説明

プラズマ処理方法及び電気光学装置の製造方法

【課題】処理シーケンスにより、異常放電を防止して、静電チャック及び基板が損傷する
のを防止することができるプラズマ処理方法及び電気光学装置の製造方法を提供する。
【解決手段】チャンバー12内に置かれた基板Pに対して表面処理を施す際に、高周波電
圧印加によりプラズマを発生させて表面処理を行い、その処理時の基板Pの発熱に対して
冷却ガスを使用するプラズマ処理方法において、処理開始時に高周波電圧の供給を一旦遮
断した後、前記冷却ガスを導入することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶装置のような電気光学装置のウエハ(以下、基板)を製造するのに使用
されるプラズマ処理方法及び電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気光学装置のパネルの製造工程において、基板(例えば、石英基板)に成膜やドライ
エッチング等の表面処理を施すには、基板の平面度を保ちながら、それを保持する必要が
ある。このような保持手段には、静電気力によって基板をチャックする静電チャックが、
真空中でも使用可能であることから用いられている。
静電チャックは、セラミックス等の絶縁物内に設けた1つまたは複数の電極に電圧を印
加して、吸着物である基板と上記電極との間に正、負の電荷を生じさせ、この間に働く静
電気力によって基板を吸着し保持する。2つの電極間に直流電圧を印加する双極型のもの
と、単一電極に直流電圧を印加する単極型のものがある。
【0003】
ところで、基板がシリコン基板の場合は、静電チャックを用いてそれにシリコン基板を
吸着保持できるが、基板が石英基板の場合は、それを静電チャックで吸着することができ
ない。これは、シリコン基板は、半導体であり電荷の移動度が高く帯電し易いのに対し、
石英基板は、絶縁体であり電荷の移動度が低く帯電し難いためである。
従って、基板として石英基板を使用する場合は、基板の裏面に静電チャック用のポリシ
リコン等の導電膜を形成し、電荷の移動度を高くし帯電し易くする工夫がなされている(
例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、石英基板等の基板に、成膜やドライエッチング等の表面処理を施す場合、例えば
酸化膜のエッチング時などには、基板は温度が上がり易く、そのため基板の下面をHe等
の不活性ガスを供給して冷却することが行われている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
ところが、静電チャックにおいて、基板を吸着して冷却ガスを供給しつつプラズマを発
生させると、異常放電を起こすことがあった。すなわち、静電チャック板の表面における
ガス流出口(ガス流路の流出口)の部位において異常放電が発生し、そのガス流出口の周
縁、さらにはこのガス流出口に対応する基板の裏面部位が欠けたり、破損したりするなど
の損傷を受けることがあった。
【0006】
前述の特許文献2には、半導体の製造工程において、半導体基板(例えば、シリコン基
板)に成膜やドライエッチング等の加工(処理)を施す際に、吸着した基板の下面にその
ガス流路から冷却ガスを供給して、プラズマ発生用の電極をなす金属製ベース部材に高周
波電圧を印加してプラズマを発生させる際に、基板と静電チャックとの間で発生する異常
放電を防ぐ手段として、金属製ベース部材内におけるガス流路の壁面に絶縁材層を形成す
ることで、金属製ベース部材をなす金属が露出しないため、ここを通過するガスは、プラ
ズマ発生のための高周波電圧が同ベース部材に印加されても励起されないため高電位とな
らず、異常放電を防止できること、が記載されている。
【特許文献1】特開2000−208594号公報
【特許文献2】特開2005−268654号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の先行技術では、基板吸着時に、基板裏面の冷却ガス導入口
からの冷却ガスを冷却ガス導入管内で放電させないために、ガス流路の壁面に絶縁材層を
形成するように構造を変更することが必要である。
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、構造を変更することなく、処理シーケンスによ
り、異常放電を防止して、静電チャック及び基板が損傷するのを防止することができるプ
ラズマ処理方法及び電気光学装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるプラズマ処理方法は、チャンバー内に置かれた基板に対して表面処理を施
す際に、高周波電圧印加によりプラズマを発生させて表面処理を行い、その処理時の基板
