説明

プラズマ処理装置

【課題】試料の面方向についての処理用ガスの流量の分布の均一性を向上させたプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】プラズマ処理装置において、真空容器204内の真空処理室に配置され、その上面に試料Wが載置される試料台207と、真空処理室を排気する排気手段206と、試料台207に対向して配置され、複数の導入孔203a備えた第1のプレート203と、第1のプレートの上方に配置され、貫通孔216を備えた第2のプレート202と、それらの間の第1の空間215及び処理用ガスが導入される第2の空間214とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内の減圧した真空処理室内部に処理用ガスを導入しつつ形成したプラズマを用いて半導体ウエハなどの被処理物に処理を行うプラズマ処理装置に係り、特に、真空処理室の上方に配置した複数の孔から処理用ガスを分散させて供給するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、上記のような半導体ウエハなど半導体基板の処理を行う真空処理装置では、真空処理室内部に処理用ガスを導入しつつ、かつ、真空処理室内部を減圧した状態で、半導体ウエハなどの被処理物に処理を行っている。例えば、真空処理室内部に導入された処理用ガスをプラズマ化して、ラジカルとの化学反応や電子のスパッタリングによってウエハ表面を加工したりしている。
【0003】
このようなプラズマ処理装置においては、真空処理室内部に導入するガスの流量、および、導入する向きや範囲は、処理性能に大きな影響がある。そこで、従来は、ガス流量制御器によって流量制御されたガスを所定の範囲に配置されたガス用の導入口から真空処理室内部に導入することで、真空処理室内でのプラズマやガスの密度の分布をコントロールしている。
【0004】
例えば、半導体ウエハ等の試料を載置する試料台の上面の上方に真空処理室の天井面を構成する複数の微小径の孔を特定の範囲に有したプレートを配置し、これらの微小な孔から処理用ガスを供給する構成が採られている。このような構成では、このプレートの上面上方に微小な孔が配置された範囲よりも広くプレートを覆う空間を設け、この空間へ処理用ガスを導入して空間内を満たした処理用ガスが微小な孔からガスが真空処理室へ導入される構造を採っている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
このような従来の技術では、プレート上方の前記空間は内部に供給される処理用ガスのコンダクタンスに対して微小孔のコンダクタンスを十分に小さくすることにより、空間内に処理用ガスが充満して微小孔から真空処理室内に供給されるようにしている。これは、上記プレート上方の空間内に生じる圧力差が各微小孔から供給された処理用ガスの真空処理室内での密度の分布に反映されることを抑制することで、各前記微小孔を通る各々の流量に生じる差が小さくなるようにするためである。
【0006】
特許文献1に記載の従来技術では、プレート上方の空間はその側方あるいは外周部に処理用ガスの供給口が配置されており、処理用ガスは、謂わば、横向きに該空間内部を通流して充満するものである。
【0007】
一方で、複数の貫通孔を有する真空処理室天井面を構成するプレート上面の上方の空間の中央部に上下方向に連結された処理用ガスの導入管路を備えたものが、特許文献2に開示されている。本従来技術では、プレート上方の空間内で拡散した処理用ガスが真空処理室天井面の中央部に配置されたプレートの微小孔から真空処理室に供給されその上部の中央部から外周に向けて流れる構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−005549号公報
【特許文献2】特開平8−227800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記従来技術では、前記微小孔は内部を流れる処理用ガスの流量が空間に供給された処理用ガスの圧力や流量速度の分布から受ける影響が十分に小さくなるようにその径を小さくして各微小孔のコンダクタンスを小さくする必要がある。
【0010】
このため、各微小孔からの処理用ガス流量は小さくならざるを得ず、一方で大きな流量を得るためには空間内に供給する処理用ガスの圧力を大きくしなければならないことになりプレートの厚さを大きくしなければならなくなり、これは却ってコンダクタンスを小さくすることにつながってしまう。
【0011】
また、上記空間内でガスがまず充満するようにしているため、微小孔から真空処理室に導入される処理用ガスの流量が、ガス流量制御器で制御された流量と同量となるまでの時間(タイムラグ)がかかることが問題となる。
