説明

プラズマ処理装置およびプラズマ処理方法

【課題】プラズマによる放射器および絶縁管の変質やエッチングを防止する。
【解決手段】上端部が閉塞板11bで閉塞され、下端部が開放端に形成された筒状の筐体31と、閉塞板11bの内面に立設された筒状の放射器14と、不活性ガスG1を筐体31内を経由して開放端まで搬送して筐体31の外部に放出させる絶縁管11cとを備え、筐体31は内部に供給された反応性ガスG2を開放端から外部に放出して開放端の前方に反応性ガス雰囲気を形成する反応性ガス供給路として構成され、放射器14が供給された高周波信号S1を放射して、絶縁管11c内にプラズマ化した不活性ガスG1による一次プラズマP1を発生させる。一次プラズマP1は、絶縁管11cの先端部から反応性ガス雰囲気中に放出されて反応性ガスG2をプラズマ化させ、処理対象体6をプラズマ処理するための二次プラズマ等P2を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方の端部が閉塞板で閉塞された筒状の筐体、および閉塞板の内面に筐体の筒長方向に沿って延出するように立設された放射導体を備えて、放射導体の先端近傍にプラズマを発生させるプラズマ処理装置、およびこのプラズマ処理装置において実施されるプラズマ処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のプラズマ処理装置として、下記特許文献1に開示されたプラズマ処理装置(マイクロ波プラズマ発生器)が知られている。このプラズマ処理装置は、円筒状の外管の上端に蓋体を固定して構成された共振器と、外管の上端寄りに配設された同軸線路と、蓋体の中央に固着された内部導体(放射導体)とを備えている。また、同軸線路の導体(中心導体)は、外管内で蓋体方向に屈折して先端が蓋体に接続されている。また、内部導体は、その長さが(λ/2)×n+(λ/4)に設定されている。また、外管には、ガス導入口が形成されている。このプラズマ処理装置では、共振器に同軸モードに変換したマイクロ波を同軸線路を経由して内部導体に伝送して、内部導体の先端部分に高電界を生じさせることにより、ガス導入口から外管内に導入されたガスをプラズマ化して、内部導体の先端部分にプラズマを発生させている。また、このようにして発生させられたプラズマは外管の内面を変質させたり、エッチングしたりするため、このプラズマ処理装置では、この変質またはエッチング(以下、「変質等」ともいう)を防止すべく、内部導体の先端部分を取り囲む外管の内周面に石英管(絶縁管)を配置して、この石英管内においてプラズマを発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−188094号公報(第2−3頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、本願発明者等が上記した従来のプラズマ処理装置について鋭意研究した結果、このプラズマ処理装置には以下の問題点が存在していることを見出した。すなわち、この種のプラズマ処理装置では、上記のガスとして、一般的に、プラズマを安定に発生させるためのガス(不活性ガス)と処理対象体を処理するための処理ガス(反応性ガス)との混合ガスを使用している。この場合、反応性ガスは、プラズマ化した状態での物質に対する変質させる能力やエッチング力がプラズマ化した不活性ガスと比較して極めて高く、上記のプラズマ処理装置のように外管の内周面に石英管(絶縁管)を配置する構成を採用したとしても、石英管自体がプラズマ化した反応性ガスによって変質等される。また、プラズマが発生する内部導体の先端部分についても、プラズマ化した不活性ガスおよびプラズマ化した反応性ガスによって変質等される。したがって、上記のプラズマ処理装置には、内部導体の先端部分および石英管が変質等されることに起因して、装置の耐久性が低下するという問題点が存在しているのを見出した。
【0005】
本発明は、かかる問題点を解決すべくなされたものであり、プラズマによる放射導体および絶縁管の変質等を防止して耐久性を向上させ得るプラズマ処理装置、およびプラズマ処理方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のプラズマ処理装置は、グランド電位が付与されると共に一方の端部が閉塞板で閉塞され、かつ他方の端部が開放端に形成された筒状の筐体と、前記閉塞板の内面に前記筐体の筒長方向に沿って延出するように立設された棒状の放射導体と、不活性ガス、窒素ガスおよびエアーガスのうちのいずれか1つ以上からなるガスを前記筐体内を経由して当該筐体の前記開放端まで搬送すると共に、当該開放端近傍に位置する先端部から前記筐体の外部に放出させる絶縁管とを備え、前記筐体は、内部に供給された反応性ガスを前記開放端から外部に放出して当該開放端の前方に反応性ガス雰囲気を形成する反応性ガス供給路を備えて構成され、前記放射導体が供給された高周波信号を放射することにより、前記絶縁管内にプラズマ化した前記1つ以上からなるガスによる一次プラズマを発生させると共に、当該発生させた一次プラズマを前記絶縁管の前記先端部から前記反応性ガス雰囲気中に放出することにより、前記反応性ガスをプラズマ化させた二次プラズマ、および前記反応性ガスをラジカル化させたラジカルのうちの少なくとも一方を処理対象体のプラズマ処理のために発生させる。
【0007】
また、請求項2記載のプラズマ処理装置は、請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記放射導体は筒状に形成され、前記絶縁管は、前記先端部が前記放射導体の先端から突出した状態で当該放射導体内に配設されている。
【0008】
また、請求項3記載のプラズマ処理装置は、請求項1記載のプラズマ処理装置において、前記放射導体は、筒状に形成されると共に、先端が前記筐体の前記開放端または当該開放端の近傍に達するように立設され、前記絶縁管は、前記先端部が前記放射導体の前記先端または当該先端の近傍に達する状態で当該放射導体内に配設され、前記反応性ガス供給路は、前記放射導体の内周面と前記絶縁管の外周面との間に形成された隙間によって形成されている。
【0009】
請求項4記載のプラズマ処理方法は、不活性ガス、窒素ガスおよびエアーガスのうちのいずれか1つ以上からなるガスを絶縁管内に供給している状態において、前記絶縁管内にプラズマ化した前記1つ以上からなるガスによる一次プラズマを発生させ、前記絶縁管の先端部から前記一次プラズマを放出させると共に、当該放出させた一次プラズマに反応性ガスを供給することにより、前記反応性ガスをプラズマ化させた二次プラズマ、および前記反応性ガスをラジカル化させたラジカルのうちの少なくとも一方を発生させ、当該発生させた二次プラズマおよびラジカルのうちの少なくとも一方で処理対象体をプラズマ処理する。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載のプラズマ処理装置および請求項4記載のプラズマ処理方法によれば、絶縁管内で一次プラズマを発生させて、絶縁管の先端部から一次プラズマを筐体の外部に放出させるため、放射導体および筐体が一次プラズマによって変質等(変質やエッチング)される事態を確実に防止することができる。また、絶縁管内で発生する一次プラズマは、不活性ガス、窒素ガスおよびエアーガスのうちのいずれか1つ以上からなるガスがプラズマ化したものであって、反応性ガスがプラズマ化したものではないため、プラズマによる絶縁管の変質等も大幅に低減することができる。また、処理対象体をプラズマ処理するための二次プラズマやラジカルは、筐体の外部において、筐体から一次プラズマを反応性ガス雰囲気中に放出して、反応性ガスをプラズマ化させたり、ラジカル化させたりして発生させられるため、絶縁管、放射導体および筐体が二次プラズマやラジカルによって変質等される事態についても防止することができる。これにより、プラズマ処理方法に使用されるプラズマ処理装置の耐久性を向上させることができる。
