説明

プラズマチャンバで使用される上方電極から表面金属汚染を洗浄するための方法

【解決手段】プラズマチャンバで使用される上方電極から金属汚染物質を洗浄するための方法。方法は、濃縮水酸化アンモニウムと、過酸化水素と、水とからなる洗浄溶液に上方電極を浸す工程を含む。洗浄溶液は、フッ酸及び塩酸を含まない。方法は、更に、上方電極を希硝酸に浸し、洗浄後の上方電極をすすぐ、随意の工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本出願は、米国特許法第119条に基づいて、2009年12月8日出願の「METHODOLOGY FOR CLEANING OF SURFACE METAL CONTAMINATION FROM AN UPPER ELECTRODE USED IN A PLASMA CHAMBER(プラズマチャンバで使用される上方電極から表面金属汚染を洗浄するための方法)」と題された米国仮出願第61/288,087号の優先権を主張する。この出願は、参照によってその全内容を本明細書に組み込まれる。
【0002】
容量結合プラズマ(CCP)チャンバにおいて、集積回路は、ウエハ又は基板の上に、パターン化されたマイクロエレクトロニクス層を形成することによって作成される。基板の処理では、上方電極と下方電極との間にプラズマが生成され、このようなプラズマは、多くの場合、基板の上に膜を蒸着させるために又は膜の対象部分をエッチングするために使用される。電極を使用した多数時間に及ぶ高周波(RF)運転の後、チャンバは、エッチング速度の降下及びエッチング均一性のズレを見せる。エッチングパフォーマンスの低下は、電極のシリコン表面の形態の変化及び電極のプラズマ暴露表面の汚染によって引き起こされる。したがって、電極が表面汚染の基準を満たし尚且つ製造の歩留まりが向上されるように基板を洗浄するため及び表面粗度を低減させるための、系統的で且つ効果的な方法が必要である。
【発明の概要】
【0003】
プラズマチャンバで使用される上方電極から金属汚染物質を洗浄するための方法は、水酸化アンモニウムと、過酸化水素と、水とで構成され、好ましくは、NH3基準で28〜30重量%の濃縮水酸化アンモニウム水溶液と、29〜31重量%の過酸化水素水溶液と、水とで構成され、1〜2:1〜2:2から1〜2:1〜2:20の体積比で構成される洗浄溶液に、上方電極全体を浸すことを含む。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】1つの実施形態にしたがった、上方電極を洗浄するための代表的な工程を示したフローチャートである。
【0005】
【図2】別の実施形態にしたがった、上方電極を洗浄するための固定具の概略断面図である。
【0006】
【図3A】図2の固定具の斜視図である。
【0007】
【図3B】図3Aの領域Bの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
代表的なCCPチャンバは、チャンバ壁と、プラズマ暴露下面を有する上方電極と、基板サポートと、基板サポートに埋め込まれ、基板の処理中に基板を保持するように動作可能な静電チャックとを含んでよい。チャンバ壁は、基板を移送してチャンバに出し入れするための基板移送用のスロット又はゲートを含むことが好ましい。チャンバ壁は、随意として、適切な耐摩耗性材料でコーティングされてよい。大地への電気路を提供するために、チャンバ壁は、アルミニウムなどの金属で作成されて、電気的に接地されてよい。基板サポートは、下方電極として機能するアルミニウム板を含むことができ、(通常は整合回路を通じて)RF電源につながれる。上方電極は、(通常は整合回路を通じて)RF電源及びプロセスガス用の1本又は2本以上のガスラインにつながれてよい。上方電極及び下方電極の通電には、その他のタイプの回路構成が使用されてもよい。例えば、上方電極は、下方電極に供給される電力のための帰還路を提供するために接地されてよい。或いは、下方電極は、異なる周波数を有する2つ又は3つ以上のRF電源につながれてよい。上方電極は、下方電極から隔てられ、プラズマを発生させるための空間を下方電極との間に形成している。動作中、上方電極及び/又は下方電極は、プロセスガスを電気的に励起させてプラズマにする。
【0009】
