説明

プリント性が加えられた片面エンボスカラー鋼板及びその製造方法

【課題】片面エンボスにプリント工程を加えることにより,多様な質感及び色感を表すことができ,これによる相乗効果として凹凸部分の立体感がさらに鮮明に表現されると共に,表面汚染性の改善及び親環境理念を導入することにより,機能性と意匠性を共に持つ片面エンボスカラー鋼板に関する。
【解決手段】素地鋼板(1)上に,亜鉛又は亜鉛合金メッキ層(2),ノンクロメート層(3),及びエポキシ変性又はポリエステル変性プライマー下塗塗膜層(4)が順次形成され,主樹脂がポリエステル樹脂であり,架橋樹脂がメラミン樹脂であり,樹脂の架橋を促進する硬化促進剤,その他の添加剤,溶剤などを含む有色ベース塗膜層(5)を形成し,多様な色感及び立体感を表すプリント印刷層(6)と,その上層に表面の汚染物質から保護するクリア層(7)を付加する工程を含む,機能性及び意匠性が向上した片面エンボスカラー鋼板及びその製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント性が加えられた片面エンボスカラー鋼板に関し,片面エンボスにプリント工程を加えることにより,既存のエンボスカラー鋼板より多様な質感及び色感を表現することができ,これによる相乗効果として凹凸部分の立体感がさらに鮮明に表現されると共に,表面汚染性の改善及び環境に適合すべきであるという理念すなわち親環境理念を導入することにより,機能性と意匠性を共に持つ片面エンボスカラー鋼板に関する。
【0002】
最近の需要者層は,家電製品の選択において,基本的な機能性の他に外観を重要な選択基準としており,生産者は製品のデザインや製品表面の色感及び質感などの多様化及び高級化の開発に持続的な努力を行っている。また,このような基本的な機能性及び表面外観の多様化の他に,今後の環境規制に対比して人体に無害な物質で製造された,親環境的概念の製品を同時に開発しなければならないという困難な問題点が現出している現状である。
【背景技術】
【0003】
従来のエンボスカラー鋼板は,所定の模様が刻まれた金属ロール(エンボスロール)を利用して,冷間圧延の粗圧延時,片面に圧下処理してエンボスを付与した後,その表面に電気メッキ及び溶融メッキ処理した亜鉛メッキ又は既知のメッキを行い,クロム酸処理などの一般的な前処理工程を経た後,シート方式でスプレイ塗装を行う片面エンボス製品があり,これと類似する外観を持つ製品には,PCM(pre-coated metal)用の塗料を塗装処理した後,両面エンボスロールで圧下処理した両面エンボス製品があった。
【0004】
従来の技術には,大韓民国特許第19732号(片面エンボスカラー鋼板及びその製造方法)があり,これは両面凹凸の接合により現出する面密着性不良の解決,及びPCM塗装を処理するための片面エンボス鋼板のエンボス部位で,気孔/気泡のない塗装技術と凹凸による様々な不良を防止する塗料の開発,すなわち,これによる処理条件及びその製造方法は改善されたが,開示している樹脂(特に,上塗)は,表面凹凸が形成された角ばった部分での色相差(不均一な隠蔽力)の発生及び深加工性が良好ではなく,最適品質の鋼板を得ることができず,表面外観もエンボスの凹凸模様にのみ依存し,比較的に単純なものとなるという短所があった。
【0005】
従来技術の大韓民国特許第442192号(片面エンボスカラー鋼板)は,片面エンボスに既知のクロメート層を形成し,この層上に高加工性のポリエステル下塗を形成し,ポリエステル樹脂を主樹脂とし,その他の樹脂などを添加して上塗をコーティングした片面エンボスカラー鋼板であって,従来の塗装工程による環境問題を解決し,鋼板表面に凹凸又は皺を形成させ,自然な外観を持つようにしたものである。しかしながら,このような外観の凹凸及び皺などは,単一の色でのみ表現されるだけであり,色感の単調さのため需要者の優れた感覚を満足することができず,また製品を製造することにおいて,人体に無害な環境規制の物質を一部使用して,世界的な親環境改善の流れに応じられなかったという短所を持っていた。
【0006】
そして,PCMカラー鋼板を生産する塗装方式の側面から見ると,表面外観をさほど重要視しない建材用には,2−ロールナチュラル(2-roll natural)又は2−ロールリバース(2-roll reverse)のロールコーティング方式を使用しているが,繊細な塗膜の調整が難しく,ロールマーク(roll mark)及びポッピングが発生しやすかった。