【0011】
請求項2記載のプラズマ処理装置によれば、筒状に形成された放射導体内に、先端部が放射導体の先端から突出した状態で絶縁管を配設したことにより、電界強度が最大となる放射導体の先端近傍に常に絶縁管を配設できる結果、一次プラズマ、ひいては二次プラズマを効率良く発生させることができ、処理対象体に対するプラズマ処理の効率を向上させることができる。
【0012】
請求項3記載のプラズマ処理装置によれば、放射導体を筒状に形成すると共に、先端が筐体の開放端またはこの開放端の近傍に達するように立設し、絶縁管を先端部が放射導体の先端またはこの先端の近傍に達する状態で放射導体内に配設して、放射導体の内周面と絶縁管の外周面との間に形成された隙間によって反応性ガス供給路を構成したことにより、反応性ガス供給路として筐体全体を使用する構成とは異なり、より小径な放射導体を反応性ガス供給路として使用して、処理対象体におけるプラズマ処理する部位を含む狭い範囲に反応性ガスの雰囲気をピンポイントで形成できるため、少量の反応性ガスでプラズマ処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】プラズマ処理装置1の構成図(筐体11については中心軸Xに沿った断面図)である。
【図2】図1におけるW1−W1線断面図(同軸コネクタ12を除く断面図)である。
【図3】プラズマ処理装置1Aの構成図(筐体11については中心軸Xに沿った断面図)である。
【図4】図3におけるW2−W2線断面図(同軸コネクタ12を除く断面図)である。
【図5】プラズマ処理装置1Bの構成図(筐体11については中心軸Xに沿った断面図)である。
【図6】プラズマ処理装置1Cの構成図(筐体11については中心軸Xに沿った断面図)である。
【図7】プラズマ処理装置1Dの構成図(絶縁管11cについては中心軸に沿った断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、プラズマ処理方法およびプラズマ処理装置の実施の形態について説明する。
【0015】
まず、図1に示すプラズマ処理装置1を用いた処理対象体6に対するプラズマ処理方法について説明する。
【0016】
最初に、このプラズマ処理装置1について説明する。このプラズマ処理装置1は、高周波電源2、プラズマ発生部3、およびテーブル4を備えている。また、このプラズマ処理装置1は、高周波電源2において生成された高周波信号S1をプラズマ発生部3に同軸ケーブル5を介して供給することによってプラズマ発生部3内に一次プラズマP1を発生させると共に、発生させた一次プラズマP1をプラズマ発生部3の外部へ放出可能に構成されている。
【0017】
高周波電源2は、準マイクロ波帯(1GHz〜3GHz)またはマイクロ波帯(3GHz〜30GHz)の高周波信号(一例として、2.45GHz程度の準マイクロ波)S1を所定の電力で生成して、プラズマ発生部3に出力する高周波信号生成部として機能する。なお、本例では、高周波電源2が、準マイクロ波を高周波信号S1として出力する構成を採用しているが、マイクロ波を高周波信号S1として出力する構成を採用することもできる。また、高周波電源2からプラズマ発生部3に対する高周波信号S1の供給効率を高めるため、高周波電源2とプラズマ発生部3との間に整合器を配設することもできる。
【0018】
プラズマ発生部3は、一例として図1に示すように、筐体11、同軸コネクタ12、給電導体13、および放射導体としての放射器(アンテナ)14を備えている。筐体11は、一例として、両端が開口する導電性の筒体11a、導電性の閉塞板11b、および絶縁管11cを備え、一方の端部(図1中の上端部)が閉塞され、かつ他方の端部(図1中の下端部)が開放端に形成されてトーチ型筐体に構成されると共に、絶縁管11cを除く他のすべての構成要素に対してグランド電位が付与されている。
【0019】
具体的には、図1に示すように、筐体11は、その筒体11aにおける一方の端部(図1中の上端部)が、この一方の端部に密着して配設された閉塞板11bによって閉塞されて、他方の端部が開口端となるトーチ型筐体として構成されている。また、筒体11aは、図2に示すように、中心軸Xと直交する平面に沿った外周面の断面形状が四角形(つまり、外形が四角筒体)であるが、この平面に沿った内周面の断面形状が円形であるため、実質的には円筒体として機能する。また、筒体11aは、図1に示すように、その長さ(筒長)が放射器14の長さL1よりも長く規定されて、放射器14の先端が筒体11aの開放端から突出しない構成となっている。
【0020】
また、本例では、図1に示すように、筒体11aには、筐体11内に高周波信号S1を導入するための貫通孔21が形成されている。また、一例として、閉塞板11bには、プラズマ放電用ガスG1(以下、「放電用ガスG1」ともいう)を供給するための絶縁管11cを挿通させる貫通孔22が形成されている。この場合、貫通孔22の位置は、その中心軸が筒体11aの中心軸Xと同軸となるように(つまり、閉塞板11bの中心に)規定されている。また、本例では放電用ガスG1として、電離電圧が低くプラズマが発生し易い不活性ガス(例えば、アルゴン、ネオン、キセノン、ヘリウムから選択された単独ガスまたは複数のガスの混合ガス)、窒素ガスおよびエアーガスのうちのいずれか1つ以上からなるガス(以下、「不活性ガス等」ともいう)が使用される。絶縁管11cは、その外径が貫通孔22の内径よりも若干小径に形成されて、図1,2に示すように、その中心軸が筒体11aの中心軸Xと同軸となるように貫通孔22に挿通され、かつ閉塞板11bの内面からの突出長が筒体11aの全長とほぼ同じ長さに規定されている。これにより、絶縁管11cにおける放射器14から突出した端部(筒体11aの開口端側に位置する端部)は、この開口端と面一の状態となっている。絶縁管11cの材料としては、例えば、イットリア、窒化アルミ、および窒化ホウ素などを使用することができる。この場合、耐フッ素プラズマ性では、イットリアが最も好ましく、それに次いで、窒化アルミおよび窒化ホウ素の順で耐エッチング性が高い。一方、熱衝撃性については、逆に、窒化ホウ素が最も好ましく、窒化アルミ、イットリアの順で熱衝撃性が高い。なお、石英を使用して絶縁管11cを製造してもよいのは勿論である。
【0021】