の発熱に対して冷却ガスを使用するプラズマ処理方法において、処理開始時に高周波電圧
の供給を一旦遮断した後、前記冷却ガスを導入することを特徴とする。
本発明によるこのような方法によれば、処理開始時に高周波電圧の供給を一旦遮断した
後、冷却ガスを導入するので、構造を変更することなく、処理シーケンスにより、異常放
電を防止して、静電チャック及び基板が損傷するのを防止することができる。
【0009】
本発明による電気光学装置の製造方法は、基板の裏面に静電チャック用の導電膜を形成
した後、前記基板の表面に表面処理を施し、素子パターンを形成して素子基板を作製する
際に、チャンバー内において、高周波電圧印加によりプラズマを発生させて前記表面処理
を行い、その処理時の発熱に対して冷却ガスを使用する電気光学装置の製造方法において
、前記基板の導電膜を静電チャックの吸着面に載置し、処理開始時に、プラズマ発生用ガ
スの導入後、高周波電圧を印加することにより、前記静電チャックの吸着面及び前記基板
の裏面の導電膜を帯電させ、その後、前記静電チャックに直流電圧を印加して、前記基板
を前記静電チャックに静電吸着し、その吸着状態で、前記高周波電圧の供給を一旦遮断し
た後、前記冷却ガスを前記静電チャックの吸着面から前記基板の裏面に導入することを特
徴とする。
【0010】
本発明によるこのような製造方法によれば、前述のプラズマ処理方法の効果に加えて、
プラズマ発生用の反応性ガスを導入後、高周波電圧を印加することにより、静電チャック
のセラミック等の絶縁物はプラズマにさらされることで表面がマイナス(−)に帯電し、
これに対して基板下面はプラス(+)に帯電する。この帯電した状態に対して静電チャッ
クに吸着用の直流電圧をかけると、静電吸着を迅速に良好に行える。
【0011】
本発明の電気光学装置の製造方法において、前記基板は、絶縁基板であることを特徴と
する。
このような製造方法に関して、例えば石英基板のような絶縁基板で裏面に導電膜が付い
ている状態であっても、抵抗の高い導電膜であると電荷の移動度が非常に遅いため、処理
開始時に基板に電荷を与えないと吸着できない。そのため、本願発明では、先ず、高周波
電圧を先行して印加することによって強制的に基板を帯電させ、前述したようにこの帯電
したものに対して静電チャック用の直流電圧をかけると、静電吸着を迅速に良好に行える
。つまり、石英基板であっても、本願発明によれば、静電チャックを良好に行うことがで
きる。
【0012】
本発明の電気光学装置の製造方法において、前記表面処理は、酸化膜のエッチング処理
であることを特徴とする。
このような製造方法に関して、酸化膜のエッチング処理では、基板表面の温度が高くな
り易いので、多量に冷却ガスを基板下面に供給しなければならない。そのような場合にも
、本願発明によれば、処理開始時に高周波電圧の供給を一旦遮断した後に、冷却ガスを基
板の裏面に導入するので、異常放電を防止することができる。
【0013】
本発明の電気光学装置の製造方法において、前記導電膜は、ポリシリコンであることを
特徴とする。
このような製造方法に関して、ポリシリコンは静電チャック用の導電膜として使用され
るほかに、基板裏面の傷を防止するための保護膜として利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態の電気光学装置の製造方法に用いられるプラズマエッチ
ング装置の構成図である。
図1に示すように、プラズマエッチング装置10は、真空状態(減圧状態)に維持され
るチャンバー12を備えており、チャンバー12の下面壁12bに形成された排気路13
を介して、さらに高真空ポンプ14及び低真空ポンプ15(並びに除害装置16)を介し
て内部の気体を外部に排出することによって、一定の真空状態(減圧状態)に維持される
ようになっている。なお、除害装置16は、エッチング後の排気プロセスにおいて、排気
したガスを無害化して外部に導出するための装置である。
【0015】
また、チャンバー12の内部には、石英基板などの基板Pを吸着して載置する静電チャ
ック及び下部電極17が配置されている。静電チャック及び下部電極17は、静電チャッ
クと下部電極が組み合わされて構成されている。
基板Pは、石英基板などの裏面に予め静電チャック用の導電膜を有し、表面には素子パ
ターンを形成する過程で堆積(蒸着を含む)される酸化膜を有している。
この静電チャック及び下部電極17は、チャンバー12の下面壁12bを貫通して配置
されている。なお、図示しないが、下部電極17と下面壁12bとの間には、チャンバー
12内の真空度を確保するために、シールリングなどのシール部材が配設されている。
【0016】
一方、チャンバー12の上方には、上部電極18が設けられており、その基端部分19