【0012】
また、マイクロ波と磁場による電子サイクロトロン共鳴現象を用いてガスをプラズマ化させる方式を持つプラズマ処理装置においては、前記プレートと前記プレートの上方に設けられる微小空間を形成する壁部材は、マイクロ波を透過する石英などの素材で形成されている。
【0013】
したがって、前記プレートの上方の微小空間へのガス導入は、マイクロ波の通過の邪魔にならない側方からの導入としている。前記微小空間へは側方からガスが導入されているため、前記プレートの複数の微小穴から真空処理室に導入されるガス流量は、前記微小空間に導入されるガス流量の導入方向によって比較的流量が多い微小穴と比較的流量が少ない微小穴が存在し、前記プレートから真空処理室に導入されるガス流量は、ウエハが積載される中心軸上に対して、真空処理室に導入されるガス流量の分布が厳密には軸対称性が得られないことが問題となる。
【0014】
一方で、微小孔のコンダクタンスを大きくするように孔径を大きくすると、プレート上方の微小空間とのコンダクタンスの比を大きくする必要から、プレート上方の微小空間の高さを大きくする大きくすることで、前記微小空間のコンダクタンスを大きくすることが必要となるが、これにより前記微小空間の容積が増大し、処理用ガスが充満するまでの時間がさらに必要となって上記タイムラグが大きくなってしまうばかりか、空間内でのガスの密度や流量の分布が微小孔を通る処理用ガスの流量に、より反映されることになってしまう。
【0015】
処理用ガスの半導体ウエハ等の円板状試料の半径方向や周方向についての分布の大小は、試料のエッチング等の加工の結果の分布に大きく反映されるため、真空処理室内の処理用ガスの濃度や密度の分布の不均一性が大きくなってしまう。
【0016】
特許文献2のようにプレート上方の中央部から処理用ガスを供給する場合においても、微小孔の孔径を大きくした場合に半径方向について真空処理室内への処理用ガスの流量の分布が生じてしまう。
【0017】
本発明の目的は、試料の面方向についての処理用ガスの流量の分布の均一性を向上させたプラズマ処理装置を提供することにある。また、真空処理室に導入されるガス流量とガス流量制御器での調節の動作との間のタイムラグを低減して応答性を向上させたプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための一態様として、真空容器内部に配置された真空処理室と、前記真空処理室内の下方に配置されその上面に試料が載置される試料台と、前記真空処理室の下方に配置され前記真空処理室を排気する排気手段と、前記真空処理室の上部で前記試料台の上面と対向して配置された第1のプレートと、前記真空容器内部で前記第1のプレートの上方に配置された第2のプレートと、前記第1のプレートと前記第2のプレートとの間の第1の空間及び前記第2のプレートの上方に配置されて前記処理用ガスが導入される第2の空間と、前記前記試料台の上方の前記第2のプレートに配置され、前記第1及び第2の空間を連通して前記第2の空間内の処理用ガスが前記第1の空間に流入する貫通孔と、前記第1のプレートに配置され、前記第1の空間内に導入された前記処理用ガスが前記真空処理室内に流入する複数の導入孔とを備えたプラズマ処理装置とする。
【0019】
また、真空処理室と、前記真空処理室に配置された試料台と、前記試料台の上部に配置された処理ガス供給部と、前記処理ガス供給部へ導入される処理ガスの流量を制御するガス流量制御器と、前記真空処理室を排気する排気手段とを有するプラズマ処理装置であって、前記処理ガス供給部は、前記試料台に対向して設けられ、前記試料台の中心を通る軸周りに軸対象に複数の導入孔を有する第1のプレートと、前記第1のプレートの上部に配置され、貫通孔を有する第2のプレートと、前記第1のプレートと前記第2のプレートの間に形成される第1の空間と、前記第2のプレート上部に形成され、処理ガスが導入される第2の空間と、を有することを特徴とするプラズマ処理装置とする。
【発明の効果】
【0020】
試料の面方向についての処理用ガスの流量の分布の均一性を向上させたプラズマ処理装置を提供することができる。また、真空処理室に導入されるガス流量とガス流量制御器での調節の動作との間のタイムラグを低減して応答性を向上させたプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例1に係るプラズマ処理装置の構成の概略図であり、(a)は平面断面図、(b)は斜視図である。
【図2】実施例1に係るプラズマ処理装置の真空処理室の構成の概略を示す縦断面図である。