同軸コネクタ12は、図1に示すように、高周波電源2に接続された同軸ケーブル5の先端に装着された状態で、筒体11aの外周面に、貫通孔21を閉塞するようにして取り付けられている。給電導体13は、高導電性の線材を用いて、一例として、図1,2に示すように、棒状(ほぼ真っ直ぐな棒状)に形成されて、一端側が同軸コネクタ12の芯線12aに接続されると共に、他端側が放射器14の給電位置Aに接続されている。この場合、給電位置Aは、放射器14における閉塞板11bに固定された基端部から所定距離L2だけ離間した位置に規定されている。ここで、所定距離L2は、高周波信号S1の波長をλとしたときに、λ/10≧L2>0の範囲に規定するのが好ましい。これにより、放射器14と、これに接続される閉塞板11bおよび給電導体13とで逆F形のアンテナが構成されて、後述するように、プラズマ発生(着火)前後でのVSWRの変化を低減し得る構成となる。なお、所定距離L2がλ/10を超える構成では、後述するようにプラズマ発生前のVSWRが悪化し始める(つまり、プラズマの着火性が低下し始める)。このため、L2はλ/10以下とするのが好ましい。
【0022】
放射器14は、導電性材料を用いて棒状(本例では筒状)に形成されている。具体的には、放射器14は、図1,2に示すように、その内径が貫通孔22の内径以上に規定された筒状(本例では円筒状)に形成されて、その中心軸が筒体11aの中心軸Xと同軸となるように閉塞板11bの内面に立設(電気的に接続された状態で立設)されている。この構成により、放射器14の内部が貫通孔22と連通した状態となり、貫通孔22に挿通された絶縁管11cは、放射器14にも挿通された状態となる。また、放射器14は、その長さL1が((1/4+n/2)×λ)に規定されている。ここで、nは、0以上の整数であり、本例では一例としてn=0に設定されて、放射器14の長さL1は(λ/4。高周波信号S1の周波数が一例として2.45GHzであるため、122.45mm/4=30.6mm)に規定されている。
【0023】
テーブル4は、図1に示すように、筐体11における他方の端部(開口端)に対向して配設されて、その筐体11側の表面(載置面)に処理対象体6を載置可能に構成されている。本例では、一例としてテーブル4の載置面は、筒体11aの中心軸Xと直交する平面に形成されている。
【0024】
次に、プラズマ処理装置1を用いたプラズマ処理方法について、プラズマ処理装置1の動作と併せて説明する。なお、図1に示すように、テーブル4上には、処理対象体6がプラズマ処理用ガス(以下、「処理用ガス」)G2の雰囲気(一点鎖線で囲まれた範囲)下で載置されているものとする。この場合、処理用ガスG2としては、反応性ガスが使用され、プラズマ処理の種類に応じて、二酸化炭素、一酸化二窒素などの酸化性ガス、水素、アンモニアなどの還元性ガス、および四フッ化メタンなどのフッ素系ガスのうちから選択される。
【0025】
まず、不図示の第1ガス供給部から絶縁管11c内への放電用ガスG1の供給を開始する。これにより、筒状の筐体11における開放端の外部に、プラズマ発生部3内(筒体11a内)に導入された絶縁管11cを介して放電用ガスG1が放出される。この放電用ガスG1の供給状態において、高周波電源2からプラズマ発生部3への高周波信号S1の出力(供給)を開始する。高周波電源2から出力された高周波信号S1は、同軸ケーブル5、同軸コネクタ12および給電導体13を介して、放射器14にその給電位置Aから供給される。これにより、λ/4の長さL1に規定されている放射器14が、高周波信号S1によって共振する。共振状態の放射器14は、共振モノポールとして作動して、筐体11の開口端側に位置する先端(図1中の下端)側で電圧が最大となる。このため、プラズマ発生部3内における放射器14の先端近傍(先端付近)で電界強度が最大となる(放射器14が高周波信号S1を放射している状態となる)。これにより、プラズマの発生し易い放電用ガスG1が供給されている絶縁管11c内における放射器14の先端近傍では、絶縁管11cの外部から印加される高い強度の電界により、放電用ガスG1がプラズマ化して、一次プラズマP1が発生する。
【0026】
この場合、高周波電源2が高周波信号S1として準マイクロ波またはマイクロ波をプラズマ発生部3に供給するため、一次プラズマP1は高密度な状態で発生する。また、絶縁管11c内に供給された放電用ガスG1は絶縁管11cの先端部(筐体11の開口端側の端部)から外部に放出されるため、絶縁管11c内に発生した一次プラズマP1も、図1に示すように、絶縁管11cの長さ方向に沿って(筒体11aの中心軸Xに沿って)延びた状態で、絶縁管11cの先端部から放出される。また、放射器14およびプラズマ発生部3(具体的には筒体11a)は、絶縁管11cによって一次プラズマP1と分離されている(一次プラズマP1に直接触れない状態となっている)ため、一次プラズマP1による変質等が防止されている。
【0027】
続いて、絶縁管11cの先端部から放出されている一次プラズマP1を、処理用ガスG2の雰囲気下でテーブル4上に載置されている処理対象体6に照射する。この処理用ガスG2への一次プラズマP1の照射により、一次プラズマP1と衝突させられた処理用ガスG2がプラズマ化されたり、ラジカル化されて、図1に概念的に示すように、一次プラズマP1の周囲に二次プラズマおよびラジカルのうちの少なくとも一方(以下、「二次プラズマ等」ともいう)P2が発生する。これにより、処理対象体6が、二次プラズマ等P2によって表面処理される。この表面処理には、処理対象体6の表面のエッチング処理、殺菌処理、洗浄処理、および親水性の向上処理などが含まれるものとする。また、この二次プラズマ等P2は、プラズマ発生部3の外部(絶縁管11cおよび筒体11aの外部)において発生させられるため、絶縁管11cおよび筒体11aの二次プラズマ等P2による変質等が防止されている。
【0028】
この際に、一次プラズマP1自体が導電性を持つことに起因して、放射器14の見かけ上の長さ(電気長)が、プラズマ発生前(放射器14のみの長さ)とプラズマ発生後(放射器14の長さと一次プラズマP1の長さの合計長)とで変化する。したがって、従来のプラズマ処理装置では、一次プラズマP1の発生前後でのプラズマ発生部3の共振周波数が大きく変化する。このため、発明者らによる実験(高周波信号S1の周波数を2.45GHz、放射器14の長さL1をλ/4(=30.6mm)としたときの実験)によれば、プラズマ発生前(着火前)の共振周波数を基準として放射器14の長さL1を規定した場合には、プラズマ発生後(着火後)において不整合状態となり、プラズマ発生前のVSWR(12.4)と比較してプラズマ発生後のVSWR(61.5)が大きく悪化することが確認された。
【0029】