【0007】
そのため,表面外観を重要視する家電用のカラー鋼板では,このような短所を補完した3−ロールフルリバース(3-roll full reverse)方式を通常的に適用しているが,これもやはり生産速度の低下の他に,エンボス素地の特性である凹凸により,塗膜厚さの自由なコントロールが困難であった。
【0008】
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】大韓民国特許第19732号公報
【特許文献2】大韓民国特許第442192号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は,このような従来技術の問題点を克服し,エンボスカラー鋼板の表面にプリント工程を加えることにより,多様な質感及び色感の表現が可能であり,より一層立体的で特色のある最適な優れた外観を持つ多様な親環境的な片面エンボスカラー鋼板及びその製造方法を提供することにある。また本発明のさらなる目的は,既存のロールコーティングの塗装方法改善を通して,不均一な凹凸部位の隠蔽力の改善,豊かな質感の塗膜形成を可能にすることにより,より一層優れた色感及び質感の感じられるエンボスの外観を有するエンボスカラー鋼板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は,素地鋼板(1);亜鉛又は亜鉛合金メッキ層(2);ノン(non)−クロム酸塩又はクロム酸塩前処理層(3);数平均分子量が15,000〜25,000で,ガラス転移温度(Tg)が10〜30℃で,OH値は5〜20のオイルフリーポリエステル,ポリイソシアネート,エポキシ,顔料,添加剤,溶剤を含む下塗塗膜層(4);数平均分子量が8,000〜20,000で,ガラス転移温度(Tg)が20〜45℃で,OH値は15〜40のオイルフリーポリエステルとメラミンを反応させた変性オイルフリーポリエステル化合物,顔料,添加剤,溶剤を含む有色ベース塗膜層(5);プリント印刷層(6);及び,上塗クリア層(7)を含む,片面エンボスカラー鋼板により達成される。
【0011】
前記ベース(base)及びクリア(clear)塗膜層を構成する塗料の主樹脂は,数平均分子量が8,000〜20,000で,ガラス転移温度(Tg)が20〜45℃で,OH値は15〜40のオイルフリーポリエステルと加工性の優れたメラミンを反応させた変性オイルフリーポリエステル化合物である。
【0012】
また,親環境性を付与するために,ノン−クロム(non-Cr)前処理層,環境規制物質(6価クロム,鉛,カドミウム)の顔料使用を排除したベース塗料及び下塗塗料を含むカラー塗装鋼板を指す。
【0013】
また,プリント印刷層を構成するプリントインクは,既知のPCM用プリントインクはいずれも使用可能であるが,エンボス凹凸部位における印刷性及びそれによる境界面のポッピング(popping)性を勘案する必要がある。
【0014】
本発明に使用されるメッキ処理された素地鋼板(1)には,亜鉛−アルミニウム−シリカ合金メッキ鋼板,電気及び溶融亜鉛メッキ処理したメッキ鋼板など,既知のほとんどのメッキが適用可能であり,その他に銅板,アルミニウム板,ステンレス原板なども使用可能である。
【0015】
ノン(non)−クロメート層(3)は,鋼板に耐食性,プライマー(下塗)塗料の付着性向上などのためのものであって,親環境的な塗布型ノン(non)−クロメート層が好ましいが,既存のクロメート皮膜に比べて耐食性が少し劣る短所があり,需要者の要求に従い,既知のクロメート又はクロム3価の前処理剤を使用することもできる。
【0016】
本発明のカラー塗装鋼板の最上部塗膜層(7)を形成するクリア塗料は,塗膜の表面で良好な質感及び優れた耐汚染性を示すPCM塗料であって,優れたガスケット性及びポリエチレンバッグ(PE bag)浸食性を維持するように設計されたポリエステル樹脂と,加工性の優れたメラミン樹脂を基本として使用し,塗膜緻密度を通した耐汚染性及び耐食性を付与する。上塗クリア塗膜層(7)にこのような物性を付与するためには,クリア塗料の必須的な成分として,低温硬化促進剤であるp−トルエンスルホン酸(p-Toluene Sulfonic Acid, PTSA)を適用し,加工性の優れたメトキシ又はメトキシブトキシ部分置換メラミンの含量を増加させた。