【図3】実施例1に係るプラズマ処理装置の真空処理室の概略分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、実施例により説明する。
【実施例1】
【0023】
第1の実施例を図1〜図3を用いて説明する。
【0024】
図1は、第1の実施例に係るプラズマ処理装置の構成の概略を示す図であり、(a)はその平面断面図を(b)は斜視図を示したものである。本実施例のプラズマ処理装置100は、大気ブロック101と処理ブロック102とを有する。大気ブロック101は、大気圧下で半導体ウエハ等の試料を搬送、収納位置決め等をする部分であり、処理ブロック102は大気圧から減圧された圧力下でウエハ等の試料を搬送し、処理等を行ない、試料を載置した状態で圧力を上下させる部分である。
【0025】
大気ブロック101は、その内部に搬送ロボット109を備えた大気搬送室筐体106と、この筐体106の装置前面側に取付けられ、処理用又はクリーニング用の試料が収納されているカセットがその上面に載せられる複数のカセット台107を備えている。
【0026】
大気ブロック101は、筐体106内部には、カセット台107上の各カセットとの間でこれらの内部に収納された処理用またはクリーニング用のウエハが筐体106の背面に連結された処理ブロック102との間でやりとりされる箇所であり、筐体106内部にはこのようなウエハの搬送のためにウエハ保持用のアームを備えたロボット109が配置されている。
【0027】
処理ブロック102は減圧して試料を処理する複数の処理ユニット103と、これらの処理ユニットと連結されその内部で試料を減圧下で搬送する搬送ロボット108を備えた真空搬送室104及びこの搬送室104と大気ブロック101を接続する複数のロック室105とを備えている。この処理ブロック102は、その内部は減圧されて高い真空度の圧力に維持可能なユニットで構成されている。
【0028】
図2は、図1に示す実施例の真空処理室の構成の概略を示す縦断面図である。特に、本図では処理ユニット103における処理容器内部の構成の略図を示している。本実施例では同一構造の処理ユニットを配置しているが、他の構造を有する処理ユニットを組み込んでもよい。
【0029】
本図において、処理ユニット103は、真空容器204とこれに連結されて配置された下方の排気装置及び上方の電界または磁界供給装置とを備えている。真空容器204内には実質的に円筒形状を備えた真空処理室が配置されており、その内部の中央部に円筒形状の試料台207が配置されている。
【0030】
真空容器204の上部には、真空容器204を構成する円板形状を有する蓋201が配置され、真空容器204の下方にはその底部と連結されて配置された真空ポンプ206が配置されている。本実施例では、試料である半導体ウエハは直径300mmのものを使用することを考慮して円筒形状の真空処理室の内径は450mmとなっている。
【0031】
真空容器204内部の円筒形状の空間である真空処理室の上方には、円板形状の蓋部材201下方に真空処理室の天井面を構成する円板形状のプレート(第1のプレート)203とその上方の円板形状のプレート(第2のプレート)202が配置され、これらの円板状の部材はほぼ並行に積層されて配置されこれら同士の間に複数層の空間が形成されて配置されている。
【0032】
これらの蓋部材201、プレート202,203は石英等の誘電体製の部材であり、マイクロ波やUHF,VHF波等の高周波電界が透過可能に構成されており、上方に配置された電界形成手段からの電界がこれらを通り真空処理室内に供給される。
【0033】
ウエハを載置する試料台207は真空処理室の内部にこれら第1のプレートや第2のプレートの軸同士が合致するように搭載される。プラズマによる処理を行う際は被処理物であるウエハは前記試料台の上面である円形の載置面に載せられてこの面を構成する誘電体の膜静電気により吸着されて保持された状態で処理が行われる。
【0034】
また、真空容器204の外側側壁の外周にはこれを囲んで磁場の形成手段(ソレノイドコイル)212が配置され発生された磁場を真空処理室内に供給可能に構成されている。
【0035】
第1のプレート203の下面であり真空処理室に面する円形の部分には、複数の貫通孔である処理用ガスの導入孔203aが配置されており、この導入孔203aを通して処理用ガスが真空処理室内に供給される。導入孔203aは、試料台207の上面である試料の載置面の上方であって試料台207の中心軸まわりの軸対称の領域に複数個配置されており、均等に配置された本実施例の貫通孔を通り所定の組成を有して異なるガス成分から構成された処理用ガスが真空処理室内に導入される。
【0036】