これに対してプラズマ処理装置1では、上記したように放射器14における閉塞板11bから所定距離L2だけ離間した位置に高周波信号S1の給電位置Aが規定されている。このため、一例として所定距離L2を2mm(=λ/61.2),3mm(=λ/40.8),4mm(=λ/30.6)と変えてプラズマ発生前後でのVSWRの変化を測定した場合、測定された各所定距離L2でのプラズマ発生前のVSWRおよびプラズマ発生後のVSWRは、それぞれ(11.1,18.6)、(13.1,17.4)、(18.5,17)となり、少なくともλ/30.6≧L2≧λ/61.2の範囲においては、従来のプラズマ処理装置における整合状態でのVSWR(プラズマ発生前のVSWR)とほぼ同じ値(すべてのVSWRが20未満)であった。この結果、従来のプラズマ処理装置と比較して、プラズマ発生前後でのVSWRの変化がほぼ変化しないと言えるレベルまで、プラズマ発生前後でのVSWRの変化が大幅に低減されることが確認された。つまり、プラズマ処理装置1では、プラズマ発生前後で良好な整合状態が維持されることが確認された。この理由としては、給電位置Aから給電された高周波信号S1により、放射器14の基端部から放射器14の先端部への経路と、給電位置Aから放射器14の先端部へ伝わる経路の2つの経路で共振が発生しているため、放射器14のQがブロード(広帯域)となるのが原因の1つと考えられる。
【0030】
なお、所定距離L2を2mm,3mm,4mmと長くするに従い、プラズマ発生後のVSWRは18.6から、17.4、17とほぼ一定に維持される(若干減少する)が、プラズマ発生前のVSWRは11.1から、13.1、18.5と次第に大きくなる(プラズマの着火性が低下する)傾向となる。このため、給電位置Aまでの所定距離L2を長くし過ぎると、プラズマ発生前のVSWRが一層大きくなって、プラズマの着火性が低下すると考えられる。このため、所定距離L2は、最長でもλ/10以下とするのが好ましいと考えられる。
【0031】
このように、このプラズマ処理装置1、およびこのプラズマ処理装置1を用いたプラズマ処理方法では、内部に放射器14が立設された筒状の筐体11における開放端の外部に、先端部が筐体11の開放端に達するように筐体11内に導入された絶縁管11cを介して不活性ガスである放電用ガスG1を放出させ、この状態において放射器14に高周波信号S1を供給することにより、絶縁管11c内にプラズマ化した不活性ガスからなる一次プラズマP1を発生させると共に、絶縁管11cの先端部から一次プラズマP1を放出させ、この一次プラズマP1を反応性ガスである処理用ガスG2と衝突させ、これによって処理用ガスG2をプラズマ化させて二次プラズマ等P2を発生させ、この二次プラズマ等P2で処理対象体6を表面処理する。
【0032】
したがって、このプラズマ処理装置1、およびこのプラズマ処理装置1を用いたプラズマ処理方法によれば、絶縁管11cの外部に配設された放射器14において発生する電界を絶縁管11c内に供給することにより、絶縁管11c内で一次プラズマP1を発生させて、絶縁管11cの先端部から一次プラズマP1を筐体11の外部に放出させるため、放射器14および筐体11が一次プラズマP1によって変質等される事態を確実に防止することができる。また、絶縁管11c内で発生する一次プラズマP1は、不活性ガスである放電用ガスG1がプラズマ化したものであって、反応性ガスである処理用ガスG2がプラズマ化したものではないため、プラズマによる絶縁管11cの変質等も大幅に低減することができる。また、処理対象体6をプラズマ処理するための二次プラズマ等P2は、筐体11の外部において、筐体11から放出された一次プラズマP1と処理用ガスG2との衝突によって発生させられるため、絶縁管11c、放射器14および筐体11が二次プラズマ等P2によって変質等させられる事態についても防止することができる。これにより、プラズマ処理方法に使用されるプラズマ処理装置1の耐久性を向上させることができる。
【0033】
また、処理用ガスG2の雰囲気中にある処理対象体6に一次プラズマP1を放出することにより、処理用ガスG2をプラズマ化またはラジカル化して二次プラズマ等P2を発生させる例について上記したが、一次プラズマP1を処理対象体6に放出した状態において、処理対象体6に処理用ガスG2を供給して二次プラズマ等P2を発生させる構成を採用することもできる。
【0034】
なお、上記したプラズマ処理装置1は、処理対象体6を処理用ガスG2の雰囲気下に移行させる機能を備えていないが、図3に示すプラズマ処理装置1Aのように、プラズマ発生部3から処理用ガスG2を放出させて、筐体11における開放端の外部に処理用ガスG2の雰囲気を形成することで、処理対象体6を処理用ガスG2の雰囲気下に移行させる構成を採用することもできる。以下、このプラズマ処理装置1Aについて説明する。
【0035】
まず、プラズマ処理装置1Aの構成について説明する。なお、プラズマ処理装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0036】
図3に示すプラズマ処理装置1Aは、高周波電源2、プラズマ発生部3Aおよびテーブル4を備え、プラズマ発生部3Aがプラズマ処理装置1のプラズマ発生部3と相違している以外は、プラズマ処理装置1と同一に構成されている。以下では、相違するプラズマ発生部3Aの構成について説明し、同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0037】
プラズマ発生部3Aは、一例として図3,4に示すように、筐体31、同軸コネクタ12、給電導体13、および放射器14を備えている。筐体31は、一例として、両端が開口する導電性の筒体11a、導電性の閉塞板11b、および絶縁管11cを備え、筒体11aの一方の端部(図3中の上端部)が閉塞板11bによって閉塞されることにより、筒体11aの他方の端部(図3中の下端部)が開放端に形成されてトーチ型筐体に構成されている。また、筐体31では、閉塞板11bに、放電用ガスG1供給用の絶縁管11cを挿通させるための貫通孔22と共に、処理用ガスG2を供給するための他の貫通孔23が形成されている。本例では一例として、この貫通孔23には、処理用ガスG2を筐体31に供給するための絶縁管24が連結されている。この構成により、筐体31、具体的には筒体11aは、後述するように反応性ガス供給路として機能する。
【0038】
次に、プラズマ処理装置1Aを用いたプラズマ処理方法について、プラズマ処理装置1Aの動作と併せて説明する。なお、上記したプラズマ処理方法およびプラズマ処理装置1の動作と同じ部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0039】
まず、筐体31における開放端と対向して配設されたテーブル4上に、処理対象体6を載置する。なお、この状態では、処理対象体6は未だ処理用ガスG2の雰囲気下とはなっていない。
【0040】
次いで、不図示の第1ガス供給部から絶縁管11c内への放電用ガスG1の供給を開始すると共に、不図示の第2ガス供給部から絶縁管24内への処理用ガスG2の供給を開始する。これにより、絶縁管24および貫通孔23を介してプラズマ発生部3A内(筒体11a内)に供給されている処理用ガスG2が、筒状の筐体31における開放端(筒体11aの下端部)から外部(下部)に放出される。これにより、図3に示すように、筐体31における開放端の外部(前方)に処理用ガスG2の雰囲気(一点鎖線で囲まれた範囲)が形成される。このため、テーブル4上に載置されている処理対象体6における表面処理される部位を含む表面領域は、処理用ガスG2の雰囲気で覆われた状態となる(処理用ガスG2の雰囲気下となる)。また、絶縁管11c内に供給されている放電用ガスG1が、絶縁管11cの先端(筐体31の開口端側に位置する先端。図3中の下端)から、処理用ガスG2の雰囲気内に放出される。