【発明の効果】
【0017】
本発明のプリント性エンボスカラー鋼板は,従来の単色又は基本模様のみを呈するカラー鋼板に比べて,多様な質感又は色感を持ちより一層立体感を与えることにより,全く新しい美観を現出する。また,表面汚染性の改善及び親環境的性状を持つことにより,機能性はもちろんのこと,外観及びデザインなどの外観も重要視する需要者の購買条件を満たし,新しい需要を創出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下,下記に詳細に説明する。
【0019】
一般的に,建材用に使用されているPCM塗料(Regular Polyester)用樹脂は,樹脂の主鎖(backbone)にヒドロキシル基(Hydroxyl group),カルボキシル基(Carboxyl group)などの官能基が枝(branch)をなしており,塗膜の架橋樹脂(硬化剤)として使用されるメラミン(例えば,Hexa-Methoxymethyl melamine)樹脂と架橋形成時に網状構造を持つようになることで,塗膜形成後に塗膜の延伸(elongation)が極めて制限的であった。これに反して,家電用に使用されるFlexible Polyester塗料用ポリエステル樹脂は,樹脂の主鎖が線形構造(linear structure)であるため,塗膜の延伸率は非常に優れているが,耐食性,耐汚染性部門に脆弱であるという短所を有していた。
【0020】
このような短所を補完するために,クリア塗料の乾燥塗膜ガラス転移温度(Tg)55〜65を基準に,ポリエステル主樹脂は,塗膜の柔軟性などのような家電に求められる一般的な物性の付与の他に,優れた耐汚染性を付与するために,数平均分子量が8,000〜20,000で,樹脂のガラス転移温度(Tg)が20〜45℃で,OH値は15〜40のオイルフリーポリエステルと加工性の優れたメラミンを反応させた変性オイルフリーポリエステル化合物が好ましい。
【0021】
前記架橋樹脂として使用されるメラミンは,数平均分子量が300〜1,000のアルキル化されたタイプ(highly allkylated type)のヘキサメトキシメチルメラミン(hexa methoxy methyl melamine)と,少しアルキル化されたタイプ(partially allkylated type)のメトキシブトキシ形メラミンが推奨される。
【0022】
もし,ブトキシメラミン単独や,メトキシメラミンとブトキシメラミンの混合物を使用する場合は,上記ポリエステル樹脂との相溶性が急激に低くなり,メラミンが塗料の上層部に移転し,ロールマークなどの作業性不良を惹起させ得るからである。
【0023】
商業的に調達可能なものに,RESIMINE 755(SOLUTIA社),RESIMINE 757(SOLUTIA社),RESIMINE 751(SOLUTIA社),CYMEL 1168(CYTEL社),CYMEL 1170(CYTEL社),CYMEL 232(CYTEL社)などがある。
【0024】
硬化促進剤は,主樹脂のポリエステルと架橋樹脂のメラミンとの架橋を促進させ,塗膜緻密度及び耐汚染性を高めるためのものであって,アミンでブロッキングしマスクされた酸として,p−トルエンスルホン酸(Toluene Sulfonic Acid),ジノニルナフタレンスルホン酸(Dinonylnaphthalene Sulfonic Acid),ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA, Dodesyl Benzen Sulfonic Acid)などを含む。
【0025】
この他にも,エポキシでマスキングされたスルホン酸(Epoxy Masking Sulfonic Acid)や,有機樹脂でマスキングされたスルホン酸を使用することができるが,決められた短い焼付時間に最大限の塗膜緻密度を誘導するために,低温解離度の高いPTSAが推奨できる。
【0026】
使用する溶剤には,エンボス凹凸部位におけるポッピング性の他に,プリントインク塗膜との相互連係ポッピング性,インク塗膜浸透性,ロールマーク防止などを勘案して,炭化水素系及びエステル系,エーテル系,アセテート系から選択して使用する。
【0027】
以下では,有色ベース塗料について述べる。