が、チャンバー12の上面壁12aを貫通して、チャンバー12外部に配設された高周波
電源20に接続されている。この上部電極18には、高周波印加コイル21が設けられて
おり、この高周波印加コイル21と高周波電源20の間には、マッチング回路22が配設
されている。これにより、高周波電源20により発生した高周波エネルギーを損失なく高
周波印加コイル21へ伝播できるようになっている。
【0017】
また、チャンバー12の壁、例えば上面壁12aには、反応性ガス供給路23aがバル
ブ23を介して形成されており、図示しない反応性ガス供給源から、プラズマ発生用ガス
としての反応性ガスが、減圧状態に維持されたチャンバー12内に導入されるように構成
されている。なお、反応性ガス供給路23aは上部電極18に通じ、反応性ガスが上部電
極18を通してチャンバー12内に流れ込むようにしてもよい。
【0018】
静電チャック及び下部電極17の静電チャック板171の電極(図2の171a参照)
に対しては、直流電源24から吸着用の直流電圧が印加されるようになっている。
さらに、図示しない冷却ガス供給源からHeガスがバルブ25を介して冷却ガス供給路
25aに供給され、静電チャック及び下部電極17の内部に設けたガス流路17aを経て
基板Pの下面に導出されるようになっている。冷却ガス供給路25aには、冷却ガスの流
出量を計量する流量計26が設けられ、その流量検出信号は制御装置27に供給されてい
る。
【0019】
図1に示す点線は、制御装置27から各被制御部に対して出力するオンオフ制御信号や
、制御装置27に対して流量計測手段から供給される流量検出信号を示している。
制御装置27は、例えばマイクロコンピュータで構成されており、CPU等の演算処理
部と、この演算処理部に一連のプロセス動作を行わせるための制御プログラムを格納した
ROMと、このROMに記憶した制御プログラムを読み込んで前記演算処理部に所定の動
作を行わせる動作用RAMとを備えている。
【0020】
具体的には、 制御装置27は、チャンバー12内にプラズマ発生用の反応性ガスを導
入するためのバルブ23をオンオフ(開閉)する制御、高周波電源20からのプラズマ発
生用の高周波電圧(RF)の出力をオンオフする制御、直流電源24からの静電チャック
用の直流電圧の出力をンオフする制御、静電チャック板171(図2参照)の吸着面に冷
却ガスを導入するためのバルブ25をオンオフ(開閉)する制御、流量計26で検出され
る冷却ガスの流量検出信号を入力し、冷却ガスが所定値(閾値)を越えたか越えないかの
判定及びその結果に基づく制御、などを行う。
【0021】
図2は上記静電チャック及び下部電極17を説明する断面図を示している。但し、ガス
流路については記載を省略してある。この図では、単極型の静電チャックが示されている
。図2に示すように、上記静電チャック及び下部電極17は、下部電極172と、その上
に重ねて置かれた静電チャック板171とを備えている。静電チャック板171は、セラ
ミック等の絶縁物を板状に構成したものであり、その表面(吸着面)近くに電極171a
が埋め込まれている。電極171aには、直流電源24からの直流電圧(例えば、正電圧
)が印加されるようになっている。そして、静電チャック板171の吸着面上に石英基板
Pが配置される。石英基板Pは、裏面に予め静電チャック用の導電膜としてのポリシリコ
ンが形成され、その表面には製造過程で酸化膜を含む素子パターンなどが形成されている

【0022】
このような静電チャックの構成によれば、プラズマ発生用の反応性ガス(例えばCF4
)をチャンバー12内に導入後、高周波電源20から高周波電圧(RF)を印加すること
により、静電チャック板171のセラミック等の絶縁物171bはプラズマにさらされる
ことによって表面がマイナス(−)に帯電し、これに対して基板Pの下面はプラス(+)
に帯電する。この帯電したものに対して静電チャック用の直流電圧(HV)をかけること
で、静電吸着が良好に行われる。
【0023】
換言すれば、絶縁体である石英基板の裏面に導電膜が付いている状態であっても、導電
性がポリシリコンのように比較的抵抗の高い導電膜であると電荷の移動度が非常に遅いた
め、プラズマ処理の開始時に基板に予め電荷を与えないと基板を静電チャックに対して良
好に静電吸着できない。従って、先ず、高周波電圧(RF)を先行して印加することによ
って強制的に基板を帯電させ、前述したようにこの帯電したものに対して静電チャック用
の直流電圧(HV)をかけると、静電チャッキングが迅速かつ良好に行える。つまり、石
英基板のような絶縁基板であっても、本願の方法によれば、静電チャックを良好に行える
ことになる。
【0024】
図3(a)は、異常放電を生じることなくプラズマエッチングが行われている状態を図示