【0041】
続いて、この両ガスG1,G2の供給状態において、高周波電源2からプラズマ発生部3Aへの高周波信号S1の出力(供給)を開始する。これにより、プラズマ処理装置1と同様にして、プラズマ発生部3A内における放射器14の先端近傍(先端付近)で電界強度が最大となるため、放電用ガスG1が供給されている絶縁管11c内における放射器14の先端近傍において、放電用ガスG1がプラズマ化して、一次プラズマP1が発生する。この場合、絶縁管11c内に供給された放電用ガスG1は絶縁管11cの先端部から外部に放出され、かつ処理用ガスG2も筐体31の開放端から筒体11aの中心軸Xにほぼ沿って放出されるため、絶縁管11c内に発生した一次プラズマP1は、図3に示すように、絶縁管11cの長さ方向に沿って延びた状態で、絶縁管11cの先端部から放出される。また、放射器14およびプラズマ発生部3A(具体的には筒体11a)は、絶縁管11cによって一次プラズマP1と分離されているため、一次プラズマP1による変質等が防止されている。
【0042】
また、絶縁管11cの先端部から放出されている一次プラズマP1が、処理用ガスG2の雰囲気中に放出されることにより、一次プラズマP1と衝突させられた処理用ガスG2がプラズマ化されて、図3に示すように、一次プラズマP1の周囲に二次プラズマ等P2が発生する。これにより、処理対象体6が、二次プラズマ等P2によって表面処理される。この場合、二次プラズマ等P2はプラズマ発生部3Aの外部(絶縁管11cおよび筒体11aの外部)において発生させられるため、絶縁管11cおよび筒体11aの二次プラズマ等P2による変質等が防止されている。
【0043】
このように、このプラズマ処理装置1A、およびこのプラズマ処理装置1Aを用いたプラズマ処理方法によっても、絶縁管11cの外部に配設された放射器14において発生する電界を絶縁管11c内に供給することにより、絶縁管11c内で一次プラズマP1を発生させて、絶縁管11cの先端部から一次プラズマP1を筐体31の外部に放出させるため、放射器14および筐体31が一次プラズマP1によって変質等される事態を確実に防止することができる。また、絶縁管11c内で発生する一次プラズマP1は、不活性ガスである放電用ガスG1がプラズマ化したものであって、反応性ガスである処理用ガスG2がプラズマ化したものではないため、プラズマによる絶縁管11cの変質等も大幅に低減することができる。また、処理対象体6をプラズマ処理するための二次プラズマ等P2は、筐体31の外部において、筐体31から放出された一次プラズマP1と処理用ガスG2との衝突によって発生させられるため、絶縁管11c、放射器14および筐体31が二次プラズマ等P2によって変質等させられる事態についても確実に防止することができる。これにより、プラズマ処理方法に使用されるプラズマ処理装置1Aの耐久性を向上させることができる。また、放射器14を筒状に形成して、放射器14内に絶縁管11cを配設したことにより、電界強度が最大となる放射器14の先端近傍に常に絶縁管11cを配設できる結果、一次プラズマP1、ひいては二次プラズマ等P2を効率良く発生させることができ、処理対象体6に対するプラズマ処理の効率も向上させることができる。
【0044】
また、上記のプラズマ処理装置1Aでは、筐体31を構成する筒体11aを介して(筒体11a内を流路として)処理用ガスG2を筐体31における開放端の外部(前方)に放出する構成を採用しているが、図5に示すプラズマ処理装置1Bのように、筒状に形成された放射器14の内部を介して処理用ガスG2を筐体31における開放端の外部(前方)に放出させて、筐体32における開放端の外部に処理用ガスG2の雰囲気を形成する構成を採用することもできる。以下、このプラズマ処理装置1Bについて説明する。
【0045】
まず、プラズマ処理装置1Bの構成について説明する。なお、プラズマ処理装置1Aと同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0046】
図5に示すプラズマ処理装置1Bは、高周波電源2、プラズマ発生部3Bおよびテーブル4を備え、プラズマ発生部3Bがプラズマ処理装置1Aのプラズマ発生部3Aと相違している以外は、プラズマ処理装置1Aと同一に構成されている。以下では、相違するプラズマ発生部3Bの構成について説明し、同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0047】
プラズマ発生部3Bは、一例として図5に示すように、筐体32、同軸コネクタ12、給電導体13、および放射器14を備えている。筐体32は、一例として、両端が開口する導電性の筒体11a、導電性の閉塞板11b、および絶縁管11cを備え、筒体11aの一方の端部(図5中の上端部)が閉塞板11bによって閉塞されることにより、筒体11aの他方の端部(図5中の下端部)が開放端に形成されてトーチ型筐体に構成されている。また、筐体32では、閉塞板11bに、放電用ガスG1供給用の絶縁管11cを挿通させるための貫通孔22と共に、処理用ガスG2を供給するための他の貫通孔23が形成されている。本例では一例として、この貫通孔23には、処理用ガスG2を供給するための絶縁管24が連結されている。また、筐体32では、一例として図5に示すように、貫通孔22は、閉塞板11bにおける外面側の領域Bの内径が絶縁管11cの外径よりも若干大径に形成されると共に、閉塞板11bにおける内面側の領域Cの内径が放射器14の外径よりも若干大径(領域Bの内径よりも大径)に形成されている。また、貫通孔23は、貫通孔22を構成する閉塞板11bの内面における領域Cに開口している。
【0048】
放射器14は、図5に示すように、閉塞板11bの内面に、貫通孔22の領域C内に端部(図5中の上端部)が挿入されて、その中心軸が筒体11aの中心軸Xと同軸となり、かつその先端(同図中の下端)が筐体32の開放端または開放端の近傍に達する状態で立設されている。また、放射器14におけるこの上端部には貫通孔(または切欠き)14aが形成されて、この貫通孔14aを介して、放射器14の内部領域が貫通孔23と連通する状態となっている。また、同図に示すように、貫通孔22の領域Bに挿通された絶縁管11cは、放射器14にも挿通され、先端部が放射器14の先端または先端の近傍に達する状態となっている。これにより、二重管構造となっている放射器14の内周面と絶縁管11cの外周面との間には、反応性ガス供給路25(放射器14の内周面と絶縁管11cの外周面との間の隙間によって形成されて、放射器14の上端から下端に達する流路)が形成され、この反応性ガス供給路25は、放射器14に形成された貫通孔14aを介して貫通孔23と連通した状態となる。
【0049】
次に、プラズマ処理装置1Bを用いたプラズマ処理方法について、プラズマ処理装置1Bの動作と併せて説明する。なお、上記したプラズマ処理方法およびプラズマ処理装置1,1Aの動作と同じ部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0050】
