排気側で爆発が起こる危険性がある。そのため、図1と図2における第四の工程(CO含有ガスとクリーニングガスの入れ替え)を行う際に、可燃性ガスと支燃性ガスの混合による爆発を抑制するため、常に排気孔にNを流すことで排気ガスが爆発限界以下になるまで希釈した状態にし、実験を行う必要があった。
【0058】
一方、CO含有プラズマを生成するために可燃性ガスを用いた場合でも、クリーニングプラズマを生成するために可燃性ガスや不活性ガスを用いた場合、爆発の危険性はなくなり、Nで排気ガスを希釈する必要がない。また、CO含有プラズマを生成するために、不活性ガスを用いた場合には、クリーニングプラズマに可燃性ガスか支燃性ガスか不活性ガスを用いても爆発の危険性はなく、Nで排気ガスを希釈する必要がない。
【0059】
つまり、図4に示した可燃性ガスと支燃性ガスと不活性ガスの分類を示したマトリックス表において、CO含有ガスに可燃性ガスを用いた場合には、クリーニングガスに可燃性ガスまたは不活性ガスを選択して用いることで爆発の危険がなく本実施例を行うことができる。また、CO含有ガスに不活性ガスを用いた場合には、クリーニングガスに可燃性ガスか支燃性ガスか不活性ガスを用いることで爆発の危険がなく本実施例を行うことができる。
【実施例2】
【0060】
本発明を実施するための第二の実施例を図5および図6を用いて説明する。図5は可燃性ガスを含むCO含有ガスを用いて生成したCO含有プラズマと、支燃性ガスを含有するクリーニングガスを用いて生成したクリーニングプラズマを用いて磁性膜を加工する方法のシーケンス図であり、図6は図5のシーケンスを行う際に使用するCO含有ガスと希ガスとクリーニングガスとソース電力806のタイムチャートを表している。本シーケンスは概略下記の八工程よりなる。
【0061】
図5において、ステップS501の第一の工程は所定の処理条件でコンディションを整えた真空容器801内に、Fe・Co・Ni等の元素を含む磁性膜が成膜された被エッチングウェハ802を搬入する工程である。本工程における所定の処理条件とは、エッチング中に真空容器801の温度変動を抑制するために予め真空容器801の温度が飽和するまで処理を行うエージング工程や、真空容器801内壁の状態を一定に保つために真空容器801内壁に膜を堆積させるシーズニング工程や、真空容器801内壁に堆積した膜を除去するクリーニング工程のことを指し、その際に用いる処理条件や使用するウェハの種類や使用するウェハの枚数は特に限定しない。
【0062】
ステップS502の第二の工程は、可燃性ガスを含有するCO含有ガスの真空容器801内への供給を開始し、真空容器801内を所定の圧力に設定した後、ソース電力806とウェハバイアス電力810をONにすることで、可燃性ガスを含有するCO含有ガスをプラズマ化する工程である。可燃性ガスを含有するCO含有ガスとはCOやCOSやCOや、CHOHやCOHやCHOCHやCHCOCH等のCとOの元素を含む可燃性の単ガスや、COとNHの混合ガスやCOとHの混合ガスやCOとHOの混合ガスやCOとNの混合ガスやCOとHの混合ガスやCOと希ガスの混合ガス等のCとOの元素を含むガスとその他のガスとの混合ガスのことを示し、ガス中にCとOの元素を含んだ可燃性ガスであれば、そのガス種は特に限定しない。尚、図6のタイムチャートではソース電力806とウェハバイアス電力810を同時にONにしているが、ソース電力806をONした後にウェハバイアス電力810をONにしても、ウェハバイアス電力810をONにした後にソース電力806をONにしても構わない。
【0063】
ステップS503の第三の工程は、第二の工程で生成した可燃性ガスを含むガスを用いて生成したCO含有プラズマを用いて被エッチングウェハ802上に形成された磁性膜に所定のエッチングを施す工程である。必要であれば第二の工程と第三の工程で、真空容器801内の圧力とソース電力806とウェハバイアス電力810の値は変更しても構わないが、ソース電力806をOFFにしてはならない。また、必要であれば第二の工程と第三の工程で、可燃性ガスを含有するCO含有ガスのガス比やガスの種類やガス流量を変更しても構わない。
【0064】