真空容器204の下方であって試料台207の直下方には、真空処理室と連通した開口が配置されこの開口を介して排気手段の一部である真空ポンプ206が配置されている。真空ポンプ206と真空処理室下部の開口との間には軸周りに回転する複数の板部材を有して構成されたコンダクタンス調整バルブ205が配置されており、排気手段を構成する。
【0037】
このコンダクタンス調整バルブ205の回転角度に伴って調節される排気量速度に応じ、真空ポンプ206により真空処理室外に排出される内部のガスやプラズマ、生成物の量、速度が調節される。つまり、処理用ガスの供給と共に真空ポンプ206等の排気手段の動作とのバランスにより、真空処理室内部の空間の圧力は所望の真空度に保持されている。本実施例では、処理中の圧力は、0.1〜4Paの範囲で予め定められた値に調節される。
【0038】
真空容器204内部に導入された処理用ガスは、電界形成手段であるマグネトロン210と磁界形成手段であるソレノイドコイル212により発生する電磁波及び磁場が真空処理室内に供給されることにより励起されて試料台207上方の真空処理室内の空間においてプラズマ化される。このとき、処理用ガス分子は電子とイオンに電離されたり、あるいはラジカルに解離されたりする。
【0039】
一方、下方に配置された試料台207内部に配置された電極には高周波バイアス電源211が接続されており、供給される高周波電力により試料台207及びこの上に載せられた試料W上方に形成される高周波バイアスによりプラズマ中の荷電粒子を試料の表面に誘引して衝突させることによる物理反応と前記ラジカルとウエハ表面との化学反応との相互反応によりエッチング処理が進行する。
【0040】
真空処理室内に導入された処理用ガス及びプラズマや処理の際の生成物は真空ポンプ206等の排気手段の動作により真空処理室上部から試料台207の外周側の空間を通り下方の開口まで移動する。
【0041】
エッチング処理中の真空処理室内部の圧力は真空計213にて監視され、コンダクタンス調整バルブ205によって排気速度を制御することで真空処理室内部の圧力を制御している。これらの処理用ガスの供給や電界形成手段、磁界形成手段、高周波バイアス、排気手段の動作は図示しない通信可能に接続された制御装置により調節される。
【0042】
プラズマ処理に使用する処理用ガスには、各プロセスの条件毎に単一種類のガス、あるいは複数種類のガスを最適な流量比で混合されたガスが用いられる。この混合ガスは、その流量がガス流量制御器208により調節されこれと連結された管路を介して真空容器204上部の真空処理室上方のガス滞留用の空間に導入される。この空間は、蓋201及びプレート202、203同士の間に配置された複数の空間であり、各々が一つの部屋と実質的に見倣せる程度に小径の連結路により相互に連結されている。
【0043】
なお、ガス流量制御器208と真空容器204(または蓋201)との間には管路内の処理用ガスの通流を遮断/開放するバルブ209が配置されている。このバルブ209は、上記空間内の圧力を調節することができるように管路内の流路面積の大小を可変に調節することができる構成を備えていても良い。
【0044】
蓋201は外周側の部分から内側が凹まされた構成を備え下方に配置されて積み重ねられてその外周側と連結されて接続される第2のプレート202との間で空間(第2の空間)214が構成される。空間214は処理用ガスの流路である管路とその外周側端部において接続されており、管路を通ってきた上記処理用ガスは空間214の端部から図上左右方向(水平方向)に空間内を移動する。
【0045】
さらに、処理用ガスは空間214内で第2のプレート202の中心部に備えられた連結路である貫通孔216を通り第2のプレート202下方に移動してプレート202,203との間に形成される空間(第1の空間)215に導入され、さらに、空間215内を第1のプレート203の中心から外周側に向かって拡散しつつ複数の導入孔203aを通過して真空処理室内部に導入される。
【0046】
ここで、第2のプレート202は、前記試料台の中心と同軸となる位置について軸対称に配置された形状を有する一つ以上の貫通孔216を備えている。また、第1のプレート203の導入孔203aは前記試料台の中心と同軸でその周囲の所定の領域の範囲に、特には貫通孔216の配置の中心軸と同軸の円形の範囲内に軸対称に配置されている。貫通孔216は試料台の中心の軸とその近傍に絞って配置され、その配置された領域の範囲は導入孔203aが配置された領域の範囲より小さいものとなっている。
【0047】