【0028】
本発明の 有色ベース塗料は,トップクリア(TOP CLEAR)塗料の樹脂を基本ベースに,下塗及び上塗CLEARとの付着性,プリントインクとの付着性などを考慮し,乾燥塗膜ガラス転移温度(Tg)50〜55を基準に,硬化促進剤としてはジノニルナフタレンスルホン酸(Dinonylnaphthalene Sulfonic Acid, DNNSA)が推奨され,残余の他の添加剤及び溶剤の種類は大同小異であるが,使用量は適切に調節する必要がある。
【0029】
顔料は,PCM用塗料に使用される有機,無機顔料を制限なく使用することができるが,環境規制物質を使用する顔料は排除し,需要者の要求に従って使用できる。
【0030】
本発明のクリア及びベース塗料は,次表1の組成比を持つものが好ましい。
【0031】
【表1】

【0032】
以下では,下塗に関して述べる。
【0033】
素材密着のために使用される下塗は,ポリエステル系下塗,エポキシ系下塗,アクリル系下塗,アクリル系プライマー又はこれを変性した系の下塗を使用することができるが,素地及びベース塗膜との密着性,塗膜ポッピング,凹凸部位のビルドアップ(build up),作業性,加工性,耐食性,耐薬品性などを考慮し,乾燥塗膜ガラス転移温度(Tg)40〜45を基準に,主樹脂は数平均分子量が15,000〜25,000で,ガラス転移温度(Tg)が10〜30℃で,OH値は5〜20のオイルフリーポリエステルを使用し,架橋樹脂としてはビルドアップ及びポッピング性改善のためのポリイソシアネートと耐食性及び付着性のためのエポキシが推奨される。
【0034】
ポリイソシアネートは,ポリエステルの主鎖に枝で置換されたOH基と一定部分反応し(ウレタン結合),樹脂自体にビルドアップ,ポッピング性,耐食性,加工性などの物性を補完する役割をする。
【0035】
使用可能なイソシアネート化合物には,ヘキサメチレンジイソシアネート(Hexamethylene Diisocyanate),イソポロンジイソシアネート(Isophorone Diisocyanate),キシレンジイソシアネート(Xylene Diisocyanate),2,4,6−トリイソシアネートトルエン(triisocyanatetoluene)と,これに類似する性質のものを適用することができ,主にイソシアネート基をマスキングして熱により解離される製品を使用する。
【0036】
エポキシは,耐食性,耐薬品性,樹脂との相溶性,付着力を考慮すると,ビスフェノール−A(Bisphenol-A, BPA)が好ましい。変性BPA形は,ポリエステル主樹脂との相溶性が低くなり,使用が制限される。
【0037】
使用可能な製品には,KUKDO Chemical Co., Ltd. YD-011, KUMHO EPICOAT 828, 1001などがある。
【0038】
硬化促進剤は,主樹脂のポリエステルと架橋樹脂との架橋を促進させ,素地及び塗膜との付着性を高めるためのものであって,アミンでブロッキングしマスクされた酸として,p−トルエンスルホン酸(Toluene Sulfonic Acid),ジノニルナフタレンスルホン酸(Dinonylnaphthalene Sulfonic Acid),ドデシルベンゼンスルホン酸(DDBSA, Dodesyl Benzene Sulfonic Acid)などを含む。この他にも,エポキシでマスキングされたスルホン酸(Epoxy Masking Sulfonic Acid)や,有機樹脂でマスキングされたスルホン酸を使用することができる。
【0039】
使用する溶剤には,エンボス凹凸部位におけるポッピング性,及びビルドアップなどを勘案して,主として高沸点の炭化水素系及びエステル系,アセテート系から選択して使用する。
【0040】
この時,凹凸部位におけるポッピング性及びビルドアップ,ロールピックアップ(pick up)性の改善のために,無定形シリカを一部使用するが,syloid #161(GRACE davison社)が推奨される。
【0041】
また,下塗はその基本物性である一般的な耐食性の他に,素地及び塗膜との付着性の強化等の以外にも,延伸率を付与して素地と上層塗膜間の界面で十分な緩衝作業をすることによって,加工時に発生する素材の亀裂が上部層まで進むことなく,下塗層で吸収されるよう作用する。
【0042】