上方電極は、単独ピースの電極であってよい、又は複数ピースからなる電極であってよい。例えば、上方電極は、一体構造のシャワーヘッド型電極を含んでよい、又は内側のシャワーヘッド型電極板と、外側の環状電極リングを形成する1つ若しくは2つ以上の部分とを含んでよい。上方電極は、例えばアルミニウム又は黒鉛の裏当て板などの裏当て部材を含むことが好ましい。一体構造のシャワーヘッド型電極、又は内側のシャワーヘッド型電極板と外側の電極リングは、随意として、エラストマ接合材料(エラストマ系結合剤)などの接合材料によって裏当て部材に接合されてよい。上方電極におけるエラストマ接合材料の使用に関する詳細は、同一出願人による米国特許第6,376,385号、第6,194,322号、第6,148,765号、及び第6,073,577号に開示されている。これらの特許は、全て、参照によってその全体を本明細書に組み込まれる。エラストマ系結合剤は、上方電極の温度循環による熱膨張を補償するために、電極と裏当て部材との間の運動を可能にする。エラストマ系結合剤は、導電性及び/又は熱伝導性の充填剤を含んでよく、高温で安定である触媒硬化ポリマであってよい。例えば、エラストマ系結合剤は、シリコーンポリマで形成されてよく、充填剤は、アルミニウム合金又はシリコン粉末で形成されてよい。低電気抵抗を提供するため及び電極汚染を最小限に抑えるためには、上方電極は、単結晶シリコンで形成されることが好ましい。裏当て部材、エラストマ系結合剤、及びシャワーヘッド型電極は、上方電極をプロセスガスが通り抜けることを可能にする複数の穴、すなわちガス出口を含んでよい。好ましくは、上方電極のなかの穴の直径は、600μmから1000μmである。
【0010】
プラズマ処理中に、上方電極は、(例えば上方電極の下で処理された基板からの)Ca、Cr、Co、Cu、Fe、Li、Mg、Mo、Ni、K、Na、Ti、Znなどの金属によって汚染されることがある。プラズマ処理中に、このような金属は、上方電極から解放されて、プラズマエッチングなどの処理を経ている基板を汚染することがある。
【0011】
処理された基板の金属汚染を防ぐために、上方電極は、一定数のRF時間を経た後に、定期的にチャンバから取り出されて洗浄される。或いは、本明細書で説明される洗浄は、新しい上方電極の製造の最終段階として適用されてよい。図1は、1つの実施形態にしたがった、上方電極を洗浄するための代表的な工程を示したフローチャート100を示している。工程101において、上方電極は、上方電極から有機汚染物質を除去するために、10分から1時間などの、好ましくは約30分の、適切な時間にわたってイソプロピルアルコール(IPA)に浸される。本明細書で使用される「約」という用語は、±10%を意味する。
【0012】
工程102において、上方電極は、クリーンルームのワイプ(縁を閉じて洗浄を終えた状態の、ポリマを編み上げたものである、VWR LabShop(イリノイ州バタビア)によって製造されたクラス100耐酸性クリーンルームワイプなど)で拭き掃除され、1分から10分などの、好ましくは約2分の、適切な時間にわたって脱イオン水(DIW)ですすがれる。図2は、上方電極300を上に載せて拭き掃除することができる固定具208の概略断面図を示している。図3Aは、上方電極300を支えている固定具208の斜視図を示しており、図3Bは、図3Aの領域Bの拡大概略断面図を示している。ワイピングツール200は、Teflon(登録商標)(ポリテトラフルオロエチレン)で形成されることが好ましく、持ち手部分202と、切頭円錐部分203とを含む。切頭円錐部分203は、ワイプ206で覆われた平坦面204を有し、ワイプ206は、拭き掃除中に、IPAなどの洗浄溶液で湿らすことができる。ワイピングツール200の人間の作業員は、持ち手部分202を持ち、上向きの力210を加えてワイピングツール200の上向きの平坦面204を上方電極300の下向きの表面(例えばプラズマ暴露表面)に接触させることが好ましい。更に、固定具208は、拭き掃除中に回転されてよい。
【0013】
図2、図3A、及び図3Bに示されるように、洗浄対象とされる上方電極300のサイズに合わせた固定具208は、頑丈な基部枠と、上方電極300のプラズマ暴露表面が下を向くように上方電極300を支える3本又は4本以上の垂直サポート部材とを有する。各サポート部材の頂部は、上方電極300の縁を載せる内側の段差を有することが好ましい。段差は、プラズマ暴露表面の洗浄中に上方電極300がサポート部材から滑り落ちるのを防ぐ。サポート部材及び基部は、Teflon(登録商標)などの化学的に耐性のある材料でコーティングされる及び/又は作成されることが好ましい。
【0014】
工程103において、上方電極は、好ましくは室温で、10分から60分などの適切な時間にわたって洗浄溶液に浸される。洗浄溶液は、水酸化アンモニウムと、過酸化水素と、水とを、好ましくは、濃縮水酸化アンモニウム水溶液(CAS# 1336−21−6)(NH3基準で28〜30重量%、好ましくは29重量%)と、過酸化水素水溶液(CAS# 7722−84−1)(29〜31重量%、好ましくは29重量%)と、水とを、1〜2:1〜2:2から1〜2:1〜2:20の体積比で、好ましくは1〜2:1〜2:2から1〜2:1〜2:15の体積比で、更に好ましくは1:1:2から1:1:10の体積比で、最も好ましくは1:1:10の体積比で混ぜ合わせることによって作成される。