導入孔203a及び貫通孔216は各々同一の形状である必要はないが、試料の周方向の処理の均一性を向上させる点からみて、軸周りについて同一の形状を有して軸周りに所定の領域の範囲内に軸について対称に配置されることが望ましい。なお、第2プレートの貫通孔216と第1プレートの導入孔203aとは鉛直上方から見て重ならないようにすることにより、ウエハ面内の処理の均一性を向上することができる。図3に真空処理室の概略分解図を示す。
【0048】
このような構成において、空間214を構成する蓋201の凹みは貫通孔216の配置上の軸を中心に横断面が軸対称の形状を備えており、上面が平坦な形状を有する第2のプレート202との間で形成される空間214の高さ(凹みの深さ)はガスの流れ方向について均一となっている。
【0049】
空間214,215の横断面の形状はプレート202,203に合わせて円板形状を備えているが、これに限ったものでなく、電界を透過させる際の誘電率を試料の面方向について均等化できる形状であれば良い。なお、本実施例では、空間215の径は導入孔203aが配置された領域の範囲の径よりも大きなものとなっており、全ての導入孔203aは空間215と連通している。
【0050】
貫通孔216の配置と形状によりプレート202,203の間の空間215には試料台207中心と同軸の軸対称の位置からガスが導入される。軸対称の位置に配置された貫通孔216は本実施例では5mm径のものが一個用いられているが複数の貫通孔から構成しても良い。
【0051】
本実施例での導入孔203aは試料の径である300mmより大きい範囲に配置されており各導入孔203aの径は最小部で0.1〜0.7mm、望ましくは0.1〜0.5mmを有している。貫通孔216及び導入孔203aは、空間202,203、真空処理室の間を連結する連結路であって、これらの空間が一つの部屋と見倣せる大きさの径となっている。
【0052】
また、これらの空間を区画するプレート202,203は空間214,215の横断面の径と比べて十分に小さい厚さを備えており、これらに配置された貫通孔216、導入孔203a内部の処理用ガスの圧力分布が上記空間等の圧力の分布に与える影響は無視できる程度に小さなものとなっている。
【0053】
このような構成において、複数の空間214,215を介して導入孔203aから真空処理室に導入される処理用ガスは各空間で段階的に圧力が低減される。特に、空間215内の圧力は真空処理室内の圧力(0.1〜4Pa)とガス流量制御器208または管路における処理ガスの圧力(数kPa)との中間の値となる。
【0054】
したがって、空間215内での処理用ガスの圧力分布は空間214よりも低減されると共に圧力損失が低減されて流量の分布も均一化される。このため、空間215に中心部から導入された処理用ガスは試料台の中心軸に対して周方向或いは径方向に均一化された分布を有しており、各導入孔203aから真空処理室に導入される処理用ガスの流量も、前記試料台中心軸に対して均一化されたものとなり、試料の処理の面方向の均一性が向上する。
【0055】
さらに、圧力損失の低減からガス流量制御器208の調節の動作に対する真空処理室内への処理用ガスの流量の変化の応答性、または使用するガスの組成の変更に対する真空処理室内に供給される処理用ガスの組成の変化の応答性が向上する。
【0056】
本実施例において、空間215内の処理用ガスの流れが分子流となるように空間215の形状、あるいは内部の圧力を調節しても良い。空間215内の流れが分子流である場合には中心部から供給される処理用ガスの流量の圧力による変動が低減され内部の処理用ガスの流量、圧力の分布が向上し、導入孔203aから真空処理室内に供給される試料の径方向についての処理用ガスの流量の分布が均一化され、さらに試料の処理の均一性が向上する。
【0057】
以上のべたように本実施例によれば、試料台の中心を通る軸周りに複数の導入口が設けられた第1のプレートおよび貫通孔が設けられた第2プレートを有することにより、処理用ガスの流量分布を均一にすることができ、試料の面方向についての処理用ガスの流量の分布の均一性を向上させたプラズマ処理装置を提供することができる。
【0058】
また、第1のプレートと第2のプレートとの間に形成される第1の空間と、第2プレート上部に形成される第2の空間により、第1の空間内での処理用ガスの圧力分布は第2の空間よりも低減されると共に圧力損失を低減することができ、真空処理室に導入されるガス流量とガス流量制御器での調節の動作との間のタイムラグを低減して応答性を向上させたプラズマ処理装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0059】