下塗に使用する顔料は,耐食性のために防錆顔料を使用しなければならないが,世界的な趨勢である環境物質規制の流れに応じて,鉛やクロムが排除された無毒性防錆顔料を基本に,需要者の要求に従って既存の防錆顔料を使用することもできる。
【0043】
既存の防錆顔料は,鉛及びクロムが含有されたレッドリード(Red Leed),ジンクポタシウムクロメート(Zinc Potassium Chromate),ジンクテトラオキシクロメート(Zinc Tetraoxy Chromate),ストロンチウムクロメート(Strontium Chromate)があり,無毒性防錆顔料には,代表的なBorate系は,バリウムメタボレート(Barium Metaborate),Molybdate系はジンクモリブデート(Zinc Molybdate),カルシウムジンクモリブデート(Calcium Zinc Molybdate),Phosphate系はジンクホスフェート(Zinc Phosphate),アルミニウムトリホスフェート(Aluminum Triphosphate),silicate系はカルシウムボロシリケート(Calcium Borosilicate),ホスホシリケート(Phosphosilicate),カルシウムイオン−交換シリケート(Calcium Ion-exchanged Silicate),マグネシウムイオン−交換シリケート(Magnesium Ion-exchanged Silicate)などがある。
【0044】
本発明の下塗塗料は,次表2の組成比を持つものが好ましい。
【0045】
【表2】

【0046】
以下では,本発明の意匠性において重要な役割をするPCM用プリントインクについて述べる。一般的に使用されるPCM用プリントインクはいずれも適用可能であるが,片面エンボスの場合,一般的なインクの特性である速乾性,上・下塗との付着性の他に,凹凸境界面における印刷性及びポッピング性がさらに要求される。
【0047】
この時,プリントインクに使用される顔料中に,パール,メタリックの場合,粒子のサイズが最大60μm以内のものが推奨される。60μmを超えたサイズのものを使用する場合,粒子の突出により表面鮮鋭性が劣るだけでなく,メッシュ(mesh)境界面の印刷性不良,印刷層の上にクリア塗料をロールコーティングするとき,ロール間の境界面に挟まって塗装不良を惹起する。
【0048】
このような物性を備えるプリントインクを,連続工程上で適用してエンボス素地の基本凹凸による立体感の他に,さらに多様な質感及び色感を表現することにより,不均一な凹凸部分の色相差(隠蔽力)を軽減することができ,より一層立体的で,特色のある最適の優れた外観を持つ多様な親環境的な片面エンボスカラー鋼板を提供することができるようになる。
【0049】
上記本発明のカラー塗装鋼板の断面構成は,図1に示す。
【0050】
また,本発明の製造工程は,片面にのみエンボスを付与した既知の素地鋼板(1)に,電気メッキ又は溶融メッキ処理した亜鉛又は亜鉛合金メッキ層(2)を形成する段階;20〜80mpmのラインスピード(line speed)でノン(non)−クロム酸塩又はクロム酸塩を処理し,50〜150℃で乾燥し前処理層(3)を形成する段階;前記前処理層に数平均分子量が15,000〜25,000で,ガラス転移温度(Tg)が10〜30℃で,OH値は5〜20のオイルフリーポリエステル,ポリイソシアネート,エポキシ,顔料,添加剤及び溶剤を含む下塗塗膜層(4)を形成する段階;数平均分子量が8,000〜20,000で,ガラス転移温度(Tg)が20〜45℃で,OH値は15〜40のオイルフリーポリエステルとメラミンを反応させた変性オイルフリーポリエステル化合物,硬化促進剤,その他の添加剤,溶剤を含む上塗塗料をコーティングし,PMT190〜240℃で加熱及び乾燥し上塗塗膜層(5)を形成する段階;プリント層(6)を形成する段階;及び,上塗クリア層(7)を形成する段階を含む。
【0051】
このような工程は,図2に詳しく示される。
【0052】
前記塗装鋼板の製造において,片面エンボス鋼板の素地は,焼鈍を終えた冷間圧延鋼板を粗圧延する工程で,2段(1セット)の粗圧延作業ロール中で,上段又は下段の一箇所に,片面エンボスされた作業ロールを設けて粗圧延を行うことにより,片面エンボス模様を形成する。エンボスされた冷延鋼板を脱脂工程を経て,その表面上に電気メッキ又は溶融メッキ処理した亜鉛メッキ鋼板を用途に合わせて選択して行う。しかし,素地に粗圧延を行ってからメッキする既存方法の外に,工程短縮及び需要者の緊急な納期の要請に対応するために,メッキ処理した後,予め保管したメッキ鋼板を利用して緊急圧延処理した素地も使用可能である。