【0015】
洗浄溶液中の過酸化水素は、水と原子状酸素とに分解する。原子状酸素は、上方電極上の金属汚染物質を酸化させる。洗浄溶液中のアンモニウムイオンは、酸化された金属汚染物質をキレートし、可溶性の複合体を形成することができる。例えば、Cu汚染物質は、Cu+H22=CuO+H2O、CuO+4NH3+H2O=Cu(NH342++2OH-のように洗浄溶液と反応する。
【0016】
工程104において、上方電極は、残る洗浄溶液を除去するために、約5分などの適切な時間にわたってDIWですすがれる。
【0017】
工程105において、上方電極(表側及び裏側の両方)は、DIWに浸されたクリーンルームワイプを使用して、1分から10分などの、好ましくは約2分の、適切な時間にわたって拭き掃除される。
【0018】
随意の工程106において、上方電極は、1分から10分などの、好ましくは2分から5分の、適切な時間にわたって希硝酸溶液(CAS# 7697−37−2)(1〜5重量%、好ましくは2重量%)に浸される。希硝酸は、上方電極から更に金属汚染物質を除去するのに効果的である。
【0019】
もし、随意の工程107が実施されるならば、その後には工程108が続き、上方電極は、残る希硝酸を除去するために、1分から10分などの、好ましくは約5分の、適切な時間にわたってDIWですすがれる。
【0020】
工程101から108は、1回又は2回以上繰り返すことができる。
【0021】
工程109において、上方電極は、クラス100又はそれよりも高水準のクリーンルームに移動される。
【0022】
工程110において、上方電極は、1分から30分などの、好ましくは約10分の、適切な時間にわたって超純水ですすがれる。
【0023】
この洗浄プロセスの後には、従来のその他の洗浄工程が続くことができる。
【0024】
上方電極のこの洗浄プロセスは、フッ酸による機械的研磨又は処理を使用せず、ゆえに、エラストマ系結合剤に対する過剰な摩耗及び損傷を防ぐ。この洗浄プロセスは、容易にアクセス可能な表面、及びネジ穴内やガス通路内の表面などのその他の表面の両方から、銅及びその他の金属汚染を除去するのに効果的である。
【0025】
【表1】

【0026】
表1は、洗浄前及び洗浄後における、シリコンシャワーヘッド型電極のプラズマ暴露表面についての元素分析を示している。
【0027】
人間の作業員は、人が触れることによる有機汚染を防ぐために、本明細書で説明される洗浄プロセスの実行中及び工程間における上方電極の取り扱い中に、手袋を着用していることが好ましい。また、或る工程で生成された汚染物質又は粒子が後続の工程で上方電極に移ることがないように、人間の作業員は、必要ならばいつでも、新しい手袋を着用することができる。
【0028】
洗浄方法及び洗浄溶液は、具体的な実施形態を参照にして詳細に説明されてきたが、当業者にならば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく様々な変更及び修正がなされてよいこと並びに均等物が採用されてよいことが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマチャンバで使用される上方電極から金属汚染物質を洗浄するための方法であって、
水酸化アンモニウムと、過酸化水素と、水とで構成される洗浄溶液に前記上方電極全体を浸すことを備える方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記上方電極は、10分から60分にわたって前記洗浄溶液に浸される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、更に、
前記洗浄溶液に浸す前に、
前記上方電極を約30分にわたってイソプロピルアルコールに浸すことと、
前記上方電極をクリーンルームワイプで拭き掃除し、前記上方電極を約2分にわたって脱イオン水ですすぐことと、
前記洗浄溶液に浸した後に、
前記上方電極を約5分にわたって脱イオン水ですすぐことと、
前記上方電極を約2分にわたって脱イオン水を使用してクリーンルームワイプで拭き掃除することと、
随意として、前記上方電極を2分から5分にわたって2%の硝酸溶液に浸し、前記上方電極を約1分から10分にわたって脱イオン水ですすぐことと、
を備える方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、更に、