ステップS504の第四の工程は、He・Ne・Ar・Kr・Xe等の希ガス及びNガスを真空容器801内への供給を開始した後、可燃性ガスを含有するCO含有ガスの真空容器801内への導入を停止し、放電を維持しながら真空容器801内のガスをCO含有ガスから希ガス及びNガスに変更する工程である。必要であれば第三の工程と第四の工程で真空容器801内の圧力とソース電力806は変更しても構わないが、放電を維持するために第三の工程と第四の工程の間でソース電力806をOFFにしてはならない。
【0065】
図6では第四の工程で希ガス及びNガスの供給を開始してから、T3だけ時間が経過した後に、CO含有ガスの導入を停止しているが、真空容器801内のガスの滞在時間が数十ms〜数百msであることから、希ガス及びNガスの供給を開始すると同時にCO含有ガスの導入を停止しても、真空容器801内にガスが滞在し、プラズマは消失しない。しかし、CO含有ガスの導入を停止した後に、希ガス及びNガスの供給を開始した場合、真空容器801内にプラズマを生成するためのガスがなくなり、プラズマが消失する。そのため、T3の時間は0秒以上であることが望ましい。第四の工程において、希ガス及びNガス中のイオンがウェハに入射することで、被エッチングウェハ802にダメージが入るのを抑制するため、ウェハバイアス電力810は希ガス及びNガスの導入と同時にOFFにすることが望ましい。
【0066】
ステップS506の第五の工程は、支燃性ガスを含有するクリーニングガスを真空容器801内への供給を開始した後、希ガス及びNガスの真空容器801内への導入を停止し、放電を維持しながら真空容器801内のガスを希ガス及びNガスから支燃性含有するクリーニングガスに変更する工程である。必要であれば第四の工程と第五の工程で真空容器801内の圧力とソース電力806は変更しても構わないが、放電を維持するために第四の工程と第五の工程の間でソース電力806をOFFにしてはならない。また、第五の工程で導入する支燃性ガスを含有したクリーニングガスは第二と三の工程で真空容器801内壁に堆積したC系の膜を除去するために用いるものである。
【0067】
図6では第五の工程でクリーニングガスの供給を開始してから、T4だけ時間が経過した後に、希ガス及びNガスの導入を停止しているが、真空容器801の内のガスの滞在時間が数十ms〜数百msであることから、クリーニングガスの供給を開始すると同時に希ガス及びNガスの導入を停止しても、真空容器801内にガスが滞在し、プラズマは消失しない。しかし、希ガス及びNガスの導入を停止した後に、クリーニングガスの供給を開始した場合、真空容器801内にプラズマを生成するためのガスがなくなり、プラズマが消失する。そのため、T4の時間は0秒以上であることが望ましい。
【0068】
また、ステップS505の第五の工程において、クリーニングガス中のイオンがウェハに入射することで、被エッチングウェハ802にダメージが入るのを抑制するため、ウェハバイアス電力810はOFFにすることが望ましい。しかし、被エッチングウェハ802上の膜も積極的にクリーニングしたい場合はONにして、所定の値の電力を供給しても構わない。
【0069】
ステップS506の第六の工程は、支燃性ガスを含有するクリーニングガスを用いて生成したクリーニングプラズマにより真空容器801内壁に堆積したC系の膜を除去する工程である。必要であれば第五の工程と第六の工程で真空容器801内の圧力とソース電力806は変更しても構わない。また、第六の工程においてクリーニングガス中のイオンがウェハに入射することで、被エッチングウェハ802にダメージが入るのを抑制するため、ウェハバイアス電力810はOFFにすることが望ましいが、被エッチングウェハ802上の膜も積極的にクリーニングしたい場合はONにし、所定の値の電力を供給しても構わない。
【0070】
ステップS507の第七の工程は、ソース電力806とウェハバイアス電力810をOFFにした後で真空容器801内に導入している支燃性ガスを含むクリーニングガスの導入を停止し、その後真空容器801内のクリーニングガスを排気することで、クリーニングプラズマを消失させる工程である。図6では第六の工程でソース電力806をOFFにしてから、T5だけ時間が経過した後に、クリーニングガスの導入を停止しているが、真空容器801内のガスの滞在時間が数十ms〜数百msであることから、ソース電力806をOFFにすると同時にクリーニングガスの供給を停止しても、真空容器801内にガスが滞在し、プラズマは消失しない。しかし、クリーニングガスの供給を停止した後に、ソース電力806をOFFにした場合、真空容器801内にプラズマを生成するためのガスがない状態にソース電力806を印加することになり、ソース電力806を供給する電源に負荷がかかり、電源が故障する可能性がある。そのため、T5の時間は0秒以上であることが望ましい。