【0053】
勿論,前記メッキ処理された素地の外に,通常の冷延鋼板,銅又はステンレスなどの素地も使用することができる。このような素地上には,塗装ラインで20〜80mpmのラインスピードで,ノン(non)−クロム酸塩処理をロールコーティング方式で表面に薄い膜で塗布し,50〜150℃の温度で乾燥しノン(non)−クロメート層を形成させ,その上に親環境的なポリエステル下塗及び有色のポリエステル系ベースを形成する。
【0054】
そして,連続工程で有色ベース塗膜上に,本発明の意匠性をより一層付与するためのプリント印刷工程を行う。
【0055】
この時,使用する印刷ロールとしては,多様なパターン(pattern)ロールの他に,全面印刷の可能なメッシュ(mesh)ロールがあり,メッシュロールの使用範囲は100〜200メッシュであって,100メッシュ以下はインク乾燥性が遅くなり,200メッシュ以上はインクの特性である速乾性により印刷性が粗雑になる。エンボス素地上の作業性,印刷性,速乾性を考慮すると,130〜170メッシュが推奨される。
【0056】
印刷度数は,デザインパターン及び色により,1〜4回の間で適宜に適用可能である。
【0057】
本発明のカラー鋼板は,塗膜断面を構成する各層の乾燥塗膜厚さ(D.F.T)が,上塗クリア塗膜5〜20μm,プリントインク塗膜1〜3μm,ベース塗膜10〜20μm,下塗塗膜4〜10μm,ノン−クロメート層100〜250mg/m2(クロメート層20〜80mg/m2),メッキ層15〜23μmであることが好ましい。上塗クリア塗膜の厚さが5μm未満では,加工性及び光沢の低下及び表面汚染物質の不良を惹起し,20μmを超えると,塗膜ポッピング性,塗膜硬度の低下及び経済性の側面で不利であるため,8〜15μmになるようにロールコーティングした後,ドライオーブンでロールコーティングしたPMT(peak metal temperature)190〜240℃で加熱して乾燥する。塗装方法は,ロール(roll)コーティングする方法の外に,既存のフロア(floor)コーティング方法を含む。
【0058】
既存の平板素地に,家電用カラー鋼板を生産するロールコーティング方式は,一般的にV型3−ロールフルリバース方式を適用しているが,エンボス素地の特性により,塗膜の自由なコントロールが難しいのが現状である。図3に,3−ロールフルリバース方法の概略図を示した。
【0059】
また,既存のロールコーティングで塗料が素地にコーティングされる部分工程を見ると,まず,貯蔵パン(CATCH PAN)に塗料を一定以上の高さになるように供給した後,この貯蔵された塗料をピックアップロール(P/R, pick-up roll)の回転力を利用して引き上げる。引き上げられた塗料をメタリングロール(M/R, metering roll)で逆方向に回転して,ピックアップロール(P/R)に付着した塗料の厚さを調節し,調節された湿塗膜をコーティングロール(C/R, coating roll)に転移する。この転移された湿塗膜を最終的に素地の進行方向と逆にコーティングロール(C/R)を回転させながら素地に接触しロールコーティングを処理してはいるものの,貯蔵パンには常に一定以上の塗料があるため,色分離,顔料沈殿,発生した泡の蓄積によりポッピングの不良が惹起される。
【0060】
このような点を一部でも改善するために,使用中の塗料を強制的に排出した後,再び攪拌した塗料を供給する循環方式を適用しているが,これもやはりエンボス素地という特性のため,根本的な問題点を解決することはできなかった。
【0061】
従って,このような問題点を補完し,塗膜のビルドアップを補完するために,ロールの回転方向が3−ロールリバース(3-roll reverse)方式と逆に回転する3−ロールナチュラル(3-roll natural)方式であるものの,ロールの配置が既存のV型ではない,図4に示すように,ピックアップロール(pick-up roll, P/R),メタリングロール(metering roll, M/R),コーティングロール(coating roll, C/R)を一列に傾斜状に配置構成した後,タンクで攪拌した新鮮な塗料をM/R(metering roll)とP/R(pick-up roll)の間に直接供給するトップフィード(Top feed)方式でコーティング処理することで,豊かな質感の塗膜を得ることができる。