したものである。図3(b)は、従来の方法でプラズマエッチングを行った時に異常放電が
発生した状態を図示したものである。図3(b)のような異常放電は、異物が基板の裏面に
付着している場合などに、高周波電圧を印加した状態で、冷却用Heガスが大量に投入さ
れた時に生じ易い。即ち、大量に漏れた冷却用Heガスが高周波で異常放電し、静電チャ
ック板の表面で異常放電する。
【0025】
上記の図1(及び図2)のように構成される本発明に係るプラズマエッチング装置10
は、下記のように動作する。ここでは、基板の表面に少なくとも酸化膜が形成されている
状態で酸化膜エッチングを行う場合について説明する。なお、酸化膜は、エッチング時に
表面の温度が上がり易く、焼け易い。
本発明の実施形態は、プラズマ処理開始時に高周波電圧(RF)の供給を一旦遮断した
後、冷却ガスを導入することに特徴がある。
【0026】
図4は本発明の実施形態における動作を説明するタイミングチャートを示している。制
御装置27の制御に基づく、プラズマ発生用の反応性ガス、高周波電圧(RFと略記)、
静電チャック用の直流電圧(HVと略記)、冷却用Heガス(Heと略記)、それぞれの
オンオフ動作のタイミングを示している。
図4(a)は、通常時の動作タイミングを示し、図4(b)は異常時の動作タイミングを示
している。時間t1は反応性ガスの投入タイミング、t2はRFの最初の印加タイミング、
t3はHVの印加タイミング、t4はRFの一時遮断のタイミング、t5は冷却用He投入
タイミング、t6はRFの一時遮断後の再印加タイミング、をそれぞれ示している。
【0027】
図4(a)を参照しながら、図1のプラズマエッチング装置の通常時の動作を説明する。

先ず、チャンバー12の静電チャック及び下部電極17の台上に、例えば、表面に酸化
膜、裏面に導電膜が形成された石英基板Pを載置する。
そして、チャンバー12の下面壁12bに形成された排気路13を介し、ポンプ14,
15などを介して内部の気体を外部に排出することによって、一定の真空状態(減圧状態
)例えば、10〜2000Paの減圧状態に維持する。そして、時間t1で、バルブ23
がオン(開)し、反応性ガス供給源(図示略)から反応性ガスが、反応性ガス供給路23
aを介して、減圧状態に維持されたチャンバー12内に導入される。
【0028】
この場合、反応性ガス供給源(図示略)から供給される反応性ガスとしては、例えば、
酸化シリコン(SiO2)をプラズマエッチングする際には、CF4などが用いられる。

そして、時間t2で、高周波電源20により発生した高周波電圧(RF)を高周波印加
コイル21から上部電極18に供給して高周波電界を発生させ、これによって、静電チャ
ック板171の吸着面及び基板Pの裏面の導電膜11を帯電させる。その後、時間t3で
、静電チャック板171の電極171aに直流電圧(HV)を印加して、基板Pを静電チ
ャック板171に静電吸着する。そして、その吸着状態で、時間t4において、高周波電
源20からの高周波電圧(RF)の供給を一旦遮断した後、時間t4から若干経過した時
間t5において、図示しない冷却ガス供給源からの冷却ガスを静電チャック板171の吸
着面から基板の裏面に導入する。このとき、冷却用Heの投入時にHeガスが適量投入さ
れれば、高周波電圧(RF)の供給が遮断されているので、Heガスで放電が発生するこ
とはない。
【0029】
そして、時間t6で、高周波電圧(RF)の遮断が解除された(即ち印加された)とき
は、高周波電界をトリガとして反応性ガスを励起させて、反応性の高いプラズマ状態(以
下、活性化した反応性ガス)が生成されている。そして、この活性化した反応性ガスの作
用によって、静電チャック及び下部電極17に設置された基板Pの表面の酸化膜をエッチ
ングする。
このように、図4(a)は通常時には、時間t4〜t6における高周波電圧(RF)が遮断
された状態では、冷却用Heが投入されても、Heガスによる異常放電は発生しない。
【0030】
これに対して、図4(b)は異常時には、時間t4〜t6における高周波電圧(RF)が一
時遮断された状態では、冷却用Heが大量に漏れても、Heで放電しないが、制御装置2
7が流量計26からの検出信号に基づいて冷却用Heの流量が閾値を越えたことを検出す
ると、反応性ガス,RF電圧,HV電圧,Heガスの供給を停止する。即ち、時間t4〜
t6の期間ではRFが遮断されているので、Heで放電せずに、Heの流量過大検出に基
づき、プラズマエッチング装置10はインターロックによりエッチング動作を停止する。
【0031】
図4(b)で、符号bは高周波電圧(RF)の電圧レベル、cは静電チャック用直流電圧
(HV)の電圧レベル、aは直流電圧(HV)の印加時(t3)から高周波電圧(RF)