【0071】
ステップS508の第八の工程は、所定の処理が被エッチングウェハ802を真空容器801内から搬出する工程である。CO含有ガスに可燃性ガスを用い、クリーニングガスに支燃性ガスを含有するガスを用いた場合に図1と図2に示した第一の実施例を用いた場合、図1と図2の第四の工程の際に可燃性ガスを含有するCO含有ガスと支燃性ガスを含有するクリーニングガスが真空容器801の排気側で混合し、排気されたガスをN等のガスで希釈しないと爆発する危険性があるが、上記に述べた第二の実施例を用いることで、図5と図6の第五の工程で可燃性ガスを含有するCO含有ガスと希ガス及びNガスを入れ替えることが可能となり、また図5と図6の第五の工程で希ガス及びNガスと支燃性ガスを含有するクリーニングガスを入れ替えることが可能となることから、可燃性ガスを含有するCO含有ガスと支燃性ガスを含有するクリーニングガスが混合することを防止したまま、クリーニングガスをプラズマ化するステップがなくてもクリーニングプラズマを生成することができ、CO含有プラズマの条件によらず、安定してクリーニングプラズマを生成し、かつ排気されたガスをN等のガスで希釈しなくても爆発する危険性がなくなる。
【0072】
図5と図6の第四の工程において可燃性ガスを含有するCOガスと希ガス及びNガスを入れ替える時間と第五の工程において希ガス及びNガスと支燃性ガスを含有するクリーニングガスを入れ替える時間の工程の合計時間が短すぎると、真空容器801内で可燃性ガスを含有するCOガスと支燃性ガスを含有するクリーニングガスが混合する可能性があるが、通常真空容器801内でのガスの平均滞在時間は数十〜数百msのため、第四の工程と第五の工程の合計時間が1秒以上あれば混合する可能性はない。また、図5と図6の第四の工程と第五の工程の時間が長すぎると、希ガスにより被エッチングウェハ802にダメージが入る可能性があるため、第四の工程と第五の工程時間を30秒以下にすることが望ましい。
【0073】
さらに、ステップS505の第五の工程からステップS507の第七の工程において、真空容器801内壁に付着したC系の堆積物を除去する際のクリーニングプラズマの処理時間に特に規定はないが、支燃性ガスを含有したガスを用いて生成したプラズマにより、真空容器801内壁に付着したC系の堆積物を十分にクリーニングするためには第五の工程から第七の工程までの合計の処理時間を3秒以上にすることが望ましい。また、支燃性ガスを含有したガスを用いて生成したクリーニングプラズマに被エッチングウェハ802を長時間晒した場合、プラズマにより被エッチングウェハ802にダメージが入る可能性があるため、第五の工程から第七の工程までの合計の処理時間を120秒以下にすることが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本発明によれば、CとOの元素を含有するガスを用いて磁性膜を加工する工程を行った後に安定して真空容器801内壁をクリーニングするためのプラズマを生成することができ、磁気抵抗メモリ等に用いられる磁性膜の生産安定性を著しく高めることができる。
【符号の説明】
【0075】
801 真空容器
802 被エッチングウェハ
803 ウェハステージ
804 ガス導入孔
805 排気口
806 ソース電力
807 アンテナ
808 ファラデーシールド
809 ファラデーシールド電圧
810 ウェハバイアス電力
811 クリーニングウェハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体のエッチング時に真空容器内にカーボン堆積物を生じるプラズマエッチング方法において、
前記被処理体のエッチング後は、プラズマ状態を維持したまま、前記被処理体をエッチングするエッチングガスと前記カーボン堆積物を除去するクリーニングガスとを切り替え、前記真空容器内に堆積したカーボンを除去することを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマエッチング方法において、