【0062】
本発明の重要特徴は,片面エンボスカラー鋼板にプリント印刷工程を加えるものであって,片面エンボス素地の凸部分に多様な色感及び質感を持つプリント印刷を付加することにより,エンボス模様をさらに鮮明にする。このようなプリントは,需要者の要求に応じて,印刷度数を1〜4回の範囲で,2種以上の色相を自由に表現することができ,メッシュロール(mesh roll)とパターンロール(pattern roll)を利用してデザインを多様に示すことができ,既存のエンボス模様と共にさらに立体感のある美感を表出することができる。
【0063】
本発明の下塗塗膜層,有色ベース層,クリア層を塗装する3C3B鋼板だけでなく,ライン工程の短縮及び製造原価の問題などを考慮し,下塗を除いた工程で製造することもできる。すなわち,前処理した素地に有色ベースのみ塗装した後,プリント印刷,上塗クリアを順次連続処理した,短縮2C2B,プリント工程も可能である。
【0064】
以下,本発明は実施例及び比較例により明確に説明されるが,本発明は下記の実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0065】
実施例に使用した試験片の規格及び塗装条件は次の通りであり,%は重量%を意味する。
−コイル規格:W(広さ)1040×T(厚さ)0.5mmEGI(電気亜鉛メッキ鋼板)
−乾燥塗膜厚さ:下塗5μm,ベース15μm,プリント3μm,クリア10μm
−前処理剤 大韓パーカライジング203P(non−クロムタイプ)
−下塗塗料の作業粘度(25℃,#4Ford cup基準)170秒
−ベース有色塗料の作業粘度(25℃,#4Ford cup基準)140秒
−プリントインクの作業粘度(25℃,#4Ford cup基準)100秒
−上塗クリア塗料の作業粘度(25℃,#4Ford cup基準)100秒
−ロールコーティング方式:ナチュラルリバース(natural reverse)
【0066】
【表3】

【0067】
表4は,上記本発明の実施例と比較例の塗膜物性を比較実験した結果である。
【0068】
【表4】

【0069】
1;60度照射角度条件の光沢機で表面測定
2;ガスケット性:ガスケットの付着後,70℃95%湿潤,8Hr条件で△E値測定
3;95%湿潤,40℃8Hr条件で外観観察
4;耐溶剤性:M.E.Kラビング(Rubbing)
5;加工性:T曲げ,スクエアカッピング(Square cupping)後の亀裂状態
6;付着性:6mm クロスカット
7;衝撃:1/2φ×1kg×50cm
8;耐薬品性:試験前の試片と5%NaOH,5%HCl溶液に24hr浸漬後,試験の変色観察
9;耐食性:S.S.T(salt spray test)35℃5%NaCl,240hr経過後の外観観察
10;耐UV性:20w×20cm×48hr測定後,△E=1.5以内であること
【0070】
前記表4に示すように,本発明による環境親和的なプリント片面エンボスカラー鋼板は,より鮮鋭且つ鮮明な立体感を呈し,その機能的な面でも優れた耐食性を示す環境規制物質を使用しないにもかかわらず,家電製品の基本的な物性の試験規格値を充足し,さらに耐汚染性,加工性などの面で,従前の製品と同等又はそれ以上の効果を表すことができることが分かる。図5〜図8に,それぞれ,本発明の実施例1〜3及び比較例の片面エンボスカラー鋼板の表面写真を示す。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の片面エンボスカラー鋼板の断面図。
【図2】本発明の片面エンボスカラー鋼板の製造工程図。
【図3】3−ロールリバース(3-roll reverse)塗装方法の概略図。
【図4】3−ロールナチュラル(3-roll natural)塗装方法の概略図。
【図5】本発明の実施例1の片面エンボスカラー鋼板の表面写真。
【図6】本発明の実施例2の片面エンボスカラー鋼板の表面写真。
【図7】本発明の実施例3の片面エンボスカラー鋼板の表面写真。
【図8】比較例の片面エンボスカラー鋼板の表面写真。
【符号の説明】