まず、筐体32における開放端と対向して配設されたテーブル4上に、処理対象体6を載置する。なお、この状態では、処理対象体6は未だ処理用ガスG2の雰囲気下とはなっていない。
【0051】
次いで、不図示の第1ガス供給部から絶縁管11c内への放電用ガスG1の供給を開始すると共に、不図示の第2ガス供給部から絶縁管24内への処理用ガスG2の供給を開始する。これにより、処理用ガスG2は、絶縁管24、貫通孔23、放射器14の貫通孔14a、および反応性ガス供給路25を経由して、放射器14の下端側から筐体32における開放端の外部に放出されて、図5に示すように、筐体32における開放端の外部(前方)に処理用ガスG2の雰囲気(一点鎖線で囲まれた範囲)が形成される。このため、テーブル4上に載置されている処理対象体6における表面処理される部位を含む表面領域は、処理用ガスG2の雰囲気で覆われた状態となる(処理用ガスG2の雰囲気下となる)。この場合、反応性ガス供給路として筒体11aを使用するプラズマ処理装置1Aとは異なり、より小径な放射器14を反応性ガス供給路として使用するため、処理用ガスG2の雰囲気がプラズマ処理の必要な狭い部位にピンポイントで形成される。また、絶縁管11c内に供給されている放電用ガスG1が、絶縁管11cの先端(筐体32の開口端側に位置する先端。図5中の下端)から、処理用ガスG2の雰囲気内に放出される。
【0052】
続いて、この両ガスG1,G2の供給状態において、高周波電源2からプラズマ発生部3Bへの高周波信号S1の出力(供給)を開始する。これにより、プラズマ処理装置1,1Aのときと同様にして、プラズマ発生部3B内における放射器14の先端近傍(先端付近)で電界強度が最大となるため、放電用ガスG1が供給されている絶縁管11c内における放射器14の先端近傍において、放電用ガスG1がプラズマ化して、一次プラズマP1が発生する。この場合、絶縁管11c内に供給された放電用ガスG1は絶縁管11cの先端部から外部に放出され、かつ処理用ガスG2も放射器14の開放端から筒体11aの中心軸Xに沿って放出されるため、絶縁管11c内に発生した一次プラズマP1は、図5に示すように、絶縁管11cの長さ方向に沿って延びた状態で、絶縁管11cの先端部から放出される。また、放射器14およびプラズマ発生部3B(具体的には筒体11a)は、絶縁管11cによって一次プラズマP1と分離されているため、一次プラズマP1による変質等が防止されている。
【0053】
また、絶縁管11cの先端部から放出されている一次プラズマP1が、処理用ガスG2の雰囲気中に放出されることにより、一次プラズマP1と衝突させられた処理用ガスG2がプラズマ化されて、図5に示すように、一次プラズマP1の周囲に二次プラズマ等P2が発生する。これにより、処理対象体6が、二次プラズマ等P2によって表面処理される。この場合、二次プラズマ等P2はプラズマ発生部3Bの外部(絶縁管11cおよび筒体11aの外部)において発生させられるため、絶縁管11cおよび筒体11aの二次プラズマ等P2による変質等が防止されている。
【0054】
このように、このプラズマ処理装置1B、およびこのプラズマ処理装置1Bを用いたプラズマ処理方法によっても、絶縁管11cの外部に配設された放射器14において発生する電界を絶縁管11c内に供給することにより、絶縁管11c内で一次プラズマP1を発生させて、絶縁管11cの先端部から一次プラズマP1を筐体32の外部に放出させるため、放射器14および筐体32が一次プラズマP1によって変質等される事態を確実に防止することができる。また、絶縁管11c内で発生する一次プラズマP1は、不活性ガスである放電用ガスG1がプラズマ化したものであって、反応性ガスである処理用ガスG2がプラズマ化したものではないため、プラズマによる絶縁管11cの変質等も大幅に低減することができる。また、処理対象体6をプラズマ処理するための二次プラズマ等P2は、筐体32の外部において、筐体32から放出された一次プラズマP1と処理用ガスG2との衝突によって発生させられるため、絶縁管11c、放射器14および筐体32が二次プラズマ等P2によって変質等させられる事態についても確実に防止することができる。これにより、プラズマ処理方法に使用されるプラズマ処理装置1Bの耐久性を向上させることができる。また、反応性ガス供給路として筐体31(筒体11a)を使用するプラズマ処理装置1Aとは異なり、より小径な放射器14を反応性ガス供給路として使用して、処理対象体6におけるプラズマ処理する部位を含む狭い範囲に処理用ガスG2の雰囲気をピンポイントで形成できるため、少量の処理用ガスG2でプラズマ処理することができる。
【0055】
また、上記のプラズマ処理装置1,1A,1Bでは、放射器14を筒状体(筒状の棒状体)に構成して、その内部に絶縁管11cを挿通させる構成、および放射器14における閉塞板11bに固定された基端部から所定距離L2だけ離間した給電位置Aに給電導体13を介して高周波信号S1を供給する構成(逆F形のアンテナとする構成)の双方を採用しているが、放射器14を棒状体の他の例としての柱状体に構成して、放射器14の外部に絶縁管11cを配置する構成、および背景技術で説明した上記特許文献1に開示されたプラズマ処理装置(マイクロ波プラズマ発生器)のように、給電導体13を筒体11a内で閉塞板11bの方向に直角に折り曲げて、その先端を閉塞板11bに接続する構成のうちの少なくとも1つを採用することもできる。以下では、図6を参照しつつ、これらの2つの構成を、放射器14を筒体にする構成、および放射器14における閉塞板11bに固定された基端部から所定距離L2だけ離間した給電位置Aに給電導体13を介して高周波信号S1を供給する構成に代えて採用したプラズマ処理装置1Cについて説明する。
【0056】
まず、プラズマ処理装置1Cの構成について説明する。なお、プラズマ処理装置1Cは、上記したプラズマ処理装置1,1A,1Bのうちのプラズマ処理装置1Aの構成に近似する構成を備えているため、プラズマ処理装置1Aと同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略し、相違する構成についてのみ説明する。
【0057】
プラズマ発生部3Cは、一例として図6に示すように、筐体33、同軸コネクタ12、給電導体13、および放射器14を備えている。筐体33は、一例として、両端が開口する導電性の筒体11a、導電性の閉塞板11b、および絶縁管11cを備え、筒体11aの一方の端部(図5中の上端部)が閉塞板11bによって閉塞されることにより、筒体11aの他方の端部(図5中の下端部)が開放端に形成されてトーチ型筐体に構成されている。また、閉塞板11bには、放電用ガスG1供給用の絶縁管11cを挿通させるための貫通孔22と共に、処理用ガスG2を供給するための他の貫通孔23が形成されている。また、貫通孔23には、処理用ガスG2供給用の絶縁管24が連結されている。この構成により、筐体31、具体的には筒体11aは、反応性ガス供給路として機能する。また、図6に示すように、貫通孔22は、筒体11aの中心軸Xから外れた位置に形成されている。絶縁管11cは、同図に示すように、筒体11aの中心軸Xと平行となるように貫通孔22に挿通され、かつ閉塞板11bの内面からの突出長が筒体11aの全長とほぼ同じ長さに規定されている。これにより、絶縁管11cにおける筒体11aの開口端側の端部は、この開口端とほぼ面一の状態となっている。