の一時遮断開始時(t4)までの時間を示している。電荷移動度の少ない石英基板では、
a,b,cを最適な条件にすることにより、吸着が可能になる。
以上述べたように本発明の実施形態によれば、(1)吸着対象基板に電荷を供給させるた
め、高周波によりプラズマを発生させる。(2)十分に電荷が供給された基板を静電吸着さ
せるために静電チャックに直流電圧を印加し、静電チャック表面を帯電、基板を静電吸着
させる。(3)従来プロセスの場合、このまま冷却ガスを導入し、プラズマエッチングのプ
ロセスを開始させるが、一旦高周波を遮断し、冷却用Heガスを導入する。つまり、冷却
ガス導入の前に、高周波出力を零にすることで、冷却ガスによる静電チャック表面の放電
を防止する。
【0032】
従って、基板の裏面に異物が付着した場合、若しくは他理由で静電吸着を阻害する因子
が加わった場合に、冷却ガスにより静電チャック表面の絶縁物が異常放電により破損し、
耐圧が取れなくなり使用不能になることを防止できる。また、その際に基板の表裏面にも
異常放電によるダメージが発生することを防ぐことができる。
【0033】
次に、以上のように構成されたプラズマエッチング装置を用いて製造される、本発明の
電気光学装置に係る実施の形態を図面に基づいて説明する。ここでは、電気光学装置の一
例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
図5は、素子基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図で
あり、図6は、図5のH−H’断面図である。
【0034】
図5及び図6において、本実施の形態に係る液晶装置では、図1に示した基板Pを構成
する素子基板110と、対向基板120と、が対向配置されている。
素子基板110と対向基板120との間に液晶層150が封入されており、素子基板1
10と対向基板120とは、画像表示領域110aの周囲に位置するシール領域に設けら
れたシール材152により相互に接着されている。シール材152は、両基板を貼り合わ
せるために、例えば熱硬化樹脂、熱及び光硬化樹脂、光硬化樹脂、紫外線硬化樹脂等から
なり、製造プロセスにおいて素子基板110上に塗布された後、加熱、加熱及び光照射、
光照射、紫外線照射等により硬化させられたものである。
【0035】
このようなシール材152中には、両基板間の間隔(基板間ギャップ)を所定値とする
ためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が混合されている。即ち、本実
施の形態の電気光学装置は、プロジェクタのライトバルブ用として小型で拡大表示を行う
のに適している。但し、当該電気光学装置が液晶ディスプレイや液晶テレビのように大型
で等倍表示を行う液晶装置であれば、このようなギャップ材は、液晶層150中に含まれ
てもよい。
対向基板120の4隅には、上下導通材106が設けられており、素子基板110に設
けられた上下導通端子と対向基板120に設けられた対向電極121との間で電気的な導
通をとる。
【0036】
図5及び図6において、シール材152が配置されたシール領域の内側に並行して、画
像表示領域110aを規定する遮光性の周辺遮光膜153が対向基板120側に設けられ
ている。周辺遮光膜153は素子基板110側に設けても良いことは言うまでもない。画
像表示領域の周辺に広がる周辺領域のうち、シール材152が配置されたシール領域の外
側部分には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が素子基板110の一
辺に沿って設けられており、走査線駆動回路104が、この一辺に隣接する2辺に沿って
設けられている。更に素子基板110の残る一辺には、画像表示領域110aの両側に設
けられた走査線駆動回路104間をつなぐための複数の配線105が設けられている。
【0037】
図6において、素子基板110上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ
線等の配線が形成された後の画素電極109a上に、配向膜が形成されている。他方、対
向基板120上には、対向電極121の他、最上層部分に配向膜が形成されている。また
、液晶層150は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、
これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0038】
本実施の形態では、周辺遮光膜153下にある素子基板110上の領域に、図示しない
サンプリング回路が設けられている。サンプリング回路は、画像信号線上の画像信号をデ