【0072】
1 素地鋼板
2 亜鉛又は亜鉛合金メッキ層
3 ノン−クロム酸塩又はクロム酸塩前処理層
4 下塗塗膜層
5 ベース塗膜層
6 プリント印刷層
7 上塗クリア層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素地鋼板(1);亜鉛又は亜鉛合金メッキ層(2);ノン−クロム酸塩又はクロム酸塩前処理層(3);数平均分子量が15,000〜25,000,ガラス転移温度(Tg)が10〜30℃で,OH値は5〜20のオイルフリーポリエステル,ポリイソシアネート,エポキシ,顔料,添加剤,溶剤を含む下塗塗膜層(4);数平均分子量が8,000〜20,000,ガラス転移温度(Tg)が20〜45℃で,OH値は15〜40のオイルフリーポリエステルとメラミンを反応させた変性オイルフリーポリエステル化合物,顔料,添加剤,溶剤を含む有色ベース塗膜層(5);プリント印刷層(6);及び上塗クリア層(7)を含む片面エンボスカラー鋼板。
【請求項2】
前記下塗塗膜層の顔料は,ノン−クロム無毒性防錆顔料であることを特徴とする請求項1記載の片面エンボスカラー鋼板。
【請求項3】
前記上塗クリア層の塗料は,数平均分子量が8,000〜20,000,ガラス転移温度(Tg)が20〜45℃で,OH値は15〜40のオイルフリーポリエステルとメラミンを反応させた変性オイルフリーポリエステル化合物,添加剤,溶剤を含むことを特徴とする請求項1記載の片面エンボスカラー鋼板。
【請求項4】
前記添加剤は,p−トルエンスルホン酸(PTSA)の硬化促進剤を含むことを特徴とする請求項3記載の片面エンボスカラー鋼板。
【請求項5】
前記プリント印刷層のインクが,粒子サイズ60μm以下のパール及びメタリックをさらに含むことを特徴する請求項1記載の片面エンボスカラー鋼板。
【請求項6】
素地鋼板(1)に,電気メッキ又は溶融メッキ処理した亜鉛又は亜鉛合金メッキ層(2)を形成する段階;20〜80mpmのラインスピードでノン−クロム酸塩又はクロム酸塩を処理し,50〜150℃で乾燥し前処理層(3)を形成する段階;前記前処理層に数平均分子量が15,000〜25,000,ガラス転移温度(Tg)が10〜30℃で,OH値は5〜20のオイルフリーポリエステル,ポリイソシアネート,エポキシ,顔料,添加剤及び溶剤を含む下塗塗膜層(4)を形成する段階;数平均分子量が8,000〜20,000,ガラス転移温度(Tg)が20〜45℃で,OH値は15〜40のオイルフリーポリエステルとメラミンを反応させた変性オイルフリーポリエステル化合物,硬化促進剤,その他の添加剤,溶剤を含む上塗塗料をコーティングし,PMT190〜240℃で加熱及び乾燥し上塗塗膜層(5)を形成する段階;プリント印刷層(6)を形成する段階;及び,上塗クリア層(7)を形成する段階を含む,片面エンボスカラー鋼板の製造方法。
【請求項7】
前記プリント層は,メッシュロールで印刷することを特徴とする請求項6記載の片面エンボスカラー鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記メッシュロールは,100〜200メッシュのロールであることを特徴とする請求項7記載の片面エンボスカラー鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記各塗料の塗装は,ピックアップロール(pick-up roll, P/R),メタリングロール(metering roll, M/R),コーティングロール(coating roll, C/R)を一列に傾斜して配置した3−ロールナチュラル(3-roll natural)法によることを特徴とする請求項6記載の片面エンボスカラー鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−188064(P2006−188064A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−813(P2006−813)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(500357699)ユニオン スティール マニュファクチュアリング カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】