【0058】
給電導体13は、図6に示すように、導電性を有する棒状体がL字状に折曲(本例では直角に折曲)されて、カップリングループとして構成されている。具体的には、給電導体13は、放射器14側の端部が閉塞板11bに接続されると共に、他方の端部が同軸コネクタ12の芯線(不図示)に接続されている。この状態において、給電導体13における放射器14側の部位(直角に折曲された部位)13aは、閉塞板11bから直角に起立した状態(筒体11aの中心軸Xと平行な状態)となっており、かつ高周波信号S1の波長をλとしたときに、その長さL3がλ/4の半分以下の長さ(本例では、一例としてλ/10)に規定されている。放射器14は、図6に示すように、長さL1の1本の導電性の柱状体(本例では円柱体)で構成されて、筒体11aの中心軸X上に位置した状態で、閉塞板11bの内面に立設されている。
【0059】
次に、プラズマ処理装置1Cを用いたプラズマ処理方法について、プラズマ処理装置1Cの動作と併せて説明する。なお、上記したプラズマ処理装置1Aを用いたプラズマ処理方法の処理内容、およびプラズマ処理装置1Aの動作と同じ部分については説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0060】
まず、筐体33における開放端と対向して配設されたテーブル4上に、処理対象体6を載置する。なお、この状態では、処理対象体6は未だ処理用ガスG2の雰囲気下とはなっていない。
【0061】
次いで、不図示の第1ガス供給部から絶縁管11c内への放電用ガスG1の供給を開始すると共に、不図示の第2ガス供給部から絶縁管24内への処理用ガスG2の供給を開始する。これにより、プラズマ発生部3C内(筒体11a内)に供給されている処理用ガスG2が筒状の筐体33における開放端から外部に放出されることにより、図6に示すように、筐体33における開放端の外部(前方)に処理用ガスG2の雰囲気(一点鎖線で囲まれた範囲)が形成される。このため、テーブル4上に載置されている処理対象体6における表面処理される部位を含む表面領域は、処理用ガスG2の雰囲気で覆われた状態となる(処理用ガスG2の雰囲気下となる)。また、絶縁管11c内に供給されている放電用ガスG1が、絶縁管11cの先端(筐体33の開口端側に位置する先端。図6中の下端)から、処理用ガスG2の雰囲気内に放出される。
【0062】
続いて、この両ガスG1,G2の供給状態において、高周波電源2からプラズマ発生部3Cへの高周波信号S1の出力(供給)を開始する。この場合、給電導体13に高周波信号S1が流れることにより、給電導体13における放射器14側の部位13aの周囲に磁界が発生し、上記した長さL1に規定された放射器14がこの磁界によって共振する。共振状態の放射器14は共振モノポールとして作動して、放射器14の先端(図6中の下端)で電圧が最大となる。このため、放射器14の先端近傍(先端付近)で電界強度が最大となるため、放電用ガスG1が供給されている絶縁管11c内における放射器14の先端近傍において、放電用ガスG1がプラズマ化して、一次プラズマP1が発生する。この場合、絶縁管11c内に供給された放電用ガスG1は絶縁管11cの先端部から外部に放出され、かつ処理用ガスG2も筐体33における開放端から筒体11aの中心軸Xに沿って放出されるため、絶縁管11c内に発生した一次プラズマP1も、図6に示すように、絶縁管11cの長さ方向に沿って延びた状態で、絶縁管11cの先端部から放出される。また、放射器14およびプラズマ発生部3C(具体的には筒体11a)は、絶縁管11cによって一次プラズマP1と分離されているため、一次プラズマP1による変質等が防止されている。
【0063】
また、絶縁管11cの先端部から放出されている一次プラズマP1が、処理用ガスG2の雰囲気中に放出されることにより、一次プラズマP1と衝突させられた処理用ガスG2がプラズマ化されて、図6に示すように、一次プラズマP1の周囲に二次プラズマ等P2が発生する。これにより、処理対象体6が、二次プラズマ等P2によって表面処理される。この場合、二次プラズマ等P2はプラズマ発生部3Cの外部(絶縁管11cおよび筒体11aの外部)において発生させられるため、絶縁管11cおよび筒体11aの二次プラズマ等P2による変質等が防止されている。
【0064】
このように、このプラズマ処理装置1C、およびこのプラズマ処理装置1Cを用いたプラズマ処理方法によっても、絶縁管11cの外部に配設された放射器14において発生する電界を絶縁管11c内に供給することにより、絶縁管11c内で一次プラズマP1を発生させて、絶縁管11cの先端部から一次プラズマP1を筐体33の外部に放出させるため、放射器14および筐体33が一次プラズマP1によって変質等させられる事態を防止することができる。また、絶縁管11c内で発生する一次プラズマP1は、不活性ガスである放電用ガスG1がプラズマ化したものであって、反応性ガスである処理用ガスG2がプラズマ化したものではないため、プラズマによる絶縁管11cの変質等も大幅に低減することができる。また、処理対象体6をプラズマ処理するための二次プラズマ等P2は、筐体33の外部において、筐体33から放出された一次プラズマP1と処理用ガスG2との衝突によって発生させられるため、絶縁管11c、放射器14および筐体33が二次プラズマ等P2によって変質等させられる事態についても防止することができる。これにより、プラズマ処理方法に使用されるプラズマ処理装置1Cの耐久性を向上させることができる。
【0065】
また、上記したプラズマ処理装置1,1A,1B,1Cによれば、一次プラズマP1を絶縁管11c内で発生させて、プラズマ発生部3,3A,3B,3Cの外部に放射させるため、一次プラズマP1の直径を絶縁管11cの内径で規定することができるため、絶縁管11cの内径を小さくすることにより、一次プラズマP1の直径、ひいては一次プラズマP1との衝突によって発生される二次プラズマ等P2の直径を小さくすることができるため、処理対象体6の表面における狭い範囲のみを表面処理することができる。
【0066】
また、上記したプラズマ処理装置1A,1Cでは、処理用ガスG2を閉塞板11bに形成された貫通孔23から筒体11aの内部に供給する構成を採用しているが、この貫通孔23を筒体11aに配設する構成を採用することもできる。また、処理用ガスG2供給用の貫通孔23の数は1つに限定されず、貫通孔23を2つ以上配設する構成を採用することもできる。
【0067】
また、プラズマ処理装置1を用いたプラズマ処理方法について上記したが、プラズマ処理方法は、プラズマ処理装置1以外のプラズマ処理装置(例えば、図7に示すプラズマ処理装置1D)を用いても実施することができる。以下、このプラズマ処理装置1Dを用いたプラズマ処理方法について説明する。
【0068】