100・・・プラズマ処理装置、101・・・大気ブロック、102・・・処理ブロック、103処理ユニット、104・・・真空搬送室、105・・・ロック室、106・・・大気搬送室筐体、107・・・カセット、108・・・搬送ロボット、109・・・搬送ロボット、201・・・蓋、202・・・第2のプレート、203・・・第1のプレート、203a・・・導入孔、204・・・処理容器、205・・・コンダクタンス調整バルブ、206・・・真空ポンプ、207・・・試料台、208・・・ガス流量制御器、209・・・バルブ、210・・・マグネトロン、211・・・高周波電源、212・・・ソレノイドコイル、213・・・真空計、214・・・第1の空間、215・・・第2の空間、216・・・貫通孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内部に配置された真空処理室と、
前記真空処理室内の下方に配置されその上面に試料が載置される試料台と、
前記真空処理室の下方に配置され、前記真空処理室を排気する排気手段と、
前記真空処理室の上部で前記試料台の上面と対向して配置された第1のプレートと、
前記真空容器内部で前記第1のプレートの上方に配置された第2のプレートと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートの間の第1の空間と、前記第2のプレートの上方に配置されて前記処理用ガスが導入される第2の空間と、
前記試料台の上方の前記第2のプレートに配置され、前記第1及び第2の空間を連通して前記第2の空間内の処理用ガスが前記第1の空間に流入する貫通孔と、
前記第1のプレートに配置され、前記第1の空間内に導入された前記処理用ガスが前記真空処理室内に流入する複数の導入孔と、を備えたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマ処理装置であって、
前記複数の導入孔が前記試料台の中心を通る軸周りに軸対称に配置され、前記貫通孔が前記軸周囲に絞って配置されたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプラズマ処理装置であって、
前記複数の導入孔が前記試料台の前記上面より広い範囲に配置されたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置であって、
前記第1の空間内の前記処理用ガスの流れが分子流であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のプラズマ処理装置であって、
前記貫通孔の配置された領域の径が5mmであり、前記導入孔の最小の内径が0.1乃至0.7mmであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
真空処理室と、前記真空処理室に配置された試料台と、前記試料台の上部に配置された処理ガス供給部と、前記処理ガス供給部へ導入される処理ガスの流量を制御するガス流量制御器と、前記真空処理室を排気する排気手段とを有するプラズマ処理装置であって、
前記処理ガス供給部は、
前記試料台に対向して設けられ、前記試料台の中心を通る軸周りに軸対象に複数の導入孔を有する第1のプレートと、
前記第1のプレートの上部に配置され、貫通孔を有する第2のプレートと、
前記第1のプレートと前記第2のプレートの間に形成される第1の空間と、
前記第2のプレート上部に形成され、処理ガスが導入される第2の空間と、を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項7】
請求項6記載のプラズマ処理装置において、
前記貫通孔は、鉛直上方から見て複数の前記導入孔とは重ならない位置に設けられていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のプラズマ処理装置において、
前記貫通孔は、前記試料台の中心の軸とその近傍に絞って配置されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置において、
前記プラズマ処理装置は、プラズマエッチング装置であることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置において、
前記真空処理室は複数設けられ、複数の前記真空処理室にそれぞれ試料を搬送するための搬送ロボットを更に有することを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−278207(P2010−278207A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−129011(P2009−129011)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】