ータ線駆動回路101から供給されるサンプリング回路駆動信号に応じてサンプリングし
てデータ線に供給するように構成されている。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明に係る電気光学装置は、TFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置だけで
はなく、パッシブマトリクス型の液晶装置にも同様に適用することが可能である。また、
液晶装置ルだけでなく、エレクトロルミネッセンス装置、有機エレクトロルミネッセンス
装置、プラズマディスブレイ装置、電気泳動ディスプレイ装置、電子放出素子を用いた装
置(Field Emission Display 及び Surface-Conduction Electron-Emitter Display等)
などの各種の電気光学装置においても本発明を同様に適用することが可能である。
【0040】
なお、本発明は、基板に回路素子を形成する表示用デバイス、例えばLCOS(Liquid
Crysta1 On Silicon)などにも適用可能である。LCOSでは素子基板として単結晶シリ
コン基板を用い、画素や周辺回路に用いるスイッチング素子としてトランジスタを単結晶
シリコン基板に形成する。また、画素には反射型の画素電極を用い、画素電極の下層に画
素の各素子を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施形態の電気光学装置の製造方法に用いられるプラズマ処理方法が適用されるプラズマエッチング装置の構成図。
【図2】図1の静電チャック及び下部電極を説明する断面図。
【図3】プラズマエッチングにおける異常放電の発生しない通常時と従来の方法による異常放電を発生する異常時を説明する説明図。
【図4】本発明の実施形態における動作を説明するタイミングチャート。
【図5】電気光学装置における素子基板をその上に形成された各構成要素と共に対向基板の側から見た平面図。
【図6】図5のH−H’断面図。
【符号の説明】
【0042】
10…プラズマエッチング装置、11…導電膜(ポリシリコン)、12…チャンバー、
17…静電チャック及び下部電極、17a…ガス流路、18…上部電極、20…プラズマ
発生用の高周波電源、24…静電チャック用の直流電源、26…冷却ガスの流量計、27
…制御装置、171…静電チャック板、172…下部電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバー内に置かれた基板に対して表面処理を施す際に、高周波電圧印加によりプラ
ズマを発生させて表面処理を行い、その処理時の基板の発熱に対して冷却ガスを使用する
プラズマ処理方法において、
処理開始時に高周波電圧の供給を一旦遮断した後、前記冷却ガスを導入することを特徴
とするプラズマ処理方法。
【請求項2】
基板の裏面に静電チャック用の導電膜を形成した後、前記基板の表面に表面処理を施し
、素子パターンを形成して素子基板を作製する際に、チャンバー内において、高周波電圧
印加によりプラズマを発生させて前記表面処理を行い、その処理時の発熱に対して冷却ガ
スを使用する電気光学装置の製造方法において、
前記基板の導電膜を静電チャックの吸着面に載置し、処理開始時に、プラズマ発生用ガ
スの導入後、高周波電圧を印加することにより、前記静電チャックの吸着面及び前記基板
の裏面の導電膜を帯電させ、その後、前記静電チャックに直流電圧を印加して、前記基板
を前記静電チャックに静電吸着し、その吸着状態で、前記高周波電圧の供給を一旦遮断し
た後、前記冷却ガスを前記静電チャックの吸着面から前記基板の裏面に導入することを特
徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記基板は、絶縁基板であることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置の製造方
法。
【請求項4】
前記表面処理は、酸化膜のエッチング処理であることを特徴とする請求項2に記載の電
気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記導電膜は、ポリシリコンであることを特徴とする請求項2に記載の電気光学装置の
製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−227604(P2007−227604A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−46453(P2006−46453)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】