まず、このプラズマ処理装置1Dの構成について説明する。なお、プラズマ処理装置1と同一の構成については同一の符号を付して重複する説明を省略する。このプラズマ処理装置1Dは、高周波電源2、プラズマ発生部3D、およびテーブル4を備えている。
【0069】
このプラズマ処理装置1Dは、高周波電源2において生成された高周波信号S1をプラズマ発生部3Dに供給することによってプラズマ発生部3Dの絶縁管11c内に一次プラズマP1を発生させると共に、発生させた一次プラズマP1をプラズマ発生部3Dの外部へ放出可能に構成されている。プラズマ発生部3Dは、一例として、図7に示すように、絶縁管11cおよび一対の電極15a,15bを備えている。また、一対の電極15a,15bは、同図に示すように、絶縁管11cを挟んで互いに対向する位置に配設されて、高周波電源2に接続されている。
【0070】
次に、プラズマ処理装置1Dを用いたプラズマ処理方法について、プラズマ処理装置1Dの動作と併せて説明する。なお、図7に示すように、テーブル4上には、処理対象体6が処理用ガスG2の雰囲気(一点鎖線で囲まれた範囲)下で載置されているものとする。
【0071】
まず、不図示の第1ガス供給部から絶縁管11c内への放電用ガスG1の供給を開始する。これにより、絶縁管11cの先端部(同図中の下端部。処理対象体6側の端部)から放電用ガスG1が放出される。この放電用ガスG1の供給状態において、高周波電源2から一対の電極15a,15b間への高周波信号S1の供給を開始する。これにより、絶縁管11cの内部領域における一対の電極15a,15bで挟まれた部位での電界強度が高まるため、この部位において放電用ガスG1がプラズマ化して、一次プラズマP1が発生し、絶縁管11cの先端部から外部に放出される。この場合、一対の電極15a,15bは、絶縁管11cによって一次プラズマP1と分離されているため、一次プラズマP1による変質等が防止されている。
【0072】
次いで、絶縁管11cの先端部から放出されている一次プラズマP1を、処理用ガスG2の雰囲気下でテーブル4上に載置されている処理対象体6に照射する。この処理用ガスG2への一次プラズマP1の照射により、一次プラズマP1と衝突させられた処理用ガスG2がプラズマ化されたり、ラジカル化されて、図7に概念的に示すように、一次プラズマP1の周囲に二次プラズマ等P2が発生する。これにより、処理対象体6が、二次プラズマ等P2によって表面処理される。このように、プラズマ処理装置1Dを用いたプラズマ処理方法においても、二次プラズマ等P2が絶縁管11cの外部において発生させられるため、絶縁管11cの二次プラズマ等P2による変質等を防止することができる。なお、このプラズマ処理装置1Dでは、高周波信号S1を一対の電極15a,15b間に供給することによって一次プラズマP1を発生させる構成を採用しているが、高周波電源2に代えて直流電源を使用して、一対の電極15a,15b間に直流電圧を印加することによって一次プラズマP1を発生させる構成を採用することもできる。また、一対の電極15a,15bに代えて1つの電極15aを使用し、高周波電源2の一方の出力端子から1つの電極15aに高周波信号S1を出力し、高周波電源2の他方の出力端子を基準電位(例えばグランド電位)に接続する構成を採用することができる。また、上記の各プラズマ処理装置1〜1Dでは、テーブル4を備える構成を採用したが、処理用ガスG2の雰囲気中に処理対象体6を配置できるものであれば、テーブル4以外の種々の台や容器を使用することができる。
【符号の説明】
【0073】
1,1A,1B,1C,1D プラズマ処理装置
2 高周波電源
3,3A,3B,3C,3D プラズマ発生部
6 処理対象体
11,31,32,33 筐体
11b 閉塞板
13 給電導体
14 放射器
15a,15b 一対の電極
G1 放電用ガス
G2 処理用ガス
P1 一次プラズマ
P2 二次プラズマ
S1 高周波信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グランド電位が付与されると共に一方の端部が閉塞板で閉塞され、かつ他方の端部が開放端に形成された筒状の筐体と、
前記閉塞板の内面に前記筐体の筒長方向に沿って延出するように立設された棒状の放射導体と、
不活性ガス、窒素ガスおよびエアーガスのうちのいずれか1つ以上からなるガスを前記筐体内を経由して当該筐体の前記開放端まで搬送すると共に、当該開放端近傍に位置する先端部から前記筐体の外部に放出させる絶縁管とを備え、
前記筐体は、内部に供給された反応性ガスを前記開放端から外部に放出して当該開放端の前方に反応性ガス雰囲気を形成する反応性ガス供給路を備えて構成され、
前記放射導体が供給された高周波信号を放射することにより、前記絶縁管内にプラズマ化した前記1つ以上からなるガスによる一次プラズマを発生させると共に、当該発生させた一次プラズマを前記絶縁管の前記先端部から前記反応性ガス雰囲気中に放出することにより、前記反応性ガスをプラズマ化させた二次プラズマ、および前記反応性ガスをラジカル化させたラジカルのうちの少なくとも一方を処理対象体のプラズマ処理のために発生させるプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記放射導体は筒状に形成され、
前記絶縁管は、前記先端部が前記放射導体の先端から突出した状態で当該放射導体内に配設されている請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記放射導体は、筒状に形成されると共に、先端が前記筐体の前記開放端または当該開放端の近傍に達するように立設され、
前記絶縁管は、前記先端部が前記放射導体の前記先端または当該先端の近傍に達する状態で当該放射導体内に配設され、
前記反応性ガス供給路は、前記放射導体の内周面と前記絶縁管の外周面との間に形成された隙間によって形成されている請求項1記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
不活性ガス、窒素ガスおよびエアーガスのうちのいずれか1つ以上からなるガスを絶縁管内に供給している状態において、前記絶縁管内にプラズマ化した前記1つ以上からなるガスによる一次プラズマを発生させ、
前記絶縁管の先端部から前記一次プラズマを放出させると共に、当該放出させた一次プラズマに反応性ガスを供給することにより、前記反応性ガスをプラズマ化させた二次プラズマ、および前記反応性ガスをラジカル化させたラジカルのうちの少なくとも一方を発生させ、
当該発生させた二次プラズマおよびラジカルのうちの少なくとも一方で処理対象体をプラズマ処理するプラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−212182(P2010−212182A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59309(P2009−59309)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000214836)長野日本無線株式会社 (140)
【Fターム(参考)】