前記工程を少なくとも1回繰り返し、その後に続いて前記上方電極を約1分から30分にわたって超純水ですすぐことを備える方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、濃縮水酸化アンモニウム水溶液をNH3基準で28〜30重量%と、過酸化水素水溶液を29〜31重量%と、水とを、1〜2:1〜2:2から1〜2:1〜2:20の水酸化アンモニウム:過酸化水素:水の体積比で混ぜ合わせることによって用意される、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
前記体積比は、1:1:2から1:1:10である、方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、
前記上方電極は、単結晶シリコンのシャワーヘッド型電極を含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、フッ酸及び塩酸を含まない、方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄は、前記上方電極のプラズマ暴露表面を研磨することなく行われる、方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄は、クラス10000又はそれよりも高水準のクリーンルームで行われる、方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、
前記上方電極は、エラストマ系結合剤によってシリコンのシャワーヘッド型電極に接合されたアルミニウム又は黒鉛の裏当て部材を含む、方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、更に、
洗浄に先立って前記上方電極をプラズマチャンバから取り出すことと、
洗浄後の前記上方電極を同じ又は異なるチャンバに再び取り付けることと、
を備える方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、Cu汚染を3000×1010原子数/cm2超えから50×1010原子数/cm2未満に減少させる、方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、Ni汚染を200×1010原子数/cm2超えから50×1010原子数/cm2未満に減少させる、方法。
【請求項15】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、Zn汚染を250×1010原子数/cm2超えから75×1010原子数/cm2未満に減少させる、方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、Fe汚染を50×1010原子数/cm2超えから5×1010原子数/cm2未満に減少させる、方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、Ca汚染を700×1010原子数/cm2超えから400×1010原子数/cm2未満に減少させる、方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、Mg汚染を50×1010原子数/cm2超えから20×1010原子数/cm2未満に減少させる、方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、K汚染を450×1010原子数/cm2超えから5×1010原子数/cm2未満に減少させる、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、Na汚染を1500×1010原子数/cm2超えから50×1010原子数/cm2未満に減少させる、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、
前記洗浄溶液は、Ti汚染を250×1010原子数/cm2超えから75×1010原子数/cm2未満に減少させる、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【公表番号】特表2013−514173(P2013−514173A)
【公表日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−544473(P2012−544473)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【国際出願番号】PCT/US2010/003092
【国際公開番号】WO2011/084127
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】