前記エッチングガスにより、前記被処理体として被エッチングウェハ上に形成された磁性膜をエッチングすることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプラズマエッチング方法において、
前記エッチングガスに可燃性ガスを用いた場合には、前記クリーニングガスとして可燃性ガスまたは不活性ガスを選択し、前記エッチングガスに不活性ガスを用いた場合には、前記クリーニングガスとして可燃性ガス、支燃性ガスまたは不活性ガスを選択することを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のプラズマエッチング方法において、
前記エッチングガスと前記クリーニングガスとの切り替えは、被エッチング材のエッチング後、ソース電力を印加したまま、前記エッチングガスを供給しながら前記クリーニングガスの導入を開始して、その後、前記エッチングガスの導入を停止し、ウェハバイアス電力は前記クリーニングガスの導入と同時に印加を停止して、前記プラズマ状態を維持して行われることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項5】
請求項2に記載のプラズマエッチング方法において、
前記被エッチングウェハ上に形成された磁性膜を、前記真空容器内に導入されたCとOの元素を含むCO含有ガスにソース電力を印加することでCO含有ガスをプラズマ化し、生成したCO含有プラズマを用いてエッチング加工し、該CO含有プラズマにて被エッチングウェハ上に形成された磁性膜を加工した後、ソース電力を印加したまま、クリーニングガスを導入し、その後CO含有ガスの導入を停止することで、該O元素またはH元素を含有したクリーニングガスを用いたクリーニングプラズマを生成することを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項6】
請求項1または請求項2記載のプラズマエッチング方法において、
前記被処理体のエッチング後は、プラズマ状態を維持したまま、前記被処理体をエッチングするエッチングガスと希ガスとを切り替え、次いで、プラズマ状態を維持したまま、前記希ガスと前記カーボン堆積物を除去するクリーニングガスとを切り替えることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項7】
請求項6に記載のプラズマエッチング方法において、
前記エッチングガスと前記希ガスと前記クリーニングガスとの切り替えは、前記被エッチング材のエッチング後は、ソース電力を印加したまま、前記エッチングガスを供給しながら前記希ガスの導入を開始し、その後、前記エッチングガスの導入を停止し、ソース電力を印加したまま、前記希ガスを供給しながら前記クリーニングガスの導入を開始し、その後、前記エッチングガスの導入を停止し、ウェハバイアス電力は、前記クリーニングガスの導入と同時に印加を停止して、前記プラズマ状態を維持して行われることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項8】
請求項2に記載のプラズマエッチング方法において、
前記被エッチングウェハ上に形成された磁性膜を、前記真空容器内に導入されたCとOの元素を含む可燃性のCO含有ガスにソース電力を印加することでCO含有ガスをプラズマ化し、生成したCO含有プラズマを用いてエッチング加工し、該可燃性ガスを含有したCO含有プラズマにて被エッチングウェハ上に形成された磁性膜を加工した後、ソース電力を印加したまま、真空容器内に希ガス及びNガスを導入して、その後可燃性ガスを含有したCO含有ガスの導入を停止し、さらに支燃性ガスを含有したクリーニングガスを導入した後、希ガス及びNガスの導入を停止することで、該支燃性ガスを含有したクリーニングガスを用いたクリーニングプラズマを生成することを特徴とするプラズマエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−51227(P2013−51227A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186809(P2011−186809)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】